〔実施の形態1〕
本発明の一実施形態について、以下で図面を参照して説明する。
本実施形態に係る画像表示装置の駆動装置は、液晶表示装置(TFT−LCD)の画素に電圧を印加して駆動することによって画像を表示させるものである。なお、本発明は本実施形態に限るものではなく、画素に印加する電圧値で階調表示を制御するディスプレイ装置にも適用できる。
図2に、上記液晶表示装置のパネルの1画素(単位画素)の回路図を示す。上記液晶表示装置には、このような単位画素がパネル全体に渡ってマトリクス状に設けられている。
また、図2は、本実施形態に係る画像表示装置の駆動装置の一部を示すものでもある。すなわち、本実施形態に係る画像表示装置の駆動装置は、1画素を駆動するために、画素ごとに備えられる画素電極と、上記画素電極に接続された画素スイッチング素子に走査線電圧を印加してオン状態とオフ状態とを切り換える走査線と、上記画素電極に信号線電圧を印加する信号線と、上記画素電極との間に挟持される上記画素に共通電圧を印加する共通電極とを備えている。
ここで、上記画素電極とは、Clcで示されるコンデンサの、ドレイン側の極板に相当する。そして、画素電極に接続された画素スイッチング素子とは、図示されているトランジスタ(TFT(Thin Film Transistor))に相当する。また、上記共通電極とは、Clcで示されるコンデンサのCOM側の極板に相当する。なお、画素は、Clcで示されるコンデンサの極板間に備えられるものであり、図2には示していない。また、画素容量として、液晶容量Clcの他に、補助容量Cs を図示している。
本実施形態においては、走査線には走査線電圧が、信号線には信号線電圧が、図2においてCOMで示される対向電極には共通電圧(コモン電位)Vcom が印加される。すなわち、トランジスタにおいて、走査線電圧はゲートに、信号線電圧はソースに印加されるようになっている。そして、ドレインの電圧と共通電極の共通電圧との差が、画素に印加されるようになっている。
これら走査線電圧、信号線電圧、共通電圧は、不図示の電圧駆動部によって生成される。電圧駆動部のうち、信号線電圧を生成する信号線駆動部の構成を、図3および図4に示す。
図3および図4に示すように、信号線駆動部は、Hカウンタ11、Hデコーダ12、Vカウンタ13、Vデコーダ14、タイミング調整器15、セレクタS1〜Sn、および電圧変換器C1〜Cnを含んでいる。
Hカウンタ11には、クロックCLKと水平同期信号HSYとが入力され、Hデコーダ12に信号を出力するようになっている。Vカウンタ13には水平同期信号HSYと垂直同期信号VSYとが入力され、Hデコーダ12およびVデコーダ14に信号を出力するようになっている。
Hデコーダ12には、Hカウンタ11およびVカウンタ13からの出力信号が入力される。Hデコーダ12からは、走査線信号用タイミングパルス(ゲートドライバ用クロック)CLSおよび共通電極信号用タイミングパルスREVCが出力される。
Vデコーダ14には、Vカウンタ13からの出力が入力される。
タイミング調整器15は、クロックCLKが入力されて、これらCLSまたはREVCに基づき、i個の信号である信号線信号用タイミングパルスREVD1ないしREVDiの全て(REVDと総称する)を、図4に示すセレクタS1〜
Snに出力するようになっている。
ここで、REVD1〜REVDiは、それぞれ、1階調〜i階調までのデータに対応する、信号線に印加する信号線電圧用のタイミングパルスである。本実施の形態では、信号線の波形の位相を、走査線または共通電極の波形の位相からずらすことで階調を表示しており、そのため、階調ごとにこの位相差が異なることになる。また、REVDは、REVCと同様な反転周期で反転するように設定する。つまり、REVDは、CLSと同様の周期となる。
セレクタS1〜Snには、REVDと、表示するための階調を示すデータとが入力される。そして、例えばセレクタSi(1≦i≦n)は、対応する信号線信号用タイミングパルスREVDiが入力されると、階調を示すデータをタイミング調整器15に出力するようになっている。
タイミング調整器15は、信号線の信号タイミング(REVD)を、CLSとの位相差で規定する場合は、図中、aで示す入力信号を選択する。タイミング調整器15は、信号線の信号タイミング(REVD)を、REVCとの位相差で規定する場合は、図中、bで示す入力信号を選択する。すなわち、タイミング調整器15は、aまたはbより選択した信号によって、REVDのタイミングを調整する。
このようにすることによって、信号線の信号と、走査線の信号または共通電極の駆動信号との位相差を設定でき、階調表示が可能となる。
また、本実施形態に係る画像表示装置の駆動装置においては、画素に充電を行う際に、ゲートとソースとの間の電位差を、交流駆動する場合の正極性の充電と負極性の充電とで同じにできる。ここで、画素に印加する交流電圧のうち、信号線電圧と共通電圧との差として正の電圧が画素に印加されている場合を、以降では正極性の書き込みと呼ぶ。逆に、信号線電圧と共通電圧との差として負の電圧が画素に印加されている場合を、以降では負極性の書き込みと呼ぶ。
したがって、本実施形態においては、信号線信号用タイミングパルスREVD1〜REVDiを、正極性の場合と負極性の場合とで同様に用いることができる。この点については、後述する。
次に、上記構成における、本実施形態に係る画像表示装置の駆動装置の動作について、図面を参照して説明する。
図1は、ある信号線における、走査線電圧、信号線電圧、共通電圧の時間変化を示すタイミングチャートである。Vgn-1 ,Vgn ,Vgn+1 は、それぞれn−1,n,n+1本目の走査線に印加される走査線電圧を示す。ソースは信号線電圧を示す。comは共通電圧を示す。
図示するように、本実施形態においては、走査線電圧のオン状態を示す値は、+15Vと+10Vの2値である。
