JP4077710B2 - 空間安定化装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、航空機、船舶、人工衛星等の、動揺を伴うプラットフォーム上に設置されたカメラ、通信アンテナ、望遠鏡等のペイロードを慣性空間に対して安定化制御する空間安定化装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の空間安定化装置は、例えば、船体に搭載されたレーダの動揺安定制御装置があり、船体に搭載された3軸レートジャイロにより船体の動揺速度信号を発生し、レーダの方向角に応じて方向修正速度信号を演算してレーダの俯仰角、旋回角を駆動している(例えば、特許文献1参照)。
また、従来の空間安定装置は、ステーブルプラットフォーム方式の空間安定装置では、ペイロードに設置した慣性センサにより、ペイロードの慣性空間に対する運動をジャイロ等の慣性センサにより検出し、その情報を制御器にフィードバックして、ペイロードの慣性空間に対する動揺を抑えるようにアクチュエータを駆動する。一方、ストラップダウン方式の空間安定装置では、ジャイロ等の慣性センサをプラットフォーム上に設置して、慣性空間に対するプラットフォームの動揺を検出し、プラットフォームの動揺を打ち消すように、ペイロードをプラットフォームに対して相対的に駆動して、ペイロードの指向軸を空間安定化する(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開昭50−61589号公報(第1−2頁、図1参照)
【非特許文献1】
吉田憲正著「空間安定装置の高精度化の研究(第1報、ステーブルプラットフォーム方式とストラップダウン方式の特性比較)」日本機械学会論文集C編65巻630号、1999年2月発行、pp.485-492参照
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の空間安定化装置は、ステーブルプラットフォーム方式では、ペイロード全体を駆動してペイロードの指向軸を安定化させるため、プラットフォームに対して相対的に大型のペイロードの場合は、ペイロードを駆動すること自体が困難であった。また、ペイロードの動揺を慣性センサで検出して該動揺を抑えるようにフィードバック制御してアクチュエータでペイロードを駆動するため、アクチュエータと慣性センサとの間のペイロードを含む機械剛性の高さが上記フィードバック制御の制御性に係わる。一方、ストラップダウン方式では、ペイロード全体を動かさなくても、例えばペイロードの指向軸を変化させる小型の駆動鏡だけを駆動して空間安定を実現可能であるが、ペイロード自体の機械剛性が低かったり、アクチュエータと慣性センサが設置されたプラットフォームとの間の機械剛性が低いと、慣性センサからの動揺情報に基づいて該動揺をキャンセルするようにアクチュエータを駆動しても、ペイロードの指向軸を正しく制御していることにはならない。
このように、従来の空間安定化装置は、いずれの方式もペイロード自体およびアクチュエータ・慣性センサ間の高い機械剛性が要求され、この機械剛性の制約から高い制御精度を得ることが困難であった。またステープルプラットフォーム方式では機械剛性によって空間安定化制御系が不安定化されやすく、実現可能な制御帯域が制限されて、制御精度の限界が生じていた。さらに、ペイロードに高い機械剛性が必要とされるため、ペイロードの軽量化に限界があった。
【0005】
この発明は、上記のような問題点を解消するために成されたものであって、ペイロードやプラットフォームの機械剛性に対する要求を緩和して、ペイロードやプラットフォームの構造の軽量化を図ると共に、空間安定化制御における高い制御帯域および制御精度向上の達成を実現することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る空間安定化装置は、慣性空間に対して動揺するプラットフォームに搭載された光学機器あるいは通信アンテナから成るペイロードの指向軸方向を慣性空間に対して安定化制御する装置構成であって、上記ペイロードの構成要素で該ペイロードの指向軸方向の決定に寄与する複数の指向軸構成要素(光学系要素あるいは電波系要素)の慣性空間に対する運動情報をそれぞれ検出する複数のセンサと、上記ペイロードの指向軸方向の変動を推定する指向軸変動推定手段とを備える。上記各センサは、上記指向軸構成要素毎の慣性空間に対する並進および回転の一方あるいは双方の変動情報を上記運動情報として検出する。そして、上記指向軸変動推定手段は、上記指向軸構成要素毎に決定される上記指向軸変動の感度情報を用いて、上記各センサからの該指向軸構成要素毎の上記各変動情報を合成する演算を行い、上記ペイロードの指向軸方向の変動を推定する。
【0007】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を図について説明する。図1は、この発明の実施の形態1による空間安定化装置を備えたプラットフォーム及びペイロードを示す構成図である。ここでは、人工衛星等のプラットフォーム2に、大きな反射光学系を有する望遠鏡等のペイロード3を搭載し、慣性空間1(以下、慣性系1と称す)に対するプラットフォーム2の動揺5によるペイロード指向軸4の変動を抑制して慣性系1に対して指向軸方向を安定化制御する。
図に示すように、ペイロード3は、光学系要素としての主鏡12、副鏡13,駆動鏡10、像面検出器11にて構成され、これら光学系要素の慣性系1に対する位置関係によって、ペイロード3の指向軸4の慣性系1に対する方向が決まる。このようにペイロード3の指向軸方向の決定に寄与する光学系要素10〜13を以下、指向軸決定要素と呼ぶ。なお、光学系要素とは、レンズ、鏡など光を反射や透過させる光学素子単体で、それ自体剛であるものとする。また、この場合、ペイロード3とプラットフォーム2との間、また各指向軸決定要素10〜13の間の機械剛性は必要ない。
【0008】
各指向軸決定要素10〜13には、慣性空間に対する運動情報を検出する慣性センサ6をそれぞれ設け、各慣性センサ6からの検出情報に基づいて、ペイロード3の指向軸方向の変動を指向軸変動推定部7にて推定する。駆動制御装置8は、推定された指向軸方向の変動を無くすように、駆動鏡10の方向角を調整するアクチュエータ9を駆動制御し、これにより指向軸4の方向は安定化する。
