JP4136786B2 - 二相交流システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、三相インバータにより二相負荷に交流電力を供給するための高効率かつ安価な二相交流システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
二相交流は、二つの電圧または電流の基本波の位相が互いに90°ずれた交流として一般に知られている(例えば、小郷著,「交流理論」,電気学会,p192−194,1969年発行)。
二相交流が広く用いられている用途としては、例えば二相ステッピングモータの駆動用がある。ステッピングモータはパルス状の電圧で駆動されることが多いものの、原理的には正弦波状の交流電圧、電流を二相の励磁コイルに与えて駆動することも可能であり、これによってより滑らかな回転を得ることができる。
なお、二相ステッピングモータに正弦波状の二相交流電圧を与えて駆動する手法については、例えば見城、新村共著,「ステッピング・モータの基礎と応用」,総合電子出版社,p52−54(1979年発行)に詳述されており、公知の技術となっている。
【0003】
次に、二相交流を発生する従来のインバータについて、図8,図9を参照しつつ説明する。
電圧、電流及び周波数を調整可能な二相交流発生用のインバータとして代表的なものは、図8,図9に示す2種類であり、図8の回路は二相フルブリッジインバータ、図9の回路は二相ハーフブリッジインバータと呼ばれている。
【0004】
図8の回路は、還流ダイオードが逆並列接続された半導体スイッチング素子51〜58を2個ずつ直列接続して4個のインバータアームを構成し、これらのインバータアームを並列接続して、その両端に電池または交流電圧を整流して得た直流電圧部の直流電圧Edcが印加される。ここで、便宜的に、スイッチング素子51〜54がA相フルブリッジを構成し、同55〜58がB相フルブリッジを構成している。
スイッチング素子51,52の相互接続点と同53,54の相互接続点との間にはA相負荷60Aが接続され、同55,56の相互接続点と同57,58の相互接続点との間にはB相負荷60Bが接続されている。なお、60はA相負荷60A及びB相負荷60Bからなる二相負荷である。
【0005】
また、図9の回路は、還流ダイオードが逆並列接続された半導体スイッチング素子81〜84を2個ずつ直列接続して2個のインバータアームを構成し、これらのインバータアームを並列接続してその両端に直流電源71,72の直列回路からなる直流電圧部の直流電圧Edcが印加される。ここで、便宜的に、スイッチング素子81,82がA相ハーフブリッジを構成し、スイッチング素子83,84がB相ハーフブリッジを構成している。
スイッチング素子81,82の相互接続点と直流電源71,72の相互接続点Nとの間にはA相負荷60Aが接続され、スイッチング素子83,84の相互接続点と直流電源71,72の相互接続点Nとの間にはB相負荷60Bが接続されている。
【0006】
図8,図9の何れにおいても、各インバータアームを構成する2個のスイッチング素子を交互にオン、オフすることにより、A相負荷60AまたはB相負荷60Bに供給する電圧をパルス状に切り替えている。これらの電圧波形はパルス状であるものの、PWM制御により、後述するように電圧の主要な周波数成分として任意の波形を出力することができる。
図8の二相フルブリッジインバータでは各フルブリッジが、また、図9の二相ハーフブリッジインバータでは各ハーフブリッジが、A相負荷60A及びB相負荷60Bにそれぞれ個別に電力を供給する。
【0007】
次に、図8に示した二相フルブリッジインバータにおけるスイッチング動作と出力電圧基本波との関係について、図10を参照しつつ説明する。
一般に、インバータの出力電圧の高調波を低減する手法としてPWM制御が用いられている。その代表例は、信号波形を搬送波としての三角波と比較する三角波比較方式であり、ここでは当該方式による動作について説明する。
【0008】
いま、図8のスイッチング素子51〜54からなるA相フルブリッジの出力相をA相、同55〜58からなるB相フルブリッジの出力相をB相とし、A相に着目して説明する。
