JP4094453B2 - 洗浄排水の消毒方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、飲料水を中心とする上水の浄水過程、及び農水産業に用いられる用水の製造過程において、ろ過洗浄によって生じるシストを含む洗浄排水中の微生物を殺菌消毒する方法及び装置に関する。ここで洗浄排水とは、砂ろ過や膜ろ過の目詰まりを解消するために行われる逆洗浄時に発生した排水、あるいはその排水の濃縮過程後に発生した排水又は上澄水である。
【0002】
【従来の技術】
飲料水を中心とする一般的な浄水過程、及び畜産や養殖などの農水産業を中心とする産業用水の製造過程において、凝集沈殿・砂ろ過及び膜ろ過の逆洗浄時に生じるろ過洗浄排水は、従来ほとんどの場合何の処理もされないまま河川放流・下水放流されてきた。この洗浄排水には、クリポトスポリジウムオーシストなどの病原性微生物が、河川に存在する固形物などとともに濃縮されているので、下流域に浄水場が存在する場合には飲料水原水を汚染する、河川水を利用して畜産を行う場合には家畜に感染しさらに病原体を増殖させる、あるいは親水公園などに利用する場合などでは直接人間を汚染する、などの二次的感染を引き起こす恐れがあった。
【0003】
一方、渇水時の場合などを考慮することを含め、貴重な水資源のリサイクルという観点から、このような洗浄排水を全て河川放流せず、沈殿池を用いて固液分離してから、その上澄み液を再び原水に返送することも行われ始めている。しかしながら、このようにすると、これらの病原性微生物が再び原水に混入してしまい、この返送を繰り返すことで原水に病原性微生物が濃縮されてしまうため、より一層の汚染の問題が生じてしまう。大腸菌のような微生物は、後段の過程である塩素注入により殺菌されてしまうが、クリプトスポリジウムに関しては、凝集沈殿・砂ろ過ではオーシストは除去されず、また通常投入される濃度の塩素でも殺滅できないため、飲料水を汚染し人間が感染してしまう恐れもあった。
このため、近年になって放流、リサイクルどちらの場合においても、洗浄排水を紫外線(UV)・オゾン・熱によって殺菌する方法が検討され始めてきた。
【0004】
さらに、高電圧パルスによる殺菌方法も研究され、例えば、円筒状電極と、該円筒の中心軸付近に該円筒と絶縁して配設された線状電極とにより構成される容器内に被処理液を保持し、線状電極と円筒状電極との間に高電圧パルスを印加することにより、被処理液中の細菌等を殺菌する方法が提案されている(特許文献1)。
また、広帯域スペクトル多色光の短持続時間高強度のパルスを用いて水中のウイルスを照射することによりウイルスを不活化する方法も提案されている(特許文献2)。さらに、処理タンク内に供給された被処理水中に、被処理水の絶縁破壊強度電圧以上の電圧でパルス放電を行うことにより、微生物を不活化する方法も研究されている(特許文献3)。
【0005】
【特許文献1】
特開昭63−82666号公報
【特許文献2】
特表平11−514277号公報
【特許文献3】
特開2000−237755号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、UVを用いた方法においては、洗浄排水のような濁質を多く含む水への適用では、UVが濁質成分に吸収されてしまうため、透過率が非常に低くなり適さない。またUVランプ自身の寿命や交換に必要な時間、UVランプやその保護管表面の汚れや破損などの問題もある。
オゾンを用いた処理においては、濁質成分とオゾンが反応してしまうため殺菌効果が十分でなく、しかもオゾンとの化学反応により発生した副生成物の問題や、オゾンガスの取り扱いの問題などもある。
【0007】
熱を用いた方法は、殺菌効果を確実にするためには長時間を要し、反応槽の設置面積が大きいこと、熱交換器を用いても処理後の排水が原水より高温になるため、そのまま河川放流した場合には生態系に影響を与える恐れや、凝集濾過・沈殿工程に返送しても、後のプロセスに影響を与える恐れがある。高電圧パルスによる殺菌方法では、断続的な処理となるし、どのようなパルスをどの位与えれば微生物を不活化できるのかはっきりとしていない。