図に示す期間Aは、上述の正極性の書き込みを行う期間である。期間Aにおいては、n+1本目の走査線の走査線電圧が+15Vでオン状態であり、走査線がn+1本目の画素には信号線電圧と共通電圧との差の5V−(−1V)=6Vが印加されている。ここで、期間Aのように、実際に画素に電圧を印加する期間の長さを、パルス幅と呼ぶこととする。
ここで、走査線電圧が+15Vであるのに対し、信号線電圧が+5Vであるので、正極性の書き込みにおいて、走査線電圧と信号線電圧との差は+10Vとなっている。
また、図に示す期間Bは、上述の負極性の書き込みを行う期間である。期間Bにおいては、n本目の走査線の走査線電圧が+10Vでオン状態であり、走査線がn本目の画素には信号線電圧と共通電圧との差の0V−(5V)=−5Vが印加されている。
ここで、走査線電圧が+10Vであるのに対し、信号線電圧が0Vであるので、負極性の書き込みにおいて、走査線電圧と信号線電圧との差は+10Vとなっている。
以上のように、本実施形態に係る画像表示装置の駆動装置においては、正極性の書き込みおよび負極性の書き込みのいずれにおいても、上記のように、走査線電圧と信号線電圧との差は+10Vとなっている。すなわち、正極性の書き込みおよび負極性の書き込みのいずれにおいても、トランジスタのゲートに印加される電圧とソースに印加される電圧との差は10Vであるので、トランジスタのオン抵抗に大きな差は生じない。
したがって、トランジスタを介する電流も、正極性の書き込みと負極性の書き込みとで同じとなる。よって、書き込みの際のパルス幅として、正極性の書き込みと負極性の書き込みとで同じものを用いることができる。
このため、上記信号線信号用タイミングパルスREVD1〜REVDiを用いる際に、正極性の書き込みと負極性の書き込みとで極端な差を設ける必要がなく、同様に扱うことができる。より詳細には、液晶層部分の容量が異なることにより最適対向電圧が変化するので、その変化を考慮した補正のための差、すなわちタイミング差のみを設ければよい。すなわち、正極性の書き込みと負極性の書き込みとで、オン抵抗の差が大きい場合には、オン抵抗の差の分をタイミングで調整しなければならないが、本発明によれば、そのタイミング差を小さくできる。
一般に、例えば従来技術の場合には、タイミング差を、正極性の書き込みと負極性の書き込みとで設けるためには、1水平期間をより細かく分割する必要がある。このため、基本となるクロック信号を早くするか、または1水平期間を長くするか、などの手段で、タイミング差を実現する必要がある。
一方、上記した本実施形態に係る画像表示装置の駆動装置においては、上記のような手段は不要となる。このため、より簡便にタイミング差を実現できる。
なお、上記した本実施形態においては、図1において共通電圧が交流の場合について示したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、他の実施形態として、図5に示すように直流の共通電圧を用いることもできる。
この場合の信号線電圧は+5Vと−5Vであり、それに対応する走査線のオン電圧は+15Vと+5Vである。この場合にも、上記した、正極性の書き込みおよび負極性の書き込みのいずれにおいても、走査線電圧と信号線電圧との差は+10Vとなっている。したがって、上述と同様の効果を得ることができる。
また、液晶容量Clcおよび補助容量Cs とは、ここでは同一の電位(=コモン電位Vcom )としているが、異なる電位とすることもできる。また、対向電極COMは線状であってもよい。
〔実施の形態2〕
本発明のさらに別の一実施形態について、以下で図面を参照して説明する。
本実施形態に係る画像表示装置の駆動装置は、上記実施の形態1で説明した画像表示装置の駆動装置と同様の構成をもつものである。
上記構成における、本実施形態に係る画像表示装置の駆動装置の動作について図面を参照して説明する。
図6は、走査線電圧、信号線電圧、共通電圧の時間変化を示すタイミングチャートである。Vgn ,Vgn+1 は、それぞれn,n+1本目の走査線に印加される走査線電圧を示す。ソースは信号線電圧を示す。comは共通電圧を示す。
図示するように、本実施形態においては、走査線電圧のオン状態を示す値は、+10Vと+15Vの2値である。
ここで、信号線電圧または共通電圧の極性とは、電圧がHighレベルか又はLowレベルかのいずれかを示すものとする。すなわち、例えば信号線電圧と共通電圧とが同じ極性であるとは、信号線電圧と共通電圧とが共にHighレベルか又は共にLowレベルかのいずれかを意味するものとする。
ここで、本実施形態においては、信号線電圧は0Vまたは+5Vの2値、共通電圧は0Vまたは+5Vの2値であるので、信号線電圧と共通電圧とが同じ極性となる場合には、信号線電圧と共通電圧との電位差は0Vとなる。
なお、本実施形態に限らず、一般にパルス幅変調駆動方法を行う画像表示装置においては、信号線電圧と共通電圧とが同じ極性となる場合には、信号線電圧と共通電圧との電位差は0Vまたは非常に小さい値となっている。
このため、走査線電圧がオン状態であり、信号線電圧と共通電圧とが同じ極性となる場合には、画素に充電した電荷が放電される。
図6に示すタイミングAからタイミングDまでのオン状態の期間は、負極性の書き込みを行う期間である。
そして、その内、図6に示すタイミングAからタイミングBまでの期間は、画素に充電した電荷を放電するための期間である。タイミングAからタイミングBまでの期間は、n本目の走査線の走査線電圧が+10Vでオン状態であり、信号線電圧と共通電圧との差は5V−(5V)=0Vである。すなわち、信号線電圧と共通電圧とが同じ極性となっている。このため、走査線がn本目の画素は電圧が印加されずに、放電する。
図6に示すタイミングBからタイミングDまでの期間は、画素を所望の値に充電して所望の階調を表現するための期間である。
ここで、図示するタイミングCにおいては、信号線電圧が+5Vから0Vに変化している。すなわち、タイミングCにおいては、n本目の走査線の走査線電圧が+10Vでオン状態であり、信号線電圧と共通電圧との差は0V−(5V)=−5Vである。したがって、走査線がn本目の画素には−5Vの電圧が印加され、充電がなされる。
