JP4159806B2 - フィルム積層体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリオレフィン樹脂とポリエステル樹脂からなる層を二軸延伸ポリエステルフィルムに形成した積層体フィルムに関するものであり、特にポリオレフィン系樹脂に対して接着性に優れ、後述する押出ラミネートの方法により、接着剤を用いることなく該フィルムの片面あるいは両面にヒートシール層を形成することのできる、特に包装用フィルムとして好適に使用される積層体フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)に代表されるポリエステル二軸延伸フィルムは、その優れた力学特性、耐熱性、寸法安定性、耐薬品性のために、広範な用途に使用されている。包装材料として使用される場合には、多くの場合ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)などのヒートシール性を有する樹脂をポリエステルフィルムの片面あるいは両面に積層し、ヒートシールを施すことによって種々の包装形態としている。
【0003】
このようなヒートシール性樹脂をポリエステル系フィルムに積層する場合、(1)ポリエステルフィルムとヒートシール性樹脂フィルムとを接着剤を用いてポリエステル系フィルムにラミネートする方法(ドライラミネート法)、(2)ヒートシール性樹脂を溶融させてポリエステルフィルム上に押出し、冷却固化させて積層する方法(押出ラミネート法)が一般的に用いられる。後者の場合、さらにポリエステルフィルムとヒートシール性樹脂フィルムの中間に同種あるいは別種のヒートシール性樹脂を押出して貼り合せつつ積層する方法や、ポリエステル系フィルムに2段階でヒートシール性樹脂を押出し積層する方法などがある。
(2)の押出ラミネート法は、ヒートシール性樹脂のフィルムを使用せず、原料樹脂を直接ポリエステルフィルムに押出すことによってポリエステルとヒートシール樹脂のフィルム状積層体を形成できるため、(1)のドライラミネート法に較べて低コストであり、採用されるケースが増えている。
【0004】
しかしながら、この押出ラミネート法においては、ポリエステルフィルムとヒートシール性樹脂が本質的に接着性に乏しいため、両層の中間に接着剤層を設けるのが一般的である。このとき、接着剤としては、有機チタネート系、有機イソシアネート系、ポリエチレンイミン系などの接着性化合物を一般には有機溶剤に溶かして使用されるが、有機溶剤の使用は作業環境の悪化や火災の危険の問題があり、また、近年の環境問題への関心の高まりから、できるだけ使用を避ける方法が望まれている。
【0005】
有機溶剤を使用しない接着剤(ノンソルベント接着剤)が使用される場合もあるが、溶剤型に較べて接着力が一般に劣っており、またフィルムに塗工する場合の濡れ性にも問題があり、限定された用途にのみ使用されている。
【0006】
このような観点から、ポリエステル系フィルムに対して接着剤を使用せずに押出ラミネーションを行なう技術が望まれている。
【0007】
一方、特開平5−193018号公報および特開平7−314629号公報には、押出ラミネートを行うと同時に、ヒートシール性樹脂の表面をオゾンによって改質して、熱可塑性樹脂フィルムへの密着性を発現させる方法が提案されているが、実施のためには特別な装置を導入しなければならない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような問題に対して、押出ラミネートの方法において接着剤を使用せずにヒートシール層を形成したときにも良好な密着力を得ることのできる積層体およびその製造方法を提供するものである。さらに本発明は水性分散体塗剤をポリエステルフィルムに塗工、乾燥して目的とする積層体を形成する方法を提供するものであり、環境適合性においても優れている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリオレフィン樹脂とポリエステル樹脂との混合物をポリエステルフィルムに積層することで、優れた衛生性、耐水性、耐溶剤性、被膜の接着性、ヒートシール層との密着性が得られることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)二軸延伸ポリエステルフィルムの少なくとも片側に、ポリオレフィン樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)の混合物であって、その質量比が90/10〜20/80からなる樹脂層が形成されているフィルム積層体であって、
ポリオレフィン樹脂(A)が、不飽和カルボン酸またはその無水物( A1 )、オレフィン化合物( A2 )、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル( A3 )とから構成され、 (A1) がこの樹脂中に0.01質量%以上、5質量%未満含有され、かつ、 (A2) (A3) の質量比が (A2) (A3) =55/45〜99/1の関係を満たす樹脂であり、
ポリエステル樹脂(B)が、20〜700(当量/10 6 g)の陰イオン性基を含有するものであるフィルム積層体。
)ポリオレフィン樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)の合計質量に対して、0.1〜20質量%の多官能イソシアネート化合物またはメラミン化合物を含むことを特徴とする、上記(1)のフィルム積層体。
)不飽和カルボン酸またはその無水物(A1)、オレフィン化合物(A2)、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル(A3)とから構成され (A1) がこの樹脂中に0.01質量%以上、5質量%未満含有され、かつ、 (A2) (A3) の質量比が (A2) (A3) =55/45〜99/1の関係を満たすポリオレフィン樹脂(A)の水性分散体、および陰イオン性基が20〜700(当量/106g)のポリエステル樹脂(B)の水性分散体を、それぞれの水性分散体中の固形分の質量比が(A)/(B)=90/10〜20/80となるように混合してなる水性分散体を、ポリエステルフィルムの少なくとも片側に塗布した後乾燥し、塗膜を形成することを特徴とするフィルム積層体の製造方法。
)上記()のフィルム積層体の製造方法において、ポリオレフィン樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)の各水性分散体の混合後、(A)と(B)の樹脂合計質量に対し固形分として0.1〜20質量%の多官能イソシアネート化合物またはメラミン化合物を添加する工程を含む製造方法。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明の積層体フィルムは、ポリエステルフィルム基材上に、ポリオレフィン樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)の混合物であって、その質量比が90/10〜20/80からなる樹脂層が形成されていることが必要であり、より好ましい質量比率は(A)/(B)が80/20〜30/70であり、さらに好ましくは70/30〜40/60の範囲である。ポリオレフィン樹脂(A)の割合が90質量%を超えると、ブロッキングが発生しやすく、またヒートシール性樹脂との密着性が低下する。また、(A)が20質量%未満であると、ヒートシール性樹脂との密着性が極端に低下する。