このように、ペイロード3の各指向軸決定要素10〜13に設けられた慣性センサ6、指向軸変動推定部7、指向軸方向を変化させるアクチュエータ9及びその駆動制御装置8にて空間安定化装置は構成され、これによりペイロード3の指向軸方向は慣性系1に対して安定化制御される。
【0009】
以下、空間安定化制御の詳細を説明するが、まず、指向軸方向の変動を推定する指向軸変動推定部7での処理について説明する。
図1のような構成の光学系ペイロード3では、指向軸方向をZ、駆動鏡10による光軸の折り曲げ方向(Z軸と直交)をYとすると、X軸回りおよびY軸回りの指向変動ΔθX、ΔθYは、指向軸決定要素である主鏡12、副鏡13、駆動鏡10および像面検出器11の慣性系1に対する並進および回転の変動(δXi、δYiおよびφXi、φYi;ただし、i=M1、M2、MS、IMはそれぞれ主鏡12、副鏡13、駆動鏡10、像面検出器10を表す。)によって、以下の関係式で表される。
【0010】
【数1】
Figure 0004077710
【0011】
ここで、Xi、Yiは各指向軸決定要素10〜13の光学主軸に垂直な局所座標であって、例えば像面検出器11のXIM軸はペイロード3のX軸と平行な軸、YIM軸はペイロード3のZ軸方向に平行な軸である。また図1の構成では、主鏡12、副鏡13のXi軸、Yi軸はいずれもペイロード3のX軸、Y軸と平行であり、駆動鏡10のXi軸はペイロード3のX軸と平行、Yi軸はペイロード3のY軸をX軸回りに時計回りに45°だけ傾けた軸である。また、式中のaXXi、aYYi、bXYi、bYXiは、光学系によって決まる係数であり、それぞれ指向軸決定要素iの回転変動φXi、φYi、並進変動δYi、δXiに対するX軸またはY軸回りの指向変動ΔθX、ΔθYの感度を示す。
ただし、指向誤差および並進・回転変動は微小量であるとして、線形近似を行っている。また、ペイロード指向軸4のZ軸回りの回転は、像回転に対応していて、空間安定化装置によっては像回転に対する空間安定も必要とされることがあるが、ここでは制御の対象外とする。
【0012】
なお、より一般的な光学系構成に対しては、光学系を構成する各要素(指向軸決定要素)の慣性系1に対する並進・回転の変動量(δXi、δYi・φXi、φYi)と指向変動(ΔθX、ΔθY)との関係は、以下の関係式で表される。この場合も微小量に対する線形近似を行っている。
【0013】
【数2】
Figure 0004077710
【0014】
また、像回転に対する空間安定が要求される場合、像回転に対応するペイロード指向軸4のZ軸回りの変動を含めると、以下の関係式となる。
【数3】
Figure 0004077710
【0015】
次に、指向軸決定要素10〜13の慣性系1における並進および回転変動(δi,φi)を、各指向軸決定要素10〜13上に設置した慣性センサ6の出力から測定する具体的方法について説明する。ここで、慣性センサ6とは、物体の慣性系1に対する並進運動情報(位置、速度、加速度等)または回転運動情報(角度、角速度、角加速度等)を検出するセンサの総称である。具体的には、並進運動情報を検出する加速度計や、回転運動情報を検出するジャイロ、ジッタセンサ(角度、角速度等を検出する広帯域の特殊センサ)等を指す。
図2(a)、図2(b)は、指向軸決定要素10〜13上の慣性センサ6の2種の配置例を、平面図および側面図で示すものである。図2(a)は、指向軸決定要素の反射面の裏面側に配置される例を、図2(b)は、指向軸決定要素の側面に配置される例を示す。いずれの配置においても、慣性センサ6として1軸加速度計を使用している。図中、矢印はセンサの感度軸方向を示し、黒丸はセンサが紙面に垂直前方に感度を持つことを示す。また、A(Axialの頭文字)は感度が軸方向(Z軸方向)、R(Radialの頭文字)は感度が半径方向、T(Tangentialの頭文字)は感度が接線方向をそれぞれ向くように配置されたセンサである。
【0016】
これらの加速度計(慣性センサ6)の出力(aA1、aR2のように加速度を表すaにセンサの識別名を添字で付けて示す)から、指向軸決定要素のX、Y方向の並進加速度δ"Xi、δ"Yiおよび回転角加速度φ"Xi、φ"Yiを、以下の数式により求めることができる。ただし、’は1階の時間微分を、”は2階の時間微分を示すものとする。簡単のため添字iは省略し、さらに各指向軸決定要素の基準面(例えば、平面鏡の反射面)とセンサ設置点間のZ方向の距離は、rに比べて小さいとして無視している。
【0017】
図2(a)に示す配置では、
【数4】
Figure 0004077710
また、図2(b)に示す配置では、
【数5】
Figure 0004077710
【0018】
この場合、慣性センサ6として1軸加速度計を使用した例を示したが、上述したように、角速度や角度変動を直接計測できる各種のジャイロやジッタセンサ等を使用してもよく、φ"iの代わりにφ'iやφiが計測される。慣性系に対する速度δ'iや変位δiを検出できる慣性センサの適当なものは少ないが、後述する相対センサを用いる方法によれば、検出可能である。
空間安定の場合は、動揺に伴う指向変動を抑えることが目的であるから、δiやφiの変動成分すなわちAC成分を知ることが重要であり、一定値すなわちDC成分は必ずしも必要としない。このため、各指向軸決定要素iの並進加速度δ"i(あるいは速度δ'i)と回転角加速度φ"i(あるいは角速度φ'i)が得られれば、積分は常に可能であり、これらを時間積分してδiやφiを得ることは容易である。
また、並進加速度δ"i(あるいは速度δ'i)や回転角加速度φ"i(あるいは角速度φ'i)を積分しないで、並進・回転の変動量(δi、・φi)と指向変動(Δθ)との関係を示す上記数式「数2」「数3」の両辺を1階または2階時間微分した以下の数式を用いても良い。
【0019】
【数6】
Figure 0004077710
【数7】
Figure 0004077710
【0020】
この場合、数式「数6」「数7」により指向変動Δθの1階または2階時間微分値Δθ'またはΔθ"を得て、これをこのままの形、あるいは1階ないし2階積分したΔθ'、Δθの形で、空間安定化制御に使用する。制御系を構成する観点からは、むしろこの方が有力である。さらに、複数の異種センサを組み合わせて(例えば、ジャイロと加速度計、地磁気センサの組み合わせ)、広帯域でかつDC成分も出力できるようにしても良い。
【0021】
以上に詳細に述べたように、各指向軸決定要素10〜13に設置した慣性センサ6により、各指向軸決定要素10〜13の慣性系1における並進および回転変動(δi,φi)を測定することによって、ペイロード3の指向変動Δθが演算できる。このような演算処理により、図1に示す指向軸変動推定部7では、各慣性センサ6の検出情報を入力として、ペイロード指向軸4の指向変動Δθを推定する。
