JP4105350B2 - 防火区画形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、建物の火災時に、防火シャッターや防火扉等を用いずに、売場を構成するショーウィンドウ等を防火用の構造物として利用し、防火区画の形成、火災拡大を防止する防火区画形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
防火区画は、火災が建物全体に拡大することを防止するために、建物内部を複数の部分に区画して形成される。
従来、このような防火区画は、建物の躯体、即ち、各階層を仕切るスラブや、各階層毎の空間を仕切る壁を耐火構造にし、このうち壁(防火壁)に設けられる出入口用開口部には防火シャッター等を設けて閉鎖可能とすることにより、防火区画を形成していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
防火区画は、火災により発生する熱や煙を区画内に閉じ込め、区画外に流出させないことを目的としている。このため、火災発生時に区画内は高温となり、防火区画を構成する防火壁が高温となって避難や消火の障害となることがあった。また、防火区画内は火災による黒煙が充満し、視界が悪くなるため、防火区画内の様子を窺い知ることができず、避難や消火の障害となった。更に、防火シャッターや防火扉の閉鎖部分に物が置かれていた場合には、シャッター等が完閉できないことから、防火区画が形成されず、火災の拡大する危険があった。また、防火シャッターや防火扉は重量や寸法の大きな固定設備であるため、建物躯体への負担が大きく、建物内部のレイアウト変更に柔軟的に対応することができなかった。
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、建物内部において、売場を構成するショーウィンドウや棚を防火壁として利用することで、防火シャッターや防火扉等を用いることなく防火区画を形成することのできる防火区画形成方法を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明に係る請求項1記載の防火区画形成方法は、防火壁と、ガラス板からなるショーウィンドウとに包囲され、且つ前記防火壁又は前記ショーウィンドウには出入口用開口部が設けられた所定空間を、防火区画に形成する防火区画形成方法であって、前記出入口用開口部に沿って収納可能の耐火シートが取り付けられ、前記所定空間の天井に複数の微細水噴霧用ノズルが設けられ、火災発生時には、前記耐火シートを展開して前記所定空間を該耐火シート、前記防火壁、前記ショーウィンドウによって包囲した後、前記微細水噴霧用ノズルから微細水噴霧を放水することで、所定の厚みの微細水噴霧層を前記耐火シート、前記ショーウィンドウに沿って形成することを特徴とする。
【0005】
そして、微細水噴霧は、平均粒子径50〜400μmのものを放水する。また、放水圧力は、0.1〜10MPaの範囲が好適となる。
【0006】
この防火区画形成方法では、火災が発生すると、出入口用開口部が耐火シートによって閉鎖され、所定空間がこの耐火シート、防火壁、ショーウィンドウによって包囲される。その後、微細水噴霧用ノズルから微細水噴霧が放水されることで、所定の厚みの微細水噴霧層が耐火シート、ショーウィンドウに沿って形成され、微細水噴霧の浮遊、気化効果(作用)により火災熱流、輻射熱を遮断することで、耐火シート、ショーウィンドウが防火用の構造物として作用し、建物内の所定空間が防火区画となる。
【0007】
請求項2記載の防火区画形成方法は、ガラス板からなるショーウィンドウによって挟まれた通路空間を防火区画に形成する防火区画形成方法であって、前記通路空間の所定通路部分を他の通路空間から仕切る収納可能の耐火シートが該所定通路部分の天井に取り付けられ、前記所定通路部分の天井に複数の微細水噴霧用ノズルが設けられ、火災発生時には、前記耐火シートを展開して前記所定通路部分を該耐火シート、前記ショーウィンドウによって包囲した後、前記微細水噴霧用ノズルから微細水噴霧を放水することで、所定の厚みの微細水噴霧層を前記耐火シート、前記ショーウィンドウに沿って形成することを特徴とする。
【0008】
