JP4147231B2 - 調圧機構を備えた歯科用ハンドピース - Google Patents

Description

本発明は歯科用ハンドピースに関し、さらに詳細には、給気通路を通過する圧縮空気の圧力が所定以上になると、この圧縮空気の圧力を低下させて調整することができる歯科用ハンドピースに関する。

エアタービン、エアモーターなど圧縮空気により回転駆動される歯科用ハンドピースは従来から知られており、例えば、図５に示したようなものがある。
図５は、エアタービン式歯科用ハンドピースのヘッド部分４０の断面図であり、この歯科用ハンドピースは、歯科処置工具４１を受理して着脱自在に保持するバースリーブ４２と、圧縮空気によってバースリーブ４２を回転駆動するためにバースリーブ４２に設けられたローター４３と、バースリーブ４２を回転可能に支承するためローター４３の上方及び下方に設けられたボールベアリング４４をカートリッジケース４５内に有し、このカートリッジケース４５がヘッドハウジング４６内に収納されている。またヘッドハウジング４６を支持しているヘッドハウジングジャケット４７には、ローター４３に圧縮空気を供給するための給気通路４８ａ、及びローター４３に供給された圧縮空気を排出するための排気通路４８ｂが設けられている。

上述のようなエアタービン式の歯科用ハンドピースは、各装置ごとに定められた適性範囲よりも高い空気圧で使用された場合、回転数が高くなりすぎて歯科処置工具が破損する危険性があり、また潤滑油切れの状態になるのが早く、摩耗が発生して軸受の耐用期間も短くなる欠点がある。そのため、給気通路における空気圧が所定範囲に収まるように、歯科用ユニット側に、送出する圧縮空気の圧力を調整する機能を備えている。しかしながら、この圧縮空気の圧力は、歯科用ハンドピースの種類に応じて適宜変更する必要があり、その際の空気圧の調整操作は煩雑であるため、同じ空気圧で使用されることがあり、上記の如き問題が生じる。

本出願人は上記の課題を解決するために、減圧部材を有する歯科用ハンドピースを提案しており、これが特許第３５８５４５８号の特許公報（特許文献１）に記載されている。特許文献１の歯科用ハンドピースは、本体部に減圧部材が内装されるものと、本体部の後端に接続されるカップリング（接続部材）に減圧部が形成されるものとがあり、図６に示した歯科用ハンドピース５０は前者である。

歯科用ハンドピース５０は、把持部５１の先端にヘッド部５２が設けられ、このヘッド部５２に、歯科処置工具５３を受理するバースリーブ（図示せず）が回転可能に収納され、把持部５１の内部に給気管５４、排気通路５５及び給水管５６が設けられ、給気管５４の途中に減圧部材６０が介設され、圧縮空気を送出する歯科用ユニット（図示せず）から延びる可撓性チューブ（図示せず）が、把持部５１の後端に接続されて、給気管５４を通して圧縮空気がヘッド部５２まで送られて歯科処置工具５３が回転駆動される。
上記歯科用ハンドピース５０では、歯科用ユニットから送られる圧縮空気の圧力が適性範囲より高くなった場合に、圧縮空気が給気管５４から減圧部材６０を通過して排気通路５５に排出され、空気圧が自動調整されるものである。
特許公報第３５８５４５８号

特許文献１の歯科用ハンドピース５０は、空気圧を自動調整できる点で優れたものであるが、減圧部材６０が給気管５４の途中に突出するように設けられるものであるため、把持部５１が太くなり、把持し易さという点で課題が残されている。
また特許文献１には、図６の歯科用ハンドピース以外に、カップリングに減圧部が形成されたものが記載されているが、この減圧部をカップリングに形成するものは、製造工程上における材料加工の手間が比較的多くなるため、更なる改良が望まれている。
なお、特許文献１以外で、従来の歯科用ハンドピースには、歯科用ハンドピース本体の後端接続部に減圧部が一体に組み込まれたものもあるが、このような歯科用ハンドピースにおいても、把持部がコンパクトにできない、製造工程上の手間が比較的多くなる等といった上記と同様な課題が残されている。

本発明は従来技術の欠点に着目し、これを解決せんとしたものであり、その課題は、歯科用ユニットから受理する圧縮空気の圧力が適性範囲より高くなった場合でも、歯科処置工具の回転数が高くなり過ぎないように、空気圧を自動調整することが可能であり、製造工程における材料加工の手間が少なく、且つ、医療従事者が把持し易い歯科用ハンドピースを提供することにある。