【0008】
本発明は、上記従来技術の問題点を克服し、低コストで、かつ維持管理が容易な洗浄排水中のシストを含む病原性微生物を確実に殺菌できる、洗浄排水の消毒方法及び装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、シストを含む洗浄排水に、パルス放電の放電エネルギーが、
(a)該洗浄排水の濁度と次式の関係にあり、
log(放電エネルギー)=α×log(濁度)
(α:装置によって決まる係数)
しかも
(b)0.01〜10kWh/m 3 −排水量であるの放電エネルギーを用い、また直径が0.1〜15mm、好ましくは1〜8mmの放電電極を用いて、パルス放電を行うことにより、紫外線、衝撃波、ラジカルを発生させて、洗浄排水中のシストを含む病原性微生物を殺菌消毒が低コストで、かつ維持管理が容易にできることを見出し、本発明を成すに至った。
すなわち、本発明は、下記の手段により上記課題を解決した。
【0010】
(1)ろ過洗浄によって生じるシストを含む洗浄排水にパルス放電を加える消毒方法であって、該パルス放電の放電エネルギーが、
(a)該洗浄排水の濁度と次式の関係にあり、
log(放電エネルギー)=α×log(濁度)
(α:装置によって決まる係数)
しかも
(b)0.01〜10kWh/m 3 −排水量である
放電エネルギーを用いて洗浄排水にパルス放電を加えること
を特徴とするろ過洗浄排水の消毒方法。
(2)洗浄排水を導入する貯留式反応槽又は流通式反応部、該貯留式反応槽又は流通式反応部の内部に設置され該洗浄排水の濁度を測定するための濁度計、該貯留式反応槽又は流通式反応部の内部に設置され該洗浄排水にパルス放電を加える少なくとも一対のパルス放電電極より構成される洗浄排水の消毒装置であって、該パルス放電の放電エネルギーが、
(a)該洗浄排水の濁度と次式の関係にあり、
log(放電エネルギー)=α×log(濁度)
(α:装置によって決まる係数)
しかも
(b)0.01〜10kWh/m 3 −排水量である
放電エネルギーを用いて洗浄排水にパルス放電を加えること
を特徴とするろ過洗浄によって生じる洗浄排水に含まれるシストを不活化させる装置。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
なお、実施態様及び実施例を説明する全図において、同一機能を有する構成要素は同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
本発明で用いるパルス電源は、コンデンサを用いた静電エネルギー蓄積型、コイルを用いた誘導エネルギー蓄積型、蒸気タービンやフライホイールを用いた運動エネルギー蓄積型、爆薬を用いた化学エネルギー蓄積型など、特に限定されないが、小型でかつ制御性の良い静電エネルギー蓄積型が望ましい。
【0012】
シストの消毒殺菌においては、放電電圧や放電周波数が運転因子の一つであるが、効果的に殺菌消毒を行う要因が処理流量に投与する放電エネルギーが重要であることを見出した。このため濁度を含む洗浄排水のような濁水においては、その濁度をモニターし、その濁度に見合った放電エネルギーを選択するようコンピュータ制御を行うことによって、効率良く殺菌消毒できる。このコンピュータ制御を行うことで、電気エネルギーを無駄に使用しないため地球温暖化防止に貢献できるだけでなく、放電に伴う電極材料の過剰な消耗を防げるため省資源にも役立つ。病原性シストを不活化するための洗浄排水の濁度と放電エネルギーの関連、及び不活化率の放電電極直径の関係を明らかにし、本発明をするに至った。
【0013】
実用上好ましい形態としては、ろ過洗浄によって生じるシストを含む洗浄排水に0.01〜10kWh/m3、好ましくは0.1〜3kWh/m3の放電エネルギーの範囲で、濁度に比例する放電エネルギーを用いてパルス放電を加える方法、及び上記洗浄排水の少なくとも一部を原水に循環することを特徴とする方法、また放電電極の直径が0.1〜15mm、好ましくは1〜8mmであることを特徴とする消毒方法がある。
