JP4110527B2 - 医療用電極 - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば除細動とペーシングとの両用電極のように生体に電気エネルギーを供給するために用いられる医療用電極、または例えば除細動と心電信号検出との両用電極のように生体に大量の電気エネルギーを供給するためと生体から電位を検出するための両方に用いられる医療用電極に関する。
【０００２】
【従来の技術】
一般的に上記の医療用電極の導電層は、錫を主成分とする金属板で構成されている。そしてこの金属板と生体の皮膚との間のインピーダンスを低下させるため、導電性のゲル層を介在させる。しかし、除細動用電極のように、大きな電気エネルギーが供給されるものは、導電性のゲルが電気分解されて水素ガスと塩素ガスが発生する。そしてこれらのガスは、金属板とゲル層との間に溜まり、電極の電気的特性を変化させ、あるいは、金属板を腐食させる原因となる。また、ゲルに含まれる電解質（塩）による金属板の腐食も発生し、故障の原因となる。
【０００３】
そこで従来の電極には、通気性を有する導電層と、この導電層に重ねられたガス親和層を備えたものがある（例えば、特許文献１参照）。これによれば、ゲル層で発生したガスは、導電層を通り抜け、ガス親和層を経て外部に排出される。
【０００４】
【特許文献１】
特表平１０−５０７６５１号公報（第７−１９頁、第１〜５図）
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、導電層に金属板を用いた電極の場合、導電層は腐食し、通電を妨げるという欠点がある。一方、導電層に炭素を用いた場合、腐食しにくく通電を妨げることは少ないが、除細動用に大電流を通電した後の電位の復帰が遅く、心電信号検出用として使用するまでに時間がかかるという欠点がある。
【０００６】
除細動用電極の規格の一つに、除細動の電気エネルギーを供給後、所定時間内に電極間電位が所定電圧以下に降下することが挙げらている。
【０００７】
本発明の目的は、導電層が腐食せず、生体に大きな電気エネルギーを供給した後であっても、短時間後に生体電位を導出することができる電極を提供することである。
【０００８】
【課題を解決するための手段】
請求項１に係る発明は、炭素繊維製品からなる導電層と、この導電層の一方の面に接着された導電性のゲル層と、前記導電層に一端を接続されたリード線とを備える医療用の両用電極において、絶縁シートを有し、前記リード線の一端は前記導電層の前記ゲル層が接着される面とは反対側の面に固着されており、前記絶縁シートは前記導電層の前記反対側の面と前記リード線の一部を覆い、この絶縁シートと前記導電層の間には前記リード線に沿って外部に通じる隙間が形成されており、前記ゲル層は、ｐＨが８〜１３であり、少なくとも水、重合性モノマー、ｐＨ調整剤および架橋剤から製造され、前記ｐＨ調整剤はアミノアルコールであることを特徴とする。
【０００９】
【発明の実施の形態】
図１は本発明の医療用電極の組立て斜視図である。この医療用電極は円板状である。図１を参照してこの医療用電極の構成を説明する。
【００１０】
導電層１は炭素繊維製品であり、例えば炭素織布または炭素不織布などから形成される。導電層１には、その裏面の中央に、表面側からハトメ２および座金３によって、裏面側からかしめコネクター４によってリード線５の一端が留められる。導電層１の裏面は、それよりも大きい外径であって絶縁性を有する粘着シート６の粘着面中央に接着される。
【００１１】
このためリード線５は、粘着シート６と導電層１との間に一部を挟まれ、残りは外部に導出される。リード線５としては例えば被覆銅線を用いる。ハトメ２および座金３の導電層１から外部に現れている部分は、遮蔽板７で覆われる。遮蔽板７は粘着シートであり、絶縁性かつ遮水性を有する。
【００１２】
導電層１は、粘着シート６に接着されたリング状シート８で囲まれている。リング状シート８も粘着シートである。リング状シート８は外径が粘着シート６とほぼ同じであり、内径が導電層１とほぼ同じである。リング状シート８の粘着面は粘着シート６とは反対側にある。
