JP4105175B2 - 無線通信装置及び方法 - Google Patents
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Description
特に、本発明は、同一の周波数チャネルを用い、異なる複数の送信アンテナより独立なデータを送信し、複数の受信アンテナを用いて信号を受信し、各送受信アンテナ間の伝達関数行列をもとに受信局側でデータの復調を行うことにより無線通信を実現する高速無線アクセスシステムにおいて、回路規模を抑制しながら良好な伝送特性を実現するための受信技術に関する。
また、本発明は、特に、2.4GHz帯または5GHz帯を用いた高速無線アクセスシステムの伝送速度の高速化を行うためにおいて利用される。
これらのシステムでは、最大で54Mbpsの伝送速度を実現しているが、無線LANの普及に伴い更なる伝送速度の高速化が求められている。
そのための技術としては、MIMO (Multiple-Input Multiple-Output)技術が有力である。このMIMO技術とは、送信局側において複数の送信アンテナから同一チャネル上で異なる独立な信号を送信し、受信局側において同じく複数のアンテナを用いて信号を受信し、各送信アンテナ/受信アンテナ間の伝達関数行列を求め、この行列を用いて送信局側の各アンテナから送信された独立な信号を推定し、送信された信号におけるデータを再生するものである。
まず、送信局及び受信局の各アンテナ間にはN×M個の伝送のパスが存在し、第i送信アンテナから送信され第j受信アンテナで受信される場合の伝達関数をhj,iとし、これを第(j,i)成分とするM行N列の行列をHと表記する。さらに、第i送信アンテナからの送信信号をtiとし(t1, t2, t3,・・・,tN)を成分とする列ベクトルをTx、第j受信アンテナでの受信信号をrjとし(r1,r2,r3,・・・,rM)を成分とする列ベクトルをRx、第j受信アンテナの熱雑音をnjとし(n1,n2,n3,・・・nM)を成分とする列ベクトルをnと表記する。
この場合、以下に示す(1)式の関係が成り立つ。
Rx=H×Tx+n …(1)
ここでは、上記の(式1)に対し、伝達関数行列の逆行列H−1を求め、これを式の両辺の左から掛け合わせる処理を行う。この結果、以下の(2)式が得られる。
H−1×Rx=Tx+H−1×n …(2)
つまり、各受信アンテナで受信した信号を合成し、所望の送信アンテナ以外からの信号による干渉を除去する処理を行う場合、実際の送信信号ベクトルTxに微小な熱雑音H−1×nが加わった信号点が得られることになる。
ここで、送信信号として、BPSK、QPSK、16QAM、64QAM等の多値変調を施した信号を用いる場合は、送信信号として取り得る信号点(デジタル信号を多値変調によりマッピングした信号)は不連続である。
以上のZF法においては、熱雑音項H−1×nが十分に小さく、かつ各送信アンテナ毎の成分が、各送信アンテナ間において均等であると仮定できる場合、良好な信号再生の特性が期待できる。
しかし、一般にはこの仮定は成り立たず、ある伝達関数行列に対して受信アンテナ毎の熱雑音H−1×nの絶対値の期待値は異なる(各送信アンテナ間の送信特性が異なる)。
さらには、もし伝達関数行列Hが逆行列をもたない行列(ないしはその行列の行列式が非常に小さい)の場合、送信信号の推定が非常に不安定になる。
上述したような状況において、受信局における受信アンテナによる受信特性が大幅に劣化する可能性がある。
この様な問題点を解決するための方法として、最も特性的に優れた方法がMLD法と呼ばれる方式である。(非特許文献2参照)
またMLD法においては、送信信号として、取りえる全ての候補(全部でNmax N種)に対して、その信号が送信された場合の受信信号の予測を行い、それらの中で最も実際の受信信号に近いものを推定精度の最も高い信号点として選択する。つまり、任意に選択された送信号候補Tx、例えば、第k番目の送信信号候補をTx[k]で表したとすると、以下に示す(3)式で定義されるユークリッド距離Eを最小にするkの値を選択する。
E=(Rx−H×Tx[k])H×(Rx−H×Tx[k]) …(3)