0.01kWh/m3以下のエネルギーの放電では放電により十分な殺菌消毒が望める紫外線やラジカル、衝撃波が発生せず、しかも10kWh/m3以上のエネルギーでは十分な殺菌消毒が望めるものの消費電力が大きすぎて電気代及び設備も巨大になりコストが膨大になる。
【0014】
本発明では、与える放電エネルギーは、前記したように原水の濁度によって定まるが、その関係を一般的に言うと、与える放電エネルギーは、原水の濁度に比例した量となる。さらに、その関係については不活化率をどの程度とするかによってかなり異なってくるが、もっとも高い不活化率として99.9%を達成しよとする場合には、与える放電エネルギーは、大体原水の濁度の指数関数で比例する(実施例2参照)。ただ、本発明では、不活化率として90%以上を目的としており、実用的な範囲として不活化率が低目の90%に近い処理結果がでればよいとする場合には、前記のような高い割合の放電エネルギーでなくともよく、一次関数的あるいは二次関数的な比例関係での放電エネルギーを与えるようにしてもよい。なお、必要とする放電エネルギーは、後述するように、放電電極の直径や被処理水の量によっても変わってくるから、比較する際にはこれらの条件が同じであることとする。いずれにしても、本発明は、与える放電エネルギーが原水の濁度によって定まる関係を初めて見出したものである。
【0015】
また、放電に対して重要な因子となる放電電極の直径に関しては、0.1mm以下の直径では先端の電界強度は強まり容易に放電するものの放電による電極の消耗が激しく実用的でない。直径が15mm以上の電極に関しては、電極消耗による短小化は少ないものの、放電が電極のある一点で行われやすいため、発生した紫外線が電極により遮られて紫外線が照射されない領域が発生して十分に不活化できないなどの問題、電極先端の電界強度が弱まり放電が生じづらい又は安定した放電ができないという問題が生じる。このため適当な太さの電極が存在する。
【0016】
一方、洗浄排水は通常河川放流や下水放流されるが、その一部は水の有効利用の観点から、原水に返送される場合もある。この返送排水中に病原性シストが含まれる場合には、ろ過原水に再びシスト汚染の危険性が生じるため、返送排水を消毒殺菌する必要が生じる。この場合、返送過程に本殺菌消毒方法を用いればより安全な水を各家庭に供給することができる。
【0017】
洗浄排水の最も適したパルス放電装置は、例えば図1のような構造を持つ。この装置はコンピュータ1、パルス電源2、鉄を主成分とする炭素鋼材などの水中放電電極(パルス電極)3及び両者をつなぐ電気ケーブル4、洗浄排水5を入れるかあるいは通す反応槽6又は配管から構成されている。コンピュータ1は放電電圧、放電エネルギー、放電間隔、電極間距離などを制御する。洗浄排水5の濁度をモニタし、その濁度に応じた放電条件を設定することも可能である。洗浄排水5の処理は、貯留式反応槽6でも流通式反応槽7(図2参照)でもよい。
【0018】
図1は貯留式の反応槽の場合を示しており、水中放電電極3は反応槽6上部より浸漬しても、反応槽6に固定してもよい。流通式の場合は、図2に示すように配管の途中に水中放電電極3を取り付ければよい。いずれも処理後の排水は、配管を通して河川へ放流、下水へ放流又は原水着水囲8へ返送される。
【0019】
図3は、浄水場の凝集沈殿の洗浄排水に本発明を適用した場合の例を示す。通常の凝集沈殿を用いた浄水場では、河川又は井戸などから原水9を取り入れ、
急速混和池10、緩速混和池11を経て、沈殿池12で凝集沈殿、ろ過池13で砂ろ過又は膜ろ過が行われ、配水池14へ続く後工程へと流れている。ろ過池13ではろ材の目詰まりを解消するために、間欠的に逆方向水流により洗浄が行われ、その洗浄排水5は排水池15へ送水される。また排水池15でもその沈殿物17は排泥池16へ、排泥池16の上澄み液18は排水池15へと送水されるのである。沈殿池12で発生した沈殿物は排泥池16へ、排泥池16の上澄み液18は排水池15へと送水され、排水池15の一部19が原水9へと返送され濁質成分を濃縮する。なお、3aはパルス放電装置(放電電極部)である。
【0020】
このような一連の浄水過程では、凝集沈殿・ろ過の際に原水9に含まれる砂やプランクトンを含む濁質成分とともに、クリプトスポリジウムのような病原性微生物が除去される。このため、ろ過洗浄排水5にはこれらの成分が多少なり含まれることになり、排水池15の一部を着水囲8へ返送を繰り返す度に原水側に濃縮され、凝集沈殿・ろ過を行っても配水池14へ混入してしまう恐れが起きる。大腸菌のようなの塩素耐性を持たない微生物の場合には、後工程である塩素注入による殺菌消毒により死滅するが、クリプトスポリジウムのような塩素耐性を持つ生物に対しては、飲料水が汚染される危険が生じてしまい、重大な問題となる。
【0021】
本発明は、図3に示した位置にパルス放電装置を配備することによって、このような濁質成分を含む洗浄排水5中のクリプトスポリジウムでも殺菌消毒でき、飲料水の安全を確保できるものである。
【0022】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0023】
実施例1
(実験方法)
図4に示すように、棒状の対電極3、3を持つ内容積1.2リットルのステンレス鋼製反応容器20を用いて、浄水場から発生する凝集沈殿洗浄排水に、クリプトスポリジウムオーシストを添加した試験用のクリプトスポリジウム添加処理水21の中でパルス放電を行い、クリプトスポリジウムが不活化するかどうかの判定を行った。
【0024】
(実験条件)
パルス放電条件は、パルス電圧5.4kV、対電極直径6mm、放電回数12回または24回、パルスエネルギー:72J/pulse又は144J/pulseである。また各条件に対し、クリプトスポリジウムの添加量は2×107個/リットル、処理水量1リットルである。被処理水には、洗浄排水として浄水場凝集沈殿洗浄排水(濁度54度)、洗浄排水と同じ導電率を有する塩化ナトリウムを溶解した蒸留水、該蒸留水に模擬濁質としてカオリンを懸濁して、濁度40度に調整した水の3種類を用いた。通常、浄水場の洗浄排水の濁度は5度から20度であり、40度は極めて濁っている状態である。
【0025】
放電後の処理水は、濃縮してから顕微鏡でクリプトスポリジウムオーシストの個数を調べ、コントロール群を含めて免疫不全マウスに投与した。各処理条件に対する投与マウス数は3個体である。投与されたマウス糞便中のクリプトスポリジウムオーシストの個数を計数し、コントロール群から排出されるオーシスト数とを比較することでパルス放電処理効果を判定した。
【0026】
(結果)
(1)放電条件が放電回数12回、放電エネルギー72J/pulse、洗浄排水の場合、マウス3個体より得られた不活化率は、それぞれ88.5%、93.7%、97.9%であった。
(2)放電条件が放電回数24回、放電エネルギー72J/pulse、洗浄排水の場合、マウス3個体より得られた不活化率は、それぞれ94.5%、90.0%、99.8%であった。
(3)放電条件が放電回数24回、放電エネルギー144J/pulse、洗浄排水の場合、マウス3個体より得られた不活化率は、それぞれ99.6%、99.8%、92,5%であった。
【0027】
(4)放電条件が放電回数12回、放電エネルギー72J/pulse、塩化ナトリウム溶解蒸留水の場合、マウス3個体より得られた不活化率は、すべて99.9%以上であった。
(5)放電条件が放電回数12回、放電エネルギー72J/pulse、カオリン懸濁した塩化ナトリウム溶解蒸留水の場合、マウス3個体より得られた不活化率は、すべて99.9%以上であった。
この結果からパルス放電処理による洗浄排水中の病原性微生物の殺菌消毒には、高い効果があることが確かめられた。
【0028】
実施例2
本実験では、洗浄排水の濁度による不活化率の変化を調べた。
(実験方法)