A相フルブリッジの出力端子に接続されるA相負荷60Aの両端子をA1,A2、直流電圧部の直流電圧Edを二等分した点をNとし、前記端子A1,A2の点Nに対する電圧をそれぞれVA1NP,VA2NPとする。
【0009】
このとき、電圧VA1NPは次のように決められる。まず、図10(a)に示すように、基準信号として搬送波(三角波)vcと、VA1NPの主要な周波数成分(搬送波周波数近傍以上の周波数成分を除いた電圧成分、言い換えれば、VA1NPの低次成分)であるVA1Nに相似な信号(電圧指令信号)va1 *とを用意する。なお、一般に、搬送波の周波数は電圧指令信号の周波数よりも数〜数100倍高く設定される。
次に、vcとva1 *とを比較し、次の規則に則ってインバータアームのスイッチングを行う。
【0010】
(1)va1 *>vcならば、上側スイッチング素子をオン、下側スイッチング素子をオフ
(2)va1 *≦vcならば、上側スイッチング素子をオフ、下側スイッチング素子をオン
【0011】
また、電圧VA2NPについては、va1 *の符号を反転した信号va2 *を生成し、上記規則のva1 *をva2 *に置き換えた同一の規則に基づいてインバータアームのスイッチングを行う。
【0012】
このようにスイッチング動作を行うことによって、図10(b),(c)に示すパルス状の電圧VA1NP及びVA2NPが発生し、その振幅は直流電圧部の電圧の1/2、すなわちEdc/2となることが理解できる。
A相負荷60Aの両端電圧VAPはVA1NP−VA2NPであるため、この電圧VAPは、図10(d)に示すように振幅がEdcのパルス波形となる。
【0013】
ここで、電圧指令信号の変化率が搬送波の変化率に対して十分小さく、搬送波一周期の間の電圧指令信号を一定値と見なせるものとする。このとき、A相負荷60Aの端子A1のNに対する電圧VA1NPの主要な周波数成分VA1Nは、図10(b)に示すようにva1 *と相似な波形となり、数式1で表せることが一般に知られている。
【0014】
[数1]
VA1N=(Edc/2)×va1 */Vc
ここで、Vc :vc の振幅である。
【0015】
ただし、va1 *がVcを越えてしまうと上下のスイッチング動作ができなくなるため、上式は成り立たない。ここでは、常にva1 *≦Vcが成り立っているものとする。
このとき、va1 */Vcの最大値は1であり、また、Edc/2は定数であるため、結局、VA1Nの最大値はEdc/2となる。
VA2NPについても同様に、図10(c)に示す主要な周波数成分VA2Nを得ることができ、その最大値もEdc/2となる。
また、図10(d)に示す如く、A相負荷60Aの両端電圧VAPの主要な周波数成分VAは、VA1NとVA2Nとの差として与えられ、その最大値はEdcとなる。
【0016】
スイッチング素子55〜58からなるB相フルブリッジの出力電圧についても、A相と全く同じように考えることができる。B相の出力電圧として、A相の出力電圧に対し90°位相のずれた電圧指令信号を設定すれば、VAPに対し90°位相のずれた電圧VBPを得ることができる。
【0017】
以上をまとめると、二相フルブリッジインバータの出力電圧については、次のことが言える。
すなわち、電圧指令信号が搬送波の振幅を越えず、かつ、電圧指令信号の変化率が搬送波の変化率に対して十分遅ければ、各相出力電圧の主要な周波数成分の最大振幅はEdcとなる。
なお、実際の回路動作では、上下のスイッチング素子の切り替え時に電源電圧を短絡しないように両スイッチング素子が共にオフとなるモードを設けたり、また、上下のスイッチング素子の切り替えを歯切れよく行うために搬送波と電圧指令信号とを比較する比較器としてヒステリシスコンパレータを用いたり、更には、搬送波として三角波以外の信号、例えば鋸歯状波を用いたりすることもあるが、これらが出力電圧の主要な周波数成分の最大振幅に与える影響は小さい。
【0018】
このように、PWM変調された電圧を負荷に印加する場合、負荷はインダクタンス成分を有するか、あるいは負荷にインダクタンス成分を付加することが一般的であるため、その電流平滑効果によって負荷電流は所定の滑らかな波形となる。
【0019】
図9の二相ハーフブリッジインバータでは、二相フルブリッジインバータにおけるVA1NがそのままA相負荷60Aの両端に印加される電圧となる。従って、出力電圧の主要な周波数成分の最大振幅はEdc/2となり、二相フルブリッジインバータの場合の半分であることがわかる。