【0022】
図3に、空間安定化制御の制御動作を機能ブロック図で示す。
プラットフォーム2の動揺5に伴って、ペイロード3を構成する各指向軸決定要素10〜13は、剛な一体構造でない限り一般に相異なる並進・回転変動を行う。即ち、プラットフォーム2の動揺5は、プラットフォーム2およびペイロード3の構造を通して像面検出器11、主鏡12、副鏡13に伝達され、各慣性センサ6により検出される。一方、駆動鏡10に設置された慣性センサ6は対慣性系回転角θm17を検出する。これらの慣性センサ6の出力は指向軸変動推定部7に取り込まれて、ペイロード3の指向変動推定値である推定変動Δθe15(添字eは推定値であることを、Δは変動分すなわちAC成分であることを示す)を出力する。
駆動制御装置8の内部では、目標指向角θc14(ここでは0)と指向軸変動推定部7からの推定変動Δθe15とを入力として、変動補償制御部16にて、推定変動Δθe15をキャンセルするように補償指令を出力し、これによりアクチュエータ9を駆動制御し、駆動鏡10の方向角を調整する。駆動鏡10の対慣性系回転角θm17は慣性センサ6によって検出されて、指向軸変動推定部7にフィードバックされて、空間安定制御ループを構成する。これにより、ペイロード指向軸4の方向は安定化する。
【0023】
なお、図3では例えば駆動鏡10に設置された慣性センサ6は対慣性系回転角θm17を出力するとしているが、もしも慣性センサ6の出力が駆動鏡10の対慣性系角加速度θ"mならば、指向軸変動推定部7の内部で積分してθm17に変換されるものとする。また、指向軸変動推定部7はペイロード3の推定変動Δθe15(角度の次元の量)を出力するとしているが、角速度または角加速度の次元の推定変動Δθ'eまたはΔθ"eを出力してもよく、その場合にはこれと比較される目標指向角14も角速度または角加速度の次元の量になる。
【0024】
この実施の形態では、その運動がペイロード3の指向軸方向に影響を及ぼすペイロード3内の光学系の各構成要素(指向軸決定要素)10〜13にそれぞれ慣性センサ6を配置し、その出力からペイロード指向軸4の変動を推定して、この推定変動15をキャンセルするようにアクチュエータ9を駆動する。このように、複数の指向軸決定要素10〜13に慣性センサ6を分散配置することにより、ペイロード3と各指向軸決定要素10〜13との間の剛性や、アクチュエータ9から慣性センサ6設置部分までのペイロード3や、場合によってはプラットフォーム2の構造をも含む構造剛性に制約されることなく、安定で広帯域・高精度な空間安定化制御が行える。また、プラットフォーム2やペイロード3に高い機械剛性が要求されないため、プラットフォーム2やペイロード3が格段と軽量化でき、人工衛星など軽量化の要求が厳しいプラットフォーム2にペイロード3を搭載する場合は、特に有効である。
【0025】
ところで、この実施の形態で示すような、ペイロード3およびプラットフォーム2としての天体望遠鏡搭載衛星では、典型的な指向安定度要求は0.1〜1μrad(マイクロラジアン)、すなわち10万分の1度前後である。これに対して、衛星や望遠鏡構造の共振周波数は、極端に柔らかい太陽電池パドルを除くと、衛星の大小にもよるが大体10Hzから100Hz位に存在する。したがって、衛星全体の制御を行う姿勢制御系では高々0.1Hz(特殊な場合で1Hz)の制御帯域しか持たせることができず、上記の指向安定度要求を姿勢制御系単独で満足させることは困難な場合が多い。このため、望遠鏡3内部に駆動鏡10を持たせ、空間安定化制御系を別途構成し、小さい駆動鏡10を動かすことにより構造物の励振を小さく抑えることで、空間安定化制御系の帯域をあげる。
望遠鏡3の空間安定化制御のために従来から用いられていた指向変動を検出する画像センサでは、帯域が通常は30Hz、最大200Hz程度であり、制御帯域は通常センサの帯域の1/10程度であるため、上記のような望遠鏡3の従来の空間安定化制御帯域は20Hz以下であった。これに対して、この実施の形態により、慣性センサ6として広帯域の加速度計やジッタセンサ等を使用した場合、センサの帯域は1kHz〜数kHz程度に広がるため、制御帯域の1桁の向上が可能になる。また、一般に帯域内の外乱に対しては、制御帯域の1桁の向上は外乱抑制性能の1〜2桁の向上につながる。さらに、従来の衛星では空間安定化制御系による能動的な抑制が困難であった20Hz以上の帯域に存在する各種擾乱源による指向変動を抑えることが可能になるため、制御精度が一層向上する。
さらにまた、大型の望遠鏡3であると衛星全体の重量の半分近くを望遠鏡が占める場合もあり得る。衛星では打上重量の制約から特に軽量化の要求が厳しいが、この実施の形態により、機械剛性が例えば1/4程度でも空間安定化制御の高い制御精度が得られるため、望遠鏡3の鏡材を除く構造部分の重量を1/4程度に低減でき著しい軽量化効果が得られる。
【0026】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、ペイロード3の各指向軸決定要素10〜13の慣性系1における運動情報を測定する慣性センサ6を、各指向軸決定要素10〜13に直接設置したが、それ自体および指向軸決定要素10〜13との間の機械剛性が十分高い部材に設置しても良く、検出された運動情報を同様に用いて空間安定化制御が行える。例えば、後述する図4に示すように、像面検出器11が取り付けられたペイロード架台19に慣性センサ6aを設置し、この慣性センサ6aにより像面検出器11の慣性系1に対する運動情報を検出しても良い。この場合、ペイロード架台19は空間安定化制御の帯域に比べて十分に剛であり、像面検出器11はペイロード架台19と一体になって動くものとし、これにより像面検出器11の慣性系1に対する並進・回転変動は、ペイロード架台19の慣性系1に対する並進・回転変動と等しくなる。
この場合、それ自体および指向軸決定要素10〜13との間の機械剛性が十分高い部材に慣性センサ6aを設置するが、このような条件を満たす部材が存在しない指向軸決定要素については、指向軸決定要素に直接慣性センサ6を設ければよいため、上記実施の形態1に比して機械剛性の要求を増やすものではなく、上記実施の形態1と同様に、剛性に制約されることなく、安定で広帯域・高精度な空間安定化制御が行えると共に、プラットフォーム2やペイロード3の軽量化が図れる。
【0027】
実施の形態3.
