JP4109348B2 - 電子部品とその製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は積層セラミックコンデンサや積層セラミックインダクタ等の電子部品の製造方法に関し、特に、電子部品素体の内部に形成された内部電極と、同素体の表面に形成された導体膜からなる外部電極との接続部分を改善したチップ状電子部品とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子部品としては、積層セラミックコンデンサと積層セラミックインダクタがその代表的なものであるが、さらにこれらを組み合わせたLC部品等の複合素子等が多く開発されている。
電子部品の代表的な例である積層セラミックコンデンサは、コンデンサとしての電子部品要素を構成する層状の内部電極がセラミック層を介して多数積み重ねられ、内部電極がセラミック層の電子部品素体の端面に引き出されている。そして、これらの内部電極が引き出された電子部品素体の端面に導体膜からなる外部電極が形成されている。
【0003】
このような積層セラミックコンデンサの一般的な製造方法は、例えば、誘電体セラミック粉末を有機バインダーに分散させたセラミックスラリーをシート状に成形してセラミックグリーンシートを作り、スクリーン印刷法等により、このセラミックグリーンシートの上に導電ペーストで内部電極パータンを印刷する。そして、この内部電極パターンが印刷されたセラミックグリーンシートを積層し、さらにその両側に内部電極パターンが印刷されてないセラミックグリーンシートを複数枚積み重ねる。こうして得られた電子部品素体を内部電極が端面に露出するようにしてチップ状に切断し、これを焼成する。そして、この焼成された電子部品素体の端部に導電ペーストを塗布し、これを焼き付けて外部電極を形成する。これにより、積層チップコンデンサが完成する。
【0004】
また、他の積層セラミックコンデンサの製造方法として、セラミックの電子部品素体を焼成する前に、その端部に予め導電ペーストを塗布し、その後セラミックの電子部品素体を焼成すると同時に、導電ペーストを焼き付けるという製造方法もある。さらに、電子部品素体を得る方法も、セラミックグリーンシートを使用する、いわゆるシート法の他に、セラミックペーストと導電ペーストとを交互に印刷していく、いわゆるスラリービルト法も採用されている。
このような積層セラミックコンデンサに代表される電子部品は、小型化と共に、大容量化や高インダクタンス化等が要求されている。
【0005】
図4は、積層セラミックコンデンサの例を示す。セラミック層2の積層体からなる電子部品素体1の内部で、2組の内部電極3、4が交互に対向しており、これら2組の内部電極3、4は、それぞれ電子部品素体1の対向する端面に導出されている。電子部品素体1の両端部に導体膜からなる外部電極5、5が形成され、これら外部電極5、5が各組の内部電極3、4にそれぞれ電気的に接続されている。
【0006】
このような積層セラミックコンデンサに代表されるチップ状電子部品は、回路基板等の上に搭載され、その外部電極が半田付けされる。このとき、半田付け性がよく、半田付け後の機械的な密着強度が強く、電気的な導通性が良好であることが要求される。このため、外部電極5、5は、単一の層ではなく、複数の金属層から構成される。
【0007】
図5は、この外部電極5、5の金属層を示す。まず、電子部品素体1の表面上には、同素体1の表面への密着性及び内部電極3、4図4参照)との導通性の良好なアンカー層6が形成される。このアンカー層6の上には、溶融半田に金属粒子が流出しにくい、いわゆる耐半田喰われ性のある耐半田層7が形成される。さらに、この耐半田層7の上には、溶融半田に対して濡れ性の良好な半田濡れ層9が形成される。
【0008】
前記のような外部電極5、5を形成する手段として、大別して湿式法と乾式法とがある。
湿式法は、導電ペーストの印刷及び焼き付けやメッキ浴を用いた湿式メッキ等の手段で外部電極5、5を形成するものである。この湿式法では、通常、前記のアンカー層6がAgの印刷膜により、耐半田層7がNiのメッキ膜により、さらに、半田濡れ層9が半田のメッキ膜により形成される。
【0009】
乾式法は、真空蒸着やスパッタリング等の手段で電子部品素体1の端部に導体膜を形成することにより、外部電極5、5を形成するものである。この乾式法では、通常、前記のアンカー層6が、CrまたはCrの合金膜により、耐半田層7がNiまたはNiの合金膜により、さらに、半田濡れ層9がAg、SnまたはSnの合金膜により形成される。
