JP4121852B2 - 癌を予防及び/又は治療するためのタンパク質esm−1のアンタゴニスト化合物の使用、及び癌を予防及び/又は治療するための薬剤の製造 - Google Patents
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Description
癌は、多くの場合、細胞内情報伝達の系における欠陥と関連する疾患である。正常細胞は、増殖、分化、又はより一般的にはそれらの代謝活性の変化によって、多数の細胞外信号に応答する。このような信号は細胞の表面上で受けとられ、信号変換タンパク質の系によって、細胞により認識されるメッセージに変換される。このメッセージは、その後の細胞調節現象の一因となる。
転移とは、初期の腫瘍から離れた部位における二次的腫瘍コロニーの形成である。これは、腫瘍侵襲が早期の事象である多段階過程に相当する。腫瘍細胞は、上皮の基底膜のようなバリアー組織を局部的に横切って回避し、間質性基質に達し、そこから、その後の転移の前に血管又はリンパ管へ接近する。血管壁の内皮層を侵襲した後、その循環性腫瘍細胞は血液循環によって周辺に運ばれ、内皮細胞の管腔表面へ接着することによって標的器官の前毛細血管細静脈中で停止するか、若しくは基底膜に曝される。腫瘍細胞は、血管壁を去り、そして器官の実質組織中に入る。最終的に、腫瘍細胞は、血管外遊出の後それが生じた組織とは異なる組織中で増殖する。
いくつかの抗癌治療は、MAPキナーゼファミリーのタンパク質、又はc−mycのような一定の発癌遺伝子の産生物のような、癌細胞の増殖の一因となる発癌性タンパク質の発現又は生物学的利用能を阻害することを目指すものである。
タンパク質ESM−1は、内皮細胞によって分泌される184アミノ酸のポリペプチドであり、それは、LASSALLE et al. (1996) によって初めて記載された。タンパク質ESM−1をコードするメッセンジャーRNAは、主に、内皮細胞、肺及び腎組織において見出される。ESM−1をコードする遺伝子の発現は、サイトカインによって調節される。TNF−α及びIL−1βは、ヒト臍静脈の内皮細胞中のESM−1遺伝子の発現の増大を誘発する一方で、γ−インターフェロンはそれの発現を減少させる。
高いレベルの循環性タンパク質ESM−1は、敗血症ショックのような全身性炎症症候群を示している患者において見出される(BECHARD et al., 2000)。
癌のための最新の病院治療は、放射線及び/又はビンブラスチン又はアドリアマイシンのような化学療法剤を使用するのが主流である。しかしながら、そのような治療の広く知られている望ましくない効果は、患者がこれら戦略を支持することを非常に難しいものとする。
本発明の目的は、技術の現状における癌の治療的処置の方法の欠点を克服する抗癌化合物を供給することである。
第一の態様によれば、本発明のアンタゴニスト化合物は、タンパク質ESM−1に特異的に結合する抗体である。
第二の態様によれば、本発明の範囲において用いられるアンタゴニスト化合物は、修飾されたタンパク質ESM−1のうちの少なくとも10アミノ酸のペプチドであり、そしてそれは、アミノ酸グループAla(134)−Ala(135)を含有する。
第三の態様によれば、タンパク質ESM−1のアンタゴニスト化合物は、ESM−1をコードするcDNAとハイブリダイズするアンチセンスオリゴヌクレオチドからなる。
本発明の更なる目的は、上で定義されたアンタゴニスト化合物の中から選ばれる、タンパク質ESM−1のアンタゴニスト化合物からなる。
本発明は、タンパク質ESM−1のアンタゴニスト化合物を含んでなる、癌を治療することを意図された医薬組成物にも関する。
本発明の別の目的は、タンパク質ESM−1のアンタゴニスト化合物が投与される段階を含んでなる、癌を予防するための方法からなる。
本発明は、タンパク質ESM−1のアンタゴニスト化合物が投与される段階を含んでなる、癌を治療するための方法にも関する。
HGF/SFは、腎臓多嚢胞性異形成症の出現及び尿細管の過剰増殖の出現における重要な因子であり、***、腎臓及び肺の癌の発達にも、そして悪性黒色腫の発達にも関連している。
本発明によって、タンパク質ESM−1を発現する形質移入ヒト腎上皮細胞は強い腫瘍潜在性を有し、そしてマウスにおいて in vivo で腎臓癌の出現を引き起こすことも示された。タンパク質ESM−1に対して向けられた抗体は腎腫瘍の発達を in vivo で阻害できること、及びタンパク質ESM−1のペプチドアンタゴニストは同じ抗腫瘍活性を有することも示された。
更に、本発明によって、気管支−肺癌を有する患者においてタンパク質ESM−1の血清レベルが増大していることが示された。
従って、本発明の第一の目的は、癌を予防及び/又は治療するための薬剤を製造するためのタンパク質ESM−1のアンタゴニスト化合物の使用からなる。
本発明の文脈における表現“タンパク質ESM−1”又は“ESM−1のポリペプチド”は、配列表中の配列番号1として参照される184アミノ酸のポリペプチド、及び、シグナルペプチドに対応するN末端の19アミノ酸が欠けている配列番号1のポリペプチドと同一の165アミノ酸のポリペプチドであって、配列番号1のポリペプチドの分泌された形態を含んでなるポリペプチドをも包含する。“タンパク質ESM−1”及び“ESM−1のポリペプチド”の定義には、それぞれ配列番号1の184アミノ酸のグリコペプチド、及び位置137におけるセリン残基がO−グリコシル化によって修飾された配列番号1の位置20におけるアミノ酸から位置184におけるアミノ酸に及ぶ配列に対応する165アミノ酸のポリペプチドも包含される。このタンパク質ESM−1のO−グリコシル化形態も、本明細書において“グリコペプチド”と呼ばれる。そのESM−1グリコペプチドは、好ましくは、コンドロイチン/デルマタン硫酸基によってO−グリコシル化された位置137におけるセリン残基を有する。
本発明の第一の目的は、癌を治療するための薬剤を製造するためのタンパク質ESM−1のアンタゴニスト化合物の使用からなる。
タンパク質ESM−1のアンタゴニスト化合物は、標的分子であって、タンパク質ESM−1の生物学的利用能をこのタンパク質が固定される分子と比較して減少させるあらゆるタイプのもの、即ち、ポリペプチド、糖類又はあらゆる有機若しくは無機化合物であってよい。
本発明による第一ファミリーの好ましいESM−1のアンタゴニスト化合物は、タンパク質ESM−1に特異的に結合する抗体から構成される。
本発明によると、タンパク質ESM−1に対して特異的に向けられた抗体は、このタンパク質の腫瘍発生力を阻害又は遮断できることが示された。従って、抗ESM−1抗体は、大きな治療的価値を有するアンタゴニスト化合物を構成する。
本発明の文脈における“抗体”によって、特に、ポリクローナル若しくはモノクローナル抗体、又はタンパク質ESM−1を認識する初期の抗体のドメインを含有するそれらの断片(例えば、断片Fab又はF(ab)’2)若しくはあらゆるポリペプチドが意味されることが理解されるべきである。
モノクローナル抗体は、KOHLER 及び MIELSTEIN (1975) によって記載された技術に従って、ハイブリドーマから調製されうる。
それらは、米国特許第4,9476,778号中又は MARTINEAU et al. (1998) によって開示されたもののような、単一鎖Fv抗体断片(ScFv)であってもよい。
本発明による抗ESM−1抗体は、RIDDER et al. (1995) によって記載されたようなファージバンクを使用して得られる抗体の断片、又は REINMANN et al. (1997) 若しくは LEGER OJ, et al., 1997 によって記載されたようなヒト抗体の断片をも含んでなる。
それらは、BECHARD et al. (2000) によって記載された技術に従って生成される抗ESM−1抗体であってもよい。BECHARD et al. (2000) によって記載されたそれら抗体は、大腸菌中で産生されたESM−1の分子量14kDaのC末端断片に対して予め免疫化されたマウス脾臓細胞から調製されるハイブリドーマ株によって分泌されるモノクローナル抗体、換言すれば、タンパク質ESM−1の非グリコシル化断片である。BECHARD et al. (2000) は、エピトープマッピングをすることによって、異なるハイブリドーマ株によって産生されたモノクローナル抗体を、それらによって認識されるタンパク質ESM−1の領域に従って分類することができた。
他の好ましいモノクローナル抗体は、配列番号1の位置159におけるグリシン残基と位置184におけるアルギニン残基の間に含有される抗原決定基D3を含んでなる領域であるタンパク質ESM−1の部分であって、に特異的に結合するものである。抗原決定基D3の格別に好ましいモノクローナル抗体は、パスツール研究所のコレクション・ナショナーレ・デ・カルチャーズ・デ・マイクロオルガニズムズ(CNCM)へ1997年11月19日に寄託されたハイブリドーマ株I−1943(MEP19)から得られうる。
タンパク質ESM−1のアンタゴニスト化合物を構成する興味の対象となる本発明の範囲内にある他のモノクローナル抗体は、タンパク質ESM−1のN末端部分に対して特異的に向けられるモノクローナル抗体である。タンパク質ESM−1のN末端部分に対して向けられた好ましいモノクローナル抗体は、受託番号I−2572のもと2000年10月17日にパスツール研究所のコレクション・ナショナーレ・デ・カルチャーズ・デ・マイクロオルガニズムズ(CNCM)へ寄託されたハイブリドーマ株MEC15から得られうる。
