JP4153189B2 - 工具、工具ホルダおよび工作機械 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、工作機械の主軸に装着されるワークを加工する工具、エンドミル等の加工具を保持する工具ホルダ、この工具または工具ホルダが主軸に着脱される工作機械に関する。
【0002】
【従来の技術】
たとえば、マシニングセンタ等の主軸を備えた工作機械では、主軸の最大回転数(単位時間当たり)は主軸を回転自在に保持するメインベアリングの構造や潤滑方式によって決定されるため、この最大回転数より増速した回転数で工具を回転させたい場合には、たとえば、増速装置を用いている。
増速装置としては、たとえば、工具を保持し主軸に着脱可能となっており、主軸の回転力を遊星歯車機構等の歯車機構によって増速して工具の回転数を増速させるものが知られている。
たとえば、マシニングセンタにおいて、一時的に主軸の最大回転数よりも工具の回転数を増速させたい場合には、上記のような増速装置を主軸に対して通常の工具と同様に装着し、工具を高い回転数で回転させている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のような歯車機構による増速装置によって工具を主軸の回転数よりも増速する場合に、数万回転〜数十万回転の超高速回転させると、増速装置の発熱が増大し、工具の熱膨張のために加工精度に影響することがある。また、数万回転〜数十万回転の超高速回転では、増速装置からの騒音も増大する。さらに、増速装置は、たとえば、数万回転〜数十万回転の回転に耐えうる信頼性の高い構造にするため、比較的製造コストが高騰するという不利益も存在した。
また、歯車機構による増速装置の場合、歯車や軸受の潤滑が必要であり、潤滑油の供給経路および排出経路を増速装置内に設けるため、装置が大型化し、自動工具交換装置による自動交換が難しいという不利益も存在した。
また、他の増速方法として、工具を駆動するモータに高周波モータを使用し、この高周波モータに特別に用意された制御装置から駆動電流を供給し、工具を高速回転させる方法が採られる場合がある。しかしながら、この方法では、電力を外部から供給するケーブルが存在するため、工具の自動交換を通常の工具と同様に行うことが難しく、また、設備コストが比較的高いという不利益が存在する。
【0004】
本発明は、上述の問題に鑑みて成されたものであって、その目的は、通常の工具と同様に工作機械の主軸に自動工具交換装置によって着脱され、外部の電源等と結線することなく駆動可能で、外部から電力を供給することなく工作機械の主軸とは異なる回転数で工具を回転可能な工具、工具ホルダおよびこれらを備えた工作機械を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の工具は、工作機械の主軸に着脱可能に装着される工具であって、ワークを加工する加工具と、前記加工具と連結され当該加工具を回転させる誘導電動機と、前記工作機械の主軸から回転力が伝達され、前記電動機を駆動させる電力を発生する同期発電機と、前記主軸に着脱可能に装着され、当該主軸の回転力を前記発電機に伝達する装着部と、前記電動機および前記発電機を保持するとともに、前記装着部を回転自在に保持し、かつ、前記工作機械の非回転部分に係合し、回転が規制されるケースとを有し、前記装着部は、前記主軸の先端部に形成されたテーパスリーブに装着又は脱着可能なテーパシャンク部と、前記工作機械の自動工具交換装置により把持可能な把持部と、前記主軸の軸心に沿う一断面において前記把持部よりも径が小さい軸部とを、前記主軸の軸心方向に前記主軸側から前記加工具側へ順に有し、前記発電機は、入力軸と、前記入力軸の回転によって発電する発電機本体とを有し、前記入力軸は、前記発電機本体から前記主軸の軸心方向に前記軸部側へ突出して前記軸部の中心穴に挿入され、前記電動機は、前記発電機本体から前記主軸の軸心方向へ離間して配置され、ケーブルを介して前記発電機本体から供給される電力によって回転駆動される電動機本体と、前記電動機本体から前記主軸の軸心方向とは異なる方向に突出し、前記電動機本体の回転に応じて回転する出力軸とを有し、当該出力軸には当該出力軸に同軸状に前記加工具を保持する工具装着部材が設けられ、前記ケースは、前記軸部を軸受を介して回転自在に保持する第1の部材と、前記発電機本体及び前記電動機本体を保持する第2の部材とを有し、前記主軸の軸心方向に対する前記出力軸の傾斜角度が一定の向きでのみ前記電動機本体を保持可能であり、前記発電機本体全体を内蔵し、前記電動機本体をケース外部に露出させて保持し、前記発電機の極数と前記電動機の極数との比により設定される増速比により、前記主軸の回転を増速して前記加工具に伝達する。