なお、行列Mに対してMHは、行列Mのエルミート共役である行列をさす。以上の処理により、MLD法は、如何なる行列Hに対しても、安定した受信処理が可能であり、ZF法に対して受信特性が大幅に改善する。
なお、ひとつの例として、送信局がN本の送信アンテナを用いてN系統のデータを送信する場合を例にとって説明する。
例えば、データ分割回路101は、第1系統のデータをプリアンブル付与回路102−1へ出力する。これにより、プリアンブル回路102−1は、プリアンブル信号が付与された状態で変調回路103−1(Chl) に入力される。
変調回路103−1においては、入力されるプリアンブル信号が付与されたデータに対して、所定の変調(BPSK、QPSK、16QAM、64QAM等の多値変調)を実施し、変調された送信信号を無線部104−1へ出力する。
また、上述した「Ch1」の系と同様に、データ分割回路101の出力する第2系統目のデータを、プリアンブル付与回路102−2,変調回路103−2(Ch2),無線部104−2,及び無線部104−2において処理され、アンテナ105−2から送信される。
同様に、上述した「Ch1」及び「Ch2」の系と同様に、データ分割回路101の出力する第N系統のデータを、プリアンブル付与回路102−N,変調回路103−N(ChN),無線部104−N,及び無線部104−Nにおいて処理され、アンテナ105−Nから送信される。
これにより、データ分割回路101により分割された送信するデータが、異なるアンテナ(105−1〜105−N)からそれぞれ個別に送信される。
受信局の受信部は、受信アンテナ111−1〜111−M、無線部112−1〜112−M、チャネル推定回路113、受信信号管理部114、伝達関数行列管理回路115、信号検出回路116、データ合成回路117から構成されている。
また、第1の受信アンテナ111−11から第Mの受信アンテナ111−Mは、それぞれ個別に受信信号を受信する。
そして、チャネル推定回路113は、上記パケットにおける送信側で付与した所定のプリアンブル信号の受信状況から、各送信アンテナ105−1〜105−Nと、受信アンテナ111−1〜111−M間の伝達関数を取得する(予めプリアンブル信号におけるパイロットデータが送受信部双方で決められており、このパイロットデータの受信状況により伝達関数を求める)。
チャネル推定回路113は、取得された各伝達関数の情報hj,iが伝達関数行列管理回路115に出力するとともに、プリアンブル信号に後続するデータ信号を、1シンボルづつ受信信号管理回路114へ出力する。
ここで、伝達関数行列管理回路115は、チャネル推定回路113から入力されるhj,iから構成される行列を伝達関数行列Hとして管理する。
信号検出回路116から出力された推定送信信号としてのデータは、複数シンボルに渡り連続的に、時系列に処理されるが、一連のデータを受信後、データ合成回路117にてシンボルを合成しデータとして再構成し、出力される。
S.Kurosaki et. al.,"A SDM-COFDM Scheme Employing a Simple Feed-Forward Inter-Channel Interference Canceller for MIMO Based Broadband Wireless LANs",IEICE TRANS. COMMUN・, Vol.E86 B. No.l, January, 2003 A.van Zelst et.al.,"Space Division Multiplexing (SDM) for OFDM Systems", Proc・ VTC2000 Spring, Vol. 2, pp.1070 -1074
例えば、送受信アンテナ数が3でMIMO多重数も同じく3の場合を例にとり説明する。ある時刻(シンボル)で、3つの送信アンテナから送信された信号を各成分とする3行1列の列ベクトルをT1とする。また、この信号に対する3つの受信アンテナでの受信信号を各成分とする列ベクトルをR1とする。同様に、別の時刻の送信信号及び受信信号の組み合わせとしてT2とR2、T3とR3が得られたとする。この時の伝達関数行列(3行3列)がHであったとする。送信信号のベクトルT1、T2、T3を各列に配置した3行3列の送信信号のレプリカ行列をTrepと表記し、さらに受信信号のベクトルR1、R2、R3を各列に配置した3行3列の受信信号の行列をRrepと表記すると、以下の(4)式が与えられる。