以上のように、走査線電圧が+10Vのときの、電圧を印加することになる信号線電圧の値は0Vとなる。また、図示するように、タイミングAからBまでは、信号線電圧と共通電圧とは同じHigh側の極性を有している。そして、走査線電圧がオン状態となっているので、放電が行われる。
上記タイミングAからBまでの期間の長さは、画素の放電率が95%以上になるように設定される。すると、通常、タイミングAからBまでの期間の長さは、タイミングBからDまでの長さに対して、1倍から2倍程度の長さに設定される。
ここで放電率とは、放電開始前に画素に書き込まれていた電圧と、放電中、または放電後における画素に書き込まれている電圧との比を表す量である。放電を開始すると、画素に書き込まれている電圧は、次第に減少して0に近づいていく。
そしてタイミングBからDまでは、画素を充電するための期間であり、特にタイミングCにおいて信号線電極が反転することによってタイミングCからDまでの間に充電するようになっている。BからDまでのうち、BからCまでを調節することによって、画素に充電する電圧を制御するようになっている。
図6に示すタイミングEからHまでのオン状態の期間は、正極性の書き込みを行う期間である。
そして、その内、図6に示すタイミングEからタイミングFまでの期間は、画素に充電した電荷を放電するための期間である。タイミングEからタイミングFまでの期間は、n+1本目の走査線の走査線電圧が+15Vでオン状態であり、信号線電圧と共通電圧との差は0V−(0V)=0Vである。このため、走査線がn+1本目の画素は電圧が印加されずに、放電する。
図6に示すタイミングFからタイミングHまでの期間は、画素を所望の値に充電して所望の階調を表現するための期間である。
図に示すタイミングGにおいては、信号線電圧が0Vから+5Vに変化している。すなわち、タイミングGにおいては、n+1本目の走査線の走査線電圧が+15Vでオン状態であり、信号線電圧と共通電圧との差は5V−(0V)=+5Vである。したがって、走査線がn+1本目の画素には+5Vの電圧が印加され、充電がなされる。
すなわち、走査線電圧が+15Vのときの、電圧を印加することになる信号線電圧の値は5Vとなる。
以上より、本実施形態においては、画素に電圧を印加する際の、走査線電圧と信号線電圧との差は+10Vとなっている。
以上のように、本実施形態においては、走査線信号がオン状態の際に、信号線電圧と共通電圧とを同じ極性にして画素より放電させ、その後に信号線電圧の極性を反転させて画素に充電するようになっている。
また、n本目の走査線において充電する際と、n+1本目の走査線において充電する際とで、走査線電圧と書き込みする際の信号線電圧との差が共に10Vである。このため、n本目の走査線における負極性の書き込みと、n+1本目の走査線における正極性の書き込みとで、画素スイッチング素子であるTFTのオン抵抗はそれ程異ならない。
このため、上記信号線信号用タイミングパルスREVD1〜REVDiを用いる際に、正極性の書き込みと負極性の書き込みとで極端な差を設ける必要がなく、同様に扱うことができる。より詳細には、液晶層部分の容量が異なることにより最適対向電圧が変化するので、その変化を考慮した補正のための差、すなわちタイミング差のみを設ければよい。
又、放電する動作により、前回の画素電極書き込み電圧にとらわれずパルス幅によってのみ一定の充電率を得ることができる。したがって、例えば動画表示において前回の画素電極書き込み電圧が今回書き込みたい電圧値と同じ階調でないことが多い場合にも必ず所望の階調を書き込める。
また、上述のように、画素電極と共通電極とに挟まれた画素は、電圧を印加されるとコンデンサとして振る舞う。コンデンサに抵抗を介して電圧を印加されて行なわれる充電動作は、コンデンサがそれ以前に保持していた電圧値が異なると、新たな電圧印加を同じ期間行なっても到達する電圧値が異なってくる。したがって、上記のように放電させた後で充電するのでなければ、目的の電圧に対して若干のずれを生じてしまう。すなわち、本実施形態に係る画像表示装置の駆動方法のように、放電させた後で蓄積するようにすれば、目的の電圧に対してずれを生じることなく充電でき、正確な階調表示を行うことができる。
〔実施の形態3〕
本発明のさらに別の一実施形態について、以下で図面を参照して説明する。
本実施形態に係る画像表示装置の駆動装置は、上記実施の形態1で説明した画像表示装置の駆動装置と同様の構成をもつものである。
上記構成における、本実施形態に係る画像表示装置の駆動装置の動作について、図面を参照して説明する。
図7は、走査線電圧、信号線電圧、共通電圧の時間変化を示すタイミングチャートである。Vgn ,Vgn+1 は、それぞれn,n+1本目の走査線に印加される走査線電圧を示す。ソースは信号線電圧を示す。comは共通電圧を示す。
図示するように、本実施形態においては、走査線電圧のオン状態を示す値は、+10Vと+15Vの2値である。
図7に示すタイミングAからタイミングEまでのオン状態の期間は、負極性の書き込みを行う期間である。
本実施形態においては、タイミングAからタイミングEまでの期間の内、タイミングAからタイミングCまでの期間において放電を行い、その後、タイミングCからタイミングEまでの期間においてタイミングDで信号線電圧を極性反転することによって、充電を行っている。
本実施形態においては、図示するBのタイミングにおいて、信号線電圧と共通電圧とを共に極性反転している。このため、Bの前後を通じて信号線電圧と共通電圧とは同極性となっている。
このように、放電中において共通電圧の極性を反転させると、以下に示すような利点がある。
ここで、例えば、上述の図6において示した共通電圧の極性反転は、走査線信号の電圧がオンを示す電圧に変化する前である。この場合は、画素に正極性の電圧、例えば+4Vが前回の書き込み動作により保持されている。このため、共通電圧が反転すると、共通電圧変化分と同じ電圧変化が画素電極にも発生し、画素に印加されている電圧が+9Vまで上昇してしまう。この時には、走査線信号がON状態を示す電圧として約15V程度が必要となる。また、この場合には、走査線電圧のオン状態を示す電圧の選択によっては、トランジスタのオン抵抗特性が極端に悪くなる場合もある。
