JP4136425B2 - メタルガスケット用ビード板及びメタルガスケット、及びメタルガスケット用ビード板の製造方法 - Google Patents

メタルガスケット用ビード板及びメタルガスケット、及びメタルガスケット用ビード板の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4136425B2
JP4136425B2 JP2002101039A JP2002101039A JP4136425B2 JP 4136425 B2 JP4136425 B2 JP 4136425B2 JP 2002101039 A JP2002101039 A JP 2002101039A JP 2002101039 A JP2002101039 A JP 2002101039A JP 4136425 B2 JP4136425 B2 JP 4136425B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
bead
resin
coating agent
metal gasket
width
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2002101039A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2003293857A (ja
Inventor
弘 佐々木
勝秀 藤沢
毅 田窪
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Reinz Co Ltd
Original Assignee
Nippon Reinz Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Reinz Co Ltd filed Critical Nippon Reinz Co Ltd
Priority to JP2002101039A priority Critical patent/JP4136425B2/ja
Publication of JP2003293857A publication Critical patent/JP2003293857A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4136425B2 publication Critical patent/JP4136425B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Gasket Seals (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンのシリンダヘッドとシリンダブロックの間に挿入されてシールを行うメタルガスケットに用いられるビード板、そのビード板を使用したメタルガスケット、及びそのビード板を製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、自動車用エンジンのシリンダヘッドとシリンダブロック間をシールするために用いられるシール手段として、メタルガスケットが一般的に用いられている。これらメタルガスケットは、シール部を構成するビードを有するビード板1枚のみを用いた単層構造のもの、又はこのビード板と、他の副板(折り返し板、調整板等)とを組み合わせて多層構造としたもの等、種々のものが実用化されている。
【0003】
これらメタルガスケットのビード板の代表的なものを図1に示す。メタルガスケットのビード板11には、シリンダ孔(ボア孔)12がエンジンのシリンダの数だけ設けられており、それを取り囲むようにシール部を形成するビード13が設けられている。そして、メタルガスケットをシリンダヘッドとシリンダブロック間に固定するためのボルト孔14が複数設けられている。また、15はハーフビードと呼ばれる段差状のビードである。
【0004】
なお、実際のビード板には、他に潤滑油や冷却水の通り道となる孔があけられており、それらをシールするためのビードが設けられて複雑な形状をしているが、図1においては図示を省略している。
【0005】
ビード13は、平板状のビード板11をプレス加工して台形又は略半円形の断面を有するようにした部分であり、ビード板11のみで形成されたメタルガスケット、又はビード板11と他の副板(折り返し板、調整板等)を重ね合わせて形成されたメタルガスケットが、シリンダヘッドとシリンダブロック間に挟まってボルトで締め付けられたとき、ビード13の凸部がその圧力を受け、その部分で頂部側の面の部材との間がシールされ、ビード13の両底端部で他の面の部材との間がシールされる。
【0006】
このような、ビード13によるシールをより確実にするために、ビード13とその両側の所定の範囲にコーティング剤を塗布することが一般的に行われている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このような目的で用いられるコーティング剤としては、ゴム系のコーティング剤と樹脂系のコーティング剤がある。樹脂系コーティング剤は、ゴム系コーティング剤に比して、へたりが小さく、かつ滑り性に優れるという長所を有する反面、若干シール性が悪い傾向を示す。このため、従来、樹脂系コーティング剤を使用する場合には、シリンダブロックとシリンダヘッド間の締め付け力を大きくし、ビード部にかかる面圧を高めてシール性を確保する方法が採用されてきた。
【0008】
