JP4145200B2 - 縫合器 - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内視鏡のチャンネルを通じて体腔に導入される縫合器に関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来、体腔内に処置器を導入し、必要な処置を行う手法が知られている。この種の処置に用いられる装置としては、カテーテルの先端部分に設けられた穿刺針内に収容した縫合糸を取り付けた係合部材を押出部材でカテーテルの外に押し出して、組織を縫合するものがある（例えば、特許文献１参照）。ここで、特許文献１に記載されている心腔内縫合手術用具は、穿刺カーテルを出し入れ自在にシースに装着すると共に、側注チューブから穿刺カテーテルの内に血液凝固防止用の生理食塩水を注入できる構成になっている。
【０００３】
【特許文献１】
特許第３１３４２８８号公報（段落番号０００７、００１０、第４図）
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、腸や管状の器官などを縫合する場合のように、縫合対象の生体組織が他の生体組織に近接するときには、縫合対象の生体組織を穿通する穿刺針が、他の生体組織を穿通したり、傷付けたりする可能性があるので、慎重に操作をしなければならないという問題があった。
本発明は、このような問題を解決するもので、その目的は、縫合対象のみを確実に穿刺し、係合部材を留置できる縫合器を提供することにある。
【０００５】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供している。
請求項１に係る発明は、先端に開口が形成された中空の穿刺針を備え、体腔内に導入される挿入部と、前記挿入部内に通された押出部材を操作する操作部とを有し、縫合糸に取り付けられた係合部材を前記穿刺針の先端から前記押出部材で押し出して前記生体組織に前記係合部材を留置しつつ前記縫合糸を前記生体組織に通す縫合器において、前記穿刺針と接続されて設けられ、前記穿刺針に所定量の気体を送り込んで前記穿刺針から噴出させ、前記穿刺針の前方の組織を前記穿刺針から離間させるための気体導入部と、前記穿刺針から前記係合部材を押し出し可能に配置した状態で前記穿刺針の内部に前記気体を通流させる通路とを備えることを特徴とするものである。
【０００６】
この発明に係る縫合器は、穿刺針で縫合対象を穿通する際に、気体導入部から導入される気体を、通路を介して穿刺針に供給することが可能である。このため、気体を噴き出させながら生体組織に穿刺針を通し、穿通時に器官などを膨らませることができる。
【０００７】
請求項２に係る発明は、請求項１に記載の縫合器において、前記係合部材は、筒状に形成され、その内部の空間に前記気体を通流させることを特徴とするものである。
【０００８】
この発明に係る縫合器は、係合部材を穿刺針の内部に収容する場合に、係合部材内に気体を通流させることで気体の通路を確保し、穿刺針の先端から気体を噴き出すことが可能になる
【０００９】
請求項３に係る発明は、請求項１または請求項２に記載の縫合器であって、前記操作部は、前記気体導入部を備える本体部と、前記本体部に対して移動可能であって、前記穿刺針を進退させる針操作部とを有すると共に、前記針操作部に前記気体導入部と前記通路とを連通させる連通孔と、前記穿刺針を所定量だけ移動させたときに前記気体導入部から前記通路への気体の通流を遮断する気体封止部材とを設けたことを特徴とするものである。
【００１０】
この発明に係る縫合器は、気体封止部材が、穿刺針が所定量だけ移動した後に気体の供給を停止させる位置に取り付けられている。よって、穿刺針が所定量だけ移動するまでの間は気体が供給されるが、所定量を超えたら気体導入部と通路との連通が遮断される。
【００１１】
【発明の実施の形態】
本発明の第一実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図１は本実施形態における縫合器を含む内視鏡治療装置の概略図である。図２は縫合器の構成を示す断面図である。
【００１２】
図１および図２に示すように、本実施形態の縫合器１は、内視鏡治療装置２の鉗子チャンネル３に挿入されて用いられる。内視鏡治療装置２は、縫合器１を内挿した内視鏡４と、縫合器１に流体である空気などの気体を供給する流体供給手段であるエアポンプ７とからなる。さらに、内視鏡４は、体腔内に導入され、その先端に鉗子チャンネル３、照明やカメラのレンズなどを有する導入部５と、導入部５を体腔外から操作する操作部６とからなる。
【００１３】
図２に示すように縫合器１は、体腔内に挿入される軟性の挿入部１０と、体腔外で施術者の操作を受け付ける手元操作部２０とを有し、その内部に押出部材３０を挿通させた構成になっている。
【００１４】
挿入部１０は、可撓管である外側シース１１と、外側シース１１に進退可能に収容された内側シース１２と、内側シース１２の先端に取り付けられた穿刺針１３とを有する。穿刺針１３は、先端を鋭角に傾斜させて鋭利な尖部とし、生体組織への穿通を容易にしている。また、穿刺針１３は、先端の尖部に開口１４を有する中空形状をなし、その内部に縫合糸１５に取り付けられた係合部材１６を収容する。穿刺針１３および内側シース１２には、係合部材１６を穿刺針１３の開口１４から外に送り出すプッシャーである押出部材３０が手元操作部２０側から通されている。内側シース１２および穿刺針１３と押出部材３０との間、ならびに、穿刺針１３と係合部材１６との間には、それぞれ所定のクリアランスが設けられている。これは、後に説明する流体の通流を可能にするためである。
【００１５】
手元操作部２０は、内側シース１２に接続された操作部材２１と、外側シース１１に接続され、施術者が指を掛ける溝２２ａが形成されたノブを備える保持部材２２と、押出部材３０の把持用のノブ３１とを有する。
操作部材２１は、有底円筒形状を有し、開放されている端部２１ａが挿入部１０の内側シース１２の開放端１２ａに連通するように固定されており、底部に相当する端部２１ｂには押出部材３０を通す開口２０ｃが形成されている。この開口２０ｃの径は、円筒部分の内径よりも小さく、パッキン２３を併用することで押出部材３０の摺動を許容しつつ、保持部材２１内の気密を保持している。また、円筒部分の側面には、図１に示すエアポンプ７から供給される気体を操作部材２１内の空隙部分から構成される流体通路２４に導入する際に用いる流体導入部である送気ポート２５が取り付けられている。なお、端部２１ｂには、円筒部分から突出し、施術者が指を掛けるリングが形成されたハンドル２６を有している。
【００１６】
押出部材３０は、その一端が操作部材２１から引き出され、把持用のノブ３１が取り付けられている。また、その他端は、内側シース１２の先端部分または穿刺針１３に達している。この押出部材３０は、操作部材２１の開口２０ｃおよびパッキン２３に摺動可能に保持されており、操作部材２１に対して引き出したり、押し込んだりすることができる。押出部材３０が操作部材２１に押し込まれると、その先端が係合部材１６を穿刺針１３から押し出すように押圧する。