次に、この発明の実施の形態3を図4に基づいて説明する。
上記実施の形態1では、ペイロード3の各指向軸決定要素10〜13の慣性系1における運動情報を測定する慣性センサ6を、各指向軸決定要素10〜13に直接設置したが、この実施の形態では、機械剛性が十分高い基準部としてのペイロード架台19に慣性センサ6aを設置し、駆動鏡10には相対センサ18を設置する。
ここで相対センサ18は、物体の別の物体に対する相対的な並進運動情報または回転運動情報を検出するセンサの総称であり、具体的には、並進運動情報を検出できる静電容量センサ、渦電流センサ、レーザ測長器、レーザ干渉計、および回転運動情報を検出できるエンコーダ、タコメータ、ポテンショメータ、オートコリメータ等を指す。この場合の相対センサ18は、一方を駆動鏡10に、他方(図示せず)をペイロード架台19に配して、ペイロード架台19に対する駆動鏡10の相対的な運動情報を検出する。
ペイロード架台19には慣性センサ6aが設置されているため、駆動鏡10の慣性系1に対する運動情報は、相対センサ18の検出情報と慣性センサ6aの検出情報とを組み合わせることで得られる。
また、上記実施の形態2と同様に、像面検出器11にはセンサを配置せず、ペイロード架台19に設置された慣性センサ6aは、像面検出器11の慣性系1に対する運動情報を検出するセンサとしても用いる。この場合、ペイロード架台19は空間安定化制御の帯域に比べて十分に剛であり、像面検出器11および駆動鏡10の基台はペイロード架台19と一体になって動くものとする。
【0028】
この実施の形態では、以下の数式「数8」に示すように、像面検出器11の慣性系1に対する並進・回転変動(δIM、φIM)は、ペイロード架台19上に設置された慣性センサ6aによって検出される、ペイロード架台19の慣性系1に対する並進・回転変動(δB、φB)に等しい。また、駆動鏡10が回転自由度だけを持つものとすれば、その対慣性系回転角φMSは、駆動鏡10の対ペイロード架台相対回転角φMSr(添字rはrelativeの頭文字)とペイロード架台19の対慣性系回転角φBの和になり、対慣性系並進変動δMSは、ペイロード架台19の対慣性系並進変動δBに等しい。
【0029】
【数8】
Figure 0004077710
【0030】
また図4に示すように、各慣性センサ6、6aからの検出情報は指向軸変動推定部7に入力されるが、駆動鏡10に設けられた相対センサ18の検出情報は駆動制御装置8に入力される。この空間安定化制御の制御動作を図5の機能ブロック図に基づいて以下に説明する。
プラットフォーム2の動揺5は、プラットフォーム2およびペイロード3の構造を通してペイロード架台19、主鏡12、副鏡13に伝達され、各慣性センサ6a、6により検出される。これらの慣性センサ6a、6の出力は指向軸変動推定部7に取り込まれて、ペイロード3の指向変動推定値である推定変動Δθe15を駆動制御装置8に出力する。推定変動Δθe15の計算は、具体的には数式1においてφXMS=φXB、φYMS=φYBと置く。一方、相対センサ18は駆動鏡10の対ペイロード架台相対回転角φMSr20を、駆動制御装置8に出力する。駆動制御装置8の内部では、目標指向角θc14と指向軸変動推定部7からの推定変動Δθe15とを入力として、変動補償制御部16にて、推定変動Δθe15をキャンセルする指令を出力し、さらに該指令と相対センサ18からの対ペイロード架台相対回転角φMSr20とにより、図示しない補償器にて補償指令を出力する。これによりアクチュエータ9を駆動制御し、駆動鏡10の方向角を調整する。
このように、駆動鏡10の対ペイロード架台相対回転角20は駆動鏡10を動かすための局所制御ループを構成するのに用いられる。自動制御論で良く知られているように、このような局所制御ループは系の減衰を増す。これにより、ペイロード指向軸4の方向は安定化する。
【0031】
この実施の形態では、像面検出器11にはセンサを配置せず、機械剛性が十分高い基準部としてのペイロード架台19に慣性センサ6aを設置し、駆動鏡10には相対センサ18を設置する。そして、ペイロード架台19の慣性センサ6aにて像面検出器11における対慣性系運動情報を検出し、相対センサ18にて、慣性センサ6aの検出情報を組み合わせて駆動鏡10の対慣性系運動情報を検出する。このように、各指向軸決定要素10〜13に直接慣性センサ6を設置した上記実施の形態1と同様に、各指向軸決定要素10〜13のそれぞれの対慣性系運動情報を検出できて空間安定化制御できるため、上記実施の形態1と同様に、剛性に制約されることなく、安定で広帯域・高精度な空間安定化制御が行えると共に、プラットフォーム2やペイロード3の軽量化が図れる。また相対センサ18を使用するため、並進変位や並進速度の検出等、慣性センサ6では困難な検出が可能になり、空間安定化制御における設計の自由度が向上する。
また、相対センサ18からの対ペイロード架台相対回転角φMSr20を駆動鏡10を動かすための局所制御ループを構成するのに用い、系の減衰を増すようにしているため、効果的にペイロード指向軸4の方向は安定化される。なお、このような制御は、フィードフォワードで実現するストラップダウン方式の一種と言える。
【0032】