【００１３】
導電性のゲル層９は、導電層１に自身の粘着性により接着される。ゲル層９は導電層１とほぼ同じ大きさである。ゲル層９は、粘着シート６およびリング状シート８とほぼ同じ外径のカバーシート１０によって覆われる。このカバーシート１０は、ゲル層９の保護および品質維持のために設けたもので、本医療用電極を生体に装着する際には剥がすものである。
【００１４】
この医療用電極の外観を図２（ａ）に示し、リード線５の取り出し口の方から見た図を図２（ｂ）に示す。なお、この図２は、図１とは異なり、生体に装着する面を下方にして示している。図２に示すように粘着シート６と導電層１の間はリード線５に沿って隙間Ａが設けられている。これは、本医療用電極の使用時に発生するガスを外側に導く通路となる。
【００１５】
次に、導電性のゲル層９について説明する。
ゲル層９は、水、重合禁止剤、重合性モノマー、ｐＨ調整剤および架橋剤を混ぜ合わせ、重合開始剤を添加して重合反応を生じさせて製造する。
ここで、ｐＨ調整剤としては、導電性物質を兼ねるアミノアルコールを用い、ｐＨを８〜１３とした。
【００１６】
ｐＨ調整剤としてアミノアルコールを用いる理由は、例えばｐＨ調整剤として苛性ソーダを用いたものであればゲル層はナトリウムイオンが電気分解され、加水分解を受けて導電層近傍のｐＨをアルカリ性にして変化させるが、アミノアルコールは加水分解を受けないのでｐＨの変化を起こさないからである。
【００１７】
そして導電層に炭素を用いた場合、ゲル層が酸性よりアルカリ性の方が電位が安定した。このため本発明のゲル層はｐＨを８以上とした。そして、皮膚への影響を考慮して、ｐＨを１３以下とした。
【００１８】
このような構成の医療用電極によれば、除細動用として直流の大電流が通されても、導電層１の近傍のゲル層９中における電気化学反応は生じ難い。そのため、水素ガスの発生が少なくなり、通電後は、その分、電極間の電位の降下を妨げることが少なくなり、復帰が早くなり、既述の除細動用電極の規格を満足させる。また、通電時に発生した水素ガスは、導電層１を通り抜け、隙間Ａを通って外部に排出され、これによっても導電層１に水素ガスが貯留することが少なくなり、電極間の電位の降下を妨げることが少なくなる。またゲルと電極の接触面積も減少させられることはない。
【００１９】
表１に、適切なゲル層９の各成分の重量％を示す。最上段に示すｐＨを得るための、水、重合モノマー、ｐＨ調整剤の配合比をそれぞれ示している。なお、ここでｐＨ調整剤は、アミノアルコールである。重合禁止剤と架橋剤は他の成分と比較して微量（合わせて0.2 重量％程度）であるので記載は省略している。
【００２０】
【表１】
【００２１】
ゲル層９の好適な具体的成分を表２に示す。
【００２２】
【表２】
【００２３】
上記の例では、ｐＨ調整剤としてモノエタノールアミンを用いたが、トリエタノールアミンでも同様の効果を奏する。
また、上記の例では、全体形状を円板状としたが、これは矩形板状でも楕円板状でも良い。
【００２４】
【発明の効果】
本発明の医療用電極によれば、導電層が腐食しないので通電性が劣化することはない。さらに、本発明の医療用電極によれば、生体に大きな電気エネルギーを供給した後であっても、短時間後にわずかな電気エネルギーを供給することや生体電位を導出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の医療用電極の組立て斜視図。
【図２】 (a) は本発明の医療用電極の外観を示す図であり、(b) はそのリード線の出口側から見た図である。
【符号の説明】
１ 導電層
５ リード線
６ 絶縁シート
９ ゲル層
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば除細動とペーシングとの両用電極のように生体に電気エネルギーを供給するために用いられる医療用電極、または例えば除細動と心電信号検出との両用電極のように生体に大量の電気エネルギーを供給するためと生体から電位を検出するための両方に用いられる医療用電極に関する。