【0006】
本発明の工具は、前記電動機および前記加工具を複数備えている構成とすることも可能である。
【0007】
本発明の工具ホルダは、ワークを加工する加工具を保持可能で、工作機械本体の主軸に着脱可能に装着される工具ホルダであって、前記加工具を回転自在に保持する工具保持部と、前記工具保持部を回転させる誘導電動機と、前記工作機械の主軸から回転力が伝達され、前記電動機を駆動させる電力を発生する同期発電機と、前記主軸に着脱可能に装着され、当該主軸の回転力を前記発電機に伝達する装着部と、前記電動機および前記発電機を保持するとともに、前記装着部を回転自在に保持し、かつ、前記工作機械の非回転部分に係合し、回転が規制されるケースとを有し、前記装着部は、前記主軸の先端部に形成されたテーパスリーブに装着又は脱着可能なテーパシャンク部と、前記工作機械の自動工具交換装置により把持可能な把持部と、前記主軸の軸心に沿う一断面において前記把持部よりも径が小さい軸部とを、前記主軸の軸心方向に前記主軸側から前記加工具側へ順に有し、前記発電機は、入力軸と、前記入力軸の回転によって発電する発電機本体とを有し、前記入力軸は、前記発電機本体から前記主軸の軸心方向に前記軸部側へ突出して前記軸部の中心穴に挿入され、前記電動機は、前記発電機本体から前記主軸の軸心方向へ離間して配置され、ケーブルを介して前記発電機本体から供給される電力によって回転駆動される電動機本体と、前記電動機本体から前記主軸の軸心方向とは異なる方向に突出し、前記電動機本体の回転に応じて回転する出力軸とを有し、前記工具保持部は、前記出力軸に設けられ、前記出力軸に同軸状に前記加工具を保持する工具装着部材を有し、前記ケースは、前記軸部を軸受を介して回転自在に保持する第1の部材と、前記発電機本体及び前記電動機本体を保持する第2の部材とを有し、前記主軸の軸心方向に対する前記出力軸の傾斜角度が一定の向きでのみ前記電動機本体を保持可能であり、前記発電機本体全体を内蔵し、前記電動機本体をケース外部に露出させて保持し、前記発電機の極数と前記電動機の極数との比により設定される増速比により、前記主軸の回転を増速して前記加工具に伝達する。
【0008】
本発明の工作機械は、主軸と、前記主軸を駆動する駆動手段と、前記主軸とワークとの相対位置を変更する少なくとも一の制御軸とを備える工作機械本体と、前記駆動手段および前記制御軸を加工プログラムにしたがって駆動制御する制御装置と、複数種の工具を備え、前記主軸に対して当該工具を着脱する自動工具交換装置とを有し、前記複数種の工具には、ワークを加工する加工具と、前記加工具と連結され当該加工具を回転させる誘導電動機と、前記主軸から回転力が伝達され、前記電動機を駆動させる電力を発生する同期発電機と、前記主軸に着脱可能に装着され、当該主軸の回転力を前記発電機に伝達する装着部と、前記電動機および前記発電機を保持するとともに、前記装着部を回転自在に保持し、かつ、前記工作機械の非回転部分に係合し、回転が規制されるケースとを備えた特定の種類の工具が含まれ、前記装着部は、前記主軸の先端部に形成されたテーパスリーブに装着又は脱着可能なテーパシャンク部と、前記工作機械の自動工具交換装置により把持可能な把持部と、前記主軸の軸心に沿う一断面において前記把持部よりも径が小さい軸部とを、前記主軸の軸心方向に前記主軸側から前記加工具側へ順に有し、前記発電機は、入力軸と、前記入力軸の回転によって発電する発電機本体とを有し、前記入力軸は、前記発電機本体から前記主軸の軸心方向に前記軸部側へ突出して前記軸部の中心穴に挿入され、前記電動機は、前記発電機本体から前記主軸の軸心方向へ離間して配置され、ケーブルを介して前記発電機本体から供給される電力によって回転駆動される電動機本体と、前記電動機本体から前記主軸の軸心方向とは異なる方向に突出し、前記電動機本体の回転に応じて回転する出力軸とを有し、当該出力軸には当該出力軸に同軸状に前記加工具を保持する工具装着部材が設けられ、前記ケースは、前記軸部を軸受を介して回転自在に保持する第1の部材と、前記発電機本体及び前記電動機本体を保持する第2の部材とを有し、前記主軸の軸心方向に対する前記出力軸の傾斜角度が一定の向きでのみ前記電動機本体を保持可能であり、前記発電機本体全体を内蔵し、前記電動機本体をケース外部に露出させて保持し、前記発電機の極数と前記電動機の極数との比により設定される増速比により、前記主軸の回転を増速して前記加工具に伝達する。
