JP4138182B2 - 自動二輪車 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、後輪支持用のスイングアームが、車体フレームにピボットを介して上下揺動自在に枢支された前部クロス部材と、この前部クロス部材から後方に延びて後端に後輪を軸支する左右のアーム部材とを備え、前記前部クロス部材を鋳物部材で構成し、前記アーム部材をパイプ部材で構成し、車体フレームに搭載されるエンジンの駆動力を後輪に伝達するチェーンが、左右一方のアーム部材に沿わせて配置されてなる、チェーンドライブ方式の自動二輪車に関する。
【0002】
【従来の技術】
かかる自動二輪車は、特開平1−223092号公報により公知である。
【0003】
この自動二輪車のスイングアームは、剛性の向上および生産性の向上を図るべく、アルミ合金の押出材あるいは引抜材を所定長さに切断して前部クロス部材を構成し、アルミ合金の板材で構成した左右一対のパイプ状のアーム部材の前部側面を、前記前部クロス部材の左右の切断面を塞ぐように溶接した構造を有している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで後輪をチェーンで駆動するチェーンドライブ方式の自動二輪車は、そのチェーンがスイングアームの左右一側に沿って配置されるため、チェーンの張力が直接的に作用するスイングアームの左右一側の強度を、チェーンの張力が直接的に作用しないスイングアームの左右他側の強度よりも高くする必要がある。しかしながら、上記特開平1−223092号公報に記載されたものはスイングアームが左右対称な構造を備えているため、スイングアーム全体にチェーンの張力に耐え得る強度を持たせると、チェーンの張力が直接的に作用しない側の強度が過剰になって重量増加の要因となる問題がある。
【0005】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、鋳物部材で構成した前部クロス部材にパイプ部材で構成した左右のアーム部材を溶接してなるチェーンドライブ方式の自動二輪車において、スイングアームの左右一側および左右他側の強度配分を容易に設定できるようにすることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、後輪支持用のスイングアームが、車体フレームにピボットを介して上下揺動自在に枢支された前部クロス部材と、この前部クロス部材から後方に延びて後端に後輪を軸支する左右のアーム部材とを備え、前記前部クロス部材を鋳物部材で構成し、前記アーム部材をパイプ部材で構成し、車体フレームに搭載されるエンジンの駆動力を後輪に伝達するチェーンが、左右一方のアーム部材に沿わせて配置されてなる、チェーンドライブ方式の自動二輪車において、前記左右一方のアーム部材の前部端面を前部クロス部材の後部に溶接し、且つその溶接部よりも前側に左右他方のアーム部材の前部を延出させると共に該左右他方のアーム部材の前部の側面を前部クロス部材の側面に溶接して、該前部クロス部材における、車体中心線よりチェーン側の一半部の占める割合を、他半部の占める割合よりも大きくしたことを特徴する自動二輪車が提案される。
【0007】
上記構成によれば、鋳物部材で構成したスイングアームの前部クロス部材に、パイプ部材で構成した左右のアーム部材を溶接する際に、左右一方のアーム部材の前部端面を前部クロス部材の後部に溶接し、且つその溶接部よりも前側に左右他方のアーム部材の前部を延出させると共に該左右他方のアーム部材の前部の側面を前部クロス部材の側面に溶接して、該前部クロス部材における、車体中心線よりチェーン側の一半部の占める割合を、他半部の占める割合よりも大きくするので、スイングアームの、チェーンの配置される一側部では、比較的に重量が小さくて強度が低いパイプ部材の占める割合を小さくし、比較的に重量が大きくて強度が高い鋳物部材の占める割合を大きくすることができる。一方、スイングアームの、チェーンの配置されていない他側部では、比較的に重量が小さくて強度が低いパイプ部材の占める割合を大きくし、比較的に重量が大きくて強度が高い鋳物部材の占める割合を小さくすることができる。これにより、スイングアームの、チェーンの配置される一側部およびチェーンの配置されていない他側部の強度配分を必要に応じて容易に設定することができ、しかも過剰な強度による無駄な重量の増加を回避することができる。