【０００２】
【従来の技術】
一般的に上記の医療用電極の導電層は、錫を主成分とする金属板で構成されている。そしてこの金属板と生体の皮膚との間のインピーダンスを低下させるため、導電性のゲル層を介在させる。しかし、除細動用電極のように、大きな電気エネルギーが供給されるものは、導電性のゲルが電気分解されて水素ガスと塩素ガスが発生する。そしてこれらのガスは、金属板とゲル層との間に溜まり、電極の電気的特性を変化させ、あるいは、金属板を腐食させる原因となる。また、ゲルに含まれる電解質（塩）による金属板の腐食も発生し、故障の原因となる。
【０００３】
そこで従来の電極には、通気性を有する導電層と、この導電層に重ねられたガス親和層を備えたものがある（例えば、特許文献１参照）。これによれば、ゲル層で発生したガスは、導電層を通り抜け、ガス親和層を経て外部に排出される。
【０００４】
【特許文献１】
特表平１０−５０７６５１号公報（第７−１９頁、第１〜５図）
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、導電層に金属板を用いた電極の場合、導電層は腐食し、通電を妨げるという欠点がある。一方、導電層に炭素を用いた場合、腐食しにくく通電を妨げることは少ないが、除細動用に大電流を通電した後の電位の復帰が遅く、心電信号検出用として使用するまでに時間がかかるという欠点がある。
【０００６】
除細動用電極の規格の一つに、除細動の電気エネルギーを供給後、所定時間内に電極間電位が所定電圧以下に降下することが挙げらている。
【０００７】
本発明の目的は、導電層が腐食せず、生体に大きな電気エネルギーを供給した後であっても、短時間後に生体電位を導出することができる電極を提供することである。
【０００８】
【課題を解決するための手段】
請求項１に係る発明は、炭素繊維製品からなる導電層と、この導電層の一方の面に接着された導電性のゲル層と、前記導電層に一端を接続されたリード線とを備える医療用の両用電極において、絶縁シートを有し、前記リード線の一端は前記導電層の前記ゲル層が接着される面とは反対側の面に固着されており、前記絶縁シートは前記導電層の前記反対側の面と前記リード線の一部を覆い、この絶縁シートと前記導電層の間には前記リード線に沿って外部に通じる隙間が形成されており、前記ゲル層は、ｐＨが８〜１３であり、少なくとも水、重合性モノマー、ｐＨ調整剤および架橋剤から製造され、前記ｐＨ調整剤はアミノアルコールであることを特徴とする。
【０００９】
【発明の実施の形態】
図１は本発明の医療用電極の組立て斜視図である。この医療用電極は円板状である。図１を参照してこの医療用電極の構成を説明する。
【００１０】
導電層１は炭素繊維製品であり、例えば炭素織布または炭素不織布などから形成される。導電層１には、その裏面の中央に、表面側からハトメ２および座金３によって、裏面側からかしめコネクター４によってリード線５の一端が留められる。導電層１の裏面は、それよりも大きい外径であって絶縁性を有する粘着シート６の粘着面中央に接着される。
【００１１】
このためリード線５は、粘着シート６と導電層１との間に一部を挟まれ、残りは外部に導出される。リード線５としては例えば被覆銅線を用いる。ハトメ２および座金３の導電層１から外部に現れている部分は、遮蔽板７で覆われる。遮蔽板７は粘着シートであり、絶縁性かつ遮水性を有する。
【００１２】
導電層１は、粘着シート６に接着されたリング状シート８で囲まれている。リング状シート８も粘着シートである。リング状シート８は外径が粘着シート６とほぼ同じであり、内径が導電層１とほぼ同じである。リング状シート８の粘着面は粘着シート６とは反対側にある。
【００１３】
導電性のゲル層９は、導電層１に自身の粘着性により接着される。ゲル層９は導電層１とほぼ同じ大きさである。ゲル層９は、粘着シート６およびリング状シート８とほぼ同じ外径のカバーシート１０によって覆われる。このカバーシート１０は、ゲル層９の保護および品質維持のために設けたもので、本医療用電極を生体に装着する際には剥がすものである。