【００１７】
係合部材１６は、円柱形状の部材からなり、その長手方向の中央付近に生体組織を縫合する縫合糸１５の一端が係止されている。縫合時に係合部材１６は、長手方向の広い面積で生体組織に当接し、生体組織に係合させられて、縫合糸１５が生体組織から抜け落ちることを防止する。このような形状および機能から、係合部材１６は、Ｔ状アンカーまたはＴバーと呼ばれることもある。なお、図２において縫合糸１５は、穿刺針１３の内部から内側シース１２を経て手元操作部２０に至り、その後端から縫合器１の外に引き出されているが、縫合糸１５は、穿刺針１３の尖部の開口１４から引き出され、外側シース１１と内側シース１２との間を通って、手元操作部２０から外部に引き出されるようにしても良い。
【００１８】
また、送気ポート２５に気体を供給する送気機構について図１を用いて説明する。送気機構は、大気を吸引し、所定の圧力で吐出するエアポンプ７を有し、エアポンプ７の吐出側に、送気と排気とを選択する電磁弁８ａと、送気する気体の流量を調整する流量調整弁８ｂと、実際に供給される気体の流量をモニタする流量計８ｃとをこの順番に配管で接続し、ＣＰＵ（Central Processing Unit）９で必要な制御を行う構成になっている。ＣＰＵ９は、送気開始や送気停止を切り替えるフットスイッチまたはハンドスイッチからの命令信号を受け付けたり、流量計８ｃをモニタしたりしながら、電磁弁８ａの切り替えと流量調整弁８ｂの開度調整とを行う。なお、流量計８ｃと送気ポート２５との間も配管で接続されている。
【００１９】
次に、この縫合器１で、器官などの組織を縫合する手順について、腸などの管腔器官に穿刺する場合を例にして図１、図２、図３を用いて説明する。なお、図３は管腔器官に係合部材を留置するまでの手順を模式的に示した図である。図３に断面形状を示す管腔器官Ｂ１は、穿刺針１３からみて手前側の生体組織Ｂ１１と、奥側の生体組織Ｂ１２とが密接するようにつぶれている。
【００２０】
まず、図１の軟性内視鏡２と共に、図２に示す縫合器１の挿入部１０を体腔内に導入する。このとき、手元操作部２０の操作部材２１が、保持部材２２から所定量だけ引き出されているので、穿刺針１３は外側シース１１内に収容されている。穿刺針１３内には、１つの係合部材１６が収容されており、押出部材３０は係合部材１６を押圧しない待機位置まで後退している。
【００２１】
この状態から操作部材２１を保持部材２２に向けて所定量だけ押し込んで、穿刺針１３を外側シース１１から露出させ、図３（ａ）に示すように、縫合を行う管腔器官Ｂ１に臨む位置まで移動させる。そして、図示しないフットスイッチまたはハンドスイッチをオンして、図１に示すエアポンプ７が吐出する気体を送気ポート２５に供給する。このように送気ポート２５に供給された気体は、図２に示す操作部材２１の流体通路２４を経て挿入部１０の内側シース１２に導入される。そして、押出部材３０と内側シース１２との間のクリアランスを通ると共に、押出部材３０および係合部材１６と、穿刺針１３の内壁と間のクリアランスを通って、図３（ａ）の穿刺針１３の先端の開口１４から気体が噴き出す。
【００２２】
さらに、操作部材２１を押し込むと、穿刺針１３が、その先端から気体を噴き出しながら管腔器官Ｂ１の手前側の生体組織Ｂ１１の穿通する（図３（ｂ））。穿刺針１３の先端が生態組織Ｂ１１を貫通すると、気体が生体組織Ｂ１１と生体組織Ｂ１２との間を離間させるように導入され、図３（ｃ）に示すように管腔器官Ｂ１が膨らむ。所定量の気体を供給して、管腔器官Ｂ１が処置に必要な程度膨らんだと判断したら、図示しないフットスイッチまたはハンドスイッチをオフして、送気ポート２５への気体の供給を停止する。これにより、管腔器官Ｂ１が膨らんで内部に空腔が形成されるので、さらに穿刺針１３を押し込んでも、奥側の生体組織Ｂ１２を穿刺することはない。なお、気体を噴出しないで行われる一般的な穿刺では、手前側の生体組織Ｂ１１を穿通しても、管腔器官Ｂ１はつぶれたままであるので、生体組織Ｂ１１と生体組織Ｂ１２とが密着しているか、非常に近接しており、穿刺針１３がそのまま奥側の生体組織Ｂ１２まで穿刺してしまうことがある。
【００２３】
気体を噴き込んで管腔器官Ｂ１を膨らませた状態で、図２の押出部材３０の端部のノブ３１を掴んで、これを操作部材２１に向けて押し込む。すると、押出部材３０の先端が、保持部材１６を押圧して、穿刺針１３の開口１４から保持部材１６を押し出す（図３（ｄ））。保持部材１６の押し出しを確認したら、押出部材３０の押し込みを停止し、操作部材２１を保持部材２２から引き出す。操作部材２１に接続された内側シース１２および穿刺針１３が相対的に引き出されることになるので、穿刺針１３が管腔器官Ｂ１の生体組織Ｂ１１から抜かれる。このとき、すでに穿刺針１３から押し出され、離脱している係合部材１６は、図３（ｅ）に示すように、管腔器官Ｂ１内に留置され、係合部材１６に取り付けられている縫合糸１５が、穿刺針１３の抜けた生体組織Ｂ１１を貫通する。この縫合糸１５を他の処置具などで引っ張っても、係合部材１６がアンカー効果を果たすので、縫合糸１５が管腔器官Ｂ１から抜けることはない。その後は、この縫合糸１５を他の器官や生体組織に貫通させた他の縫合糸などに結び付ける。
【００２４】
なお、係合部材１６が穿刺針１３内から脱落を防止するために、係合部材１６を穿刺針１３の内壁に摺動可能に接触させる場合には、係合部材１６の断面を楕円形状とし、その長軸を穿刺針１３の内径とほぼ等しくし、その短軸を穿刺針１３の内径より小さくすれば、気体を通流させるクリアランスを確保することができる。また、穿刺針１３の内径にほぼ等しい外径にする場合には、係合部材１６の長さ方向に沿って溝を形成すると良い。さらに、穿刺針１３の内径よりも径の小さい係合部材１６を長さ方向に沿って湾曲させても良い。係合部材１６およびその押出部材３０は他の変形例について図４から図７を用いて以下に説明する。
【００２５】
図４（ａ）の係合部材４０は、外径が穿刺針１３の内径にほぼ等しい中空のパイプの周方向の一部を窪ませて、窪み４０ａの中央付近に縫合糸１５を取り付けた形状を有する。また、押出部材４１も、外径が穿刺針１３の内径にほぼ等しい中空の部材から構成している。このような係合部材４０および押出部材４１は、その中空部分を利用して気体を通流させることができる。
【００２６】
図４（ｂ）に示す係合部材４３は、穿刺針１３の内径にほぼ等しい幅を有する平板からなり、その中央部分に縫合糸１５が取り付けられている。これに対する押出部材４４は、係合部材４３を確実に押圧するための２つのスリット４４ａが先端部分に形成されたパイプ形状を有する。この場合は、押出部材４４の中空部分と、係合部材４３と穿刺針１３の内壁との間のクリアランスを利用して気体を通流させることができる。
【００２７】