上記課題を解決するために、歯科処置工具を受理するバースリーブと、該バースリーブを回転可能に支承して収納するヘッド部と、前記バースリーブを圧縮空気により回転駆動させるため前記ヘッド部まで圧縮空気を導入する給気通路と、前記圧縮空気を排出するための排気通路とを備える歯科用ハンドピースにおいて、前記給気通路は、歯科用ハンドピース本体の後端接続部からヘッド部までの間に直列に接続された管状の調圧部材と給気管とを含み、前記管状の調圧部材は、第一の管体の内部に第二の管体が挿入され、管状体内と排気通路とを連通させ得るように、これら第一及び第二の管体のそれぞれ所定位置に孔が穿設され、第一の管体と第二の管体との隙間に環状弁体及びバネが装入され、前記環状弁体は、バネにより付勢されて両方の孔間が連通しないように設けられると共に、前記給気通路を通過する圧縮空気の圧力が伝達するように設けられ、前記環状弁体は、給気通路内の圧縮空気の圧力が所定以上になると、その圧力により前記バネに抗して押されて摺動し、管状体内と排気通路とを連通させて圧縮空気を前記排気通路に排出することにより、前記バースリーブに送られる圧縮空気の圧力を調整することを特徴とする歯科用ハンドピースが提供される。
本発明の歯科用ハンドピースは、バースリーブに送られる圧縮空気の圧力調整が管状の調圧部材により行われるものであり、この管状調圧部材は、歯科用ハンドピース本体の後端接続部とは別の部材として形成されるものであるため、カップリング（接続部材）や歯科用ハンドピースの後端接続部に、従来のような煩雑な材料加工を施さなくても良く、製造コスト削減が可能になる。
また前記管状調圧部材は、後端接続部と給気管とに直列に接続され、それ自体が歯科用ハンドピース内の給気通路の一部を構成するものであり、しかも、管状に形成されているため、歯科用ハンドピース内に隙間なく収納することができる。さらに、管状調圧部材は管状体中間に圧縮空気の排出孔が形成され、この排出孔を開閉する弁体が環状に形成され、管状体に環装されるものであるため、管状調圧部材それ自体を細く形成することが可能になり、歯科用ハンドピースの把持部も比較的細く形成することができる。

本発明の歯科用ハンドピースは、管状の調圧部材が設けられているため、歯科用ユニットから受理する圧縮空気の圧力が適性範囲より高くなった場合でも、歯科処置工具の回転数が高くなり過ぎないように、空気圧を自動調整することが可能であり、しかも、管状の調圧部材が、後端接続部と給気管とに対して直列配置で接続されるため、医療従事者が把持し易いようなコンパクトなものとすることができる。

以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。

図１は本発明の歯科用ハンドピース１０を一部断面で示した側面図である。
本発明の歯科用ハンドピース１０は、把持部１１の先端にヘッド部１２が設けられ、このヘッド部１２において、歯科処置工具１３を受理するバースリーブ（図示せず）が回転可能に支承されて収納され、把持部１１の後端には、接続部材であるカップリング（図示せず）を着脱自在に接続するための後端接続部１４が形成され、把持部１１の内部に給気管１５が設けられ、給気管１５と後端接続部１４との間に調圧部材２０が接続される。後端接続部１４にはカップリング（図示せず）が接続され、圧縮空気を送出する歯科用ユニット（図示せず）から延びる可撓性チューブ（図示せず）がカップリングの後端に接続され、後端接続部１４、給気管１５を通して圧縮空気がヘッド部１２まで送られてバースリーブが回転駆動される。

以下、図１を参照して更に詳細に歯科用ハンドピース１０について説明する。
把持部１１を構成するケーシング１１ａの内部には、固定部材１６を介して後端接続部１４が固定される。後端接続部１４には、圧縮空気を通過させる給気孔１４ａとしての貫通孔が穿設される一方で、排気通路としての排気孔１４ｂと排気溝１４ｃが設けられており、ここに接続される前記カップリングを介して圧縮空気の給気と排気とが行われる。またケーシング１１ａの内部には空洞部分１１ｂが設けられており、この空洞部１１ｂが、ヘッド部１２から還流した排気を排気孔１４ｂまで導くための排気通路として機能する。