一方、本実施形態の図7においては、上述のように放電動作途中での共通電圧の極性反転するので、画素に充電されている電圧が信号線電圧や共通電圧以上に上昇することはない。このため、走査線電圧におけるオンを示す電圧を低くすることが可能となる。すなわち、画素に充電されている電圧が高くなった場合には走査線電圧が高い電圧でないとオン状態にならないが、本実施形態の場合には、走査線電圧が低い値であっても、オン抵抗特性を悪くせずに、スイッチング素子をオン状態にすることができる。したがって、オン状態を示す電圧値として階調表示に必要な充電率の制御を行いやすい電圧を選択する幅が広がるのである。
ここで、従来の電圧変調駆動方法においては、充電率が99%以上となるように充電するので、用いるオン状態を示す電圧は一定値以上であれば駆動上の違いを生じない。一方、パルス幅変調駆動方法においては、充電率が80%ないし90%程度となるように充電するので、オン状態を示す電圧の選択によっては、駆動上の違いを生じることになる。そこで、例えばパルス幅変調に割り当てる時間で充電率80%ないし90%を達成するようなオン抵抗値となるオン状態を示す電圧を選択すれば、より正確に充電率の制御を行うことができる。なおこの場合のオン抵抗値は、電圧変調駆動方法の場合のオン抵抗値の2倍程度の抵抗値であればよい。
なお、上記の実施形態においては、図7を参照して動作の説明を行ったが、本発明はこれに限るものではない。例えば、図8または図9のタイミングチャートに示すような動作を行う構成であってもよい。
図8は、走査線電圧、信号線電圧、共通電圧の時間変化を示すタイミングチャートである。ゲートは、走査線に印加される走査線電圧を示す。ソースは信号線電圧を示す。comは共通電圧を示す。
図示するように、タイミングAからタイミングEまでの期間の内、タイミングAからタイミングCまでの期間において放電を行い、その後、タイミングCからタイミングEまでの期間においてタイミングDで信号線電圧を極性反転することによって、上述と同様の効果を得ることができる。すなわち、Bのタイミングで信号線電圧と共通電圧とを同時に極性反転させることによって、上述と同様の効果を得ることができる。
また、図9も、図8と同様である。図9に示すように、走査線電圧がオン状態を示す電圧を、下げることもできる。
すなわち、これにより、走査線信号がオンを示す電圧を、より広い範囲より選択して設定できる。例えば、トランジスタのオン抵抗値が充電率制御をしやすいものとなるような、最適な値を選択することもできる。また、走査線信号がオンを示す電圧として、なるべく低い電圧を選択すれば、消費電力を削減できる。さらに、多階調表現用にパルス幅を種々設定する上での作業を大幅に簡素化する事が可能となる。
また、本発明の一例として以上に示した図7〜9においては、図示するBのタイミングでの共通電圧の極性反転を、図示するAのタイミングで走査線電圧をオン状態に変化させた後、数マイクロ秒から数十マイクロ秒たった時点で行う構成である。
上記構成によれば、共通電圧の極性反転時に、画素に充電されている電圧が必要以上に高くなることを抑えることができる。このため、走査線電圧のオン状態を示す電圧を、充電制御がしやすい低い値に落とすことが出来る。特にオン電圧が2値である場合、低い方のオン電圧値の制約が減り、充電制御に最適な2値を選択することができ、このため良好な多階調表示を実現できる。
〔実施の形態4〕
本発明の別の一実施形態について、以下で図面を参照して説明する。
本実施形態に係る画像表示装置の駆動装置は、上記実施の形態1で説明した画像表示装置の駆動装置と同様の構成をもつものである。
上記構成における、本実施形態に係る画像表示装置の駆動装置の動作について、図面を参照して説明する。
図10は、走査線電圧、信号線電圧、共通電圧の時間変化を示すタイミングチャートである。ゲートは走査線電圧を示す。ソースは信号線電圧を示す。comは共通電圧を示す。本実施形態においては、走査線電圧のオン状態を示す値は、+15Vの1値である。
図10に示すタイミングAからタイミングDまでのオン状態の期間は、負極性の書き込みを行う期間である。
本実施形態においては、タイミングAからタイミングDまでの期間の内、タイミングAからタイミングBまでの期間において放電を行い、その後、タイミングBからタイミングDまでの期間においてタイミングCで信号線電圧を極性反転することによって、充電を行っている。
図に示すAは、走査線電圧がオン状態に変化するタイミングを示すものである。
図示するように、上記Aのタイミングにおいては、信号線電圧はHighレベル、共通電圧もHighレベルとなっており、信号線電圧と共通電圧とが同じ極性となっている。
ここで、本実施形態においては、信号線電圧は0Vまたは+5Vの2値、共通電圧は0Vまたは+5Vの2値の2値であるので、信号線電圧と共通電圧とが同じ極性となる場合には、信号線電圧と共通電圧との電位差は0Vとなる。
すなわち、信号線電圧と共通電圧との電位差が0VとなるAのタイミング以降では、画素に充電された電荷が放電される。
また、本実施形態においては、AからBまでの画素に放電させるための期間は、画素の放電率が95%以上になるように設定されている。このように設定すると、通常、本実施形態のように、AからBまでの期間は、BからCまでの期間の1倍から2倍程度の長さに設定される。
ここで、BからCまでの時間としては、パルス幅変調駆動方法で階調電圧を制御可能であるような時間が少なくても割り当てられている。この時間は、一般に充電率が80%から95%程度の間になるような時間である。この場合に、充電と放電とは時定数が同じであるので、95%以上の放電を行うためには、BからCまでの時間の1倍から2倍程度の時間が必要となる。すなわち、AからBまでの時間を、上述のように設定すれば、95%以上の放電を実現できる。