ここで、負荷が交流動作を前提としている場合、電源電圧Edcを二等分した点Nを2つのコンデンサの直列接続点として設けることもできる。しかし、モータ負荷のように直流電力を供給する必要がある場合には、コンデンサでは電力供給ができないため、図9のように二つの直流電源71,72を個別に設けなくてはならない。
【0020】
なお、図8と同様に二相フルブリッジインバータを用いたステッピングモータの駆動回路が、下記の特許文献1に記載されている。
【0021】
【特許文献1】
特表平8−510633号公報(図1)
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、二相交流を発生させるために二相フルブリッジインバータを用いる場合には、インバータアームの個数が4個となるため、その分コスト高となる。また、インバータアームの個数が多いと、半導体スイッチング素子のオン、オフ動作を行うための駆動回路も複雑になる。
更に、二相ハーフブリッジインバータを用いる場合には、フルブリッジインバータに比べて出力電圧が低く、また、直流電源電圧の二等分点を設けて配線しなくてはならない手間を必要とする。
【0023】
そこで本発明は、広く普及している三相インバータを用いて二相交流を発生させることにより、コストの低減及び駆動回路の簡略化を図り、しかも、ハーフブリッジインバータよりも出力電圧を高くすることができる二相交流システムを提供しようとするものである。
【0024】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1に記載した発明は、直流電源に接続され、かつ、三個の交流出力端子を有する三相インバータと、各相負荷の各一方の端子と各相負荷の各他方の端子を共通接続した端子とを有する二相負荷と、を備え、前記三相インバータの三個の交流出力端子を前記二相負荷の三個の端子にそれぞれ接続し、前記三相インバータから前記二相負荷に二相交流電力を供給する二相交流システムであって、
前記三相インバータを、
前記直流電源に接続された直流電圧部と、還流ダイオードが逆並列に接続された半導体スイッチング素子を有するスイッチ部を二個以上直列接続して構成したインバータアーム三個を前記直流電圧部に並列接続してなる回路と、を有する三相電圧形インバータにより構成し、
各インバータアームにおける前記スイッチ部同士の接続点を各相の電圧出力端子とした二相交流システムにおいて、
前記直流電圧部の電圧を二等分した点をN点とし、
前記二相負荷の三端子のうち各相負荷の相互接続端子を端子Zとし、かつ、前記二相負荷の残りの二端子をそれぞれ端子A、端子Bとし、
各端子A,B及びZの前記N点に対する電圧の主要な周波数成分をそれぞれV AN ,V BN 及びV ZN としたときに、
V ZN を一定にすると共に、V AN 及びV BN を可変として前記三相電圧形インバータを制御するものである。
【0025】
請求項2に記載した発明は、直流電源に接続され、かつ、三個の交流出力端子を有する三相インバータと、各相負荷の各一方の端子と各相負荷の各他方の端子を共通接続した端子とを有する二相負荷と、を備え、前記三相インバータの三個の交流出力端子を前記二相負荷の三個の端子にそれぞれ接続し、前記三相インバータから前記二相負荷に二相交流電力を供給する二相交流システムであって、
前記三相インバータを、
前記直流電源に接続された直流電圧部と、還流ダイオードが逆並列に接続された半導体スイッチング素子を有するスイッチ部を二個以上直列接続して構成したインバータアーム三個を前記直流電圧部に並列接続してなる回路と、を有する三相電圧形インバータにより構成し、
各インバータアームにおける前記スイッチ部同士の接続点を各相の電圧出力端子とした二相交流システムにおいて、
前記直流電圧部の電圧を二等分した点をN点とし、
前記二相負荷の三端子のうち各相負荷の相互接続端子を端子Zとし、かつ、前記二相負荷の残りの二端子をそれぞれ端子A、端子Bとし、
各端子A,B及びZの前記N点に対する電圧の主要な周波数成分をそれぞれV AN ,V BN 及びV ZN とし、かつ、端子A,Bの端子Zに対する電圧の主要な周波数成分をそれぞれV AZ ,V BZ としたときに、