本発明によって、モノクローナル抗体MEP08は、マウスにおいて腎由来のヒト細胞の増殖によって引き起こされる腫瘍の形成にへのタンパク質ESM−1の前腫瘍活性を阻害できることが示された。
本発明によって、タンパク質ESM−1の抗原決定基D2を含有する領域はタンパク質ESM−1の前腫瘍活性のために重要であることが示された。
特に、発明者らは、配列番号1の位置134及び位置135におけるフェニルアラニン残基、換言すれば、分泌されたタンパク質ESM−1の位置115及び116の残基が、2つのアラニン残基によって置換されたタンパク質ESM−1から誘導化されたポリペプチドを合成した。発明者らは、この修飾ポリペプチドがマウスにおいて腫瘍を誘発できないことを示した。かくして、このような修飾ポリペプチドは、癌患者において高いレベルで産生されたタンパク質ESM−1と、HGF/SFのような増殖因子又は増殖因子FGF−2及びFGF−7でのそれの強化作用について、競合することができたのである。
タンパク質ESM−1のアンタゴニスト化合物は、配列番号1の位置119におけるアミノ酸から位置139におけるアミノ酸に及ぶアミノ酸の配列を包含する、配列番号1のうちの少なくとも10の連続するアミノ酸の長さを有するポリペプチドを包含し、そのようなESM−1のアンタゴニスト化合物は、タンパク質ESM−1に対応する配列と比較して少なくとも1つのアミノ酸の置換を含有する。
上で定義されたようなタンパク質ESM−1のアンタゴニストポリペプチドは、配列番号1と比較して、多くても1、2、3、4、5,6、7、8、9又は10のアミノ酸の置換を含有する。このアミノ酸の置換の数はそのポリペプチドの長さに相関して適合化される。本発明によるアンタゴニストポリペプチドにおける配列番号1と比較したアミノ酸の置換の数は、このアンタゴニストポリペプチドの配列中に含有されるアミノ酸の多くても25%であり、好ましくは多くても20%、15%、そしてより好ましくはESM−1のアンタゴニストポリペプチドの配列に含有されるアミノ酸の数の多くても10%であることが理解される。
アミノ酸は、慣用的に、次のクラス:
・非極性アミノ酸(疎水性):アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン及びメチオニン;
・芳香族環を含有するアミノ酸:フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシン;
・中極性のアミノ酸:グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン及びグルタミン;
・正に荷電したアミノ酸(塩基性である):アルギニン、リジン及びヒスチジン;
・負に荷電したアミノ酸(酸性である):アスパラギン酸及びグルタミン酸
のクラスに従って分類される。
本発明によるタンパク質ESM−1のアンタゴニストポリペプチドを調製するための好ましいタイプのアミノ酸の置換は、芳香族環を含有するアミノ酸の、芳香族環を含有しないアミノ酸による置換である。
本発明によるタンパク質ESM−1のアンタゴニストポリペプチドは、好ましくは配列番号1の位置134及び135におけるフェニルアラニン残基の、芳香族環を含有しない2つの同一か又は異なるアミノ酸残基による置換を含有する。
そのような好ましいタンパク質ESM−1のアンタゴニストポリペプチドは、上で定義されたように位置134及び135におけるフェニルアラニン残基が2つのアラニン残基によって置き換えられた、配列番号1のうちの少なくとも10の連続するアミノ酸のポリペプチドである。
例示として、タンパク質ESM−1のアンタゴニストポリペプチドは、HOUBEN WEIL (1974) によって記載されている均一溶液技術、又は MERRIFIELD (1965a; 1965b) 及び MERRIFIELD (1965b) によって記載されている固相合成技術によって調製されうる。
本発明によるタンパク質ESM−1のアンタゴニストポリペプチドは、遺伝子組み替えによっても調製されうる。
上で定義されたようなタンパク質ESM−1のアンタゴニストポリペプチドを生成するために:
a)タンパク質ESM−1のアンタゴニストポリペプチドをコードする核酸を適切な発現ベクター中へ挿入する段階;
b)段階a)の組み換え発現ベクターで予め形質転換又は形質移入された宿主細胞を適正な培地中で培養する段階;
c)その培地を回収し、又は宿主細胞を例えば超音波処理又は浸透圧衝撃によって溶解する段階;
d)段階c)において得られた前記培養培地又は細胞溶解産物から前記アンタゴニストポリペプチドを分離して精製する段階;
e)適切であれば、このように生成された組み換えアンタゴニストポリペプチドを特性決定する段階
を含んでなる方法が用いられうる。
本発明によるアンタゴニストポリペプチドは、免疫親和性クロマトグラフィーカラムであって、その上にこのポリペプチド又はそれの断片に対して向けられた抗体が予め不動化されたカラム上に固定されることによって特性決定されうる。
別の態様によれば、ESM−1のアンタゴニストポリペプチドは、当業者に公知で、例えば、AUSUBEL F. et al. (1989) によって記載されている方法に従って、適切な一連のクロマトグラフィーカラムに通すことによって精製されうる。
危険な状態の患者又は既に発達した腫瘍を有する患者において分泌されているタンパク質ESM−1の生物学的利用能を減少させることを目指す、別の好ましいファミリーのタンパク質ESM−1のアンタゴニスト化合物は、ヒトにおけるESM−1をコードする遺伝子の発現を阻害又は遮断することのできる化合物である。
そのようなタンパク質ESM−1のアンタゴニスト化合物は、アンチセンスポリヌクレオチドでありうる。
従って、本発明によるタンパク質ESM−1のアンタゴニスト化合物は、タンパク質ESM−1をコードする遺伝子の所与の領域に特異的にハイブリダイズすることでき、それの転写及び/又は翻訳を阻害又は遮断することができるアンチセンスポリヌクレオチドを包含する。
ヒトESM−1遺伝子の配列は、データベースGenbankにおいて受託番号AJ401 1091及びAJ401 1092のもと参照される。
本発明によるアンチセンスポリヌクレオチドは、好ましくは、ESM−1遺伝子のDNAの5’末端の領域中に局在化した配列に相補的な配列を、そしてより好ましくは、ESM−1遺伝子の転写の開始コドン(ATG)に近接した配列を含有する。
第二の好ましい態様によれば、本発明によるアンチセンスポリヌクレオチドは、ESM−1遺伝子のエキソン/イントロン接合点に局在化した配列の1つに、そして好ましくはスプライシング部位に対応する配列に相補的な配列を含有する。
本発明による好ましいアンチセンスポリヌクレオチドは、ESM−1をコードするヌクレオチド配列番号2を有するcDNAのうちの少なくとも15の連続するヌクレオチドを含有する。
一般に、本発明によるアンチセンスポリヌクレオチドは、ESM−1の配列番号2のcDNAのうちの少なくとも20、25、30、35、40、50、75、100、150、200、300、400、500、1000又は2000の連続するヌクレオチドを有する。
例示として、本発明による好ましいアンチセンスポリヌクレオチドは、ESM−1の配列番号2のcDNAの核酸に相補的な配列の核酸からなる。
本発明によるタンパク質ESM−1のアンタゴニスト化合物を含んでなるアンチセンスポリヌクレオチドは、クローニング及び制限酵素の作用を包含する当業者にとって周知のあらゆる適する方法によって、又は、NARANG et al. (1979) 若しくは BROWN et al. (1979) のホスホジエステル法、BEAUCAGE et al. (1980) のジエチルホスホルアミダイト法、又は欧州特許第EP−0,707,592号中に開示されている固体支持体技術のような技術に従う化学合成によって調製されうる。
アンチセンスポリヌクレオチドを構築するための方法は、ROSSI et al (1991)、及びPCT出願のWO947/23,036、WO95/04141、WO/92L18,522、及び欧州特許出願EP0572287によっても記載されている。
アンチセンスポリヌクレオチドの使用のための他の方法は、例えば、SCZAKIEL et al. (1995) によって記載されているもの、又はPCT出願のWO95/24,223中に開示されているものがある。
当業者は、ras遺伝子を阻害するためのアンチセンスオリゴヌクレオチドを開示している米国特許第5,582,986号中に開示されている技術、腫瘍形成遺伝子c−mybのメッセンジャーRNAに特異的にハイブリダイズするアンチセンスオリゴヌクレオチドを記載している HOLT et al. (1988) によって記載されている技術、又は遺伝子c−mycのメッセンジャーRNAと特異的にハイブリダイズするアンチセンスオリゴヌクレオチドを記載している WICKSTRON et al. (1988) によって記載されている技術のような、癌の発達に関連する遺伝子の発現を阻害又は遮断するアンチセンスポリヌクレオチドの生成及び使用の方法を有利に参照することができる。
当業者によって用いられうるアンチセンスポリヌクレオチドを使用するための他の技術は、SALE et al. (1995) のもの及び GAO et al. (1996) のものである。
