JP4087597B2 - X線像撮像装置の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、X線像を撮像するX線像撮像装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種のX線像撮像装置として、例えば特開2000−28735号公報に開示されたようなものが知られている。このX線像撮像装置は、X線を光に変換するシンチレータがX線入射側に成長されたファイバオプティカルプレートと、このファイバオプティカルプレートのX線出射側に光学的に接続される半導体イメージセンサとを備えている。また、特開2000−28735号公報に開示されたX線像撮像装置においては、X線を遮蔽する金属で作製された枠体により、シフトレジスタ、ボンディングワイヤ、アンプアレイ等へのX線の入射が遮蔽されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開2000−28735号公報に開示されたような構成のX線像撮像装置においては、以下のような問題点を有していることが判明した。
(1) シンチレータが成長されたファイバオプティカルプレートと半導体イメージセンサとの光学的な接続は、接着剤により成されていることから、ファイバオプティカルプレートと半導体イメージセンサとの接着面が剥がれてしまう惧れがある。接着面の剥がれた部分は、固体撮像素子にて撮像した画像上におけるパターンノイズとなってしまう。
(2) ファイバオプティカルプレートをX線遮蔽部材として機能させるためには、ある程度の厚さが必要となり、X線像撮像装置の小型化を阻害する要因となる。
(3) 通常、ファイバオプティカルプレートは、半導体イメージセンサを基台(パッケージ)に配置し、ワイヤボンディングにて電気的に接続した後に、半導体イメージセンサに接着する。このため、ボンディングワイヤを切断しないように、ファイバオプティカルプレートを半導体イメージセンサの受光部に位置合わせして接着する必要があり、半導体イメージセンサへの接着工程が煩雑なものとなってしまう。
【0004】
一方、これらの問題を解決する構成として、ファイバオプティカルプレートを用いることなく、シンチレータを半導体イメージセンサの受光部表面上に成長させるものも考えられる。しかしながら、シンチレータを半導体イメージセンサの受光部表面上に成長させる場合には、半導体イメージセンサの受光部における所望の領域にシンチレータを成長させるためのマスクが必要となる。このため、半導体イメージセンサの受光部に対して適切な位置にマスクを配置してシンチレータを成長させた後に、マスクを取り外し、半導体イメージセンサをアセンブリすることになり、X線像撮像装置の製造工程が煩雑なものになってしまう。
【0005】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、ファイバオプティカルプレートを用いない構成を採用した場合においても、製造工程が煩雑となることなく、X線像撮像装置の小型化を図ることが可能なX線像撮像装置の製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るX線像撮像装置の製造方法は、複数の光電変換素子を配置した受光部を有する固体撮像素子のX線入射方向前方に、受光部に対応する位置に開口部が設けられているX線遮蔽部材を配設し、X線遮蔽部材を固体撮像素子のX線入射方向前方に配設した状態で、受光部表面上にシンチレータを成長させることを特徴としている。
【0012】
本発明に係るX線像撮像装置の製造方法では、固体撮像素子の受光部より外側に位置する部分にX線が照射されるのを防ぐためのX線遮蔽部材が、固体撮像素子の受光部表面上にシンチレータを成長させるためのマスク部材として機能し、シンチレータは、X線遮蔽部材が固体撮像素子のX線入射方向前方に配設された状態で成長される。これにより、固体撮像素子の受光部表面上の適切な位置にシンチレータを確実に成長させることができる。また、X線遮蔽部材を固体撮像素子のX線入射方向前方に配設した状態で、シンチレータを形成することができるので、製造工程が煩雑となるのを防ぐことができる。
【0013】
また、本発明に係るX線像撮像装置の製造方法においては、従来の技術が備えていたファイバオプティカルプレートを用いることなくX線像撮像装置を製造することになるので、小型化や低価格化が可能となるX線像撮像装置の製造方法を実現することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明によるX線像撮像装置及びその製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0015】