【0009】
好適には、前記複数種の工具には、複数の前記特定の種類の工具が含まれる。
【0010】
さらに好適には、前記複数の特定の種類の工具には、前記電動機および前記加工具を複数備えている前記特定の種類の工具が含まれる。
【0011】
本発明では、主軸に着脱される工具に発電機および電動機を備え、主軸の回転力を利用して発電し、発電した電力で電動機を駆動して加工具を回転させる。これにより、外部の電源等と結線することなく工具の駆動が可能となり、自動工具交換も可能となる。
さらに、電動機の姿勢や数が異なる種々の工具をあらかじめ自動工具交換装置に用意しておくことにより、様々な加工に対応することが可能となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明が適用される工作機械の一例としてのマシニングセンタの構成図である。なお、マシニングセンタはいわゆる複合加工の可能な数値制御工作機械である。
マシニングセンタ1は、工作機械本体2と、数値制御装置(NC装置)250と、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)150とを備えている。
図1において、工作機械本体2は、門型のコラム38の各軸によって両端部を移動可能に支持されたクロスレール37を備えており、このクロスレール37上を移動可能に支持されたサドル44を介してラム45が鉛直方向(Z軸方向)に移動可能に設けられている。
【0013】
サドル44には、水平方向にクロスレール37内を通じて図示しないねじ部が形成されており、これに外周にねじ部が形成された送り軸41が螺合している。送り軸41の一端部には、サーボモータ19が接続されており、送り軸41はサーボモータ19によって回転駆動される。
送り軸41の回転駆動によって、サドル44はY軸方向に移動可能となり、これによってラム45のY軸方向の移動および位置決めが行われる。
【0014】
さらに、サドル44には、鉛直方向に図示しないねじ部が形成されており、これに外周にねじ部が形成された送り軸42がねじ込まれている。送り軸42の端部には、サーボモータ20が接続されている。
サーボモータ20によって送り軸42が回転駆動され、これによりサドル44に移動可能に設けられたラム45のZ軸方向の移動および位置決めが行われる。
【0015】
ラム45内には、主軸モータ31が内蔵され、この主軸モータ31はラム45に回転自在に保持された主軸46を回転駆動する。
主軸46の先端には、エンドミルなどの加工具とこの加工具を保持する工具ホルダからなる工具Tが装着され、主軸46の回転によって工具Tが駆動される。ラム45の下方には、加工すべきワークが固定されるテーブル35がX軸方向に移動可能に設けられている。テーブル35には、図示しないねじ部が形成されており、これにX軸方向に沿って設けられた図示しない送り軸が螺合しており、この図示しない送り軸にサーボモータ18が接続されている。
テーブル35は、サーボモータ18の回転駆動によってX軸方向の移動および位置決めが行われる。
【0016】
また、2本の門型コラム38には、図示しないねじ部がそれぞれ形成されており、これに螺合する送り軸32aをクロスレール昇降用サーボモータ32によって回転駆動することによりクロスレール37は昇降する。
自動工具交換装置(ATC)39は、主軸46に対して各種工具Tを自動交換する。
この自動工具交換装置39は、たとえば、図示しないマガジンにエンドミル、ドリル等の各種加工具を工具ホルダによって保持した工具Tを収納しており、主軸46に装着された工具Tを図示しない工具交換アームによってマガジンに収納し、必要な工具Tを主軸46に工具交換アームによって装着する。
【0017】
NC装置250は、上記のサーボモータ18,19,20およびクロスレール昇降用サーボモータ32の駆動制御を行う。
NC装置250は、具体的には、予め加工プログラムで規定されたワークの加工手順に従って、サーボモータ18,19,20による工具Tとワークとの間の位置および速度制御を行う。また、NC装置250は、加工プログラムにおいて、たとえば、Sコードで規定された主軸モータ31の回転数(単位時間当りの回転数)を解読することにより主軸46の回転数の制御を行う。
さらに、NC装置250は、NCプログラムにおいて、たとえば、Mコードで規定された工具Tの交換動作を解読することにより、各種工具Tの自動交換を実行する。
【0018】