この防火区画形成方法では、火災が発生すると、通路空間の所定通路部分が耐火シートによって閉鎖され、所定通路部分がこの耐火シート、ショーウィンドウによって包囲される。その後、微細水噴霧用ノズルから微細水噴霧が放水されることで、所定の厚みの微細水噴霧層が耐火シート、ショーウィンドウに沿って形成され、微細水噴霧の浮遊、気化効果(作用)により火災熱流、輻射熱を遮断することで、耐火シート、ショーウィンドウが防火用の構造物として作用し、通路空間の所定通路部分が防火区画となる。
【0009】
請求項3記載の防火区画形成方法は、建物内の任意空間を防火区画に形成する防火区画形成方法であって、前記任意空間を建物内の他の空間と仕切る収納可能の耐火シートが該任意空間の天井に取り付けられ、該耐火シートに沿って前記任意空間の天井に複数の微細水噴霧用ノズルが所定間隔で並設され、火災発生時には、前記耐火シートを展開して前記任意空間を該耐火シートによって包囲した後、前記微細水噴霧用ノズルから微細水噴霧を放水することで、所定の厚みの微細水噴霧層を前記耐火シートに沿って形成することを特徴とする。
【0010】
この防火区画形成方法では、火災が発生すると、建物内の任意空間が耐火シートによって包囲される。その後、微細水噴霧用ノズルから微細水噴霧が放水されることで、所定の厚みの微細水噴霧層が耐火シートに沿って形成され、微細水噴霧の浮遊、気化効果(作用)により火災熱流、輻射熱を遮断することで、耐火シートが防火用の構造物として作用し、建物内の任意空間が防火区画となる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る防火区画形成方法の好適な実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る防火区画形成方法が採用される建物内の所定空間を表す斜視図である。
【0012】
ショッピングセンターや地下街等は、通路沿いに店舖が並ぶ形態を取ることが多い。店舗の通路面はガラス等を用いてショーウィンドウとし、その他の部分は防火壁とすることが多い。この実施の形態による防火区画形成方法を実施するための防火区画形成装置は、建物内の所定空間1に設備されている。所定空間1は、防火壁3と、ガラス板からなるショーウィンドウ5とに包囲され、且つ防火壁3又はショーウィンドウ5(図示の例ではショーウィンドウ5)には出入口用開口部7が設けられている。また、所定空間1の天井には、排煙口8が設けられている。
【0013】
所定空間1の天井には例えば巻き取り式等により展開可能の耐火シート9が出入口用開口部7に沿って取付けられ、耐火シート9は下端が下降されて床面に到達することで出入口用開口部7を閉鎖できるようになっている。耐火シート9は、火災時に下降されて出入口用開口部7を閉鎖し、火災による所定空間1からの煙の流出を防止する。
【0014】
また、所定空間1の天井には店舗境界部分となるショーウィンドウ5及び耐火シート9に沿って複数の微細水噴霧用ノズル11が所定間隔で並設され、微細水噴霧用ノズル11は例えば複数列(図示の例では2列)で設けられている。具体的には、微細水噴霧の噴出口が1つである微細水噴霧用ノズル11を10〜l00cmピッチで1列又は数列に並べる構成や、噴出口が複数形成される微細水噴霧用ノズル11を50〜300cmピッチで1列又は数列に並べる構成が考えられる。
【0015】
所定空間1には、消防法に従ってスプリンクラー用給水配管13が設置されている。微細水噴霧用ノズル11は噴霧用配管15に接続され、噴霧用配管15は所定空間1の手前で分岐されたスプリンクラー用給水配管13に、開閉制御弁17を介して接続されている。
【0016】
微細水噴霧用ノズル11からの放水は、スプリンクラー等の消防設備の作動に合わせて行われる。また、微細水噴霧用ノズル11からの放水は、消火設備と同時に行う他、煙感や熱感知センサーの情報で作動させたり、微細水噴霧用ノズル11近傍の温度が70℃を超えた場合等に、建築条件に合わせて行うことができる。
【0017】
このように構成される防火区画形成装置を用いての防火区画形成方法を説明する。
所定空間1内で火災が発生すると、先ず、出入口用開口部7が耐火シート9によって閉鎖され、所定空間1がこの耐火シート9、防火壁3、ショーウィンドウ5によって包囲される。