なお、上記実施の形態3では、図5に示すような空間安定化制御を行うものであったが、図6に示すように、ペイロード架台19、主鏡12、副鏡13に設けられた各慣性センサ6a、6の検出情報と、駆動鏡10に設けられた相対センサ18からの対ペイロード架台相対回転角φMSr20とを指向軸変動推定部7に入力して、ペイロード3の推定変動Δθe15を出力するようにしても良い。図6に示す指向軸変動推定部7の内部では、入力された対ペイロード架台相対回転角φMSr20は、ペイロード架台19上の慣性センサ6aから入力されたペイロード架台19の並進・回転変動の情報(δB、φB)と合わせて、数式8に基づいて駆動鏡10の対慣性系並進・回転変動がまず計算され、他の慣性センサ6からの情報と共にペイロード3の推定変動Δθe15を求めるのに使用される。このとき得られる推定変動Δθe15は、図5で示す推定変動Δθe15とは異なるが、上記実施の形態1の図3で示す推定変動Δθe15と実質同じものであり、変動補償制御部16にて、推定変動Δθe15をキャンセルするように補償指令を出力し、これによりアクチュエータ9を駆動制御し、駆動鏡10の方向角を調整する。駆動鏡10の対ペイロード架台相対回転角φMSr20は、指向軸変動推定部7にフィードバックされて、空間安定制御ループを構成する。これにより、ペイロード指向軸4の方向は安定化する。なお、このような制御は、フィードバックで実現するステーブルプラットフォーム方式の一種と言える。
【0033】
また、この実施の形態では、相対センサ18の基準部としてペイロード架台19を用いたが、これに限るものではなく、それ自身が十分剛な要素であればどの部分を使用してもよく、慣性センサ6が設置された他の指向軸決定要素であっても良い。また、相対関係が把握できていれば、複数の基準部を用いても良い。
さらに、主鏡12と副鏡13に設けた慣性センサ6についても、これらの全部または一部を、慣性センサ6aが配置された基準部に対する相対的運動情報を検出する相対センサ18に置き換えることができる。
また、相対センサ18は、慣性センサ6aが設置された基準部に対する相対的な運動情報を直接検出するものでなくても良く、他の相対センサ設置部位に対する相対的な運動情報を検出し、その相対センサの情報を介して基準部との相対的な運動情報を検出しても良い。
【0034】
実施の形態4.
次に、この発明の実施の形態4を図7に基づいて説明する。
ここでは、航空機、ヘリコプタ、船舶、車両等のプラットフォーム2に搭載して撮影を行う可視または赤外のビデオカメラ等のペイロード3の空間安定化制御について説明する。
図に示すように、ペイロード3は、指向軸決定要素である光学系要素としての駆動鏡10、像面検出器11にて構成され、これら光学系要素の慣性系1に対する位置関係によって、ペイロード3の指向軸4の慣性系1に対する方向が決まる。駆動鏡10は単純な平面鏡で構成されて開口部から導入した光を反射してペイロード3に入射する。また、ここでは、プラットフォーム2(またはペイロード架台19)と像面検出器11は剛に結合され、像面検出器11の慣性系1に対する運動情報は、プラットフォーム2(またはペイロード架台19)に設けられた慣性センサ6aにより検出する。駆動鏡10には直接慣性センサ6が設けられる。ペイロード3とプラットフォーム2との間、また指向軸決定要素10、11間の機械剛性は必要ない。
【0035】
この実施の形態のような簡単な構成のペイロード3では、指向軸決定要素10、11の並進変動は指向変動にならない。このため、指向変動Δθと、プラットフォーム2(またはペイロード架台19)の対慣性系回転角φB、および駆動鏡10の対慣性系回転角φMSの間には、以下の関係式が成り立つ。なお、ここでは簡単のために図7で示す紙面内の運動に限定している。
【0036】
【数9】
Figure 0004077710
【0037】
プラットフォーム2の動揺5はプラットフォーム2(またはペイロード架台19)の対慣性系回転角φBに等しく、これは像面検出器11の対慣性系回転角でもある。プラットフォーム2(またはペイロード架台19)上と駆動鏡10上とにそれぞれに設置された慣性センサ6a、6の出力φB、φMSから、指向軸変動推定部7にて数式9に基づき指向変動Δθを推定する。駆動制御装置8は、推定された指向変動Δθをキャンセルするように、駆動鏡10の方向角を調整するアクチュエータ9を駆動制御し、これにより指向軸4の方向は安定化される。
この実施の形態においても、複数の指向軸決定要素10、11のそれぞれの対慣性系運動情報を検出できて空間安定化制御できるため、上記実施の形態1と同様に、剛性に制約されることなく、安定で広帯域・高精度な空間安定化制御が行えると共に、プラットフォーム2やペイロード3の軽量化が図れる。
【0038】
なお、駆動鏡10上に慣性センサ6だけでなく、駆動状態の把握やリミットチェック等の為に、別途相対センサやリミットスイッチを付加しても良い。
また、駆動鏡10は、平面鏡ではなく凹面鏡や凸面鏡のような曲面鏡を使用しても良い。
【0039】
ところで、この実施の形態で示すような、航空機、ヘリコプタ、船舶、車両等に搭載して撮影を行う可視または赤外のビデオカメラ等の空間安定化装置では、主として駆動系を含む機械剛性の制約によって、高々10Hzの制御系帯域を実現するのがが限界であった(典型値は2〜5Hz)。このため、これより高い周波数帯の外乱に対しては、防振台のような受動的な装置を用意して、これと組み合わせて要求性能を実現していた。これに対して、この実施の形態により、慣性センサ6として、DCも含めて数10Hz〜数100Hzの検出帯域を有するサーボ型ジャイロやサーボ型加速度計を用いた場合、制御帯域を数倍(すなわち20〜50Hz程度まで)上げることが可能になる。したがって、制御系を広帯域化した場合のノイズの増加を差し引いても、センサノイズやアクチュエータの分解能の限界近くで稼動する装置でない限り、能動制御部分に対して外乱抑制性能として少なくとも数倍の性能向上が見込める。
【0040】
実施の形態5.