Rrep=H・Trep+ N …(4)
ここで最後の項は熱雑音に関する行列である。したがって、この項を無視すれば、以下の(6)式で伝達関数行列を推定可能である。
H ≒ Rrep・Trep -1 …(5)
したがって、受信信号をもとに構成した受信信号行列と、送信信号のレプリカ行列の逆行列の乗算から、その瞬間の伝達関数行列を推定することは可能である。
また、伝達関数行列管理回路115は、このレプリカ行列に対応する時刻の受信信号行列を、受信信号管理回路14に記憶されている受信信号行列群から読み出す。
そして、伝達関数行列管理回路115は、受信信号行列の右からレプリカ行列の逆行列を乗算することにより、伝達関数推定行列を求める。
このように、伝達関数行列管理回路115は、所定の時間毎にその時点で記憶されている伝達関数行列Hを、求めた上記伝達関数推定行列に置き換えることにより、伝達関数行列(すなわちチャネル)のトラッキングを行うことが可能となる。
しかしながら、このチャネルトラッキングの方法は、使用するレプリカ行列の特性に推定精度が依存するとともに、レプリカ行列を求めるために複数のシンボルが必要となり、更新周期も複数シンボル周期以上必要となり、リアルタイムでのチャネルトラッキングに対応できないという欠点がある。さらに、ある時刻の送信信号ベクトルが、他の時刻のひとつまたは複数の送信信号ベクトルの線形結合で表わされる場合、送信信号のレプリカ行列は逆行列をもたないことになる。この場合には、伝達関数行列を求めることができず、更新処理は行うことができない。
従って、本発明の目的は、MIMO技術を用いた無線通信を行う際に、従来例に比較して短いシンボル周期にて、高速かつ推定精度の高いチャネルトラッキングを、現実的な回路規模及び演算量にて実現可能な無線通信装置を提供することにある。
前記N系統に分割されたデータに個別の既知のパターンの信号を付与してN系統の信号系列を生成する信号系列生成手段と、N本の前記送信アンテナを用いて同一周波数にて同時に前記信号系列を重畳して送信する信号送信手段とを備え、前記受信局は、M本の前記受信アンテナを用いて個別に無線信号を受信する信号受信手段と、受信信号に付与された前期既知のパターンの信号を参照信号として、前記送信アンテナのうちの第iアンテナと前記受信アンテナのうちの第jアンテナとの間のM×N組の伝達関数hj,iを取得する伝達関数取得手段と、該伝達関数hj,iを第(j,i)成分とするM行N列の行列すなわち伝達関数行列をH、N系統の信号系列の送信信号をN行1列の送信信号列ベクトルT、M本のアンテナで受信されたシンボル単位の受信信号をM行1列の受信信号列ベクトルRと表記した際に、各シンボル毎に該伝達関数行列H、および該受信信号列ベクトルRを用いて前記送信局が送信した送信信号列ベクトルTの推定値である推定送信信号列ベクトルT'を取得する送信信号推定手段と、N行N列の行列であり且つ該行列の所定の第k(1≦k≦N:kは整数)列目の成分の値が全て定数C(Cは任意の実数または複素数)である試験行列Uおよび該行列の逆行列U−1を記憶する試験行列記憶手段と、
前記推定送信信号列ベクトルT'のN個の各成分を対角成分とし且つ非対角成分が全てゼロであるN行N列の正方対角行列Dを生成する対角行列生成手段と、該正方対角行列Dの逆行列D−1を求める逆行列取得手段と、前記伝達関数行列Hと前記正方対角行列Dと前記試験行列Uの積すなわちM行N列の行列H・D・Uを求める第1の行列乗算手段と、前記受信信号列ベクトルRの各成分を前記定数C倍する変換受信信号列ベクトルR'を生成し、M行N列の該行列のk行目を該変換受信信号列ベクトルR'で置き換えたレプリカ行列Hrepを生成するレプリカ行列生成手段と、該レプリカ行列Hrepと前記試験行列の逆行列U−1と前記正方対角行列D−1の積すなわちM行N列の行列Hrep・U−1・D−1を求める第2の行列乗算手段と、該行列と前記伝達関数行列の線形結合として新規伝達関数行列を生成する新規伝達関数行列生成手段と、それまでの受信処理に用いていた伝達関数行列を該新規伝達関数行列に更新する伝達関数更新手段とを備えたことを特徴とする。