図4に示すように、棒状の対電極3、3を持つ内容積1リットルと10リットルの2種類のステンレス鋼製反応容器20を用いて、浄水場から発生する凝集沈殿洗浄排水に、クリプトスポリジウムオーシストを添加した試験用のクリプトスポリジウム添加処理水21の中でパルス放電を行い、クリプトスポリジウムが不活化するかどうかの判定を行った。放電電極としては、電極直径が4mm、6mm、12mmの3種類を用意し、変えていくつかの組合せを作った。
【0029】
(実験条件)
パルス放電条件は、パルス電圧5.4kV、電極直径4、6、12mm、放電回数3,6、12、15、24、30,60回、パルスエネルギー:290J/pulseである。また各条件に対し、クリプトスポリジウムの添加量は2×107個/リットル、処理水量1リットル又は10リットルである。
被処理水には、洗浄排水として洗浄排水と同じ導電率を有する塩化ナトリウムを溶解した蒸留水、該蒸留水に模擬濁質としてカオリンを懸濁して、濁度を2度、10度、40度及び80度に調整した水の4種類を用いた。
(実験結果)
実験結果を第1表に示す。また、これらの実験のうち、不活化率が99.9%以上得られる場合の原水の濁度と放電エネルギーとの関係を表すグラフを図5に示す。このグラフによると、不活化率が99.9%以上を達成しようとする場合には、不活化に必要な放電エネルギーと原水の濁度との関係は、以下の式で表されると考える。
Log(放電エネルギー)=α×log(濁度)
ここでαは、実装置における管径や管材質、配線の抵抗損失などにより定まる装置係数である。また、不活化率が90%以上でよいとすると、必要な放電エネルギーと原水の濁度との関係は、もっとゆるやかな比例関係となる。
【0030】
【表1】
【0031】
実施例3
本実験では、放電電極の直径による不活化率の変化を調べた。
(実験方法)
図4に示すように、棒状の対電極3、3を持つ内容積10リットルのステンレス鋼製反応容器20を用いて、浄水場から発生する凝集沈殿洗浄排水に、クリプトスポリジウムオーシストを添加した試験用のクリプトスポリジウム添加被処理水21の中でパルス放電を行い、クリプトスポリジウムが不活化するかどうかの判定を行った。放電電極としては、第2表に示すように、電極直径が0.05〜25mmの範囲にある9種類を用意した。
【0032】
(実験条件)
パルス放電条件は、パルス電圧5.4kV、対電極間隔6mm、放電回数30回、パルスエネルギー:290J/pulse、消費電力0.24kWh/m3である。また各条件に対し、クリプトスポリジウムの添加量は2×107個/リットル、処理水量10リットルである。
被処理水には、洗浄排水として洗浄排水と同じ導電率を有する塩化ナトリウムを溶解した蒸留水、該蒸留水に模擬濁質としてカオリンを懸濁して、濁度を40度に調整した水を用いた。
(実験結果)
実験結果を第2表に示す。
【0033】
【表2】
【0034】
【発明の効果】
本発明では、固液分離の洗浄排水中においてパルス放電を行う。水中のパルス放電では、紫外線から赤外線までの強力な光線、衝撃波、ラジカルが発生する。この紫外線は、通常殺菌に用いられている紫外線ランプの強度に比べ非常に高く、しかも、紫外線ランプのように単スペクトルではなく連続スペクトルを持つため、紫外線ランプが適用できない洗浄排水のように濁質を多く含む水中においても広範に伝搬し、殺菌消毒することができる。
【0035】
パルス放電では、従来の凝集沈殿・砂ろ過および膜ろ過の洗浄排水を処理するためのUVランプを用いた方法に比べ、UVランプ自身の寿命や交換、UVランプやその保護管表面の汚れや破損などの問題がない。このため、維持管理に必要な時間もコストも少ない。オゾンを用いた処理と比べると、濁質成分との化学反応が少ないため十分な殺菌効果が得られ、しかもオゾンとの化学反応による副生成物の発生がなくクリーンな処理であり、ガスを扱わないため装置の取り扱いも容易である。さらに、熱を用いた方法に比べ、殺菌にかかる時間も短く設置面積も極めて小さい。処理後の排水の温度は処理前と同じであるため、そのまま河川放流しても生態系に影響を与えず、凝集ろ過・沈殿工程に返送しても後のプロセスに影響を与えることはない。
【0036】
