JP4145223B2 - 金属薄板およびその製造方法 - Google Patents
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非晶質金属薄帯を複数枚重ねて積層する場合、積層体に積層ずれが生じる場合があった。このような積層ずれが生じると、寸法安定性が悪く好ましくないので、磁気コアやモータコアなどの磁気応用製品に適用することが困難な場合がある。また、非晶質金属薄帯を矩形に切断するため、シャーリング切断を使用する際、金属薄帯を押さえつけ時に金属薄帯がずれ、切断した形状の寸法安定性が悪くなる等の問題が生じる場合があった。これらの問題は、種々の磁気応用製品に応用する上で障害となっていた。
これらの問題は、金属と金属を積層するために高分子化合物などの接着剤を用いると、金属と高分子化合物の膨張係数の違いなどから熱収縮率が異なり、金属が反ってしまうということが原因と考えられる。特開昭64−80534号公報(特許文献2)には、重合体と金属箔からなる長尺状のフレキシブル金属薄薄積層板のカール矯正および寸法安定性改良法について、幅方向に対して0〜80度の角度で設けられた第1のバーの曲面上に、金属箔を内側にして緊張状態で長手方向に滑られせる工程を用いたカール矯正および寸法安定性改良法が提案されているが、非晶質金属材料などの素材を用いる場合には、非晶質金属の表面には凹凸があり摩擦が大きく、非晶質金属薄帯にエッジ部があると薄帯が破損しやすいという点から好ましくない。
本発明に用いられる金属磁性材料は、公知の金属磁性体であれば用いることができる。具体的には、ケイ素の含有量が3%から6.5%の実用化されているケイ素鋼板、パーマロイ、ナノ結晶金属磁性材料、非晶質金属磁性材料を挙げることができる。特に板厚が10μm〜50μm程度の極めて薄い、非晶質金属磁性材料、ナノ結晶金属磁性材料は、外力に対して変形しやすく、樹脂付与時に、樹脂の硬化収縮等で反り易く、積層時に積層ずれやシャーリング加工時の切断ずれが生じやすかった。本発明の反り率とすることで、好適に用いられる。
本発明に用いられる高分子化合物は、公知のいわゆる樹脂と呼ばれるものが用いられる。特に金属磁性材料の磁気特性向上のために200℃以上の熱処理が必要な場合には、弾性率の低い耐熱樹脂を複合することが、優れた性能を発揮する上で効果的である。また非晶質金属磁性材料やナノ結晶金属磁性材料に比べて損失が大きく、発熱温度が高くなるケイ素鋼板などの材料では、モータやトランス等のパワーエレクトロニクス用途において、耐熱樹脂を適用することで、定格温度を向上でき、定格出力の向上、機器の小型化につながる。本発明に用いられる耐熱性樹脂は、非晶質金属薄帯やナノ結晶金属磁性薄帯の磁気特性を向上させる最適熱処理温度で熱処理される場合があるので、当該熱処理温度で熱分解の少ない材料を選定することが必要になる。例えば非晶質金属薄帯の熱処理温度は、非晶質金属薄帯を構成する組成および目的とする磁気特性により異なるが、良好な磁気特性を向上させる温度は概ね200〜700℃の範囲にあり、さらに好ましくは300℃〜600℃の範囲である。
本発明で規定する最大反り率W1(%)はJIS C 6481に準拠した方法により測定され、式W1=(D1/L1)×100(ここにD1:最大反り量(mm)、L1:最大反り部分の試料片長さ(mm))により計算することができる。
実験の結果、JIS C 6481で規定される最大反り量が、10%以下であるときに、積層ずれや、シャーリング切断時に寸法安定性の低下が抑制できることが明らかになった。