V AN ,V BN 及びV ZN をそれぞれ可変とし、V AZ 及びV BZ が所望の値となるように前記三相電圧形インバータを制御するものである。
【0026】
請求項3に記載した発明は、請求項2に記載した二相交流システムにおいて、
前記三相電圧形インバータから二相負荷に供給する電圧の主要な周波数成分を互いに90°位相のずれた二相平衡正弦波とする際に、V AN ,V BN 及びV ZN の波形を、
V AN =V 1 sin(ωt+α)+V ZN
V BN =V 1 cos(ωt+α)+V ZN
V ZN =V 2 sin{ωt+α−(3π/4)}
(ただし、V 1 ,V 2 :電圧振幅、ω:角周波数、t:時間、α:任意の角度)
とするものである。
【0027】
請求項4に記載した発明は、請求項3に記載した二相交流システムにおいて、
V 2 =(1/√2)V 1
であることを特徴とする。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
図1はこの実施形態に係る二相交流システムの全体的な構成を示している。まず、100は直流電源に接続された三相インバータ、60は三相インバータ100の三個の出力端子に接続された二相負荷である。二相負荷60は、前述した図9と同様にA相負荷60A及びB相負荷60Bからなり、各負荷60A,60Bの各一方の端子A,B及び共通接続端子Zが前記出力端子にそれぞれ接続されている。なお、各負荷60A,60Bとしては、二相ステッピングモータの励磁コイル等がある。
【0032】
ここで、三相インバータ100からA相負荷60A、B相負荷60Bに対し、互いに90°位相のずれた電圧VAZ,VBZを印加するか、あるいは、三相インバータ100の一相の出力端子からA相負荷60Aに流れる電流をia、別の一相の出力端子からB相負荷60Bに流れる電流をib(iaに対し基本波の位相が90°ずれた電流)としたとき、残りの一相の出力端子から共通接続端子Zに向けて−(ia+ib)の電流が流れるように三相インバータ100を制御することにより、三相インバータ100から二相負荷60に対して二相交流電力を供給することができる。
【0033】
図2及び図3は、図1における三相インバータ100の具体例である。
まず、図2は、三相インバータ100を三相電圧形インバータにより構成した例である。周知のように電圧形インバータは、直流電圧部のエネルギーをスイッチングアームのスイッチングによりパルス状の電圧に変換して負荷に供給する。
【0034】
すなわち、図2において、環流ダイオードDFが逆並列接続された半導体スイッチング素子11,12(以下、環流ダイオード及び半導体スイッチング素子の逆並列回路を、請求項におけるスイッチ部という)を直列接続してインバータアーム17を形成し、同様に半導体スイッチング素子13,14によりインバータアーム18を、半導体スイッチング素子15,16によりインバータアーム19をそれぞれ形成すると共に、これらのインバータアーム17〜19に並列に、コンデンサ31からなる直流電圧部を接続して三相電圧形インバータが構成されている。
そして、インバータアーム17〜19における二個のスイッチ部の相互接続点が、それぞれ三相インバータ100の出力端子として二相負荷60の各端子A,B,Zに接続される。
なお、三相電圧形インバータとしては、多レベルインバータや多重インバータを用いても良い。
【0035】
一方、図3は、三相インバータ100を三相電流形インバータにより構成した例である。電流形インバータは、直流電流部のエネルギーをスイッチングアームのスイッチングによりパルス状の電流に変換して負荷に供給する。なお、電流形インバータでは、半導体スイッチング素子を逆方向の電流を阻止する自己消弧形素子とする必要があるため、直列ダイオードを接続することが行われるが、最近の技術としては、一つの自己消弧形素子が逆方向電流を阻止する機能を有するものも開発されているので、これを用いてもよい。
【0036】
図3において、21〜26は半導体スイッチング素子、DSは各スイッチング素子に直列接続されたダイオード(以下、半導体スイッチング素子及びダイオードの直列回路を、請求項におけるスイッチ部という)、27〜29は互いに並列接続されたインバータアーム、32はインバータアーム27〜29に直列接続された直流電流部としてのリアクトルである。