図５（ａ）、図５（ｂ）に示す係合部材４５は、穿刺針１３の内径よりも小さい外径を有し、その長さ方向の中央部分に縫合糸１５が取り付けられている。また、長さ方向における縫合糸１５の取り付け位置と端部との間には、外径を減少させた縮径部分４５ａが形成されている。押出部材４６は、中空のパイプの先端に、係合部材４５の縮径部分４５ａを把持する２本の爪４６ａを有している。この爪４６ａは、弾性変形が可能であり、図５（ａ）に示すように、穿刺針１３内では穿刺針１３の内壁に押し付けられて閉じ、係合部材４５の縮径部４５ａを把持する。一方、爪４６ａが穿刺針１３から出ると、図５（ｂ）に示すように開いて、係合部材４５の把持を解除する。このため、穿刺針１３内に収容された係合部材４５は、気体の通流などにより穿刺針１３から脱落することはないが、押出部材４６により穿刺針１３から押し出されたときは、容易に脱離することができる。この場合も、押出部材４６の中空部分と、係合部材４５と穿刺針１３の内壁との間のクリアランスを利用して気体を通流させることができる。
【００２８】
図６（ａ）、図６（ｂ）に示す係合部材４７は、穿刺針１３の内径よりも小さい外径を有し、その長さ方向の中央部分に縫合糸１５が取り付けられている。また、係合部材４７は、その一部を反らせて、穿刺針１３の内壁に当接するストッパ４７ａを形成している。このストッパ４７ａは、係合部材４７のうち、最も径の太い部分となり、その太さは穿刺針１３の内径以上である。したがって、ストッパ４７ａを押し戻すようにして穿刺針１３内に係合部材４７を収容すると、ストッパ４７ａにより係合部材４７の移動が抑制される。このような係合部材４７に好適な押出部材４８は、穿刺針１３の内径との間に所定のクリアランスを形成する中実のロッドである。この場合は、押出部材４７および押出部材４８と、穿刺針１３の内壁との間のクリアランスを利用して気体を通流させることができる。
【００２９】
図７（ａ）に示す係合部材４９は、穿刺針１３の外形と同程度の内径を有するパイプからなり、穿刺針１３に外装して用いられる。縫合糸１５は、係合部材４９の長さ方向の中央付近に取り付けられている。この係合部材４９に好適な押出部材５０は、穿刺針１３に外装されるパイプがあげられる。この保持部材４９を留置する場合には、図７（ｂ）に示すように、押出部材５０を穿刺針１３の外壁に沿って送って、穿刺針１３の先端から係合部材４９を押し出す。なお、気体の通流は、穿刺針１３内を利用することができる。
【００３０】
次に、本発明の第二実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図８および図９は本実施形態における縫合器の構成を示す断面図である。なお、前記の第一実施形態と同一の構成要素は同じ符号を付し、詳細な説明の重複する部分は省略する。
図８に示す縫合器７１は、内視鏡治療装置の鉗子チャンネルに挿入して使用されるもので、体腔内に導入される挿入部７２と、施術者が操作する手元操作部７３とを有している。
【００３１】
挿入部７２は、外側シース１１と、外側シース１１に内挿される内側シース１２とを有し、内側シース１２の先端には穿刺針１３が取り付けられている。穿刺針１３には、係合部材１６が収容されており、係合部材１６を押し出す押出部材３０が手元操作部７３側から挿入されている。なお、係合部材１６は、前記第一実施形態における図４から図７の係合部材４０，４３，４５，４７，４９であっても良い。
【００３２】
手元操作部７３は、外側シース１１に接続された操作本体部７４に、内側シース１２に接続されて穿刺針１３を進退させる針操作部７５が所定のクリアランスを持って内装され、操作本体部７４と針操作部７５との間に送気を調整する流体封止部材７６，７７を介在させた構成になっている。
【００３３】
操作本体部７４は、円筒形を有すると共に、その円周面に施術者が指を掛ける溝部７８が形成されている。この操作本体部７４には、エアポンプから供給される流体である気体を操作本体部７４内に導入するための送気ポート２５が設けられている。
【００３４】
針操作部７５は、有底円筒形状を有し、開放されている端部７５ａが挿入部７２の内側シース１２の開放端１２ａに連通するように固定されており、底部に相当する端部７５ｂには押出部材３０を通す開口７９が形成されている。この開口７９の径は、円筒部分の内径よりも小さく、パッキン８０を併用することで押出部材３０の摺動を許容しつつ、気密を保持している。また、円筒部分の側面には、送気ポート２５から操作本体部７４内に導入された気体を、針操作部７５の内部に導く通気孔８１が設けられており、この通気孔８１を介して気体を針操作部７５の内部の空隙部分で構成される流体通路８２に導入することで、これに連通する内側シース１２および穿刺針１３に気体が供給される。なお、端部７５ｂには、円筒部分から突出し、施術者が指を掛けるリングが形成されたハンドル２６を有している。
【００３５】
また、針操作部７５には、通気孔８１を挟むように２本の溝（第一の溝８３、第二の溝８４）が円周に沿って形成されている。この溝８３，８４は、流体封止部材７６，７７の位置決め、および固定に用いられる。第一の溝８３は、通気孔８１よりも内側シース１２側に形成されている。第二の溝８４は、通気孔８１よりもハンドル２６側であって、後に説明する穿刺針１３に押出量に応じた位置に形成されている。
【００３６】
操作本体部７４と針操作部７５との間に介在する流体封止部材７６，７７は、第一の溝８３に装着される第一のパッキン７６と、第二の溝８４に装着される第二のパッキン７７からなる。第一のパッキン７６および第二のパッキン７７は、Ｏリングなどのリング状のシール部材で、針操作部７５の溝８３，８４と操作本体部７４の内壁とのそれぞれに隙間なく密接する。図８のように針操作部７５が操作本体部７４から引き出された状態、つまり２つのパッキン７６，７７の間に送気ポート２５が位置する場合は、操作本体部７４の内壁と針操作部７５の外壁およびパッキン７６，７７で区画される空間の気密を保持し、この空間に導入される気体が通気孔８１以外から流出することを防止する。また、図８に示すように、針操作部７５が所定量だけ操作本体部７４に押し込まれ、第二のパッキン７７が送気ポート２５の取り付け位置よりも挿入部７２側に移動したときには、第二のパッキン７７が送気ポート２５から通気孔８１への気体の通流を遮断する。
【００３７】
次に、この縫合器７１を用いた縫合処置について説明する。
まず、縫合器７１を軟性内視鏡のチャンネルを利用して体腔内に導入し、図示しないフットスイッチまたはハンドスイッチを操作して、エアポンプからの気体を送気ポート２５に供給する。このとき、送気ポート２５に供給された気体は、操作本体部７４の内壁と針操作部７５の外壁およびパッキン７６，７７で区画される空間に導入され、通気孔８１から針操作部７５内部の流体通路８２に流れ、これに連通する内側シース１２内を通り、穿刺針１３の開口１４から噴き出す。
【００３８】
この状態で、ハンドル２６を持って針操作部７５を押し込むと、穿刺針１３が縫合対象となる生体組織に刺さる。このとき、針操作部７５の移動に伴ってパッキン７６，７７が操作本体部７４の内壁を摺動する。針操作部７５およびパッキン７６，７７が移動しても、第二のパッキン７７が送気ポート２５の配設位置に達するまでは、通気孔８１から穿刺針１３に気体が供給され続けるので、穿刺針１３からは気体が噴き出し続ける。