前者の湿式法は、狭いピッチで高精度の外部電極5、5を形成しにくく、しかも、メッキに際して電子部品素体1の内部にメッキ液が浸入して信頼性を低下するという問題がある。そのため、今日では乾式法が採用されることが次第に多くなっている。
【0010】
【発明が解決しようとしている課題】
前記電子部品素体1の表面に導出した内部電極3、4の導出面は、数μmレベルの凹凸を有する。そのため、真空蒸着やスパッタリングの手段でアンカー層6を形成する場合、内部電極3、4の導出面に対してアンカー層6を形成する金属分子が斜めに入射するとき、内部電極3、4の導出面の凹凸により、アンカー層6を形成する金属分子が付着しない、いわゆる陰となる部分が生じる。このため、アンカー層6と内部電極3、4の導出面との密着性が得られず、外部電極5、5の界面が剥離する可能性がある。これにより、内部電極3、4と外部電極5、5との接続の信頼性を得ることができない。
【0011】
また、内部電極3、4を形成するのに使用される金属は、酸化雰囲気中で電子部品素体1と同時焼成されるため、PdやAg等の貴金属が使用される。他方、アンカー層6は、比較的酸素と反応しやすいCrやCr合金が使用される。このため、内部電極3、4の内部やその表面に酸素等の軽元素が存在していると、この酸素は内部電極3、4の結晶粒界や内部電極3、4の導出部表面とアンカー層6との界面を移動しやすい。その結果、アンカー層6の内部電極3、4の導出部表面とアンカー層6との界面側から酸化が進み、高い抵抗を有する層が形成される。特に、外部電極5、5を乾式メッキ法により形成した場合、アンカー層6と内部電極3、4の導出部表面との間に酸素等の軽元素が移動しやすい界面ができるため、アンカー層6と軽元素との反応はその界面に沿って広がっていく。この点でも、内部電極3、4と外部電極5、5との間の電気的接続の信頼性を得ることができない。
【0012】
本発明は、前記従来の電子部品における課題に鑑み、外部電極と内部電極との剥離が起こりにくく、且つこれら外部電極と内部電極との間に高抵抗の酸化層が形成されにくく、これによって内部電極と外部電極との電気的接続について高い信頼性を得ることができる電子部品とそのような電子部品を製造する方法を提供するものである。特に、本発明では、乾式法により外部電極を形成するの場合に好適である。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するために、本発明では、電子部品素体11の表面に被着される外部電極15、15のアンカー層16と、電子部品素体11の表面に導出した内部電極13、14の導出部表面との間に、少なくとも一部が内部電極13、14との相互拡散により合金化された中間層17を設けたものである。このような中間層17は、電子部品素体11の表面に導出されている内部電極13、14の導出部表面に、同内部電極13、14の金属と相互拡散しやすい金属をその融点以上の温度で被着させることにより形成することができる。
【0014】
本発明による電子部品は、内部に導体膜からなる内部電極13、14を有する電子部品素体11と、この電子部品素体11の表面に導出された前記内部電極13、14に接続されるように同電子部品素体11の表面に形成された金属膜からなる外部電極15、15とを有する。前記外部電極15、15は、電子部品素体11の表面に被着されるアンカー層16を有し、このアンカー層16と前記内部電極13、14との間に電子部品素体11をアンカー層16を形成する金属の融点近くの温度に保った状態で、その表面に導出した内部電極13、14に同内部電極13、14と相互拡散しやすい金属を被着して前記アンカー層16を設けることで形成された中間層17が設けられ、この中間層17は、少なくともその一部が前記内部電極13、14との相互拡散により合金化されていることを特徴とする。
【0015】
ここで、中間層17は外部電極15、15のアンカー層16とも相互拡散により合金化されているのが好ましい。この中間層17は、内部電極13、14より空隙が少ない金属層であり、内部電極13、14より酸化傾向が強い。例えば、内部電極13、14がAgを含む金属からなり、アンカー層16がCrまたはCrを含む合金からなるとき、中間層17はAgと相互拡散しやすく、且つAgより酸化傾向が強いSnまたはSn合金により形成する。
【0016】