(第1実施形態)
まず、図1に基づいて本発明の第1実施形態を説明する。図1は、第1実施形態に係るX線像撮像装置の断面構造を説明するための概略図である。図1に示されるように、X線像撮像装置1は、収容容器(パッケージ)としてのセラミック製の基台2と、固体撮像素子としてのCCDチップ3とを備えている。基台2は、CCDチップ3を収容するものであり、その中央部には、基台2の所定方向に伸びる窪み部4が形成されている。CCDチップ3は、窪み部4の底部に載置され、この窪み部4(基台2)に対して固定されている。
【0016】
CCDチップ3は、複数の光電変換素子を配置した受光部5を有している。CCDチップ3には、図2に示されるように、FFT型CCDが形成されており、垂直シフトレジスタ部分6と水平シフトレジスタ部分7とが設けられている。ここで、図2における垂直シフトレジスタ部分6が受光部5に相当する部分である。この垂直シフトレジスタ部分6は、受光エリア8、オプティカルブラックエリア9、及びアイソレーションエリア10を含んでいる。受光エリア8は、複数の光電変換素子(画素)が2次元的に配置されることにより形成されている。オプティカルブラックエリア9は、受光エリア8の外側に位置しており、光が入射しない構成とされた光電変換素子が受光エリア8を取り囲むようにして配置されている。また、アイソレーションエリア10は、受光エリア8とオプティカルブラックエリア9とを電気的に分離するために、受光エリア8とオプティカルブラックエリア9との間に配置されている。
【0017】
入力部11は、垂直シフトレジスタ部分6及び水平シフトレジスタ部分7に電気信号を注入するためのものである。電荷蓄積期間に受光・撮像によってポテンシャル井戸に蓄積された電荷は、垂直シフトレジスタ部分6と、水平シフトレジスタ部分7とによって、電荷転送期間に順次転送され、時系列信号となる。転送された電荷は、出力部12にて電圧に変換され、画像信号として出力される。
【0018】
垂直シフトレジスタ部分6(各光電変換素子)、水平シフトレジスタ部分7、入力部11、及び出力部12は、図示していないチップ上の配線によってCCDチップ3の端部(受光部5の外側)に配置された電極パッド13のうち対応する電極パッドと電気的に接続されている。
【0019】
窪み部4のCCDチップ3が固定された部分の外側には、複数の電極パッド14が配列されている。これらの電極パッドは、基台2の裏面に配置されている外部接続用の電極端子15と基台2を貫通している内部配線(図示せず)によって電気的に接続されている。
【0020】
CCDチップ3は基台2上にそれぞれの対応する電極パッド13,14同士が近接するように載置されており、対応する電極パッド13,14同士はボンディングワイヤ16(配線)によって電気的に接続されている。ボンディングワイヤ16は、CCDチップ3の受光部5(垂直シフトレジスタ部分6の各光電変換素子)の信号出力を取り出すためのもので、CCDチップ3の受光部5の外側に配設される。電極パッド13は、ボンディングワイヤ16、電極パッド14、内部配線、及び、電極端子15と電気的に接続されることになる。
【0021】
X線像撮像装置1は、板状のX線遮蔽部材21を備えている。X線遮蔽部材21は、CCDチップ3のX線入射方向前方に配設されており、基台2に形成された段部18に接着固定されている。X線遮蔽部材21は、X線が透過し難い材料、たとえばCuW等からなる。X線遮蔽部材21には、CCDチップ3の受光部5(垂直シフトレジスタ部分6)に対応する位置に、この受光部5に向けてX線を入射させるための開口部22が設けられている。
【0022】
X線遮蔽部材21は、CCDチップ3の受光部5(垂直シフトレジスタ部分6)の外側領域(水平シフトレジスタ部分7、入力部11、出力部12、及び電極パッド13)、ボンディングワイヤ16、及び電極パッド14のX線入射方向前方を遮蔽し、これらの部分にX線が入射するのを防いでいる。開口部22は、CCDチップ3の受光部5の外側領域、ボンディングワイヤ16、及び電極パッド14のX線入射方向前方に位置する部分よりも内側に形成されることになる。このように、X線遮蔽部材21が、CCDチップ3の受光部5の外側領域、ボンディングワイヤ16、及び電極パッド14にX線が入射するのを防ぐことにより、X線照射によるノイズの発生やCCDの劣化を低減することができる。なお、開口部22の形状及び大きさは、後述するシンチレータ31の形成工程において、CsI蒸気がX線遮蔽部材21の裏面側に回り込んで、CCDチップ3の受光部5(垂直シフトレジスタ部分6)の外側領域(水平シフトレジスタ部分7、入力部11、出力部12、及び電極パッド13)、ボンディングワイヤ16、及び電極パッド14に付着することがないように設定されている。