PLC150は、NC装置250および操作パネル200と接続されている。このPLC150は、予め決められたシーケンスプログラムに従って、マシニングセンタ1の起動、停止を行ったり、操作パネル200の表示部を点灯、消灯する信号を出力する等の各種シーケンス制御を行う。
また、PLC150は、主軸モータ31を駆動制御する主軸モータドライバ157と接続されている。PLC150は、主軸モータ31の起動、停止および速度制御を行うための制御指令を主軸モータドライバ157に出力する。なお、PLC150は各種シーケンス制御を行う。
【0019】
図2は、本発明の一実施形態に係る工具の構成を示す断面図である。
図2において、工具60は、刃具100と、この刃具100を保持する工具ホルダ61とから構成される。なお、刃具100は本発明の加工具の一実施態様である。また、本実施形態に係る工具60は、上記した通常の工具Tと同様に自動工具交換装置39によって主軸46に着脱される。
【0020】
工具ホルダ61は、装着部62と、ケース部材66,67および68からなるケース65と、発電機70と、電動機80と、工具保持部90と、回り止め部材85とを備えている。
【0021】
装着部62は、把持される把持部62aと、上記の主軸46の先端部に形成されたテーパスリーブ46aに装着されるテーパシャンク部62bと、このテーパシャンク部62bの先端部に形成されたプルスタッド62cと、ケース部材66に回転自在に保持される軸部62dとを備えている。
【0022】
装着部62の把持部62aは、上記した自動工具交換装置39の工具交換アームによって、自動工具交換装置39のマガジンから主軸46に装着される際および主軸46から自動工具交換装置39のマガジンへ搬送される際に把持される。
【0023】
装着部62のテーパシャンク部62bは、主軸46のテーパスリーブ46aに装着されることによって、中心軸が主軸46の中心軸と同心になる。
【0024】
装着部62のプルスタッド62cは、装着部62が主軸46のテーパスリーブ46aに装着されると、主軸46に内蔵された図示しないクランプ機構のコレットによってクランプされる。なお、主軸46に内蔵されたクランプ機構は周知技術であるので詳細については省略する。
【0025】
装着部62の軸部62dは、ケース部材66の内周に複数の軸受72を介して回転自在に保持されている。軸受72には、密封玉軸受が用いられる。
【0026】
ケース部材67の内周には、保持部材73を介して発電機70および電動機80が保持されている。
発電機70は、入力軸71が装着部62の軸部62dと同心に連結されており、この発電機70には主軸46の回転力が装着部62を介して伝達される。
発電機70には、たとえば、三相同期発電機が用いられる。
【0027】
電動機80には、たとえば、三相誘導電動機を用いることができる。この電動機80は、図3に示すように、導電ケーブルWx,Wy,Wzによって、発電機70と接続されており、発電機70で発電された電力が導電ケーブルWx,Wy,Wzを通じて供給され、駆動される。
【0028】
工具保持部90は、回転軸91と、この回転軸91と電動機80の回転軸81とを連結するカップリング93と、回転軸91の先端部に固定された工具装着部材95とを有する。
【0029】
回転軸91は、ケース部材68の内周に複数の軸受92を介して回転自在に保持されている。軸受92には、密封玉軸受が用いられる。
回転軸91の先端側は、ケース部材68に抜け止め部材94によって抜け止めされている。
【0030】
刃具100は、工具装着部材95に保持されており、この刃具100はワークを加工する。なお、工具装着部材95は本発明の工具保持部の一実施態様である。刃具100は、具体的には、ドリル、エンドミル等の各種の刃具である。
【0031】
ケース部材66,67および68は、たとえば、ボルト等の締結手段によって連結されており、これらケース部材66,67および68がケース65を構成している。
ケース部材66の外周には、回り止め部材85が設けられている。
回り止め部材85は、装着部62が主軸46のテーパスリーブ46aに装着されることにより、主軸46側の、たとえば、ラム45等の非回転部47に形成された嵌合穴47aに先端85aが挿入される。
これにより、ケース部材66、すなわち、ケース65は、主軸46が回転しても回転が規制される。
【0032】
次に、本実施形態に係る工具60の動作の一例について説明する。
まず、自動工具交換装置39によって、工具装着部95に刃具100を保持した工具60を工作機械本体2の主軸46に装着する。