調圧部材２０は後端接続部１４と給気管１５に対して、ほぼ同軸上に直列配置が可能なように、その後端２１が給気孔１４ａに接続され、先端２２が給気管１５に接続される。調圧部材２０においては、後端接続部１４から取り込まれた圧縮空気が、ここを通過して矢印Ａで示したように給気管１５を介してヘッド部１２へ送られる。

調圧部材２０は、図２（ａ）（ｂ）に示したように、第一の管体２３の内部に第二の管体２４が挿入され、両管体２３，２４間に形成される隙間２５には、環状弁体２６が摺動可能に設けられ、バネ２７により矢印Ｂ方向に付勢されている。第一の管体２３と第二の管体２４には、それぞれ孔２３ａ，２４ａが互い違いの配置で穿設されている。これらの孔２３ａ，２４ａは、環状弁体２６が図２（ａ）のように配置されているときには、孔２３ａ，２４ａ同士が連通せず、環状弁体２６が図２（ｂ）のように配置されているときには、孔２３ａ，２４ａ同士が隙間２５を介して連通するような配置関係で設けられる。第一の管体２３には、空気抜きの孔２３ｂを設けて隙間２５を開放することにより、環状弁体２６が摺動可能になっている。また第二の管体２４の孔２４ａ付近にはフランジ２４ｂが突設され、バネ２７に付勢された環状弁体２６がフランジ２４ｂに係止し、図２（ａ）の位置で停止している。環状弁体２６が、図２（ａ）の位置で停止しているとき、環状弁体２６の後端面２６ａには孔２４ａと隙間２５を介して、圧縮空気からの圧力が伝達されている。

上記において説明したように、調圧部材２０は、歯科用ハンドピース本体の後端接続部１４とは別の部材として形成されるものであるため、後端接続部１４に、従来のような煩雑な材料加工を施さなくても良く、製造コスト削減が可能になる。また調圧部材２０は、後端接続部１４と給気管１５とに直列に接続され、それ自体が歯科用ハンドピース内の給気通路を構成するものであり、しかも、管状に形成されたものであるため、歯科用ハンドピース１０内にコンパクトに収納することができる。さらに、調圧部材２０は第一の管体２３に第二の管体２４が挿入され、両管体２３，２４の隙間２５に環状弁体２６が環装され、この隙間２５において環状弁体２６が摺動するだけで、孔２３ａ，２４ａの開閉がなされるものであるため、調圧部材２０それ自体を細く形成することが可能になり、歯科用ハンドピース１０の把持部１１も比較的細く形成することができる。

なお、歯科用ハンドピース本体の後端接続部１４と、調圧部材２０と、給気管１５とを直列に接続する実施形態としては、図１に例示したもの以外とすることも可能である。
すなわち、図１の歯科用ハンドピース１０では、図３（ａ）の簡略図のように、後端接続部１４に調圧部材２０を接続し、この調圧部材２０からヘッド部１２までを給気管１５で接続して直列配置を構成しているが、図３（ｂ）のように、調圧部材２０と後端接続部１４とを給気管１５で接続し、調圧部材２０とヘッド部１２とを給気管１５で接続するか、あるいは、図３（ｃ）のように、ヘッド部１２に調圧部材２０を直接接続し、調圧部材２０と後端接続部１４とを給気管１５で接続することも可能である。

次に、図１及び図２を参照して歯科用ハンドピース１０の作用について説明する。
歯科用ユニットから送り出された圧縮空気は、カップリングを介して後端接続部１４の給気孔１４ａから供給され、調圧部材２０と給気管１５を通り、ヘッド部１２まで送られて歯科処置工具１３を受理したバースリーブ（図示せず）が回転駆動される。一方、ヘッド部１２から還流する圧縮空気は、歯科用ハンドピース１０内の空洞部分１１ｂを通って排気孔１４ｂから排気溝１４ｃに至り、ここからカップリング等を介して外部に排出される。
ここで、給気孔１４ａ、調圧部材２０、給気管１５における圧縮空気の圧力が許容範囲以下である場合には、バネ２７に付勢された環状弁体２６はフランジ２４ｂに係止して図２（ａ）の位置で停止しており、圧縮空気は全て調圧部材２０の管内を通過する。
一方、給気孔１４ａ、調圧部材２０、給気管１５における圧縮空気の圧力が許容範囲以上になると、調圧部材２０における第二の管体２４の孔２４ａ及び隙間２５を通して環状弁体２６の後端面２６ａに作用する圧縮空気の圧力は、バネ２７の弾力よりも大きくなり、環状弁体２６が矢印Ｃ方向に押されて摺動する。これにより、図２（ｂ）に示したように、第二の管体２４の孔２４ａと第一の管体２３の孔２３ａとは隙間２５を介して連通し、圧縮空気は矢印Ａ’で示したように、調圧部材２０の管内から管外（空洞部分１１ｂ）へと排出される。このように圧縮空気の圧力が所定以上になると、圧縮空気は調圧部材２０から空洞部分１１ｂに排出されるため、ここからヘッド部１２までの給気管１５における圧縮空気の圧力は、常に所定範囲内に維持され、歯科処置工具１３の回転数は高くなり過ぎないように自動調整される。