【0023】
また、X線像撮像装置1は、入射したX線を受光部5の光電変換素子が感度を有する波長帯の光に変換するシンチレータ31を備えている。このシンチレータ31は、X線遮蔽部材21がCCDチップ3のX線入射方向前方に配設された状態で、受光部5(垂直シフトレジスタ部分6)の表面上に成長、形成されている。シンチレータ31は、CsI、NaI等の柱状結晶、あるいは、Gd2O2S等の粉状結晶からなる。また、シンチレータ31は、X線遮蔽部材21がCCDチップ3のX線入射方向前方に配設された状態で成長させるので、X線遮蔽部材21のX線入射側となる面にも成長、形成されることになる。
【0024】
シンチレータ31の表面には、保護膜32がコーティングされている。この保護膜32は、X線透過性で、水蒸気を遮断するものであり、シンチレータ31側から電気絶縁性の第1の有機膜33、反射薄膜34、電気絶縁性の第2の有機膜35が積層されて構成されている。
【0025】
第1の有機膜33及び第2の有機膜35は、シンチレータ31が空気に触れるのを防止して、潮解性による発光効率の劣化を防いでいる。第1の有機膜33及び第2の有機膜35は、X線透過性が高く且つ水蒸気及びガスの透過が極めて少ない、ポリパラキシリレン(スリーボンド社製、商品名パリレン)、ポリモノクロロパラキシリレン(同社製、商品名パリレンC)等のキシレン系樹脂からなり、CVD(化学的蒸着)法等を用いることで形成される。これらのパリレンによるコーティング膜は、水蒸気及びガスの透過が極めて少なく、撥水性、耐薬品性も高いほか、薄膜でも優れた電気絶縁性を有し、放射線、可視光線に対して透明であるなど有機膜33,35にふさわしい優れた特徴を有している。
【0026】
反射薄膜34は、シンチレータ31で発生した光のうち、CCDチップ3側でなく、X線入射側に向かう光を反射することで発光量の損失を低減し、検出器の検出感度を増大させることができる。また、反射薄膜34は、外部からの直接光を遮断することもできる。反射薄膜34としては、金、銀、アルミなどの金属薄膜が使用できる。
【0027】
基台2には、図1に示されるように、窪み部4を密封するための窓材17が接着固定されている。窓材17は、可視光線を遮断してX線を透過する材料からなり、Be(ベリリウム)、Al(アルミニウム)、C(カーボン)、LexanTM(C、H、Oの化合物)などが用いられる。
【0028】
次に、図3〜図7に基づいて、上述した構成のX線像撮像装置1の製造方法について説明する。図3〜図7は、本第1実施形態に係るX線像撮像装置の製造方法を説明するための概略図である。
【0029】
まず、図3に示されるように、CCDチップ3を基台2に接着剤(たとえば、エポキシ樹脂系接着剤)にて固定する。このとき、CCDチップ3を、受光部5の表面をX線入射側に向けた状態で、窪み部4の底部にCCDチップ3を載置する。そして、対応する電極パッド13と電極パッド14とをボンディングワイヤ16で電気的に接続する。
【0030】
ボンディングワイヤ16による結線を終えると、図4に示されるように、X線遮蔽部材21を、X線遮蔽部材21に形成された開口部22がCCDチップ3の受光部5(垂直シフトレジスタ部分6)のX線入射方向前方に位置するように位置決めした状態で、基台2に接着剤(たとえば、エポキシ樹脂系接着剤)を用いて接着固定する。このとき、X線遮蔽部材21は、CCDチップ3の受光部5の外側領域(水平シフトレジスタ部分7、入力部11、出力部12、及び電極パッド13)、ボンディングワイヤ16、及び電極パッド14のX線入射方向前方を遮蔽することになる。
【0031】
次に、図5に示されるように、TlをドープしたCsIを真空蒸着法によって厚さ約200μmの柱状結晶として成長させることによりシンチレータ31を形成する。このとき、CsI蒸気は、X線遮蔽部材21の開口部22を通って窪み部4内に入ることになり、X線遮蔽部材21はシンチレータ31を成長、形成させるためのマスク部材として機能し、開口部22の位置に対応するCCDチップ3の受光部5(垂直シフトレジスタ部分6)の表面上にシンチレータ31が形成されることになる。したがって、シンチレータ31が、CCDチップ3の受光部5の外側領域(水平シフトレジスタ部分7、入力部11、出力部12、及び電極パッド13)、ボンディングワイヤ16、及び電極パッド14上に付着することはない。なお、X線遮蔽部材21のX線入射側となる面にも、シンチレータ31が成長、形成されることになる。