本発明によるタンパク質ESM−1のアンタゴニスト化合物は、それがタンパク質ESM−1によって誘発された腫瘍の発達を in vivo で阻害する能力のために、当業者によって選択されるうる。
第一の態様によれば、タンパク質ESM−1のアンタゴニスト化合物を選択する方法は、次の段階:
a)タンパク質ESM−1の存在下で腫瘍を形成することができる細胞であって、タンパク質ESM−1を in vivo で発現することのできる核酸によって形質移入又は形質転換されている細胞をある動物中に注射する段階;
b)この動物にタンパク質ESM−1の候補アンタゴニスト化合物を投与する段階;
c)段階b)の後に得られたような第一動物における腫瘍の形成と、段階a)の後に得られたような第二動物における腫瘍の形成を比較する段階;及び
d)該第一動物における腫瘍の形成を阻害又は遮断することができる候補化合物を選択する段階
を含んでなる。
本方法の特定的な態様においては、これは、第一及び第二動物を犠牲にすることからなる段階e)を包含する。
有利には、タンパク質ESM−1の存在下で動物中に腫瘍を形成することができる細胞株は、株HEK293(ATCC番号CRL1573)である。
更なる態様によれば、本発明によるタンパク質ESM−1のアンタゴニスト化合物は、タンパク質ESM−1上への候補化合物の固定を証明することを使用する方法によって選択されうる。タンパク質ESM−1の候補アンタゴニスト化合物のそのような選択の方法は、次の段階:
a)タンパク質ESM−1又はこのタンパク質のペプチド断片からなるポリペプチドを供給する段階;
b)前記ポリペプチドを、試験される候補化合物と接触させる段階;
c)前記ポリペプリドと該候補化合物の間に形成される複合体を検出する段階;
d)タンパク質ESM−1又はこのタンパク質の断片からなるポリペプチド上に固定される該候補化合物を選択する段階
を含んでなる。
本発明は、タンパク質ESM−1の候補アンタゴニスト化合物を選択するためのキットであって:
a)タンパク質ESM−1又はこのタンパク質の断片からなるポリペプチドの精製された調製物;
b)適切であれば、該ポリペプチドと試験される候補化合物との間に形成される複合体を検出する手段
を含んでなるキットにも関する。
タンパク質ESM−1から誘導されたポリペプチドとその候補化合物との間に形成される複合体を検出する方法は、WANG et al. (1997) によって記載された、HPLC法と組み合わせられたミクロ透析法、又は BOUSH et al. (1997) によって記載された親和性キャピラリ電気泳動のような、種々の技術によって行われうる。
候補化合物は、あらゆるタイプのものであることができ、そして特にコンビナトリアル化学法の最終生成物であることができる。
タンパク質ESM−1の候補アンタゴニスト化合物は、上の方法に従って、PARMLEY 及び SMITH (1988) により記載された技術に従ってファージベクター中に含有されたDNA挿入物の発現産物として選択されうる。このタイプのペプチドバンクにおいては、OLDENBURG KR et al. (1992)、VALADON P et al. (1996)、LUCAS AH (1994)、WESTERINK (1995)、FELICI et al. (1991) によって記載されているように、そのDNA挿入物は長さ8〜20アミノ酸のペプチドをコードする。
この特定的な態様によれば、タンパク質ESM−1またはそれの断片からなるポリペプチド上に固定されることができるタンパク質を発現する組み換えファージが保持され、そしてタンパク質ESM−1又はそれの断片とその組み換えファージの間に形成される複合体が抗ESM−1モノクローナル又はポリクローナル抗体によって、その後に免疫沈降されうる。
タンパク質ESM−1の候補アンタゴニスト化合物は、それらが、上に記載された抗ESM−1抗体の1つ、そして特に、受託番号I−1941のもとCNCMへ1997年11月19日に寄託されたハイブリドーマ株MEP08によって分泌されるモノクローナル抗体のような、タンパク質ESM−1の予め選択されたアンタゴニスト化合物と競合して、タンパク質ESM−1上又はそれのポリペプチド断片上に固定されるという事実によっても選択されうる。
そのような競合実験は、例えば、BECHARD et al. (2000) による論文中に記載されている。
タンパク質ESM−1又はこのタンパク質のポリペプチド断片上に固定されることができるタンパク質又はあらゆるタイプの他の分子は、タンパク質ESM−1又はそれの断片が、例えば、タンパク質ESM−1又はそれの断片のアガロース又はAffiGel(登録商標)のような親和性カラムのマトリックスとの化学的カップリングを包含する、慣用的な技術によって予め不動化された親和性カラムを使用して選択されうる。試験される候補化合物を含有する溶液が、タンパク質ESM−1又はそれのペプチド断片が不動化されたクロマトグラフィーの保持体と接触させられた。その親和性カラム上に保持された化合物は、明確に選択された。
タンパク質ESM−1の候補アンタゴニスト化合物は、EDWARDS 及び LEATHEBARROW (1997) によって記載されているような光学的バイオキャプターを使用することによっても選択されうる。この技術によって、市販の分子の使用を必要とすることなしに分子間の相互作用をリアルタイムで検出できる。この技術は、SPR(表面プラズモン共鳴 Surface Plasmon Resonance)に基づく。簡単に説明すると、試験される候補化合物が、カルボキシメチルデキストランマトリックスのような表面上に固定される。光線が、試験される試料を含有しない表面の部分上に向けられ、そしてこの表面によって反射される。SPR現象は、反射光の角度とその光線の波長との間の格別な関係で反射光の強度の減少を引き起こす。候補化合物の固定は、表面の屈折率の変化を引き起こし、その屈折率の変化がSPR信号の僅かな変化として検出される。
光学バイオキャプターによるそのような検出方法は、タンパク質ESM−1又はそれのペプチド断片上での固定について別のリガンドと競合する候補化合物の選択をも可能とする。
例えば、タンパク質ESM−1の候補アンタゴニスト化合物は、抗ESM−1抗体のタンパク質ESM−1上への固定を阻害することができ、因子HGF−SF又は因子FGF−2及びFGF−7のタンパク質ESM−1又はこのタンパク質のペプチド断片上への固定を阻害することができる化合物を包含する。
a)タンパク質ESM−1又はそれのペプチド断片を:
(i)タンパク質ESM−1上に固定されているタンパク質ESM−1のアンタゴニスト化合物;及び
(ii)試験される候補化合物
と接触させる段階;
b)段階a)と別であるが場合によってそれと同時に行われる段階において、タンパク質ESM−1又はそれのペプチド断片を、タンパク質ESM−1上に固定されているタンパク質ESM−1のアンタゴニスト化合物と接触させる段階;
c)段階a)及びb)の各々の後に固定されたタンパク質ESM−1のアンタゴニスト化合物のそれぞれの量を検出する段階;及び
d)タンパク質ESM−1上での固定について該アンタゴニスト化合物と競合する候補化合物を選択する段階
を含んでなることを特徴とする方法に関する。
上の選択法を使用するためのESM−1のアンタゴニスト化合物は、好ましくは本明細書において上で定義されたような抗ESM−1抗体又はペプチドアンタゴニスト化合物である。
1)該候補化合物の中から、タンパク質ESM−1又はこのタンパク質のペプチド断片上に固定される化合物を選択する段階;
2)段階1)において選択された化合物をある動物へ投与して、タンパク質ESM−1によって誘発された腫瘍の発達をこの動物中で阻害するこの化合物の能力を確認する段階;
3)段階2)において確認された、腫瘍の発達を阻害する化合物をタンパク質ESM−1のアンタゴニスト化合物として選択する段階
を含んでなる。
段階1)は、好ましくは、本明細書において詳述された方法の中から選ばれる、タンパク質ESM−1又はこのタンパク質のペプチド断片上に固定されている候補化合物を選択する方法の使用からなる。
段階2)は、好ましくは、本明細書において詳述されたような、候補化合物を in vivo で選択する方法の使用からなる。
本方法の特定的な態様においては、これは、動物を犠牲にすることからなる段階4)をも含有する。
本発明の更なる目的は、タンパク質ESM−1のアンタゴニスト化合物を含有する癌を治療及び/又は予防するための医薬組成物である。
本発明による抗体タイプ又はペプチドタイプのアンタゴニスト化合物を含有する医薬組成物
第一の態様によれば、本発明による医薬組成物は、治療的に有効な量の抗ESM−1抗体又はESM−1から誘導されたペプチドアンタゴニスト化合物を、1又はそれを超える薬学的に適合性のビヒクルと組み合わせて含有する。本発明による医薬組成物には、局所、経口、経皮、経直腸、点鼻又は非経口(筋肉内、皮下及び静脈内を包含する)投与に適するもの、又は吸入又は注入による投与に適する形態のものが含まれる。本発明による医薬組成物は、単位剤形の形態で与えられ、そして医薬の分野の当業者に周知のあらゆる方法によって調製されうる。全ての方法は、組成物の活性成分を含んでなるアンタゴニスト化合物を液体ビヒクル又は微細に分割された固体ビヒクルと組み合わせ、そして、必要であれば、その生成物を例えば錠剤又はカプセル剤の形態に作り上げることからなる段階を包含する。
別の態様によれば、本発明による医薬組成物は、吸入又は注入による投与のためのドライパウダー組成物の形態、例えば、アンタゴニスト化合物の粉末とラクトースやデンプンのような適する基礎粉末の混合物の形態であってもよい。その散剤組成物は、投与単位、例えば、カプセル剤、又は吸入若しくは注入装置を使用してそこから粉末が投与されうる分与器の形態で与えられうる。
滅菌溶液剤又は懸濁液剤の形態の液体医薬組成物は、筋肉内、腹腔内又は皮下注射のために用いられうる。
本発明による医薬組成物は、投与単位当たり1〜1000mgのタンパク質ESM−1のアンタゴニスト化合物を、好ましくは投与単位当たり10〜500mgのタンパク質ESM−1のアンタゴニスト化合物を含有する。
本発明は、癌を治療及び/又は予防する方法であって、そのような治療を必要とする患者に上で定義されたような医薬組成物が投与される段階を含んでなる方法にも関する。
本明細書において定義されたアンチセンスポリヌクレオチドタイプの治療的に有効な量のタンパク質ESM−1のアンタゴニスト化合物を含有する医薬組成物も、癌を治療及び/又は予防する方法であって、そのような治療を必要とする患者に上で定義されたようなアンチセンスポリヌクレオチドを含有する医薬組成物を投与することを含んでなる方法に加えて、本発明の一部を形成する。
本発明によるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、局所や全身のどのような手段によっても投与されうる。
本発明のアンチセンスポリヌクレオチドの例えば腫瘍中への局所投与は、直接腫瘍の中に又は腫瘍を囲んでいる組織中にアンチセンスポリヌクレオチドをへ投与して、そのオリゴヌクレオチドが腫瘍細胞中に拡散できるようにすることによって行われうる。例えば、アンチセンスポリヌクレオチドは、シリンジを使用して注射されうる。その注射は、筋肉内、静脈内、腹腔内又は皮下のものでありうる。アンチセンスポリヌクレオチドは、肝門脈を介して肝臓に投与されうる。同様に、アンチセンスポリヌクレオチドは、吸入装置を用いて肺に投与されうる。
アンチセンスポリヌクレオチドの組み換え体の発現に適するベクターを使用するために、当業者は、LEE 及び NATHANS (1988)によって記載されているベクターpMSXND、GLUZMAN (1982) によって記載されているもののような真核性ウイルスベクター、米国特許第5,173,414号及び第5,354,678号中に記載されているもののようなアアデノウイルス及びアデノ関連ウイルス、又は MOXHAM et al. (1993) によって記載されている発現ベクターを包含する発現系を有利に用いることができる。
その発現ベクターは、好ましくは、ポリヘドリンプロモーターのような、動物、好ましくは哺乳類、そして、好ましくはヒトにおいてアンチセンスポリヌクレオチドを産生できるようにするプロモーターを含有する。
発現ベクターは、例えば、アンチセンスポリヌクレオチドをコードする核酸を上皮細胞または内皮細胞のような一定の細胞に特異的なプロモーターの制御下に置くことによって、腫瘍の部位におけるアンチセンスポリヌクレオチドの目標とされる発現に適するものとなりうる。そのようなプロモーターの例は、乳がんの治療において格別に有用であるNuNTVと命名されたウイルスプロモーターである。そのような具体的なプロモーターの他の例は、βラクトグロブリン、αカゼイン及びβカゼインのような乳タンパク質プロモーターである。
アンチセンスポリヌクレオチドの治療学的に有効な濃度は、投与の様式の選択に伴なって変動することが、当業者には明確であろう。例えば、アンチセンスポリヌクレオチドが注射によって哺乳類に投与されると、その投与単位は、有効な量のアンチセンスポリヌクレオチドを含有するシリンジを含んでなることとなる。全身投与のためのアンチセンスポリペプチドの有効な量は、一日あたり一回又は二回投与される0.01mg/kg〜50mg/kgである。医薬組成物中に包含される本発明によるアンチセンスポリヌクレオチドの治療的に有効な量は、一般に、投与当たり104〜1011分子のアンチセンスポリヌクレオチドであり、好ましくは、投与当たり105〜1010分子のDNAである。
しかしながら、(i)アンチセンスポリヌクレオチドの、タンパク質ESM−1の発現を阻害する個々の能力、(ii)疾患の重さ又は程度、又は(iii)使用されるアンチセンスポリヌクレオチドの薬物動態学的挙動に従って、異なる投与プロトコールが用いられうる。
アンチセンスポリヌクレオチドは、薬学的に許容できるビヒクル又は賦形剤と組み合わされうる。賦形剤の例には、投与のタイプ及び投与の形態に従って、充填剤、結合剤、分散剤、滑沢剤が含まれる。好ましい投与の形態には、溶液剤、有利には HANK's 又は RINGER 溶液のように生物学的に適合性の緩衝液が含まれる。さらに、本発明によるアンチセンスポリヌクレオチドは、固体形態に製剤され、次いで、使用直前に再溶解又は再懸濁されることができる。これには、そのようなアンチセンスポリヌクレオチドを含有する凍結乾燥形態及びリポソームが含まれる。
本発明は、癌を治療及び/又は予防する方法であって、そのような治療を必要とする患者にアンチセンスポリヌクレオチドタイプのESM−1のアンタゴニスト化合物を含有する上で定義されたような医薬組成物を投与する段階を含んでなる方法にも関する。
一般に、上で定義されたような医薬組成物であって、治療学的に有効な量のタンパク質ESM−1のアンタゴニスト化合物を含有する本発明の組成物のいずれも、癌の予防及び/又は治療に有用である。
非限定的な例示として、本発明による医薬組成物は、気道癌、気管支−肺癌、乳癌、結腸癌、及び腎臓癌、並びに消化器系の癌のような癌を予防及び/又は治療するために有用である。
本発明は、次の実施例と図によって更に例示されるが、いかなるやり方によっても限定されるものではない。
タンパク質ESM−1の分泌型の翻訳後修飾
A.材料及び方法
A.1 細胞培養及び材料
CHO細胞は、10%ウシ胎児血清を補った培地MAMα(Gibco BRL, Life Technologies, France)中で培養した。ウイルスSV40で形質移入したヒト内皮細胞、即ち、LASSALLE et al (1992) に記載されるSV1細胞は、2mMのL−グルタミン及び10%ウシ胎児血清を含有するRPMI1640培地中で培養した。ヒト胚腎臓細胞、株293細胞は、10%ウシ胎児血清を含む、ダルベッコのDMEM培地中で培養した。増殖試験に用いるヒト胚腎臓細胞、即ち、株293の細胞は、10mg/mlのインスリン及び10mg/mlのトランスフェリンを補った、ダルベッコの修飾EAGLE培地(Gibco BRL)中で培養した。プロテイナーゼ及びコンドロイチナーゼABCは、Boehringer Mannheim より商業的に入手可能であった。コンドロイチナーゼB、AC及びCは、Sigma により販売されている。ヒト因子HGF/SFはR&Dに、そしてデコリンは Sigma により販売されている。抗ESM−1モノクローナル抗体は、BECHARD et al (2000) に記載されるように産生し、そして精製した。
ESM−1をコードする完全cDNAを振り向け、精製し、そして発現ベクターpcDNA3(Invitrogen が販売)のXhoI及びHindIII部位の間に挿入した。このベクター構築物を、リポフェクタミン(Gibco BRL)の存在下で、細胞株CHO及び293に形質移入し、その後、G418上で選択した(CHO株に関しては1000μg/ml、そして293株に関しては300μg/ml)。安定に形質移入されている細胞株を限界希釈によって得て、そしてこうして選択した細胞を、それぞれ、CHO−ESM及び2936−ESMと名づけた。
ソフトウェア、NET O glyc:0予測サーバーを用いて、O−グリコシル化の2つの潜在的な部位を予測しておいた。
137位のセリン残基(配列番号1)及び120位のスレオニン(配列番号1)は、アラニン残基で置換した。O−グリコシル化突然変異体は、製造者の推奨にしたがって、突然変異誘発キット、Quick Change (Stratagene)を用いたPCRによって産生した。
突然変異体cDNAは、配列決定(Applied Biosystems の配列決定装置ABIプリズム377)によって確認した。その後、突然変異体cDNAが挿入されているベクターで293細胞を形質移入し、一過的な及び安定な形質移入体、それぞれ293−ESM/S 137A及び293−ESM/T 120Aを得た。
細胞培養上清をpH8に調整し、その後、DEAE−セファロースカラム(Pharmacia)を通過させ、Tris緩衝液50mM(pH8)、0.2M NaClで洗浄してから、緩衝液Tris 50mM(pH8)、0.8M NaClで溶出した。
溶出液を50mM Tris(pH8)、0.5M NaClに調整し、そして親和性カラムを通過させた。親和性カラムは、製造者の推奨にしたがって、Affigel Hzヒドラジドゲル(Biorad)上に固定した抗ESM−1モノクローナル抗体(ハイブリドーマ株MEC4が産生)で構成された。
Tris緩衝液50mM(pH8)、0.5M NaClでの洗浄工程後、タンパク質ESM−1は、3MMgCl2溶液で溶出し、濃縮し、そしてウルトラフリー30装置(Millipore)上で同緩衝液に対して透析した。
その後、溶出した材料を抗ESM−1抗体での免疫検出によって定量化し、そしてクマシーブルー又はアルシアンブルーでの呈色を用いて、SDS−PAGE上で確認した。
ヒト血漿からのタンパク質ESM−1の精製は、以下のプロトコルにしたがって行った。
輸血局(フランス・リール)により供給された800mlの血漿を60%硫酸アンモニウム溶液で沈殿させ、そしてTris緩衝液50mM(pH8)、0.5M NaClに対して透析した。その後、沈殿しそして透析した血漿抽出物を、抗ESM−1免疫親和性カラムに通過させる前に、Affgel 型の50mlプレカラム(Biorad)に通過させた。免疫親和性カラムに固定したタンパク質ESM−1は、以下に記載するように回収した。
ESM−1の非グリコシル化型(ESM/S137A)は、クロマトグラフィー及び免疫親和性による単一工程で精製した。グリコシル化タンパク質ESM−1(ESM/WT)及びセリン137で交換した非グリコシル化タンパク質(ESM/S137A)の純度は、FPLCによって確認した。精製材料は、カブトガニ(limulus)アメーバ様細胞溶解物試験(BIOwhitaker)の結果によって立証するように、内毒素不含であった。
ESM−1の異なる型のサイズは、細胞培養上清及び細胞溶解物からの免疫沈降及び免疫ブロットによって決定した。細胞は、PBS中、0.5%のNP40、抗プロテイナーゼカクテル(Boehringer Mannheim, Germany)を含有する緩衝液に、4℃で30分間攪拌しながら溶解した。
その後、溶解物は、清澄にした細胞溶解物を得るため、10.000gで15分間遠心分離した。
培養上清は、孔直径0.45mmを有するフィルターでろ過した。
ハイブリドーマ株MEP19に産生されたESM−1モノクローナル抗体1μg、又は1μg抗ICAM−1モノクローナル抗体(クローン164B)を、清澄にした溶解物又は細胞培養上清に添加し、そして4℃で一晩、攪拌しながらインキュベーションした。
アガロースビーズ(Sigma)にコンジュゲート化した抗マウス免疫グロブリン50μlを、4℃で90分間に渡って添加し、その後、遠心分離し、そして溶解緩衝液で洗浄し、そしてPBS中で洗浄した。
ビーズは、20及び40μlのSDS−PAGE緩衝液に5分間再懸濁し、遠心分離して上清を解析した。
ブロッキング工程後、ハイブリドーマ株MEP14に産生されたESM−1モノクローナル抗体1μlと、膜を1時間インキュベーションし、洗浄し、その後、西洋ワサビペルオキシダーゼ(Sigma が販売)とコンジュゲート化した抗Fcマウス二次抗体と、1時間インキュベーションした。数回洗浄した後、Amersham が販売するECL検出キットを用いて、顕色を行った。
アミノ酸配列解析のため、精製タンパク質ESM−1をSDS−PAGEゲル上の電気泳動に供し、その後、Millipore が販売するポリフッ化ビニリデン(PDVF)膜上に電気トランスファーし、その後、0.1%クマシーブルーを用いて発色させた。50kDのタンパク質バンドを膜から切り取り、そしてABI473A型のタンパク質配列決定装置上で、エドマン分解によってN末端配列を決定した。
グリコサミノグリカンのサイズを決定するため、0.1%SDSの存在下又は非存在下、Tris緩衝液10mM、pH8中、酵素:ESM−1比1:50(w/w)で、精製タンパク質ESM−1を、プロテイナーゼKで、56℃で3時間消化した。完全な分解を確証するため、プロテイナーゼKによって、タンパク質ESM−1のものの10倍多い量のウシ血清アルブミン(BSA)を消化した。試料を、12% SDS−PAGEゲル上で解析し、その後、クマシーブルー及びアルシアンブルーで発色させた。
グリコサミノグリカンの置換の性質を解析するため、精製タンパク質ESM−1を、いくつかのコンドロイチナーゼで消化した:コンドロイチナーゼABC(0.5単位/mg、緩衝液100mM TrisHCl、pH8、30mM酢酸ナトリウム、pH5.2中、37℃で45分間)、コンドロイチナーゼB(200単位/mg、緩衝液20mM Tris−HCl、50mM、NaCl、4mM CaCl2、0.01%BSA、pH7.5中、25℃で2時間)、コンドロイチナーゼAC(mlあたり1単位、緩衝液250mM TrisHCl、75mM酢酸ナトリウム、pH7.3中、37℃で2時間)、コンドロイチナーゼC(80−120単位/ml、緩衝液50mM TrisHCl、pH8中、25℃で3時間)。試料は、免疫ブロットによって解析した。
コントロールである低血小板血漿(PPP)は、抗凝血剤、クエン酸ナトリウム(30mM)の存在下、2500gで15分間遠心分離することによって、血液から調製した。すべての試薬は、STAGO Diagnostica(フランス)によって販売された。低血小板血漿に、タンパク質ESM−1、緩衝液又はヘパリンを添加することによって、3つのパラメーターを評価した。
a)APTT(部分的トロンボプラスチン活性化時間):このパラメーターは、凝血の内因性の経路を調べる(FI、FII、FV、FVIII、FIX、FX、FXI、FXII)。これらの因子の1つの欠損又は阻害は、PPP試薬、セファリン、活性化因子、CaCl2の混合物の凝血時間を増加させる。
b)TCT(トロンビン凝血時間):このパラメーターは、トロンビンの存在下、低血小板血漿(PPP)の混合物に対して解析する。トロンビンの標準濃度では、血漿の凝血時間は一定である。フィブリン形成欠損は、凝血時間の増加を誘発する。
c)抗Xa活性:ヘパリン、又は因子FXaに作用する他の阻害剤の抗Xa活性は、競合試験によって検出する。検討した試料(PPP+ESM−1+緩衝液又は+ヘパリン)を因子FXa及び因子FXaの特異的色素生産基質と混合する。最終呈色は、阻害剤濃度に逆比例する。
この高感度包括的試験は、トロンビン生成の遅延又は減少を誘発する、血漿又は血小板中の欠損を検出可能である。高血小板血漿(PRP)は、クエン酸ナトリウムの存在下、150gで10分間遠心分離することによって、血液から調製した。各被験者に関して、ESM−1の非存在下の試料、非分画ヘパリン化カルシウム(抗Xa 0.5UI/ml)を含む試料、又は、0.2mg/ml、0.5mg/ml及び1mg/mlのESM−1(最終濃度)を含む試料において、トロンビン生成試験を行った。
タンパク質ESM−1は、試験10分前に添加した。
37℃で、1mlの血漿を、1mlのCaCl2と混合し、そしてクロノメーターを開始した。0.1mlのアリコット分画を、1分ごとに、反応混合物から採取した。
反応混合物中に形成された血餅を定期的に除去した。アリコット分画を0.2mlのフィブリノーゲン(Sigma、Owren緩衝液中4/1000)と37℃で混合し、そして各アリコット分画に関して凝血時間を測定した。
反応混合物中に形成されたトロンビンは、形成因子(forminogen)として働き、フィブリンの形成を誘発した。凝血活性は、4から8分間の間に最大であり、その後、抗トロンビンによるトロンビンの中和のため、減少した。
50mM Tris緩衝液、pH8.5、0.5M NaCl中の精製グリコシル化ESM−1(ESM/WT)及び精製非グリコシル化ESM−1(ESM/S137A)50μgは、クロマトグラフィー系、Biorad Biologic Chromatography 系を用いて、流速1ml/分で、Pharmacia 販売のSuperdex200カラム(ESM/WT用)又はSuperdex75(ESM/S137A用)上の液体クロマトグラフィーによって分離した。
標準として、以下の高及び低分子量(Pharmacia Biotech)の較正キットを用いた:リボヌクレアーゼA(ウシ膵臓、13.7kD)、オボアルブミン(43kD)、アルブミン(ウシ血清、67kD)、アルドラーゼ(ウサギ筋肉、158kD)、フェリチン(ウシ脾臓、440kD)、チログロブリン(ウシ甲状腺、669kD)。
分子量標準は、タンパク質ESM−1に用いたものと同一の緩衝液を用いて分離し、そして分離は、タンパク質ESM/WT及びESM/S137Aの分離の直後に行った。それぞれ、タンパク質ESM/WT及びESM/S137Aの見かけの分子量を決定するため、標準タンパク質の溶出時間を用いて、標準線形曲線、Kav=f(log MR)を引いた。
1mlの画分を収集し、特異的免疫酵素試験(ELISA)を用いて、タンパク質ESM−1を検出した。
B.1 内皮細胞及び樹立細胞株により産生されたタンパク質ESM−1の分泌型の翻訳後修飾
シグナルペプチドと予測されるN末端アミノ酸配列の存在に示唆されるように、ESM−1が分泌分子として成熟しているかどうかを決定するため、細胞株293−ESMからタンパク質ESM−1を精製した。
50kD型のN末端配列によって、19アミノ酸のシグナルペプチドが予測される部位で切断され、配列番号1の20位のトリプトファン残基で始まる165アミノ酸のESM−1の成熟ポリペプチドが生じ、N末端配列がWSNNYAVD−Pであることが示された。
ESM−1は、HUVEC、SV1、293−ESM及びCHO−ESM細胞の培養上清から免疫沈降し、その後、免疫ブロットによって解析した。
HUVEC細胞上清において、ESM−1は、50kD周囲の拡散したバンドの形で移動することが、先に示されていた。
類似のサイズのバンドが、SV1、293−ESM及びCHO−ESM細胞の上清でも観察された(図1A)。
見出された分子量は、予測された分子量より大きかった。この結果は、ESM−1の分泌型が、翻訳後修飾を経たことを示唆した。精製タンパク質ESM−1は、SDS−PAGEゲル上、クマシーブルーよりアルシアンブルーでよく発色し、この事実は、還元状態がESM−1の見かけの分子量を変更しないため、ESM−1は、ジスルフィド架橋を通じてオリゴマー化されているのではなく、グリコシル化されていることを示唆した(図1B、1C)。
潜在的なグリコシル化部位のコンピュータ解析によって、それぞれ、16位のセリン、120位のスレオニン及び127位のセリン上に、3つの推定上のO−グリコシル化部位が同定されたが、N−グリコシル化部位は同定されなかった。
120位のスレオニン残基及び137位のセリン残基を、アラニン残基で交換した。
これらの突然変異体を293細胞で一過的に発現した。
その後、タンパク質ESM−1を細胞溶解物及び培養上清から免疫沈降し、そして免疫ブロットによって解析した。
タンパク質ESM/T120Aは、図2Aに示すように、50kDに移動し、これはESM−1の野生型(ESM/WT)の見かけの分子量と類似の位置であった。
対照的に、タンパク質ESM/S137Aは、ESM−1の細胞内型に対応する22kDに移動し(図2A)、これはESM−1の予測される分子量と矛盾しない分子量であった。
一過的形質移入COS及びCHO細胞から行った免疫沈降は同一の結果を生じ、検討したすべての細胞モデルで、137位のセリン残基のみがグリココンジュゲート化の部位を構成することを示した。
ESM−1のグリコサミノグリカン(GAG)の長さを決定するため、ESM−1のペプチド部分をプロテイナーゼKによって完全に消化した。
プロテイナーゼKによる処理は、50kDから25−30kDへの分子量変化を引き起こした(図2B)。これらの結果は、50kDの見かけの分子量のバンドが、22kDのポリペプチドの存在と矛盾せず、22kDのポリペプチドが、平均サイズ25−30kDのGAG鎖によって、137位のセリンでグリココンジュゲート化されていることを示す。
ESM−1のGAG鎖を性質決定するため、タンパク質ESM−1をまず、コンドロイチナーゼABCで消化した。コンドロイチナーゼABCによる処理は、分泌タンパク質ESM−1の分子量を22kDに減少させ(図3A)、これは、ESM−1の炭水化物が、コンドロイチン型の鎖であることを示唆した。
このプロフィールは、293−ESM細胞及びヒト内皮細胞株SV1から精製したタンパク質ESM−1と類似している。タンパク質ESM−1は、血中で循環するため、我々はまた、ヒト血漿から精製したタンパク質ESM−1の挙動も検討した。検討した他の細胞株すべてに関して、結果は、50kDの単一の主なバンドを示し、このバンドは、コンドロイチナーゼABCでの処理後、22kDの分子量を有した(図3A)。こうしたタンパク質ESM−1は、単一コンドロイチン硫酸鎖を含有する可溶性プロテオグリカンである。
ESM−1のGAG鎖を構成する糖単位の型をよりよく決定するため、コンドロイチナーゼB、AC及びCなどのいくつかの特異的酵素を用いた。
コンドロイチナーゼBでの処理は、見かけの分子量を50kDから22kDに減少させた(図3B)。
ESM−1をコンドロイチナーゼAC及びCによって処理した後も同様のプロフィールが観察された(図3C、D)。
これらの異なる酵素処理は、ESM−1のGAG鎖が、異なって硫酸化されたイズロン酸又はグルクロン酸にカップリングした、アミノ糖の一種、N−アセチルガラクトサミンを含む、異なる構成要素単位を含有することを示した。
これらの異なる単位は鎖に交互に現れ、そしてコンドロイチナーゼでの処理すべてが、同じ22kDの減少した見かけの分子量を導くため、コンドロイチナーゼによる消化後にタンパク質部分に残る、鎖の初めの部分、N末端二硫酸化二糖近くに存在した。
タンパク質ESM−1は、内皮細胞によってコンドロイチン/デルマタン硫酸型のプロテオグリカンとして分泌され、そしてデルマタン硫酸は、in vitro でトロンビン生成に(DELORME et al (1996))、そして凝血に、影響を示すため、ESM−1の抗凝血潜在能力を、パラメーターAPTT、TCT、抗Xa活性を用いて、そしてトロンビン生成に対して検証した。
結果は以下の表1に示す。
パラメーターAPTT、TCT及び抗Xz活性は、緩衝液を含む又はタンパク質ESM−1を含む低血小板血漿(PPP)に関して類似していた。
陽性コントロールにおいて、APTT、TCT及び抗Xa活性は、ヘパリンの存在下でPPPに関してより高かった。
さらに、タンパク質ESM−1は、トロンビン生成試験に対して阻害効果を持たなかった;コントロール緩衝液に比較して、0.2mg/ml、0.5mg/ml及び1mg/mlのESM−1濃度に応じて、相違はまったく観察されず、一方、ヘパリンは、トロンビン形成に遅延を誘発した(図4)。
因子HGF/SFの***促進活性へのタンパク質ESM−1の影響
A.材料及び方法
増殖刺激活性は、293細胞による3Hチミジンの取り込みを測定することによって決定した。
293細胞は、TPP型の96ウェルマイクロプレートにおいて、ウェルあたり1x104細胞の濃度で蒔き、そしてトランスフェリン及びインスリンを補ったDMEM培地中、24時間維持した。
ヒト組換えHGF/SFは、0.1%ウシ血清アルブミンを含有するPBSで希釈し、そして最終濃度50ng/mlを得るため、水中で、3つの同一のウェルに添加した。
組換えタンパク質ESM/WT、ESM/S137A、ESM−1由来の精製GAG鎖及びデコリンは、単独で、又は1ng/mlから2.5μg/mlの用量の因子HGF/SFと組み合わせて、HGF/SFの添加と同時に、添加した。
培養96時間後、細胞をウェルあたり0.5μCiの3Hチミジンとインキュベーションし、そして3Hチミジンの取り込みを、Topcountマイクロプレート・シンチレーションカウンター(Packard)型のシンチレーションカウンターを用いて決定した。
試験は3つの同一ウェルのバッチに対して行った。
細胞生存性は、MTT還元試験を用いて測定した。
因子HGF/SFの活性に対するタンパク質ESM−1の影響を検討した。
293細胞による3H−チミジンの取り込みを、50ng/mlのHGF/SF単独、又は異なる量のESM/WTと組み合わせた存在下で測定した。
実験の最初のバッチにおいて、50ng/mlのHGF/SF単独では、血清によって誘発される増殖の約45%に等しいレベルで、293細胞の増殖が誘発されたが、タンパク質ESM/WT単独では、293細胞の増殖が刺激されなかったことを観察した。
対照的に、因子HGF/SFと組み合わせると、タンパク質ESM/WTは、2.5μg/mlの濃度で試験した際、HGF/SFによって誘発される293細胞の増殖を、162.3%の増加で、大幅に増加させた(図5)。
HGF/SF活性に対するタンパク質ESM−1のこの増加効果は、ESM−1の用量に依存し、そして10ng/mlの用量で、有意になり始めた(図6)。
さらに、因子HGF/SFの***促進活性へのタンパク質ESM/WTの影響を、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸型の別のプロテオグリカン、デコリンの影響に比較した。タンパク質ESM/WTと対照的に、デコリンは、因子HGF/SFによって誘発される293細胞の増殖を増加させる活性をまったく示さなかった(図5、6)。
これらの結果は、タンパク質ESM−1が、因子HGF/SFの***促進活性に対して特異的影響を有することを示した。
ESM−1の非グリコシル化型は、因子HGFSFの存在下又は非存在下いずれかで、293細胞の増殖を誘発不能であり(図5)、該因子を高濃度で用いた場合でさえ、不能であった。
対照的に、ESM−1から精製したGAG鎖は、因子HGF/SF単独に比較して、96.6%に近い増加係数で、因子HGF/SFによって誘発される293細胞の増殖を大幅に増加させた(図5)。GAG鎖の***促進効果は、タンパク質ESM−1の野生型で観察されるものより小さかったが、それにもかかわらず、この効果は、添加したGAG鎖の用量に依存した(図6)。
一般的に、因子HGF/SFは、妊娠6から13週のヒト器官形成の重要な初期中に発現される。HGF/SF遺伝子を発現する器官は、特に、肝臓、後腎、腸及び肺であり、これらの器官は各々、間葉及び上皮間の誘発性相互作用によって発達する。さらに、因子HGF/SFは、ヒト腎臓多嚢胞性異形成症(TAKAYAMA et al 1997)の、そして尿細管の奇形及び過剰増殖出現の重要な要因である。上に示す結果は、タンパク質ESM−1が、HGF/SFの存在下で、胚性腎臓の細胞増殖を有意に増加させるが、タンパク質ESM−1の非グリコシル化型がまったく影響を持たないことを示す。さらに、タンパク質ESM−1から単離したGAG鎖は、グリコシル化タンパク質ESM/WTの効果を模倣することが可能である。これらの結果は、因子HGF/SFの機能に対するESM−1の生物学的活性が、そのGAG鎖によって主に仲介されることを明らかに示す。内皮細胞によって分泌されるコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸型の別のプロテオグリカンであり、そして因子HGF/SF上に固定可能であるデコリン(CELLA et al, 1992)が、HGFSFの活性に、まったく影響を持たないことに注目することが可能である。これらの比較は、小さなロイシンリッチ反復を持つプロテオグリカンファミリーに属するプロテオグリカンのGAG鎖と異なるGAG鎖の組成を必要とする、因子HGF/SFの活性に対する、タンパク質ESM−1の作用の特異性を示す。
抗体タイプのタンパク質ESM−1アンタゴニスト化合物の調製
システイン残基が豊富なタンパク質ESM−1のN末端領域に対して向けられる抗ESM−1モノクローナル抗体を得るため、タンパク質ESM−1をコードするDNA挿入物を含有する発現ベクターで形質移入したCHO細胞株が産生する天然型のタンパク質ESM−1を精製した。
ESM−1のcDNAを真核発現ベクターpcDNA3(Invitrogen)に挿入し、その後、製造者の推奨にしたがって、リポフェクタミン(Gibco)でCHO細胞に形質移入した。形質移入48時間後、1000マイクログラム/mlの用量の選択剤(G418、Gibco)の存在下、細胞を移植した。選択2週間後、G418に耐性であるCHO細胞を限界希釈によってクローニングした。その後、ESM−1を発現しているクローンを選択し、そしてCHO−ESMと名づけた(CNCMに寄託)。
産生のため、CHO−ESM細胞を、ウシ胎児血清を含まない培地(培地CHO SFM II、Gibco)中の懸濁で培養した。上清をpH8に調整し、そしてDEAE−セファロースカラム(Pharmacia)に通過させた。カラムを緩衝液50mM Tris、pH8、0.2M NaClで洗浄した。緩衝液50mM Tris、pH8、1M NaClでESM−1分子を溶出した。その後、溶出物を、緩衝液50mM Tris、pH8中で1:4に希釈し、そしてアガロース(Biorad)上に固定した抗ESM−1モノクローナル抗体(MEC4)の存在下でインキュベーションした。攪拌しながら4℃で一晩インキュベーションした後、緩衝液50mM Tris、pH8、0.2M NaClでアガロースビーズを洗浄した。ESM−1は、3M MgCl2で溶出した。溶出物を濃縮し、そして緩衝液50mM Tris、pH8、0.5M NaCl中で透析し、そして−70℃で保存した。
BECHARDら(2000)に記載される技術にしたがって、融合、スクリーニング及びサブクローニングによって、抗ESM−1モノクローナル抗体を分泌しているハイブリドーマ細胞を得た。
5つのハイブリドーマ細胞クローンを得て、そして総称的にMEC(CHO細胞によって産生される、ESM−1に対するマウスモノクローナル抗体)と名づけた。
選択したハイブリドーマのうち4つは、アイソタイプIgG1、kであり、それぞれのハイブリドーマをMEC4、MEC5、MEC15及びMEC36と名づけた。
ハイブリドーマの1つはアイソタイプIgM、kのハイブリドーマMEC11であった。
ハイブリドーマ細胞クローンは、血清の非存在下、培地中で培養し、そして Pharmacia(スウェーデン・ウプサラ)販売のプロテインG−セファロースカラム上でのクロマトグラフィーによって、抗ESM−1抗体を精製した。
ポリペプチドタイプのタンパク質ESM−1アンタゴニスト化合物の調製
製造者の推奨にしたがって用いる、部位特異的迅速突然変異誘発キットの参考資料を元に、Stratagene 販売のキットを用いて、定方向突然変異誘発を行った。
簡単に説明すると、厳密に相補的な配列の順方向及び逆方向プライマー対であって、突然変異アミノ酸(類)をコードするヌクレオチド、又は相補的ヌクレオチドを含んでなり、これらのヌクレオチドがプライマー配列の中央に位置し、プライマーがまた、中央ヌクレオチドの5’及び3’側両方に、増幅しようとする配列に相補的な、約10から15の連続ヌクレオチドも含んでなる、前記プライマーを合成した。
PCRによる増幅後、突然変異タンパク質ESM−1をコードする増幅ポリヌクレオチドをベクターpCDNA3に挿入した。
プライマーの以下の対、各々を用いた:
a)タンパク質ESM−1 F115A用
順方向プライマー:5’−GCC TGA AAT TCC CCG CCT TCC AAT ATT CAG−3’(配列番号3)
逆方向プライマー:5’−CTG AAT ATT GGA AGG CGG GGA ATT TCA GGC−3’(配列番号4)
b)タンパク質ESM−1 F116A用
順方向プライマー:5’−CCT GAA ATT CCC CTT CGC CCA ATA TTC AGT AAC C−3’(配列番号5)
逆方向プライマー:5’−GGT TAC TGA ATA TTG CGC GAA GGG GAA TTT CAGT G−3’(配列番号6)
c)タンパク質ESM−1 F115 F116A用
順方向プライマー:5’−CCT GAA ATT CCC CGC CGC CCA ATA TTC AGT AAC C−3’(配列番号7)
逆方向プライマー:5’−GGT TAC TGA ATA TTG GGC GGC GGG GAA TTT CAG G−3’−(配列番号8)
グリコシル化タンパク質ESM−1の腫瘍発生活性
A.材料及び方法
A.1. 細胞株:HEK T、HEK ESM/WT、HEK ESM/S137A、HEK ESM/69、HEK ESM/71、HEK ESM/73
ESM−1の野生型(ESM/WT)をコードするcDNAで安定に形質移入した細胞株HEK ESM/WTを用いた。4つの他の細胞株は、野生型の定方向突然変異誘発によって得たESM−1の精製形態をコードするcDNAで形質移入することによって得た。HEK ESM/S137Aと称する、これらの最初のものは、O−グリコシル化の主要部位であるセリン137がアラニンで交換されている、突然変異体非グリコシル化タンパク質ESM−1を発現した。3つの他の株は、タンパク質部分が突然変異しているESM−1のグリコシル化型を発現した。これらは、株HEK ESM/F115A(134位でフェニルアラニンを交換)、HEK ESM/71(135位でフェニルアラニンを交換)及びHEK ESM/F115A、F116A(134−135位の二重欠失/交換)であった。
こうして、ESM−1の異なる型を産生する6つの細胞株を用いた:
−コントロールHEK、ESM−1を分泌しない;
−ESM−1の野生型:HEK ESM/WT;
−ESM−1の脱グリコシル化型:HEK ESM/S137A;
−タンパク質部分が115−116領域で突然変異しているグリコシル化型:HEK−ESM/69、HEK−ESM/71、HEK ESM/73。
用いたマウスはSCID型(重症複合免疫不全)のものであった。これらは、より正確には、リールのパスツール研究所の動物施設に供給されるマウス、C.B.17 Scid/scidであった。これらのマウスは、組換え系に劣性常染色体突然変異を有した(Blunt、1995)。この突然変異は、非機能的免疫グロブリン及びT細胞受容体(TcR)及びB 5BcRの産生を引き起こす。その結果、これらは機能するT及びBリンパ球を持たない;したがって、これらのマウスは非自己を許容し、そして異種間腫瘍の発達に選択されるモデルを代表する。用いたSCIDマウスは、3から5週齢の若いオスマウスであった。これらの各々に関して、抗アシアロGM−1抗体の腹腔内注射(200μlのRPMIで希釈したものをマウスあたり100μg)は、異なる細胞株の注射24時間前に行った。これらは、NK細胞に発現されるアシアロGM−1抗原に対して特異的に向けられる、ウサギポリクローナル抗体(Wako Pure Chemical Industries, Ltd)であった。先の検討によって、これらの抗体をマウスモデルで使用すると、NK細胞の細胞傷害性効果が中和され、そして腫瘍移植が促進されることが示されている(Mather G et al (1994))。
その後、エーテル麻酔したマウス4バッチ(グループあたり10から15匹のマウス)の背中に、皮下注射した。各マウスに、200μlのRPMIに希釈した100万の細胞を投与した。これらの細胞の注射は、実験の最初の日を定義した(D0)。各マウスに関して、ありうる腫瘍の外見を観察するための注射点の巨視的検査と共に、体重測定を毎週行った。ELISA試験(BECHARD Dら、2000)によってESM−1の血清レベルを決定するため、5週目以降、血液試料(マウスあたり約500μl)を毎週採取した。解剖病理学的検査を各マウスに行った。
B.1. グリコシル化タンパク質ESM−1によるマウスにおける腫瘍の誘発
HEK細胞は、ESM/WTと称する、グリコシル化野生型タンパク質ESM−1コードcDNAを含有する挿入物を持つベクターで形質移入した。HEK細胞は、5週齢のSCIDマウスに皮下注射した。各マウスは、先に、抗アシアロGN−1抗体を腹腔内注射で投与されていた。
形質移入HEK細胞の注射8週後、マウスで観察される、1cm3より大きい体積を有する腫瘍の割合を解析した。
結果を図7に示す。
図7Aでは、コントロールHEK細胞の注射が、マウスにおいて腫瘍出現を誘発しなかったことが観察可能である。対照的に、グリコシル化タンパク質ESM−1をコードするDNAで形質移入したHEK細胞は、巨視的に可視である多くの腫瘍を誘発し、このうち約95%が、1cm3より大きい腫瘍体積を有した。
図7Bは、グリコシル化タンパク質ESM−1をコードするDNAで形質移入した形質移入HEK細胞を投与しておいたマウスにおける、腫瘍出現の動態を例示する。cm3で表す平均腫瘍体積が、形質移入HEK細胞注射4週後から連続して増加したことが観察可能である。
タンパク質ESM−1の血清レベルもまた、コントロールHEK細胞を投与しておいたマウス及びタンパク質ESM−1をコードするcDNAで形質移入したHEK細胞を投与しておいたマウスで測定した。
結果を図8に示す。
図8Aに例示する結果は、タンパク質ESM−1がコントロールHEK細胞を投与しておいたマウスの血清には見られなかったことを示す。対照的に、細胞注入8週後、タンパク質ESM−1をコードするcDNAで形質移入したHEK細胞を投与しておいたマウスでは、mlあたり40から50ナノグラムの血清レベルが見出された。
グリコシル化タンパク質ESM−1(ESM/WT)を発現している形質移入HEK細胞を投与しておいたマウスにおいて、ESM−1の血清レベルの動態もまた、解析した。
結果を図8Bに示す。
タンパク質ESM−1の検出可能量が細胞注射5週後からマウス血清に見られ、そして血清レベルが、細胞注射5週後から12週後まで、迅速にそして連続して増加したことが観察可能である。
図8に例示する実験結果は、形質移入HEK細胞を投与しておいたマウスで発達する腫瘍が、タンパク質ESM−1を生じることを示す。さらに、循環中で産生されるタンパク質ESM−1の量は、マウスにおける腫瘍発達の動態にしたがう。
タンパク質ESM−1の異なる型の腫瘍生成促進活性
A.材料及び方法
この実施例で用いた材料及び方法は、実施例5に記載したものと同一である。
B.結果
HEK細胞は、それぞれ、非グリコシル化野生型ESM−1(ESM/WT)、非グリコシル化型ESM−1(ESM/S137A)、並びに134位及び135位のフェニルアラニン残基で突然変異して、アラニン残基に交換されている、グリコシル化型ESM−1(ESM/73)をコードするDNA挿入物を所持するベクターによって形質移入した。5週齢であり、そして先に、抗アシアロGM−1抗体を投与しておいたSCIDマウスに、異なる形質移入細胞を皮下注射した。
異なるバッチのマウスにおいて、1cm3より大きい腫瘍体積を有する、巨視的に可視である腫瘍の割合を解析した。結果を図9Aに示す。
図9Aの結果は、グリコシル化タンパク質ESM−1のみがマウスにおいて腫瘍を誘発可能であることを示す。非グリコシル化ESM−1、又は134位及び135位のフェニルアラニン残基で突然変異したグリコシル化ESM−1のいずれも、SCIDマウスにおいて腫瘍発達を誘発しなかった。
異なるバッチのマウスにおいて、循環中のタンパク質ESM−1の血清レベルもまた測定した。結果を図9Bに示す。
非グリコシル化タンパク質ESM−1(ESM/S137A)を発現している細胞を注射したマウス、又はグリコシル化及び突然変異タンパク質ESM−1であるHEK−ESM/F115A、F116Aを投与しておいたマウスのいずれも、タンパク質ESM−1を産生しなかった。
この実施例に示す全体の結果は、グリコシル化タンパク質ESM−1の腫瘍生成促進活性を確認する。
結果はまた、タンパク質ESM−1の非グリコシル化型又はタンパク質ESM−1の突然変異型が、このタンパク質のアンタゴニストとして挙動し、そして癌性病理に関して予防的及び/又は治癒的能力を持つことが可能であることも示す。
異なる発達段階の気管支−肺癌を患う患者における循環タンパク質ESM−1の測定
A.材料及び方法
免疫検出試験は、一般的な特徴が、BECHARD et al (2000) に記載されるものと同一である「サンドイッチ」型の免疫酵素試験からなった。
ハイブリドーマ株MEP14(CNCM第I−1942号)に産生される抗ESM−1モノクローナル抗体は、炭酸緩衝液0.1M、pH9.5中、5μg/mlの濃度に希釈し、そして96ウェルプレート上に、+4℃で一晩吸着させた(プレートE.I.A./R.I.A.、Costar、米国マサチューセッツ州ケンブリッジ)。
プレートは、200μl/ウェルの体積の、0.1%ウシ血清アルブミン及び5mM EDTAを含有するPBS緩衝液を用いて、実験室温度で1時間飽和させ、その後、ELISA緩衝液(0.1% Tween20を補った上記PBS緩衝液)で2回洗浄した。
較正は、BECHARDら(2000)に記載される技術にしたがって精製したタンパク質ESM−1で行った。
ウェルは、ELISA緩衝液で3回洗浄し、その後、ウェルあたり100μlの緩衝液中、0.1μg/mlの濃度の、ESM−1に対して向けられる二次モノクローナル抗体、抗体MEC15(CNCM第I−2572号)と、実験室温度で1時間インキュベーションした。
3回洗浄した後、ELISA緩衝液中で希釈した、マウスIgG1に対して向けられるビオチン化ラットモノクローナル抗体(PHARMINGEN販売)を添加し、そして放置して、この二次抗体と1時間インキュベーションした。
ELISA緩衝液中で3回洗浄した後、ウェルを、1:10.000v/vの希釈でストレプトアビジン−ペルオキシダーゼ・コンジュゲート(ZYMED販売)とインキュベーションした。
ストレプトアビジン−ペルオキシダーゼ・コンジュゲートとのインキュベーション30分後、各ウェルをELISA緩衝液で3回洗浄し、その後、PBS緩衝液中で2回洗浄した。
ストレプトアビジン−ペルオキシダーゼ・コンジュゲートは、255μlのH2O2の存在下、Sigma (米国ミズーリ州セントルイス)販売の基質TMBで30秒間顕色した。
顕色反応は、100μl体積の2N H2SO4を添加することによって停止した。
プレートは、405ナノメートルの波長で分光光度計(anthos labtec LP40, France)を用いて読み取った。
タンパク質ESM−1の血漿又は血清濃度は、光学密度測定値から計算し、そしてmlあたりのナノグラムとして表した。
以下に定義する国際分類TNMにしたがった、異なる発達段階、それぞれI、II、IIIA、IIIB及びIV期の気管支肺癌を患う、異なる患者の血清における循環タンパク質ESM−1の濃度:
T=腫瘍サイズ(T1:<1cm;T2:1及び3cmの間;T3:>3cm)。
N=神経節モジュール(侵襲されていなければNO;侵襲されていればN1)。
M=遠距離での転移(転移がなければMO;転移があればM)。
I期の癌を患う患者は、1.43±0.76ナノグラム/mlのタンパク質ESM−1血清濃度を有した(n=3)。
II期の気管支肺癌を患う患者は、0.72±0.39ナノグラム/mlのタンパク質ESM−1血清濃度を有した(n=3)。
IIIA期の気管支肺癌を患う患者は、0.9±0.53ナノグラム/mlの循環タンパク質ESM−1濃度を有した(n=2)。
IIIB期の気管支肺癌を患う患者は、3.1±2.17ナノグラム/mlの循環タンパク質ESM−1濃度を有した(n=3)。
IV期の気管支肺癌を患う患者は、3.1±1.91ナノグラム/mlの循環タンパク質ESM−1濃度を有した(n=11)。
上に示す結果は、タンパク質ESM−1の血清レベルが、癌発達段階の関数として増加することを示す。こうして、患者における血液循環中のタンパク質ESM−1の産生レベル及び癌の重症度の間に、明らかな相関が立証される。
抗体タイプのESM−1アンタゴニスト化合物の抗腫瘍活性
A.材料及び方法
MEP−08モノクローナル抗体は、HEK/ESM−WT細胞の接種後、2回目から、400μgの用量で腹腔内注射した。注射は毎週12週間繰り返した。コントロール抗体、MEP−14は、同一条件下で用いた。マウスは、腫瘍体積が6cm3より大きくなったとき屠殺した(各グループにn>8のマウス)。図は、各グループで生存したマウスの割合を示す。
B.結果
115位のフェニルアラニンが、腫瘍発達に必要となる範囲内で、該残基は新規療法標的を含んでなる。このため、第I−1941号でCNCMに寄託されるハイブリドーマ株MEP−08に産生され、この領域に対して特異的に向けられる、抗ESM−1モノクローナル抗体MEP−08を産生し、そしてHEK−ESM/WTマウスのグループに注射した。目的は、腫瘍発達におけるESM−1のペプチドの役割を検討し、そしてありうる療法効果を評価することであった。抗体のFc断片に依存する抗腫瘍効果(ADCCの反応)を除去するため、同一アイソタイプであるが、異なるエピトープを認識するコントロール抗体を、平行して、そして同一条件下で用いた。
図10は、MEP−08抗体の初期注射が、60%近くまで、マウスの生存を有意に増加させたが、MEP−14抗体がまったく影響を持たなかったことを示す。これらの最初の結果は、これが115位のフェニルアラニンに対して特異的に向けられる抗体のFab断片に関連する特異的作用であることを示し、そして腫瘍増殖における該ペプチドの関与を確認する。驚くべきことに、生存に対するこの効果は、抗体を後に投与した際には減少することが観察される。
注射開始が何週目であっても、抗体は、腫瘍増殖を遅延又は予防可能である。この抗腫瘍効果は、抗体をより早く用いた場合は、より顕著でありつづける。
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Claims (2)
- 癌を治療するための薬剤を製造するためのタンパク質ESM−1のアンタゴニスト化合物の使用であって、受託番号I−1941のもとCNCMへ1997年11月19日に寄託されたハイブリドーマMEP08によって分泌されるモノクローナル抗体からなるアンタゴニスト化合物の使用。
- 受託番号I−1941のもとCNCMへ1997年11月19日に寄託されたハイブリドーマMEP08によって分泌されるモノクローナル抗体からなるタンパク質ESM−1のアンタゴニスト化合物を含有する、癌を治療及び/又は予防するための医薬組成物。
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