JP4113308B2 - 平版印刷版のアルカリ現像処理製版方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンピュータ等のデジタル信号に基づき、赤外線レーザー走査により直接製版できる、いわゆるダイレクト製版可能な平版印刷版の製版方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、レーザーの発展は目ざましく、特に近赤外から赤外に発光領域を持つ固体レーザー、半導体レーザーは、高出力かつ小型のものが容易に入手できるようになっており、このデジタルデータから直接製版するシステムの露光光源として、これらのレーザーは非常に有用である。
【0003】
レーザー書き込みに適する画像記録材料として、例えば、特開平7−285275号公報には、クレゾール樹脂のような結着剤と、光を吸収して熱を発生する物質と、キノンジアジドのような、熱分解性であって、且つ分解前の状態では、前記結着剤の溶解性を実質的に低下させうる化合物と、を含有するポジ型の画像記録材料が提案されている。
これは、赤外線照射により、露光部分において、前記光を吸収して熱を発生する物質が発熱し、露光部分をアルカリ可溶性にするもの(ヒートモード型)であるが、支持体であるアルミニウムに吸熱されてしまうため熱効率が低く、現像工程におけるアルカリ現像処理液に対する溶解性は満足のいくものではなかった。このため、現像液のアルカリ濃度を上げ、露光部分の溶解性を確保してきた。
【0004】
ところが、ヒートモード型の平版印刷用原版は、上記のような高濃度のアルカリ条件下では、画像部のアルカリ現像処理液に対する耐溶解性が低く、画像記録材料表面に僅かに傷があるだけで溶解され、特に細線等の画像部に欠陥を生じやすくなる等の問題があった。
このため、現像性、即ち、露光部分の溶解性を確保しつつ、未露光部の耐溶解性を改良する方法として、アルカリ現像処理液に界面活性剤やキレート剤等を添加して、画像部の溶解を抑制し、非画像部では現像性を促進させるといった、画像部/非画像部のバランスを向上させる方法が提案された。この方法によれば、ある程度の向上は見られるものの、連続的に現像処理を継続した場合に、処理液中に感光層を構成するバインダーポリマーや赤外線吸収染料等が溶出され、溶出した赤外線吸収剤がバインダーポリマーの成分や水中の無機物などとの相互作用により不溶物を形成するなどの現象がおこり、溶出物や析出した不要物等が添加剤の影響を阻害して、経時的に製版時の現像処理性が低下したり、画像部/非画像部のバランスが悪化するなどの問題を有していた。
現像性能を維持するため、補充液のアルカリ濃度を挙げる方法は従来より行われているが、特に前記したようなヒートモード型平版印刷版原版はアルカリ濃度による画像部への影響が大きく、この方法によって良好な現像性を得るのは困難であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、アルカリ現像処理液の液性条件を維持しつつ、現像時における画像部/非画像部のバランスを良好にするとともにその経時的な低下を防止し、長期間安定に現像することのできる平版印刷版の製版方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、連続的な製版処理を行うにあたり、アルカリ現像処理液中のアルカリ濃度(水酸化物イオン濃度)及びSiO2濃度のバランス等、現像に適した液性条件を維持し、画像部/非画像部のバランスを良好に保持しうる成分に関し鋭意検討を重ねた結果、補充液に含有される添加剤を調整することにより、経時的な現像性の変動を防止し、良好な製版を長期間行い得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、平版印刷版の製版方法は、赤外線吸収剤を含む画像形成層を有する平版印刷用原版を赤外線照射により画像様に露光した後、アルカリ現像処理液で現像する平版印刷版の製版方法であって、使用液としての該アルカリ現像液補充液中の界面活性剤濃度が、該アルカリ現像液中の界面活性剤濃度より高いこと、具体的には、その濃度が3〜15倍であることを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の平版印刷版の製版方法に使用しうるアルカリ現像処理液としては、特に制限はなく、その基本的な処方は、公知のアルカリ現像処理液を用い、所定量の界面活性剤を添加するものである。このような現像液は、ヒートモードでの記録を行う記録層を有するあらゆる平版印刷版の現像に適用することができる。
【0009】
まず、平版印刷版の現像処理に用いるアルカリ現像処理液について説明する。
前記現像処理に用いるアルカリ現像処理液(以下、単に「現像液」ということがある。)は、アルカリ性の水溶液であって、従来公知のアルカリ水溶液の中から適宜選択することができる。
前記アルカリ水溶液としては、ケイ酸アルカリ若しくは非還元糖と、塩基とからなる現像液が挙げられ、特にpH12.5〜13.5のものが好ましい。
前記ケイ酸アルカリとしては、水に溶解したときにアルカリ性を示すものであり、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム等のアルカリ金属ケイ酸塩、ケイ酸アンモニウム等が挙げられる。
前記ケイ酸アルカリは、1種単独でも、2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0010】
前記アルカリ水溶液は、ケイ酸塩の成分である酸化ケイ素SiO2とアルカリ酸化物M2O(Mは、アルカリ金属又はアンモニウム基を表す。)との混合比率、及び濃度の調整により、現像性を容易に調節することができる。
前記アルカリ水溶液の中でも、前記酸化ケイ素SiO2とアルカリ酸化物M2Oとの混合比率(SiO2/M2O:モル比)が0.5〜3.0のものが好ましく、1.0〜2.0のものがより好ましい。
前記SiO2/M2Oが、0.5未満であると、アルカリ強度が強くなっていくため、平版印刷用原版の支持体として汎用のアルミニウム板等をエッチングしてしまうといった弊害を生ずることがあり、3.0を超えると、現像性が低下することがある。
【0011】
また、現像液中のケイ酸アルカリの濃度としては、アルカリ水溶液の重量に対して1〜10重量%が好ましく、3〜8重量%がより好ましく、4〜7重量%が最も好ましい。
前記濃度が、1重量%未満であると、現像性、処理能力が低下することがあり、10重量%を超えると、沈殿や結晶を生成しやすくなり、さらに廃液時の中和の際にゲル化しやすくなり、廃液処理に支障をきたすことがある。
【0012】
前記非還元糖と塩基とからなる現像液において、非還元糖とは、遊離性のアルデヒド基やケトン基を持たないために、還元性を有しない糖類を意味し、還元基同士の結合したトレハロース型少糖類、糖類の還元基と非糖類が結合した配糖体、糖類に水素添加して還元した糖アルコールに分類される。本発明においては、これらのいずれも好適に用いることができる。
【0013】
前記トレハロース型少糖類としては、例えば、サッカロースやトレハロースが挙げられ、前記配糖体としては、例えば、アルキル配糖体、フェノール配糖体、カラシ油配糖体等が挙げられる。
前記糖アルコールとしては、例えば、D,L−アラビット、リビット、キシリット、D,L−ソルビット、D,L−アンニット、D,L−イジット、D,L−タリット、ズリシット、アロズルシット等が挙げられる。
さらには、二糖類の水素添加で得られるマルチトール、オリゴ糖の水素添加で得られる還元体(還元水あめ)等も好適に挙げることができる。
【0014】
上記のうち、非還元糖としては、糖アルコール、サッカロースが好ましく、中でも特に、D−ソルビット、サッカロース、還元水あめが、適度なpH領域に緩衝作用がある点でより好ましい。
これらの非還元糖は、単独でも、二種以上を組合せてもよく、現像液中に占める割合としては、0.1〜30重量%が好ましく、1〜20重量%がより好ましい。