次に、図４を参照して、異なる実施形態について説明する。図４は歯科用ハンドピース３０を部分的に断面で示した側面図であり、これは、図２の調圧部材２０を異なるタイプの歯科用ハンドピースに適用したものである。すなわち、歯科用ハンドピース３０は、把持部３１の先端にヘッド部３２が設けられ、このヘッド部３２に、歯科処置工具３３を受理するバースリーブ（図示せず）が回転可能に支承されて収納され、把持部３１の内部に給気管３４、排気通路３５及び給水管３６が設けられ、給気管３４と給水管３６は歯科用ハンドピース３０の後端から突出しており、この歯科用ハンドピース３０の後端に排気管３７が取りつけられ、さらに給気管３４の途中に調圧部材２０が介設され、圧縮空気を送出する歯科用ユニット等の装置（図示せず）から延びる可撓性チューブ（図示せず）が、把持部３１の後端に接続されて、給気管３６を通して圧縮空気がヘッド部３２まで送られて歯科処置工具３３が回転駆動される。
なお、図２の調圧部材２０を図４の実施形態に適用するに際して、その後端２１ａ及び先端２２ａは、図４の給気管３４に接続可能な形状に形成される点で、図２とは若干異なるものであるが、その他の構成及び作用は同様である。

本発明の歯科用ハンドピースを一部断面で示した側面図である。 （ａ）（ｂ）は本発明に用いる管状調圧部材の断面図である。 （ａ）〜（ｃ）は、ハンドピース本体の後端接続部、調圧部材、給気管の直列配置を説明する簡略図である。 図２の調圧部材を図１とは異なる形態の歯科用ハンドピースに適用した側面図である。 従来の歯科用ハンドピースにおけるヘッド部分の断面図である。 調圧機構を有する歯科用ハンドピースの先行技術を示すため一部断面を含む側面図である。

符号の説明

１０ 歯科用ハンドピース
１１ 把持部
１２ ヘッド部
１３ 歯科処置工具
１４ 後端接続部
１５ 給気管
２０ 調圧部材
２３ 第一の管体
２３ａ 孔
２４ 第二の管体
２４ａ 孔
２６ 環状弁体
３０ 歯科用ハンドピース

Claims (1)

1. 歯科処置工具を受理するバースリーブと、該バースリーブを回転可能に支承して収納するヘッド部と、前記バースリーブを圧縮空気により回転駆動させるため前記ヘッド部まで圧縮空気を導入する給気通路と、前記圧縮空気を排出するための排気通路とを備える歯科用ハンドピースにおいて、
   前記給気通路は、歯科用ハンドピース本体の後端接続部からヘッド部までの間に直列に接続された管状の調圧部材と給気管とを含み、
   前記管状の調圧部材は、第一の管体の内部に第二の管体が挿入され、管状体内と排気通路とを連通させ得るように、これら第一及び第二の管体のそれぞれ所定位置に孔が穿設され、第一の管体と第二の管体との隙間に環状弁体及びバネが装入され、前記環状弁体は、バネにより付勢されて両方の孔間が連通しないように設けられると共に、前記給気通路を通過する圧縮空気の圧力が伝達するように設けられ、
   前記環状弁体は、給気通路内の圧縮空気の圧力が所定以上になると、その圧力により前記バネに抗して押されて摺動し、管状体内と排気通路とを連通させて圧縮空気を前記排気通路に排出することにより、前記バースリーブに送られる圧縮空気の圧力を調整することを特徴とする歯科用ハンドピース。

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