しかしながら、シリンダブロックとシリンダヘッド間の締め付け力を大きくすると、シリンダブロックとシリンダヘッドにボルトによってかけられる力のために、シリンダブロックやシリンダヘッドにたわみが生じやすくなる。そして、このたわみはボルトの直近で大きくなり、ボルトから離れた場所では小さくなる。よって、締め付け力を高くすると、ビード部にかかる力は、ボルトの直近では大きくなり、ボルトから離れた場所では小さくなって、ビード幅が一定の場合には、場所によって面圧が異なってくるという問題がある。
【0009】
よって、ビード全周に亘って良好なシール性を確保するために面圧を上げると、ボルトに近い部分で面圧が上昇しすぎてビードがへたり易くなり、これを防ぐために面圧を下げると、ボルトから遠い部分で必要な面圧が確保できず、シール性が悪くなるという問題点があった。また、極端に面圧が高くなると、シリンダボア孔の歪みが増大し、これに起因してシリンダブロックのシリンダ孔とピストンとの摩擦力が増大し、機械的損失とオイル消費の増大につながる恐れがあった。
【0010】
このような問題点を解決する一つの方法として、従来、ビード幅やビード高さを場所によって変化させることが考えられていた。すなわち、大きな締め付け力がかかるボルト付近ではビード幅を広くしたりビード高さを低くし、締め付け力が小さいボルトから離れた部分ではビード幅を狭くしたりビード高さを高くすることにより、ビード全体に亘ってほぼ一定の面圧を得ようとするものである。しかしながら、この方法では、ビード幅やビード高さを一定にする場合に比べ、型の製作やメンテナンスが複雑になるという別の問題が発生する。
【0011】
このような問題点を解決する他の方法として、ビード内に硬質の材料からなるストッパを設け、そのストッパの幅や高さを部位によって変えることにより、ビード全体に亘ってほぼ一定の面圧を得ようとする方法も考えられていた。しかしながら、このような硬質の材料は、剛性が高く、運転時のエンジンの振動に対する追随性が良くないため、別途シール性の高いコート剤をコーティングして、追随性を確保しなければならないという問題点があった。
【0012】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、樹脂系コーティング剤を用いた場合でも、ビードの場所によって面圧があまり違わないようにすることができると共に、型の製造やメンテナンスが複雑にならないメタルガスケット用ビード板、そのビード板を使用したメタルガスケット、及びそのビード板を製造する方法を提供することを課題とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための第1の手段は、エンジンのシリンダヘッドとシリンダブロックの間に挿入されてシールを行うメタルガスケットに用いられるビード板であり、少なくとも一つのビードにおいて、ビード上及びその両側に塗布される樹脂系コーティング剤の幅が、シリンダヘッドとシリンダブロック間の締め付け力の高い部分で広く、低い部分で狭くされており、コーティング剤が、ガラス転移温度が 150 ℃以下の熱可塑性高分子化合物と熱硬化性樹脂の合計 100 重量部に対して、50〜 250 重量部の固体潤滑効果を有する充填剤を添加したものであることを特徴とするメタルガスケット用ビード板(請求項1)である。
【0014】
本手段においては、ビード板に形成されているビードのうち少なくとも一つのビードにおいて、そのビード部にコーティングされる樹脂系コーティング剤の幅が、シリンダヘッドとシリンダブロック間の締め付け力の高い部分で広く、低い部分で狭くされている。
【0015】
コーティング剤はビードと共に弾性変形したり塑性変形したりするが、締め付け力の大きい場所で幅が広く、小さい場所で幅が狭くされているので、コーティング剤にかかる面圧の差は、コーティング剤の幅が一定である場合に比べて小さくなる。よって、シール性を保つのに必要な面圧をビード全体にかけても、そのビード内で面圧が最高になる部分(ボルトに近い部分等)での面圧があまり上がらず、従ってその部分でへたりが発生する可能性が少なくなる。よって、耐久性を保ちながら、良いシール性を確保することができる。
【0016】
さらに、面圧の不均一を改善するための設計変更において、型ではなくコート幅を変える方が容易かつ安価に実施できるため、設計変更に伴う工数やコストが低減できる。
【0017】
さらに、本手段においては、樹脂系コーティング剤を使用している。樹脂系コーティング剤では、ゴムコーティング剤に比べ剛性が高いため、コート面積の変化が面圧に寄与する割合が高くなり、上記のような効果が明確に発揮される。さらに、樹脂系コーティング剤が有する特徴である良好な滑り性の効果をも発揮することができる。
【0018】
また、コーティング剤の幅は、シール幅を一定としたガスケットにおいて発生する面圧に基づき、面圧の最大値に対する各位置における面圧の比率を求め、それぞれの位置で、その比率と逆の比率になるように設定することが望ましい。ただし、ビード設置スペース等の関係で所望の幅が確保できないような場合は、形成できる範囲で可能な限り広くすればよい。
【0019】
なお、樹脂系コーティングであっても、局部的に強く当たった状態になると、ゴムと同様に圧壊や引きずられによる剥離を起こすことがあるので、面圧をより均一に近づけるためにも、局部的な面圧集中が起こらないようにすることが好ましい。たとえば、コーティングの端部は、強く当たりすぎないように、なだらかな形状とすることが好ましい。
【0020】
なお、本手段(請求項1)をはじめ、各手段、各請求項において、ビードとは前述のようなハーフビードを含む概念である。