【0015】
前記ケイ酸アルカリ若しくは非還元糖には、塩基としてアルカリ剤を、従来公知のものの中から適宜選択して組合せることができる。
前記アルカリ剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸三アンモニウム、リン酸二ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸二アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム等の無機アルカリ剤、クエン酸カリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0016】
さらに、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソブロパノールアミシ、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン等の有機アルカリ剤も好適に挙げることができる。
これらのアルカリ剤は、単独で用いても、二種以上を組合わせて用いてもよい。
【0017】
なかでも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。その理由は、非還元糖に対する添加量を調整することにより、広いpH領域においてpH調整が可能となるためである。また、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等もそれ自身に緩衝作用があるので好ましい。
【0018】
上述のようなアルカリ水溶液(現像液)中には、界面活性剤を添加することが必要である。界面活性剤としては非イオン性界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
非イオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスルトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、しょ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド等が好適に挙げられる。
アニオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、α−オレフィンスルホン酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホ琥珀酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等が好適に挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩類、テトラブチルアンモニウムブロミド等の第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えば、カルボキシベタイン類、アルキルアミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミダゾリン類等が挙げられる。
以上の界面活性剤のうち、「ポリオキシエチレン」とあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等のポリオキシアルキレンに読み替えることもでき、それらもまた前記界面活性剤に包含される。
【0019】
現像液中における、前記界面活性剤濃度としては、0.001〜10重量%が好ましく、0.005〜1重量%がより好ましく、0.01〜0.5重量%が最も好ましい。
本発明の製版方法に用いるアルカリ現像液補充液は、使用液を意味していて、該現像液補充液を調整する場合、前記界面活性剤以外の有効成分、任意成分については、特に制限はなく,アルカリ現像処理液と同じ配合であってもよく、常法に従ってアルカリ濃度や混合比率(SiO2/M2O)等を調整したものであってもよいが、界面活性剤の濃度が現像処理液に比較して高いことが必要であり、好ましくは3〜15倍量である。
前記界面活性剤の濃度が、ベースとなるアルカリ現像処理液の濃度と同等又はそれ未満であると、未露光部の溶解抑制効果が劣化する。この界面活性剤濃度が処理液の1.2倍以上となるとき、界面活性剤濃度向上の効果が顕著となり、また、50倍を超えて濃度を上昇させても効果の向上は見られず、かえって露光部の現像性が劣化することがあるため、好ましくない。
【0020】
本発明の方法では、界面活性剤濃度が高い補充液を用いることで、現像性のバランスを維持するための界面活性剤が、不溶物や有効成分の溶出物の影響で機能が低下するのを補い、常に一定の機能を発現するようになしうるため、現像性能が良好で、画像部/非画像部のバランスのよい製版を長期間にわたり、安定して行うことができる。
また、前記補充液として、界面活性剤のみならず、前記したように現像用の現像液よりもアルカリ濃度を高くした成分の含有量をも増加させたアルカリ強度が高い水溶液を使用することもできる。但し、この場合、先に述べたように平版印刷版原版の耐アルカリ水溶液溶解性を考慮して、所望されない細線や網点などの微細な画像部に影響を与えない範囲を選択するべきである。
補充はプレートを通した後、一定時間毎のいずれで行なっても良い。また、補充量は合計補充量を処理量で割った数字であり、20ml/m2〜500ml/m2の範囲が使用される。
【0021】
本発明のアルカリ現像処理液及び補充液には、さらに現像性能を高める目的で、以下のような添加剤を加えることができる。
例えば、特開昭58−75152号公報に記載の、NaCl、KCl、KBr等の中性塩、特開昭58−190952号公報に記載の、EDTA、NTA等のキレート剤、特開昭59−121336号公報に記載の、〔Co(NH3)6〕Cl3、CoCl2・6H2O等の錯体、特開昭50−51324号公報に記載の、アルキルナフタレンスルホン酸ソーダ、特開昭55−95946号公報に記載の、p−ジメチルアミノメチルポリスチレンのメチルクロライド4級化物等のカチオニックポリマー、
【0022】
特開昭56−142528号公報に記載の、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドとアクリル酸ソーダとの共重合体等の両性高分子電解質、特開昭57−192951号公報に記載の、亜硫酸ソーダ等の還元性無機塩、特開昭58−59444号公報に記載の、塩化リチウム等の無機リチウム化合物、特開昭59−84241号公報に記載の有機ホウ素化合物等が挙げられる。
【0023】
前記現像液及び補充液には、現像性の促進や抑制、現像カスの分散及び印刷版画像部の親インキ性を高める目的で、必要に応じて、種々の有機溶剤等を添加することもできる。
前記有機溶剤としては、ベンジルアルコール等が好ましい。
【0024】
さらに、必要に応じて、ハイドロキノン、レゾルシン、亜硫酸又は亜硫酸水素酸のナトリウム塩若しくはカリウム塩等の無機塩系還元剤、有機カルボン酸、消泡剤、硬水軟化剤を加えることもできる。
【0025】
本発明の平版印刷版の製版方法は、後述する赤外線レーザー感応型の画像形成層を有する平版印刷用原版の現像処理に最も適しているが、従来広く用いられているo−キノンジアジド化合物を含む画像形成層を有する画像記録材料の現像処理にも好適に適用可能である。
【0026】
次に、前記本発明の現像処理液を用いた平版印刷版の製版方法について説明する。本発明の平版印刷版の製版方法は、少なくとも赤外線吸収剤を含有する画像形成層を備えた平版印刷用原版に、赤外線照射により画像様に露光する工程と、露光した平版印刷用原版をアルカリ現像処理液で現像する工程とを有し、この現像工程を現像機内で連続的に行う際に添加されるアルカリ現像液補充液に含有される界面活性剤の量を制御する製版方法である。