以下、基材フィルム上に形成したポリオレフィン樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)との混合物からなる層を、単に「樹脂層」と呼ぶ。
【0012】
(ポリエステルフィルム)
本発明の積層体フィルムの基材を構成するポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル樹脂またはそれらの混合物が挙げられる。また、フィルムの積層体を基材として用いてもよい。厚みは特に限定されないが、1〜500μmの範囲であればよい。
【0013】
フィルムを製造する方法としては、上記のポリエステル樹脂またはこれらの混合物を押出機で加熱、溶融してTダイより押出し、冷却ロールなどにより冷却固化させて未延伸フィルムを得るか、もしくは円形ダイより押出して水冷あるいは空冷により固化させて未延伸フィルムを得る。延伸フィルムを製造する場合は、未延伸フィルムを一旦巻き取った後、または連続して同時2軸延伸法または逐次2軸延伸法により延伸する方法が好ましい。フィルムの機械的特性や厚み均一性などの性能面からはTダイによるフラット式製膜法とテンター延伸法を組み合わせる方法が好ましい。
【0014】
(ポリオレフィン樹脂)
本発明で用いられるポリオレフィン樹脂(A)は、特に限定されないが、水分散体が形成しやすい点から、不飽和カルボン酸またはその無水物(A1)を0.01〜25質量%含有することが好ましい。0.01質量%未満の場合には、樹脂を水性化することが困難になり、良好な水性分散体を得ることが難しい。また、25質量%を超えると、フィルム積層体の耐水性が悪化する。
【0015】
ポリオレフィン樹脂(A)としては、不飽和カルボン酸またはその無水物(A1)、オレフィン化合物(A2)、アクリル酸またはメタクリル酸(A3)の3成分からなる樹脂が最も好ましい。
(A1)〜(A3)から構成されるポリオレフィン樹脂を用いる場合には、(A1)成分をこの樹脂全体の0.01質量%以上、5質量%未満、より好ましくは0.1質量%以上、5質量%未満、さらに好ましくは0.5質量%以上、5質量%未満含有していることが好ましく、1〜4質量%が最も好ましい。(A1)成分の含有量が0.01質量%未満の場合は、前述のように樹脂を水性化することが困難になり、良好な水性分散体を得ることが難しく、耐アルカリ性やポリエステル系フィルムとの接着性の点から(A1)成分の含有量を5質量%未満とすることが好ましい。
【0016】
(A1)成分としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等が挙げられる。不飽和カルボン酸は、塩、酸無水物、ハーフエステル、ハーフアミドなどの誘導体になっていても良い。中でもアクリル酸、メタクリル酸、(無水)マレイン酸が好ましく、特にアクリル酸、無水マレイン酸が好ましい。また不飽和カルボン酸は、ポリオレフィン樹脂中に共重合されていれば良く、その形態は限定されるものではなく、例えばランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等が挙げられる。
なお、本発明で用いる無水マレイン酸単位を含有するポリオレフィン樹脂中のマレイン酸単位は、乾燥状態では隣接カルボキシル基が脱水環化した無水マレイン酸構造を取りやすく、一方、後述する塩基性化合物を含有する水性媒体中ではその一部、または全部が開環してマレイン酸、あるいはその塩の構造を取りやすくなる。
【0017】
(A2)、(A3)成分を含有するポリオレフィン樹脂を用いる場合には、ポリオレフィン樹脂の水性化が容易で、また耐水性等の性能が向上するという点から、(A2)/(A3)の質量比率は55/45〜99/1とすることが好ましく、さらに、良好な接着性を持たせるために60/40〜98/2であることが好ましく、75/25〜95/5であることが特に好ましい。
【0018】
本発明のポリオレフィン樹脂を構成するオレフィン(A2)成分としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等の炭素数2〜6のオレフィン類が挙げられ、これらの混合物を用いてもよい。この中で、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン等の炭素数2〜4のオレフィンがより好ましく、特にエチレンが好ましい。
【0019】
(A3)成分の具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸の低級アルキルエステルが挙げられ、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルが好ましい。
【0020】
上記のような(A1)〜(A3)の成分を有するポリオレフィン樹脂としては、エチレン、アクリル酸メチルあるいはアクリル酸エチル、無水マレイン酸からなる三元共重合体が最も好ましい。ここで、アクリル酸エステル単位は、後述する樹脂の水性化の際に、エステル結合のごく一部が加水分解してアクリル酸単位に変化することがあるが、その様な場合には、それらの変化を加味した各構成成分の比率が規定の範囲にあればよい。
【0021】
また、本発明に用いられるポリオレフィン樹脂(A)には、その他のモノマーが、この樹脂全体の20質量%以下で共重合されていても良い。例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどの炭素数3〜30のアルキルビニルエーテル類、ジエン類、(メタ)アクリロニトリル、ハロゲン化ビニル類、ハロゲン化ビリニデン類、一酸化炭素、二硫化硫黄等が挙げられる。
【0022】
本発明に用いるポリオレフィン樹脂(A)は、分子量の目安となる190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが、0.01〜500g/10分が好ましい。さらに好ましくは1〜300g/10分、より好ましくは2〜250g/10分、最も好ましくは2〜200g/10分のものを用いることができる。メルトフローレートが0.01g/10分未満では、樹脂の水性化が困難となり、一方、500g/10分を超えると、樹脂層が、硬くてもろくなり、機械的物性や加工性が低下する傾向にある。
【0023】
ポリオレフィン樹脂(A)の合成法は特に限定されないが、一般的には、ポリオレフィン樹脂を構成するモノマーをラジカル発生剤の存在下、高圧ラジカル共重合して得られる。また、不飽和カルボン酸、あるいはその無水物はグラフト共重合(グラフト変性)されていてもよい。
【0024】
(ポリエステル樹脂)
次に、ポリエステル樹脂(B)について説明する。
本発明に用いるポリエステル樹脂は、酸成分とアルコール成分とからなり、公知の製造法により得られるものである。
【0025】