また、図に示すCのタイミングは、走査線電圧がオン状態のまま、信号線電圧を反対の極性に変化させるタイミングである。すなわち、Cのタイミングにおいては、信号線電圧をHighレベルからLowレベルへ、反対の極性に変化させる。
Cのタイミングにおいては、信号線電圧は0V、共通電圧は+5Vであり、信号線電圧と共通電圧との電位差は−5Vとなる。上記のように、Cにおいては走
査線電圧がオン状態なので、信号線電圧と共通電圧との電位差が−5VとなるC
のタイミング以降では、画素に電圧が印加され、充電される。
以上のように、本実施形態に係る画像表示装置の駆動装置は、走査線電圧がオン状態の間に、信号線電圧と共通電圧とを同じ極性として画素に蓄積された電荷を放電し、その後に走査線電圧がオン状態のまま信号線電圧の極性を反転させて画素に充電する構成である。
したがって、放電させた後で蓄積するので、前回の充電量に関わらず、画素の充電量をより正確に制御して、より正確な階調表示を行うことができる。
すなわち、上述のように、画素電極と共通電極とに挟まれた画素は、電圧を印加されるとコンデンサとして振る舞う。コンデンサに抵抗を介して電圧を印加されて行なわれる充電動作は、コンデンサがそれ以前に保持していた電圧値が異なると、新たな電圧印加を同じ期間行なっても到達する電圧値が異なってくる。したがって、上記のように放電させた後で充電するのでなければ、目的の電圧に対して若干のずれを生じてしまう。すなわち、本実施形態に係る画像表示装置の駆動方法のように、放電させた後で蓄積するようにすれば、目的の電圧に対してずれを生じることなく充電でき、正確な階調表示を行うことができる。
また、上記構成によれば、書き込みの度ごとに放電させてから充電するようになっているので、例えば動画表示の場合など、書き込みの度に表示する階調が異なる場合にも、より正確に画像表示できる。
さらに、本実施形態においては、走査線電圧がオン状態になる時に、信号線電圧と共通電圧とが同じ極性となっている。したがって、例えば走査線電圧がオン状態となる時に信号線電圧と共通電圧とが反対の極性であって、その後信号線電圧と共通電圧とを同じ極性として放電させるような場合のように、無駄に充電することを防ぐことができる。
なお、上述の実施形態においては、走査線電圧のオン状態を示す値が1値の場合を示したが、本発明はこれに限るものではない。走査線電圧のオン状態を示す値は2値であっても、それ以上でもよい。
〔実施の形態5〕
本発明のさらに別の一実施形態について、以下で図面を参照して説明する。
本実施形態に係る画像表示装置の駆動装置は、上記実施の形態1で説明した画像表示装置の駆動装置と同様の構成をもつものである。
上記構成における、本実施形態に係る画像表示装置の駆動装置の動作について、図面を参照して説明する。
図11は、走査線電圧、信号線電圧、共通電圧の時間変化を示すタイミングチャートである。ゲートは、n+1本目の走査線に印加される走査線電圧を示す。
ソースは信号線電圧を示す。comは共通電圧を示す。
図11に示すタイミングAからタイミングCまでのオン状態の期間は、負極性の書き込みを行う期間である。
本実施形態においては、タイミングAからタイミングCまでの期間の内、タイミングAからタイミングBまでの期間において放電を行い、その後、タイミングBからタイミングCまでの期間において信号線電圧を極性反転することによって、充電を行っている。
ここで、このタイミングAからタイミングBまでの期間の放電の動作は、なるべく短時間で完了させれば、他の動作の制約とならずに、便利である。
本実施形態においては、走査線電圧のオン状態を示す電圧が15V、10Vの2値である。そして、タイミングAからタイミングBまでの放電を行う期間においては、オン状態を示す電圧は高い方の電圧である15Vが用いられている。
このため、例えば低い方の電圧を用いる場合と比較して、放電動作に必要な時間を短縮できる。
また、本実施形態は、上述した図11の構成に限るものでなく、図12のような構成であってもよい。
図12に示すタイミングAからタイミングDまでのオン状態の期間は、負極性の書き込みを行う期間である。
本実施形態においては、タイミングAからタイミングDまでの期間の内、タイミングAからタイミングCまでの期間において放電を行い、その後、タイミングCからタイミングDまでの期間において信号線電圧を極性反転することによって、充電を行っている。また、上記の放電を行うタイミングAからタイミングCまでの期間において、タイミングBで信号線電圧と共通電圧とを共に極性反転させている。
ここで、図12に示すように、タイミングAからタイミングCまでの放電を行う期間において、オン状態を示す電圧として、15V及び10Vの2値のうち、高い方の電圧である15Vを用いる構成であってもよい。そうすれば、例えば低い方の電圧を用いる場合と比較して、放電動作に必要な時間を短縮できる。
この場合、さらにBで示すタイミングにおいて、信号線電圧と共通電圧とを共に極性反転させることによって、走査線電圧のオン状態に用いる電圧を、より広い範囲より選択することもできる。すなわち、走査線電圧のオン状態に用いる電圧を、充電制御しやすい電圧として選択することができる。
〔実施の形態6〕
本発明のさらに別の一実施形態について、以下で図面を参照して説明する。
本実施形態に係る画像表示装置の駆動装置は、上記実施の形態1で説明した画像表示装置の駆動装置と同様の構成をもつものである。そして、本実施形態は、駆動のタイミングについて、上述の実施の形態1で説明した構成を用いるようになっている。
一方、本実施形態は、上述の実施の形態1において、以下のような画素への充電の方法を用いるようになっている。そこで、以下では図面に基づいてこの異なる点について説明する。
本実施形態における駆動のタイミングは、上記実施の形態1で説明した図5のようになっている。
すなわち、図5に示す期間A’の正極性書き込みにおいては、信号線電圧と共通電圧との差の5V−(0V)=5Vが、画素に印加される。