本発明の製版方法では、平版印刷用原版として、支持体上に、少なくとも赤外線吸収剤を含有する画像形成層を形成してなる平版印刷用原版を用い、該平版印刷用原版に、例えば、デジタルデータに基づき赤外線レーザーを照射するなどの手段により、所望の画像様に露光すると、画像形成層に含まれる赤外線吸収剤によりレーザー光が効率よく吸収され、熱に変換されて、下記過程を通じて画像が形成される。
即ち、ポジ型の平版印刷用原版の場合には、露光による吸収エネルギーの蓄積により露光部分のみが発熱してアルカリ水可溶性となり、アルカリ現像処理液を用いた現像処理により、露光部のみが除去されて所望の画像が形成され、ネガ型の平版印刷用原版の場合には、露光による吸収エネルギーの蓄積により露光部分のみが発熱して、その熱により酸が発生すると、この酸により共存する架橋剤が架橋反応を起こし、露光部のみがアルカリ水不溶性となって像を形成する一方、非露光部は、アルカリ現像処理液を用いた現像処理により除去されて、所望の画像が形成される。
本発明の製版方法では、このアルカリ現像処理液として、公知の平版印刷版用アルカリ現像処理液に界面活性剤、好ましくは非イオン性界面活性剤を含有したものを用いる。
【0027】
例えば、ポジ型平版印刷版の現像処理においては、露光による吸収エネルギーの蓄積により露光部分のみが発熱してアルカリ水可溶性となるが、強いアルカリ水溶液を現像処理液として用いると、本発明に使用する如きヒートモード記録が可能な赤外線吸収剤を含有する画像形成層は前記したように耐アルカリ性にやや劣るため、露光部近傍の画像部にあたる画像形成層の周縁部やわずかな傷が発生した部分等も、非画像部(露光部)とともにアルカリ現像処理液により除去されてしまう事態が生じるおそれがあった。本発明に係る界面活性剤を用いることにより、アルカリ現像処理液の現像性がバランスよく抑制され、画像部/非画像部のバランスのよい製版処理を行うことができることから、本発明の方法は、ポジ型平版印刷版の現像処理に適用された場合に、特に有用である。
【0028】
近年では、特に製版・印刷業界において、製版作業の合理化及び標準化のため、印刷用版材を連続的に処理する自動現像機が広く用いられている。
この自動現像機は、一般に現像部と後処理部からなり、印刷用版材を搬送する装置と各処理液槽とスプレー装置とからなり、露光済みの印刷版を水平に搬送しながら、ポンプで汲み上げた各処理液をスプレーノズルから吹き付けて現像処理するものである。また、最近は処理液が満たされた処理液槽中に液中ガイドロール等によって印刷用版材を浸漬搬送させて処理する方法も知られている。このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間等に応じて補充液を補充しながら処理する。
【0029】
本発明においては、現像液よりも界面活性剤濃度の多いアルカリ水溶液を補充液として現像液中に加えることによって、長時間現像タンク中の現像液を交換することなく、安定した条件で多量の画像形成材料を処理できる。
【0030】
本発明のアルカリ現像処理液及び補充液を用いて現像処理された平版印刷版は、水洗水や界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で後処理がなされる。この後処理には、これらの処理液を種々組合わせて行うことができる。
【0031】
次に、本発明の平版印刷版の製版方法に用いられる平版印刷用原版について説明する。
前記平版印刷用原版は、支持体上に画像形成層を有し、さらに必要に応じて他の層を有してなり、前記画像形成層には(A)赤外線吸収剤を含有し、さらに少なくとも(B)アルカリ可溶性高分子化合物、(C)アルカリ可溶性高分子化合物と相溶させて該アルカリ可溶性高分子化合物のアルカリ水溶液への溶解性を低下させるとともに、加熱により該溶解性低下作用が減少する化合物を含有して構成される。また、ネガ型の平版印刷用原版の場合には、露光部が硬化して画像部となるため、画像形成層にさらに(D)熱により酸を発生する化合物と、(E)酸により架橋する架橋剤とを含有して構成される。以下に、各構成成分について簡単に説明する。
【0032】
−(A)赤外線吸収剤−
赤外線吸収剤(以下、「(A)成分」ということがある。)は、吸収した赤外線を熱に変換する機能を有する。
本発明において使用可能な赤外線吸収剤としては、波長700nm以上の領域に、好ましくは波長750nm〜1200nmの波長領域に赤外線を高効率に吸収しうる染料又は顔料が好ましく、波長760nm〜1200nmの領域に吸収極大を有する染料又は顔料がより好ましい。
【0033】
前記染料としては、市販の染料又は文献(例えば、「染料便覧」,有機合成化学協会編集、昭和45年刊)に記載の公知のものが挙げられ、例えば、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
【0034】
中でも、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭59−202829号、特開昭60−78787号等に記載のシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等に記載のメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載のナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載のスクワリリウム色素、英国特許434,875号明細書に記載のシアニン染料、米国特許5,380,635号明細書に記載のジヒドロペリミジンスクアリリウム染料等が好適に挙げられる。
【0035】
また、米国特許第5,156,938号明細書に記載の近赤外吸収増感剤も好ましく、米国特許第3,881,924号明細書に記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号(米国特許第4,327,169号明細書)に記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号に記載のピリリウム系化合物、特開昭59−216146号に記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号明細書に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等、特公平5−13514号、同5−19702号に記載のピリリウム化合物、市販品としては、Epolight III-178、Epolight III-130、Epolight III-125、Epolight IV-62A(エポリン社製)等も好ましい。
【0036】
さらに、米国特許第4,756,993号明細書に記載の式(I)、(II)で表される近赤外吸収染料も好適なものとして挙げることができる。
上記のうち、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体がより好ましい。
【0037】
前記顔料としては、市販の顔料又はカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)に記載の顔料が挙げられ、例えば、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他ポリマー結合色素が挙げられる。
【0038】
具体的には、例えば、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が挙げられる。
中でも、カーボンブラックが好ましい。
【0039】
前記顔料は、表面処理をせずに用いてもよいし、表面処理を施した後に用いてもよい。
表面処理の方法としては、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤やエポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が挙げられる。これらの表面処理の方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)及び「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0040】