この三相電流形インバータでは、インバータアーム27〜29における二個のスイッチ部の相互接続点が、それぞれ三相インバータ100の出力端子として二相負荷60の各端子A,B,Zに接続される。
なお、これらの各出力端子間には、コンデンサからなる出力フィルタ40が接続されている。
【0037】
次に、この実施形態における三相インバータ100の制御方法を説明する。以下では、図2に示した三相電圧形インバータを対象としてその制御方法を述べる。
まず、図2の直流電圧部(コンデンサ31)の電圧Edcを二等分した点をNとし、二相負荷60の各端子A,B,Zの上記点Nに対する電圧の主要な成分(搬送波周波数近傍以上の周波数成分を除いた電圧成分)をVAN,VBN,VZNとする。
【0038】
このとき、端子Zについて、PWM制御の三角波比較方式における電圧指令信号をゼロに固定すると、VZN=0となる。従って、A相負荷60Aの両端電圧VAZ及びB相負荷60Bの両端電圧VBZはそれぞれVAN,VBNとなり、これらのVAN,VBNを制御することによって二相負荷60の印加電圧を制御することが可能となる。
【0039】
具体的には、図2におけるインバータアーム17〜19のうちいずれかのアームの出力電圧の電圧指令信号をゼロに固定し、他の二つのアームの出力電圧の電圧指令信号を互いに90°位相がずれた信号として与えればよく、図9のハーフブリッジインバータと同様の制御を行えばよい。
この結果、三相インバータ100の出力電圧波形(電圧VAZ,VBZ)は図4のようになり、各負荷60A,60Bに印加できる電圧の主要な周波数成分の最大振幅は、ハーフブリッジインバータと同様にEdc/2となる。
【0040】
一方、制御したいのはA相負荷60A,B相負荷60Bにそれぞれ印加される電圧VAZ,VBZの主要な周波数成分であり、端子Zの電圧値が変化する場合でも、次の関係式が成り立つようにVAN,VBN及びVZNを制御すればよい。
【0041】
[数2]
VAN=VAZ+VZN
[数3]
VBN=VBZ+VZN
(VZN:任意の電圧値)
【0042】
ただし、VZNの値によっては、VAN及びVBNがEdc/2を越えることもあり得るため、その設定には注意を要する。
【0043】
図5は、VZNを台形波状の電圧とし、VAN及びVBNを二相平衡正弦波にVZNを加算した波形に制御した場合を示している。このようにVAN,VBN及びVZNが歪んだ波形となっても、数式2,数式3が成り立つようにインバータアーム17〜19のスイッチングを制御することにより、A相負荷60A,B相負荷60Bへの印加電圧VAZ,VBZをそれぞれ二相平衡正弦波にすることが可能である。
【0044】
次に、上述したような二相平衡正弦波では位相が90°ずれているため、二相電圧の符号に着目すると、次の4モードが存在する。
▲1▼VAZ≧0,VBZ≧0
▲2▼VAZ≧0,VBZ<0
▲3▼VAZ<0,VBZ<0
▲4▼VAZ<0,VBZ≧0
【0045】
前述した数式2、数式3から、VAZ=VAN−VZN,VBZ=VBN−VZNであるため、上記各モード▲1▼〜▲4▼において端子Zの点Nに対する電圧VZNを次のようにすることにより、所定のVAZ,VBZに対するVAN,VBNの振幅を小さくできることが分かる。
▲1▼VZN<0
▲2▼VZN:負から正に変化
▲3▼VZN≧0
▲4▼VZN:正から負に変化
【0046】
この条件を満足する最も単純な波形は、VZN=−K(VAZ+VBZ)である(ただし、Kは係数)。ここで、VAZ,VBZを数式4,5により定義すると、VZNは数式6となる。
[数4]
VAZ=V1sin(ωt+α)
[数5]
VBZ=V1cos(ωt+α)
[数6]
VZN=−K(VAZ+VBZ)=K・V1sin{ωt+α+(π/4)}=V2sin{ωt+α−(3π/4)}
なお、V2=K・V1、V1及びV2:電圧振幅、ω:角周波数、t:時間、α:任意の角度である。
【0047】
また、このとき、VAN,VBNは次のようになる。
[数7]
VAN=VAZ+VZN=V1sin(ωt+α)+VZN
[数8]
VBN=VBZ+VZN=V1cos(ωt+α)+VZN