【００３９】
さらに針操作部７５が押し込まれると、穿刺針１３が生体組織を貫通する。このときに穿刺針１３から気体が噴き出しているので、穿通した生体組織が器官の一部である場合には、その器官が気体により膨らむ。
そして、穿刺針１３が完全に生体組織を貫通したときには、気体の噴き出しが停止する。このときの針操作部７５は、図９に示す位置まで押し込まれており、針操作部７５と共に押し込まれる第二のパッキン７７が送気ポート２５の配設位置よりも生体組織側に移動しているためである。送気ポート２５から導入される気体は、通気孔８１には流れず、操作本体部７４と針操作部７５との隙間から外部に排気される。この後に、押出部材３０を押し込んで、穿刺針１３内の係合部材１６を押し出して、係合部材１６を留置させつつ、縫合糸１５を生体組織に通す。穿刺針１３を引き抜いてから、この縫合糸１５を他の縫合糸などに結び付ける。
【００４０】
このように、この縫合器７１は、穿刺針１３の先から気体を噴き出しながら生体組織を穿通するので、器官などを縫合する場合には器官を膨らませながら穿通することができる。また、穿刺針１３の先端が、係合部材１６の押し出しに充分な量だけ生体組織を貫通するときの穿刺針１３の移動量、つまり針操作部７５の押込量をあらかじめ調べ、その位置、もしくはその直前で、第二のパッキン７７が送気ポート２５を通過して、穿刺針１３への気体の通流を遮断するように設定してあるので、穿通後は、器官が膨らみ過ぎないように気体の噴き出しを停止することができる。気体の噴き出しを停止する際の切り替えを穿刺針１３の押し込みに伴って移動するパッキン７６，７７で行うようにしたので、適切なタイミングで確実に気体の噴き出しを停止できる。第一のパッキン７６は、気体が外側シース１１と内側シース１２との間から体腔内に噴き出すことを防止する役割を有するが、流体封止部材としては、第二のパッキン７７のみを使用しても良い。
【００４１】
なお、本発明は前記の各実施形態に限定されずに広く応用することが可能である。
例えば、穿刺針１３の先端から噴き出させる流体は、空気やその他の気体であっても良いが、生理食塩水などの液体であっても良い。
【００４２】
また、図１０（ａ）に示すように、穿刺針１３内に複数の係合部材９１を収容させても良い。各係合部材９１は、円筒形状を有し、周方向の一部を、押出部材９２の移動方向であるその長さ方向の中央付近を残して窪ませて、未加工の中央部分９３と窪ませた部分９４との間に、縫合糸１５を挿通させる隙間を形成させている。隣り合う２つの係合部材９１は、それぞれの隙間を挿通させた縫合糸１５により連結され、穿刺針１３内に収容される。係合部材９１は、円筒形状による貫通孔９５が連なった形態で収容されるので、送気ポート２５（図２参照）から送られてくる気体を、その貫通孔９５を通じて穿刺針１３の先端の開口１４から噴き出させることができる。このように貫通孔９５を有する係合部材９１に好適な押出部材９２は、パイプ形状でその内部に気体を通流させる貫通孔９６を有するものが良い。押出部材９２への気体の導入は、操作本体部２１，７５の流体通路２４，８２と連通する孔を設けることで実現できる。
【００４３】
このように連続させて収容された係合部材９１を利用して縫合処置を行うときには、手元操作部２０，７３で押出部材９２を押し込む。この押出部材９２は、一番奥に収容されている係合部材９１を押圧し、隣の係合部材９１を穿刺針１３の開口１４に向けて押す。その他の係合部材９１は、押出部材９２側に位置する他の係合部材９２に押されるようにして穿刺針１３の開口１４に向けて押される。そして、穿刺針１３の開口１４に近い係合部材９１から順番に、穿刺針１３から器官内に押し出される。例えば、図１０（ｂ）に模式的に示すように、２つの生体組織を縫合する場合に、係合部材９１は、穿刺針１３が穿通した２つ目の生体組織側に留置される。この状態で縫合糸１５を引っ張ると、縫合糸１５を挿通させた未加工部分９２が生体組織に当接するように引っ張られるので、生体組織と係合部材９１との間に大きな接触面積を確保できる。同様にして残りの係合部材９１も、所定の間隔を置いて、２つ目の生体組織に大きな接触面積で当接させることができる。
【００４４】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項１に係る発明によれば、流体を噴き出させ、器官などを膨らませながら生体組織に穿刺針を通すことができるので、縫合対象のみを確実に穿通し、縫合処置を行うことが可能になる。
請求項２に係る発明によれば、係合部材を穿刺針内に収容した状態で流体の通路を確保できるので、生体組織に穿刺しながら流体を噴き出させることが可能になる。
請求項３に係る発明によれば、穿刺針が所定量だけ移動するまでの間は流体が供給されるが、所定量を超えたら流体導入部と流体通路との連通が遮断されるので、器官などを適度に膨らませることができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】 本発明の縫合器を含む内視鏡治療装置の概略図である。
【図２】 縫合器の構成を示す断面図である。
【図３】 管腔器官に係合部材を留置するまでの手順を模式的に示した図である。
【図４】 係合部材と押出部材の変形例を示す斜視図である。
【図５】 係合部材と押出部材の変形例を示す（ａ）断面図、（ｂ）斜視図である。
【図６】 係合部材と押出部材の変形例を示す（ａ）断面図、（ｂ）斜視図である。
【図７】 係合部材と押出部材の変形例を示す斜視図である。
【図８】 縫合器の構成を示す断面図である。
【図９】 縫合器の構成を示す断面図である。
【図１０】 係合部材と押出部材の変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
１ 縫合器
１０ 挿入部
１３ 穿刺針
１５ 縫合糸
１６ 係合部材
２０ 手元操作部
２１ 操作部材
２４ 流体通路
２５ 送気ポート（流体導入部）
３０ 押出部材
７１ 縫合器
７２ 挿入部
７３ 手元操作部（操作部）
７４ 操作本体部（本体部）
７５ 針操作部
７６ 第一のパッキン（流体封止部材）
７７ 第二のパッキン（流体封止部材）
８１ 通気孔
８２ 流体通路
【発明の属する技術分野】
本発明は、内視鏡のチャンネルを通じて体腔に導入される縫合器に関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来、体腔内に処置器を導入し、必要な処置を行う手法が知られている。この種の処置に用いられる装置としては、カテーテルの先端部分に設けられた穿刺針内に収容した縫合糸を取り付けた係合部材を押出部材でカテーテルの外に押し出して、組織を縫合するものがある（例えば、特許文献１参照）。ここで、特許文献１に記載されている心腔内縫合手術用具は、穿刺カーテルを出し入れ自在にシースに装着すると共に、側注チューブから穿刺カテーテルの内に血液凝固防止用の生理食塩水を注入できる構成になっている。
