JP4071889B2 - 水晶発振器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子機器、通信機器などに多用されるIC素子の基本クロック信号を供給する水晶発振器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
水晶発振器は、移動体通信機器等に送受信を制御する基準周波数(基準クロック信号)を発生させる非常に重要な部品である。このような移動体通信機器等に用いられる水晶発振器は、移動体通信機器の小型化に伴い、容積を非常に小型化しなくてはならない。
【0003】
水晶発振回路は、水晶振動子、インバーター、帰還抵抗、入出力コンデンサとからなるコルピッツ発振回路を構成し、そして、インバーター、帰還抵抗、入出力コンデンサを、CMOS−IC技術により1チップ化(ICチップ)を行い、水晶発振器としては、例えばセラミックなどの容器内に、短冊状水晶振動子とICチップとを収容して構成していた。
【0004】
例えば、図7は従来の水晶発振器の断面図である。具体的には、所定形状のセラミック絶縁層を積層して成るセラミック容器61のキャビティー部64内に、短冊状水晶振動子62、ICチップ63を収容し、キャビティー部64を金属蓋体65によってシーム溶接などにより気密封止していた。
【0005】
セラミック容器61は、例えば4層の絶縁層が積層されて構成され、底面側から2層目及び3層目の絶縁層61b、61cは、キャビティー部64の内部の対向する側面に、一対の素子載置段差部(単に段差部)66a、66b及びIC接続段部67a、67bが形成されるように形状となっている。そして、キャビティー部64の底面は、ICチップダイアタッチ用導体膜68aが、底面側から2層の絶縁層61bの端部上面(IC接続段部67a、67bとなる部位)にはICチップ63と電気的に接続用電極パッド68bが、底面側から3層の絶縁層61cの端部上面(素子載置段差部66a、66bとなる一方の素子載置段差部66a)には水晶振動子62と電気的に接続用電極パッド68cが夫々形成され、最上層の絶縁相層上に金属蓋体を封止するためのシームリング69を接合する導体膜68dが形成されている。
【0006】
そして、容器61の外装面には、Vcc端子、GND端子、出力端子などの端子電極(図示せず)が形成されている。また、各絶縁層61a〜61d間には、各端子電極と各接続用パッド等と接続するための内部配線68eが形成されている。
【0007】
このような容器61に収容されるICチップ63は、ダイアタッチ用導体膜68aに接合されて、接続用電極パッド68bとの間にワイヤボンディングWが施されて接続されている。
【0008】
また、短冊状水晶振動子62は、一対の素子載置部66a、66bに保持され、一方の素子載置部66aに形成された接続用電極パッド68cに導電性ペーストの硬化によって接続されている。
【0009】
上述の構造の水晶発振器では、セラミック製容器61内に、水晶振動子62とICチップ63とを収容した非常に小型化された水晶発振器となる。
【0010】
このような水晶発振器を電子機器や通信機器などのプリント配線基板に実装した場合、電子機器や通信機器内の内部で発生する電磁波ノイズや外来の電磁波ノイズによって、水晶発振器が安定した動作を行なわなくなることがある。この水晶発振器に対する電磁波ノイズの影響は、プリント配線基板上の電源回路から水晶発振器に供給する電源ラインに影響しやすい。
【0011】
この水晶発振器は、図8に示す等価回路図の点線Y内の各素子を収容している。そして、上述の電源ラインに影響しやすい電磁波ノイズはVccラインとから水晶発振器のVcc端子との間に配置したバイパスコンデンサC0 により排除しようとしていた。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、電源回路の電源ラインから水晶発振器に至る間にバイパスコンデンサを配置したとしても、ICチップ63のVcc電極に供給されたVcc(電源ラインの電位)は、例えば図9に示すように、直流電位中に29mVの振幅で変動してしまうことがある。尚、測定では、Vccを3.3V、温度25℃、発振周波数14.31818MHzの水晶発振器を用いている。
【0013】