【0048】
図6は、V1=1,V2=0.5とした場合のVAZ,VBZ,VAN,VBN,VZNの波形である。VAZ,VBZの振幅に対し、VAN,VBNの振幅が小さくなっていることが分かる。VAN,VBNの振幅としては最大でEdc/2まで出力可能であるため、VAZ,VBZとしてはEdc/2よりも大きな振幅まで出力できることになる。すなわち、直流電圧部の電圧が同じならば、三相電圧形インバータを用いた本実施形態の方が、二相ハーフブリッジインバータを用いた図9の従来技術よりも高い電圧を負荷に印加することができることになる。
【0049】
以上に述べた実施形態において、負荷への印加電圧VAZ,VBZが最大になるのは、VAN,VBN及びVZNの全ての振幅がEdc/2となる場合である。
VAN,VBN及びVZNの振幅が等しくなる条件は、数式7に数式6を代入して整理することにより、次のように導出できる。
[数9]
VAN=V1sin(ωt+α)+V2sin{ωt+α−(3π/4)}
=V1sin(ωt+α)+V2{sin(ωt+α)cos(3π/4)−cos(ωt+α)sin(3π/4)}
=V1sin(ωt+α)+V2{(−1/√2)sin(ωt+α)−(1/√2)cos(ωt+α)}
={V1−(1/√2)V2}sin(ωt+α)−(1/√2)V2cos(ωt+α)}
=√[{V1−(1/√2)V2}2+{1/√2)V2}2]sin(ωt+α−β)
【0050】
ここで、数式9におけるβは数式10によって表される。
[数10]
β=tan−1[{(1/√2)V2}/{V1−(1/√2)V2} ]
【0051】
また、VANの振幅を数式6のVZNと同じくV2にするという条件から、V1とV2の関係が次の通り導かれる。
[数11]
V2=√[{V1−(1/√2)V2}2+{(1/√2)V2}2]
V1 2−√2V1・V2=0
V2=(1/√2)V1
このようにV2を設定することにより、VAN,VBN及びVZNの振幅は全てV2となる。因みに、数式11を数式10に代入することにより、このときβ=45°となる。
【0052】
V2の最大値はEdc/2であるため、これを数式11に代入して整理すると、V1の最大値(V1max)は次のように与えられる。
[数12]
V1max=√2(Edc/2)
すなわち、二相ハーフブリッジインバータを用いた図9の従来技術に対して、負荷に印加可能な最大電圧は√2倍となる。
なお、図7は、数式11の条件の下で、VAN,VBN及びVZNの振幅を全て等しくした場合のVAZ,VBZ,VAN,VBN,VZNの波形である。
【0053】
上記実施形態では、PWM制御における変調方式として三角波比較方式を例に挙げて説明したが、本発明では変調方式による制約はない。
また、説明の便宜上、電圧指令信号として振幅一定の正弦波を仮定したが、振幅が時間的に変動する制御系を構成した場合にも本発明を適用することができる。
更に、電圧指令信号の振幅が搬送波の振幅を越えない場合について述べたが、電流波形の歪みを許容できるならば、電圧指令信号の振幅が搬送波の振幅を越える場合についても適用可能である。
【0054】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、三相電圧形インバータ等の三相インバータによって二相負荷へ交流電力を供給することにより、従来の二相フルブリッジインバータを二個用いる場合に比べてインバータアーム数を少なくし、主回路やスイッチング素子駆動回路の簡略化、低コスト化を図ることができる。特に、三相インバータ自体が大量生産効果で安価になっているため、極めて経済的な二相交流システムを実現することができる。
また、負荷に印加可能な電圧を、従来の二相ハーフブリッジインバータに比べて√2倍に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示す回路構成図である。
【図2】本発明の実施形態における三相インバータの回路構成図である。
【図3】本発明の実施形態における三相インバータの回路構成図である。
【図4】本発明の実施形態による電圧波形図である。
【図5】本発明の実施形態による電圧波形図である。
【図6】本発明の実施形態による電圧波形図である。