工具60は、回り止め部材85の先端部85aが非回転部47の嵌合穴47aに嵌合挿入され、ケース65の回転が規制される。
【0033】
この状態から、主軸46を回転数N0 で回転させると、工具60の装着部62が回転し、主軸46の回転力が発電機70に伝達される。
これにより、発電機70は、たとえば、三相同期発電機を用いた場合には、三相交流電力を発電する。
【0034】
三相同期発電機の発生する三相交流電力の周波数fは、三相同期発電機の極数をP1 とし、主軸46の回転数をN0 〔min-1〕とすると、次式(1)によって表される。
【0035】
【数1】
f=P1 ×N0 /120〔Hz〕 …(1)
【0036】
従って、主軸46を回転数N0 で回転させると、上記(1)式で表される周波数fの三相交流電力が電動機80に供給される。
【0037】
ここで、電動機80に三相誘導電動機を用いたとすると、この三相誘導電動機の極数がP2 とすると、三相誘導電動機は三相交流の1サイクルで2/P2 回転することから、滑りがない時の三相誘導電動機の同期速度N1 は、次式(2)で表される。
【0038】
【数2】
N1 =120×f/P2 〔min-1〕 …(2)
【0039】
従って、主軸46の回転数N0 に対する工具60の回転数N1 は次式(3)によって表される。
【0040】
【数3】
N1 =N0 ×P1 /P2 〔min-1〕 …(3)
【0041】
(3)式からわかるように、主軸46の回転数N0 は、上記(3)式で表される回転数N1 に変速される。
(3)式で示すように、三相同期発電機の極数P1 と三相誘導電動機の極数P2 との比を適宜設定することにより、主軸46の回転数N0 に対する工具60の回転数N1 の変速比を任意に設定できることが分かる。
すなわち、主軸46の回転数N0 を増速したい場合には、極数比P1 /P2 を1より大きくし、減速したい場合には、極数比P1 /P2 を1より小さくなるように、三相同期発電機の極数P1 および三相誘導電動機の極数P2 を予め選択すればよい。
【0042】
たとえば、主軸46の最大回転数Nmax が3000min-1であるとすると、通常の工具を用いたワークの加工では、主軸46の回転数は上記の最大回転数Nmax の範囲で十分である場合が多い。
一方、主軸46の最大回転数Nmax が3000min-1のマシニングセンタ1を使用し、たとえば、ワークにアルミニウム合金材を用いてこれを高速加工したい場合には、工具60の回転数を、たとえば、30000min-1に増速させたいような場合がある。
このような場合のために、マシニングセンタ1の自動工具交換装置39のマガジンに工具60を予め収容しておく。なお、工具60は、増速比が10となるように、上記の極数比P1 /P2 が10である三相同期発電機および三相誘導電動機を内蔵させる。
【0043】
自動工具交換装置39によって、主軸46に通常の工具と同様に工具60を自動装着する。
主軸46を主軸モータ31を駆動して回転させるが、工具60に保持された刃具100の回転数は、主軸46の回転数によって制御する。すなわち、NC装置250にダウンロードするNCプログラムにおいて、主軸46の回転数をSコードで指定することにより、工具60の刃具100の回転数を規定しておく。すなわち、NC装置250は、主軸46の回転数を制御することにより、工具60の刃具100の回転数を制御する。
たとえば、工具60の刃具100を30000min-1で回転させたい場合には、NCプログラムにおいてSコードで主軸46の回転数を3000min-1に指定しておく。
【0044】
主軸46を3000min-1で回転させると、発電機70は主軸46の回転数および極数P1 に応じた周波数の三相交流を発生する。
電動機80は、発電機70から供給される三相交流によって駆動され、工具60の刃具100は、略30000min-1の回転数で回転する。
【0045】
上記のように刃具100が増速された状態で、テーブル35に固定されたワークと刃具100(主軸46)とを加工プログラムに従って相対移動させることにより、ワークの切削加工が行われる。
【0046】
これにより、たとえば、主軸46の最大回転数が制限されるマシニングセンタ1を使用した場合に、主軸46の最大回転数を越える回転数で刃具100を回転させてワークの高速加工が可能となる。
【0047】
以上のように、本実施形態によれば、通常の工具と同様にユニット化された工具ホルダ61に発電機70および電動機80を内蔵し、発電機70で発生した電力で電動機80を駆動することで、主軸46に対する工具60の回転速度を増速させるため、主軸46を高速回転させても歯車装置のように発熱が増大せず、工具60の熱膨張が抑えられ加工精度の低下が抑制される。