本発明で規定する最大反り量を実現するための製造方法の一例を以下に記すが、この製造方法に限定されるものではない。本発明の磁性金属薄板「積層体」は、まず磁性金属薄板の原反にロールコータなどのコーティング装置により、薄板上に有機溶剤に樹脂を溶解させた樹脂ワニスの塗膜を作り,これを乾燥させて非晶質金属薄帯に高分子化合物を付与する方法で作製できる。ここでいう樹脂ワニスとは樹脂もしくは樹脂の前駆体が有機溶剤に分散または溶解した状態の液体を指す。塗布量は、使用する金属薄板と高分子化合物の種類によって異なるが、樹脂が乾燥時、硬化時等で収縮する際に金属薄板と樹脂間に発生する応力が平衡で反りが起こらないようにすることが重要である。コーティングするワニス塗膜厚は、通常0.1μmから1mm程度に塗布することが好ましい。
(イ)コーティングするワニス塗膜厚を0.1μm〜1mm程度に薄く塗布することである。
金属薄板として、ハネウェル社製、Metglas:2605TCA(商品名)、幅約142mm,厚み約25μmであるFe78B13Si9(原子%)の組成を持つ非晶質金属薄帯を使用した。この薄帯の片面全面にE型粘度計で測定したときに、25℃で、約0.3Pa・sの粘度のポリアミド酸溶液をロールコータで塗工し,140℃で乾燥後、260℃でキュアし、非晶質金属薄帯の片面に約4ミクロンの耐熱樹脂(ポリイミド樹脂)を付与した。ポリイミド樹脂は、3,3’−ジアミノジフェニルエーテルと3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物を1:0.98の割合で混合し、ジメチルアセトアミド溶媒中で室温にて縮重合して得られたものである。通常は、ポリアミド酸としてジアセチルアミド溶液として用いた。このとき、140℃および260℃の乾燥加熱する際、樹脂がコートされた金属薄板を幅方向に樹脂面と反対側に丸め、室温に戻すまでその状態を保持した。その結果、最大反り率は1%とした。
金属薄板として、ハネウェル社製、Metglas:2605TCA(商品名)、幅約142mm,厚み約25μmであるFe78B13Si9(原子%)の組成を持つ非晶質金属薄帯を使用した。この薄帯の片面全面にE型粘度計で測定したときに、25℃で、約0.3Pa・sの粘度のポリアミド酸溶液をロールコータで塗工し,140℃で乾燥後、260℃でキュアし、非晶質金属薄帯の片面に約4ミクロンの耐熱樹脂(ポリイミド樹脂)を付与した。ポリイミド樹脂は、3,3’−ジアミノジフェニルエーテルと3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物を1:0.98の割合で混合し、ジメチルアセトアミド溶媒中で室温にて縮重合して得られたものである。通常は、ポリアミド酸としてジアセチルアミド溶液として用いた。その後、樹脂がコートされた金属薄板の反りを矯正するため、反りと反対に丸めて、最大反り率を5%とした。
金属薄板として、ハネウェル社製、Metglas:2714A(商品名)、幅約50mm,厚み約15μmであるCo66Fe4Ni1(BSi)29(原子%)の組成を持つ非晶質金属薄帯を使用した。この薄帯の片面全面にE型粘度計で測定したときに、25℃で、約0.3Pa・sの粘度のポリアミド酸溶液をロールコータで塗工し,140℃で乾燥後、260℃でキュアし、非晶質金属薄帯の片面に約4ミクロンの耐熱樹脂(ポリイミド樹脂)を付与した。ポリイミド樹脂は、3,3’−ジアミノジフェニルエーテルと3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物を1:0.98の割合で混合し、ジメチルアセトアミド溶媒中で室温にて縮重合して得られたものである。通常は、ポリアミド酸としてジアセチルアミド溶液として用いた。