これは、バイパスコンデンサC0 から水晶発振器のICチップ63のVcc電極までの間に、高周波ノイズが影響し、インダクタンス成分の変動によりインピーダンスが変動することによって発生するものと思われる。
【0014】
このようにICチップ63の電源電圧(Vcc)が変動してしまうと、その結果、安定したICの増幅動作できず、安定した発振ができなくなってしまう。
【0015】
本発明は上述の問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的は、発振器の大型化を招くことなく、また、ICチップのVcc電極に供給された電源電位の変動を有効に抑えることができる水晶発振器を提供するものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上面に段差部を有するキャビティー部が形成された容器体内に、発振回路を構成する短冊状水晶振動子、ICチップ、ICチップの電源ラインに接続されるチップコンデンサを収容して成り、前記短冊状水晶振動子の一方端部が、前記段差部上に接合され、他方端部が前記チップコンデンサ上に位置するとともに、前記ICチップが前記キャビティー部底面で前記短冊状水晶振動子と重なる位置に配されていることを特徴とする水晶発振器である。
【0017】
【作用】
本発明では、キャビティー部が形成された容器体内に、電源ラインの電磁波ノイズを除去するバイパスコンデンサとして動作するチップコンデンサを水晶振動子、ICチップとともに収容している。即ち、バイパスコンデサをICチップのVcc電極に極力近接して配置できる。このため、ICチップのVcc電極とバイパスコンデンサとの間に影響する電磁波ノイズの影響を極めて小さくすることができ、安定した電源電位をICチップに供給することができる。
【0018】
また、このバイパスコンデンサとなるチップコンデンサは、容器内において、短冊状水晶振動子の他方端部の素子載置部の代替となっている。これにより、水晶振動子の一方端部を段差部に接合する際に安定的に接合が可能となる。そして、実質的に水晶振動子の他方端部を支えるチップコンデンサを容器内に収容したとしても、水晶発振器全体として大型化することが一切なく、水晶発振器の小型化を維持できる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の水晶発振器を図面に基づいて詳説する。
【0020】
図1は本発明の水晶発振器の外観斜視図であり、図2は断面図であり、図3はは金属蓋体省略した状態の平面図である。
【0021】
水晶発振器は、上面に凹部状キャビティー部11が形成された概略直方体状のセラミックパッケージ(以下、容器体という)1、短冊状水晶振動子2、ICチップ3及びチップコンデンサ4及び金属製蓋体5とから主に構成されている。
【0022】
容器体1は、例えば略矩形状のセラミック絶縁層1a、中央部に開口を有する概略枠状セラミック絶縁層1b、1c、1dが順次積層されて構成され、これにより、容器体1のキャビティー部11が構成されている。そして、セラミック絶縁層1aの底面にICチップ3のダイアタッチ導体膜30及びコンデンサ4を接合する電極パッド40が形成されている。また、セラミック絶縁層1bの一部にはIC接続段部12が形成され、その上面にIC接続電極31が形成されている。また、セラミック絶縁層1cの一部で素子載置段差部(単に段差部という)13が形成され、その上面に素子接続電極20が形成されている。また、セラミック絶縁層1dの上面には、金属蓋体5と接続するための封止用導体膜50が形成されている。
【0023】
また、容器体1の外側面及び底面には、Vcc、GND、出力及び発振制御用の各端子電極14〜16(図1では、そのうちの2つの端子電極14、16のみが現れる)が形成されている。そして、セラミック絶縁層1a〜1dの間には、各電極20、30、31、40と端子電極14〜16とを接続して、発振回路の配線を形成する内部配線導体17が形成されている。
【0024】
そして、ICチップ3はキャビティー部11内のダイアタッチ導体膜30に接合され、ICチップ3の各電極と接続段部12の各電極31とがボンディングワイヤWによって接続されている。
【0025】
チップコンデンサ4は電極パッド40に導電性ペースト(硬化して導電性接着部材41)を介して接続・配置されている。
