JP4086528B2 - 鉄道車両の軸箱支持装置 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄道車両の軸箱支持装置に関する。
【０００２】
【従来の技術】
例えば、新幹線の軸箱支持装置では、特開２０００−２８０９０３号公報に示されるように、車軸を回転可能に納めた軸箱と、軸箱の車体前後方向両側部から水平に延びる２本の支持腕と、両支持腕にそれぞれ配置されて台車枠の上下荷重を負担する軸バネと、各軸バネ内に配置されて前記軸箱の台車枠に対する上下左右及び前後方向の運動を弾性支持する円筒積層ゴムとを備えたウイングバネ式軸箱支持装置や、特開平５−２３８３８９号公報に示されるように、車軸を回転可能に納めた軸箱と、該軸箱の真上に配置されて台車枠の上下荷重を負担する軸バネと、前記軸箱の車体前後方向一方の側部から水平に延びる支持腕と、該支持腕の先端と前記台車枠との間に配置されて前記軸箱の台車枠に対する上下左右及び前後方向の運動を弾性支持する円筒積層ゴムとを備えた軸はり式軸箱支持装置が用いられている。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、ウイングバネ式軸箱支持装置は、３００ｋｍ／ｈを越えるような高速走行をした場合に、軸箱支持装置の構成部品が多く、軸バネ下質量も大きいために地盤振動が激しくなり、周辺の環境破壊を招く虞がある。軸はり式軸箱支持装置は、ウイングバネ式よりも構成部品が少なくバネ下質量が小さいため、地盤振動への影響は少ないが、支持腕の長さによる円弧運動が軸箱の上下変位の中に混在し、台車の左右又は対角位置の軸バネ上下変位量が異なる場合は、前後車軸の平行度と対角寸法に狂いが生じるため、走行性能を維持できる範囲での上下変位に限界がある。また、支持腕の先で左右力を受けるため、車軸を支承する軸受けに対して余分なコジリ荷重が作用するという欠点がある。
【０００４】
そこで本発明は、さらなる高速化を目指し、地盤振動による周辺の環境破壊を防止するとともに、軸はり式に見られる欠点を解消して、重量軽減と走行性能の向上を図った鉄道車両の軸箱支持装置を提供することを目的としている。
【０００５】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するため、本発明は、車軸を回転可能に納めた軸箱と、該軸箱の真上に配置されて台車枠の上下荷重を負担するコイル状の軸バネと、前記軸箱の車体前後方向一方の側部から水平方向に延びる支持腕と、前記台車枠の側梁に鉛直方向に設けられた支持軸と、前記支持腕の先端に上下方向に形成された孔内に配置され、前記支持軸の下端に取り付けられて前記軸箱を台車枠に対して上下左右及び前後方向に弾性支持する円筒積層ゴムとを備えた鉄道車両の軸箱支持装置において、前記円筒積層ゴムは、間に空隙を有する上下一対の円筒積層ゴムから構成され、前記空隙内には、外筒との間に僅かなスリットを形成する円盤が前記支持軸に設けられるとともに高粘度の液体が封入され、前記軸バネ内に前記円筒積層ゴムとは別の円筒積層ゴムを配置し、前記支持軸は、上端部と中間部とに下方から上方へ向けて細くなるテーパ軸部をそれぞれ形成し、前記側梁に形成した下方から上方へ向けて細くなるテーパ孔に、前記両テーパ軸部をそれぞれ係合して、前記側梁の上部から螺着されるボルトにて前記支持軸を前記側梁に取り付けることを特徴としている。
【０００６】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に示される参考例及び実施形態例に基づいて説明する。図１及び図２は第１参考例を示すもので、軸箱支持装置１は、車軸２を回転可能に納めた軸箱３と、該軸箱３の真上に配置されて台車枠４の上下荷重を負担するコイル状の軸バネ５と、前記軸箱３の車体前後方向一方の側部から水平方向に延びる支持腕６と、該支持腕６の先端と前記台車枠４との間に配置されて前記軸箱３を台車枠４に対して上下左右及び前後方向に弾性支持する円筒積層ゴム７とを備えている。
