JP4160309B2 - 磁気カードの剥離洗浄法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気カードの剥離洗浄法に関する。さらに詳しくは、本発明は、磁気記録媒体で構成される使用済みカード、磁気カードの製造工程の廃材や不良品などの洗浄法に係り、無機アルカリ剤のみによる洗浄では除去しにくい磁性体部分を支持体から効率的に剥離させ、且つ剥離した磁性体がプラスチック、紙材などの支持体に再付着することを防止することができる磁気カードの剥離洗浄法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、テレホンカード、ポイントカード、診察カード、会員カード、定期乗車券などのカードには、磁気記録媒体が使用されている。磁気記録媒体は、プラスチックスフィルムや紙材からなるカード形状の支持体と、この支持体の一方の面上に形成された磁性体層より構成されており、これらの構成部材は互いに強固に接着されている。
磁気記録媒体を構成するカード状の支持体は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレンなどのプラスチックフィルムすなわち有機物が用いられている。なお、支持体の材質は、耐光性、耐熱性、加工性、塩素を含有しないなどの条件を満たすポリエチレンテレフタレートが主流となっている。また、磁性体は、γ−酸化鉄(III)、酸化鉄(II)、コバルト含有酸化鉄(II)、バリウムフェライトなどが主として用いられている。
ところで、使用済みの磁気記録媒体や、磁気記録媒体の製造工程から発生する廃材及び不良品の再資源化のためには、磁気カードから磁性体層を剥離し、支持体を洗浄する必要があり、そのための技術が検討されている。例えば、特開平11−167716号公報には、過酷な剥離条件が不必要で、量産処理の可能な磁気記録媒体を構成するカード形状の支持体と磁性層とに分離する方法として、磁気記録媒体に係る複数のワークを連続的に搬入し、アルカリ系剥離剤による溶液浴を用いてこれらワークをリンス処理する方法が提案されている。しかし、アルカリ性の剥離溶液として無機系物質が使用されており、磁気カードの支持体の材質は硬質の有機物であるために、強固に固着された磁性体層内部への浸透性が悪く、カードを再資源化可能な状態にするためには、高温、長時間の浸漬処理が必要となり、効率的な処理が困難である。また、無機アルカリ剤は、再汚染防止力が弱いために、清浄な支持体を得ることが困難である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、過酷な剥離洗浄条件が不必要で、磁気記録媒体を構成するカード形状の支持体と磁性体層とを効率的に分離することができる磁気カードの剥離洗浄法を提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、無機アルカリ剤、カチオン界面活性剤並びにアニオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤を含有する洗浄溶液を用いて磁気カードを処理することにより、温和な条件で磁性体層を剥離し、磁性体による支持体の再汚染を防ぎ、効率的に清浄な支持体を回収し得ることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)無機アルカリ剤0.1〜30重量%、カチオン界面活性剤0.005〜15重量%、並びに、アニオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤0.005〜15重量%を含有し、カチオン界面活性剤とアニオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤の比率が1:200〜1:1(重量比)である洗浄溶液を用いて洗浄することを特徴とする磁気カードの剥離洗浄法、
(2)無機アルカリ剤が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又はオルト珪酸ナトリウムである第1項記載の磁気カードの剥離洗浄法、
(3)カチオン界面活性剤が、一般式[1]で表される化合物である第1項記載の磁気カードの剥離洗浄法、
【化3】
(ただし、式中、R1は、炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基又はヒドロキシアルキル基であり、R2、R3及びR4は、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜3のヒドロキシアルキル基又はベンジル基であり、X-は、ハロゲンイオン、炭素数1〜2のモノアルキル硫酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、燐酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、キシレンスルホン酸イオン、炭素数1〜8のモノ若しくはジリン酸エステルイオン又はポリオキシアルキレンアルキルエーテル(該アルキル基の炭素数l〜8)のモノ若しくはジリン酸エステルイオンである。)、
(4)アニオン界面活性剤が、一般式[2]、一般式[3]又は一般式[4]で表される化合物である第1項記載の磁気カードの剥離洗浄法、
R5−Om−(R6O)nSO3M …[2]
(ただし、式中、R5は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基又は炭素数7〜18のアラルキル基であり、R6は、炭素数2〜4のアルキレン基であり、mは0又は1であり、nは0〜20であり、Mはアルカリ金属である。)
【化4】
(ただし、式中、R7、R8及びR11は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基又は炭素数7〜18のアラルキル基であり、R9、R10及びR12は、炭素数2〜4のアルキレン基であり、o、p及びqは0〜20であり、Mはアルカリ金属である。)、及び、
(5)両性界面活性剤が、炭素数6〜18の長鎖アルキル基を有するベタイン型界面活性剤、スルホベタイン型界面活性剤又はアミンオキサイド型界面活性剤である第1項記載の磁気カードの剥離洗浄法、
を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の磁気カードの剥離洗浄法においては、無機アルカリ剤0.1〜30重量%、カチオン界面活性剤0.005〜15重量%、並びに、アニオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤0.005〜15重量%を含有し、カチオン界面活性剤とアニオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤の比率が1:200〜1:1(重量比)である洗浄溶液を用いて洗浄する。本発明方法によれば、磁気記録媒体を構成する使用済みカード、製造工程の廃材や不良品などから磁性体層を剥離洗浄して、従来の無機アルカリ剤のみによる処理では除去が困難であった磁性体層部分をカード支持体から剥離させ、且つ再汚染を防いで、洗浄なカード支持体を回収し、資源として再利用することができる。
本発明方法において、洗浄溶液中の無機アルカリ剤の含有量は、0.1〜30重量%であり、より好ましくは1〜10重量%である。無機アルカリ剤の含有量が0.1重量%未満であると、洗浄効果が不足して磁性体層が十分に剥離しないおそれがある。無機アルカリ剤の含有量が30重量%を超えると、アルカリ剤の濃度に見合う剥離性の向上がなく、コスト的に無駄が多くなるとともに、支持体のプラスチックフィルムが劣化するおそれがある。
本発明方法において、洗浄溶液中のカチオン界面活性剤の含有量は、0.005〜15重量%であり、より好ましくは0.01〜5重量%である。カチオン界面活性剤の含有量が0.005重量%未満であると、洗浄効果が不足して磁性体層が十分に剥離しないおそれがある。カチオン界面活性剤の含有量が15重量%を超えると、カチオン界面活性剤の濃度に見合う剥離性の向上がなく、コスト的に無駄が多くなるおそれがある。
【0006】
本発明方法において、洗浄溶液中のアニオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤の含有量は0.005〜15重量%であり、より好ましくは0.01〜5重量%である。アニオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤の含有量が0.005重量%未満であると、洗浄効果が不足して磁性体層が十分に剥離しないおそれがある。アニオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤の含有量が15重量%を超えると、アニオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤の濃度に見合う剥離性の向上がなく、コスト的に無駄が多くなるおそれがある。
本発明方法において、洗浄溶液中のカチオン界面活性剤とアニオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤の比率は1:200〜1:1(重量比)であり、より好ましくは1:100〜1:1.5(重量比)である。カチオン界面活性剤とアニオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤の比率が1:200(重量比)未満であって、カチオン界面活性剤の量が相対的に少なすぎると、磁性体層が十分に剥離しないおそれがある。カチオン界面活性剤とアニオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤の比率が1:1(重量比)を超えて、アニオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤の量が相対的に少なすぎると、一旦剥離した磁性体が支持体に付着して再汚染が生じやすくなるおそれがある。