【０００３】
【特許文献１】
特許第３１３４２８８号公報（段落番号０００７、００１０、第４図）
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、腸や管状の器官などを縫合する場合のように、縫合対象の生体組織が他の生体組織に近接するときには、縫合対象の生体組織を穿通する穿刺針が、他の生体組織を穿通したり、傷付けたりする可能性があるので、慎重に操作をしなければならないという問題があった。
本発明は、このような問題を解決するもので、その目的は、縫合対象のみを確実に穿刺し、係合部材を留置できる縫合器を提供することにある。
【０００５】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供している。
請求項１に係る発明は、先端に開口が形成された中空の穿刺針を備え、体腔内に導入される挿入部と、前記挿入部内に通された押出部材を操作する操作部とを有し、縫合糸に取り付けられた係合部材を前記穿刺針の先端から前記押出部材で押し出して前記生体組織に前記係合部材を留置しつつ前記縫合糸を前記生体組織に通す縫合器において、前記穿刺針と接続されて設けられ、前記穿刺針に所定量の気体を送り込んで前記穿刺針から噴出させ、前記穿刺針の前方の組織を前記穿刺針から離間させるための気体導入部と、前記穿刺針から前記係合部材を押し出し可能に配置した状態で前記穿刺針の内部に前記気体を通流させる通路とを備えることを特徴とするものである。
【０００６】
この発明に係る縫合器は、穿刺針で縫合対象を穿通する際に、気体導入部から導入される気体を、通路を介して穿刺針に供給することが可能である。このため、気体を噴き出させながら生体組織に穿刺針を通し、穿通時に器官などを膨らませることができる。
【０００７】
請求項２に係る発明は、請求項１に記載の縫合器において、前記係合部材は、筒状に形成され、その内部の空間に前記気体を通流させることを特徴とするものである。
【０００８】
この発明に係る縫合器は、係合部材を穿刺針の内部に収容する場合に、係合部材内に気体を通流させることで気体の通路を確保し、穿刺針の先端から気体を噴き出すことが可能になる
【０００９】
請求項３に係る発明は、請求項１または請求項２に記載の縫合器であって、前記操作部は、前記気体導入部を備える本体部と、前記本体部に対して移動可能であって、前記穿刺針を進退させる針操作部とを有すると共に、前記針操作部に前記気体導入部と前記通路とを連通させる連通孔と、前記穿刺針を所定量だけ移動させたときに前記気体導入部から前記通路への気体の通流を遮断する気体封止部材とを設けたことを特徴とするものである。
【００１０】
この発明に係る縫合器は、気体封止部材が、穿刺針が所定量だけ移動した後に気体の供給を停止させる位置に取り付けられている。よって、穿刺針が所定量だけ移動するまでの間は気体が供給されるが、所定量を超えたら気体導入部と通路との連通が遮断される。
【００１１】
【発明の実施の形態】
本発明の第一実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図１は本実施形態における縫合器を含む内視鏡治療装置の概略図である。図２は縫合器の構成を示す断面図である。
【００１２】
図１および図２に示すように、本実施形態の縫合器１は、内視鏡治療装置２の鉗子チャンネル３に挿入されて用いられる。内視鏡治療装置２は、縫合器１を内挿した内視鏡４と、縫合器１に流体である空気などの気体を供給する流体供給手段であるエアポンプ７とからなる。さらに、内視鏡４は、体腔内に導入され、その先端に鉗子チャンネル３、照明やカメラのレンズなどを有する導入部５と、導入部５を体腔外から操作する操作部６とからなる。
【００１３】
図２に示すように縫合器１は、体腔内に挿入される軟性の挿入部１０と、体腔外で施術者の操作を受け付ける手元操作部２０とを有し、その内部に押出部材３０を挿通させた構成になっている。
【００１４】
挿入部１０は、可撓管である外側シース１１と、外側シース１１に進退可能に収容された内側シース１２と、内側シース１２の先端に取り付けられた穿刺針１３とを有する。穿刺針１３は、先端を鋭角に傾斜させて鋭利な尖部とし、生体組織への穿通を容易にしている。また、穿刺針１３は、先端の尖部に開口１４を有する中空形状をなし、その内部に縫合糸１５に取り付けられた係合部材１６を収容する。穿刺針１３および内側シース１２には、係合部材１６を穿刺針１３の開口１４から外に送り出すプッシャーである押出部材３０が手元操作部２０側から通されている。内側シース１２および穿刺針１３と押出部材３０との間、ならびに、穿刺針１３と係合部材１６との間には、それぞれ所定のクリアランスが設けられている。これは、後に説明する流体の通流を可能にするためである。
【００１５】
手元操作部２０は、内側シース１２に接続された操作部材２１と、外側シース１１に接続され、施術者が指を掛ける溝２２ａが形成されたノブを備える保持部材２２と、押出部材３０の把持用のノブ３１とを有する。
操作部材２１は、有底円筒形状を有し、開放されている端部２１ａが挿入部１０の内側シース１２の開放端１２ａに連通するように固定されており、底部に相当する端部２１ｂには押出部材３０を通す開口２０ｃが形成されている。この開口２０ｃの径は、円筒部分の内径よりも小さく、パッキン２３を併用することで押出部材３０の摺動を許容しつつ、保持部材２１内の気密を保持している。また、円筒部分の側面には、図１に示すエアポンプ７から供給される気体を操作部材２１内の空隙部分から構成される流体通路２４に導入する際に用いる流体導入部である送気ポート２５が取り付けられている。なお、端部２１ｂには、円筒部分から突出し、施術者が指を掛けるリングが形成されたハンドル２６を有している。
【００１６】
押出部材３０は、その一端が操作部材２１から引き出され、把持用のノブ３１が取り付けられている。また、その他端は、内側シース１２の先端部分または穿刺針１３に達している。この押出部材３０は、操作部材２１の開口２０ｃおよびパッキン２３に摺動可能に保持されており、操作部材２１に対して引き出したり、押し込んだりすることができる。押出部材３０が操作部材２１に押し込まれると、その先端が係合部材１６を穿刺針１３から押し出すように押圧する。
【００１７】
係合部材１６は、円柱形状の部材からなり、その長手方向の中央付近に生体組織を縫合する縫合糸１５の一端が係止されている。縫合時に係合部材１６は、長手方向の広い面積で生体組織に当接し、生体組織に係合させられて、縫合糸１５が生体組織から抜け落ちることを防止する。このような形状および機能から、係合部材１６は、Ｔ状アンカーまたはＴバーと呼ばれることもある。なお、図２において縫合糸１５は、穿刺針１３の内部から内側シース１２を経て手元操作部２０に至り、その後端から縫合器１の外に引き出されているが、縫合糸１５は、穿刺針１３の尖部の開口１４から引き出され、外側シース１１と内側シース１２との間を通って、手元操作部２０から外部に引き出されるようにしても良い。