金属薄板として、ハネウェル社製、Metglas:2714A(商品名)、幅約50mm,厚み約15μmであるCo66Fe4Ni1(BSi)29(原子%)の組成を持つ非晶質金属薄帯を使用した。この薄帯の片面全面にE型粘度計で測定したときに、25℃で、約0.3Pa・sの粘度のポリアミド酸溶液をロールコータで塗工し,140℃で乾燥後、260℃でキュアし、非晶質金属薄帯の片面に約4ミクロンの耐熱樹脂(ポリイミド樹脂)を付与した。ポリイミド樹脂は、3,3’−ジアミノジフェニルエーテルと3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物を1:0.98の割合で混合し、ジメチルアセトアミド溶媒中で室温にて縮重合して得られたものである。通常は、ポリアミド酸としてジアセチルアミド溶液として用いた。その後、樹脂がコートされた金属薄板の反りを矯正するため、反りと反対に丸めて、最大反り率を8%にした。
金属薄板として、日立金属(株)製、ファインメット(商品名)、FT−3幅約35mm,厚み約18μmであるFe、Cu、Nb、Si、Bの元素組成を持つナノ結晶磁性金属薄帯を使用した。実施例1と同様の樹脂をコートした。
金属薄板として、日立金属(株)製、ファインメット(商品名)、FT−3幅約35mm,厚み約18μmであるFe、Cu、Nb、Si、Bの元素組成を持つナノ結晶磁性金属薄帯を使用した。実施例1と同様の樹脂をコートした。その後、樹脂がコートされた金属薄板の反りを矯正するため、反りと反対に丸めて、最大反り率を9%にした。次に耐熱樹脂を付与した非晶質金属薄帯を幅方向に30mm薄帯の長手方向に100mmにシャーリング切断し、JIS C 6481で規定される最大反り量と、矩形の4角のうち最大角度を測定し、90度との差を切断ずれとした。
金属薄板として、新日本製鉄、薄手ハイライトコア(商品名)、20HTH1500幅約150mm,厚み約200μmである珪素鋼板を使用した。実施例1と同様に樹脂をコートした。このとき、140℃および260℃の乾燥加熱する際、樹脂がコートされた金属薄板を幅方向に樹脂面と反対側に丸め、室温に戻すまでその状態を保持した。その結果、最大反り率は2%にした。
金属薄板として、新日本製鉄、薄手ハイライトコア(商品名)、20HTH1500幅約150mm,厚み約200μmである珪素鋼板を使用した。実施例1と同様に樹脂をコートした。その後、樹脂がコートされた金属薄板の反りを矯正するため、反りと反対に丸めて、最大反り率を3%にした。
金属薄板として、ハネウェル社製、Metglas:2605TCA(商品名)、幅約142mm,厚み約25μmであるFe78B13Si9(原子%)の組成を持つ非晶質金属薄帯を使用した。この薄帯の片面全面にE型粘度計で測定したときに、25℃で、約0.3Pa・sの粘度のポリアミド酸溶液をロールコータで塗工し,140℃で乾燥後、260℃でキュアし、非晶質金属薄帯の片面に約4ミクロンの耐熱樹脂(ポリイミド樹脂)を付与した。ポリイミド樹脂は、3,3’−ジアミノジフェニルエーテルと3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物を1:0.98の割合で混合し、ジメチルアセトアミド溶媒中で室温にて縮重合して得られたものである。通常は、ポリアミド酸としてジアセチルアミド溶液として用いた。
金属薄板として、ハネウェル社製、Metglas:2714A(商品名)、幅約50mm,厚み約15μmであるCo66Fe4Ni1(BSi)29(原子%)の組成を持つ非晶質金属薄帯を使用した。この薄帯の片面全面にE型粘度計で測定したときに、25℃で、約0.3Pa・sの粘度のポリアミド酸溶液をロールコータで塗工し,140℃で乾燥後、260℃でキュアし、非晶質金属薄帯の片面に約4ミクロンの耐熱樹脂(ポリイミド樹脂)を付与した。ポリイミド樹脂は、3,3’−ジアミノジフェニルエーテルと3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物を1:0.98の割合で混合し、ジメチルアセトアミド溶媒中で室温にて縮重合して得られたものである。通常は、ポリアミド酸としてジアセチルアミド溶液として用いた。