ポリエステル樹脂(B)の酸成分としては、芳香族多塩基酸、脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸等がある。芳香族多塩基酸のうち芳香族ジカルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸等が挙げられ、脂肪族多塩基酸のうち脂肪族ジカルボン酸の例としては、シュウ酸、コハク酸、無水コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、水添ダイマー酸等の飽和ジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、ダイマー酸等の不飽和ジカルボン酸等が挙げられ、脂環族多塩基酸のうち脂環族ジカルボン酸の例としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸及びその無水物、テトラヒドロフタル酸及びその無水物等を例示できる。また、必要に応じて積層体の耐熱水性を損なわない範囲で、少量の5−ナトリウムスルホイソフタル酸や5−ヒドロキシイソフタル酸等も酸成分として用いることができる。
【0026】
上記した酸成分の中でも、芳香族多塩基酸が好ましく、ポリエステル樹脂(B)の酸成分に占める芳香族多塩基酸の割合としては、50モル%以上が好ましく、60モル%以上がより好ましく、70モル%以上がさらに好ましく、80モル%以上が特に好ましい。芳香族多塩基酸の割合を増すことにより、脂肪族及び脂環族のエステル結合よりも加水分解され難い芳香族エステル結合が樹脂骨格に占める割合が増すため、積層体の耐熱水性、耐溶剤性が向上するので好ましい。さらに、積層体の諸性能とバランスをとりながらその加工性、硬度、耐熱水性、耐溶剤性、耐候性等を向上させることができる点において、上記した芳香族多塩基酸の中でもテレフタル酸が特に好ましい。
【0027】
また、酸成分としては、3官能以上の多塩基酸、例えばトリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水べンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸等が含まれていてもよい。このとき、積層体の加工性を良好に保つ点において、ポリエステル樹脂(B)の酸成分に占める3官能以上の多塩基酸の割合としては、10モル%以下が好ましく、8モル%以下がより好ましく、5モル%以下が特に好ましい。
【0028】
ポリエステル樹脂(B)のアルコール成分としては、炭素数が好ましくは2〜10の脂肪族グリコール、炭素数が好ましくは6〜12の脂環族グリコール、エーテル結合含有グリコール等がある。そのような脂肪族グリコールの例としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール等が挙げられ、脂環族グリコールの例としては、1,4−シクロヘキサンジメタノールが挙げられ、エーテル結合含有グリコールの例としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等が挙げられる。なお、エーテル構造が多くなるとポリエステル樹脂の耐熱水性、耐候性を低下させる場合があるので、エーテル結合含有グリコールの使用量としては、積層体の耐熱水性や耐候性が損なわれない範囲にとどめることが好ましい。また、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンのようにビスフェノール類の2つのフェノール性水酸基にエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドをそれぞれ1〜数モル付加して得られるグリコール類、さらには、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等も必要によりアルコール成分として使用することができる。
【0029】
上記したアルコール成分の中でも、エチレングリコール又はネオペンチルグリコールが特に好ましく、ポリエステル樹脂(B)のアルコール成分に占めるエチレングリコールとネオペンチルグリコールの合計の割合としては、50モル%以上が好ましく、60モル%以上がより好ましく、70モル%以上が特に好ましい。エチレングリコール及びネオペンチルグリコールは工業的に多量に生産されているので安価であり、しかも積層体の諸性能にバランスがとれ、エチレングリコールは特に積層体の耐薬品性を向上させ、ネオペンチルグリコールは特に積層体の耐候性を向上させるという長所を有するので、ポリエステル樹脂(B)のアルコール成分として好ましい。
【0030】
また、アルコール成分としては、3官能以上の多価アルコール、例えばグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が含まれていてもよい。このとき、積層体の加工性を良好に保つ点において、ポリエステル樹脂(B)のアルコール成分に占める3官能以上の多価アルコールの割合としては、10モル%以下が好ましく、8モル%以下がより好ましく、5モル%以下が特に好ましい。
【0031】
また、ポリエステル樹脂(B)には、必要に応じて、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の脂肪酸やそのエステル形成性誘導体、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、4−ヒドロキシフェニルステアリン酸等の高沸点のモノカルボン酸、ステアリルアルコール、2−フェノキシエタノール等の高沸点のモノアルコール、ε-カプロラクトン、乳酸、γ-ヒドロキシ酪酸、p-ヒドロキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸やそのエステル形成性誘導体が共重合されていてもよい。
【0032】
本発明で使用するポリエステル樹脂(B)として特に好ましい組成は、酸成分がテレフタル酸およびイソフタル酸からなり、アルコール成分がエチレングリコールとネオペンチルグリコールとからなるものである。
【0033】
本発明に用いるポリエステル樹脂(B)は、後述する水性分散体とするために、陰イオン性基が20〜700(当量/106ポリエステル樹脂:以下当量/トン)の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは140〜350当量/トンである。陰イオン性基が700当量/トンを超える場合は、積層体の耐熱水性や耐溶剤性が不足する。一方、陰イオン性基が20当量/トン未満では、水性媒体中にポリエステル樹脂を分散させるのが難しい。
陰イオン性基の種類としては、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基等が挙げられ、好ましくは、カルボキシル基、スルホン酸基である。これらの陰イオン性基はその一部が塩となったものでもよい。
【0034】
また、ポリエステル樹脂(B)の重量平均分子量としては、重量平均分子量が14,000以上であり、16,000以上が好ましく、18,000以上がより好ましい。重量平均分子量が14,000未満では、積層体の耐熱水性や耐溶剤性が不足し、また、加工性が不足する。
なお、後述するように、水性分散体として用いる場合には、粘度を適正に保つ点から、重量平均分子量の上限としては45,000以下が好ましく、40,000以下がより好ましく、35,000以下が特に好ましい。
【0035】
また、ポリエステル樹脂(B)には、硬化剤との反応性を有する官能基として水酸基が含まれていてもよい。このとき水酸基価としては、30mgKOH/g以下が好ましく、20mgKOH/g以下がより好ましく、15mgKOH/g以下が特に好ましい。
【0036】
また、ポリエステル樹脂(B)のガラス転移温度(Tgと略記する)としては、特に限定されるものではないが、樹脂被膜の硬度と加工性とのバランスが取り易いという点から、0〜90℃が好ましく、30〜80℃がより好ましい。