このような電子部品では、中間層17と内部電極13、14とが相互拡散して合金化されているため、中間層17と内部電極13、14との間には実質的に界面が存在しない。このため、中間層17側に内部電極13、14側から酸素等の軽元素が移動してきても、電気伝導を阻害するような膜状の異層を形成することなく、軽元素は中間層17の中を拡散していく。従って、中間層17と内部電極13、14との間に高い抵抗を有する層が形成されない。
【0017】
中間層17に入った軽元素は、何れアンカー層16に達する可能性があるが、中間層17が内部電極13、14より酸化傾向が強い金属からなるので、中間層17の中での軽元素の移動は内部電極13、14の内部に比較すると遅い。むしろ、中間層17内部に軽元素がトラップされる可能性が高い。従って、アンカー層16と中間層17との間において、アンカー層16を形成している金属と軽元素との化合物である高い抵抗を有する層が形成される速度は極めて遅く、むしろ通常の条件では殆ど形成されることはない。
【0018】
さらに、アンカー層16と中間層17との間も、相互拡散により合金化した場合は、前述の内部電極13、14と中間層17との間で起こるのと同様にして、その部分にも高抵抗の層が発生しない。
また、中間層17が内部電極13、14より空隙が少なく、凹凸の無い滑らかな表面を有する場合は、内部電極13、14の導出面に対してアンカー層16を形成する金属分子の入射が斜めになったときでも、内部電極13、14の導出面の凹凸により、アンカー層16を形成する金属分子が付着しない、いわゆる陰となる部分が生じない。このため、アンカー層16と内部電極13、14の導出面との密着性が得られる。
【0019】
前記のような電子部品は、電子部品素体11の表面に導出した前記内部電極13、14の表面に、同内部電極13、14と相互拡散しやすい金属を溶融状態で被着することにより中間層17を形成し、さらにこの中間層17の表面を含む電子部品素体11の表面にアンカー層16及びその他の金属層からなる外部電極15、15を形成することにより得られる。
【0020】
中間層17は、電子部品素体11をその表面に被着させるアンカー層16を形成する金属の融点近くの温度に保った状態で、同電子部品素体11の表面に導出した内部電極13、14の表面に前記アンカー層16を形成する金属を真空蒸着するか、或いは電子部品素体11の表面に導出した内部電極13、14の表面を溶融金属に浸漬し、この金属を硬化させることにより形成することができる。例えば、内部電極13、14がAgを含む金属からなるとき、中間層16はAgと相互拡散しやすいSnまたはSn合金により形成する。
【0021】
【発明の実施の形態】
次に、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について、具体的且つ詳細に説明する。
図1〜図3は、外部電極15、15を有する電子部品の例として、積層セラミックコンデンサを示している。
積層セラミックコンデンサの電子部品素体11は、セラミックの積層体であり、各セラミック層を分解した状態でその層構造を図3に示してある。既に述べた通り、この電子部品素体11は、2組の内部電極13、14がセラミック層12を介して交互に多数積み重ねられ、各組の内部電極13、14はセラミック層12の電子部品素体11の対向する一対の端面に交互に引き出されている。内部電極13、14は、電子部品素体11を酸化雰囲気で焼成する時に同時焼成されるため、酸化されにくいPdやAg等の貴金属やそれらの合金が使用される。
【0022】
図1に示すように、これらの内部電極13、14が引き出された電子部品素体11の端面に導体膜からなる外部電極15、15がそれぞれ形成されている。
このような積層セラミックコンデンサを製造する工程は、後に説明する外部電極15、15を形成する工程の一部を除いて、前述した従来の積層セラミックコンデンサの製造方法と基本的に同じである。
【0023】
図2は、この積層セラミックコンデンサの内部電極14と外部電極15との接続部分の構造を模式的に示すものである。他方の内部電極13と外部電極15との接続部分の構造も図2と実質的に同じであるので図示を省略する。
まず、セラミックの積層体である電子部品素体11の端面に導出された内部電極13、14の導出面に中間層17を設ける。この中間層17は、それを構成する金属材料と内部電極13、14を構成する金属材料とが相互拡散することにより、少なくとも一部が合金化したものである。そのため、内部電極13、14の導出面と中間層17との間には、実質的な界面は存在しない。
【0024】