【図7】本発明の実施形態による電圧波形図である。
【図8】二相負荷を駆動する二相フルブリッジインバータの回路構成図である。
【図9】二相負荷を駆動する二相ハーフブリッジインバータの回路構成図である。
【図10】図8に示した二相フルブリッジインバータの動作波形図である。
【符号の説明】
11〜16,21〜26:半導体スイッチング素子
17〜19,27〜29:インバータアーム
31:コンデンサ(直流電圧部)
32:リアクトル(直流電流部)
40:出力フィルタ
60A:A相負荷
60B:B相負荷
60:二相負荷
100:三相インバータ
DF:還流ダイオード
DS:直列ダイオード
Claims (4)
- 直流電源に接続され、かつ、三個の交流出力端子を有する三相インバータと、各相負荷の各一方の端子と各相負荷の各他方の端子を共通接続した端子とを有する二相負荷と、を備え、前記三相インバータの三個の交流出力端子を前記二相負荷の三個の端子にそれぞれ接続し、前記三相インバータから前記二相負荷に二相交流電力を供給する二相交流システムであって、
前記三相インバータを、
前記直流電源に接続された直流電圧部と、還流ダイオードが逆並列に接続された半導体スイッチング素子を有するスイッチ部を二個以上直列接続して構成したインバータアーム三個を前記直流電圧部に並列接続してなる回路と、を有する三相電圧形インバータにより構成し、
各インバータアームにおける前記スイッチ部同士の接続点を各相の電圧出力端子とした二相交流システムにおいて、
前記直流電圧部の電圧を二等分した点をN点とし、
前記二相負荷の三端子のうち各相負荷の相互接続端子を端子Zとし、かつ、前記二相負荷の残りの二端子をそれぞれ端子A、端子Bとし、
各端子A,B及びZの前記N点に対する電圧の主要な周波数成分をそれぞれV AN ,V BN 及びV ZN としたときに、
V ZN を一定にすると共に、V AN 及びV BN を可変として前記三相電圧形インバータを制御することを特徴とする二相交流システム。 - 直流電源に接続され、かつ、三個の交流出力端子を有する三相インバータと、各相負荷の各一方の端子と各相負荷の各他方の端子を共通接続した端子とを有する二相負荷と、を備え、前記三相インバータの三個の交流出力端子を前記二相負荷の三個の端子にそれぞれ接続し、前記三相インバータから前記二相負荷に二相交流電力を供給する二相交流システムであって、
前記三相インバータを、
前記直流電源に接続された直流電圧部と、還流ダイオードが逆並列に接続された半導体スイッチング素子を有するスイッチ部を二個以上直列接続して構成したインバータアーム三個を前記直流電圧部に並列接続してなる回路と、を有する三相電圧形インバータにより構成し、
各インバータアームにおける前記スイッチ部同士の接続点を各相の電圧出力端子とした二相交流システムにおいて、
前記直流電圧部の電圧を二等分した点をN点とし、
前記二相負荷の三端子のうち各相負荷の相互接続端子を端子Zとし、かつ、前記二相負荷の残りの二端子をそれぞれ端子A、端子Bとし、
各端子A,B及びZの前記N点に対する電圧の主要な周波数成分をそれぞれV AN ,V BN 及びV ZN とし、かつ、端子A,Bの端子Zに対する電圧の主要な周波数成分をそれぞれV AZ ,V BZ としたときに、
V AN ,V BN 及びV ZN をそれぞれ可変とし、V AZ 及びV BZ が所望の値となるように前記三相電圧形インバータを制御することを特徴とする二相交流システム。 - 請求項2に記載した二相交流システムにおいて、
前記三相電圧形インバータから二相負荷に供給する電圧の主要な周波数成分を互いに90°位相のずれた二相平衡正弦波とする際に、V AN ,V BN 及びV ZN の波形を、
V AN =V 1 sin(ωt+α)+V ZN
V BN =V 1 cos(ωt+α)+V ZN
V ZN =V 2 sin{ωt+α−(3π/4)}
(ただし、V 1 ,V 2 :電圧振幅、ω:角周波数、t:時間、α:任意の角度)
とすることを特徴とする二相交流システム。 - 請求項3に記載した二相交流システムにおいて、
V 2 =(1/√2)V 1
であることを特徴とする二相交流システム。
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