本発明方法に用いる無機アルカリ剤に特に制限はなく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの水酸化物、1号、2号又は3号珪酸ナトリウム、オルト珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、珪酸カリウムなどの珪酸塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの炭酸塩などを挙げることができる。これらの無機アルカリ剤は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。これらの中で、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及びオルト珪酸ナトリウムは、pHが高い洗浄溶液を調製することができるので好適に用いることができる。
【0007】
本発明方法において、カチオン界面活性剤は、一般式[1]で表される化合物であることが好ましい。
【化5】
ただし、一般式[1]において、R1は、炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基又はヒドロキシアルキル基であり、R2、R3及びR4は、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜3のヒドロキシアルキル基又はベンジル基であり、X-は、ハロゲンイオン、炭素数1〜2のモノアルキル硫酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、燐酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、キシレンスルホン酸イオン、炭素数1〜8のモノ若しくはジリン酸エステルイオン又はポリオキシアルキレンアルキルエーテル(該アルキル基の炭素数l〜8)のモノ若しくはジリン酸エステルイオンである。
一般式[1]で表される化合物としては、例えば、トリメチルヘキシルアンモニウムクロライド、トリメチルオクチルアンモニウムブロマイド、ジメチルヒドロキシエチルデシルアンモニウムp−トルエンスルホネート、ジエチルベンジルテトラデシルアンモニウムクロライド、ジヒドロキシエチルメチルラウリルアンモニウムメチルサルフェート、ジメチルヒドロキシプロピルヘキシルアンモニウムキシレンスルホネート、ジヒドロキシエチルエチルオクチルアンモニウムエチルサルフェート、ジメチルヒドロキシエチルデシルアンモニウムモノ/ジ(1/1)ブチルホスフェート、ジメチルヒドロキシエチルラウリルアンモニウムモノポリオキシエチレン(2モル)エチルヘキシルホスフェートなどを挙げることができる。これらの中で、一般式[1]において、R1が炭素数8〜14のアルキル基、アルケニル基又はヒドロキシアルキル基であり、R2、R3又はR4のいずれか一つがベンジル基である化合物は、プラスチックに対する浸透性が良好なので、特に好適に用いることができる。
【0008】
本発明に用いるアニオン界面活性剤に特に制限はなく、例えば、アルキルポリオキシアルキレン硫酸エステル塩、アルキルポリオキシアルキレンモノリン酸エステル塩又はジリン酸エステル塩、脂肪酸石鹸、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、石油スルホン酸ナトリウム塩、動植物油の硫酸化物ナトリウム塩などを挙げることができる。これらの中で、一般式[2]、一般式[3]又は一般式[4]で表されるアニオン界面活性剤を特に好適に用いることができる。
R5−Om−(R6O)nSO3M …[2]
ただし、一般式[2]において、R5は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基又は炭素数7〜18のアラルキル基であり、R6は、炭素数2〜4のアルキレン基であり、mは0又は1であり、nは0〜20であり、Mはアルカリ金属である。
【化6】
ただし、一般式[3]及び一般式[4]において、R7、R8及びR11は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基又は炭素数7〜18のアラルキル基であり、R9、R10及びR12は、炭素数2〜4のアルキレン基であり、o、p及びqは0〜20であり、Mはアルカリ金属である。