【0048】
さらに、本実施形態によれば、電動機80のイナーシャを主軸46のイナーシャよりも小さくできるため、主軸46を直接に高速回転させる場合に比べて、刃具100の応答性を向上できる。
【0049】
また、本実施形態によれば、主軸46の回転速度を増速させる工具60を主軸46に対して着脱自在とし、かつ、自動工具交換装置39によって通常の工具と同様に交換可能となっているため、通常の回転速度の範囲での加工を行いながら、高速加工の要求に対して即座に対応することができる。
また、本実施形態によれば、主軸46の回転によって発電した電力によって刃具100を駆動するため、外部から駆動電流を供給する必要がなく、この結果、電源供給のための配線が必要ない。
【0050】
第2実施形態
上述した第1の実施形態に係る工具60は、刃具100が主軸46の軸心方向に配置、すなわち、電動機80の回転軸が主軸46の軸心方向に配置されている構成とした。
一方、マシニングセンタ1においては、様々な形態の複合加工を行う必要があり、刃具100の向きが主軸46の軸心方向にある工具60だけでは、複合加工に対応できない。
本実施形態では、マシニングセンタ1の複合加工に対応可能な工具について説明する。
【0051】
図4〜図6は、本発明の他の実施形態に係る工具の概略構成図である。なお、図4〜図6において、上述した第1の実施形態と同一構成部分については同一の符号を使用している。また、図4〜図6に示す工具は、上述した第1の実施形態に係る工具60と基本的な動作は同じである。
【0052】
図4に示す工具160は、上述した第1の実施形態に係る工具60と同様に、装着部62と、ケース65と、発電機70と、電動機80と、工具装着部材95、回り止め部材85と、刃具100とを備えている。
【0053】
この工具160は、電動機80の回転軸に連結された刃具100の向きが主軸46の軸心に直交するように、電動機80がケース65に固定されている。
工具160を用いれば、たとえば、ワークの側面加工を効率良く行うことができる。
【0054】
図5に示す工具260は、上述した第1の実施形態に係る工具60と同様に、装着部62と、ケース65と、発電機70と、電動機80と、工具装着部材95、回り止め部材85と、刃具100とを備えている。
この工具260は、電動機80の回転軸に連結された刃具100の向きが、主軸46の軸心に対して角度θで傾斜している。
角度θは、たとえば、30°、45°、60°のような角度に設定される。
工具260は、たとえば、ワークの斜面の加工に用いられる。
【0055】
図6に示す工具360は、上述した第1の実施形態に係る工具60と同様に、装着部62と、ケース65と、発電機70と、回り止め部材85とを備えているとともに、複数(2台)の電動機80と、これらの電動機80の回転軸に連結された工具装着部材95および刃具100を備えている。
この工具360は、各電動機80の回転軸に連結された刃具100の向きが主軸46の軸心に直交し、かつ、各刃具100が同一直線上に位置するように、2つの電動機80がそれぞれケース65に固定されている。
また、発電機70において発電された電力は、2台の電動機80に分配されるように、発電機70および2台の電動機80は結線されている。
【0056】
上記した各種工具160,260,360を、通常の工具(発電機や電動機を内蔵しないもの)および第1の実施形態に係る工具60に加えて、マシニングセンタ1の自動工具交換装置39の図示しないマガジン内に収容しておく。
【0057】
マガジン内に収容された工具の中から必要な工具を選択し、自動工具交換装置39によって主軸46に自動装着することにより、上記した各種工具160,260,360によりワークの加工が行われる。
【0058】
本実施形態に係る工具160,260,360のように、刃具100の姿勢が主軸46の軸心とは異なる場合に、従来においては、たとえば、主軸46の回転を刃具100に伝達するための傘歯車等からなる伝達機構が必要であったが、本実施形態によれば、発電機70および電動機80を備えることにより、伝達機構が不要となる。
すなわち、本実施形態に係る工具160,260,360は、主軸46の回転力を刃具100に機械的に直接伝達するのではなく、主軸46の回転力を電気エネルギーに変換したのちに、この電気エネルギーによって回転力を発生させて刃具100を回転させるため、傘歯車等からなる伝達機構においては避けることができない機械的誤差、振動、熱変位等が発生しにくい。