【0032】
CsIは、吸湿性が高く、露出したままにしておくと空気中の水蒸気を吸湿して溶解してしまう。その保護のため、図6に示されるように、CVD(化学的蒸着)法によりシンチレータ31が形成されたCCDチップ3、X線遮蔽部材21等を含んで、窪み部4全体にわたって厚さ10μmのパリレンで包み込み、第1の有機膜33を形成する。
【0033】
具体的には、金属の真空蒸着と同様に真空中で蒸着によるコーティングを行うもので、原料となるジパラキシリレンモノマーを熱分解して、生成物をトルエン、ベンゼンなどの有機溶媒中で急冷しダイマーと呼ばれるジパラキシリレンを得る工程と、このダイマーを熱分解して、安定したラジカルパラキシリレンガスを生成させる工程と、発生したガスを素材上に吸着、重合させて分子量約50万のポリパラキシリレン膜を重合形成させる工程からなる。
【0034】
CsIの柱状結晶の間には隙間があるが、パリレンはこの狭い隙間にある程度入り込むので、第1の有機膜33は、シンチレータ31に密着し、シンチレータ31を密封する。また、この第1の有機膜33は、CCDチップ3の受光部5の外側領域(水平シフトレジスタ部分7、入力部11、出力部12、及び電極パッド13)、ボンディングワイヤ16、及び電極パッド14上にも形成され、これらを被覆する。このパリレンコーティングにより、凹凸のあるシンチレータ31表面に均一な厚さの精密薄膜コーティングを形成することができる。また、パリレンのCVD形成は、金属蒸着時よりも真空度が低く、常温で行うことができるため、加工が容易である。
【0035】
続いて、図7に示されるように、第1の有機膜33の入射面側の表面に0.15μm厚さのAl膜を蒸着法により積層することで反射薄膜34を形成する。このとき、Al蒸気は、シンチレータ31形成時のCsI蒸気と同様に、X線遮蔽部材21の開口部22を通って窪み部4内に入ることになり、X線遮蔽部材21は反射薄膜34を形成させるためのマスク部材として機能し、CCDチップ3の受光部5(垂直シフトレジスタ部分6)に形成されたシンチレータ31の直上部分の第1の有機膜33上に反射薄膜34が形成されることになる。なお、X線遮蔽部材21のX線入射側となる面にも、反射薄膜34が形成されることになる。
【0036】
蒸着時には、X線遮蔽部材21を配置していても、Al蒸気が僅かながらX線遮蔽部材21の裏側へと回り込んでしまうことがある。しかしながら、CCDチップ3の受光部5の外側領域(水平シフトレジスタ部分7、入力部11、出力部12、及び電極パッド13)、ボンディングワイヤ16、及び電極パッド14が第1の有機膜33で被覆されているので、反射薄膜34がこれらの部分上に直接形成されることがなく、反射薄膜34による電極パッド13、ボンディングワイヤ16、電極パッド14の短絡を効果的に防止できる。
【0037】
そして、再度CVD法により、パリレンを基板全体の表面に10μm厚さで被覆して第2の有機膜35を形成する(図7参照)。この第2の有機膜35は、反射薄膜34のハンドリング等による汚れやはく離、酸化による劣化を防止するためのものである。こうして第1の有機膜33、反射薄膜34、第2の有機膜35を積層させてなる保護膜32が形成される。最後に、窓材17を基台2に接着剤(たとえば、エポキシ樹脂系接着剤)を用いて接着固定することで、図1に示されるX線像撮像装置1が得られる。
【0038】
続いて、X線像撮像装置1の動作を説明する。窓材17を透過して入射したX線は、有機膜33,35、反射薄膜34の全てを透過してシンチレータ31に達する。このX線は、シンチレータ31で吸収され、X線の光量に比例した光が放射される。放射された光のうち、X線の入射方向に逆行した光は、第1の有機膜33を透過して、反射薄膜34で反射される。このため、シンチレータ31で発生した光はほとんど全てがCCDチップ3の受光部5(垂直シフトレジスタ部分6)へと入射する。この結果、効率の良い高感度の測定が可能となる。
【0039】
垂直シフトレジスタ部分6(各光電変換素子)では、光電変換により、この可視光の光量に対応する電気信号が生成されて一定時間蓄積される。この可視光の光量は入射するX線の光量に対応しているから、つまり、各々の光電変換素子に蓄積されている電気信号は、入射するX線の光量に対応することになり、X線画像に対応する画像信号が得られる。光電変換素子に蓄積されたこの画像信号を図示していない信号ラインから電極パッド13、ボンディングワイヤ16、電極パッド14、内部配線を介して最終的には電極端子15から順次出力することにより、外部へと転送し、これを処理することにより、X線像を表示することができる。