一般式[2]で表される化合物としては、例えば、2−エチルヘキシル硫酸エステルナトリウム塩、ラウリル硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレン(3モル)ラウリルエーテル硫酸エステルカリウム塩、ポリオキシエチレン(5モル)ラウリルエーテル硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレン(5モル)ラウリルエーテル硫酸エステルナトリウム塩などを挙げることができる。
一般式[3]又は一般式[4]で表される化合物としては、例えば、ブチルリン酸モノエステルナトリウム塩、2−エチルヘキシルリン酸エステルカリウム塩、ポリオキシエチレン(2モル)プロピルエーテルモノ/ジ(1/1)リン酸エステルカリウム塩、ポリオキシエチレン(4モル)2−エチルヘキシルエーテルモノリン酸エステルナトリウム塩などを挙げることができる。これらの中で、R5、R7、R8、R11が炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基又は炭素数7〜12のアラルキル基であり、R6、R9、R10、R12がエチレン基であり、n、o、p、qが2〜10である化合物は、剥離した磁性体が再付着するのを防ぐので、特に好適に用いることができる。
【0009】
本発明方法に用いる両性界面活性剤としては、例えば、アルキルジメチルベタイン、アルキルアミノカルボン酸塩、アルキルジヒドロキシエチルベタイン、アルキルイミダゾリニウムベタイン、アルキルスルホベタイン、アルキルアミンオキサイドなどを挙げることができる。このような両性界面活性剤としては、例えば、2−ヤシアルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリン酸アミドプロピルジメチルヒドロキシスルホベタイン、パルミチン酸アミドプロピルジメチルアミンオキサイド、ラウリルジメチルアミンオキサイド、ステアリルジヒドロキシエチルベタイン、ヤシ脂肪酸アシル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム、ラウリル−N,N−ジカルボキシエチルナトリウム、ラウリルジメチルアミンオキサイドなどを挙げることができる。これらの中で、炭素数6〜18の長鎖アルキル基を有するベタイン型界面活性剤、スルホベタイン型界面活性剤又はアミンオキサイド型界面活性剤を好適に用いることができる。
本発明の磁気カードの剥離洗浄法においては、必要に応じて、過酸化水素、トリポリ燐酸ナトリウムやエチレンジアミン四酢酸ナトリウムなどの金属イオン封鎖剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルなどのノニオン界面活性剤、防錆剤などを洗浄溶液に添加して使用することができる。
本発明方法によれば、磁気記録媒体を構成する使用済みカードなどの磁性体層部分を支持体から剥離し、一旦剥離した磁性体が支持体のプラスチックフィルムなどを再汚染することを防止し、洗浄なフィルムを回収して、資源として再利用することができる。
【0010】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例においては、界面活性剤として、式[5]〜[13]で示される界面活性剤A〜Iを用いた。
【化7】
また、剥離洗浄の効果は、カード表面の磁性体の剥離の状態及び再汚染の状態を目視により観察し、次に示す基準により判定した。
(1)剥離性
○:磁性体層が完全に除去されている。(剥離度:100%)
△:磁性体層の一部が残っている。(剥離度:50%以上100%未満)
×:磁性体層の多くの部分が除去されていない。(剥離度:50%未満)
(2)再汚染
○:再汚染が全くない。
△:一部に再汚染が認められる。
×:表面全体に強い再汚染が認められる。
実施例1
水酸化ナトリウム5.0重量%、カチオン界面活性剤A0.3重量%及びアニオン界面活性剤C1.5重量%を含有する水溶液を洗浄溶液として用い、ポリエチレンテレフタレートフィルムを支持体とする使用済みのテレホンカードの剥離洗浄を行った。
容量500mLのステンレス鋼製ポットに直径0.5mmのスチールボール10個と上記の洗浄溶液100mLを入れ、この中に使用済みのテレホンカード3枚(5.7g)入れた。ラウンダ・オ・メーター[(株)大栄化学精機製作所、L−20]を用いて、80℃にて30分洗浄した。次いで、浴比1:50の水にて、常温で3分間すすいだのち風乾した。
磁性体層は支持体から完全に除去され、再汚染は全くなかった。
実施例2〜10
第1表に示す組成の洗浄溶液を用い、実施例1と同様にして、使用済みのテレホンカードの剥離洗浄を行い、カード表面の磁性体の剥離の状態及び再汚染の状態を目視により観察した。
比較例1
10.0重量%水酸化ナトリウム水溶液を洗浄溶液として用いた以外は、実施例1と同様にして、使用済みのテレホンカードの剥離洗浄を行い、カード表面の磁性体の剥離の状態及び再汚染の状態を目視により観察した。
磁性体層の約60%が支持体上に残っており、一部に再汚染が認められた。
比較例2〜7