【0037】
(水性分散体の製造)
本発明のフィルム積層体は、既述のポリエステルフィルム基材上に、ポリオレフィン樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)の混合物からなる樹脂層を形成させてなる。ここで、樹脂層の形成方法は限定されないが、ポリオレフィン樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)のそれぞれの水性分散体を作製し、これをの固形分の質量比が(A)/(B)=90/10〜20/80となるように混合してポリエステルフィルム上に塗布、乾燥させる方法が最も好ましい。以下、この方法について詳述する。
なお、本発明でいう水性分散体は、樹脂(A)および(B)が水性媒体に分散もしくは溶解されているものであり、水性媒体とは、水を主成分とし、必要により後述する水溶性の有機溶剤や塩基性化合物を含有する液体を指す。
【0038】
本発明において、樹脂水性分散体を得るためには、たとえば、ポリオレフィン樹脂またはポリエステル樹脂を、水および、必要に応じて塩基性化合物や有機溶剤と共に、密閉可能な容器中で加熱、攪拌する方法を用いることができる。
【0039】
(塩基性化合物)
この際に、塩基性化合物を添加することにより、ポリオレフィン樹脂のカルボキシル基またはポリエステル樹脂の陰イオン性基を中和すると、生成したアニオン間の静電気的反発力によって微粒子間の凝集が防がれ、水性分散体に安定性が付与されるため好ましい。塩基性化合物の添加量はポリオレフィン樹脂中のカルボキシル基またはポリエステル樹脂中の陰イオン性基に対して0.5〜3.0倍当量であることが好ましく、0.8〜2.5倍当量がより好ましく、1.0〜2.0倍当量が特に好ましい。0.5倍当量未満では、塩基性化合物の添加効果が認められず、3.0倍当量を超えると樹脂層形成時の乾燥時間が長くなったり、水分散液が着色する場合がある。
【0040】
塩基性化合物の具体例としては、LiOH、KOH、NaOH等の金属水酸化物やアンモニア又は有機アミン化合物が挙げられる。中でも、樹脂層形成時に揮発する化合物を用いることが積層体フィルムの製造工程上好ましく、アンモニアまたは沸点250℃以下の有機アミン化合物が好ましい。このような有機アミン化合物の具体例としては、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等を挙げることができる。
【0041】
(有機溶剤)
水性分散体の製造において、樹脂の分子量がある程度大きい場合には、有機溶剤を添加することが好ましい。このとき用いる有機溶剤の添加量は水性分散体100質量部に対して1〜40質量部であることが好ましく、2〜30質量部がより好ましく、3〜20質量部が特に好ましい。有機溶剤の添加量が20質量部を超える場合には、常圧または減圧下で水性分散体を攪拌しながら加熱することにより(ストリッピング)、有機溶剤の含有量を低減させ、0.01質量%程度にすることができる。
【0042】
有機溶剤としては、20℃における水に対する溶解性が5g/L以上のものが好ましく用いられ、さらに好ましくは10g/L以上である。具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−3−メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル等のエステル類、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体、さらには、3−メトキシ−3−メチルブタノール、3−メトキシブタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチル等が挙げられ、中でも、樹脂の水性化がし易く、しかも水性媒体中から有機溶剤を除去し易いという点から、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルが好ましく、低温乾燥性の点からイソプロパノールが特に好ましい。
【0043】
(乳化剤等)
なお、既述のような製造方法によれば、一般に水性分散体の製造において用いられる乳化剤成分や保護コロイド作用を有する化合物を添加しなくても水性分散体を得ることができるが、樹脂の水系媒体への分散をさらに容易にするために、乳化剤あるいは保護コロイド作用を有する化合物を反応系内に加えることもできる。しかしながら、こうした化合物は一般的に不揮発性であるので、積層体フィルムの樹脂層中にも残存し、これを可塑化する作用を有するため、耐水性や耐薬品性を悪化させる。耐水性が悪化した場合、積層体フィルムを用いて水分を含む内容物を包装したときなどに、袋の破裂の原因となる恐れがある。また、耐薬品性が悪化した場合は、フィルムの表面に印刷を施す場合にインキの溶剤に表面が侵され、性能低下や印刷品位の悪化が生じやすい。そのため、乳化剤あるいは保護コロイド作用を有する化合物の使用はできるだけ少量にとどめるほうがよい。
【0044】
本発明で言う乳化剤としては、カチオン性乳化剤、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、あるいは両性乳化剤が挙げられ、一般に乳化重合に用いられるもののほか、界面活性剤類も含まれる。例えば、アニオン性乳化剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸塩、高級カルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ビニルスルホサクシネート等が挙げられ、ノニオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体などのポリオキシエチレン構造を有する化合物やソルビタン誘導体等が挙げられ、両性乳化剤としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
【0045】
保護コロイド作用を有する化合物としては、ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、変性デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸およびその塩、カルボキシル基含有ポリエチレンワックス、カルボキシル基含有ポリプロピレンワックス、カルボキシル基含有ポリエチレン−プロピレンワックスなどの数平均分子量が通常は5000以下の酸変性ポリオレフィンワックス類およびその塩、アクリル酸−無水マレイン酸共重合体およびその塩、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸交互共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等の不飽和カルボン酸含有量が10質量%以上のカルボキシル基含有ポリマーおよびその塩、ポリイタコン酸およびその塩、アミノ基を有する水溶性アクリル系共重合体、ゼラチン、アラビアゴム、カゼイン等、一般に微粒子の分散安定剤として用いられている化合物が挙げられる。
【0046】