前記顔料の粒径としては、0.01μm〜10μmが好ましく、0.05μm〜1μmがより好ましく、0.1μm〜1μmが最も好ましい。
前記粒径が、0.01μm未満であると、感光層塗布液等の分散液を調製したときの分散物の安定性が劣化することがあり、10μmを超えると、画像形成層の均一性が悪化することがある。
【0041】
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に汎用の分散機等、公知の分散技術から適宜選択することができる。
前記分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。その詳細については、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載がある。
【0042】
前記染料又は顔料の含有量としては、画像形成層の全固形分重量に対して0.01〜50重量%が好ましく、0.1〜10重量%がより好ましく、さらに染料の場合には、0.5〜10重量%が最も好ましく、顔料の場合には、3.1〜10重量%が最も好ましい。
前記含有量が、0.01重量%未満であると、感度が低くなることがあり、50重量%を超えると、画像形成層の均一性が低下し、その耐久性が劣化することがある。
【0043】
前記染料又は顔料は、他の成分と同一層に添加してもよいし、別の層を設けてそこに添加してもよい。別の層とする場合は、後述の(C)成分を含有する層に隣接する層に添加することが好ましい。
また、染料又は顔料と、アルカリ可溶性高分子化合物とは同一の層に含有することが好ましいが、別の層にそれぞれ含有させても構わない。
【0044】
−(B)アルカリ可溶性高分子化合物−
本発明に使用可能なアルカリ可溶性高分子化合物(以下、「(B)成分」ということがある。)としては、下記(1)〜(3)の酸性基を主鎖及び/又は側鎖の構造中に有するアルカリ水可溶性の高分子化合物を用いることができる。
(1)フェノール基(−Ar−OH)
(2)スルホンアミド基(−SO2NH−R)
(3)置換スルホンアミド系酸基(以下、「活性イミド基」という。)
〔−SO2NHCOR、−SO2NHSO2R、−CONHSO2R〕
前記(1)〜(3)中、Arは置換基を有していてもよい2価のアリール連結基を表し、Rは、置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。
以下に、その具体例を示すが、本発明においては、これらに限定されるものではない。
【0045】
(1)フェノール基を有するアルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、フェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体、m−クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、p−クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、m−/p−混合クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、フェノールとクレゾール(m−、p−又はm−/p−混合のいずれでもよい。)とホルムアルデヒドとの縮重合体等のノボラック樹脂又はピロガロールとアセトンとの縮重合体を挙げることができる。さらに、フェノール基を側鎖に有するモノマーを重合させた高分子化合物を挙げることもできる。
【0046】
側鎖にフェノール性水酸基を有する高分子化合物としては、フェノール性水酸基と重合可能な不飽和結合をそれぞれ1つ以上有する低分子化合物からなる重合性モノマーを単独重合、或いは、該重合性モノマーに他の重合性モノマーを共重合させて得られる高分子化合物が挙げられる。
フェノール基を側鎖に有するモノマーとしては、フェノール基を側鎖に有するアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル又はヒドロキシスチレン等が挙げられる。
【0047】
具体的には、N−(2−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、o−ヒドロキシフェニルアクリレート、m−ヒドロキシフェニルアクリレート、p−ヒドロキシフェニルアクリレート、o−ヒドロキシフェニルメタクリレート、m−ヒドロキシフェニルメタクリレート、p−ヒドロキシフェニルメタクリレート、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、2−(2−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(3−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(2−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート等を好適に挙げることができる。
【0048】
前記フェノール基を有するアルカリ可溶性高分子化合物の重量平均分子量としては、5.0×102〜2.0×105のものが、数平均分子量としては、2.0×102〜1.0×105のものが、画像形成性の点で好ましい。
【0049】
また、フェノール基を有するアルカリ可溶性高分子化合物は、単独での使用のみならず、2種類以上を組合わせて使用してもよい。組合わせる場合には、米国特許第4123279号明細書に記載されているような、t−ブチルフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体や、オクチルフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体のような、炭素数3〜8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体を併用してもよい。
これらの縮重合体も、重量平均分子量が5.0×102〜2.0×105のもの、数平均分子量が2.0×102〜1.0×105のものが好ましい。
【0050】
(2)スルホンアミド基を有するアルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、スルホンアミド基を有する化合物を主たるモノマー構成単位とする重合体、即ち、単独重合体又は前記モノマー構成単位に他の重合性モノマーを共重合させた共重合体を挙げることができる。
スルホンアミド基を有する重合性モノマーとしては、1分子中に、窒素原子上に少なくとも一つの水素原子が結合したスルホンアミド基−SO2−NH−と、重合可能な不飽和結合と、をそれぞれ1以上有する低分子化合物からなるモノマーが挙げられる。中でも、アクリロイル基、アリル基又はビニロキシ基と、置換或いはモノ置換アミノスルホニル基又は置換スルホニルイミノ基と、を有する低分子化合物が好ましい。
前記低分子化合物としては、例えば、下記一般式(a)〜(e)で表される化合物が挙げられるが、本発明においては、これらに限定されるものではない。
【0051】
【化1】
【0052】
式中、X1、X2は、それぞれ独立に酸素原子又はNR7を表す。R1、R4は、それぞれ独立に水素原子又はCH3を表す。R2、R5、R9、R12、R16は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基又はアラルキレン基を表す。R3、R7、R13は、それぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。また、R6、R17は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基を表す。R8、R10、R14は、それぞれ独立に水素原子又はCH3を表す。R11、R15は、それぞれ独立に単結合又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基又はアラルキレン基を表す。Y1、Y2は、それぞれ独立に単結合又はCOを表す。