次に、この発明の実施の形態5を図8に基づいて説明する。
この実施の形態では、望遠鏡やカメラのような光学系機器ではなく、パラボラアンテナを有する電波系のペイロード3aが空間安定化制御の対象である。図に示すように、慣性系1に対して動揺するプラットフォーム2aに搭載されたペイロード3aは、電波系要素としてのパラボラ面で構成されたアンテナの主鏡12a、副鏡と兼ねた駆動鏡10a(13a)、1次放射器21で構成され、全体として指向性の送信アンテナを構成する。これら電波系要素の慣性系1に対する位置関係によって、ペイロード3aの指向軸4の慣性系1に対する方向が決まる。このようにペイロード3aの指向軸方向の決定に寄与する電波系要素10a、12a、21を上述した光学系要素と同様に以下、指向軸決定要素と呼ぶ。なお、電波系要素とは、反射面を有するアンテナや放射器、受信器等の電波系素子単体で、それ自体剛であるものとする。また、この場合、ペイロード3aとプラットフォーム2aとの間、また各指向軸決定要素10a、12a、21の間の機械剛性は必要ない。
【0041】
また、この実施の形態では、それ自身十分剛な基準部としてのペイロード架台19に慣性センサ6aを設置している以外は、全て相対センサ18を用いている。ペイロード架台19の慣性センサ6aは、各相対センサ18の基準となり、相対センサ18の出力に慣性センサ6aにより計測されたペイロード架台19の運動情報を加えることで、相対センサ18が設置されている部位の慣性系1に対する運動情報を知ることができる。また、ペイロード架台19の慣性センサ6aは、ペイロード架台19に取り付けられた1次放射器21の対慣性系運動情報を検出するセンサとしても用いる。
ペイロード指向軸4の指向変動に寄与する並進変動は、ペイロード架台19と指向軸決定要素10a、12a間の相対的な変動であるから、ペイロード架台19の対慣性系並進変動自体は計測する必要がない。このため、ペイロード架台19上に設置する慣性センサ6は回転変動を検出できるものだけで十分である。なお、各指向軸決定要素10a、12a上に並進変動を観測する慣性センサを設置した場合には、各要素とペイロード架台19間の相対並進変動を求めるために、ペイロード架台19側に設置する慣性センサ6aにも並進変動の測定機能が要求される。
【0042】
主鏡12aに設置された相対センサ18では、ペイロード架台19に対する主鏡12aの相対的な運動情報を計測する。駆動鏡10aの方向角はアクチュエータ9で制御されているため、駆動鏡10aの回転変動はアクチュエータ9にて検出できるもので、アクチュエータ9に設置された相対センサ18とアクチュエータ9の基台が取り付けられたアームに設置された相対センサ18とにより、それぞれ駆動鏡10aのペイロード架台19に対する相対的な回転変動、並進変動を計測する。
このように配置された各センサ6a、18からの検出情報に基づいて、ペイロード3の指向軸方向の変動を指向軸変動推定部7にて推定する。駆動制御装置8は、推定された指向軸方向の変動をキャンセルするように、駆動鏡10aの方向角を調整するアクチュエータ9を駆動制御し、これにより指向軸4の方向は安定化する。
この実施の形態においても、複数の指向軸決定要素10a、12a、21のそれぞれの対慣性系運動情報を検出できて空間安定化制御できるため、上記実施の形態1と同様に、剛性に制約されることなく、安定で広帯域・高精度な空間安定化制御が行えると共に、プラットフォーム2aやペイロード3aの軽量化が図れる。
【0043】
なお、この実施の形態は、類似の構成により構成された受信アンテナや送受共用アンテナに対しても同様に適用できる。
【0044】
実施の形態6.