【0029】
前記課題を解決するための第1の手段は、エンジンのシリンダヘッドとシリンダブロックの間に挿入されてシールを行うメタルガスケットに用いられるビード板であり、少なくとも一つのビードにおいて、ビード上及びその両側に塗布される樹脂系コーティング剤の幅が、シリンダヘッドとシリンダブロック間の締め付け力の高い部分で広く、低い部分で狭くされており、コーティング剤が、ガラス転移温度が 150 ℃以下の熱可塑性高分子化合物と熱硬化性樹脂の合計 100 重量部に対して、50〜 250 重量部の固体潤滑効果を有する充填剤を添加したものであることを特徴とするメタルガスケット用ビード板(請求項1)である。
【0030】
本手段に用いられるコーティング剤は、ガラス転移温度が150℃以下の熱可塑性高分子化合物と、熱硬化性樹脂と、充填剤とからなる組成物である。本手段においては、ガラス転移温度が150℃以下の熱可塑性高分子化合物によってシール性を確保すると共に、熱硬化性樹脂によって耐熱性を確保する。熱硬化樹脂に熱可塑性高分子化合物を添加することで摩擦係数は高くなり滑り性が低下するが、これらに固体潤滑効果を有する充填剤を加えることにより、摩擦係数を低下させ、シリンダブロックとの間での滑り性を良くし、エンジンの膨張・収縮に伴う変位による影響を受けにくくしている。この充填剤は、摩擦係数を低下させるだけでなく、シール性を更に向上させる効果をも有することがある。
【0031】
熱可塑性高分子化合物と熱硬化性樹脂との配合割合は、目的に応じて適宜変えることができる。熱可塑性高分子化合物と熱硬化性樹脂の合計重量を100とした場合、充填剤の比率が50未満であると摩擦係数が十分に低下しないだけでなく、熱可塑性高分子化合物に期待される効果であるシール性の向上がさほど得られない。充填剤が0であると、場合によってはシール性、滑り性ともかえって悪くなることもある。逆に充填剤の比率が250以上であると、熱可塑性高分子化合物に期待される効果であるシール性の向上がほとんど現われず、また、樹脂の配合のバランスも悪くなるため、シール性が阻害される。よって、本手段においては、充填剤の比率をこの間の範囲に限定している。
【0032】
前記課題を解決するための第2の手段は、エンジンのシリンダヘッドとシリンダブロックの間に挿入されてシールを行うメタルガスケットに用いられるビード板であり、少なくとも一つのビードにおいて、ビード上及びその両側に塗布される樹脂系コーティング剤の幅が、シリンダヘッドとシリンダブロック間の締め付け力の高い部分で広く、低い部分で狭くされており、コーティング剤が、少なくとも1種のガラス転移温度が 150 ℃以下の樹脂と、少なくとも1種のガラス転移温度又は溶融温度が 150 ℃を超える樹脂を含む複数種の樹脂の混合物 100 重量部に対して、50〜 250 重量部の固体潤滑効果を有する充填剤を添加したものであることを特徴とするメタルガスケット用ビード板(請求項2)である。
【0033】
本手段は、少なくとも1種のガラス転移温度が150℃以下の樹脂と、少なくとも1種のガラス転移温度又は溶融温度が150℃を超える樹脂と、充填剤からなる組成物である。
【0034】
本手段においてはコーティング剤として、少なくとも1種のガラス転移温度が150℃以下の樹脂と、少なくとも1種のガラス転移温度又は溶融温度が150℃を超える樹脂を含む複数種の樹脂の混合物を用いることにより、シール性はガラス転移温度が150℃以下の樹脂で確保し、耐熱性はガラス転移温度又は溶融温度が150℃を超える樹脂で確保するようにして、シール性と耐熱性が共に目的とする範囲に入るようにすることができる。充填剤の作用効果、及びその含有範囲の限定理由は前記第4の手段と同じである。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態の例を、図を用いて説明する。図2は、図1におけるビード13部分、及びハーフビード15の部分の断面形状を示すもので、ビード13、及びハーフビード15に対して、樹脂系コーティング剤がどのように塗布されているかを示すものである。図2において、図1に示された部位には同じ符号を付してその説明を省略する。なお、図1、図2とも、概念図であるので、寸法は実際の寸法と対応していないことに留意されたい。
【0040】
図2(a)は、図1のA−A断面図を示すものであり、ビード13の上下に樹脂系コーティング剤16が塗布されている。A−A部分はボルト孔14に近い部分であり、大きな締め付け力がかかる部分であるので、この部分の樹脂系コーティング剤のコーティング幅は6mmとされている。
【0041】
図2(b)は、図1のB−B断面図を示すものであり、ビード13の上下に樹脂系コーティング剤16が塗布されている。B−B部分はボルト孔14の中間部であり、締め付け力が小さい部分であるので、この部分の樹脂系コーティング剤16の幅は5mmとされ、A−A部分よりも狭くされている。よって、ボルトで締め付けられたとき、A−A部分とB−B部分でほぼ同じ面圧がビード13にかかる。実際には、ビード幅の寸法は、A−A部分とB−B部分にかかる締め付け力を測定又は推定し、面圧がほぼ一様になり、かつ、十分なシール性が得られるように各部分の樹脂系コーティング剤16の幅を決定する。
【0042】
図2(c)は、図1のB−B断面図の別の例を示すもので、A−A部分の樹脂系コーティング剤16の幅が図2(a)に対応するようにしたとき、面圧をほぼ一定にするためにB−B部分で、樹脂系コーティング剤の幅を2mmというような非常に狭い値にしなければならない場合の樹脂系コーティング剤の塗布方法の例を示す図である。樹脂系コーティング剤の幅が2mmというような狭い値になると、樹脂系コーティングが使用中にとぎれてしまう恐れがある。
