JP4155466B2 - 圧電セラミックス焼結体の評価方法、積層型圧電セラミックス素子の評価方法及び積層型圧電セラミックス素子の評価装置 - Google Patents
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Description
特許文献1は、例えば印刷ヘッドに用いられる圧電アクチュエータについて、複数の変位素子を支持基板に接着し、積層圧電体素子の電極部と支持基板の配線パターンとを導電性接着剤等で電気的に接続し、個々の圧電素子に一定の電圧を印加し、各変位素子の変位量を測定している。
特許文献1に記載の評価方法では、圧電アクチュエータを支持部材に接合してから圧電アクチュエータの不良の判別を行うため、製造工数が増えると共に、不良が発生した時には支持部材と、支持部材に接合する工程が無駄になり、コスト上昇の大きな要因となっていた。そこで特許文献2は、支持部材に接合しなくても、簡便な方法で正確な測定の可能な圧電アクチュエータの評価方法及び測定装置を提供している。特許文献2は、振動板上に複数の変位素子が設けられた圧電アクチュエータを、複数の貫通孔又は溝を備えた保持板上に載置して変位素子の外周部を個々に拘束し、しかる後に変位素子に一定の電圧を印加して発生した変位量を測定することを特徴としている。
そこで本発明は、所定の電圧を加えることなく積層型圧電セラミックス素子の変位量を評価することのできる評価方法を提供することを目的とする。また本発明は、所定の電圧を加えることなく積層型圧電セラミックス素子の変位量を評価することのできる評価装置を提供することを目的とする。
また本発明は、積層型圧電セラミックス素子が所定の変位量を有するか否か評価することができるが、他の特性、例えば、磁器密度、誘電率、駆動信頼性を評価する指標とすることができる。
図4は、本発明の評価対象である積層型圧電セラミックス素子1の構成例を示す断面図である。なお、図4はあくまで一例を示すものであって、本発明の評価対象が図4の積層型圧電セラミックス素子1に限定されないことは言うまでもない。この積層型圧電セラミックス素子1は、複数の圧電セラミックス層11と複数の内部電極12とを交互に積層した積層体10を備えている。圧電セラミックス層11の一層当たりの厚さは例えば1〜100μm程度が好ましいが、内部電極12に挟まれた圧電セラミックス層11よりも上下両端の圧電セラミックス層11(11a,11c)の厚さを厚く形成する場合がある。また、圧電セラミックス層11の積層数は目標とする変位量に応じて決定される。
また、端子電極21、22は、例えばAu、Ag、Cuなどの金属をスパッタリングすることにより形成されていてもよく、端子電極用ペーストを焼き付けることにより形成されていてもよい。端子電極用ペーストは、例えば、導電材料と、ガラスフリットと、ビヒクルとを含有し、導電材料は、例えば、Au、Ag、Cu、Ni、Pd及びPtからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むものが好ましい。端子電極21、22の厚さは用途等に応じて適宜決定されるが、通常、10〜50μmである。
なお、副成分の出発原料は、後述する仮焼成(ステップS103)の前に添加してもよいが、仮焼成後に添加するようにしてもよい。但し、仮焼成前に添加した方がより均質な圧電セラミックスを作製することができるので好ましい。仮焼成後に添加する場合には、副成分の出発原料には酸化物を用いることが好ましい。
次に、この仮焼成粉に有機バインダを加えて圧電セラミックス層用ペーストを作製する(ステップS105)。具体的には以下の通りである。はじめに、例えばボールミル等を用いて、湿式粉砕によりスラリを得る。このとき、スラリの溶媒として、水もしくはエタノールなどのアルコール、または水とエタノールとの混合溶媒を用いることができる。湿式粉砕は、仮焼成粉の平均粒径が0.5〜2.0μm程度となるまで行うことが好ましい。
さらに、端子電極用ペーストも内部電極層用ペーストと同様にして作製する(ステップS107)。
以上では圧電セラミックス層用ペースト、内部電極層用ペースト及び端子電極用ペーストを順番に作製しているが、並行して作製してもよいし、逆の順番でもよいことは言うまでもない。
印刷法を用いグリーンチップを作製する場合は、圧電セラミックス層用ペーストを、ポリエチレンテレフタレート等の基板上に所定厚さで複数回印刷して、図4に示すように、グリーン状態の外側圧電セラミックス層11aを形成する。次に、このグリーン状態の外側圧電セラミックス層11aの上に、内部電極層用ペーストを所定パターンで印刷して、グリーン状態の内部電極層(内部電極層前駆体)12aを形成する。次に、このグリーン状態の内部電極層12aの上に、前記同様に圧電セラミックス層用ペーストを所定厚さで複数回印刷して、グリーン状態の圧電セラミックス層(圧電セラミックス層前駆体)11bを形成する。次に、このグリーン状態の圧電セラミックス層11bの上に、内部電極層用ペーストを所定パターンで印刷して、グリーン状態の内部電極層12bを形成する。グリーン状態の内部電極層12a、12b…は、対向して相異なる端部表面に露出するように形成する。以上の作業を所定数繰り返し、最後に、グリーン状態の内部電極12の上に、前記同様に圧電セラミックス層用ペーストを所定厚さで複数回印刷して、グリーン状態の外側圧電セラミックス層11cを形成する。その後、加熱しながら加圧、圧着し、所定形状に切断してグリーンチップ(積層体)とする。
以上では、印刷法によりグリーンチップを作製する例を説明したが、シート成形法を用いてグリーンチップを作製することもできる。
脱バインダ処理において、内部電極層前駆体中の導電材料の酸化を考慮する必要があり、還元性雰囲気下での加熱を採用すべきである。脱バインダ処理は、300〜650℃の温度範囲で行うことが好ましい。脱バインダ処理の温度が300℃未満では脱バインダを円滑に行うことができず、650℃を超えても温度に見合う脱バインダの効果を得ることができずエネルギーの浪費になる。また、脱バインダ処理の時間は、温度及び雰囲気によって定める必要があるが、0.5〜50時間の範囲で選定することができる。さらに、脱バインダ処理は、焼成と別個に独立して行うことができるし、焼成と連続的に行うことができる。焼成と連続的に行う場合には、焼成の昇温過程で脱バインダ処理を実行すればよい。なお、還元性雰囲気中での脱バインダ処理のために、有機バインダに由来する炭素(C)がグリーンチップに残留する。
以上により、図4に示した積層型圧電セラミックス素子1が得られる。なお、以上では変位量評価を脱バインダ後、焼成後の2回行っているが、一方を省略することができる。すなわち本実施の形態における変位量の評価は、脱バインダ後のみ行ってもよいし、焼成後のみ行ってもよい。また本実施の形態における変位量の評価は、脱バインダ後の変位量の評価は、脱バインダ後及び焼成後に行ってもよい。
図6は変位量評価装置100の構成を示すブロック図である。変位量評価装置100は、脱バインダがなされたグリーンチップ(積層体)105を搬送する第1搬送路106に沿って設けてある。なお、第1搬送路106は、良品と評価されたグリーンチップ(積層体)105を、紙面に垂直な方向に搬送するものとする。第1搬送路106と平行に第2搬送路107が配設されている。第2搬送路107は、不良品と評価されたグリーンチップ(積層体)105を搬送するものである。
変位量評価装置100は、アクチュエータ104を備えており、このアクチュエータ104は、不良品と評価されたグリーンチップ(積層体)105を第1搬送路106から第2搬送路107へ移送して選別する。
(1)光源101の制御
コントローラ103は、グリーンチップ(積層体)105が所定の位置に搬送された際に光源101から検査光を照射する。グリーンチップ(積層体)105が所定の位置に搬送されたか否かは、別途センサを設けてそのセンサからの情報に基づいて判断することができる。また、時間的にグリーンチップ(積層体)105が所定の位置に搬送されたか否か判断することができる。
(2)反射率の算出
コントローラ103は、受光素子102で受光した反射光と、光源101からの検査光に基づいて反射率を算出する。つまり、検査光の光量(C1)と反射光の光量(C2)から、コントローラ103は、反射率(C2/C1)を求めることができる。
(3)変位量の評価
コントローラ103は、基準反射率(R1)に関する情報を有しており、算出された反射率(R2)と基準反射率(R1)とを比較する。コントローラ103は、算出された反射率(R2)が基準反射率(R1)以上である場合には、当該グリーンチップ(積層体)105を良品と評価する。また、コントローラ103は、算出された反射率(R2)が脱脂後においては脱脂後の基準反射率(R1)未満である場合に、また焼成後においては焼成後の基準反射率(R1)以上である場合に当該グリーンチップ(積層体)105を不良品と評価する。
コントローラ103は、変位量の評価結果に基づいて、アクチュエータ104の作動を制御する。つまり、グリーンチップ(積層体)105を良品と評価した場合には、コントローラ103は、アクチュエータ104を動作させない。したがって、グリーンチップ(積層体)105は、第1搬送路106にて次工程に搬送される。グリーンチップ(積層体)105を不良品と評価した場合には、コントローラ103は、アクチュエータ104を伸縮動作させることにより、グリーンチップ(積層体)105を第2搬送路107に移送する。第2搬送路107にて搬送されるグリーンチップ(積層体)105は、廃却処分される。
また、以上の変位量評価装置100では、変位量の評価を光の反射率に基づいて行っているが、反射光を用いた他の評価基準を適用することもできる。例えば、白度等の色度に基づいて変位量の評価を行うこともできる。白度のスケールは、国際標準にしたがって、マグネシウムリボンの燃焼によって生ずる白色煙(酸化マグネシウムの極微粉)を付着させた面の白さを100とし、入射光のない暗黒状体を0として、その間を100等分したものである。また、色度以外にもJIS Z 8730(色差表示方法)に基づくL*a*b*表色系色度図(色相と彩度)のように反射光を観察することにより、積層型圧電セラミックス素子1の変位量を評価することもできる。
<試料作製方法>
予め作製しておいたPZT系セラミックス粉末(組成:PbTiO3;40mol%、PbZrO3;45mol%、Pb(Zn1/3Nb2/3)O3;15mol%、比表面積:2.0m2/g)にバインダ、溶剤等を混合してスラリ化し、ドクターブレード法によりグリーンシートを形成した。このグリーンシート上に、SUS400メッシュを用いてCu粒子を含む電極ペースト組成物をスクリーン印刷し、100℃で10分間乾燥した。次に、電極ペーストを印刷したグリーンシートと電極ペーストが印刷されていないグリーンシートを交互に積み重ねた。この時、電極ペースト塗布層が交互に対称側に突出するように積み重ね、電極ペースト層に挟まれたPZT系セラミックス層が100層になるように積層した。この積層体をホットプレスで加工後、所定形状に切断し還元性雰囲気中で脱バインダを行った。
実験例1:水蒸気量15.5mol%、水素濃度1ppmの還元性雰囲気中で550℃20時間保持
実験例2:水蒸気量15.5mol%、水素濃度1ppmの還元性雰囲気中で550℃10時間保持
実験例3:水蒸気量15.5mol%、水素濃度1ppmの還元性雰囲気中で550℃20時間保持
実験例4:水蒸気量15.5mol%、水素濃度1ppmの還元性雰囲気中で550℃15時間保持
表1及び図2に示すように、脱バインダ後の成形体に対する光の反射率と変位量には相関があることがわかる。表1及び図2に示す結果より、本発明では脱バインダ後の成形体における反射率が40%以上の場合には、変位量に関して積層型圧電セラミックス素子を良品と評価することができる。また、表1及び図3に示すように、焼成後の焼結体に対する光の反射率と変位量には相関があることがわかる。表1及び図3に示す結果より、本発明では焼結体における反射率が24%以下の場合には、変位量に関して積層型圧電セラミックス素子を良品と評価することができる。
JIS Z 8722準拠
光学条件:垂直照明−45°方向受光(積層型圧電セラミックス素子の外部端子電極面に照射)
光源:ハロゲンランプ
受光素子:フォトダイオード
測定方法:炭素・硫黄分析装置(堀場製作所 EMIA−520)
検量線を、炭素0wt%としてタングステン粉末(助燃材)1.7g、標準試料として日本鉄鋼協会製標準試料050−6(炭素0.38wt%)を用いて作製した。
外部端子電極面に銀ペーストを塗布焼結させ、分極電圧2.0kV/mmで分極した積層体を100V印加、周波数0.1Hzで駆動させた時の変動長さを測定した。
Claims (7)
- セラミックス粒子と有機バインダとを含む成形体から、前記有機バインダを除去する脱バインダ処理を行った後に焼成して得られる圧電セラミックス焼結体が所定の変位量を有するか否か評価する方法であって、
前記脱バインダ処理がなされた前記成形体又は前記圧電セラミックス焼結体に光を照射するステップと、
前記成形体又は前記圧電セラミックス焼結体に照射された前記光の反射率を測定するステップと、
前記成形体又は前記圧電セラミックス焼結体について、予め定められた基準反射率と測定された前記反射率を比較するステップと、
を備えることを特徴とする圧電セラミックス焼結体の評価方法。 - 前記基準反射率は、前記所定の変位量を有する圧電セラミックス焼結体に基づいて定められることを特徴とする請求項1に記載の圧電セラミックス焼結体の評価方法。
- 圧電セラミックス層前駆体と内部電極前駆体とが積層された積層体を焼成して得られる積層型圧電セラミックス素子が所定の変位量を有するか否か評価する方法であって、
前記内部電極前駆体に含まれる有機バインダの除去処理がなされた前記積層体又は前記積層型圧電セラミックス素子に検査光を照射するステップと、
前記積層体又は前記積層型圧電セラミックス素子からの前記検査光の反射光を観察するステップと、
を備え、
前記検査光の反射光の観察は、前記反射光の反射率と予め定められた基準反射率とを比較するものであることを特徴とする積層型圧電セラミックス素子の評価方法。 - 前記内部電極前駆体の導電材料がCuであることを特徴とする請求項3に記載の積層型圧電セラミックス素子の評価方法。
- 前記有機バインダの除去及び/又は焼成が還元性雰囲気で行われることを特徴とする請求項3又は4に記載の積層型圧電セラミックス素子の評価方法。
- 圧電セラミックス層前駆体と内部電極前駆体とが積層された積層体を焼成して得られる積層型圧電セラミックス素子の評価装置であって、
前記内部電極前駆体に含まれる有機バインダの除去処理がなされた前記積層体又は前記積層型圧電セラミックス素子に検査光を照射する光源と、
前記積層体又は前記積層型圧電セラミックス素子からの反射光を受光する受光素子と、
前記検査光に対する前記反射光の反射率を求める計測手段と、
前記反射率と予め定められた基準反射率とを比較することにより前記積層型圧電セラミックス素子の変位量を評価する評価手段と、
を備えることを特徴とする積層型圧電セラミックス素子の評価装置。 - 前記評価手段による評価結果に基づいて前記積層体又は前記積層型圧電セラミックス素子を選別する選別手段を備えることを特徴とする請求項6に記載の積層型圧電セラミックス素子の評価装置。
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