これにより、MIMOによる通信装置にて、パケット長の長いパケットを受信する際、プリアンブルにて推定した伝達関数の時間経過による変動のトラッキング処理(チェンネルトラッキング)を、1つのシンボルを入力したタイミングで、簡易な行列演算にて行うことが可能となり、従来のトラッキング方式のように、複数シンボルを用いた処理に比較し、短い周期にてチェンネルトラッキングが行えるため、複数シンボル間の伝達関数の変動要因を含むことなく、より精度の高い伝達関数を推定することができる。
本発明では、試験行列Uの逆行列を用いるが、この逆行列には、行列Uの行列式の逆数が係数として乗算される。
上記の条件を行列Uに適用することにより、この係数を小さな値に抑えることができ、その結果として不要なノイズの増幅を抑えながらチャネル推定が可能となる。
これにより、本発明の無線通信装置は、伝達関数の急激な変化を抑制、すなわち、新規に推定される伝達関数行列Hrep・U−1・D−1がノイズ等の影響により、低い推定精度であり実際の伝達関数と大幅に異なる場合に、完全に入れ替えてしまうことによる通信特性の大幅な低下を防止し、誤り訂正が行える程度の通信品質を有する伝達関数の調整、すなわちチャネルトラッキングが行える。
これにより、本発明の無線通信装置は、推定される推定送信信号列ベクトルの絶対値が大きい場合、受信される受信信号強度が高いので、推定される伝達関数がより実際の伝達関数に近い、すなわち推定精度が高いことが考えられるため、忘却係数μを大きくし、一方、推定される推定送信信号列ベクトルの絶対値が小さい場合、受信される受信信号強度が低いのでノイズの影響を強く受けることが考えられ、推定される伝達関数が実際の伝達関数と異なる、すなわち推定精度が低いことが考えられるため、忘却係数μを小さくすることにより、チャネルトラッキングの精度を向上させることができる。
特にMIMO技術とOFDM技術を適用し、受信側でMLD法ないしはそれに準ずる手法にて受信処理を行う場合、チャネルトラッキング処理を行う際に、非常に多数の行列計算を行う必要が出てくるが、これを簡易かつ回路規模が小さな回路にて近似処理を行うことにより、回路規模の削減、更には消費電力の抑制が可能となる。
この結果、本発明によれば、回路規模を大幅に削減することができるため、受信回路を1チップのLSI内に実装することが可能となる。また、上述した回路規模の縮小及び演算量の削減は、直接、消費電力を削減するという副次的な効果も期待できる。
以下、本発明の実施形態について、図を参照して説明する。本発明と従来技術の差分は受信部の構成にあり、本発明の送信側の構成は、すでに説明した従来例と共通である。
したがって、以下には受信局のみに関する説明を行う。なお、従来方式と同様に、送信局がN本の送信アンテナを用いてN系統のデータを送信する場合をひとつの例として用いる。
図1に示す本発明と図3に示す従来例との差異は、対角行列生成回路1,対角逆行列生成回路2,第1行列乗算回路3,試験行列記憶回路4,受信信号変換回路5,レプリカ行列生成回路6,第2行列生成回路7,新規伝達関数行列生成回路8及び伝達関数行列更新制御回路9を新たに設けた点にある。以下、新たに設けられた回路についての説明を行う。
無線部112−1〜112−Mは、それぞれ第1の受信アンテナ111−1,第2の受信アンテナ111−2,…,第Mの受信アンテナ111−Mが個別に受信した受信信号を入力し、増幅及びノイズ除去などの信号処理を行い、チャネル推定回路113へ出力する。
チャネル推定回路113は、送信側において付与された既知のパターンデータからなるプリアンブル信号を参照信号とし、この参照信号の受信状況から、すでに述べたように、N本の送信アンテナi(1≦i≦N)と各受信アンテナj(1≦j≦M)との間のM×N組の伝達関数(hj,i)を取得し、伝達関数行列管理回路115に出力する。
伝達関数行列管理回路115は、入力される伝達関数(hj,i)を行列の成分とする、M行N列の行列である伝達関数行列Hとして管理する。
信号検出回路116では、伝達関数行列管理回路115で管理された伝達関数行列と、受信信号管理回路114で管理する受信信号ベクトルRxの関係から、最も確からしいと思われる推定送信信号Tx(N本のアンテナで送信されたシンボル単位のN行1列の推定送信信号列ベクトル)を求めて、対角行列生成回路1へ出力する。この際の送信信号の推定方法は、従来技術で説明したように非特許文献1及び非特許文献2などで規定された方法を含め、その他の方式を用いても構わない。