【０００７】
前記軸バネ５は、二重のコイルバネで、その上下方向中心線を車軸２の上下方向中心線上となる前記軸箱３の真上にして配置されており、上下方向の荷重の大部分を負担するようバネ定数が設定されている。前記支持腕６は、前記軸箱３と支持軸８とが近接するように従来よりも短く形成されている。
【０００８】
前記円筒積層ゴム７は、間に空隙９を有する上下一対の円筒積層ゴム７ａ，７ｂから構成され、前記支持腕６の先端に上下方向に形成された孔６ａ内に配置され、台車枠４に鉛直方向に設けられた前記支持軸８に取り付けられている。各円筒積層ゴム７ａ，７ｂは、支持軸８に取り付けられる内筒の車体前後方向に円筒状のゴムと金属板とを交互に複数枚積層し、車体左右方向にゴムをくりぬいた空間部を形成しており、上下方向の荷重の２〜３割を負担し、また、左右・前後方向にも荷重負担ができるように、ゴム強度に余裕を持たせて設定されている。
【０００９】
前記支持軸８は、台車枠４の側梁１０に形成した下方から上方へ向けて細くなるテーパ孔１０ａ，１０ｂに、テーパ軸部８ａ，８ｂをそれぞれ係合して、側梁１０上部から螺着されるボルト１１にて側梁１０に取り付けられている。前記空隙９内には、外筒９ａとの間に僅かなスリットを形成する円盤９ｂが支持軸８に設けられるとともに、該円盤９ｂの上下にシリコンオイル等の高粘度の液体Ｌが封入されている。これにより、円筒積層ゴム７ａ，７ｂに作用する上下方向の変位に対する減衰機能が発揮される。
【００１０】
この構成によれば、１本の支持腕６で済むため、バネ下重量を軽減でき、また、軸箱３が真上に配置された軸バネ５と、短い支持腕６先端の上下一対の円筒積層ゴム７ａ，７ｂとで支持されるから、軸箱３の動きは垂直方向に近い動きとなり、軸箱３の上下変位の中に混在する円弧運動が少なくなる。さらに、支持腕６が短いから、車軸２を支承する軸受けに対して作用する左右力によるコジリモーメントも小さくなり、軸受けに対する攻撃性が低下する。しかも、上下一対の円筒積層ゴム７ａ，７ｂ間の空隙９に高粘度の液体Ｌを封入して減衰機能を発揮させることにより、従来用いられていた軸ダンパを廃止できてさらなるバネ下重量の軽減が図れる。また、支持軸８を台車枠４にテーパ結合することにより、ガタの無い取付構造となるとともに、支持軸８と台車枠４との間に水が進入して錆が発生する不具合を解消することができる。
【００１１】
図３及び図４は本発明の一実施形態例を示すもので、本実施形態例及び以降の参考例において前記第１参考例と同一要素には同一の符号を付して説明を簡略にする。本実施形態例は、前記第１参考例の構造に加えて、軸バネ５内に円筒積層ゴム１２を配置したもので、該円筒積層ゴム１２は、軸箱３の上面に設けられた支持軸１３に取り付けられ、台車枠４の断面ハット型バネ受け座１４内に挿入支持されている。
【００１２】
この構成により、前記第１参考例の効果に加えて、段違いに平行配置した軸箱３側部の円筒積層ゴム７ａ，７ｂと軸箱３上部の円筒積層ゴム１２とにより、軸箱３の動きをより垂直変位に近づけることができ、輪軸の軸間距離、対角寸法の変化を小さくする作用を発揮して、走行性能の向上を図ることができる。
【００１３】
図５及び図６は本発明の第２参考例を示すもので、台車枠４の上下荷重を負担する軸バネ５を真上に配置した軸箱３は、車体前後方向両側部から水平方向に延びる支持腕６，６を有し、各支持腕６の先端と前記台車枠４との間にそれぞれ前記円筒積層ゴム７ａ，７ｂを配置している。
【００１４】