金属薄板として、日立金属(株)製、ファインメット(商品名)、FT−3幅約35mm,厚み約18μmであるFe、Cu、Nb、Si、Bの元素組成を持つナノ結晶磁性金属薄帯を使用した。実施例1と同様の樹脂をコートした。
次に耐熱樹脂を付与した非晶質金属薄帯を幅方向に30mm薄帯の長手方向に100mmにシャーリング切断し、JIS C 6481で規定される最大反り量と、矩形の4角のうち最大角度を測定し、90度との差を切断ずれとした。
さらに30mm×100mmの試験片を50枚積層した後、窒素雰囲気中で270℃10MPaで30分加圧し積層一体化した後、550℃1MPaで1.5hr熱処理した。その後、評価のため、積層ずれ量を評価した。
2 送り出しロール部
3 コーティング部
4 樹脂面
5 反り矯正ロール
6 巻取りロール部
Claims (5)
- 高分子化合物層を設けた磁性金属薄板であって、前記高分子化合物が、前処理として120℃で4時間乾燥を施した後、窒素雰囲気下、300℃で2時間保持した際の、DTA−TGを用いて測定した重量減少が1%以下である耐熱性樹脂であり、該対熱性樹脂からなる高分子化合物層を設けるため粘度が0.005〜200Pa・sの濃度範囲の樹脂ワニスを塗工厚が0.1μm〜1mmとなる様塗工した後に硬化させ、JIS C 6481に基づいて測定される最大反り部分の試料片の長さに対する最大反り量の比で表される最大反り率が10%以下であることを特徴とする、高分子化合物層を設けた厚さが10〜50μmのナノ結晶磁性金属薄板。
- 高分子化合物層を設けた磁性金属薄板であって、前記高分子化合物が、前処理として120℃で4時間乾燥を施した後、窒素雰囲気下、300℃で2時間保持した際の、DTA−TGを用いて測定した重量減少が1%以下である耐熱性樹脂であり、該対熱性樹脂からなる高分子化合物層を設けるため粘度が0.005〜200Pa・sの濃度範囲の樹脂ワニスを塗工厚が0.1μm〜1mmとなる様塗工した後に硬化させ、JIS C 6481に基づいて測定される最大反り部分の試料片の長さに対する最大反り量の比で表される最大反り率が10%以下であることを特徴とする、高分子化合物層を設けた厚さが10〜50μmの非晶質磁性金属薄板。
- 高分子化合物層を設けた磁性金属薄板であって、前記高分子化合物が、前処理として120℃で4時間乾燥を施した後、窒素雰囲気下、300℃で2時間保持した際の、DTA−TGを用いて測定した重量減少が1%以下である耐熱性樹脂であり、該対熱性樹脂からなる高分子化合物層を設けるため粘度が0.005〜200Pa・sの濃度範囲の樹脂ワニスを塗工厚が0.1μm〜1mmとなる様塗工した後に硬化させ、JIS C 6481に基づいて測定される最大反り部分の試料片の長さに対する最大反り量の比で表される最大反り率が10%以下であることを特徴とする、高分子化合物層を設けた厚さが100〜400μmの珪素鋼板である磁性金属薄板。
- 磁性金属薄板に、粘度が0.005〜200Pa・sの濃度範囲の樹脂ワニスを塗工厚が0.1μm〜1mmとなる様塗工し、塗工面を湾曲して外側面としながら溶剤を除去することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載した高分子化合物層を設けた磁性金属薄板の、製造方法。
- 請求項4に記載の高分子化合物層を設けた磁性金属薄板の製造方法であって、上記高分子化合物として、反応すると硬化する樹脂ワニスを用い、塗工面を湾曲して外側面として溶剤を除去しながら、または除去した後に硬化反応を起こさせることを特徴とする、高分子化合物層を設けた磁性金属薄板の、製造方法。
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