このような中間層17は、内部電極13、14を形成する金属材料と相互拡散しやすい金属材料をその融点より高い温度の溶融状態で被着させることにより形成することができる。例えば、内部電極13、14がAgで形成されている場合、SnやSn合金はその溶融状態においてAgと相互拡散しやすいことが知られている。
【0025】
例えば、電子部品素体11をSnの融点近くの温度(融点±20℃)に保った状態で、電子部品素体11の表面に導出した内部電極13,14の導出部表面に真空蒸着する。これにより、蒸発源から内部電極の導出部に飛来したSn分子は、内部電極13、14の導出部表面においてそれを構成するAg分子と相互拡散して合金化される。これにより、中間層17はAg−Snの合金層となり、その組成は内部電極13,14の導出部から中間層の表面にいくに従って連続的に変化する。
【0026】
中間層17を形成する他の手段としては、電子部品素体11を溶融されているSnまたはSn合金に浸漬することをあげることができる。内部電極13,14を形成しているAgはSnとの拡散性が高いため、溶融したSnまたはSn合金は内部電極13,14が電子部品素体11の表面に導出した導出部表面に付着する。そして、内部電極を形成しているAgは溶融したSnまたはSn合金に拡散しやすいため、中間層はAg−SnまたはAg−Snとその他の金属との合金となる。その組成は内部電極13,14の導出部から中間層17の表面にいくに従って連続的に変化する。また、この中間層17は溶融したSnまたはSn合金が硬化してできたものであり、その表面は滑らかとなる。
【0027】
電子部品素体11の端部の表面上には、同素体11の表面への密着性及び内部電極13、14(図1参照)との導通性の良好なアンカー層16が形成される。アンカー層16は、前記中間層17と相互拡散し、合金化しやすい金属により形成するが、一般には従来の電子部品と同様に、CrまたはCr合金が使用される。このCrまたはCr合金を真空蒸着等の手段で、電子部品素体11の表面に被着する。被着する部分は、もちろん電子部品素体11の内部電極13、14が導出した表面部分を含む領域である。これにより、内部電極13、14が導出した表面部分に設けられた前記中間層17を形成する金属とアンカー層16を形成するCrまたはCr合金等の金属とが相互拡散し、合金化される。
【0028】
アンカー層16の上には、溶融半田に金属粒子が流出しにくい、いわゆる耐半田喰われ性のある耐半田層18が形成される。耐半田層18は、例えば半田耐熱性に優れたNiまたはNi合金を使用し、真空蒸着やスパッタリングの手段により形成される。
さらに、この耐半田層18の上に溶融半田に対して濡れ性の良好な半田濡れ層19が形成される。この半田濡れ層19は、例えば半田に対して濡れ性が良好なSnまたはSnを含む合金を使用し、真空蒸着やスパッタリングの手段により形成される。
【0029】
図6は、電子部品の他の例として、積層チップインダクタである積層電子部品の電子部品素体の構造を示す概念図である。このような電子部品素体は、通常次のようにして多数のものが同時に製造される。
まず、フェライト粉末等の磁性体粉末をバインダー中に分散した磁性体スラリーを用い、ドクターブレード法、押出成形法等の手段で薄い磁性体セラミックグリーンシートを作る。これらのセラミックグリーンシートの所定の位置に予めスルーホールを打ち抜く。その後、Agペースト等の導電ペーストを使用し、このセラミックグリーンシートの上に周回状の内部電極電極パターンを縦横に列べて多数組分印刷すると共に、上記スルーホールに導電ペーストを吸引し、スルーホール導体を印刷する。
【0030】
必要とするコイルの巻数により、異なる形状の内部電極パターンを有するセラミックグリーンシートを適当な組数用意し、これらを順次積層する。そして、これらセラミックグリーンシートの両側に内部電極パターンが印刷されていないセラミックグリーンシートを積層する。
この積層体を圧着した後、個々のチップ毎に裁断し、この未焼成の積層チップを焼成することにより、焼成済みの電子部品素体11を得る。
【0031】
こうして得られた電子部品素体11は、図6に示すように、複数のセラミック層21、21…、21’、21’…が積層され、一体となったものである。
セラミック層11には、インダクタとしての電子部品要素を構成する周回状の内部電極25a、25b…が形成されている。これら内部電極25a、25b…は、スルーホール26、26…に設けられたスルーホール導体を介して順次接続され、電子部品素体11の内部でコイル状に連なっている。磁性体セラミックからなるセラミック層21、21…は、このコイルの磁芯となる。