【0008】
また、請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記前部クロス部材の前記他半部の側面に開口を形成し、その開口の周縁で前記左右他方のアーム部材の前部の側面を前記前部クロス部材の前記他半部の側面に溶接したことを特徴する自動二輪車が提案される。
【0009】
上記構成によれば、前部クロス部材を鋳造する際に、前記開口を通して中子を取り出すことができる。
【0010】
尚、実施例の右アーム部材28は本発明の左右一方のアーム部材に対応し、実施例の左アーム部材27は本発明の左右他方のアーム部材に対応する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0012】
図1〜図5は本発明の一実施例を示すもので、図1は自動二輪車の全体側面図、図2は図1の2−2線矢視図、図3は図2の3方向矢視図、図4は図3の4−4線断面図、図5は図2の5方向矢視図である。
【0013】
図1に示すように、自動二輪車Vは車体前上方から後下方に延びる車体フレームFを備えており、この車体フレームFの前端に設けたヘッドパイプ1に、下端に前輪WFを軸支し、上端にバーハンドル2を固定したフロントフォーク3が操向可能に支持される。車体フレームFの後部には、クランクシャフトを左右方向に配置した2気筒エンジンEが搭載される。後端に後輪WRを軸支したスイングアームAの前端が、車体フレームFの後端にピボット4を介して上下揺動自在に枢支される。エンジンEの下側のシリンダ5から車体後方に延びる排気管6はスイングアームAの左側面を通過し、その後端にマフラー7が設けられる。またエンジンEの上側のシリンダ8から車体後方に延びる排気管9の後端は、スイングアームAの右側面に配置されたマフラー10に接続される。
【0014】
図2および図3を併せて参照すると明らかなように、車体フレームFの後端に立設したブラケット11の上端に車体後上方に延びるシートレール12が固定されており、このシートレール12の中間部と前記ブラケット11の下部とがステー13で接続されて補強される。車体フレームFは平面視で後方が左右に拡開しており、その左右後端部が車体左右方向に延びるクロスメンバ14によって接続される。クロスメンバ14の上面に概略3角形の第1リンク15の前端がピン16で枢支されており、この第1リンク15の後端にピン17で下端を枢支されたリヤクッション18の上端が、ピン19で前記ブラケット11に枢支される。そして左右一対の第2リンク20の前後両端が、前記第1リンク15の中間部とスイングアームAの下面とにそれぞれピン21,22で枢支される。
【0015】
従って、スイングアームAがピボット4まわりに上下に揺動すると、スイングアームAに接続された第2リンク20を介して第1リンク15がピン16まわりに揺動し、この第1リンク15に接続されたリヤクッション18が伸縮してスイングアームAの上下揺動を緩衝する。
【0016】
次に、図2〜図5に基づいてスイングアームAの構造を説明する。
【0017】
スイングアームAはアルミ合金製の鋳物部材よりなる前部クロス部材26と、アルミ合金製のパイプ部材よりなる左右のアーム部材27,28とから構成されるもので、図2に示すように車体中心線Lに対して左右非対称な構造を有している。
【0018】
アルミ合金製の鋳物部材よりなる前部クロス部材26は平面視で概略C字状に形成されて中央部を上下方向に貫通する貫通孔26aを備えており、この貫通孔26aの内部を通過するように前記リヤクッション18が配置される。前部クロス部材26の前端には前記ピボット4を支持するための左右一対の円筒状ボス部26bが形成され、後部下面には前記第1リンク15の後端をピン17で枢支するためのブラケット26cが形成される。前部クロス部材26の左端面には、貫通孔26aの前後に位置するように前部開口26dおよび後側開口26eが形成されており、これら前部開口26dおよび後側開口26eを通して前部クロス部材26の中空の内部空間が外部に連通している。従って、前部クロス部材26を鋳造する際に、前部開口26dおよび後側開口26eを通して中子を取り出すことができる。