次に、この発明の実施の形態6を図9に基づいて説明する。
この実施の形態では、上記実施の形態4の図7で示した空間安定化装置の構成に、ペイロード3の指向軸方向を目標指向方向に追尾させる目標追尾機能を持たせる。図9に示すように、目標追尾像面検出器11の情報を処理して指向目標を検出し、指向軸方向の目標指向方向に対する誤差を検知する指向誤差検出部22を備え、検出された誤差を駆動制御装置8に入力して、ペイロード3の指向軸方向を目標指向方向に追尾させて空間安定化制御を行う。
指向目標を検出するセンサとしては、画像処理に基づくものや4象元検出器を利用するもの、特殊なマスクやスリットを通して検出するもの等がある。また、像面検出器11の出力を直接利用するのではなく、光や電波の一部を分岐したり、同じ光路を通る別波長の光や電波を利用して指向目標検出センサを構成しても良い。
【0045】
指向誤差検出部22からの誤差を駆動制御装置8に入力して、ペイロード3の指向軸方向を目標指向方向に追尾させて空間安定化制御を行う方法について、図10に基づいて以下に説明する。
図10(a)に示す制御では、指向誤差検出部22からの誤差を駆動制御装置8に入力し、駆動制御装置8内では、誤差補償制御部25にて誤差をキャンセルするように指令を出力し、次いで指向軸変動推定部7からの推定変動を入力して変動補償制御部16にて該推定変動をキャンセルするような補償指令をアクチュエータ9に出力する。この場合、目標追尾ループ27は空間安定ループ26より狭い帯域として、空間安定ループの外側に構成される。応答の早い内部ループで動揺を抑えて空間安定化しながら、外部ループで目標追尾するので、精度の高い目標追尾が行える。
また、図10(b)に示す別例による制御では、指向誤差検出部22からの誤差を駆動制御装置8に入力し、駆動制御装置8内では、指向軸変動推定部7から入力された推定変動と、指向誤差検出部22からの誤差とから、該推定変動と誤差との双方を含む指向軸方向の誤差を誤差演算部23にて演算し、演算された誤差を、変動・誤差補償制御部16aにてキャンセルするように補償指令をアクチュエータ9に出力する。この場合、空間安定ループと目標追尾ループが1つになった空間安定および目標追尾ループ28を構成し、空間安定化しつつ目標追尾が行える。
【0046】
この実施の形態では、上記実施の形態4と同様に、剛性に制約されることなく安定で広帯域・高精度な空間安定化制御が行えると共に、プラットフォーム2やペイロード3の軽量化が図れ、また、ペイロード3の指向軸方向を目標指向方向に追尾させる制御が空間安定化制御と併せて行える。
【0047】
なお、目標追尾像面検出器11の情報を処理して指向目標を検出し、指向軸方向の目標指向方向に対する誤差を検知する指向誤差検出部22は、指向目標を直接検出しないで実際の指向方向を検出するものもある。一例として、大型天体望遠鏡で使用されるFine Guidance Sinsor等と呼ばれるセンサは、望遠鏡の画像に投影されている星像とデータベースとして持っているスターカタログを照合して、実際の指向軸がその時点でどちらを向いているかを検出する。このとき、精度は悪くなるが、指向軸回りの誤差も通常同時に検出できる。また、同じまたは類似の原理に基づく恒星センサ(別名スターセンサ)あるいはスターマッパ、スタートラッカ、北極星センサ等のセンサが人工衛星の姿勢検出用のセンサとして製品化されている。即ち、このようなセンサでは、いわば慣性系基準での指向方向の絶対値を検出する。従って、このような指向方向そのものを出力するセンサを使用する場合には、別途外部から指向目標方向を指示して、目標指向方向との差(すなわち指向誤差)を内部で求めることになる。
【0048】
実施の形態7.
次に、この発明の実施の形態7について説明する。
上記実施の形態1〜6で用いた慣性センサ6は、出力する信号(加速度センサであれば加速度、レートジャイロであれば角速度)にいくらかのバイアスを含む。また、このバイアス値は時間や温度環境などによって変化する。このため、慣性センサ6の出力信号だけを基準にして一定の指向方向を長時間保持し続けることはできず、指向方向は少しずつドリフトしていく。ただし、空間安定化制御の目的は、プラットフォーム2の動揺に伴うある程度高い周波数領域の指向変動を抑えることであるため、空間安定化制御のみについてはドリフトがあっても問題はないが、この実施の形態では、このようなドリフトを抑えるために、姿勢センサを用いる。地上系や船舶、車両、航空機などでは、重力方向を基準にして物体の傾角を測定する傾斜計(クリノメータ)や加速度計、地磁気を基準に物体の姿勢角や方位角を測定する磁気センサや磁気コンパス、地球自転を基準にして方位を測るジャイロコンパス、衛星を基準に姿勢を測る特殊なGPS受信機などがある。また、人工衛星では、地球や太陽、星等の天体を基準にする地球センサ、太陽センサ、恒星センサ、地球磁場を基準にする磁気センサなどがある。姿勢センサを光学系、電波系要素である指向軸決定要素のどれか、またはこれらの要素との相対関係が判っている基準部分に設置して、姿勢センサ出力と慣性センサ出力とを用いることで、プラットフォーム2の動揺に伴う指向変動と、ドリフトによる指向変動の双方を抑制することができる。
ただし、姿勢センサは指向軸の方向を計測するものではなく、時間ドリフトを抑えるものである。姿勢センサの帯域は通常慣性センサの帯域より狭いため、空間安定が必要な高域側は慣性センサが受け持つ。しかし、もしも安定化したい動揺の周波数が姿勢センサの帯域内であるならば、1つないし複数の慣性センサを姿勢センサで置き換えても良い。
【0049】
【発明の効果】
この発明に係る空間安定化装置は、慣性空間に対して動揺するプラットフォームに搭載された光学機器あるいは通信アンテナから成るペイロードの指向軸方向を慣性空間に対して安定化制御する装置構成であって、上記ペイロードの構成要素で該ペイロードの指向軸方向の決定に寄与する複数の指向軸構成要素(光学系要素あるいは電波系要素)の慣性空間に対する運動情報をそれぞれ検出する複数のセンサと、上記ペイロードの指向軸方向の変動を推定する指向軸変動推定手段とを備える。上記各センサは、上記指向軸構成要素毎の慣性空間に対する並進および回転の一方あるいは双方の変動情報を上記運動情報として検出する。そして、上記指向軸変動推定手段は、上記指向軸構成要素毎に決定される上記指向軸変動の感度情報を用いて、上記各センサからの該指向軸構成要素毎の上記各変動情報を合成する演算を行い、上記ペイロードの指向軸方向の変動を推定する。このため、ペイロードやプラットフォームの剛性に制約されることなく、安定で広帯域・高精度な空間安定化制御が行える。また、プラットフォームやペイロードに高い機械剛性が要求されないため、プラットフォームやペイロードが格段と軽量化できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1による空間安定化装置を備えたプラットフォーム及びペイロードを示す構成図である。