内部電極25a、25b…を有するセラミック層21、21…のうち、図6において上下の端のセラミック層21、21に形成された内部電極積25e、25fは、電子部品素体11の対向する一対の端面にそれぞれ導出している。
【0032】
さらに、前記内部電極25a、25b…が形成されたセラミック層21、21…の両側に、内部電極が形成されていないセラミック層21’、21’…、いわゆるブランクのセラミック層21’、21’…が積層されている。通常の場合、このブランクのセラミック層21’、21’…は、前記内部電極25a、25b…を有するコイル磁芯となるセラミック層21、21…と同じ磁性体材料からなる。
【0033】
前記電子部品素体11の端面に導出された内部電極25e、25fの導出部表面には、前記積層セラミックコンデンサの内部電極13,14の導出部表面に形成されたのと同様の中間層が形成される。
さらに図7に示すように、このような電子部品素体11の両端に、真空蒸着法やスパッタリング法により、外部電極15、15が形成される。この外部電極15、15は、既に述べた積層セラミックコンデンサと基本的に同じであり、図2に示すように、アンカー層16、耐半田層18及び半田濡れ層19からなる。前記中間層は、アンカー層16と相互拡散することにより、その一部が合金化されている。
【0034】
なお前記の例では、電子部品素体11の端部にそれぞれ単一の外部電極15、15を形成した例について説明したが、本発明は、電子部品素体11の側面に複数の外部電極15、15を分離して設けた、いわゆるアレイ形電子部品にも当然のことながら本発明を適用することができる。このようなアレイ形電子部品に本発明を適用したものでは、外部電極15、15を半田付けしたときの密着強度の増大の効果が顕著である。
【0035】
【実施例】
次に、本発明の実施例について、具体的数値をあげて詳細に説明する。
(実施例1)
フェライト系磁性体粉末を仮焼きした後、これらを有機バインダー中に分散し、磁性体スラリを作った。この磁性体スラリをドクターブレード法により成形し、磁性体セラミックグリーンシートを作った。
これらセラミックグリーンシートの一部の所定の位置に予めスルーホールを打ち抜いた後、Agペーストを使用し、このセラミックグリーンシートの上に周回状の内部電極電極パターンを縦横に列べて多数組分印刷すると共に、上記スルーホールにAgペーストを吸引し、スルーホール導体を印刷した。
【0036】
まず、前記内部電極パターンが印刷されていないブランクのセラミックグリーンシートを積層し、次に内部電極パターンを有するセラミックグリーンシートを、スルーホールを介してそれらがコイル状に連なるように順次積層した。さらに、これらセラミックグリーンシートの上に内部電極パターンが印刷されていないブランクのセラミックグリーンシートを積層した。
この電子部品素体を圧着した後、個々のチップ毎に裁断した。この未焼成の積層チップを、脱バインダー処理した後、焼成することにより、図6に示すような層構造を有する焼成済みの電子部品素体11を得た。この電子部品素体11は、約1.6mm×0.8mm×0.8mmの概ね直方体形のものである。
【0037】
この電子部品素体11を260℃の温度で溶融されている共晶半田に3分間浸漬した。内部電極を形成しているAgは半田濡れ性がよいため、半田は内部電極が電子部品素体11の表面に導出した導出部表面に付着し、中間層が形成される。そして、内部電極を形成しているAgは溶融半田中に拡散しやすいため、中間層はAg−Pb−Snの合金となる。その組成は内部電極25e、25fの導出部から中間層の表面にいくに従って連続的に変化する。また、この中間層は溶融半田が硬化してできたものであり、その表面は滑らかである。
電子部品素体11の内部電極が導出した部分以外の部分は、磁性体セラミックの表面部分であり、半田濡れ性が極めてわるく、半田層は形成されない。
【0038】
次に、電子部品素体11の内部電極25e、25fが導出した端面を含む端部以外の部分が陰になるように電子部品素体11を治具にセットした。電子部品素体11をセットした治具を真空チャンバにセットし、この真空チャンバ内を1.3×10-3Pa前後の気圧に減圧した。この状態で、EBガンにより蒸発源にセットした材料を、加熱、蒸発させて、前記電子部品素体11の端部に真空蒸着した。
【0039】