【0053】
中でも、m−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
【0054】
(3)活性イミド基を有するアルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、活性イミド基を有する化合物を主たるモノマー構成単位とする重合体を挙げることができる。
活性イミド基を有する化合物を主たるモノマー構成単位とする重合体としては、1分子中に、下記式で表される活性イミド基と、重合可能な不飽和結合とをそれぞれ1以上有する低分子化合物からなるモノマーを単独重合、或いは、該モノマーに他の重合性モノマーを共重合させて得られる高分子化合物を挙げることができる。
【0055】
【化2】
【0056】
このような化合物としては、具体的には、N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミド、N−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミド等を好適に挙げることができる。
【0057】
さらに、上記のほか、前記フェノール基を有する重合性モノマー、スルホンアミド基を有する重合性モノマー、及び活性イミド基を有する重合性モノマーのうちのいずれか2種類以上を重合させた高分子化合物、或いは、これら2種以上の重合性モノマーにさらに他の重合性モノマーを共重合させて得られる高分子化合物も好適に挙げられる。
【0058】
フェノール基を有する重合性モノマー(M1)に、スルホンアミド基を有する重合性モノマー(M2)及び/又は活性イミド基を有する重合性モノマー(M3)を共重合させる場合の配合比(M1:M2及び/又はM3;重量比)としては、50:50〜5:95が好ましく、40:60〜10:90がより好ましい。
【0059】
アルカリ可溶性高分子化合物が、前記酸性基(1)〜(3)より選ばれるいずれかを有するモノマー構成単位と、他の重合性モノマーの構成単位とから構成される共重合体である場合、該共重合体中に、前記酸性基(1)〜(3)より選ばれるいずれかを有するモノマー構成単位を10モル%以上含むことが好ましく、20モル%以上含むことがより好ましい。
前記モノマー構成単位の含有量が、10モル%未満であると、十分なアルカリ可溶性が得られずに、現像ラチチュードが狭くなることがある。
【0060】
前記共重合体の合成方法としては、従来より公知のグラフト共重合法、ブロック共重合法、ランダム共重合法等を用いることができる。
【0061】
前記酸性基(1)〜(3)より選ばれるいずれかを有するモノマーを構成単位とする重合性モノマーと共重合させる、他の重合性モノマーとしては、例えば、下記(a)〜(l)に挙げるモノマーを挙げることができるが、本発明においては、これらに限定されるものではない。
【0062】
(a)2−ヒドロキシエチルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類。
(b)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルアクリレート、N−ジメチルアミノエチルアクリレート等のアルキルアクリレート。
(c)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルメタクリレート、N−ジメチルアミノエチルメタクリレート等のアルキルメタクリレート。
【0063】
(d)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド等のアクリルアミド又はメタクリルアミド。
(e)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類。
(f)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。
(g)スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン類。
【0064】
(h)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン類。
(i)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類。
(j)N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、4−ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
(k)マレイミド、N−アクリロイルアクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−プロピオニルメタクリルアミド、N−(p−クロロベンゾイル)メタクリルアミド等の不飽和イミド。
(l)アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸。
【0065】
前記アルカリ水可溶性高分子化合物としては、単独重合体、共重合体に関わらず、膜強度の点で、重量平均分子量が2000以上、数平均分子量が500以上のものが好ましく、重量平均分子量が5000〜300000、数平均分子量が800〜250000であり、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.1〜10のものがより好ましい。
また、前記アルカリ可溶性高分子化合物が、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、クレゾール−アルデヒド樹脂等である場合には、重量平均分子量が500〜20000であって、数平均分子量が200〜10000のものが好ましい。
【0066】
前記アルカリ水可溶性高分子化合物の含有量としては、画像形成層の全固形分重量に対して30〜99重量%が好ましく、40〜95重量%がより好ましく、50〜90重量%が最も好ましい。
前記含有量が、30重量%未満であると、画像形成層の耐久性が低下することがあり、99重量%を越えると、感度、耐久性が低下することがある。
また、前記高分子化合物は、1種類のみを用いても、2種類以上を組合わせて用いてもよい。
【0067】
−(C)前記アルカリ可溶性高分子化合物と相溶させて該アルカリ可溶性高分子化合物のアルカリ水溶液への溶解性を低下させるとともに、加熱により該溶解性低下作用が減少する化合物−
この(C)成分は、分子内に存在する水素結合性の官能基の働きにより、前記(B)アルカリ可溶性高分子化合物との相溶性が良好であり、均一な画像形成層用塗布液を形成しうるとともに、アルカリ可溶性高分子化合物との相互作用により、該アルカリ可溶性高分子化合物のアルカリ可溶性を抑制する機能(溶解性抑制作用)を有する化合物を指す。
【0068】
また、加熱によりアルカリ可溶性高分子化合物に対する前記溶解性抑制作用は消滅するが、この赤外線吸収剤自体が加熱により分解する化合物である場合には、分解に十分なエネルギーが、レーザー出力や照射時間等の諸条件により付与されないと、アルカリ可溶性高分子化合物の溶解性抑制作用を十分に低下させることができず、感度が低下するおそれがある。このため、(C)成分の熱分解温度としては、150℃以上が好ましい。
【0069】
(C)成分としては、前記(B)アルカリ可溶性高分子化合物との相互作用を考慮して、例えば、スルホン化合物、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、アミド化合物等の前記アルカリ可溶性高分子化合物と相互作用しうる化合物の中から適宜選択することができる。