【0040】
このように、本第1実施形態によれば、X線遮蔽部材21が、CCDチップ3の受光部5(垂直シフトレジスタ部分6)の表面上にシンチレータ31を成長させるためのマスク部材として機能し、シンチレータ31は、X線遮蔽部材21がCCDチップ3のX線入射方向前方に配設された状態で成長される。これにより、CCDチップ3の受光部5の表面上の適切な位置にシンチレータ31を確実に成長させることができる。また、X線遮蔽部材21をCCDチップ3のX線入射方向前方に配設した状態で、シンチレータ31を形成することができるので、製造工程が煩雑となるのを防ぐことができる。
【0041】
また、本第1実施形態のX線像撮像装置1においては、従来の技術が備えていたファイバオプティカルプレートを用いていないので、X線像撮像装置1の小型化が可能となる。
【0042】
また、本第1実施形態のX線像撮像装置1においては、シンチレータ31を覆って形成されている電気絶縁性の有機膜33,35を更に備えることにより、シンチレータ31とCCDチップ3の受光部5(垂直シフトレジスタ部分6)とを確実に密着させることができ、シンチレータ31が剥がれるのを防ぐことができる。この結果、一端付着したシンチレータ31が剥がれることで、CCDチップ3の特性劣化となるのを防止することができる。
【0043】
(第2実施形態)
次に、図8に基づいて本発明の第2実施形態を説明する。図8は、第2実施形態に係るX線像撮像装置の断面構造を説明するための概略図である。
【0044】
第2実施形態のX線像撮像装置51においては、図8に示されるように、電極パッド13,14とボンディングワイヤ16とを覆って包み込む保護樹脂61が備えられている。この保護樹脂61としては、上述した保護膜32(有機膜33)との接着性が良好な樹脂、例えばアクリル系接着剤である協立化学産業株式会社製WORLD ROCK No.801-SET2(70,000cPタイプ)を用いることが好ましい。保護膜32(有機膜33,35)は、保護樹脂61の表面上に形成されることになる。
【0045】
X線像撮像装置51の製造方法を説明すると、まず、基台2にCCDチップ3を接着固定し、対応する電極パッド13と電極パッド14とをボンディングワイヤ16で電気的に接続した後に、これらの電極パッド13,14とボンディングワイヤ16とを包み込むように樹脂を塗布して硬化させることで保護樹脂61を形成する。これによりボンディングワイヤ16は、樹脂内に封入されて保護されるので、ボンディングワイヤ16の接着強度、機械的強度が増し、以後の製造工程および使用時におけるボンディングワイヤ16の断線、短絡といった破損を効果的に防止できる。
【0046】
その後、X線遮蔽部材21を、X線遮蔽部材21に形成された開口部22がCCDチップ3の受光部5(垂直シフトレジスタ部分)のX線入射方向前方に位置するように位置決めした状態で、基台2に接着剤(たとえば、エポキシ樹脂系接着剤)を用いて接着固定する。そして、第1実施形態と同様に、X線遮蔽部材21をマスク部材としてシンチレータ31を成長させて形成し、更に、保護膜32(第1の有機膜33、反射薄膜34、第2の有機膜35)を形成する。
【0047】
このように、本第2実施形態によれば、上述した第1実施形態と同様に、X線遮蔽部材21をCCDチップ3の受光部5(垂直シフトレジスタ部分6)表面上にシンチレータ31を成長させるためのマスク部材として機能させることで、X線像撮像装置51の製造工程が煩雑となるのを防ぐことができる。また、従来の技術が備えていたファイバオプティカルプレートを用いていないので、X線像撮像装置51の小型化や低価格化が可能となる。
【0048】
更に、本第2実施形態のX線像撮像装置51においては、電極パッド13,14とボンディングワイヤ16とを覆って包み込む保護樹脂61を備えているので、これらの電極パッド13,14とボンディングワイヤ16とにシンチレータ31が付着するのを防ぎ、電極パッド13,14とボンディングワイヤ16とが劣化するのを防ぐことができる。
【0049】
また、本第2実施形態のX線像撮像装置51においては、保護樹脂61の表面上に保護膜32(有機膜33,35)が形成されて、ボンディングワイヤ16が更に保護されるので、使用時のボンディングワイヤ16の破損を効果的に防止できる。
【0050】
(第3実施形態)
次に、図9に基づいて本発明の第3実施形態を説明する。図9は、第3実施形態に係るX線像撮像装置の断面構造を説明するための概略図である。
【0051】