【００１４】
この医療用電極の外観を図２（ａ）に示し、リード線５の取り出し口の方から見た図を図２（ｂ）に示す。なお、この図２は、図１とは異なり、生体に装着する面を下方にして示している。図２に示すように粘着シート６と導電層１の間はリード線５に沿って隙間Ａが設けられている。これは、本医療用電極の使用時に発生するガスを外側に導く通路となる。
【００１５】
次に、導電性のゲル層９について説明する。
ゲル層９は、水、重合禁止剤、重合性モノマー、ｐＨ調整剤および架橋剤を混ぜ合わせ、重合開始剤を添加して重合反応を生じさせて製造する。
ここで、ｐＨ調整剤としては、導電性物質を兼ねるアミノアルコールを用い、ｐＨを８〜１３とした。
【００１６】
ｐＨ調整剤としてアミノアルコールを用いる理由は、例えばｐＨ調整剤として苛性ソーダを用いたものであればゲル層はナトリウムイオンが電気分解され、加水分解を受けて導電層近傍のｐＨをアルカリ性にして変化させるが、アミノアルコールは加水分解を受けないのでｐＨの変化を起こさないからである。
【００１７】
そして導電層に炭素を用いた場合、ゲル層が酸性よりアルカリ性の方が電位が安定した。このため本発明のゲル層はｐＨを８以上とした。そして、皮膚への影響を考慮して、ｐＨを１３以下とした。
【００１８】
このような構成の医療用電極によれば、除細動用として直流の大電流が通されても、導電層１の近傍のゲル層９中における電気化学反応は生じ難い。そのため、水素ガスの発生が少なくなり、通電後は、その分、電極間の電位の降下を妨げることが少なくなり、復帰が早くなり、既述の除細動用電極の規格を満足させる。また、通電時に発生した水素ガスは、導電層１を通り抜け、隙間Ａを通って外部に排出され、これによっても導電層１に水素ガスが貯留することが少なくなり、電極間の電位の降下を妨げることが少なくなる。またゲルと電極の接触面積も減少させられることはない。
【００１９】
表１に、適切なゲル層９の各成分の重量％を示す。最上段に示すｐＨを得るための、水、重合モノマー、ｐＨ調整剤の配合比をそれぞれ示している。なお、ここでｐＨ調整剤は、アミノアルコールである。重合禁止剤と架橋剤は他の成分と比較して微量（合わせて0.2 重量％程度）であるので記載は省略している。
【００２０】
【表１】
ゲル層９の好適な具体的成分を表２に示す。
【００２２】
【表２】
上記の例では、ｐＨ調整剤としてモノエタノールアミンを用いたが、トリエタノールアミンでも同様の効果を奏する。
また、上記の例では、全体形状を円板状としたが、これは矩形板状でも楕円板状でも良い。
【００２４】
【発明の効果】
本発明の医療用電極によれば、導電層が腐食しないので通電性が劣化することはない。さらに、本発明の医療用電極によれば、生体に大きな電気エネルギーを供給した後であっても、短時間後にわずかな電気エネルギーを供給することや生体電位を導出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の医療用電極の組立て斜視図。
【図２】 (a) は本発明の医療用電極の外観を示す図であり、(b) はそのリード線の出口側から見た図である。
【符号の説明】
１ 導電層
５ リード線
６ 絶縁シート
９ ゲル層
Claims (1)
- 炭素繊維製品からなる導電層と、この導電層の一方の面に接着された導電性のゲル層と、前記導電層に一端を接続されたリード線とを備える医療用の両用電極において、
絶縁シートを有し、前記リード線の一端は前記導電層の前記ゲル層が接着される面とは反対側の面に固着されており、前記絶縁シートは前記導電層の前記反対側の面と前記リード線の一部を覆い、この絶縁シートと前記導電層の間には前記リード線に沿って外部に通じる隙間が形成されており、
前記ゲル層は、ｐＨが８〜１３であり、少なくとも水、重合性モノマー、ｐＨ調整剤および架橋剤から製造され、前記ｐＨ調整剤はアミノアルコールであることを特徴とする医療用の両用電極。
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