第2表に示す組成の洗浄溶液を用い、実施例1と同様にして、使用済みのテレホンカードの剥離洗浄を行い、カード表面の磁性体の剥離の状態及び再汚染の状態を目視により観察した。
実施例1〜10の結果を第1表に、比較例1〜7の結果を第2表に示す。
【0011】
【表1】
【0012】
【表2】
【0013】
【表3】
【0014】
第1表に見られるように、適量の無機アルカリ剤、カチオン界面活性剤並びにアニオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤を含有する洗浄溶液を用いた実施例1〜10においては、すべて磁性体層が完全に除去され、一旦剥離した磁性体の支持体への再汚染が認められない。
これに対して、無機アルカリ剤を単独で使用した比較例1では、無機アルカリ剤の濃度が10重量%と高いにもかかわらず剥離性が劣る。無機アルカリ剤とカチオン界面活性剤のみを使用した比較例2及び比較例3では、剥離性又は再汚染が良好ではない。アニオン界面活性剤又は両性界面活性剤の含有量がカチオン界面活性剤の含有量より少ない比較例4、比較例6及び比較例7では、剥離性は優れているが、表面全体に強い再汚染が生じている。無機アルカリ剤の濃度が0.1重量%未満である比較例5では、アルカリ剤の不足により剥離性が劣っている。
実施例11
洗濯脱水機[(株)稲本製作所、ラブネット35、35kg機]に水130L及びポリエチレンテレフタレートフィルムを支持体とする使用済みパチンコカード13kgを入れた。次いで、水酸化ナトリウム6.5kg、カチオン界面活性剤H0.2kg及びアニオン界面活性剤C2kgを投入し、80℃にて20分間洗浄した。
洗浄溶液を排出したのち、水245Lを投入して、常温にて3分すすぎ、排水した。同じすすぎを再度行い、カードの支持体を取り出し、自然乾燥した。
使用済みパチンコカードの磁性体層は、完全に支持体のフィルムから剥離し、再汚染も認められなかった。
比較例8
カチオン界面活性剤を投入することなく、水酸化ナトリウム6.5kgとアニオン界面活性剤I2kgを投入した以外は、実施例11と同様にして、使用済みパチンコカードの洗浄とすすぎ、自然乾燥を行った。
磁性体層はほとんどがカードに残留した状態であったが、剥離した部分への再汚染は認められなかった。
実施例11及び比較例8の結果を、第3表に示す。
【0015】
【表4】
【0016】
第3表に見られるように、無機アルカリ剤、カチオン界面活性剤及びアニオン界面活性剤を含有する洗浄溶液を用いた実施例11においては、磁性体層が完全に除去され、一旦剥離した磁性体の支持体への再汚染が認められない。これに対して、無機アルカリ剤とアニオン界面活性剤のみを含有する洗浄溶液を用いた比較例8においては、剥離した部分への再汚染は認められないが、磁性体層がほとんどがカードに残留した状態であって、剥離性がよくない。
【0017】
【発明の効果】
本発明の磁気カードの剥離洗浄法によれば、商業用の洗濯脱水機を用いて、使用済みの磁気カードや磁気カードの不良品の磁性体層を、再汚染を生じることなく、速やかに支持体より剥離することができる。このために、再資源化を目的として、磁気カードの剥離洗浄を、特別な洗浄装置を設置することなく、効率的に大量処理することが可能となる。
Claims (5)
- 無機アルカリ剤0.1〜30重量%、カチオン界面活性剤0.005〜15重量%、並びに、アニオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤0.005〜15重量%を含有し、カチオン界面活性剤とアニオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤の比率が1:200〜1:1(重量比)である洗浄溶液を用いて洗浄することを特徴とする磁気カードの剥離洗浄法。
- 無機アルカリ剤が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又はオルト珪酸ナトリウムである請求項1記載の磁気カードの剥離洗浄法。
- カチオン界面活性剤が、一般式[1]で表される化合物である請求項1記載の磁気カードの剥離洗浄法。
- アニオン界面活性剤が、一般式[2]、一般式[3]又は一般式[4]で表される化合物である請求項1記載の磁気カードの剥離洗浄法。
R5−Om−(R6O)nSO3M …[2]
(ただし、式中、R5は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基又は炭素数7〜18のアラルキル基であり、R6は、炭素数2〜4のアルキレン基であり、mは0又は1であり、nは0〜20であり、Mはアルカリ金属である。)
- 両性界面活性剤が、炭素数6〜18の長鎖アルキル基を有するベタイン型界面活性剤、スルホベタイン型界面活性剤又はアミンオキサイド型界面活性剤である請求項1記載の磁気カードの剥離洗浄法。
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