対角行列生成回路1は、上記推定送信信号列ベクトルTxのN個の各成分を対角成分とした、非対角成分が全て「0」であるN行N列の正方対角行列Dを生成する。
ここで、Tx{t1,t2,…,tN}とした場合、正方対角行列Dの対角成分は{d11,d22,…,dNN}={t1,t2,…,tN}である。
対角逆行列生成回路2は、所定の計算により上記正方対角行列Dの逆行列D−1を生成する。なお、この逆行列は各対角成分をその値の逆数に置き換えることにより簡単に求めることが可能である。
ここで、正方対角行列Dと試験行列Uとを乗算することにより、正方行列Dの対角成分{t1,t2,…,tN}各々に、試験行列Uの列成分が乗算されることにより、試験行列Uの列成分に対応したTx1,Tx2,Tx3,…,TxNを列成分とする仮想送信信号行列が求められることとなる。ここで、この試験行列Uの1列目は全て定数1となっている。このため、仮想送信信号行列の1列目は、信号検出回路116で推定した送信信号ベクトルとなっている。また、仮想送信信号行列のその他の列ベクトルは、送信信号ベクトルに試験行列の各要素が乗算された信号となっている。
この様に、正方対角行列Dと試験行列Uとの積が仮想送信信号行列とみなすと、上記行列H・D・Uは仮想送信信号に対する仮想受信信号行列となる。
レプリカ行列生成回路6は、M行N列の上記仮想受信信号行列のk行目(1≦k≦M、kは整数)を上記変換受信信号列ベクトルRx'で置き換える処理を行い、変換受信信号列ベクトルRx'の各成分が、それぞれの列成分となるレプリカ行列Hrepを生成する。なお、この例では、試験行列の1列目が全て1であり、変換受信信号列ベクトルRx'で置き換える処理は、仮想受信信号行列の1列目に対して行う。
第2の行列乗算回路7は、試験行列記憶回路4から試験行列Uの逆行列U−1を読み出し、上記レプリカ行列Hrepと、読み出した逆行列U−1と、正方対角行列Dの逆行列D−1とを乗算して、M行N列の行列Hrep・U−1・D−1を求める。
すなわち、第2の行列乗算回路7は、受信信号のレプリカ行列Hrepに対して、仮想送信信号行列の逆行列を乗算して、新規の推定伝達関数行列Hestを算出する。
Hnew = (1−μ)・Hnow + μ・Hest …(6)
上記(4)式により、所定の忘却係数μを乗算した推定伝達関数行列Hestと、「1−μ」を乗算した伝達関数行列Hnowとを加算することにより線形結合させ、推定された推定伝達関数行列Hestをそのまま用いて置き換えるのではなく、直前の成分を残しつつ緩やかに調整する。
伝達関数行列更新制御回路9は、伝達関数行列管理回路115において、得られた伝達関数行列Hnewを伝達関数行列Hnowに上書きし、これを新たな伝達関数行列Hnowとする。なお、得られた伝達関数行列Hnewが推定精度として不十分であった場合には伝達関数行列Hnowの置き換えを保留するなど、必要に応じて置き換えの実施を制御することも可能である。
ここで、説明を簡略化するため、例えば、送信アンテナを4本及び受信アンテナを4本として、すなわち、送信部は送信アンテナ105−1〜105−4を有し、受信部は受信アンテナ111−1〜111−4を有しており、他の構成もこのアンテナ数に対応して構成されている。
送信部が送信アンテナ105−1〜105−4から個別にデータを発信する。
これにより、無線部112−1〜112−4は、それぞれ第1の受信アンテナ111−1〜第4の受信アンテナ111−4が個別に受信した受信信号Rx{r1,r2,r3,r4}を入力し、増幅及びノイズ除去などの信号処理を行い、チャネル推定回路113へ出力する。
次に、チャネル推定回路113は、送信側において付与された既知のパターンデータからなるプリアンブル信号を参照信号とし、この参照信号の受信状況から、すでに述べたように、4本の各送信アンテナi(1≦i≦4)と4本の各受信アンテナj(1≦j≦4)との間の4×4組の伝達関数(hj,i)を取得し、伝達関数行列管理回路115に出力して管理させる。
次に、信号検出回路116は、受信信号管理回路114から受信信号ベクトルRxを読み出し、また、伝達関数行列管理回路115から伝達関数行列Hnowを読み出し、送信信号の推定値を求め、4行1列の推定送信信号列ベクトルTx{t1、t2、t3、t4}を出力する。