この構成により、各円筒積層ゴム７が平行配置されるので、軸箱３の動きをより垂直変位に近づけるとともに、両円筒積層ゴム７の上下一対の円筒積層ゴム７ａ，７ｂ間に封入した液体Ｌによる減衰効果を拡大して、走行性能の向上を図ることができる。また、一方の円筒積層ゴムに減衰機能の無い円筒積層ゴムを使用した場合は、コストの低減を図れるとともに、円筒積層ゴムの耐久性を異ならしめるから、両円筒積層ゴムが同時に壊れることを防止する保守上の安全性を図る効果を期待することも可能である。
【００１５】
図７は本発明の第３参考例を示すもので、本参考例は、軸バネ５をその上下方向中心線Ｃ１を前記車軸２の上下方向中心線Ｃ２よりも前記支持腕６と反対側に偏倚させて配置したもので、上下方向の荷重によって支持軸８を中心にして軸箱３に発生する回転モーメントを軸バネ５の偏倚より打ち消して、軸箱３の動きをより垂直変位に近づけるものである。
【００１６】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の鉄道車両の軸箱支持装置は、軸箱を、軸箱の真上に配置される軸バネと、軸箱の側部から車体前後方向に延びる支持腕先端と台車枠との間に配置される間に空隙を有する上下一対の円筒積層ゴムとで支持したので、バネ下重量を軽減でき、地盤振動による周辺の環境破壊を防止するとともに、軸箱の動きが垂直方向に近い動きとなり、軸箱の上下変位の中に混在する円弧運動が少なくなり、輪軸の軸間距離、対角寸法の変化を小さくして、走行性能の向上を図ることができる。また、車軸を支承する軸受けに対して作用する左右力によるコジリモーメントも小さくなり、軸受けに対する攻撃性が低下する。さらに、上下一対の円筒積層ゴム間の空隙に高粘度の液体を封入して減衰機能を発揮させることにより、従来用いられていた軸ダンパを廃止できてさらなるバネ下重量の軽減が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図１】 第１参考例の軸箱支持装置を示す断面側面図
【図２】 同じく断面平面図
【図３】 第２実施形態例の軸箱支持装置を示す断面側面図
【図４】 同じく断面平面図
【図５】 第２参考例の軸箱支持装置を示す断面側面図
【図６】 同じく断面平面図
【図７】 第３参考例の軸箱支持装置を示す断面側面図
【符号の説明】
１…軸箱支持装置、２…車軸、３…軸箱、４…台車枠、５…軸バネ、６…支持腕、７ａ，７ｂ…上下一対の円筒積層ゴム、８…支持軸、９…空隙、Ｌ…液体、１２…円筒積層ゴム

Claims (1)

1. 車軸を回転可能に納めた軸箱と、該軸箱の真上に配置されて台車枠の上下荷重を負担するコイル状の軸バネと、前記軸箱の車体前後方向一方の側部から水平方向に延びる支持腕と、前記台車枠の側梁に鉛直方向に設けられた支持軸と、前記支持腕の先端に上下方向に形成された孔内に配置され、前記支持軸の下端に取り付けられて前記軸箱を台車枠に対して上下左右及び前後方向に弾性支持する円筒積層ゴムとを備えた鉄道車両の軸箱支持装置において、前記円筒積層ゴムは、間に空隙を有する上下一対の円筒積層ゴムから構成され、前記空隙内には、外筒との間に僅かなスリットを形成する円盤が前記支持軸に設けられるとともに高粘度の液体が封入され、前記軸バネ内に前記円筒積層ゴムとは別の円筒積層ゴムを配置し、前記支持軸は、上端部と中間部とに下方から上方へ向けて細くなるテーパ軸部をそれぞれ形成し、前記側梁に形成した下方から上方へ向けて細くなるテーパ孔に、前記両テーパ軸部をそれぞれ係合して、前記側梁の上部から螺着されるボルトにて前記支持軸を前記側梁に取り付けることを特徴とする鉄道車両の軸箱支持装置。

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