その後、微細水噴霧用ノズル11から微細水噴霧が放水される。
微細水噴霧がショーウィンドウ5及び耐火シート9に沿って放水されることで、所定の厚みの微細水噴霧層19がショーウィンドウ5、耐火シート9に沿って形成され、微細水噴霧の浮遊、気化効果(作用)により火災熱流、輻射熱を遮断することで、ショーウィンドウ5、耐火シート9が耐火性を有することになる。
即ち、従来では熱による破壊等の理由により防火のための構造物とならなかったショーウィンドウ5等が防火用の構造物として作用し、火災熱流、輻射熱、煙を遮断することになる。
これにより、防火壁3、防火シャッター、防火扉によらずに、建物内の所定空間1が防火区画として形成されることになる。
【0018】
また、火災が拡大する主原因は、火災から発生する熱気流と輻射熱により、出火点以外の場所にある可燃物が高温となり発火することにある。上述の防火区画形成方法は、微細水噴霧用ノズル11で放水される微細水噴霧の熱容量が小さい上、体積・表面積比が大きいため、火災気流に接触した際、瞬時に気化し、高温の火災気流を危険のない温度まで冷却する。
【0019】
同時に、気化しなかった微細水噴霧が、防火区画内に浮遊しながら沈降することにより、輻射熱の吸収散乱を行い、フラッシュオ一バーを防止するとともに、防火区画周辺の温度を火災拡大の危険のないレベルに保つ。これにより、防火区画の開口が未閉鎖若しくはガラスレベルの区画であっても、火災の拡大を防止することができる。
【0020】
また、上述の防火区画形成方法は、浮遊しながら沈降する微噴霧が、火災により発生する煙を吸着しながら落ち、防火区画内の黒煙を除去するため、視認性を高める効果もある。更に、火災気流を冷却するため、排煙口8に接続される排煙ダクト8aの煙の温度上昇を防止し、継続的な排煙を可能にするとともに、ダクト断熱処理の簡素化も可能になる。また、微細水噴霧は防火シャッターや防火扉に比べ、重量の荷重点を分散させることができるため、建築躯体への負荷を減らすことができる。また、噴霧用配管15を細い配管で天井や壁面内に配設できるため、建物内の有効利用空間を狭めなくて済む。そして、防火区画を小さく且つ防災安全上効果的な位置・形状に容易に設定できるため、火災時の煙や煤の拡大範囲を小さくすることができる。
【0021】
次に、本発明に係る防火区画形成方法の他の実施の形態を説明する。
この実施の形態による防火区画形成方法は、図2に示すように、通路空間21の所定通路部分23を、他の通路空間21から仕切る巻き取り式の耐火シート9を所定通路部分23の天井に取付ける。耐火シート9と、ショーウィンドウ5とに沿って所定通路部分23の天井に複数の微細水噴霧用ノズル11を所定間隔で並設する。
【0022】
そして、火災発生時には、耐火シート9の下端を床面に到達させて、所定通路部分23を耐火シート9、ショーウィンドウ5によって包囲した後、微細水噴霧用ノズル11から微細水噴霧を放水する。所定の厚みの微細水噴霧層が耐火シート9、ショーウィンドウ5に沿って形成され、微細水噴霧の浮遊、気化効果(作用)により火災熱流、輻射熱を遮断することで、これらの耐火シート9、ショーウィンドウ5が耐火性を有することになる。これにより、火災熱流、輻射熱、煙を遮断する防火用の構造物として作用し、通路空間の所定通路部分が防火区画となる。
【0023】
この防火区画形成方法では、通路上で火災が発生した場合、熱感煙感等の消火設備の感知に連動して、火災が発生した所定通路部分23の耐火シート9を下降させて、通路を遮断すると同時に、当該区画内の微細水噴霧用ノズル11から放水を行って防火区画を形成する。この所定通路部分23の微細水噴霧は、隣接する店舗内の火災に連動して作動するようにしてもよい。連動方法には、消火設備の作動と同時に連動させる他、微細水噴霧用ノズル11の放水時、設定遅延時間後、別個に取り付けたセンサーによって放水動作を行わせる等が考えられる。
【0024】
次に、本発明に係る防火区画形成方法の更に他の実施の形態を説明する。
この実施の形態による防火区画形成方法は、図3に示すように、建物内の任意空間31を、建物内の他の空間33と仕切る巻き取り式の耐火シート9を任意空間31の天井に取付ける。そして、耐火シート9に沿って任意空間31の天井に複数の微細水噴霧用ノズル11を所定間隔で並設する。
【0025】
そして、火災発生時には、耐火シート9の下端を床面に到達させて、任意空間31を耐火シート9によって包囲した後、微細水噴霧用ノズル11から微細水噴霧を放水する。所定の厚みの微細水噴霧層が耐火シート9に沿って形成され、微細水噴霧の浮遊、気化効果(作用)により火災熱流、輻射熱を遮断することで、これらの耐火シート9が耐火性を有することになる。これにより、火災熱流、輻射熱、煙を遮断する防火用の構造物として作用し、任意空間31が防火区画となる。
【0026】
なお、上述した各実施の形態において、火災時の煙流出を防止するための耐火シート9の代わりに、垂れ壁を設置するものであってもよい。
また、本発明による防火区画形成方法は、出火室内若しくは出入口用開口部7の外側天井に、自然又は機械式の排煙口8を設け、火災により発生する煙と同等以上の排気をこの排煙口8によって行うことで、高温煙の流出を阻止する排煙方法と組合せて用いてもよい。
【0027】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明に係る防火区画形成方法は、防火区画形成のために、防火壁、防火シャッター、防火扉を設けなくてもよいため、客先の要望にあわせた自由な防災設計が可能になる。また、防火区画内で火災が発生した場合には、微細水噴霧用ノズルから放水される微細水噴霧によって、火災空間を冷却する効果があり、隣接区画への輻射及び対流熱伝達等の熱移動が軽減できる。また、防火区画内では、初期避難時及び救援・消火活動時に、視認性を良好にでき、幅射熱量も少なくすることができる。更に、スプリンクラー用給水配管が利用できるので、設備の設置に必要な天井懐高を小さく抑えることができ、有効利用空間を狭めなくて済む。また、火災時の高温煙を冷却できるので、排煙能力を高めるとともに排煙設備の耐火性能軽減が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る防火区画形成方法が採用される建物内の所定空間を表す斜視図である。
【図2】本発明に係る防火区画形成方法が採用される通路空間の所定通路部分を表す平面図である。
【図3】本発明に係る防火区画形成方法が採用される建物内の任意空間を表す平面図である。
【符号の説明】
1…所定空間、3…防火壁、5…ショーウィンドウ、7…出入口用開口部、9…耐火シート、11…微細水噴霧用ノズル、19…微細水噴霧層、21…通路空間、23…所定通路部分、31…任意空間、33…建物内の他の空間
Claims (3)
- 防火壁と、ガラス板からなるショーウィンドウとに包囲され、且つ前記防火壁又は前記ショーウィンドウには出入口用開口部が設けられた所定空間を、防火区画に形成する防火区画形成方法であって、
前記出入口用開口部に沿って収納可能の耐火シートが取り付けられ、
前記所定空間の天井に複数の微細水噴霧用ノズルが設けられ、
火災発生時には、前記耐火シートを展開して前記所定空間を該耐火シート、前記防火壁、前記ショーウィンドウによって包囲した後、前記微細水噴霧用ノズルからショーウィンドウ及び耐火シートに沿って微細水噴霧を放水することで、所定の厚みの微細水噴霧層を前記耐火シート、前記ショーウィンドウに沿って形成することを特徴とする防火区画形成方法。 - ガラス板からなるショーウィンドウによって挟まれた通路空間を防火区画に形成する防火区画形成方法であって、
前記通路空間の所定通路部分を他の通路空間から仕切る収納可能の耐火シートが該所定通路部分の天井に取り付けられ、
前記所定通路部分の天井に複数の微細水噴霧用ノズルが設けられ、
火災発生時には、前記耐火シートを展開して前記所定通路部分を該耐火シート、前記ショーウィンドウによって包囲した後、前記微細水噴霧用ノズルからショーウィンドウ及び耐火シートに沿って微細水噴霧を放水することで、所定の厚みの微細水噴霧層を前記耐火シート、前記ショーウィンドウに沿って形成することを特徴とする防火区画形成方法。 - 請求項1または2の何れかに記載の防災区画形成方法において、
火災発生時に前記防火区画の排煙を行う
ことを特徴とする防火区画形成方法。
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