ここで、本実施形態においては、上記構成において、画素の到達電圧の最大値を4Vないし4.5Vの範囲に設定している。画素の到達電圧の最大値、すなわち画素電極に書き込まれる電圧の最大値を4Vとした場合に、この値は、信号線に供給される電圧5Vの80%となっている。
すなわち、正極性書き込みにおいて、画素電極に書き込まれる電圧の最大値の信号線に供給される電圧に対する到達率は80%となっている。
また、図5に示す期間B’の負極性書き込みにおいては、信号線電圧と共通電圧との差の−5V−(0V)=−5Vが、画素に印加される。
ここで、本実施形態においては、上記構成において、画素の到達電圧の最大値を−4V程度ないし−4.5V程度の範囲に設定している。画素の到達電圧の最大値、すなわち画素電極に書き込まれる電圧の最大値を−4V程度とした場合に、この値は、信号線に供給される電圧−5Vの約80%となっている。
すなわち、負極性書き込みにおいて、画素電極に書き込まれる電圧の最大値の信号線に供給される電圧に対する到達率は約80%となっており、正極性書き込みとは異なるようになっている。これは、以下の理由による。
まず、信号線に5Vを供給した場合の正極性書き込みにおける画素の到達電圧(画素電圧)の時間変化を図16に示す。また、信号線に−5Vを供給した場合の負極性書き込みにおける画素電圧の時間変化を図17に示す。
図16に示すように、正極性書き込みにおいては例えば4Vには12μs程度で到達する一方、図17に示すように、負極性の書き込みにおいては例えば4Vには5μs程度で到達する。
このように、画素スイッチング素子としてTFTを用いている場合には、正極性書き込みと負極性書き込みとで、TFTを介した画素の充電特性は異なる。
ここで、上述のように、例えば負極性書き込みにおける上述の到達率を、正極性書き込みにおける到達率と適切に異ならせれば、正極性書き込みと負極性書き込みとにおいて、以下のような意味で充電特性を近づけることができる。すなわち、例えば、負極性書き込みにおける到達電圧の最大値を、4Vより多少増加させて4V程度とすれば、その4V程度までの充電に要する時間は増加する。
これにより、正極性書き込みと負極性書き込みとにおいて、到達電圧の最大値を得るまでの充電時間を十分長くすることができる。
したがって、書き込みにおける階調表示に必要な時間幅制御を容易にすることができる。したがって、安定した表示状態を得て、信号の遅延やトランジスタの特性のバラツキなどに対して、より安定したパネルを提供することができる。
また、所望のパルス幅の信号を信号線ドライバの中で生成するのに要する基準クロックの周波数も、より低いものを用いることができるため、消費電力を低く抑えることができる。
また、上述のように、本実施の形態では、正極性書き込みにおいて、画素の到達電圧の最大値は、信号線に供給される電圧の80%となっている。また、負極性書き込みにおいて、画素の到達電圧の最大値は、信号線に供給される電圧の約80%となっている。これより、画素電極に書き込まれる電圧の振幅の最大値は、信号線に供給される電圧の振幅の約80%となる。
したがって、以下に説明するように、効率よく画素に充電することができる。
すなわち、図16をみてもわかるように、画素電圧4Vの時点において、すでに曲線は直線に程よく近づいている。したがって、これより充電率が低いところのみを使用するように設定したとしても、さらなる線形性を得る効果は少ない。
一方、図16の30μs以上の領域をみれば明らかなように、充電率98%を超えると、充電時間の伸びに対する画素電圧の増加がほとんどない。したがって、この変化率の小さい領域を削って、充電特性の線形性を向上できる。
また、図17に示す負極性書き込みにおいても同様のことが言える。
このように、画素電極に書き込まれる電圧の振幅の最大値が、信号線に供給される電圧の振幅の80%以上98%以下であるように構成することができる。これは、図16を例にとると、充電時間0μsから、12μs(80%相当)ないし30μs(98%相当)までの領域に示される充電曲線を利用することに対応する。
また、上述の実施の形態においては、簡単のため実施の形態1における図5の構成を用いて説明したが、本実施形態はこれに限るものではない。
例えば、上述の構成においては、直流の共通電圧を0Vとして、それを基準とした説明を行ったが、例えば図1に示すような共通電圧が交流の構成であってもよい。この場合には、上述した、画素の到達電圧の最大値と信号線に供給する電圧との関係は、充電開始前の画素電位から充電中の信号線電位に対しての関係として考えればよい。
この場合の充電特性は、0Vからの充電を示す図16や図17とは厳密には異なるが、充電率98%以上の領域における充電時間の伸びに対する画素電位の増加がほとんどないという現象については変わりない。
また、上述した本実施の形態の構成は、実施の形態1に限らず、上述の実施の形態2ないし5と組み合わせることもできる。
また、上述の構成は、以下のように表現することもできる。
すなわち、図16および図17に示す充電特性において、上述のように、正極性書き込みと負極性書き込みとで到達率を適切に異ならせている。その結果、図5に示す正極性書き込みのパルス幅A’と負極性書き込みのパルス幅B’とは、異なるようになっている。
以上のように、本実施形態に係る画像表示装置の駆動方法は、それぞれ所望の階調に対応する所望の充電電圧を得るために、パルス幅を異ならせる構成であってもよい。
また、上記構成において、本実施形態に係る画像表示装置の駆動方法は、信号線に供給される電圧が2値であってその電圧のパルス幅で階調を表示し、正極性の書き込み時と負極性の書き込み時とで、走査線に供給される電圧の振幅を変える構成であってもよい。
ここで、例えば画素スイッチング素子としてTFTを用いてパルス幅変調駆動方法を行う場合には、画素に対する充電を途中で止めて階調を出すので、階調の再現性を良くするためには、書き込み初期状態におけるトランジスタのオン抵抗を、あらゆる場合で揃えることが望ましい。しかし、TFTは3端子素子であるので、それぞれの素子の電位関係でオン抵抗は変わってしまう。