【図2】 この発明の実施の形態1による慣性センサの配置例を示す図である。
【図3】 この発明の実施の形態1による空間安定化制御を説明する機能ブロック図である。
【図4】 この発明の実施の形態3による空間安定化装置を備えたプラットフォーム及びペイロードを示す構成図である。
【図5】 この発明の実施の形態3による空間安定化制御を説明する機能ブロック図である。
【図6】 この発明の実施の形態3の別例による空間安定化制御を説明する機能ブロック図である。
【図7】 この発明の実施の形態4による空間安定化装置を備えたプラットフォーム及びペイロードを示す構成図である。
【図8】 この発明の実施の形態5による空間安定化装置を備えたプラットフォーム及びペイロードを示す構成図である。
【図9】 この発明の実施の形態6による空間安定化装置を備えたプラットフォーム及びペイロードを示す構成図である。
【図10】 この発明の実施の形態6による空間安定化制御を説明する機能ブロック図である。
【符号の説明】
1 慣性系、2,2a プラットフォーム、3,3a ペイロード、
4 ペイロード指向軸、5 プラットフォームの動揺、6,6a 慣性センサ、
7 指向軸変動推定部、8 駆動制御装置、9 アクチュエータ、
10,10a 指向軸決定要素としての駆動鏡、
11 指向軸決定要素としての像面検出器、
12,12a 指向軸決定要素としての主鏡、
13,13a 指向軸決定要素としての副鏡、14 目標指向角、
15 推定変動、16 変動補償制御部、16a 誤差・変動補償制御部、
18 相対センサ、19 基準部としてのペイロード架台、
21 指向軸決定要素としての一次放射器、22 指向誤差検出部、
25 誤差補償制御部。

Claims (11)

  1. 慣性空間に対して動揺するプラットフォームに搭載された光学機器あるいは通信アンテナから成るペイロードの指向軸方向を慣性空間に対して安定化制御する空間安定化装置において、
    上記ペイロードの構成要素で該ペイロードの指向軸方向の決定に寄与する複数の光学系要素あるいは電波系要素(以下、指向軸構成要素と称す)の慣性空間に対する運動情報をそれぞれ検出する複数のセンサと、上記ペイロードの指向軸方向の変動を推定する指向軸変動推定手段とを備え
    上記各センサは、上記指向軸構成要素毎の慣性空間に対する並進および回転の一方あるいは双方の変動情報を上記運動情報として検出し、
    上記指向軸変動推定手段は、上記指向軸構成要素毎に決定される上記指向軸変動の感度情報を用いて、上記各センサからの該指向軸構成要素毎の上記各変動情報を合成する演算を行い、上記ペイロードの指向軸方向の変動を推定することを特徴とする空間安定化装置。
  2. 上記指向軸変動推定手段による上記各変動情報を合成する演算は、上記感度情報となる所定の数値を上記各変動情報の係数として、該各変動情報を積算するものであることを特徴とする請求項1記載の空間安定化装置。
  3. 上記指向軸構成要素の慣性空間に対する運動情報を検出する上記センサとして、当該指向軸構成要素に直接設置された慣性センサ、あるいは、それ自体および当該指向軸構成要素との機械剛性が空間安定化制御の帯域に比べて高い部材に設置された慣性センサを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の空間安定化装置。
  4. 上記慣性センサは、上記複数の指向軸構成要素内の一部の指向軸構成要素の慣性空間に対する運動情報を検出し、他の指向軸構成要素の慣性空間に対する運動情報を検出する上記センサとして、上記慣性センサの設置部に対する当該指向軸構成要素の相対的な運動情報を検出し、該慣性センサの検出情報を組み合わせて慣性空間に対する運動情報を検出する相対センサを備えることを特徴とする請求項記載の空間安定化装置。
  5. 機械剛性が空間安定化制御の帯域に比べて高い基準部を備え、上記複数の指向軸構成要素の慣性空間に対する運動情報を検出する上記複数のセンサとは別に、上記基準部の慣性空間に対する運動情報を検出する慣性センサを上記基準部に設け、上記指向軸構成要素の慣性空間に対する運動情報を検出する上記センサとして、上記基準部に対する当該指向軸構成要素の相対的な運動情報を検出し、上記基準部の運動情報を組み合わせて慣性空間に対する運動情報を検出する相対センサを備えることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の空間安定化装置。
  6. 上記指向軸構成要素の相対的な運動情報を検出する上記相対センサは、当該指向軸構成要素に直接設置される、あるいは、それ自体および当該指向軸構成要素との機械剛性が空間安定化制御の帯域に比べて高い部材に設置されることを特徴とする請求項4または5記載の空間安定化装置。
  7. 上記指向軸構成要素の1つあるいは該指向軸構成要素との相対関係が既知である部分に、慣性空間以外の外部環境に対する姿勢を検出する姿勢センサを設けることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の空間安定化装置。
  8. 上記指向軸変動推定手段により上記指向軸方向の変動をリアルタイムで推定し、該推定変動を補償する補償指令を出力する変動補償制御手段と、該変動補償制御手段からの該補償指令により上記ペイロードの指向軸方向を変化させるアクチュエータとを備えたことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の空間安定化装置。
  9. 上記指向軸変動推定手段は、上記ペイロードの指向軸回りの回転変動についても上記センサからの検出情報に基づいて推定し、上記アクチュエータは、該推定された指定軸方向・回転の変動を補償するように上記変動補償制御手段からの補償指令により制御されることを特徴とする請求項記載の空間安定化装置。
  10. 上記ペイロードの指向軸方向の目標指向方向に対する誤差を検出する指向誤差検出手段と、該誤差を補償する指令を出力する誤差補償制御手段とを備え、該誤差補償制御手段を上記変動補償制御手段の前段に配して、上記ペイロードの指向軸方向を上記目標指向方向に追尾させることを特徴とする請求項8または9記載の空間安定化装置。
  11. 上記ペイロードの指向軸方向の目標指向方向に対する誤差を検出する指向誤差検出手段を備え、上記変動補償制御手段は、上記指向誤差検出手段からの誤差情報を上記指向軸変動推定手段からの推定変動情報と共に入力し、上記推定変動と共に上記誤差を補償する補償指令を出力して上記ペイロードの指向軸方向を上記目標指向方向に追尾させることを特徴とする請求項8または9記載の空間安定化装置。
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