【0019】
アルミ合金製のパイプ部材よりなる左アーム部材27は五角形断面を有しており、その左右方向の幅は前後方向に亘って略一定であり、その上下方向の高さは中央部で高く、そこから前後方向に向けて減少している。左アーム部材27の前部右側面は、前部クロス部材26の前部開口26dの周縁に溶接Waされ、後側開口26eの周縁に溶接Wbされる。更に、左アーム部材27の前端面は、前部クロス部材26の左側の円筒状ボス部26bの後面に溶接Wcされる。左アーム部材27の後端に溶接Wdされたれた左軸受部材29に、後輪WRを軸支する車軸30の左端が固定される。
【0020】
右アーム部材28は、何れもアルミ合金製のパイプ部材よりなるメインアーム31およびサブアーム32を備えており、これら両アーム31,32は短いパイプ状の連結部材33で連結される。断面四角形に形成されたメインアーム31は車体前方に向かって僅かに先細になっており、斜めに切断された前端面が前部クロス部材26の後下部に溶接Weされる。前部クロス部材26の右側面は、車体前後方向に延びる段部26fを介して下側に突出部26gが形成されており、前記段部26fおよび突出部26gがメインアーム31上面および右側面に滑らかに接続される。
【0021】
メインアーム31よりも細い四角形断面に形成されたサブアーム32は、斜めに切断された前端面が前部クロス部材26の後上部に溶接Wfされる。そして上下方向に延びる連結部材33の上端が上側のサブアーム32の下面に溶接Wgされ、下端が下側のメインアーム31の上面に溶接Whされる。メインアーム31およびサブアーム32の後端に溶接Wiされた右軸受部材34に、後輪WRを軸支する車軸30の右端が固定される。
【0022】
図3および図4から明らかなように、エンジンEと一体のトランスミッションTの右側面から突出する出力軸35に設けたドライブスプロケット36と、車軸30に設けたドリブンスプロケット37とにチェーン38が巻き掛けられる。ドライブスプロケット36から車体後方に延びるチェーン38の上半部(張り側)はスイングアームAの前部クロス部材26の右側面から、前部クロス部材26、メインアーム31、サブアーム32および連結部材33に囲まれた空間39を通過し、更に連結部材33およびサブアーム32の左側面を通過してドリブンスプロケット37に達している。またドライブスプロケット36から車体後方に延びるチェーン38の下半部(緩み側)はスイングアームAのメインアーム31および前部クロス部材26の下方を通過してドリブンスプロケット37に達している。
【0023】
図2から明らかなように、上記スイングアームAは車体中心線Lを挟んで左右が非対称な構造を有している。即ち、中心線Lの左側では左アーム部材27が前部クロス部材26の左側面の前端近傍まで延びており、従って鋳物部材よりなる前部クロス部材26の占める割合が小さくなり、かつパイプ部材よりなる左アーム部材27の占める割合が大きくなる。一方、中心線Lの右側では右アーム部材28のメインアーム31およびサブアーム32の前端面が前部クロス部材26の後部に接続されており、従って鋳物部材よりなる前部クロス部材26の占める割合が大きくなり、かつパイプ部材よりなる右アーム部材28の占める割合が小さくなる。
【0024】
ところで、エンジンEの駆動力を後輪WRに伝達するチェーン38はスイングアームAの右側面に沿って配置されるため、チェーン38の張力が直接作用するスイングアームAの右半部は、チェーン38の張力が直接作用しないスイングアームAの左半部よりも必要強度が高くなる。また鋳物部材よりなる前部クロス部材26はパイプ部材よりなる左右のアーム部材27,28よりも強度が高いため、前部クロス部材26の比率が大きいスイングアームAの右半部の強度は、前部クロス部材26の比率が小さいスイングアームAの左半部の強度よりも高くなる。
【0025】
従って、本実施例のスイングアームAによれば、必要強度が高い右半部の強度を必要強度が低い左半部の強度よりも高く設定し、スイングアームAの左右の強度配分を適切なものとすることができる。しかもパイプ材よりなる左右のアーム部材27,28の重量は鋳物部材よりなる前部クロス部材26の重量よりも小さいため、比較的に強度を必要としない左半部において重量の大きい前部クロス部材26の比率を最小限に抑え、スイングアームA全体としての重量軽減に寄与することができる。