【0043】
よって、(c)に示す例では、まず幅5mmの樹脂系コーティング剤16を塗布し、その上から幅2mmの樹脂系コーティング剤17を塗布している。このようにすると、面圧は主として樹脂系コーティング剤17の部分で受けることになるので、必要な面圧の一様性が確保され、かつ、幅5mmの樹脂系コーティング16が設けられているので、樹脂系コーティングが使用中にとぎれてしまう恐れが少なくなる。
【0044】
図2(d)は、図1のB−B断面図のさらに別の例を示すもので、A−A部分の樹脂系コーティング剤16’の幅が図2(a)に対応するようにしたとき、ビード13の面圧をほぼ一定にするために樹脂系コーティング16’の幅を3mmとし、その際、樹脂系コーティング16’の厚さをA−A部分に比して厚くした例を示すものである。このようにすると、ボルトの中間位置であるB−B部分でエンジンの運転時のシリンダヘッドとシリンダブロックの振動や変形が他の部分に比べて大きくなることがある場合に、この部分での面圧の変化を小さくし、緩衝材としての効果をより発揮させることができる。
【0045】
図2(e)は、図1のC−C断面図の例を示すもので、ハーフビード15の部分に設けられた樹脂系コーティング16の様子を示すものである。C−C部分はボルトに近い部分であるので、締め付け力が大きく、これに対応するためにハーフビード15の部分においても樹脂系コーティング16の幅を広く取り、6mmとしている。
【0046】
図2(f)は、図1のD−D断面図の例を示すもので、ハーフビード15の部分に設けられた樹脂系コーティング16の様子を示すものである。D−D部分はボルトの中間にある部分であるので、締め付け力が小さく、これに対応するためにハーフビード15の部分においても樹脂系コーティング16の幅を狭く取り、4mmとしている。
【0047】
以上、ビード板の実施の形態の例を説明したが、メタルガスケットは、前述のように、このようなビード板単独で構成される場合と、他の副板(折り返し板、調整板等)とを組み合わせて多層構造とされたものがある。いずれの場合も、シール効果はビード板によって行われるので、以上の実施の形態で示したようなビード板を使用すれば、ビードの内での面圧の差を小さくし、ビード全体に亘って面圧を均一に近づけることができると共に、型の製造やメンテナンスが複雑にならないようにすることができる。
【0048】
また、樹脂系コーティングを施す際、ビード形成前にコーティング剤を塗布する場合には、最初にプレスで型抜きをしてからコーティングし、再度ビード形成のためにプレスを行うというように、2回のプレス作業が必要であるが、ビードを形成した後にコーティングを施すようにすれば、最初のプレスでビード形成までを一度にできるため、製作工程を簡単にすることができる。
【0049】
なお、上記の実施の形態では、ボルト直近で面圧が最大となり、ボルト間で最小となる場合の例を示したが、実際には、エンジンの形状や構造によって面圧が最大、最小となる位置は変化するので、それに応じてコーティング幅を調整すればよい。
【0050】
また、上記実施の形態では、両面にコーティングを施したものについて説明したが、コーティングを施す面は、片面であってもよい。
【0051】
本発明に使用するコーティング剤としては、メタルガスケットのビード部のシール剤として用いられる樹脂系コーティング剤であって、公知の各種樹脂系材料、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂等を使用することができる。しかし、樹脂系材料としては、本出願人が先に出願した樹脂組成物(特願2002−47954)を用いると、本発明において特に優れた特性を発揮できて好ましい。そのような材料の一つは、ガラス転移温度が150℃以下の熱可塑性高分子化合物と熱硬化性樹脂の合計100重量部に対して、50〜250重量部の固体潤滑効果を有する充填剤を添加したものである。
【0052】
このコーティング剤では、ガラス転移温度が150℃以下の熱可塑性高分子化合物によってシール性を確保すると共に、熱硬化性樹脂によって耐熱性を確保する。熱硬化樹脂に熱可塑性高分子化合物を添加することで摩擦係数は高くなり滑り性が低下するが、これらに固体潤滑効果を有する充填剤を加えることにより、摩擦係数を低下させ、良好な滑り性を確保している。この充填剤は、摩擦係数を低下させるだけでなく、シール性を更に向上させる効果をも有することがある。しかし、充填剤量が50〜250部の範囲を外れると、かえってシール性を阻害する場合があるため、このコーティング剤においては、充填剤の比率をこの間の範囲に限定している。
【0053】
このように、従来の樹脂よりシール性を向上させた樹脂組成物を本発明に適用することで、締め付け力も従来の樹脂の場合より低減することが可能となり、ボア歪みのさらなる低減が期待できる。
【0054】
同様、本発明に用いるコーティング剤としては、少なくとも1種のガラス転移温度が150℃以下の樹脂と、少なくとも1種のガラス転移温度又は溶融温度が150℃を超える樹脂を含む複数種の樹脂の混合物100重量部に対して、50〜250重量部の固体潤滑効果を有する充填剤を添加したものも好ましい。
【0055】