【００１８】
また、送気ポート２５に気体を供給する送気機構について図１を用いて説明する。送気機構は、大気を吸引し、所定の圧力で吐出するエアポンプ７を有し、エアポンプ７の吐出側に、送気と排気とを選択する電磁弁８ａと、送気する気体の流量を調整する流量調整弁８ｂと、実際に供給される気体の流量をモニタする流量計８ｃとをこの順番に配管で接続し、ＣＰＵ（Central Processing Unit）９で必要な制御を行う構成になっている。ＣＰＵ９は、送気開始や送気停止を切り替えるフットスイッチまたはハンドスイッチからの命令信号を受け付けたり、流量計８ｃをモニタしたりしながら、電磁弁８ａの切り替えと流量調整弁８ｂの開度調整とを行う。なお、流量計８ｃと送気ポート２５との間も配管で接続されている。
【００１９】
次に、この縫合器１で、器官などの組織を縫合する手順について、腸などの管腔器官に穿刺する場合を例にして図１、図２、図３を用いて説明する。なお、図３は管腔器官に係合部材を留置するまでの手順を模式的に示した図である。図３に断面形状を示す管腔器官Ｂ１は、穿刺針１３からみて手前側の生体組織Ｂ１１と、奥側の生体組織Ｂ１２とが密接するようにつぶれている。
【００２０】
まず、図１の軟性内視鏡２と共に、図２に示す縫合器１の挿入部１０を体腔内に導入する。このとき、手元操作部２０の操作部材２１が、保持部材２２から所定量だけ引き出されているので、穿刺針１３は外側シース１１内に収容されている。穿刺針１３内には、１つの係合部材１６が収容されており、押出部材３０は係合部材１６を押圧しない待機位置まで後退している。
【００２１】
この状態から操作部材２１を保持部材２２に向けて所定量だけ押し込んで、穿刺針１３を外側シース１１から露出させ、図３（ａ）に示すように、縫合を行う管腔器官Ｂ１に臨む位置まで移動させる。そして、図示しないフットスイッチまたはハンドスイッチをオンして、図１に示すエアポンプ７が吐出する気体を送気ポート２５に供給する。このように送気ポート２５に供給された気体は、図２に示す操作部材２１の流体通路２４を経て挿入部１０の内側シース１２に導入される。そして、押出部材３０と内側シース１２との間のクリアランスを通ると共に、押出部材３０および係合部材１６と、穿刺針１３の内壁と間のクリアランスを通って、図３（ａ）の穿刺針１３の先端の開口１４から気体が噴き出す。
【００２２】
さらに、操作部材２１を押し込むと、穿刺針１３が、その先端から気体を噴き出しながら管腔器官Ｂ１の手前側の生体組織Ｂ１１の穿通する（図３（ｂ））。穿刺針１３の先端が生態組織Ｂ１１を貫通すると、気体が生体組織Ｂ１１と生体組織Ｂ１２との間を離間させるように導入され、図３（ｃ）に示すように管腔器官Ｂ１が膨らむ。所定量の気体を供給して、管腔器官Ｂ１が処置に必要な程度膨らんだと判断したら、図示しないフットスイッチまたはハンドスイッチをオフして、送気ポート２５への気体の供給を停止する。これにより、管腔器官Ｂ１が膨らんで内部に空腔が形成されるので、さらに穿刺針１３を押し込んでも、奥側の生体組織Ｂ１２を穿刺することはない。なお、気体を噴出しないで行われる一般的な穿刺では、手前側の生体組織Ｂ１１を穿通しても、管腔器官Ｂ１はつぶれたままであるので、生体組織Ｂ１１と生体組織Ｂ１２とが密着しているか、非常に近接しており、穿刺針１３がそのまま奥側の生体組織Ｂ１２まで穿刺してしまうことがある。
【００２３】
気体を噴き込んで管腔器官Ｂ１を膨らませた状態で、図２の押出部材３０の端部のノブ３１を掴んで、これを操作部材２１に向けて押し込む。すると、押出部材３０の先端が、保持部材１６を押圧して、穿刺針１３の開口１４から保持部材１６を押し出す（図３（ｄ））。保持部材１６の押し出しを確認したら、押出部材３０の押し込みを停止し、操作部材２１を保持部材２２から引き出す。操作部材２１に接続された内側シース１２および穿刺針１３が相対的に引き出されることになるので、穿刺針１３が管腔器官Ｂ１の生体組織Ｂ１１から抜かれる。このとき、すでに穿刺針１３から押し出され、離脱している係合部材１６は、図３（ｅ）に示すように、管腔器官Ｂ１内に留置され、係合部材１６に取り付けられている縫合糸１５が、穿刺針１３の抜けた生体組織Ｂ１１を貫通する。この縫合糸１５を他の処置具などで引っ張っても、係合部材１６がアンカー効果を果たすので、縫合糸１５が管腔器官Ｂ１から抜けることはない。その後は、この縫合糸１５を他の器官や生体組織に貫通させた他の縫合糸などに結び付ける。
【００２４】
なお、係合部材１６が穿刺針１３内から脱落を防止するために、係合部材１６を穿刺針１３の内壁に摺動可能に接触させる場合には、係合部材１６の断面を楕円形状とし、その長軸を穿刺針１３の内径とほぼ等しくし、その短軸を穿刺針１３の内径より小さくすれば、気体を通流させるクリアランスを確保することができる。また、穿刺針１３の内径にほぼ等しい外径にする場合には、係合部材１６の長さ方向に沿って溝を形成すると良い。さらに、穿刺針１３の内径よりも径の小さい係合部材１６を長さ方向に沿って湾曲させても良い。係合部材１６およびその押出部材３０は他の変形例について図４から図７を用いて以下に説明する。
【００２５】
図４（ａ）の係合部材４０は、外径が穿刺針１３の内径にほぼ等しい中空のパイプの周方向の一部を窪ませて、窪み４０ａの中央付近に縫合糸１５を取り付けた形状を有する。また、押出部材４１も、外径が穿刺針１３の内径にほぼ等しい中空の部材から構成している。このような係合部材４０および押出部材４１は、その中空部分を利用して気体を通流させることができる。
【００２６】
図４（ｂ）に示す係合部材４３は、穿刺針１３の内径にほぼ等しい幅を有する平板からなり、その中央部分に縫合糸１５が取り付けられている。これに対する押出部材４４は、係合部材４３を確実に押圧するための２つのスリット４４ａが先端部分に形成されたパイプ形状を有する。この場合は、押出部材４４の中空部分と、係合部材４３と穿刺針１３の内壁との間のクリアランスを利用して気体を通流させることができる。
【００２７】
図５（ａ）、図５（ｂ）に示す係合部材４５は、穿刺針１３の内径よりも小さい外径を有し、その長さ方向の中央部分に縫合糸１５が取り付けられている。また、長さ方向における縫合糸１５の取り付け位置と端部との間には、外径を減少させた縮径部分４５ａが形成されている。押出部材４６は、中空のパイプの先端に、係合部材４５の縮径部分４５ａを把持する２本の爪４６ａを有している。この爪４６ａは、弾性変形が可能であり、図５（ａ）に示すように、穿刺針１３内では穿刺針１３の内壁に押し付けられて閉じ、係合部材４５の縮径部４５ａを把持する。一方、爪４６ａが穿刺針１３から出ると、図５（ｂ）に示すように開いて、係合部材４５の把持を解除する。このため、穿刺針１３内に収容された係合部材４５は、気体の通流などにより穿刺針１３から脱落することはないが、押出部材４６により穿刺針１３から押し出されたときは、容易に脱離することができる。この場合も、押出部材４６の中空部分と、係合部材４５と穿刺針１３の内壁との間のクリアランスを利用して気体を通流させることができる。
【００２８】
図６（ａ）、図６（ｂ）に示す係合部材４７は、穿刺針１３の内径よりも小さい外径を有し、その長さ方向の中央部分に縫合糸１５が取り付けられている。また、係合部材４７は、その一部を反らせて、穿刺針１３の内壁に当接するストッパ４７ａを形成している。このストッパ４７ａは、係合部材４７のうち、最も径の太い部分となり、その太さは穿刺針１３の内径以上である。したがって、ストッパ４７ａを押し戻すようにして穿刺針１３内に係合部材４７を収容すると、ストッパ４７ａにより係合部材４７の移動が抑制される。このような係合部材４７に好適な押出部材４８は、穿刺針１３の内径との間に所定のクリアランスを形成する中実のロッドである。この場合は、押出部材４７および押出部材４８と、穿刺針１３の内壁との間のクリアランスを利用して気体を通流させることができる。
【００２９】
図７（ａ）に示す係合部材４９は、穿刺針１３の外形と同程度の内径を有するパイプからなり、穿刺針１３に外装して用いられる。縫合糸１５は、係合部材４９の長さ方向の中央付近に取り付けられている。この係合部材４９に好適な押出部材５０は、穿刺針１３に外装されるパイプがあげられる。この保持部材４９を留置する場合には、図７（ｂ）に示すように、押出部材５０を穿刺針１３の外壁に沿って送って、穿刺針１３の先端から係合部材４９を押し出す。なお、気体の通流は、穿刺針１３内を利用することができる。
【００３０】
次に、本発明の第二実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図８および図９は本実施形態における縫合器の構成を示す断面図である。なお、前記の第一実施形態と同一の構成要素は同じ符号を付し、詳細な説明の重複する部分は省略する。
図８に示す縫合器７１は、内視鏡治療装置の鉗子チャンネルに挿入して使用されるもので、体腔内に導入される挿入部７２と、施術者が操作する手元操作部７３とを有している。
【００３１】
挿入部７２は、外側シース１１と、外側シース１１に内挿される内側シース１２とを有し、内側シース１２の先端には穿刺針１３が取り付けられている。穿刺針１３には、係合部材１６が収容されており、係合部材１６を押し出す押出部材３０が手元操作部７３側から挿入されている。なお、係合部材１６は、前記第一実施形態における図４から図７の係合部材４０，４３，４５，４７，４９であっても良い。
【００３２】
手元操作部７３は、外側シース１１に接続された操作本体部７４に、内側シース１２に接続されて穿刺針１３を進退させる針操作部７５が所定のクリアランスを持って内装され、操作本体部７４と針操作部７５との間に送気を調整する流体封止部材７６，７７を介在させた構成になっている。
【００３３】
操作本体部７４は、円筒形を有すると共に、その円周面に施術者が指を掛ける溝部７８が形成されている。この操作本体部７４には、エアポンプから供給される流体である気体を操作本体部７４内に導入するための送気ポート２５が設けられている。
【００３４】
針操作部７５は、有底円筒形状を有し、開放されている端部７５ａが挿入部７２の内側シース１２の開放端１２ａに連通するように固定されており、底部に相当する端部７５ｂには押出部材３０を通す開口７９が形成されている。この開口７９の径は、円筒部分の内径よりも小さく、パッキン８０を併用することで押出部材３０の摺動を許容しつつ、気密を保持している。また、円筒部分の側面には、送気ポート２５から操作本体部７４内に導入された気体を、針操作部７５の内部に導く通気孔８１が設けられており、この通気孔８１を介して気体を針操作部７５の内部の空隙部分で構成される流体通路８２に導入することで、これに連通する内側シース１２および穿刺針１３に気体が供給される。なお、端部７５ｂには、円筒部分から突出し、施術者が指を掛けるリングが形成されたハンドル２６を有している。
【００３５】
また、針操作部７５には、通気孔８１を挟むように２本の溝（第一の溝８３、第二の溝８４）が円周に沿って形成されている。この溝８３，８４は、流体封止部材７６，７７の位置決め、および固定に用いられる。第一の溝８３は、通気孔８１よりも内側シース１２側に形成されている。第二の溝８４は、通気孔８１よりもハンドル２６側であって、後に説明する穿刺針１３に押出量に応じた位置に形成されている。
【００３６】
操作本体部７４と針操作部７５との間に介在する流体封止部材７６，７７は、第一の溝８３に装着される第一のパッキン７６と、第二の溝８４に装着される第二のパッキン７７からなる。第一のパッキン７６および第二のパッキン７７は、Ｏリングなどのリング状のシール部材で、針操作部７５の溝８３，８４と操作本体部７４の内壁とのそれぞれに隙間なく密接する。図８のように針操作部７５が操作本体部７４から引き出された状態、つまり２つのパッキン７６，７７の間に送気ポート２５が位置する場合は、操作本体部７４の内壁と針操作部７５の外壁およびパッキン７６，７７で区画される空間の気密を保持し、この空間に導入される気体が通気孔８１以外から流出することを防止する。また、図８に示すように、針操作部７５が所定量だけ操作本体部７４に押し込まれ、第二のパッキン７７が送気ポート２５の取り付け位置よりも挿入部７２側に移動したときには、第二のパッキン７７が送気ポート２５から通気孔８１への気体の通流を遮断する。
【００３７】
次に、この縫合器７１を用いた縫合処置について説明する。
まず、縫合器７１を軟性内視鏡のチャンネルを利用して体腔内に導入し、図示しないフットスイッチまたはハンドスイッチを操作して、エアポンプからの気体を送気ポート２５に供給する。このとき、送気ポート２５に供給された気体は、操作本体部７４の内壁と針操作部７５の外壁およびパッキン７６，７７で区画される空間に導入され、通気孔８１から針操作部７５内部の流体通路８２に流れ、これに連通する内側シース１２内を通り、穿刺針１３の開口１４から噴き出す。
【００３８】
この状態で、ハンドル２６を持って針操作部７５を押し込むと、穿刺針１３が縫合対象となる生体組織に刺さる。このとき、針操作部７５の移動に伴ってパッキン７６，７７が操作本体部７４の内壁を摺動する。針操作部７５およびパッキン７６，７７が移動しても、第二のパッキン７７が送気ポート２５の配設位置に達するまでは、通気孔８１から穿刺針１３に気体が供給され続けるので、穿刺針１３からは気体が噴き出し続ける。
【００３９】
さらに針操作部７５が押し込まれると、穿刺針１３が生体組織を貫通する。このときに穿刺針１３から気体が噴き出しているので、穿通した生体組織が器官の一部である場合には、その器官が気体により膨らむ。
そして、穿刺針１３が完全に生体組織を貫通したときには、気体の噴き出しが停止する。このときの針操作部７５は、図９に示す位置まで押し込まれており、針操作部７５と共に押し込まれる第二のパッキン７７が送気ポート２５の配設位置よりも生体組織側に移動しているためである。送気ポート２５から導入される気体は、通気孔８１には流れず、操作本体部７４と針操作部７５との隙間から外部に排気される。この後に、押出部材３０を押し込んで、穿刺針１３内の係合部材１６を押し出して、係合部材１６を留置させつつ、縫合糸１５を生体組織に通す。穿刺針１３を引き抜いてから、この縫合糸１５を他の縫合糸などに結び付ける。
【００４０】
このように、この縫合器７１は、穿刺針１３の先から気体を噴き出しながら生体組織を穿通するので、器官などを縫合する場合には器官を膨らませながら穿通することができる。また、穿刺針１３の先端が、係合部材１６の押し出しに充分な量だけ生体組織を貫通するときの穿刺針１３の移動量、つまり針操作部７５の押込量をあらかじめ調べ、その位置、もしくはその直前で、第二のパッキン７７が送気ポート２５を通過して、穿刺針１３への気体の通流を遮断するように設定してあるので、穿通後は、器官が膨らみ過ぎないように気体の噴き出しを停止することができる。気体の噴き出しを停止する際の切り替えを穿刺針１３の押し込みに伴って移動するパッキン７６，７７で行うようにしたので、適切なタイミングで確実に気体の噴き出しを停止できる。第一のパッキン７６は、気体が外側シース１１と内側シース１２との間から体腔内に噴き出すことを防止する役割を有するが、流体封止部材としては、第二のパッキン７７のみを使用しても良い。
【００４１】
なお、本発明は前記の各実施形態に限定されずに広く応用することが可能である。
例えば、穿刺針１３の先端から噴き出させる流体は、空気やその他の気体であっても良いが、生理食塩水などの液体であっても良い。
【００４２】
また、図１０（ａ）に示すように、穿刺針１３内に複数の係合部材９１を収容させても良い。各係合部材９１は、円筒形状を有し、周方向の一部を、押出部材９２の移動方向であるその長さ方向の中央付近を残して窪ませて、未加工の中央部分９３と窪ませた部分９４との間に、縫合糸１５を挿通させる隙間を形成させている。隣り合う２つの係合部材９１は、それぞれの隙間を挿通させた縫合糸１５により連結され、穿刺針１３内に収容される。係合部材９１は、円筒形状による貫通孔９５が連なった形態で収容されるので、送気ポート２５（図２参照）から送られてくる気体を、その貫通孔９５を通じて穿刺針１３の先端の開口１４から噴き出させることができる。このように貫通孔９５を有する係合部材９１に好適な押出部材９２は、パイプ形状でその内部に気体を通流させる貫通孔９６を有するものが良い。押出部材９２への気体の導入は、操作本体部２１，７５の流体通路２４，８２と連通する孔を設けることで実現できる。
【００４３】
このように連続させて収容された係合部材９１を利用して縫合処置を行うときには、手元操作部２０，７３で押出部材９２を押し込む。この押出部材９２は、一番奥に収容されている係合部材９１を押圧し、隣の係合部材９１を穿刺針１３の開口１４に向けて押す。その他の係合部材９１は、押出部材９２側に位置する他の係合部材９２に押されるようにして穿刺針１３の開口１４に向けて押される。そして、穿刺針１３の開口１４に近い係合部材９１から順番に、穿刺針１３から器官内に押し出される。例えば、図１０（ｂ）に模式的に示すように、２つの生体組織を縫合する場合に、係合部材９１は、穿刺針１３が穿通した２つ目の生体組織側に留置される。この状態で縫合糸１５を引っ張ると、縫合糸１５を挿通させた未加工部分９２が生体組織に当接するように引っ張られるので、生体組織と係合部材９１との間に大きな接触面積を確保できる。同様にして残りの係合部材９１も、所定の間隔を置いて、２つ目の生体組織に大きな接触面積で当接させることができる。
【００４４】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項１に係る発明によれば、流体を噴き出させ、器官などを膨らませながら生体組織に穿刺針を通すことができるので、縫合対象のみを確実に穿通し、縫合処置を行うことが可能になる。
請求項２に係る発明によれば、係合部材を穿刺針内に収容した状態で流体の通路を確保できるので、生体組織に穿刺しながら流体を噴き出させることが可能になる。
請求項３に係る発明によれば、穿刺針が所定量だけ移動するまでの間は流体が供給されるが、所定量を超えたら流体導入部と流体通路との連通が遮断されるので、器官などを適度に膨らませることができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】 本発明の縫合器を含む内視鏡治療装置の概略図である。
【図２】 縫合器の構成を示す断面図である。
【図３】 管腔器官に係合部材を留置するまでの手順を模式的に示した図である。
【図４】 係合部材と押出部材の変形例を示す斜視図である。
【図５】 係合部材と押出部材の変形例を示す（ａ）断面図、（ｂ）斜視図である。
【図６】 係合部材と押出部材の変形例を示す（ａ）断面図、（ｂ）斜視図である。
【図７】 係合部材と押出部材の変形例を示す斜視図である。
【図８】 縫合器の構成を示す断面図である。
【図９】 縫合器の構成を示す断面図である。
【図１０】 係合部材と押出部材の変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
１ 縫合器
１０ 挿入部
１３ 穿刺針
１５ 縫合糸
１６ 係合部材
２０ 手元操作部
２１ 操作部材
２４ 流体通路
２５ 送気ポート（流体導入部）
３０ 押出部材
７１ 縫合器
７２ 挿入部
７３ 手元操作部（操作部）
７４ 操作本体部（本体部）
７５ 針操作部
７６ 第一のパッキン（流体封止部材）
７７ 第二のパッキン（流体封止部材）
８１ 通気孔
８２ 流体通路
Claims (3)
- 先端に開口が形成された中空の穿刺針を備え、体腔内に導入される挿入部と、前記挿入部内に通された押出部材を操作する操作部とを有し、縫合糸に取り付けられた係合部材を前記穿刺針の先端から前記押出部材で押し出して前記生体組織に前記係合部材を留置しつつ前記縫合糸を前記生体組織に通す縫合器において、
前記穿刺針と接続されて設けられ、前記穿刺針に所定量の気体を送り込んで前記穿刺針から噴出させ、前記穿刺針の前方の組織を前記穿刺針から離間させるための気体導入部と、前記穿刺針から前記係合部材を押し出し可能に配置した状態で前記穿刺針の内部に前記気体を通流させる通路とを備えることを特徴とする縫合器。 - 前記係合部材は、筒状に形成され、その内部の空間に前記気体を通流させることを特徴とする請求項１に記載の縫合器。
- 前記操作部は、前記気体導入部を備える本体部と、前記本体部に対して移動可能であって、前記穿刺針を進退させる針操作部とを有すると共に、前記針操作部に前記気体導入部と前記通路とを連通させる連通孔と、前記穿刺針を所定量だけ移動させたときに前記気体導入部から前記通路への気体の通流を遮断する気体封止部材とを設けたことを特徴とする請求項１または請求項２に記載の縫合器。
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