水性分散体を製造するための容器としては、液体を投入できる槽を備え、槽内に投入された水性媒体と樹脂粉末ないしは粒状物との混合物を適度に撹拌できるものであればよい。そのような装置としては、固/液撹拌装置や乳化機として広く当業者に知られている装置を使用することができ、0.1MPa以上の加圧が可能な装置を使用することが好ましい。撹拌の方法、撹拌の回転速度は特に限定されない。なお、水性化速度を速めるという点から、原料樹脂の粒子径は1cm以下、好ましくは0.8cm以下の粒状ないしは粉末状のものを用いることが好ましい。
【0047】
この装置の槽内に既述の各原料を投入し、好ましくは40℃以下の温度で攪拌混合しておく。次いで、槽内の温度を50〜200℃、好ましくは60〜200℃に保ちつつ、好ましくは5〜120分間攪拌を続けることにより樹脂を十分に水性化させ、その後、好ましくは攪拌下で40℃以下に冷却することにより、水性分散体を得ることができる。槽内の温度が50℃未満の場合は、樹脂の水性化が困難になる。槽内の温度が200℃を超える場合は、ポリオレフィン樹脂やポリエステル樹脂の分子量が低下する恐れがある。
【0048】
槽内の加熱方法としては槽外部からの加熱が好ましく、例えば、オイルや水を用いて槽を加熱する、あるいはヒーターを槽に取り付けて加熱を行うことができる。槽内の冷却方法としては、例えば、室温で自然放冷する方法や0〜40℃のオイルまたは水を使用して冷却する方法を挙げることができる。
【0049】
なお、この後、必要に応じてさらにジェット粉砕処理を行ってもよい。ここでいうジェット粉砕処理とは、水性分散体を高圧下でノズルやスリットのような細孔より噴出させ、樹脂粒子同士や樹脂粒子と衝突板等とを衝突させて、機械的なエネルギーによって樹脂粒子をさらに細粒化することであり、そのための装置の具体例としては、A.P.V.A.GAULIN社製ホモジナイザー、みずほ工業社製マイクロフルイタイザーM-110E/H等が挙げられる。
【0050】
このように得られたポリオレフィン樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)の各水性分散体を混合するには、一方の水性分散体を適当な容器に入れて攪拌しながら、他方の水系分散体を所定量混合して調整することができる。容器に仕込む順番はどちらが先でも良くまた同時に仕込んでも良い。
【0051】
(硬化剤)
こうして得られた水性分散体混合物をポリエステルフィルムに積層することで、押出ラミネーションにおいて接着剤を用いることなく、実用上十分な接着強力を有するフィルム積層体を得ることができるが、このとき、さらに硬化剤成分を添加することで、その耐水性、耐溶剤性を改良することができる。なお、硬化剤を使用する場合は、上述のポリオレフィン樹脂(A)の水性分散体とポリエステル樹脂(B)の水性分散体の混合における任意の段階で添加してよい。このときの攪拌混合において、低速の攪拌では硬化剤が均一に分散しにくいという場合には、ホモミキサーのような高速で高剪断力が加えられる攪拌機を用いればよい。また、必要に応じて系の粘度を下げて硬化剤及び添加剤の分散性を向上させる目的で、有機溶剤又は水を追加することもできる。
【0052】
水性分散体に添加される硬化剤としては、ポリオレフィン樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)が有する官能基、例えばカルボキシル基や水酸基等と反応性を有する硬化剤であれば特に限定されるものではなく、例えばフェノール樹脂、アミノ樹脂、多官能エポキシ化合物、多官能イソシアネート化合物及びその各種ブロックイソシアネート化合物、多官能アジリジン化合物、カルボジイミド基含有化合物、オキサゾリン基含有重合体等が挙げられ、それらのうちの1種類を使用しても2種類以上を併用してもよい。
【0053】
上記した硬化剤の中でも、メラミン化合物と多官能イソシアネート化合物が好ましい。これらの化合物は、150℃未満の比較的低い温度でも樹脂の官能基とすみやかに反応できるので、水性分散体をポリエステルフィルムに塗布乾燥する場合において、ポリエステルフィルムの力学特性を損なうような高温度を必要としない。
【0054】
メラミン化合物とは、トリアジン環の3つの炭素原子にアミノ基がそれぞれ結合した、いわゆるメラミン[1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン]のアミノ基に種々の変性を施した化合物の総称であり、トリアジン環が複数縮合したものも含む。変性の種類としては、3つのアミノ基の水素原子のいくつかがアルキル化もしくはメチロール化されたものが広く使用される。一般にアルキル化されたものよりもメチロール化もしくは置換されていない水素原子の方が反応性が高く、用途に応じて適正な種類のメラミン化合物を選定することができる。この中で好ましいのは、トリアジン環の縮合数が平均3以下で、少なくとも1つ以上のアミノ基がメチロール置換されたものであり、これらは水性媒体への分散性と樹脂との反応性の点で優れている。
【0055】
多官能イソシアネート化合物とは、イソシアネート基を1分子中に2個以上有する化合物であり、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン2,4´-又は4,4´-ジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,4-ジイソシアナトブタン、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,5-ジイソシアナト-2,2-ジメチルペンタン、2,2,4-又は2,4,4-トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサン、1,10-ジイソシアナトデカン、1,3-又は1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、1-イソシアナト-3、3、5-トリメチル-5-イソシアナトメチル-シクロヘキサン、4,4´-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、ヘキサヒドロトルエン2,4-又は2,6-ジイソシアネート、ぺルヒドロ-2,4´-又は4,4´-ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレン1,5-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の多官能イソシアネート化合物、あるいはそれらの改変生成物が挙げられる。ここで、改変生成物とは、多官能イソシアネート化合物のうちのジイソシアネートを公知の方法で変性することによって得られるものであり、例えば、アロファネート基、ビューレット基、カルボジイミド基、ウレトンイミン基、ウレトジオン基、イソシアヌレート基等を有する多官能イソシアネート化合物、さらにはトリメチロールプロパン等の多官能アルコールで変性したアダクト型の多官能イソシアネート化合物を挙げることができる。これらの中でも、イソシアヌレート基を有する多官能イソシアネート化合物を使用することが、積層体の耐溶剤性を向上させる点で特に好ましい。なお、多官能イソシアネート化合物には、20質量%以内の範囲でモノイソシアネートが含有されていてもよい。上記した多官能イソシアネート化合物の中でも、ヘキサメチレンジイソシアネートから成る改変生成物を使用することが積層体の耐溶剤性を向上させる点で好ましく、その中でも特にイソシアヌレート基を有するものが好ましい。
【0056】
水性分散体への硬化剤の添加量は、ポリオレフィン樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の固形分合計量に対して0.1〜20重量%が好ましい。硬化剤の量が0.1重量%より少ないと、塗膜の耐水性、耐薬品性を改良する効果が見られず、また、20重量%より多いと、本発明の目的である、ポリエステルフィルムとヒートシール性樹脂の接着層としての働きが失われる。
【0057】
さらに、水性分散体には、必要に応じてレベリング剤、消泡剤、ワキ防止剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤等の各種薬剤や、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック等の顔料あるいは染料が添加されていてもよい。
【0058】
なお、水性分散体に硬化剤を添加した場合には、貯蔵中に少量の沈殿又は析出物を生じる場合がある。この沈殿又は析出物は、樹脂成分と硬化剤との部分的な反応によって生じるものと考えられるが、これらが生じた場合でも、使用前に濾過等によって取り除くことができるので差し支えない。
【0059】
(コーティング)
本発明においては、上述のようにして得た水性分散体混合物をポリエステルフィルムの片側または両側に塗布して乾燥することでポリオレフィン樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の混合物からなる層を形成する。
【0060】
前述の方法で得た水性分散体組成物は、被膜形成能に優れており、公知の成膜方法、例えばグラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法等により各種基材フィルム表面に均一にコーティングし、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥処理に供することにより、均一な樹脂被膜を基材フィルム表面に密着させて形成することができる。このときの加熱装置としては、通常の熱風循環型のオーブンや赤外線ヒーター等を使用すればよい。また、加熱温度や加熱時間としては、基材であるポリエステルフィルムの特性により適宜選択されるものであるが、経済性を考慮した場合、加熱温度としては、フィルム樹脂の融点以下の温度で、30℃以上とすることが好ましく、60℃以上がより好ましく、80℃以上が特に好ましい。加熱時間としては、1秒〜20分が好ましく、5秒〜15分がより好ましく、10秒〜10分が特に好ましい。
【0061】
また、本発明の積層体フィルムにおいて、ポリオレフィン樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の混合物からなる樹脂層の厚さとしては、その用途によって適宜選択されるものであるが、0.01〜10μmが好ましく、0.02〜5μmがより好ましく、0.05〜3μmが特に好ましい。上記樹脂層の厚さが0.01μm未満ではヒートシール性が悪化する。また、本発明で使用する水性分散体を用いると、10μm以下の厚さ均一性、ヒートシール性を含めた各種の優れた性能が発現するため、格別の理由がなければ10μmを超えて塗装する必要はない。なお、樹脂被膜の厚さを調節するためには、水性分散体に用いる装置やその使用条件を適宜選択することに加えて、目的とする樹脂被膜の厚さに適した濃度の水性分散体を使用することが好ましい。
【0062】
なお、未延伸ポリエステルフィルムに塗布する場合には、ポリオレフィン樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)の水性分散体混合物を、フィルムの少なくとも片側に塗布した後、フィルムの縦および/または横方向に延伸する工程を含むことが好ましい。延伸に先だって塗布を行うには、まず未延伸フィルムに塗布して乾燥した後、テンター式延伸機に供給してフィルムを走行方向と幅方向に同時に延伸(同時2軸延伸)し、熱処理するか、あるいは、多段熱ロール等を用いてフィルムの走行方向に延伸を行った後に塗布し、乾燥後、テンター式延伸機によって幅方向に延伸(逐次2軸延伸)してもよい。また、走行方向の延伸とテンターでの延伸を組み合わせることも可能である。
【0063】
【実施例】
以下に実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
なお、各種の特性については以下の方法によって測定または評価した。
(1)ポリオレフィン樹脂の構成
オルトジクロロベンゼン(d4)中、120℃にて1H−NMR分析(バリアン社製、300MHz)を行い求めた。
(2)ポリオレフィン樹脂の水性化後のエステル基残存量
ポリオレフィン樹脂の水性分散体を150℃で乾燥させた後、オルトジクロロベンゼン(d4)中、120℃にて1H−NMR分析(バリアン社製、300MHz)を行い、水性化前の(メタ)アクリル酸エステルのエステル基量を100%としてエステル基の残存率(%)を求めた。
(3)ポリエステル樹脂の構成
1H−NMR分析(バリアン社製,300MHz)より求めた。
(4)ポリエステル樹脂の酸価(イオン性基量)
ポリエステル樹脂0.5gを50mlの水/ジオキサン=10/1(体積比)に溶解し、クレゾールレッドを指示薬としてKOHで滴定を行い、中和に要したKOHの消費量より酸価を求めた。
(5)ポリオレフィン樹脂水性分散体の平均粒子径
日機装社製、マイクロトラック粒度分布計UPA150(MODEL No.9340、動的光散乱法)を用い、数平均粒子径を求めた。粒子径算出に用いる樹脂の屈折率は1.50とした。
(6)樹脂層の厚さ
厚み計(ユニオンツール社製、MICROFINE Σ)を用いて、基材PETフィルムの厚みを予め測定しておき、樹脂水性分散体を用いて基材上に樹脂層を形成してフィルム積層体とした後、このフィルム積層体の厚みを同様の方法で測定し、その差を樹脂層の厚さとした。
(7)ラビングテスト(耐水性、耐溶剤性評価)
フィルム積層体の樹脂層が形成されている面について、樹脂層表面を水およびイソプロパノールで濡らした布で数回擦り、その表面状態を目視により、次の基準で判定した。
○:変化なし、△:樹脂層表面がくもる、×:樹脂層が完全に溶解
(8)ブロッキングテスト
100mmx100mmに切り出したコートフィルム2枚を、コート面と非コート面が接触するように重ね、80mmx80mmのステンレス平板(重さ100g)に挟んで平らな面に置き、1kgのおもりをのせて20℃,65%RHの雰囲気下で24時間静置した後、おもりとステンレス平板を取り除き、フィルム面の密着状態を調べることでブロッキング性の評価とした。フィルム間に全く密着が見られないものを○、わずかでも密着が見られるものを×とした。
(9)押出ラミネートおよび接着強力
押出機を備えたラミネート装置を用いて、フィルム積層体の表面にLDPE(住友化学社製L211)を溶融押出して、30μmのLDPE層が形成されたラミネートフィルムを得た。
このラミネートフィルムから幅15mmの試験片を採取し、島津製作所社製引張試験機AGS−100B型を用い、Tピール法により試験片の端部からシーラント層と積層体フィルム層の界面を剥離して強力を測定し、幅1cmあたりの強度、N/cmで表した。測定は20℃、65%RHの雰囲気中、引張速度300mm/分で行った。
【0064】
参考例1
(ポリオレフィン樹脂水性分散体E−1の製造)
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gのポリオレフィン樹脂〔ボンダインHX-8210,住友化学工業社製〕、60.0gのイソプロパノール(以下、IPA)、4.5g(樹脂中の無水マレイン酸のカルボキシル基に対して1.8倍当量)のトリエチルアミン(以下、TEA)および175.5gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を140〜145℃に保ってさらに20分間撹拌した。その後、水浴につけて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一なポリオレフィン樹脂水性分散体E−1を得た。ポリオレフィン樹脂は水性媒体中に良好な状態で分散しており、数平均粒子径は0.072μmで、その分布は1山であった。なお、水性化後の樹脂組成を分析したところ、アクリル酸エチルの残存率は100%であり、エステルは加水分解されていなかった。
【0065】
参考例2
(ポリオレフィン樹脂水性分散体E−2の製造)
ポリオレフィン樹脂としてボンダインHX-8290(住友化学工業社製)を用い、水性分散体E−1の製造と同様の操作でポリオレフィン樹脂水性分散体E−2を得た。ポリオレフィン樹脂は水性媒体中に良好な状態で分散しており、数平均粒子径は0.068μmで、その分布は1山であった。なお、水性化後の樹脂組成を分析したところ、アクリル酸エチル単位の1%が加水分解されてアクリル酸に変化していた。すなわちエステル基残存率は99%であった。
【0066】
参考例3
(ポリオレフィン樹脂水性分散体E−3の製造)
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gのエチレン−アクリル酸共重合体樹脂〔プリマコール5980I、ダウケミカル社製〕、16.8g(樹脂中のアクリル酸のカルボキシル基に対して1.0倍当量)のTEA、および223.2gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を100〜105℃に保ってさらに60分間撹拌した。その後、水浴につけて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、微白濁の水性分散体E−3を得た。この際、フィルター上に樹脂は殆ど残っていなかった。ポリオレフィン樹脂の数平均粒子径は0.013μmで、その分布は1山であった。
【0067】
水性分散体E−1〜E−3の製造に使用した各ポリオレフィン樹脂の組成を表1に示した。なお、各水性分散体の樹脂濃度はいずれも20質量%となるよう調整した。
【0068】
【表1】
Figure 0004159806
【0069】
参考例4
(ポリエステル樹脂P−1の製造)
テレフタル酸25.10kg、イソフタル酸10.76kg、エチレングリコール9.38kg、ネオペンチルグリコール13.48kgからなる混合物をオートクレーブ中で、260℃で4時間加熱してエステル化反応を行った。次いで触媒として三酸化アンチモンを1質量%含有するエチレングリコール溶液を1.57kg添加し、系の温度を280℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに重縮合反応を続け、2時間後に系を窒素ガスで常圧にし、系の温度を下げ、270℃になったところでトリメリット酸817gを添加し、250℃で1時間撹拌して、解重合反応を行った。その後、窒素ガスで加圧状態にしておいてシート状に樹脂を払い出した。そしてこれを室温まで十分に冷却した後、クラッシャーで粉砕し、篩を用いて目開き1〜6mmの分画を採取し、粒状のポリエステル樹脂P−1を得た。
【0070】
参考例5
(ポリエステル樹脂P−2の製造)
ポリエステル樹脂P−1の製造と同様の操作を、モノマーの仕込み比を変えて行い、ポリエステル樹脂P−2を得た。
【0071】
得られたポリエステル樹脂の組成及び酸価を表2に示した。
【0072】
【表2】
Figure 0004159806
【0073】
参考例6
(ポリエステル樹脂水性分散体PES−1の製造)
ジャケット付きの密閉できる2リットル容ガラス容器を備えた撹拌機(特殊機化工業株式会社製、T.K.ロボミックス)を用いて、300gのポリエステル樹脂P−1、180gのイソプロピルアルコール、9.2gのトリエチルアミン及び511gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼(ホモディスパー)の回転速度を7,000rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、完全浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にジャケットに熱水を通して加熱した。そして系内温度を73〜75℃に保ってさらに30分間撹拌した。その後、ジャケット内に冷水を流し、回転速度を4,000rpmに下げて攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却し、乳白色の均一なポリエステル樹脂水性分散体を得た。その後、樹脂濃度を20質量%になるように調整し、水性分散体PES−1とした。
【0074】
参考例7
参考例6と同様の操作をポリエステル樹脂P−2を用いて行ない、樹脂濃度20質量%の水性分散体PES−2を得た。
【0075】
実施例1
オレフィン樹脂(A)水性分散体E−1とポリエステル樹脂(B)水性分散体PES−1を、樹脂成分の質量比(A)/(B)が80/20になるように混合した。この水性分散体混合物を二軸延伸PETフィルム(ユニチカ製エンブレット:厚み12μm)のコロナ処理面にメイヤーバーを用いてコーティングし、130℃に設定されたオーブン中で1分間加熱することにより、PETフィルム上に厚さ1μmの樹脂層を形成し、フィルム積層体を得た。ラビングテストの結果、水では変化が見られず、イソプロパノールでは樹脂層に若干の曇りが見られた。このフィルム積層体に押出ラミネーションを施し、積層体層と押出樹脂層間の剥離強力を測定したところ1.9N/cmであり、包装用フィルムとして用いるのに十分な強度であった。
【0076】
実施例2、3
実施例1と同様の操作を、ポリオレフィン樹脂(A)水性分散体E−1とポリエステル樹脂(B)水性分散体PES−1との混合比が、樹脂成分の質量比(A)/(B)で60/40(実施例2)、または40/60(実施例3)となるように行い、フィルム積層体、ラミネートフィルムを得て、各種評価に供した。
【0077】
実施例4、5
実施例1において、ポリオレフィン樹脂(A)水性分散体として、E−1の代わりにE−2を用い、樹脂成分の質量比(A)/(B)が80/20(実施例4)、または60/40(実施例5)となるように混合して同様の操作を行い、フィルム積層体、ラミネートフィルムを得て、各種評価に供した。
【0078】
実施例6
ポリオレフィン樹脂(A)水性分散体E−1とポリエステル樹脂(B)水性分散体PES−1を樹脂濃度の質量比(A)/(B)が60/40になるように混合したのち、メラミン樹脂(三井サイテック社製サイメル325)を(A)と(B)の樹脂合計量に対して1質量%加えた。この水性分散体混合物を実施例1と同様にPETフィルムにコーティングしフィルム積層体とした。ラビングテストの結果、水では全く変化が見られず、イソプロパノールでもわずかに表面に曇りが見られる程度であった。このフィルム積層体に押出ラミネーションを施し、積層体層と押出樹脂層間の剥離強力を測定したところ2.7N/cmであった。