また、本実施形態に係る工具160,260,360では、電動機80がケース65に固定されているため、加工時の剛性を確保できる。
この結果、本実施形態によれば、ワークの加工精度を向上させることが可能となる。
さらに、本実施形態によれば、上記した各種の工具をマシニングセンタ1の自動工具交換装置39に備えておき、必要に応じて主軸46に装着することにより、マシニングセンタ1の加工性能を大幅に向上させることができる。
【0059】
なお、本実施形態では、図4〜図6を参照して発電機および電動機を内蔵する3つのタイプの工具について説明したが、これら以外にも様々な変形が可能である。
【0060】
【発明の効果】
本発明によれば、外部から電力を供給することなく工作機械の主軸とは異なる回転数で加工具を回転数させることができる工具および工具ホルダが得られる。また、本発明の工具を工作機械の自動工具交換装置に備えておき、必要に応じて主軸に装着することにより、工作機械の加工性能を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用される工作機械の一例としてのマシニングセンタの構成図である。
【図2】本発明の工具の一実施形態の構成を示す断面図である。
【図3】発電機と電動機の接続関係を説明するための図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係る工具の構成を示す断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る工具の構成を示す断面図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係る工具の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
1…マシニングセンタ
2…工作機械本体
31…主軸モータ
39…自動工具交換装置
46…主軸
60、160、260、360…工具
62…装着部
65…ケース
66,67,68…ケース部材
70…発電機
80…電動機
90…工具保持部
95…工具装着部
100…刃具
250…NC装置
Claims (7)
- 工作機械の主軸に着脱可能に装着される工具であって、
ワークを加工する加工具と、
前記加工具と連結され当該加工具を回転させる誘導電動機と、
前記工作機械の主軸から回転力が伝達され、前記電動機を駆動させる電力を発生する同期発電機と、
前記主軸に着脱可能に装着され、当該主軸の回転力を前記発電機に伝達する装着部と、
前記電動機および前記発電機を保持するとともに、前記装着部を回転自在に保持し、かつ、前記工作機械の非回転部分に係合し、回転が規制されるケースとを有し、
前記装着部は、前記主軸の先端部に形成されたテーパスリーブに装着又は脱着可能なテーパシャンク部と、前記工作機械の自動工具交換装置により把持可能な把持部と、前記主軸の軸心に沿う一断面において前記把持部よりも径が小さい軸部とを、前記主軸の軸心方向に前記主軸側から前記加工具側へ順に有し、
前記発電機は、入力軸と、前記入力軸の回転によって発電する発電機本体とを有し、前記入力軸は、前記発電機本体から前記主軸の軸心方向に前記軸部側へ突出して前記軸部の中心穴に挿入され、
前記電動機は、前記発電機本体から前記主軸の軸心方向へ離間して配置され、ケーブルを介して前記発電機本体から供給される電力によって回転駆動される電動機本体と、前記電動機本体から前記主軸の軸心方向とは異なる方向に突出し、前記電動機本体の回転に応じて回転する出力軸とを有し、当該出力軸には当該出力軸に同軸状に前記加工具を保持する工具装着部材が設けられ、
前記ケースは、前記軸部を軸受を介して回転自在に保持する第1の部材と、前記発電機本体及び前記電動機本体を保持する第2の部材とを有し、前記主軸の軸心方向に対する前記出力軸の傾斜角度が一定の向きでのみ前記電動機本体を保持可能であり、前記発電機本体全体を内蔵し、前記電動機本体をケース外部に露出させて保持し、
前記発電機の極数と前記電動機の極数との比により設定される増速比により、前記主軸の回転を増速して前記加工具に伝達する
工具。 - 前記電動機および前記加工具を複数備えている
請求項1に記載の工具。 - ワークを加工する加工具を保持可能で、工作機械本体の主軸に着脱可能に装着される工具ホルダであって、
前記加工具を回転自在に保持する工具保持部と、
前記工具保持部を回転させる誘導電動機と、
前記工作機械の主軸から回転力が伝達され、前記電動機を駆動させる電力を発生する同期発電機と、
前記主軸に着脱可能に装着され、当該主軸の回転力を前記発電機に伝達する装着部と、
前記電動機および前記発電機を保持するとともに、前記装着部を回転自在に保持し、かつ、前記工作機械の非回転部分に係合し、回転が規制されるケースとを有し、
前記装着部は、前記主軸の先端部に形成されたテーパスリーブに装着又は脱着可能なテーパシャンク部と、前記工作機械の自動工具交換装置により把持可能な把持部と、前記主軸の軸心に沿う一断面において前記把持部よりも径が小さい軸部とを、前記主軸の軸心方向に前記主軸側から前記加工具側へ順に有し、
前記発電機は、入力軸と、前記入力軸の回転によって発電する発電機本体とを有し、前記入力軸は、前記発電機本体から前記主軸の軸心方向に前記軸部側へ突出して前記軸部の中心穴に挿入され、
前記電動機は、前記発電機本体から前記主軸の軸心方向へ離間して配置され、ケーブルを介して前記発電機本体から供給される電力によって回転駆動される電動機本体と、前記電動機本体から前記主軸の軸心方向とは異なる方向に突出し、前記電動機本体の回転に応じて回転する出力軸とを有し、
前記工具保持部は、前記出力軸に設けられ、前記出力軸に同軸状に前記加工具を保持する工具装着部材を有し、
前記ケースは、前記軸部を軸受を介して回転自在に保持する第1の部材と、前記発電機本体及び前記電動機本体を保持する第2の部材とを有し、前記主軸の軸心方向に対する前記出力軸の傾斜角度が一定の向きでのみ前記電動機本体を保持可能であり、前記発電機本体全体を内蔵し、前記電動機本体をケース外部に露出させて保持し、
前記発電機の極数と前記電動機の極数との比により設定される増速比により、前記主軸の回転を増速して前記加工具に伝達する
工具ホルダ。 - 前記電動機および前記工具保持部を複数備えている
請求項3に記載の工具ホルダ。 - 主軸と、前記主軸を駆動する駆動手段と、前記主軸とワークとの相対位置を変更する少なくとも一の制御軸とを備える工作機械本体と、
前記駆動手段および前記制御軸を加工プログラムにしたがって駆動制御する制御装置と、
複数種の工具を備え、前記主軸に対して当該工具を着脱する自動工具交換装置とを有し、
前記複数種の工具には、ワークを加工する加工具と、前記加工具と連結され当該加工具を回転させる誘導電動機と、前記主軸から回転力が伝達され、前記電動機を駆動させる電力を発生する同期発電機と、前記主軸に着脱可能に装着され、当該主軸の回転力を前記発電機に伝達する装着部と、前記電動機および前記発電機を保持するとともに、前記装着部を回転自在に保持し、かつ、前記工作機械の非回転部分に係合し、回転が規制されるケースとを備えた特定の種類の工具が含まれ、
前記装着部は、前記主軸の先端部に形成されたテーパスリーブに装着又は脱着可能なテーパシャンク部と、前記工作機械の自動工具交換装置により把持可能な把持部と、前記主軸の軸心に沿う一断面において前記把持部よりも径が小さい軸部とを、前記主軸の軸心方向に前記主軸側から前記加工具側へ順に有し、
前記発電機は、入力軸と、前記入力軸の回転によって発電する発電機本体とを有し、前記入力軸は、前記発電機本体から前記主軸の軸心方向に前記軸部側へ突出して前記軸部の中心穴に挿入され、
前記電動機は、前記発電機本体から前記主軸の軸心方向へ離間して配置され、ケーブルを介して前記発電機本体から供給される電力によって回転駆動される電動機本体と、前記電動機本体から前記主軸の軸心方向とは異なる方向に突出し、前記電動機本体の回転に応じて回転する出力軸とを有し、当該出力軸には当該出力軸に同軸状に前記加工具を保持する工具装着部材が設けられ、
前記ケースは、前記軸部を軸受を介して回転自在に保持する第1の部材と、前記発電機本体及び前記電動機本体を保持する第2の部材とを有し、前記主軸の軸心方向に対する前記出力軸の傾斜角度が一定の向きでのみ前記電動機本体を保持可能であり、前記発電機本体全体を内蔵し、前記電動機本体をケース外部に露出させて保持し、
前記発電機の極数と前記電動機の極数との比により設定される増速比により、前記主軸の回転を増速して前記加工具に伝達する
工作機械。 - 前記複数種の工具には、複数の前記特定の種類の工具が含まれる
請求項5に記載の工作機械。 - 前記複数の特定の種類の工具には、前記電動機および前記加工具を複数備えている前記特定の種類の工具が含まれる
請求項6に記載の工作機械。
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