シストの消毒殺菌においては、放電電圧や放電周波数が主要因でなく、処理流量に投与する放電エネルギーが重要であり、濁度を含む洗浄排水のような濁水においては、その濁度をモニタし、その濁度に見合った0.01から10kWh/m3、好ましくは0.1〜3kWh/m3の放電エネルギーをコンピュータで制御して放電させることによって、効率よく殺菌消毒できる。コンピュータ制御を行うことで、電気エネルギーを無駄に使用しないため地球温暖化防止に貢献できるだけでなく、放電に伴う電極材料の過剰な消耗を防げるため省資源にも役立つ。また放電電極の直径を0.1〜15mm、好ましくは1〜8mmとして放電させることで、反応容器内に等方的にかつ紫外線を発生し、かつ電極消耗や電極先端の電界強度低下による放電の不安定性を除去し、長時間の安定性を向上させることができる。さらに洗浄排水の一部が原水に返送される場合には、ろ過原水に再びシスト汚染の危険性を取り除き、より安全な水を各家庭に供給することができるのである。
【0037】
また、この処理を行うことで、洗浄排水を河川放流・下水放流しても、下流域に浄水場の飲料水原水を汚染するようなことはない。特に、上流域に牛などの畜産が行われている地域には有効である。魚類の養殖場、農業用水や畜産用水などの産業用水においても有効な殺菌消毒ができる。
本発明における水中放電では、電極の一部が溶出することがあるが、主成分が鉄である電極を用いることで、凝集沈殿の際に溶出した鉄成分が凝集効果を高めるため、固液分離を容易にするだけでなく、鉄分の回収が可能となる。しかも、凝集剤をも減少させることができる。また、重金属を含む電極を用いた場合と比べ、溶出金属の人体への濃縮が起こるようなことはなくなり、安全性が高まる。
【図面の簡単な説明】
【図1】パルス放電電極を設けた貯留式反応槽を用いた場合の処理ブロック図である。
【図2】パルス放電電極を設けた流通式反応槽を用いた場合の処理ブロック図である。
【図3】本発明を浄水場の浄水過程に適用した場合の処理フロー図である。
【図4】本発明の効果確認実験装置のブロック図である。
【図5】実施例2における実験で、不活化率が99.9%以上得られる場合の原水の濁度と放電エネルギーとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 コンピュータ
2 パルス電源
3 水中放電電極
3a パルス放電装置
4 電気ケーブル
5 洗浄排水
6 貯留式反応槽
7 流通式反応槽
8 河川(下水)放流
9 原水
10 急速混和池
11 緩速混和池
12 沈殿池
13 ろ過池
14 配水池
15 排水池
16 排泥池
17 沈殿物
18 上澄み液
19 排水の一部
20 実験用反応槽(反応容器)
21 クリプトスポリジウム添加被処理水
Claims (2)
- ろ過洗浄によって生じるシストを含む洗浄排水にパルス放電を加える消毒方法であって、該パルス放電の放電エネルギーが、
(a)該洗浄排水の濁度と次式の関係にあり、
log(放電エネルギー)=α×log(濁度)
(α:装置によって決まる係数)
しかも
(b)0.01〜10kWh/m 3 −排水量である
放電エネルギーを用いて洗浄排水にパルス放電を加えること
を特徴とするろ過洗浄排水の消毒方法。 - 洗浄排水を導入する貯留式反応槽又は流通式反応部、該貯留式反応槽又は流通式反応部の内部に設置され該洗浄排水の濁度を測定するための濁度計、該貯留式反応槽又は流通式反応部の内部に設置され該洗浄排水にパルス放電を加える少なくとも一対のパルス放電電極より構成される洗浄排水の消毒装置であって、該パルス放電の放電エネルギーが、
(a)該洗浄排水の濁度と次式の関係にあり、
log(放電エネルギー)=α×log(濁度)
(α:装置によって決まる係数)
しかも
(b)0.01〜10kWh/m 3 −排水量である
放電エネルギーを用いて洗浄排水にパルス放電を加えること
を特徴とするろ過洗浄によって生じる洗浄排水に含まれるシストを不活化させる装置。
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