【0079】
実施例7
ポリオレフィン樹脂(A)水性分散体E−2とポリエステル樹脂(B)水性分散体PES−1を樹脂濃度の質量比(A)/(B)が60/40になるように混合したのち、メラミン樹脂(三井サイテック社製サイメル325)を(A)と(B)の樹脂合計量に対して1質量%加えた。この水性分散体混合物を実施例1と同様にPETフィルムにコーティングしフィルム積層体とした。ラビングテストの結果、水では全く変化が見られず、イソプロパノールでもわずかに表面に曇りが見られる程度であった。このフィルム積層体に押出ラミネーションを施し、積層体層と押出樹脂層間の剥離強力を測定したところ3.7N/cmであった。
【0080】
実施例8〜10
実施例7と同様の操作を、ポリオレフィン樹脂とポリエステル樹脂の樹脂比率(A)/(B)およびメラミンの添加量を表3に記載したように変更して行った。結果を表3に示した。
【0081】
実施例11
実施例7において、硬化剤として、メラミン樹脂の代わりに、多官能イソシアネート化合物(住友バイエルウレタン社製、バイヒジュール3100、イソシアネート基含有率:約17質量%)を(A)と(B)の樹脂合計量に対して1質量%加え、同様の操作を行った。結果を表3に示した。
【0082】
比較例4
実施例7において、ポリオレフィン樹脂(A)水性分散体をE−3とした以外は、同様の操作をおこなって、フィルム積層体、ラミネートフィルムを得、各種評価に供した。結果を表3に示す。
【0083】
比較例5
実施例7において、ポリオレフィン樹脂(A)水性分散体をE−1とし、ポリエステル樹脂(B)水性分散体をPES−2とした以外は、同様の操作をおこなって、フィルム積層体、ラミネートフィルムを得、各種評価に供した。結果を表3に示す。
【0084】
実施例14
ポリエチレンテレフタレート樹脂(日本エステル製:固有粘度0.6)をTダイを備えた押出機(75mm径、L/Dが45の緩圧縮タイプ単軸スクリュー)を用いて、シンリンダー温度260℃、Tダイ温度280℃でシート状に押出し、表面温度10℃に調節された冷却ロール上に密着させて急冷し、厚み120μmの未延伸フィルムとした。続いて、未延伸フィルムをグラビアロール式コーターに導き、実施例7で用いたものと同じ水性分散体混合物を、乾燥後の樹脂層厚みが5.0μmになるようにコートし、80℃の熱風ドライヤー中で45秒間乾燥した。次に、フィルムをテンター式同時2軸延伸機に供給し、温度100℃で2秒間予熱した後、95℃で縦方向に3倍、横方向に3.5倍の倍率で延伸した。尚、横方向弛緩率は5%であった。得られたフィルム積層体の樹脂層厚みは0.5μmであった。このフィルムのブロッキングテスト、ラビングテスト、押出ラミネートフィルムの剥離強力の評価結果を表3に示した。
【0085】
比較例1
ポリオレフィン樹脂水性分散体としてE−2を使用し、ポリエステル樹脂水性分散体を用いずに実施例1と同様の操作を行なった。ラビングテストの結果、イソプロパノールでは樹脂層が完全に溶解した。ラミネートフィルムの剥離強力は1.0N/cmであり、包装フィルムとしてはやや不十分であった。
【0086】
比較例2〜3
実施例7と同様の操作を、ポリオレフィン樹脂とポリエステル樹脂の樹脂比率(A)/(B)およびメラミンの量を表3に記載したように変更して行った。結果を表3に示した。
【0087】
【表3】
Figure 0004159806
【0088】
実施例1〜11では、耐水、耐溶剤性が良好で、ブロッキングも起こらず、ラミネート強力に優れたフィルム積層体が得られた。特に、硬化剤を添加した実施例8〜11では剥離強力がさらに向上した。比較例4では、アクリル酸成分量の高いポリオレフィン樹脂を用い、また、比較例5では、酸価の高いポリエステル樹脂を用いたが、いずれも、やや性能は劣るが、実用には問題ないレベルであった。実施例14は実施例7と同様の操作を量産用の製造機を用いて行った例であるが、特に問題なく操業でき、各種性能にも問題は生じなかった。
【0089】
これに対し、比較例1は、ポリエステル樹脂を用いなかった例であるが、フィルム積層体はブロッキングを起こし、耐溶剤性は悪く、またラミネートフィルムとしての剥離強力も不十分であった。
比較例2は、ポリエステル樹脂を樹脂の5質量%用いたが、硬化剤を使用しても性能は不十分であった。
比較例3は、ポリオレフィン樹脂を用いなかった例であるが、ラミネートフィルムとしたときの剥離強力が低いものとなった。
【0090】
【発明の効果】
本発明のフィルム積層体は、ポリエチレン等のヒートシール性樹脂に対する接着性に優れ、接着剤を用いることなく押出ラミネーションを行なうことで、実用上十分なラミネート強力を得ることが出来る。また、硬化剤を用いることによって、耐水性、耐薬品性をさらに改良することができる。

Claims (4)

  1. 二軸延伸ポリエステルフィルムの少なくとも片側に、ポリオレフィン樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)の混合物であって、その質量比が90/10〜20/80からなる樹脂層が形成されているフィルム積層体であって、
    ポリオレフィン樹脂(A)が、不飽和カルボン酸またはその無水物( A1 )、オレフィン化合物( A2 )、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル( A3 )とから構成され、 (A1) がこの樹脂中に0.01質量%以上、5質量%未満含有され、かつ、 (A2) (A3) の質量比が (A2) (A3) =55/45〜99/1の関係を満たす樹脂であり、
    ポリエステル樹脂(B)が、20〜700(当量/10 6 g)の陰イオン性基を含有するものであるフィルム積層体。
  2. ポリオレフィン樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)の合計質量に対して、0.1〜20質量%の多官能イソシアネート化合物またはメラミン化合物を含むことを特徴とする、請求項1記載のフィルム積層体。
  3. 不飽和カルボン酸またはその無水物(A1)、オレフィン化合物(A2)、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル(A3)とから構成され (A1) がこの樹脂中に0.01質量%以上、5質量%未満含有され、かつ、 (A2) (A3) の質量比が (A2) (A3) =55/45〜99/1の関係を満たすポリオレフィン樹脂(A)の水性分散体、および陰イオン性基が20〜700(当量/106g)のポリエステル樹脂(B)の水性分散体を、それぞれの水性分散体中の樹脂分の質量比が(A)/(B)=90/10〜20/80となるように混合してなる水性分散体を、ポリエステルフィルムの少なくとも片側に塗布した後乾燥し、塗膜を形成することを特徴とするフィルム積層体の製造方法。
  4. 請求項3記載のフィルム積層体の製造方法において、ポリオレフィン樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)の各水性分散体の混合後、(A)と(B)の樹脂合計質量に対し固形分として0.1〜20質量%の多官能イソシアネート化合物またはメラミン化合物を添加する工程を含む製造方法。
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