この真空蒸着工程において、金属材料が入ったるつぼを回転機構により回転し、校正された水晶振動子膜厚計により膜厚をモニタリングしながら、次に説明する3種類の金属材料を順次連続して成膜した。まずCrを50nm前後の膜厚に成膜し、アンカー層を形成した。このアンカー層の上にNiを1μm前後の膜厚に成膜し、耐半田層を形成した。次にSnを1.5μmの膜厚に成膜し、半田濡れ層を形成した。これにより、外部電極が形成され、積層セラミックインダクタが完成した。なお、真空チャンバは常に常温に維持した。
【0040】
こうして製造された約1,000個の積層セラミックインダクタのから無作為に100個選択し、これを125℃の温度環境下に置き、その時間毎の外部電極間の直流抵抗値を測定し、その平均値を求めた。その結果、図6において「実施例1」として示したような結果が得られた。なお、図6では初期直流抵抗に対する各高温放置時間後の直流抵抗の差としての直流抵抗上昇値をもって示している。
【0041】
(実施例2)
前記実施例1と同様にして、約1.6mm×0.8mm×0.8mmの概ね長方体形の電子部品素体11を得た。
この電子部品素体11を260℃の温度で溶融されている共晶半田に3分間浸漬した。前述したように、半田が内部電極が電子部品素体11の表面に導出した導出部表面に付着し、中間層が形成され、この中間層はAg−Pb−Snの合金となり、その組成は内部電極25e、25fの導出部から中間層の表面にいくに従って連続的に変化する。また、この中間層は溶融半田が硬化してできたものであり、その表面は滑らかである。
【0042】
次に、電子部品素体11の内部電極25e、25fが導出した端面を含む端部以外の部分が陰になるように電子部品素体11を治具にセットした。電子部品素体11をセットした治具を真空チャンバにセットし、この真空チャンバ内を1.3×10-3Pa前後の気圧に減圧した。この状態で、EBガンにより蒸発源にセットした材料を、加熱、蒸発させて、前記電子部品素体11の端部に真空蒸着した。
【0043】
この真空蒸着工程においては、金属材料が入ったるつぼを回転機構により回転し、校正された水晶振動子膜厚計により膜厚をモニタリングしながら、次に説明する3種類の金属材料を順次連続して成膜した。まず、真空チャンバを205℃に加熱し、Crを50nm前後の膜厚に成膜し、アンカー層を形成した。その後、真空チャンバを常温まで自然冷却した後、アンカー層の上にNiを1μm前後の膜厚に成膜し、耐半田層を形成した。次にSnを1.5μmの膜厚に成膜し、半田濡れ層を形成した。これにより、外部電極が形成され、積層セラミックインダクタが完成した。
【0044】
試料が205℃に保たれていることと、アンカー層を形成するためのCr分子が入射するときのエネルギーで、中間層を形成する半田がその融点より高い温度に加熱されるため、アンカー層を形成するCrと中間層を形成する半田とが相互拡散し、合金化する。
こうして製造された約1,000個の積層セラミックインダクタのから無作為に100個選択し、これを125℃の温度環境下に置き、その時間毎の直流抵抗値を測定し、その平均値を求めた。その結果、図6において「実施例2」として示したような結果が得られた。
【0045】
(比較例)
前記実施例1において、中間層を形成する工程を経ずに、同実施例1と同様にして電子部品素体11の端部に直接アンカー層、耐半田層、半田濡れ層からなる外部電極を形成し、積層セラミックインダクタを作った。
この電子部品についても、前記実施例と同様にして、約1,000個の積層セラミックインダクタのから無作為に選択した100個を125℃の温度環境下に置き、その時間毎の直流抵抗値を測定し、その平均値を求めた。その結果、図6において「比較例」として示したような結果が得られた。
【0046】
図8の結果から明らかな通り、実施例1と実施例2とでは、積層セラミックインダクタを125℃の温度環境下に置いたときでも、外部電極間の直流抵抗の上昇が小さい。これに対して、中間層を設けない比較例では、高温下での直流抵抗の増大が顕著に表れ、外部電極と内部電極間の接続抵抗の増大が推測される。
【0047】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明によれば、外部電極と内部電極との間に高抵抗の酸化層が形成されにくく、これによって内部電極と外部電極との電気的接続についても高い信頼性を得ることができる電子部品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による電子部品の例としての積層セラミックコンデンサを示す一部縦断斜視図である。