次に、第1の行列乗算回路3は、試験行列記憶回路4から試験行列Uを読み出し、下記の(7)式に示すように、正方対角行列Dに対して、試験行列U((7)式における行列U)を右側から乗算して、仮想送信信号行列Trを求める。
そして、第1の行列乗算回路3は、この仮想送信信号行列Trの左から、伝達関数行列管理回路115から読み出したHnowを乗算して、すなわち4行4列の行列Hnow・D・U、すなわち仮想受信信号行列Rrを計算する。
そして、レプリカ行列生成回路6は、下記に示す(8)式のように、4行4列の上記受信信号行列Rrの1列目を上記変換受信信号列ベクトルRx'で置き換える処理を行い、レプリカ行列Hrepを生成する。
そして、第2行列算出回路7は、試験行列記憶回路4から試験行列Uの逆行列U−1を読み出し、以下の(9)式に示すように、この逆行列U−1を正方対角行列Dの逆行列D−1の左側から乗算して、仮想送信信号行列Trの逆行列Tr−1(=U−1・D−1)を算出する。
そして、新規伝達関数行列生成回路8は、伝達関数行列管理回路115に現在記憶されている伝達関数行列Hnowを読み出し、所定の忘却係数μを用いて、新たに伝達関数行列管理回路115に記憶させる伝達関数行列Hnewの計算を行う。
次に、伝達関数行列更新制御回路9は、伝達関数行列管理回路115において、得られた伝達関数行列Hnewを伝達関数行列Hnowに上書きし、新たな伝達関数行列Hnowとする。
また、伝達関数行列の推定精度は、仮想送信信号行列(送信信号レプリカ行列)の行列式に依存して変動すると予想されるが、4×4の行列の行列式を直接計算するには多くの乗算回路が必要となり、回路規模とともに演算の負荷が大きくなる。
しかしながら、上述した実施形態の場合、仮想送信信号行列の行列式は、この値が4つの信号点である仮想送信信号列ベクトルTx{t1,t2,t3,t4}の絶対値(ベクトベルの大きさ)の積に比例することになる。
Hnew = (1−μ(|t1*t2*t3*t4|))・Hnow
+ μ(|t1*t2*t3*t4|)・Hest …(10)
また、伝達関数行列更新制御回路9は、単純に生成された伝達関数Hnewを用いて伝達関数Hestと置き換えても良いし、何らかの条件(例えば、受信信号レベルの強度)を付加して更新してもよい。
特に、全要素に係数として1/2を乗算した行列を例として考えると、この行列は上記の性質以外にも、元の行列とそのエルミート共役な行列(転置して複素共役をとったもの)の積が単位行列となっているという性質を併せて有している。この様な特徴を有する行列はユニタリー行列と呼ばれている。上記のような性質を有する試験行列の候補は多数存在するが、その中の任意の行列を試験行列として利用することができる。
以上述べた実施形態は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様及び変更態様で実施することが出来る。
したがって、本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
2・・・対角逆行列生成回路
3・・・第1の行列乗算回路
4・・・試験行列記憶回路
5・・・受信信号変換回路
6・・・レプリカ行列生成回路
7・・・第2の行列演算回路
8・・・新規伝達関数行列生成回路
9・・・伝達関数行列更新制御回路
101・・・データ分割回路
102−1,102−2,102−N・・・プリアンブル付与回路
103−1,103−2,103−N・・・変調回路
104−1,104−2,104−N・・・無線部
105−1,105−2,105−M・・・送信アンテナ
111−1,111−2,111−M・・・受信アンテナ
112−1,112−2,112−M・・・無線部
113・・・チャネル推定回路
114・・・受信信号管理回路
115・・・伝達関数行列管理回路
116・・・信号検出回路
117・・・データ合成回路
Claims (7)
- 同一周波数チャネル上で複数の信号系列を空間上で多重化して送信するN(N≧2、Nは整数)本の送信アンテナを備えた送信局と、送信された無線信号を受信し前記複数の信号系列に分離して受信処理を行うM本(M≧1、Mは整数)の受信アンテナを備えた受信局により構成されたMIMO(Multiple Input Multiple Output)通信が可能な無線通信システムにおいて、
前記送信局は、
ユーザデータをN系統に分割するユーザデータ分割手段と、
前記N系統に分割されたデータに個別の既知のパターンの信号を付与してN系統の信号系列を生成する信号系列生成手段と、
N本の前記送信アンテナを用いて同一周波数にて同時に前記信号系列を重畳して送信する信号送信手段とを備え、
前記受信局は、
M本の前記受信アンテナを用いて個別に無線信号を受信する信号受信手段と、
受信信号に付与された前期既知のパターンの信号を参照信号として、前記送信アンテナのうちの第iアンテナと前記受信アンテナのうちの第jアンテナとの間のM×N組の伝達関数hj,iを取得する伝達関数取得手段と、
該伝達関数hj,iを第(j,i)成分とするM行N列の行列すなわち伝達関数行列をH、N系統の信号系列の送信信号をN行1列の送信信号列ベクトルT、M本のアンテナで受信されたシンボル単位の受信信号をM行1列の受信信号列ベクトルRと表記した際に、
各シンボル毎に該伝達関数行列H、および該受信信号列ベクトルRを用いて前記送信局が送信した送信信号列ベクトルTの推定値である推定送信信号列ベクトルT'を取得する送信信号推定手段と、
N行N列の行列であり且つ該行列の所定の第k(1≦k≦N:kは整数)列目の成分の値が全て定数C(Cは任意の実数または複素数)である試験行列Uおよび該行列の逆行列U−1を記憶する試験行列記憶手段と、
前記推定送信信号列ベクトルT'のN個の各成分を対角成分とし且つ非対角成分が全てゼロであるN行N列の正方対角行列Dを生成する対角行列生成手段と、
該正方対角行列Dの逆行列D−1を求める逆行列取得手段と、
前記伝達関数行列Hと前記正方対角行列Dと前記試験行列Uの積すなわちM行N列の行列H・D・Uを求める第1の行列乗算手段と、
前記受信信号列ベクトルRの各成分を前記定数C倍する変換受信信号列ベクトルR'を生成し、M行N列の該行列のk行目を該変換受信信号列ベクトルR'で置き換えたレプリカ行列Hrepを生成するレプリカ行列生成手段と、
該レプリカ行列Hrepと前記試験行列の逆行列U−1と前記正方対角行列D−1の積すなわちM行N列の行列Hrep・U−1・D−1を求める第2の行列乗算手段と、
該行列と前記伝達関数行列の線形結合として新規伝達関数行列を生成する新規伝達関数行列生成手段と、
それまでの受信処理に用いていた伝達関数行列を該新規伝達関数行列に更新する伝達関数更新手段とを
備えたことを特徴とする無線通信システム。 - 前記請求項1記載の無線通信装置において、
前記試験行列Uは、該行列を構成する各列ベクトルがお互いにそれぞれ直交していることを特徴とする無線通信システム。 - 前記請求項2記載の無線通信装置において、
前記試験行列Uは、ユニタリ行列またはユニタリ行列の各成分を定数倍した行列であることを特徴とする無線通信システム。 - 前記請求項1から請求項3のいずれかに記載の無線通信装置において、
前記新規伝達関数行列生成手段は、忘却係数μ(0<μ≦1:μは実数)を用い、前記伝達関数Hの(1−μ)倍と行列Hrep・U−1・D−1のμ倍を線形合成することにより新規伝達関数行列を生成する
ことを特徴とする無線通信システム。 - 前記請求項4に記載の無線通信装置において、
前記忘却係数μは、前記推定送信信号列ベクトルT'の絶対値に比例して動的に変更することを特徴とする無線通信システム。 - 同一周波数チャネル上で複数の信号系列を空間上で多重化して送信するN(N≧2、Nは整数)本の送信アンテナを備えた送信局から、MIMO(Multiple Input Multiple Output)通信方式により送信された無線信号を受信し、前記複数の信号系列に分離して受信処理を行うM本(M≧1、Mは整数)の受信アンテナを備えた受信装置であり、
M本の前記受信アンテナを用いて個別に無線信号を受信する信号受信手段と、
受信信号に付与された前期既知のパターンの信号を参照信号として、前記送信アンテナのうちの第iアンテナと前記受信アンテナのうちの第jアンテナとの間のM×N組の伝達関数hj,iを取得する伝達関数取得手段と、