このコーティング剤では、少なくとも1種のガラス転移温度が150℃以下の樹脂と、少なくとも1種のガラス転移温度又は溶融温度が150℃を超える樹脂を含む複数種の樹脂の混合物を用いることにより、シール性はガラス転移温度が150℃以下の樹脂で確保し、耐熱性はガラス転移温度又は溶融温度が150℃を超える樹脂で確保するようにして、シール性と耐熱性が共に目的とする範囲に入るようにすることができる。
【0056】
さらに、前記2種類のコーティング剤において、充填剤を構成する物質が、黒鉛、二硫化モリブデンのような六方晶形の結晶構造を持つ固体、若しくは三酸化モリブデン、酸化亜鉛のような空気中における摩擦係数が0.6以下の固体の単独種、又はこれらの複数種の組み合わせからなるようにすることが好ましい。
【0057】
加えて、前記メタルガスケット用コーティング剤の充填剤に、さらにカーボン、タルク、クレーのうち1種又は2種以上を追加すれば、コーティング剤の耐熱性を高めることができるので好ましい。
【0058】
以上の2種類の樹脂系組成物コーティング剤を含む各種樹脂系コーティング剤について、コーティング剤の幅を一定にした場合と、本発明のように幅を調整した場合とについて、面圧、シール性及び運転試験を調査した結果を表1に示す。なお、コーティング幅の調整については、コーティング幅一定の場合に得られた面圧から算出した結果に基づいて決めたが、水孔、油孔などとの位置関係で、必ずしも計算通りの幅にできない場合もあり、その場合は最大限形成できる幅とした。
(表1)
【0059】
【表1】
Figure 0004136425
【0060】
表1において、面圧比とはボア孔の周縁で面圧が最大となるボルト孔近傍(図1におけるA−A部)と面圧が最小となるボルト間(図1におけるB−B部)との面圧の比率を、最小面圧の最大面圧に対する割合で表したものであり、その値が1に近いほど、面圧が均一に近いと言える。シール性は上記各コーティング剤を塗布したガスケットについて、10kgf/cmの内圧に耐える荷重で評価し、ゴム系コーティング剤と同程度の荷重でシールできたものを◎、それよりは高荷重を要したが、従来の樹脂系コーティング剤よりは低荷重でシールできたものを○、従来の樹脂系コーティング剤と同程度の荷重を要したものを△とした。運転試験は、コーティング幅を調整した試料のみについて行ない、試験後の状態を目視により確認した。
【0061】
表1において、試験番号1〜5が本発明の実施例であるが、そのうち試験番号1と2は公知の樹脂系コーティング剤を用いた例である。試験番号3と4はガラス転移温度が150℃以下の熱可塑性高分子化合物と熱硬化性樹脂の組み合わせに固体潤滑効果を有する充填剤を適宜添加した例を示すもので、どちらも熱硬化性樹脂としてフェノール樹脂を用い、熱可塑性高分子化合物として試験番号3ではポリビニルブチラールを、試験番号4ではEVA共重合体を用い、これらを同じ比率で配合し、それぞれに充填剤としてグラファイト及び二硫化モリブデンを、樹脂の合計100重量部に対して100重量部となるように添加した。
【0062】
試験番号5は、ガラス転移温度が150℃を超えるフェノール樹脂と、ガラス転移温度が150℃以下である変成エポキシ樹脂を同じ比率で配合したものであり、試験番号3、4と同量の充填剤を添加した。試験番号6は、本発明との比較例として、ゴム系コーティング剤であるフッ素ゴムの結果を示すものである。
【0063】
面圧比については、試験番号6のゴム系コーティング剤に比べ、試験番号1〜5の樹脂系コーティング剤の方が、コーティング幅調整により均一に近づく度合いが大きいことがわかる。
【0064】
ゴム系コーティング剤においても均一に近づきつつあるものの、その度合いが樹脂系コーティング剤に比べて小さいのは、ゴム系コーティング剤が樹脂系コーティング剤に比べ剛性が低く、弾性変形して隙間を埋めるという性質を有するためであると思われる。すなわち、本発明の構成が、ゴム系に比べ剛性の高い樹脂系コーティング剤に適したものであることがわかる。
【0065】
次に、シール性の結果については、試験番号1〜5の樹脂系コーティング剤ではコーティング幅の調整により、明らかにシール性の改善が見られた。なお、試験番号6のゴム系コーティング剤では、シール荷重において若千の向上(低荷重化)は認められたものの、その度合いは樹脂系コーティング剤に比べてずっと小さいものであった。これも、ゴム系コーティング剤が上記面圧比の項で述べた性質を有することによるものと思われる。
【0066】
運転試験においては、試験番号1〜6の全サンプルとも試験をクリアしたが、試験後の表面状態については、試験番号6のゴム系コーティング剤において剥がれが見られたのに対し、試験番号1〜5の樹脂系コーティング剤ではいずれも剥がれは見られず良好な外観を示しており、樹脂系コーティング剤が滑り性に優れることを示すものであると言える。
【0067】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、樹脂系コーティング剤を用いた場合でも、ビードの場所による面圧の差を小さくし、ビードの全周に亘って面圧を均一に近づけることができると共に、型の製造やメンテナンスが複雑にならないメタルガスケット用ビード板、そのビード板を使用したメタルガスケット、及びそのビード板を製造する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】メタルガスケットのビード板の代表的なものを示す図である。
【図2】メタルガスケットのビード板における、ビード部への樹脂系コーティング剤の塗布例を示す図である。
【符号の説明】
11…ビード板
12…ボア孔
13…ビード
14…ボルト孔
15…ハーフビード
16、16’17…樹脂系コーティング