これに対し、上記構成において、正極性書き込み時と負極性書き込み時とで、走査線に供給される電圧の振幅を適切に変えれば、トランジスタのオン抵抗を揃えて、書き込み能力の差を小さくすることができる。これにより、3端子素子であるTFTを用いても、書き込み初期状態におけるトランジスタのオン抵抗を揃えることができ、良好な階調の再現性を実現できる。それゆえ、パルス幅変調駆動方法において、消費電力の増加を抑えながら、良好な多階調表示を実現できる。
また、以上に説明した画像表示装置の駆動方法を画像表示装置の駆動装置において実行すれば、本発明に係る画像表示装置の駆動装置を実現することができる。
なお、上述の実施の形態においては、上記走査線電圧と上記信号線電圧との差を等しくするとしたが、これは厳密に等しい場合に限るものではない。本発明は、上記走査線電圧と上記信号線電圧との差が、正極性の書き込みと負極性の書き込みとにおいて、ほぼ等しい構成であってもよい。この構成によっても、上述のように正極性と負極性とにおける書き込みのタイミング差を、従来と比較して小さくすることができる。すなわち、例えば、等しくなるように実行したが結果的に同一とならなかった場合をも含んでいる。
また、本発明は上述した各実施の形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
なお、上記画像表示装置の駆動方法は、基板上の複数の画素ごとに備えられる画素電極に接続された画素スイッチング素子のオン状態とオフ状態とを切り換えるように走査線に走査線電圧を印加し、上記オン状態において上記画素電極に上記画素スイッチング素子を介して接続された信号線に信号線電圧を印加するとともに、上記画素電極との間に上記画素を挟持する共通電極に共通電圧を印加することによって、上記画素を交流駆動しながら、上記交流駆動の上記オン状態における上記信号線電圧のパルス幅を調節することによって表示階調を制御する画像表示装置の駆動方法において、上記交流駆動の正極性書き込み時と負極性書き込み時とで、上記走査線電圧と上記信号線電圧との差を等しくするものであってもよい。
ここで、パルス幅とは、オン状態において信号線電圧を印加する時間を意味する。
また、正極性書き込みとは、画素に印加する交流電圧のうち、信号線電圧と共通電圧との差として正の電圧が画素に印加されている場合をいう。負極性書き込みとは、信号線電圧と共通電圧との差として負の電圧が画素に印加されている場合をいう。
上記構成においては、交流駆動の正極性書き込み時と負極性書き込み時とで、走査線電圧と信号線電圧との差が同じである。すなわち、正極性の書き込みと負極性の書き込みとの際に、ゲートとソースとの間の電位差が同じとなる。
したがって、トランジスタのオン抵抗が正極性の書き込みと負極性の書き込みとで同じになる。
ここで、オン抵抗とは、トランジスタの電流供給能力を示す値である。オン抵抗は、画素に印加される電圧(ソース電圧)とゲート電圧との差が大きくなるほど次第に値が小さくなる性質がある。
言い換えると、トランジスタのオン抵抗が正極性の書き込みと負極性の書き込みとで異なる場合には、正極性の書き込みと負極性の書き込みとで充電の際のパルス幅を変えて階調表示する必要があるが、上記画像表示装置の駆動方法においては、上記のような動作を不要にできる。したがって、スイッチング素子の抵抗値が高くなる正極性の書き込みにあわせた最大パルス幅やスイッチング素子のサイズを決めた上で、スイッチング素子の抵抗値が低くなる負極性の書き込みにおいて微妙な充電率の差を出す為の高い周波数のクロックが不要となると同時にクロック周波数に依存する消費電力についても削減ができる。
より詳細には、液晶層部分の容量が異なることにより最適対向電圧が変化するので、その変化を考慮した補正のための差、すなわちタイミング差のみを設ければよい。すなわち、液晶は、印加される電圧により誘電率が変化するので、印加される電圧に応じて、スイッチング素子であるTFTの寄生容量の影響を受ける度合いも異なることになる。したがって、パルス幅変調駆動方法においては、たとえ上記構成によって正極性の書き込み時と負極性の書き込み時とでTFTのオン抵抗が全く同一であったとしても、この影響を補正するために、正極性の書き込み時と負極性の書き込み時とでパルス幅を異ならせることになる。正極性の書き込みと負極性の書き込みとでオン抵抗の差が大きい場合には、オン抵抗の差の分をさらにタイミングで調整しなければならないが、これによればそのタイミング差を上述の補正のためのもののみに小さくできる。
また、上記構成によれば、ゲートとソース間の電圧差を、正極性の書き込みと負極性の書き込みとで同じとするので、信号線電圧が低い負極性の書き込みにおいて、トランジスタの抵抗値が低くなりすぎることを防げる。
なお、上記構成においては、上記走査線電圧と上記信号線電圧との差を等しくするとしたが、これは厳密に等しい場合に限るものではない。上記構成では、上記走査線電圧と上記信号線電圧との差が、正極性の書き込みと負極性の書き込みとにおいて、ほぼ等しい構成であってもよい。この構成によっても、上述のように正極性と負極性とにおける書き込みのタイミング差を、従来と比較して小さくすることができる。
上記画像表示装置の駆動方法は、上記構成において、上記走査線電圧は、上記交流駆動の正極性書き込み時と負極性書き込み時とで、上記走査線電圧と上記信号線電圧との差が等しくなるように、正極性書き込み時におけるオン状態を示す電圧と負極性書き込み時におけるオン状態を示す電圧とが異なっていてもよい。
上記構成によれば、例えば、走査線電圧のオン状態を示す2値の電圧値のうち高い方の電圧が印加されている期間に、2値の信号線電圧のうち高い方の電圧を印加して正極性の書き込みを行い、また、走査線電圧のオン状態を示す2値の電圧値のうち低い方の電圧が印加されている期間に、2値の信号線電圧のうち低い方の電圧を印加して負極性の書き込みを行うことができる。すなわち、最も簡単に、交流駆動の正極性書き込み時と負極性書き込み時とで、走査線電圧と信号線電圧との差を同じにすることができる。