特に、例えば、前記(B)成分として、ノボラック樹脂を単独で用いる場合には、後述する「(A+C)成分」が好ましく、以下に例示するシアニン染料A等がより好ましい。(A+C)成分については後述する。
【0070】
(C)成分と前記(B)アルカリ可溶性高分子化合物との配合比(C/B)としては、一般に1/99〜25/75が好ましい。
前記混合比が、1/99未満、即ち、(C)成分が少なすぎると、アルカリ可溶性高分子化合物との相互作用が不十分となり、アルカリ可溶性を低下させることができず、良好に画像形成することができないことがあり、25/75を超える、即ち、(C)成分が多すぎると、相互作用が過大となり、感度が著しく低下することがある。
【0071】
−(A+C)成分−
本発明においては、前記(A)成分及び(C)成分に代えて、これら双方の特性を有する化合物((A+C)成分)を用いることができる。
前記(A+C)成分は、光を吸収して熱を発生する性質(即ち、(A)成分の特性)を有し、しかも700〜1200nmの波長領域に吸収域を持つと共に、さらにアルカリ可溶性高分子化合物と良好に相溶しうる塩基性染料である。
(A+C)成分は、その分子内にアンモニウム基、イミニウム基等のアルカリ可溶性高分子化合物と相互作用する基を有する(即ち、(C)成分の特性)ため、前記高分子化合物と相互作用して、そのアルカリ可溶性を抑制することができる。
前記(A+C)成分としては、例えば、下記一般式(Z)で表される化合物を挙げることができる。
【0072】
【化3】
【0073】
前記一般式(Z)中、R21〜R24は、それぞれ独立に水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、アリール基を表し、R21とR22、R23とR24はそれぞれ結合して環構造を形成していてもよい。
R21〜R24としては、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、フェニル基、ドデシル基、ナフチル基、ビニル基、アリル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、これらの基は、さらに置換基を有していてもよい。ここで、置換基としては、例えば、ハロゲン原子、カルボニル基、ニトロ基、ニトリル基、スルホニル基、カルボキシル基、カルンボン酸エステル、スルホン酸エステル等が挙げられる。
【0074】
式中、R25〜R30は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基を表し、前記R25〜R30としては、例えば、メチル基、エチル基、フェニル基、ドデシル基、ナフチル基、ビニル基、アリル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、これらの基は、さらに置換基を有していてもよい。ここで、置換基としては、例えば、ハロゲン原子、カルボニル基、ニトロ基、ニトリル基、スルホニル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル等が挙げられる。
【0075】
式中、R31〜R33は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有してもよい炭素数1〜8のアルキル基を表し、前記R32は、前記R31又はR33と結合して環構造を形成していてもよく、m>2の場合は、複数のR32同士が結合して環構造を形成していてもよい。
前記R31〜R33としては、例えば、塩素原子、シクロヘキシル基、R32同士が結合してなるシクロペンチル環、シクロヘキシル環等が挙げられ、これらの基は、さらに置換基を有していてもよい。ここで、置換基としては、例えば、ハロゲン原子、カルボニル基、ニトロ基、ニトリル基、スルホニル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル等が挙げられる。
また、mは、1〜8の整数を表し、中でも、1〜3が好ましい。
【0076】
式中、R34〜R35は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有してもよい炭素数1〜8のアルキル基を表し、前記R34は、R35と結合して環構造を形成していてもよく、m>2の場合は、複数のR34同士が結合して環構造を形成していてもよい。
前記R34〜R35としては、例えば、塩素原子、シクロヘキシル基、R34同士が結合してなるシクロペンチル環、シクロヘキシル環等が挙げられ、これらの基は、さらに置換基を有していてもよい。ここで、置換基としては、例えば、ハロゲン原子、カルボニル基、ニトロ基、ニトリル基、スルホニル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル等が挙げられる。
また、mは、1〜8の整数を表し、中でも、1〜3が好ましい。
【0077】
式中、X-は、アニオンを表し、例えば、過塩素酸、四フッ化ホウ酸、六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸、5−ニトロ−O−トルエンスルホン酸、5−スルホサリチル酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、2−ニトロベンゼンスルホン酸、3−クロロベンゼンスルホン酸、3−ブロモベンゼンスルホン酸、2−フルオロカプリルナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、1−ナフトール−5−スルホン酸、2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイル−ベンゼンスルホン酸及びパラトルエンスルホン酸等が挙げられる。
中でも、六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸等のアルキル芳香族スルホン酸が好ましい。
【0078】
前記一般式(Z)で表される化合物は、一般にシアニン染料と呼ばれる化合物であり、具体的には、以下に示す化合物が好適に用いられるが、本発明においては、これらに限られるものではない。
【0079】
【化4】
【0080】
上述の(A)成分及び(C)成分に代えて、これら双方の特性を有する前記(A+C)成分を用いる場合、該(A+C)成分と前記(B)成分との使用量比〔(A+C)/(B)〕としては、1/99〜30/70が好ましく、1/99〜25/75がより好ましい。
【0081】
以下は、ネガ型平版印刷版の記録層を構成する成分である。
−(D)熱により酸を発生する化合物−
本発明の画像形成材料がネガ型の場合、加熱時に酸を発生する化合物(以下、「酸発生剤」という。)を併用する。この酸発生剤は、100℃以上に加熱することにより分解して酸を発生する化合物を指す。発生する酸としては、スルホン酸、塩酸等のpKaが2以下の強酸であることが好ましい。
前記酸発生剤としては、特願平11−66733号に記載のものが挙げられる。
【0082】
前記酸発生剤の添加量としては、画像形成層の全固形分重量に対し0.01〜50重量%が好ましく、0.1〜40重量%がより好ましく、0.5〜30重量%が最も好ましい。
【0083】
−(E)酸により架橋する架橋剤−
本発明の平版印刷用原版がネガ型である場合、酸により架橋する架橋剤(以下、単に「架橋剤」という場合がある。)を併用する。
前記架橋剤としては、以下のものを挙げることができる。
(i)アルコキシメチル基又はヒドロキシメチル基で置換された芳香族化合物(ii)N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基又はN−アシルオキシメチル基を有する化合物
(iii)エポキシ化合物
さらに、特願平10−53788号に記載のものやフェノール誘導体等も挙げることができる。
【0084】
前記架橋剤の添加量としては、画像形成層の全固形分重量に対し5〜80重量%が好ましく、10〜75重量%がより好ましく、20〜70重量%が最も好ましい。
前記フェノール誘導体を架橋剤として使用する場合、該フェノール誘導体の添加量としては、画像形成材料の全固形分重量に対し5〜70重量%が好ましく、10〜50重量%がより好ましい。
上記の各種化合物の詳細については、特願平11−66733号に記載されている。
【0085】
−その他の成分−
本発明のアルカリ現像処理液を適用するのに好適な平版印刷用原版の画像形成層には、必要に応じて、さらに種々の添加剤を添加することができる。
例えば、感度を向上させる目的で、環状酸無水物類、フェノール類、有機酸類、スルホニル化合物類等の公知の添加剤を併用することもできる。
前記他の環状酸無水物、フェノール類、有機酸類又はスルホニル化合物類の添加量としては、画像形成層の全固形分重量に対し、0.05〜20重量%が好ましく、0.1〜15重量%がより好ましく、0.1〜10重量%が最も好ましい。
【0086】
また、現像条件に対する処理性の安定性を拡げる目的で、特開昭62−251740号公報、特開平3−208514号公報等に記載の非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号公報、特開平4−13149号公報等に記載の両性界面活性剤を添加することができる。
前記非イオン界面活性剤又は両性界面活性剤の使用量としては、画像形成層の全固形分重量に対し、0.05〜15重量%が好ましく、0.1重量%がより好ましい。
【0087】
前記画像形成層には、露光による加熱後、直ちに可視像を得るための焼き出し剤や画像着色剤としての染料や顔料を加えることができる。
前記焼き出し剤としては、例えば、露光による加熱によって酸を発生する化合物と塩を形成しうる有機染料との組合せが挙げられる。
具体的には、特開昭50−36209号、特開昭53−8128号の各公報に記載の、o−ナフトキノンジアド−4−スルホン酸ハロゲニドと塩形成性有機染料との組合せ、特開昭53−36223号、特開昭54−74728号、特開昭60−3626号、特開昭61−143748号、特開昭61−151644号及び特開昭63−58440号の各公報に記載の、トリハロメチル化合物と塩形成性有機染料との組合せ、が挙げられる。
前記トリハロメチル化合物としては、オキサゾール系化合物とトリアジン系化合物があり、いずれも経時安定性に優れ、明瞭な焼き出し画像を与える。
前記画像着色剤としては、例えば、前記塩形成性有機染料以外に、他の染料を用いることができ、例えば、油溶性染料、塩基性染料が好適に挙げられる。
【0088】
具体的には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#l03、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上、オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(C.I.42555)、メチルバイオレット(C.I.42535)、エチルバイオレッド、ローダミンB(C.I.145170B)、マラカイトグリーン(C.I.42000)、メチレンブルー(C.I.52015)等を挙げることができる。また、特開昭62−293247号公報に記載の染料は、特に好ましい。
【0089】
前記各種染料の添加量としては、画像形成層の全固形分重量に対し、0.01〜10重量%が好ましく、0.1〜3重量%がより好ましい。
【0090】
また、必要に応じて、その塗膜に柔軟性等を付与する目的で、可塑剤や、以下の種々添加剤を添加することができる。
例えば、オニウム塩、o−キノンジアジド化合物、芳香族スルホン化合物、芳香族スルホン酸エステル化合物等の、熱分解性で、未分解状態ではアルカリ水可溶性高分子化合物の溶解性を実質的に低下させる化合物を併用することができる。該化合物の添加は、画像部の現象液への溶解阻止能の向上を図る点で好ましい。
【0091】
前記オニウム塩、o−キノンジアジド化合物、芳香族スルホン酸エステル等の添加量としては、画像形成層の全固形分重量に対し、0.1〜50重量%が好ましく、0.5〜30重量%がより好ましく、0.5〜20重量%が最も好ましい。
【0092】
−支持体−
画像形成層を設けるための支持体としては、例えば、純アルミニウム板、アルミニウム合金板、アルミニウムがラミネート若しくは蒸着されたプラスチックフィルム等が挙げられる。
アルミニウム板の表面は、砂目立て処理、ケイ酸ソーダ、フッ化ジルコニウム酸カリウム、リン酸塩等の水溶液への浸透処理、或いは、陽極酸化処理等の表面処理が施されていることが好ましい。
また、米国特許第2,714,066号明細に記載の、砂目立てした後にケイ酸ナトリウム水溶液中で浸漬処理したアルミニウム板、特公昭47−5125号公報に記載の、アルミニウム板を陽極酸化処理した後、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液中で浸漬処理したアルミニウム板も好ましい。
【0093】
平版印刷用原版は、感光層として、画像形成層を所望の支持体上に塗布することにより作製することができるが、前記画像形成層の形成前に、必要に応じて、支持体上に下塗り層を設けることもできる。
下塗り層に用いる成分としては、種々の有機化合物が挙げられ、例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、アラビアガム、2−アミノエチルホスホン酸等のアミノ基を有するホスホン酸類;置換基を有してもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン酸、メチレンジホスホン酸及びエチレンジホスホン酸等の有機ホスホン酸;置換基を有してもよいフェニルリン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸及びグリセロリン酸等の有機リン酸;置換基を有してもよいフェニルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸及びグリセロホスフィン酸等の有機ホスフィン酸;グリシンやβ−アラニン等のアミノ酸類;トリエタノールアミンの塩酸塩等のヒドロキシル基を有するアミンの塩酸塩等が挙げられる。
【0094】
前記下塗り層の乾燥塗布量としては、2〜200mg/m2が好ましく、5〜100mg/m2がより好ましい。
前記乾燥塗布量が、2mg/m2未満であると、十分な膜性が得られないことがある。一方、200mg/m2を超えて塗布しても、それ以上の効果を得ることはできない。
【0095】
本発明のアルカリ現像処理液により現像する平版印刷用原版は、一般に、上述の各種成分(前記成分(A)〜(E)及びその他の成分)を溶媒に溶解して画像形成層用塗布液とし、これを所望の支持体上に塗布して作製する。
前記溶媒としては、例えば、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチレケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルグレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、α−ブチロラクトン、トルエン等が挙げられるが、本発明においては、これらに限定されるものではない。
また、前記溶媒は、単独でも2種以上を混合してもよい。
【0096】
前記溶媒中における各種成分(前記成分(A)〜(E)及びその他の成分)の全固形分濃度としては、1〜50重量%が好ましい。
また、支持体上に塗布、乾燥して設けられる画像形成層の乾燥塗布量(固形分)としては、一般的に0.5〜5.0g/m2が好ましい。
【0097】
支持体上に塗布する方法としては、公知の種々の方法の中から適宜選択できるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、グレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
塗布量が少なくなるにつれて、見かけの感度は大になるが、画像形成層の被膜特性は低下する。
【0098】
前記画像形成層用塗布液中には、塗布性を良化する目的で、界面活性剤、例えば、特開昭62−170950号公報に記載のフッ素系界面活性剤等を添加することがてきる。
前記添加量としては、画像形成層の全固形分重量に対して0.01〜1重量%が好ましく、0.05〜0.5重量%がより好ましい。
【0099】
本発明の平版印刷用原版は、赤外線レーザーで記録することができる他、紫外線ランプによる記録やサーマルヘッド等による熱的な記録も可能である。
前記赤外線レーザーとしては、波長700〜1200nmの赤外線を放射するレーザーが好ましく、同波長範囲の赤外線を放射する固体レーザー又は半導体レーザーがより好ましい。
【0100】
【実施例】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。なお、実施例中の「%」は、全て「重量%」を表す。
【0101】
<平版印刷用原版の作製>
0.3mm厚のアルミニウム板(材質1050)をトリクロロエチレンで洗浄して脱脂した後、ナイロンブラシと400メッシュのパミス−水懸濁液を用い、この表面を砂目立てし、水でよく洗浄した。
洗浄後、このアルミニウム板を45℃の25%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗した後、さらに20%硝酸水溶液に20秒間浸漬し、再度水洗した。この時の砂目立て表面のエッチング量は、約3g/m2であった。
【0102】
次に、このアルミニウム板を7%硫酸を電解液として、電流密度15A/dm2の直流電流で3g/m2の陽極酸化被膜を設けた後、水洗、乾燥した。
これを、30℃のケイ酸ナトリウム2.5%水溶液で10秒処理し、下記下塗り層用塗布液を塗布し、80℃下で15秒間乾燥して支持体を得た。乾燥後の下塗り層の乾燥塗布量は、15mg/m2であった。
【0103】
<下塗り層用塗布液>
・下記共重合体P(分子量28000) ・・・ 0.3g
・メタノール ・・・100g
・水 ・・・ 1g
【0104】
【化5】
【0105】
得られた支持体上に下記画像形成層用塗布液を、乾燥塗布量が1.8g/m2となるように塗布し、ポジ型の平版印刷用原版を得た。
【0106】
<画像形成層用塗布液>
・m,p−クレゾールノボラック〔(B)成分〕 ・・・ 1.0g
(m/p比=6/4,重量平均分子量8000、
未反応クレゾールを0.5%含有)
・シアニン染料A〔(A+C)成分〕 ・・・ 0.1g
・無水フタル酸〔(D)成分〕 ・・・ 0.05g
・p−トルエンスルホン酸 ・・・ 0.002g
・エチルバイオレット ・・・ 0.02g
(対イオン:6−ヒドロキシ−β−ナフタレンスルホン酸)
・ナフトキノン1,2−ジアジド−5−スルホニルクロリドと
ピロガロール−アセトン樹脂とのエステル化物 ・・・ 0.01g
・フッ素系界面活性剤 ・・・ 0.05g
(商品名:メガファックF−177,大日本インキ化学工業(株)製)
・メチルエチルケトン ・・・ 8g
・1−メトキシ−2−プロパノール ・・・ 4g
【0107】
(実施例1〜8)
<SiO2含有のアルカリ現像処理液補充液の調製>
酸化ケイ素SiO2及び酸化カリウムK2Oの混合モル比SiO2/K2Oが1.1のケイ酸カリウム4.0%水溶液1Lに各種界面活性剤を下記表1に記載の量添加し、アルカリ現像処理液(1)〜(8)を作製した。
また、酸化ケイ素SiO2及び酸化カリウムK2Oの混合モル比SiO2/K2Oが1.1のケイ酸カリウム6.0%水溶液1Lに各種界面活性剤を下記表1に記載の量添加し、アルカリ現像補充液(1)〜(8)を作製した。
ここで用いた各種界面活性剤の詳細を以下に示す。
【0108】
【化6】
【0109】
上記より得られた平版印刷用原版に出力500mW、波長830nm、ビーム径17μm(1/e2)の半導体レーザーを用いて主走査速度5m/秒にて露光し、25℃に保持した。
この平版印刷用原版を、前記アルカリ現像処理液(1)を満たした自動現像機PS900NP(富士写真フイルム(株)製)により、現像処理し、1枚処理する毎に、前記アルカリ現像補充液(1)を100ml/m2の補充量で添加し、10枚目、50枚目、100枚目の平版印刷版の製版を行なった。現像処理が終了したのち、水洗工程を経て、製版が完了した平版印刷版を得た。
同様にして、表1に記載の現像液と補充液を用いて、平版印刷版原版の現像処理を行ない実施例2〜8の方法により平版印刷版を得た。
【0110】
<画像部/非画像部のバランスの評価>
(非画像部の現像性の評価)
上記のようにして得た10枚目、50枚目、100枚目の平版印刷版の「非画像部の残膜」を下記基準に従い目視により観察し、官能評価を行なった。評価結果を以下の表1に示す。
−基準−
○:十分に現像され、非画像部上の画像形成層の残存は認められなかった。
△:非画像部上に画像形成層が若干残存していた。
×:現像不良が認められ、非画像部上に画像形成層が残存していた。
【0111】
(画像部の膜べりの評価)
上記のようにして得た10枚目、50枚目、100枚目の平版印刷版の「画像部の欠陥」を下記基準に従い、目視により観察し、官能評価を行なった。評価結果を以下の表1に示す。
−基準−
○:画像部に欠陥は認められなかった。
△:画像部濃度が若干低下し、一部に欠陥が認められた。
×:画像部濃度が大幅に低下し、画像部に欠陥した部分有り。
【0112】
【表1】
【0113】
(実施例9〜16)
<非還元糖含有のアルカリ現像処理液の調製>
非還元糖と塩基とを組合わせた、D−ソルビット/酸化カリウムK2OよりなるD−ソルビットカリウム塩5.0%水溶液1Lに各種界面活性剤を下記表2に記載の量添加し、本発明のアルカリ現像処理液(9)〜(16)を作製した。又、非還元糖と塩基とを組合わせたD−ソルビット/酸化カリウムK2OよりなるD−ソルビットカリウム塩6.5%水溶液1Lに各種界面活性剤を下記表2に記載の量添加し、本発明のアルカリ現像補充液(9)〜(16)を作製した。
【0114】
この非還元糖含有のアルカリ現像処理液を用いて、実施例1と同様に製版処理を行ない、実施例1と同様の評価を行った。結果を下記表2に示す。
【0115】
【表2】
【0116】
表1及び表2より明らかなように、界面活性剤濃度の高いアルカリ現像補充液を補充しながら現像処理する本発明の方法によれば、SiO2含有及び非還元糖含有のいずれの現像液においても十分な現像液処理性を維持しながら、画像部/非画像部のバランスの良好な安定した現像を連続的に行なうことができた。
【0117】
【発明の効果】
本発明によれば、アルカリ現像処理液の液性条件を維持しつつ、現像時における画像部/非画像部のバランスを良好にするとともに、その経時的な低下を防止し、長期間安定に現像することのできる平版印刷版の製版方法を提供することができる。
Claims (3)
- 赤外線吸収剤を含む画像形成層を有する平版印刷用原版を赤外線照射により画像様に露光した後、界面活性剤を含有するアルカリ現像液により現像処理する工程を有する平版印刷版の製版方法であって、
該現像処理が、アルカリ現像液補充液による補充を実施する工程を含む連続処理であり、且つ、該アルカリ現像液補充液中の界面活性剤濃度が、該アルカリ現像液中の界面活性剤濃度の3〜15倍であることを特徴とする平版印刷版の製版方法。 - 前記界面活性剤が、非イオン界面活性剤及びアニオン界面活性剤からなる群より選択されることを特徴とする請求項1記載の平版印刷版の製版方法。
- 前記界面活性剤が、非イオン界面活性剤より選択されることを特徴とする請求項1記載の平版印刷版の製版方法。
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