Claims (2)

  1. エンジンのシリンダヘッドとシリンダブロックの間に挿入されてシールを行うメタルガスケットに用いられるビード板であり、少なくとも一つのビードにおいて、ビード上及びその両側に塗布される樹脂系コーティング剤の幅が、シリンダヘッドとシリンダブロック間の締め付け力の高い部分で広く、低い部分で狭くされており、コーティング剤が、ガラス転移温度が 150 ℃以下の熱可塑性高分子化合物と熱硬化性樹脂の合計 100 重量部に対して、50〜 250 重量部の固体潤滑効果を有する充填剤を添加したものであることを特徴とするメタルガスケット用ビード板。
  2. エンジンのシリンダヘッドとシリンダブロックの間に挿入されてシールを行うメタルガスケットに用いられるビード板であり、少なくとも一つのビードにおいて、ビード上及びその両側に塗布される樹脂系コーティング剤の幅が、シリンダヘッドとシリンダブロック間の締め付け力の高い部分で広く、低い部分で狭くされており、コーティング剤が、少なくとも1種のガラス転移温度が 150 ℃以下の樹脂と、少なくとも1種のガラス転移温度又は溶融温度が 150 ℃を超える樹脂を含む複数種の樹脂の混合物 100 重量部に対して、50〜 250 重量部の固体潤滑効果を有する充填剤を添加したものであることを特徴とするメタルガスケット用ビード板。
JP2002101039A 2002-04-03 2002-04-03 メタルガスケット用ビード板及びメタルガスケット、及びメタルガスケット用ビード板の製造方法 Expired - Fee Related JP4136425B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002101039A JP4136425B2 (ja) 2002-04-03 2002-04-03 メタルガスケット用ビード板及びメタルガスケット、及びメタルガスケット用ビード板の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002101039A JP4136425B2 (ja) 2002-04-03 2002-04-03 メタルガスケット用ビード板及びメタルガスケット、及びメタルガスケット用ビード板の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2003293857A JP2003293857A (ja) 2003-10-15
JP4136425B2 true JP4136425B2 (ja) 2008-08-20