【図2】同積層セラミックコンデンサの内部電極と外部電極との接続部分を模式的に示す要部格段縦断側面図である。
【図3】同積層セラミックコンデンサの電子部品素体の層構造を示す各層を分解して示した分解斜視図である。
【図4】電子部品の従来例としての積層セラミックコンデンサを示す一部縦断斜視図である。
【図5】同積層セラミックコンデンサの外部電極の層構造を模式的に示す要部格段縦断側面図である。
【図6】積層セラミックインダクタの例を示すその電子部品素体の分解斜視図である。
【図7】同積層セラミックインダクタの完成品を示す斜視図である。
【図8】本発明による実施例と比較例の積層セラミックインダクタにおける125℃の温度下での放置時間と外部電極間の直流抵抗上昇値との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
11 電子部品素体
12 セラミック層
13 内部電極
14 内部電極
15 外部電極
16 外部電極のアンカー層
17 中間層
Claims (9)
- 内部に導体膜からなる内部電極(13)、(14)を有する電子部品素体(11)と、この電子部品素体(11)の表面に導出された前記内部電極(13)、(14)に接続されるように同電子部品素体11の表面に形成された金属膜からなる外部電極(15)、(15)とを有する電子部品において、前記外部電極(15)、(15)が、電子部品素体(11)の表面に被着されるアンカー層(16)を有し、このアンカー層(16)と前記内部電極(13)、(14)との間に電子部品素体(11)をアンカー層(16)を形成する金属の融点近くの温度に保った状態で、その表面に導出した内部電極(13)、(14)に同内部電極(13)、(14)と相互拡散しやすい金属を被着して前記アンカー層(16)を設けることで形成された中間層(17)が設けられ、この中間層(17)は、少なくともその一部が前記内部電極(13)、(14)との相互拡散により合金化されていることを特徴とする電子部品。
- アンカー層(16)がCrまたはCrを含む合金からなることを特徴とする請求項(1に記載の電子部品。
- 中間層(17)が内部電極(13)、(14)より空隙が少ない金属層であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子部品。
- 中間層(17)は、内部電極(13)、(14)より酸化傾向が強いことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の電子部品。
- 中間層(17)は、外部電極(15)、(15)のアンカー層(16)との相互拡散により合金化されていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の電子部品。
- 内部電極(13)、(14)がAgを含む金属からなり、中間層(17)がAgと相互拡散しやすいSnまたはSnを含む合金からなることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の電子部品の製造方法。
- 内部に内部電極(13)、(14)を有する電子部品素体(11)の表面に導出された前記内部電極(13)、(14)に接続されるように同電子部品素体(11)の表面に金属膜からなる外部電極(15)、(15)を設けて電子部品を製造する方法において、前記外部電極(15)、(15)の電子部品素体(11)の表面に被着されるアンカー層(16)を形成するに当たり、電子部品素体(11)を前記アンカー層(16)を形成する金属の融点近くの温度に保った状態で、その表面に導出した内部電極(13)、(14)に同内部電極(13)、(14)と相互拡散しやすい金属を被着して前記アンカー層(16)を設けることで中間層(17)を形成することを特徴とする電子部品の製造方法。
- 中間層(17)を形成する工程が、電子部品素体(11)の表面に導出した内部電極(13)、(14)の表面に金属を乾式法により形成する工程であることを特徴とする請求項7に記載の電子部品の製造方法。
- 中間層(17)を形成する工程が、電子部品素体(11)の表面に導出した内部電極(13)、(14)の表面を溶融金属に浸漬し、この金属を硬化させる工程であることを特徴とする請求項7に記載の電子部品の製造方法。
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