【0026】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0027】
例えば、実施例ではスイングアームAの右半部の強度を左半部の強度よりも高く設定しているが、それを左右逆に設定することも可能である。また実施例では左アーム部材27を1本のパイプ部材で構成し、右アーム部材28を2本のパイプ部材で構成しているが、それらパイプ部材の数は適宜変更可能である。
【0028】
【発明の効果】
以上のように請求項1に記載された発明によれば、鋳物部材で構成したスイングアームの前部クロス部材に、パイプ部材で構成した左右のアーム部材を溶接する際に、左右一方のアーム部材の前部端面を前部クロス部材の後部に溶接し、且つその溶接部よりも前側に左右他方のアーム部材の前部を延出させると共に該左右他方のアーム部材の前部の側面を前部クロス部材の側面に溶接して、該前部クロス部材における、車体中心線よりチェーン側の一半部の占める割合を、他半部の占める割合よりも大きくするので、スイングアームの、チェーンの配置される一側部では、比較的に重量が小さくて強度が低いパイプ部材の占める割合を小さくし、比較的に重量が大きくて強度が高い鋳物部材の占める割合を大きくすることができる。一方、スイングアームの、チェーンの配置されていない他側部では、比較的に重量が小さくて強度が低いパイプ部材の占める割合を大きくし、比較的に重量が大きくて強度が高い鋳物部材の占める割合を小さくすることができる。これにより、スイングアームの、チェーンの配置される一側部およびチェーンの配置されていない他側部の強度配分を必要に応じて容易に設定することができ、しかも過剰な強度による無駄な重量の増加を回避することができる。
【0029】
また、請求項2に記載された発明によれば、前部クロス部材を鋳造する際に開口を通して中子を取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 自動二輪車の全体側面図
【図2】 図1の2−2線矢視図
【図3】 図2の3方向矢視図
【図4】 図3の4−4線断面図
【図5】 図2の5方向矢視図
【符号の説明】
4 ピボット
26 前部クロス部材
26d 開口
26e 開口
27 左アーム部材(左右他方のアーム部材)
28 右アーム部材(左右一方のアーム部材)
38 チェーン
A スイングアーム
E エンジン
F 車体フレーム
L 車体中心線
Wa 溶接
Wb 溶接
We 溶接
Wf 溶接
WR 後輪
Claims (2)
- 後輪支持用のスイングアーム(A)が、車体フレーム(F)にピボット(4)を介して上下揺動自在に枢支された前部クロス部材(26)と、この前部クロス部材(26)から後方に延びて後端に後輪(WR)を軸支する左右のアーム部材(27,28)とを備え、前記前部クロス部材(26)を鋳物部材で構成し、前記アーム部材をパイプ部材で構成し、車体フレーム(F)に搭載されるエンジン(E)の駆動力を後輪(WR)に伝達するチェーン(38)が、左右一方のアーム部材(28)に沿わせて配置されてなる、チェーンドライブ方式の自動二輪車において、
前記左右一方のアーム部材(28)の前部端面を前部クロス部材(26)の後部に溶接し、且つその溶接部よりも前側に左右他方のアーム部材(27)の前部を延出させると共に該左右他方のアーム部材(27)の前部の側面を前部クロス部材(26)の側面に溶接して、該前部クロス部材(26)における、車体中心線(L)よりチェーン(38)側の一半部の占める割合を、他半部の占める割合よりも大きくしたことを特徴とする、自動二輪車。 - 前記前部クロス部材(26)の前記他半部の側面に開口(26d,26e)を形成し、その開口(26d,26e)の周縁で前記左右他方のアーム部材(27)の前部の側面を前記前部クロス部材(26)の前記他半部の側面に溶接したことを特徴とする、請求項1に記載の自動二輪車。
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