【0026】
短冊状水晶振動子2は、図3に示すように、例えばATカットされた水晶板21の両主面に振動電極22、23が形成され、各振動電極22、23から水晶板21の一端部に延出する引出電極部22a、23aが形成されている。このような水晶振動子2は、キャビティー部11内の段差部13とコンデンサ4との間に架設されるように配置され、段差部13の接続電極20と水晶振動子2の引出電極22a、23aとが各々電気的に接続するように導電性ペースト(硬化して導電性接着部材24)の硬化によって接合されている。即ち、短冊状水晶振動子2の一端部側は、段差部13に載置され、他端部側はチップコンデンサ4に配置される。尚、最終的に導電性ペーストを硬化して成る導電性接着部材によって、接合された水晶振動子2は、一端部側は導電性接着部材によって固定され、他端側は自由端となっている。そして、この水晶振動子2の他端部である自由端は、導電性ペースト24の硬化時の収縮応力によって、チップコンデンサ4の上面から若干浮き上がっている。
【0027】
このような容器体1には、水晶振動子2、ICチップ3及びチップコンデンサ4が収容され、その上面の開口には、金属蓋体5が被覆されている。
【0028】
具体的には、封止用導体膜50上に、封止面に銀ろう層が被着された42アロイやコバールなどの金属蓋体5を載置して、溶接処理してもよいし、また、シームリングを介在しても構わない。尚、図2ではシームリングを省略している。
【0029】
このような構成の水晶発振器では、従来の水晶発振器に比較して収容素子数がチップコンデンサ4の分だけが増加してしまう。しかし、実際には、水晶振動子2の他端部を載置する素子載置段差部66bの代替となるため、実質的な容器体1の大型化にはつながらない。
【0030】
上述の構造の水晶発振器においては、チップコンデンサ4は、ICチップ2の電源電圧(Vcc)電極とボンディングワイヤW、接続電極パッド31を介して接続された電極パッド40に接合されている。即ち、チップコンデンサ4は、ICチップ3のVcc電極に近接して設けられ、水晶発振器のVcc端子電極とICチップ3のVcc電極との間に配置されている。
【0031】
このような構造を等価回路で示すと図4のようになる。尚、図において、点線Z内の素子は、水晶発振器の収容素子である。
【0032】
以上の等価回路図で示すように、チップコンデンサ4は、IC、特にインバターに対してバイパスコンデンサC0 として作用し、電源ラインにのって存在する電磁波ノイズをICチップ3のVcc端子電極の近傍で除去している。
【0033】
このICチップ3のVcc電極に供給される電源電圧を測定すると、その電源電圧の変化は、例えば図5に示すように、直流電位中に最大13mVの振幅となり、従来のようにコンデンサを外付けして場合に比較し、変動を1/3に減少できる。尚、測定では、Vccを3.3V、温度25℃、発振周波数14.31818MHzの水晶発振器を用いた。
【0034】
本発明者は、上述の条件で、チップコンデンサ4の容量を種々変化させて、ICチップ3のVcc電極に供給される電源電圧の最大変動を測定した。
【0035】
その結果、図6に示すようにバイパスコンデンサの容量の大容量化によって、電源電圧の最大変動を小さくできるものの、この電源電圧の変動量は約1000pFで極小となり、さらに大容量化になるに従い変動が大きくなることを知見した。
【0036】
即ち、電源電圧の変動を有効に抑えるためには、チップコンデンサ4の配置位置とその容量が重要となる。尚、チップコンデンサ4の配置位置は、ICチップのVcc電極に極力近づけることが重要であり、その容量は、650pF〜10000pFの範囲で良好となる。即ち、この範囲では、電源電圧の最大変動を従来の29mVよりも小さくすることができ、例えば、25mV以下とすることができる。そして、この範囲を越えると、従来のように比較して優位性、従来の振幅変動量(約29mV)を越えてしまう
また、バイパスコンデンサC0 を、水晶振動子2の他端部を支持する載置部材として用いるため、特に、水晶振動子2の接合にあたり、水晶振動子2を仮載置する場合に非常に位置合わせが安定することになり、特に、水晶振動子2の引出電極23a、23bと段差部13、13の接続電極パッド20、20との安定した接続位置決めが達成できる。