該伝達関数hj,iを第(j,i)成分とするM行N列の行列すなわち伝達関数行列をH、N系統の信号系列の送信信号をN行1列の送信信号列ベクトルT、M本のアンテナで受信されたシンボル単位の受信信号をM行1列の受信信号列ベクトルRと表記した際に、
各シンボル毎に該伝達関数行列H、および該受信信号列ベクトルRを用いて前記送信局が送信した送信信号列ベクトルTの推定値である推定送信信号列ベクトルT'を取得する送信信号推定手段と、
N行N列の行列であり且つ該行列の所定の第k(1≦k≦N:kは整数)列目の成分の値が全て定数C(Cは任意の実数または複素数)である試験行列Uおよび該行列の逆行列U−1を記憶する試験行列記憶手段と、
前記推定送信信号列ベクトルT'のN個の各成分を対角成分とし且つ非対角成分が全てゼロであるN行N列の正方対角行列Dを生成する対角行列生成手段と、
該正方対角行列Dの逆行列D−1を求める逆行列取得手段と、
前記伝達関数行列Hと前記正方対角行列Dと前記試験行列Uの積すなわちM行N列の行列H・D・Uを求める第1の行列乗算手段と、
前記受信信号列ベクトルRの各成分を前記定数C倍する変換受信信号列ベクトルR'を生成し、M行N列の該行列のk行目を該変換受信信号列ベクトルR'で置き換えたレプリカ行列Hrepを生成するレプリカ行列生成手段と、
該レプリカ行列Hrepと前記試験行列の逆行列U−1と前記正方対角行列D−1の積すなわちM行N列の行列Hrep・U−1・D−1を求める第2の行列乗算手段と、
該行列と前記伝達関数行列の線形結合として新規伝達関数行列を生成する新規伝達関数行列生成手段と、
それまでの受信処理に用いていた伝達関数行列を該新規伝達関数行列に更新する伝達関数更新手段とを
備えたことを特徴とする受信装置。 - 同一周波数チャネル上で複数の信号系列を空間上で多重化して送信するN(N≧2、Nは整数)本の送信アンテナを備えた送信局から、MIMO(Multiple Input Multiple Output)通信方式により送信された無線信号を、前記複数の信号系列に分離して受信処理を行うM本(M≧1、Mは整数)の受信アンテナにより受信する受信方法であり、
M本の前記受信アンテナを用いて個別に無線信号を受信する信号受信過程と、
受信信号に付与された前期既知のパターンの信号を参照信号として、前記送信アンテナのうちの第iアンテナと前記受信アンテナのうちの第jアンテナとの間のM×N組の伝達関数hj,iを取得する伝達関数取得過程と、
該伝達関数hj,iを第(j,i)成分とするM行N列の行列すなわち伝達関数行列をH、N系統の信号系列の送信信号をN行1列の送信信号列ベクトルT、M本のアンテナで受信されたシンボル単位の受信信号をM行1列の受信信号列ベクトルRと表記した際に、
各シンボル毎に該伝達関数行列H、および該受信信号列ベクトルRを用いて前記送信局が送信した送信信号列ベクトルTの推定値である推定送信信号列ベクトルT'を取得する送信信号推定過程と、
N行N列の行列であり且つ該行列の所定の第k(1≦k≦N:kは整数)列目の成分の値が全て定数C(Cは任意の実数または複素数)である試験行列Uおよび該行列の逆行列U−1を試験行列記憶手段に記憶する試験行列記憶過程と、
前記推定送信信号列ベクトルT'のN個の各成分を対角成分とし且つ非対角成分が全てゼロであるN行N列の正方対角行列Dを生成する対角行列生成過程と、
該正方対角行列Dの逆行列D−1を求める逆行列取得手段と、
前記伝達関数行列Hと前記正方対角行列Dと前記試験行列Uの積すなわちM行N列の行列H・D・Uを求める第1の行列乗算過程と、
前記受信信号列ベクトルRの各成分を前記定数C倍する変換受信信号列ベクトルR'を生成し、M行N列の該行列のk行目を該変換受信信号列ベクトルR'で置き換えたレプリカ行列Hrepを生成するレプリカ行列生成過程と、
該レプリカ行列Hrepと前記試験行列の逆行列U−1と前記正方対角行列D−1の積すなわちM行N列の行列Hrep・U−1・D−1を求める第2の行列乗算過程と、
該行列と前記伝達関数行列の線形結合として新規伝達関数行列を生成する新規伝達関数行列生成過程と、
それまでの受信処理に用いていた伝達関数行列を該新規伝達関数行列に更新する伝達関数更新過程とを
有することを特徴とする受信方法。
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