Family

ID=29241621

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002101039A Expired - Fee Related JP4136425B2 (ja) 2002-04-03 2002-04-03 メタルガスケット用ビード板及びメタルガスケット、及びメタルガスケット用ビード板の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4136425B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4137146B2 (ja) * 2006-07-21 2008-08-20 トヨタ自動車株式会社 ガスケット
JP5344222B2 (ja) * 2008-12-26 2013-11-20 日本ガスケット株式会社 シリンダヘッドガスケットにおけるオイル落し穴のシール構造
WO2021166442A1 (ja) * 2020-02-17 2021-08-26 Nok株式会社 ガスケット製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2003293857A (ja) 2003-10-15

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR100375043B1 (ko) 가황성 고무조성물, 동적상태에서 사용되는 시일 및 그 재료
US8220800B2 (en) Seal layer-transferred metal gasket
US20100007095A1 (en) Cylinder head gasket with duct
US6113109A (en) Expanded graphite gasket with beaded stress risers
CA2573170C (en) Mls gasket compression limiter
US9127621B2 (en) Coatingless cylinder head gasket
KR20080005884A (ko) 실린더 헤드 개스킷
US5958571A (en) Material for a gasket coated with foam rubber
US6398224B1 (en) Metal seal and coating material for metal seals
CN101535691B (zh) 具有变形限制件的平密封垫
JP4136425B2 (ja) メタルガスケット用ビード板及びメタルガスケット、及びメタルガスケット用ビード板の製造方法
JP3709365B2 (ja) メタルガスケット
US6948714B1 (en) Gasket and method for producing a gasket
CA2497376A1 (en) Silicone gasket compositions
US7048278B2 (en) Compound sheet gasket
JP4136442B2 (ja) メタルガスケット用ビード板、及びメタルガスケット
JP3736844B2 (ja) メタルガスケット用コーティング剤、メタルガスケットビード板、及びメタルガスケット
US20070029738A1 (en) MLS gasket sealability with bronze addition
JP2003083165A (ja) シリンダヘッドガスケット
DE102015222657A1 (de) Wärmeleitfähige Elastomermischung mit guten Gleiteigenschaften und Dichtung aus einer derartigen Elastomermischung
JP2010090945A (ja) シリンダヘッドガスケット
JP2004068886A (ja) メタルガスケット用金属板及びメタルガスケット
WO2004005774A1 (ja) ガスケット素材
JPH08151955A (ja) シリンダヘッドのシール構造
JP2003262273A (ja) メタルガスケットのビード板及びメタルガスケット

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20050325

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20080318

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20080508

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20080603

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20080603

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110613

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110613

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120613

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120613

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130613

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130613

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140613

Year of fee payment: 6

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313114

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees