JP4117809B2 - 結晶の溶融精製方法および装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、結晶の溶融精製方法および装置に関する。たとえば、高純度ビスフェノールAを得るための結晶の溶融精製方法および装置に関する。
【0002】
【産業上の利用分野】
本発明は精製ビスフェノールAの製造方法に関し、詳しくは、原料となるフェノールとアセトンより、強酸または強酸性イオン交換樹脂の触媒存在下に、縮合反応により化学合成されるか、ないしは、炭酸ジフェニルとのエステル交換反応によって製造される一般的な反応生成物より、反応により生成された水や、残ったアセトンを蒸留して除き、得られた粗ビスフェノールAのフェノール溶液より、冷却し、または濃縮して、晶析操作を行って、アダクト結晶(分子附加体)を得、このスラリーから塔型の結晶精製機により母液から実質的には完全に分離し、精製ビスフェノールAのフェノール溶液を得ると共に、異性体やその他の不純物を含む母液は反応系プロセスに循環し、次いで、この純粋にビスフェノールAとフェノールの混合液を、蒸留塔などに供給し、フェノールを実質的には完全に除き、非常に高純度の精製ビスフェノールAを得る製造方法に関する。
【0003】
【従来の技術】
ビスフェノールA(2,2−ビス(P−ヒドロキシフェニル)プロパン)は、ポリカーボネート樹脂やエポキシ樹脂の合成原料となる。このビスフェノールAは、2当量のフェノールと1当量のアセトンより、強酸または強酸性イオン交換樹脂等の触媒、必要によりさらに助触媒の存在下に、縮合反応により、工業的に大規模に製造されている。このようにして得られる粗ビスフェノールAは、通常、相当量の不純物、たとえば(o−,p−)異性体を始め、3量体などの線状や環状オリゴマー、クロマン類などの不純物を含んでいるので、従来、これを晶析法などで精製した後、前記のプラスチック製造の原料とされている。
【0004】
粗ビスフェノールAの精製に際しては、代表的には次の2つの方法がある。すなわち、第1の方法として、まず蒸留塔において、縮合反応液から、縮合反応により生成した水、未反応のアセトン、反応促進剤としてのメルカプタン類などを除去した後、異性体や高沸点不純物とビスフェノールAを含むフェノール溶液を濃縮缶などにより濃度調整し、次に一連の晶析工程に供給する。
【0005】
晶析工程における晶析機では、前記溶液を冷却し、ビスフェノールAとフェノールの付加体(アダクト)結晶を晶出させ、この結晶スラリーより、フィルターや遠心分離機などにより結晶を分離し、結晶ケーキは純粋なフェノール液にて良く洗浄した後、液分を再分離し、加熱溶解し、この加熱溶解液を、次の二段目の精製晶析工程に送る。
【0006】
二段目の精製晶析工程では、加熱溶解液を後方よりの分離母液等を循環使用して、濃度調整の後、晶析機への供給液とする。これを冷却し、ビスフェノールAとフェノールのアダクト結晶を晶出させ、その後、この結晶スラリーから、フィルターや遠心分離機などにより結晶を分離し、ケーキ洗浄を行って、二段目の精製晶析工程を終える。この結晶ケーキは、加熱溶解後、フェノール分離のため次の脱フェノール工程に送られる。その脱フェノール工程では、フェノールを完全に分離、除去して高純度精製ビスフェノールAを得るものである。
【0007】
また、第2の粗ビスフェノールAの精製晶析法は、異性体や高沸点不純物とビスフェノールAを含むフェノール溶液を、ほとんどのフェノールを蒸発させて濃縮した後、多量の温水中に導入し、冷却してビスフェノールA(単体)結晶を得る晶析方法である。
【0008】
ビスフェノールAは、フェノール液には相当の溶解度を持っているが、温水中ではほとんど溶解しない。したがって、大量の温水中にフェノールを少量含む溶融液を混合することにより、ビスフェノールAを晶出させる。
【0009】
この結晶スラリーから、フィルターや遠心分離器などにより結晶を分離し、結晶ケーキは、残ったフェノールと水分を完全に除去して高純度精製ビスフェノールAを得る方法である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述の各粗ビスフェノールAの精製方法においては、第1の方法では少なくても二段の晶析工程が必要である。また、さらに第2の方法においては、精製ビスフェノールAを分離精製するためには、多量の温水をプロセス内で循環させることとその温水の精製工程が必要となり、実質的にプロセスを簡素化できないという問題を有し、経済的ではない。
【0011】
一般に、晶析精製方法において、目的結晶を分離した結晶ケーキは何らかの量の母液分(不純物を多く含んでいる)を含んでおり、実際的には晶析と固液分離とにより結晶単体のみとすることが難しく、高純度の製品化のためにはこの母液分を完全に除去することが必要となる。
【0012】
しかし、工業的に簡単な方法で効率的に、実質的に母液分をゼロとすることができれば、非常に経済的な晶析により分離精製法が構築できる。
【0013】
このために、塔型の結晶溶融精製塔を用いて十分に向流置換洗浄を行えば、晶析により結晶単体のみを得ることができる。
【0014】
しかしながら、目的物質であるビスフェノールAは、純品としてのメルティングポイントが比較的高く(約158℃)、かつ、そのメルティングポイント近傍の高温度に長時間晒されると、黄褐色に変着色し、その後、最終製品化したとき着色が残る。前述のように、ビスフェノールAは、これを重合反応によりポリマー化してポリカーボネート樹脂やエポキシ樹脂の原料とするので、この呈色成分により製品の透明度が下がり、または色度の悪い樹脂となると、製品価値が無くなるので、一般的な塔型の結晶溶融精製塔を用いて溶融精製を行う方法は採用されていない。
【0015】
したがって、本発明の課題は、塔型の結晶溶融精製塔を用いて、精製効率をおよび純度を著しく高め、また、精製目的物質がビスフェノールAの場合には、着色がない製品を得ることにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決した本発明の請求項1記載の発明は、竪型塔の一方側から原液スラリーを供給し、他方側を温度がより高い高温域とし、前記原料の結晶成分を他方側に移動させ、この移動した結晶成分を前記高温域において加熱溶融させ、この溶融液の一部を他方側から製品(この「製品」とは中間製品および最終製品のいずれの場合も含む)として取出し、残部を還流液として前記一方側に(結晶と向流に)還流させる結晶の溶融精製方法において、
前記高温域に対して前記原液スラリーの溶媒と同種の溶媒(添加)液を添加し、前記高温域の操作温度を目的の結晶の融点より低い温度で操作することを特徴とする結晶の溶融精製方法である。
【0017】
請求項2記載の発明は、前記竪型塔から取り出した製品から、前記溶媒添加液分を除去して製品化を図る請求項1記載の結晶の溶融精製方法である。
【0018】
請求項3記載の発明は、前記溶媒添加液の添加量を制御する請求項1記載の結晶の溶融精製方法である。
【0019】
請求項4記載の発明は、竪型塔の一方側から原液スラリーを供給し、他方側を温度がより高い高温域とし、前記原料の結晶成分を他方側に移動させ、この移動した結晶成分を前記高温域において加熱溶融させ、この溶融液の一部を他方側から製品として取出し、残部を還流液として前記一方側に還流させる結晶の溶融精製方法において、
前記他方側の内部から高温液を抜き出して他方側の内部に戻す外部循環ループを構成し、この外部循環ループにおいて加熱を行い高温化することにより結晶成分の加熱溶融を図り、外部循環ループ内に前記原液スラリーの溶媒と同種の溶媒添加液を添加し、前記高温域の操作温度を目的の結晶の融点より低い温度で操作することを特徴とする結晶の溶融精製方法である。
【0020】
請求項5記載の発明は、竪型塔の一方側からビスフェノールAのアダクト結晶スラリーを供給し、他方側を温度がより高い高温域とし、前記結晶スラリーの結晶成分を他方側に移動させ、この移動した結晶成分を前記高温域において加熱溶融させ、この溶融液の一部を他方側から製品として取出し、残部を還流液として前記一方側に還流させる結晶の溶融精製方法であり、
前記高温域に対して前記原液スラリーの溶媒と同種の溶媒添加液を添加し、前記高温域の操作温度を目的の結晶の融点より低い温度で操作することを特徴とする高純度ビスフェノールA結晶の溶融精製方法である。
【0021】
請求項6記載の発明は、竪型塔の一方側から原液スラリーを供給し、他方側を温度がより高い高温域とし、前記原料の結晶成分を他方側に移動させ、この移動した結晶成分を前記高温域において加熱溶融させ、この溶融液の一部を他方側から製品として取出し、残部を還流液として前記一方側に還流させる結晶の溶融精製装置において、
前記高温域に対する前記原液スラリーの溶媒と同種の溶媒添加液の添加手段が設けられていることを特徴とする結晶の溶融精製装置である。
【0022】
請求項7記載の発明は、竪型塔の一方側から原液スラリーを供給し、他方側を温度がより高い高温域とし、前記原料の結晶成分を他方側に移動させ、この移動した結晶成分を前記高温域において加熱溶融させ、この溶融液の一部を他方側から製品として取出し、残部を還流液として前記一方側に還流させる結晶の溶融精製装置において、
前記他方側の内部から高温液を抜き出して他方側の内部に戻す外部循環ループと、
この外部循環ループにおいて加熱を行い高温化することにより結晶成分の加熱溶融を図る手段と、
この外部循環ループ内に前記原液スラリーの溶媒と同種の溶媒添加液の添加手段とを有することを特徴とする結晶の溶融精製方法である。
【0023】
【発明の実施の形態】
次に本発明をさらに詳説する。
【0024】
ビスフェノールAの融点(メルティングポイント)は約158℃、フェノールの融点は40.75℃、ビスフェノールAの1分子とフェノールの1分子が会合した分子間付加物(アダクト)の転移点は98℃である。また、結晶化におけるビスフェノールAとフェノールの相図は図1に示すとおりである。
【0025】
塔型の結晶溶融精製機は公知である。従来の塔型の結晶溶融精製機においては、塔内に第三物質的溶媒を添加することを行うことなく、たとえば塔内に下降する結晶を底部において加熱融解して、この加熱融解液を上昇させて下降する結晶に対して向流洗浄するようにしている。したがって、高純度品を得るために、塔の底部では結晶を加熱融解するためにその融点またはそれ以上の温度に維持する必要がある。
【0026】
これをビスフェノールA結晶の溶融精製についてみると、加熱融解部においては、前記の融点である158℃またはそれ以上の温度での高温操作が必要となる。
【0027】
しかるに、前述のように、この操作では、着色を生じるために、塔型の結晶溶融精製機を使用できないでいた。この着色の原因として、確定的ではないが種々のことが考えられている。たとえば、非常に微量に含まれる不飽和結合を持った不純物が、高温により重合を起こし、タール化して呈色する、あるいは、酸素の存在により、酸化反応を受けてタール化して呈色することなどが想定される。
【0028】
しかし、本発明に従って、高温域、たとえば加熱融解部に対して原液スラリーの溶媒と同種の溶媒添加液を添加し、高温域の操作温度を目的の結晶の融点より低い温度で操作すると、実質的に着色がない高品質の製品(製品)を塔型の結晶溶融精製機を使用して得ることができる。
【0029】
他方、結晶の融点より低い温度で加熱融解させるシステムを構築することは、結晶溶融精製機の保温のための設備的負担を低減させ、かつ、加熱融解用熱媒の温度を低下させることによる必要ユーティリティー(エネルギー)負担を低減させ、いずれにしても設備費と運転費の低減を図ることができる。
【0030】
本発明は、加熱融解部を、目的の結晶の融点より低い温度で操作することと、原液スラリーの溶媒と同種の溶媒添加液を添加することとを有機的に組み合わせたものである。これをアダクト結晶を晶出するビスフェノールAを例に採り、図1の相図で説明すると、ビスフェノールAとフェノールとのアダクト母液中での共融温度(共晶点)は98℃であり、通常では、この温度で共融混合物が1:1モルで存在するところ、この系では、図示のように、結晶固体のビスフェノールAとフェノールの1:1モルの点は、ビスフェノールA濃度として58.0%から70.8%の点に移動している。その結果、98℃近傍で加熱融解部を操作すると、ビスフェノールAのアダクトでない単品の結晶が生じ、これが加熱融解部において順次堆積してしまい、運転を阻害する。
【0031】
しかるに、本発明に従って、加熱融解部に対して原液スラリーの溶媒と同種の溶媒添加液を添加すると、この溶媒添加液により、この場合、フェノールによりアダクト結晶が分解して晶出しようとするビスフェノールA結晶を溶解でき、もって、ビスフェノールAの晶出を防止でき、加熱融解部において結晶が順次堆積してしまい運転を阻害することがなくなる。
【0032】
図2に全体のビスフェノールAの製造フローを、図3に結晶溶融精製機の例を示したので、以下、順次これについて説明する。
【0033】
図2において、前述のように、たとえば、フェノールとアセトンとを原料として、反応工程1において、強酸または強酸性イオン交換樹脂の触媒、および助触媒の存在下に、縮合反応により合成する。この場合、フェノールは、反応熱を効果的に除くことや、異性体の生成を押さえるなどの目的で、アセトンに比べ当量的には過剰量で反応器に供給される。
【0034】
次いで、一般的にはこの反応生成物より、縮合反応により生成された水や、残ったアセトンや助触媒を、蒸留工程2において蒸留により除去し、得られた粗ビスフェノールAのフェノール溶液を濃縮缶などにより濃度調整の後、晶析工程3に供給する。
【0035】
晶析工程3における晶析機内では、約98〜35℃の温度範囲で晶析を行うが、経済的には、可能な限りビスフェノールAを回収するため、可能な限り低温まで冷却することが望ましく、好適には40〜60℃の範囲に冷却し、図1の相図が参照されるように、ビスフェノールAのアダクト結晶を得る。
【0036】
従来ならば、この結晶スラリーより、フィルターや遠心分離器などにより結晶を分離し、結晶ケーキはフェノールにて良く洗浄した後、再分離し、加熱溶解するとともに、異性体やその他の不純物を含む分離母液を反応系プロセスに返送循環する。結晶の加熱溶解液は、次の二段目の精製晶析工程に送り、ここで、同様にこの加熱溶解液を後方よりの循環母液などにより濃度調整の後、冷却し、前段と同様にビスフェノールAとフェノールのアダクト結晶を晶出させ、この結晶スラリーより、フィルターや遠心分離器などにより結晶を分離し、ケーキ洗浄の後、二段目の精製晶析工程を終了する。この結晶ケーキは、加熱溶解後、フェノール分離のため次の脱フェノール工程に送る。
【0037】
しかるに、本発明においては、溶融精製工程4に導き、ここで結晶の溶融精製を行い、高度に精製されたアダクト結晶の溶融液を得て、この溶融液に含まれるフェノールを、脱フェノール工程5において除去する。フェノールを除去した製品は、そのまま製品とするか、造粒工程6を経て粒状固体として製品化する。
【0038】
溶融精製機10の例は、図3に示すもので、縦型の塔形式のもので、保温用トレース12などを装備しており、下部に熱媒体を流通する加熱融解部14を備えている。この加熱融解部14により生じた高温液が溶融精製機10を還流する結果、溶融精製機10には、温度勾配が形成される。加熱融解部14の上方には、攪拌羽根16aを有する攪拌機16が設けられ、攪拌駆動モータ16bにより結晶充填層をゆっくり攪拌するようにしてある。
【0039】
晶析工程3からのビスフェノールAのアダクト結晶スラリーは、原料として、溶融精製機10の上部から供給される。結晶スラリー中の結晶は、重力により下方に沈降移動し、やがて、加熱融解部14に至る。この加熱融解部14において結晶が融解され、一部は製品として下部から抜き出され、図2に示すように、下流の工程に供給される。残った融液は上昇し、下方に押し込まれてくる結晶と置換するようにして、結晶ベッドの間隙を通り抜けて行く。こうして、下降する結晶と還流上昇する融液とが向流接触し、還流する融液により下降する(もしくは下方に押し込まれる)結晶の粒子を十分に洗浄して高純度の結晶体とする。このような溶融精製においては、結晶が溶解する前に高温度に晒されるため、発汗現象を起こし純度が著しく高まるものである。
【0040】
かくして、溶融精製機10において結晶の溶融精製操作を行うことにより、1段の工程で、きわめて純度の高い融液製品を得ることができる。
【0041】
ビスフェノールA結晶の溶融精製の場合は、加熱融解部14を98℃近傍の温度、現実的には98℃±2℃、より好適には温度を正確にコントロールして98℃±1℃で操作するのが望ましい。溶融精製機10内の温度勾配は、適宜選択できるが、たとえば55℃〜85℃の温度とすることができる。
【0042】
一方、図3にも示されているように、本発明の溶媒添加液として、フェノールが加熱融解部14に添加される。この添加の位置としては、好適には加熱融解部14の高さ範囲内が望ましい。加熱融解部14より高い位置(または離間する位置)とすると、ビスフェノールAの結晶が溶解されないまま堆積する傾向にあるからである。また、塔の底部からは製品を抜き出すので、この位置に添加すると、ビスフェノールAの融液にフェノールが混入してそのまま流出することになるので、かかる添加は避けることが望ましい。
【0043】
溶媒添加液、この場合には、フェノールの添加量としては、ビスフェノールAの結晶を溶解するに充分な量とされる。添加するフェノールの温度としては、98℃±1℃程度の温度が望ましいけれども、充分な添加量を確保すれば、50℃〜98℃の範囲の温度に適宜選択できる。また、98℃以上の温度で添加することも可能である。98℃以上の温度で添加すると、加熱融解部14に供給する熱媒体の量を低減することができる。さらに、結晶の溶融精製過程で、たとえば製品の性状の観察に基づいて、経時的にフェノールの添加量を増減する制御をすることができる。フェノールの添加量を増減すると、加熱融解部14の温度を制御できるとともに、塔内の温度勾配をコントロールできる。
【0044】
さらに、フェノールの添加に際して、連続的に添加するほか、間欠的もしくはバッチ的に添加することができる。
【0045】
加熱融解部は、適宜の伝熱媒体手段を用いることができる。この例としては、電熱ヒータなどがあるが、好適には、伝熱加熱管、特に本出願人の提案に係る特開平9−85008号公報に示され、かつ、図4に示された、縦向きに伝熱加熱管14A,14A…群を配設したものが望ましい。この場合、熱媒体は入口21から供給され、内管14aを通った後、外管14bとの間から抜けて出口22から流出される。23は結晶の分離用スクリーンである。
【0046】
本発明においては、竪型塔の一方側から、前記例のように上部からのほか、下部から原液スラリーを供給し、他方側を温度がより高い高温域とし、前記原料の結晶成分を他方側に移動させ、この移動した結晶成分を前記高温域において加熱溶融させ、この溶融液の一部を他方側から製品として取出し、残部を還流液として前記一方側に還流させる結晶の溶融精製装置である限り、種々の形式のものを取扱物質に応じて適宜採用できる。
【0047】
竪型塔内は、結晶粒子を充填した部分をもつが、この結晶充填層は最密充填であるほか、わずかに流動するルーズな充填であってもよい。この結晶ベッドを移動させるためのスクリューコンベアのような移送手段を設けたもの(たとえば特開平9−85008号公報などの例)のほか、この結晶ベッドを撹件するまたはほぐす図3に示す攪拌機を有していてもよい。スクリューコンベアや攪拌機を内部に有しないものでもよい。前記の結晶充填部はいわゆる満液状態のもののほか、いわゆる潅漑状態のものでもよい。
【0048】
加熱融解部は、前述の実施例の示すように、塔底部に設けるほか、対象物質によっては、逆に塔頂部に設けるものでもよい。加熱融解部を溶融精製塔内ではなく、外部に持って、結晶スラリーおよび融解液を溶融精製塔内外で循環させているものでもよい。さらに、塔内部に冷却晶析部も設けて、冷却晶析部と溶融精製部とを繋げた形式のものでもよい。
【0049】
この種の溶融精製塔の形式もしくは運転形態が種々存在することは、「アロマティクス」第37巻、第7・8号(1985年)の109頁〜127頁に詳述されている。
【0050】
他方、図6に示す態様も採用できる。すなわち、溶融精製機10の下部に、その内部から高温液を抜き出して元の内部に戻すポンプ30も設けて外部循環ループ32を構成し、この外部循環ループ32において熱交換器31などにおいてスチームを加えて加熱を行い高温化することにより結晶成分の加熱溶融を図る。
【0051】
この場合において、外部循環ループ32内に前記原液スラリーの溶媒と同種の溶媒添加液、たとえばフェノールを添加ライン33から添加することができる。
【0052】
この場合には、溶融精製機10の下部の内部に加熱融解部を構成しないので、結晶の充填層をほぐすために、たとえばモータ駆動による掻きほぐし手段34を設けるのが望ましい。
【0053】
この例においても、前記高温域(溶融精製機10の下部の内部および熱交換器31)の操作温度を目的の結晶の融点より低い温度で操作するものである。
【0054】
【実施例】
次に実施例を示し本発明の効果を説明する。
図2のフローで、ビスフェノールAを得た。すなわち、縮合反応後の生成液から蒸留により、水分、アセトン、メルカプタン等の軽沸点成分を除去した。この液組成は、BPA(ビスフェノールA)=18.0重量%(以下単に断りのない限り%は重量%である)、異性体=0.9%、他の不純物=1.2%であった。
【0055】
これをBPAが約30%になるまで濃縮し、または、リサイクル戻り液で濃度を調整し、約95℃で溶融状態に調整した後、結晶缶内にて温度45℃まで間接冷却、または断熱冷却し、アダクト結晶を晶出させた。
【0056】
生成した結晶スラリーは、輸送やハンドリング性、および経済的観点から、結晶濃度20〜35wt%となるようにし、この結晶スラリーを図3に示す結晶の溶融精製塔に供給した。用いた溶融精製塔は、100mmφ×1000mmHのものである。
【0057】
加熱融解部の温度は、98℃±1℃とし、かつ、フェノールを98℃±1℃で添加した。その結果、1時間当たり11リットルのビスフェノールA製品(フェノール溶解液)を得ることができた。この場合のマスフローを図5に示した。製品の純度は想像以上にきわめて高く、また着色が認められなかった。
【0058】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明によれば、塔型の結晶溶融精製塔を用いて、精製効率をおよび純度を著しく高め、また、精製目的物質がビスフェノールAの場合には、着色がないものとすることができるなどの利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】相図である。
【図2】ビスフェノールAの製造過程例を示すフローである。
【図3】結晶の溶融精製塔の例を示す概要図である。
【図4】加熱融解部例の部分説明図である。
【図5】ビスフェノールAの実施例のマスフロー説明図である。
【図6】他の例に従う結晶の溶融精製塔の概要図である。
【符号の説明】
1…反応工程、2…蒸留工程、3…晶析工程、4…溶融精製工程、5…脱フェノール工程、6…造粒工程、10…溶融精製機(溶融精製塔)、14…加熱融解部。
Claims (7)
- 竪型塔の一方側から原液スラリーを供給し、他方側を温度がより高い高温域とし、前記原料の結晶成分を他方側に移動させ、この移動した結晶成分を前記高温域において加熱溶融させ、この溶融液の一部を他方側から製品として取出し、残部を還流液として前記一方側に還流させる結晶の溶融精製方法において、
前記高温域に対して前記原液スラリーの溶媒と同種の溶媒添加液を添加し、前記高温域の操作温度を目的の結晶の融点より低い温度で操作することを特徴とする結晶の溶融精製方法。 - 前記竪型塔から取り出した製品から、前記溶媒添加液分を除去して製品化を図る請求項1記載の結晶の溶融精製方法。
- 前記溶媒添加液の添加量を制御する請求項1記載の結晶の溶融精製方法。
- 竪型塔の一方側から原液スラリーを供給し、他方側を温度がより高い高温域とし、前記原料の結晶成分を他方側に移動させ、この移動した結晶成分を前記高温域において加熱溶融させ、この溶融液の一部を他方側から製品として取出し、残部を還流液として前記一方側に還流させる結晶の溶融精製方法において、
前記他方側の内部から高温液を抜き出して他方側の内部に戻す外部循環ループを構成し、この外部循環ループにおいて加熱を行い高温化することにより結晶成分の加熱溶融を図り、外部循環ループ内に前記原液スラリーの溶媒と同種の溶媒添加液を添加し、前記高温域の操作温度を目的の結晶の融点より低い温度で操作することを特徴とする結晶の溶融精製方法。 - 竪型塔の一方側からビスフェノールAのアダクト結晶スラリーを供給し、他方側を温度がより高い高温域とし、前記結晶スラリーの結晶成分を他方側に移動させ、この移動した結晶成分を前記高温域において加熱溶融させ、この溶融液の一部を他方側から製品として取出し、残部を還流液として前記一方側に還流させる結晶の溶融精製方法であり、
前記高温域に対して前記原液スラリーの溶媒と同種の溶媒添加液を添加し、前記高温域の操作温度を目的の結晶の融点より低い温度で操作することを特徴とする高純度ビスフェノールA結晶の溶融精製方法。 - 竪型塔の一方側から原液スラリーを供給し、他方側を温度がより高い高温域とし、前記原料の結晶成分を他方側に移動させ、この移動した結晶成分を前記高温域において加熱溶融させ、この溶融液の一部を他方側から製品として取出し、残部を還流液として前記一方側に還流させる結晶の溶融精製装置において、
前記高温域に対する前記原液スラリーの溶媒と同種の溶媒添加液の添加手段が設けられていることを特徴とする結晶の溶融精製装置。 - 竪型塔の一方側から原液スラリーを供給し、他方側を温度がより高い高温域とし、前記原料の結晶成分を他方側に移動させ、この移動した結晶成分を前記高温域において加熱溶融させ、この溶融液の一部を他方側から製品として取出し、残部を還流液として前記一方側に還流させる結晶の溶融精製装置において、
前記他方側の内部から高温液を抜き出して他方側の内部に戻す外部循環ループと、
この外部循環ループにおいて加熱を行い高温化することにより結晶成分の加熱溶融を図る手段と、
この外部循環ループ内に前記原液スラリーの溶媒と同種の溶媒添加液の添加手段とを有することを特徴とする結晶の溶融精製方法。
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