第3実施形態のX線像撮像装置71においては、固体撮像素子として裏面照射型のCCDチップ81を用いている。CCDチップ81は、厚さ約300〜600μm程度のP型シリコン基板からなり、たとえばシリコンのP+層とその上に形成されたPエピタキシャル層とで構成されている。このCCDチップ81のPエピタキシャル層の表面には、CCD82が形成され、そのPエピタキシャル層と反対側のCCD82に対応する部分では、P+層の一部が除去されることでPエピタキシャル層が露出されて光ガイド凹部が形成され、アキュームレーション層が形成されている。このため、CCDチップ81は、CCD82を含む薄型化された薄型部分84が設けられている。なお、薄型部分84は、約15〜40μmの厚さとなっている。
【0052】
基台2の窪み部4の底部には、一方の面側にコンタクトパッド73が形成されている配線基板72が載置され、基台2に固定されている。CCDチップ81は、CCD82が形成された面の裏面側が光入射面となるように、配線基板72上に配設されている。これにより、CCDチップ81においては、薄型部分84のCCD82の裏面側となる部分が受光部となる。CCDチップ81の電極パッド(図示せず)は、導電性バンプ74を介して、配線基板72のコンタクトパッド73と電気的に接続(バンプボンディング)されている。
【0053】
また、配線基板72のコンタクトパッド73と基台2の電極パッド14とは、ボンディングワイヤ16により電気的に接続されている。これにより、CCD82で得られた信号電荷がCCDチップ81の電極パッド、導電性バンプ74、コンタクトパッド73、ボンディングワイヤ16、電極パッド14、及び電極端子15を通って外部に取り出されるようになっている。
【0054】
X線像撮像装置71は、第1実施形態のX線像撮像装置1と同様に、X線遮蔽部材21を備えている。このX線遮蔽部材21は、CCDチップ81のX線入射方向前方に配設されており、基台2に接着固定されている。X線遮蔽部材21には、CCDチップ81の薄型部分84(受光部)に対応する位置に、この薄型部分84に向けてX線を入射させるための開口部22が設けられている。
【0055】
X線遮蔽部材21は、CCDチップ81の薄型部分84の外側領域(ベベル部分85、枠部分86)、コンタクトパッド73、ボンディングワイヤ16、電極パッド14のX線入射方向前方を遮蔽し、これらの部分にX線が入射するのを防いでいる。開口部22は、CCDチップ81の薄型部分84の外側領域(ベベル部分85、枠部分86)のX線入射方向前方に位置する部分よりも内側ぐらいに形成されることになる。このように、X線遮蔽部材21が、CCDチップ81の薄型部分84の外側領域、コンタクトパッド73、ボンディングワイヤ16、電極パッド14にX線が入射するのを防ぐことにより、X線照射によるノイズの発生やCCDの劣化を低減することができる。なお、開口部22の形状及び大きさは、シンチレータ31の形成工程におけるCsI蒸気、及び、反射薄膜34の形成工程におけるAl蒸気がX線遮蔽部材21の裏面側に回り込んで、CCDチップ81の薄型部分84の外側領域(ベベル部分85、枠部分86)、コンタクトパッド73、ボンディングワイヤ16、電極パッド14に付着することがないように設定されている。
【0056】
シンチレータ31は、X線遮蔽部材21がCCDチップ81のX線入射方向前方に配設された状態で、薄型部分84(受光部)の表面上に成長、形成されている。また、シンチレータ31の表面には、保護膜32(第1の有機膜33、反射薄膜34、第2の有機膜35)がコーティングされている。
【0057】
次に、図10〜図14に基づいて、上述した構成のX線像撮像装置71の製造方法について説明する。図10〜図14は、本第3実施形態に係るX線像撮像装置の製造方法を説明するための概略図である。
【0058】
まず、図10に示されるように、CCDチップ81を配線基板72上に導電性バンプ74を介して設置し、次にその配線基板72を基台2に接着剤(たとえば、エポキシ樹脂系接着剤)にて固定する。このとき、CCDチップ81を、CCD82が形成された面の裏面側をX線入射側に向けた状態で、載置する。
【0059】
CCDチップ81を設置、固定すると、図11に示されるように、配線基板72のコンタクトパッド73と電極パッド14とをボンディングワイヤ16で電気的に接続する。そして、X線遮蔽部材21を、X線遮蔽部材21に形成された開口部22がCCDチップ81の薄型部分84(受光部)のX線入射方向前方に位置するように位置決めした状態で、基台2に接着剤(たとえば、エポキシ樹脂系接着剤)を用いて接着固定する。このとき、X線遮蔽部材21は、CCDチップ81の薄型部分84の外側領域(ベベル部分85、枠部分86)、コンタクトパッド73、ボンディングワイヤ16、電極パッド14のX線入射方向前方を遮蔽することになる。