【0037】
また、導電性ペースト(銀とエポキシ樹脂やポリイミド樹脂などの混合物)による水晶振動子2の引出電極23a、23bと段差部13、13の接続電極パッド20、20との接合により、導電性ペースト24、24の硬化による収縮応力が働き、水晶振動子2の他端部が若干浮き上がる。そしてこの浮き上がりの結果発生する水晶振動子2の下面とチップコンデンサ4の上面との間隙を20〜100μmとするように制御することが重量である。
【0038】
尚、この制御は、チップコンデンサ4の厚みによって、または、チップコンデンサ4を載置する面に所定厚みの段差部、所定深さの凹部を形成することにより制御できることになる。例えば、間隙を発生させないようにするには、チップコンデンサ4上に水晶振動子2の他端部を仮載置した時、水晶振動子2の他端部から一端部に向かって傾斜が下がるように、チップコンデンサ4の高さを制御すればよい。
【0039】
また、水晶振動子2の他端部での間隙を大きくしようとする場合、チップコンデンサ4の高さを制御して、仮保持した状態の水晶振動子2の一端部から他端部に向かって傾斜が下がるようにする。このようにすれば、導電性ペースト23の収縮応力により、水晶振動子2の他端部を持ち上げた時、大きな間隔が得られる。
【0040】
そこで、この間隔は、上述のように20〜100μmとすることが重要である。仮に、20μm未満では、チップコンデンサ4の端子電極の厚みなどにより、水晶振動子2の他端部とチップコンデンサ4とが接触しやすくなり、水晶振動子2の安定した振動を阻害することになる。
【0041】
また、100μmを越える、容器体1に外部衝撃が加わった場合、水晶振動子2の他端部の振幅許容間隔が大きくなり、チップコンデンサ4との衝突によって、水晶振動子2が破損し易くなる。
【0042】
以上のことから、水晶振動子2の他端部とチップコンデンサ4との間に間隔を上述の範囲に設定することが重要となる。
【0043】
尚、上述の実施例では、ICチップ3はワイヤボンディングによって接合する形態のICチップであるが、例えば、フェースボンデンィグなどのICであっても構わない。
【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、容器体内に、水晶振動子、ICチップ、ICチップのVcc電極に接続されるチップコンデンサが収容されているものの、このICチップを水晶振動子の下部に配置し、チップコンデンサが水晶振動子の他方端部を保持するように位置している。従って、チップコンデンサが水晶振動子を載置する段差部の一部の代替となるため、容器の外観形状を変えずに維持できる。
【0045】
また、チップコンデンサがICチップのVcc電極に近接して接続されるバイパスコンデンサとして動作するため、電源ラインにのる高周波ノイズの影響を非常に有効に抑え、直流電源の変動を抑えることができるため、ICチップの動作が安定化し、これより、発振動作が安定する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明は水晶発振器の外観斜視図である。
【図2】本発明は水晶発振器の断面図である。
【図3】本発明は水晶発振器の蓋体省略した状態の上面図である。
【図4】本発明は水晶発振器の等価回路図である。
【図5】本発明の電源電圧の変動を示す特性図である。
【図6】本発明の容量−電源電圧の変動を示す特性図である。
【図7】従来の水晶発振器の断面図である。
【図8】従来の水晶発振器の等価回路図である。
【図9】従来の電源電圧の変動を示す特性図である。
【符号の説明】
1・・容器体
2・・水晶振動子
3・・ICチップ
4・・チップコンデンサ
5・・・金属製蓋体
Claims (1)
- 上面に段差部を有するキャビティー部が形成された容器体内に、発振回路を構成する短冊状水晶振動子、ICチップ、ICチップの電源ラインに接続されるチップコンデンサを収容して成り、前記短冊状水晶振動子の一方端部が、前記段差部上に接合され、他方端部が前記チップコンデンサ上に位置するとともに、前記ICチップが前記キャビティー部底面で前記短冊状水晶振動子と重なる位置に配されていることを特徴とする水晶発振器。
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