上記画像表示装置の駆動方法は、上記構成において、上記オン状態の画素スイッチング素子に接続された画素に対して、上記信号線電圧と上記共通電圧とを同一のレベルとして放電させた後に、上記信号線電圧を変化させて充電してもよい。
上記構成によれば、走査線電圧がオン状態の間に信号線電圧と共通電圧とを同じ極性として画素に蓄積された電荷を放電し、その後に走査線電圧がオン状態のまま信号線電圧の極性を反転させて画素に充電する。
したがって、前回書き込み時において画素に蓄積された電荷を放電させた後で、今回の書き込みに相当する電圧を蓄積するので、前回の充電量に関わらず、充電量をより正確に制御して、より正確な階調表示を行うことができる。
ここで、画素電極と共通電極とに挟まれた画素は、電圧を印加されるとコンデンサとして振る舞う。コンデンサに抵抗を介して電圧を印加されて行なわれる充電動作は、コンデンサがそれ以前に保持していた電圧値が異なると、新たな電圧印加を同じ期間行なっても到達する電圧値が異なってくる。したがって、上記のように放電させた後で充電するのでなければ、目的の電圧に対して若干のずれを生じてしまう。すなわち、上記画像表示装置の駆動方法のように放電させた後で蓄積するようにすれば、目的の電圧に対してずれを生じることなく充電でき、正確な階調表示を行うことができる。
また、上記構成によれば、書き込みの度ごとに放電させてから充電するようになっているので、例えば動画表示の場合など、書き込みの度に表示する階調が異なる場合にも、より正確に画像表示できる。
また、上記構成において、走査線電圧がオン状態になる時に、信号線電圧と共通電圧とが同じ極性となっている構成も好ましい。この構成によれば、走査線電圧がオン状態となる時に信号線電圧と共通電圧とが反対の極性であって、その後信号線電圧と共通電圧とを同じ極性として放電させるような場合のように、無駄に充電することを防ぐことができる。
上記画像表示装置の駆動方法は、上記構成において、上記オン状態の画素スイッチング素子に接続された画素に対して、上記信号線電圧と上記共通電圧とを同一のレベルとして放電させる間に、上記信号線電圧と上記共通電圧とを同時に変化させてもよい。
上記構成によれば、放電動作途中で共通電圧の極性を反転するので、画素に充電されている電圧が信号線電圧や共通電圧以上に上昇することはない。このため、走査線信号がオンを示す電圧を低くすることが可能となる。
すなわち、これにより、走査線信号がオンを示す電圧を、より広い範囲より選択して設定できる。例えば、トランジスタのオン抵抗値が充電率制御をしやすいものとなるような、最適な値を選択することもできる。また、走査線信号がオンを示す電圧として、なるべく低い電圧を選択すれば、消費電力を削減できる。さらに、多階調表現用にパルス幅を種々設定する上での作業を大幅に簡素化する事が可能となる。
上記画像表示装置の駆動装置は、基板上の複数の画素ごとに備えられる画素電極と、上記画素電極に接続された画素スイッチング素子に走査線電圧を印加してオン状態とオフ状態とを切り換える複数の走査線と、上記画素電極に上記画素スイッチング素子を介して信号線電圧を印加する複数の信号線と、上記画素電極との間に挟持される上記画素に共通電圧を印加する共通電極とを有し、上記画素を交流駆動しながら、上記交流駆動の上記オン状態における上記信号線電圧のパルス幅を調節することによって、上記画素に書き込まれる電圧を制御して階調を表示する画像表示装置の駆動装置において、上記交流駆動の正極性書き込み時と負極性書き込み時とで、上記走査線電圧と上記信号線電圧との差を同じとするものであってもよい。
上記構成によれば、上述した画像表示装置の駆動方法を、画像表示装置の駆動装置において実現できる。したがって、上述と同様の効果を得ることができる。
上記画像表示装置の駆動装置は、上記構成において、上記画素電極に書き込まれる電圧の最大値の上記信号線に供給される電圧に対する到達率が、上記正極性書き込み時と上記負極性書き込み時とで異なっていることを特徴としている。
したがって、上述した画像表示装置の駆動方法と同様に、書き込み電圧の極性に応じて適切に到達率を異ならせれば、プラスマイナス両方向ともに充電特性をなだらかにすることができ、階調表示時の時間制御幅をより大きくとれるため、安定した表示状態を得ることができる。すなわち、信号の遅延やトランジスタの特性のバラツキなどに対して、より安定したパネルを提供することができる。
上記画像表示装置の駆動装置は、上記構成において、上記正極性書き込み時と上記負極性書き込み時とで、同一階調を表示するための、上記画素スイッチング素子の導通期間における上記信号線へ供給される電圧のパルス幅が異なっていてもよい。
したがって、上述した画像表示装置の駆動方法と同様に、書き込み電圧の極性に応じて、適切にパルス幅を異ならせれば、充電特性の違いにもかかわらず、所望の充電電圧を得ることができる。
上記画像表示装置の駆動装置は、上記構成において、上記画素電極に書き込まれる電圧の振幅の最大値が、上記信号線に供給される電圧の振幅の80%以上98%以下であってもよい。
したがって、上述した画像表示装置の駆動方法と同様に、充電時間の伸びに対する画素電圧の増加がほとんどない効率の悪い領域を削って、充電特性の線形性を向上できる。
上記画像表示装置の駆動装置は、上記構成において、上記信号線に供給される電圧が2値であってその電圧のパルス幅で階調を表示し、上記正極性書き込み時と上記負極性書き込み時とで、上記走査線の振幅を変えてもよい。
したがって、上述した画像表示装置の駆動方法と同様に、正極性の書き込み時と負極性の書き込み時とで、走査線の振幅を変えて、書き込み能力の差を小さくすることができる。これにより、3端子素子であるTFTを用いても、トランジスタのオン抵抗の書き込み初期状態をそろえることができ、良好な階調の再現性を実現できる。