【0060】
次に、図12に示されるように、TlをドープしたCsIを真空蒸着法によって厚さ約200μmの柱状結晶として成長させることによりシンチレータ31を形成する。このとき、CsI蒸気は、X線遮蔽部材21の開口部22を通って窪み部4内に入ることになり、X線遮蔽部材21はシンチレータ31を成長、形成させるためのマスク部材として機能し、開口部22の位置に対応するCCDチップ81の薄型部分84の表面上にシンチレータ31が形成されることになる。したがって、シンチレータ31が、CCDチップ81の薄型部分84の外側領域(ベベル部分85、枠部分86)、コンタクトパッド73、ボンディングワイヤ16、電極パッド14上に付着することはない。
【0061】
続いて、図13に示されるように、CVD(化学的蒸着)法によりシンチレータ31が形成されたCCDチップ81及びX線遮蔽部材21が配設された基台2の窪み部4全体を厚さ10μmのパリレンで包み込み、第1の有機膜33を形成する。この第1の有機膜33は、CCDチップ81の薄型部分84の外側領域(ベベル部分85、枠部分86)、コンタクトパッド73、ボンディングワイヤ16、電極パッド14上にも形成され、これらを被覆する。
【0062】
次に、図14に示されるように、第1の有機膜33の入射面側の表面に0.15μm厚さのAl膜を蒸着法により積層することで反射薄膜34を形成する。このとき、Al蒸気は、シンチレータ31形成時のCsI蒸気と同様に、X線遮蔽部材21の開口部22を通って窪み部4内に入ることになり、X線遮蔽部材21は反射薄膜34を形成させるためのマスク部材として機能し、CCDチップ81の薄型部分84に形成されたシンチレータ31の直上部分の第1の有機膜33上に反射薄膜34が形成されることになる。そして、再度CVD法により、パリレンを基板全体の表面に10μm厚さで被覆して第2の有機膜35を形成する(図14参照)。第1の有機膜33、反射薄膜34、及び有機膜35の形成は、第1実施形態と同様にして行う。最後に、窓材17を基台2に接着剤(たとえば、エポキシ樹脂系接着剤)を用いて接着固定することで、図9に示されるX線像撮像装置71が得られる。
【0063】
このように、本第3実施形態によれば、第1実施形態と同様に、X線遮蔽部材21が、CCDチップ81の薄型部分84(受光部)表面上にシンチレータ31を成長させるためのマスク部材として機能し、シンチレータ31は、X線遮蔽部材21がCCDチップ81のX線入射方向前方に配設された状態で成長される。これにより、CCDチップ81の薄型部分84の表面上における適切な位置にシンチレータ31を確実に成長させることができる。また、X線遮蔽部材21をCCDチップ81のX線入射方向前方に配設した状態で、シンチレータ31を形成することができるので、製造工程が煩雑となるのを防ぐことができる。もちろん、X線像撮像装置71の小型化も可能となる。
【0064】
通常、CCDチップ81の薄型部分84は機械的強度が弱く、薄型部分84に対してシンチレータを形成したファイバオプティカルプレートを光学的に接続することは困難である。しかしながら、本第3実施形態よれば、機械的強度が弱い薄型部分84に対して、容易にシンチレータ31を設けることができる。
【0065】
また、本第3実施形態のX線像撮像装置71においては、CCDチップ81の薄型部分84に対してのみシンチレータ31、反射薄膜34を形成しており、特に、CCDチップ81のベベル部分85にはこれらのシンチレータ31、反射薄膜34を形成していない。これにより、ベベル部分85に入射した光がベベル部分85と反射薄膜34との間で多重反射して、CCDチップ81の薄型部分84に入射するのを防止することができる。
【0066】
(第4実施形態)
次に、図15に基づいて本発明の第4実施形態を説明する。図15は、第4実施形態に係るX線像撮像装置の断面構造を説明するための概略図である。
【0067】
第4実施形態のX線像撮像装置91においては、CCDチップ81を冷却する冷却器としてのペルチェ素子95が設けられている。ペルチェ素子95は、基台2の窪み部4の底部にペルチェ素子95の発熱部が載置された状態で、この基台2に固着されている。発熱部とは反対側に位置するペルチェ素子95の吸熱部の上面には、配線基板72が載置され、この吸熱部の上面に固着されている。ペルチェ素子95の発熱部側がペルチェ素子95に電源を供給するための電源供給部(図示せず)に接続されている。
【0068】
本第4実施形態においても、第3実施形態と同様に、X線遮蔽部材21を、CCDチップ81の薄型部分84(受光部)表面上にシンチレータ31を成長させるためのマスク部材として機能させることで、X線像撮像装置91の製造工程が煩雑となるのを防ぐことができると共に、X線像撮像装置91の小型化や低価格化を図ることが可能となる。
【0069】
なお、第1〜第4実施形態において、保護膜32としてパリレン製の有機膜33,35の間に反射薄膜34を挟み込んだ構造のものについて説明したが、第1の有機膜33と第2の有機膜35の材料は異なるものでも良く、反射薄膜34として金等の腐食に強い材料を使用しているような場合は、第2の有機膜35自体を設けなくてもよい。また、固体撮像素子は、CCDチップ3,81に限られることなく、アモルファスシリコン製のフォトダイオード(PD)アレイと薄膜トランジスタ(TFT)で形成したものでもよいし、MOS型のイメージセンサでもよい。
【0070】
また、第3及び第4実施形態において、第2実施形態と同様に、ボンディングワイヤ16を保護樹脂にて覆うようにしてもよい。
【0071】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、ファイバオプティカルプレートを用いない構成を採用した場合においても、製造工程が煩雑となることなく、X線像撮像装置の小型化を図ることが可能なX線像撮像装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係るX線像撮像装置の断面構成を説明するための概略図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るX線像撮像装置に含まれる、CCDチップの構成を説明するための概略図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るX線像撮像装置の製造方法を説明するための概略図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るX線像撮像装置の製造方法を説明するための概略図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係るX線像撮像装置の製造方法を説明するための概略図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係るX線像撮像装置の製造方法を説明するための概略図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係るX線像撮像装置の製造方法を説明するための概略図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係るX線像撮像装置の断面構成を説明するための概略図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係るX線像撮像装置の断面構成を説明するための概略図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係るX線像撮像装置の製造方法を説明するための概略図である。
【図11】本発明の第3実施形態に係るX線像撮像装置の製造方法を説明するための概略図である。
【図12】本発明の第3実施形態に係るX線像撮像装置の製造方法を説明するための概略図である。
【図13】本発明の第3実施形態に係るX線像撮像装置の製造方法を説明するための概略図である。
【図14】本発明の第3実施形態に係るX線像撮像装置の製造方法を説明するための概略図である。
【図15】本発明の第4実施形態に係るX線像撮像装置の断面構成を説明するための概略図である。
【符号の説明】
1,51,71,91…X線像撮像装置、2…基台、3…CCDチップ、5…受光部、16…ボンディングワイヤ、21…X線遮蔽部材、22…開口部、31…シンチレータ、32…保護膜、33…第1の有機膜、34…反射薄膜、35…第2の有機膜、61…保護樹脂、81…CCDチップ、82…CCD、84…薄型部分、95…ペルチェ素子。
Claims (1)
- 複数の光電変換素子を配置した受光部を有する固体撮像素子のX線入射方向前方に、前記受光部に対応する位置に開口部が設けられているX線遮蔽部材を配設し、
前記X線遮蔽部材を前記固体撮像素子のX線入射方向前方に配設した状態で、前記受光部表面上にシンチレータを成長させることを特徴とするX線像撮像装置の製造方法。
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