第1の発明は、回動可能な便座と、前記便座を加熱する発熱体と、前記便座の着座部と、前記着座部の温度を検知する温度検知手段と、前記温度検知手段の信号により前記発熱体を制御する制御部と、人体の検出時に検出信号を出力する人体検出手段と、前記人体検出手段からの信号出力で動作する前記発熱体の付勢手段と、前記便座の回動状態を検出する回動検出手段と、前記回動検出手段の出力変化により前記便座の回動状態の変化を検出することで前記発熱体への印加電力を制御する印加電力制御手段とを有し、人体検出後に、回動検出手段の出力により便座が開動作途中もしくは所定角度以上の開状態であると判断した時には、通常使用時の保温温度以上に昇温させた後、印加電力制御手段の印加電力を停止するか、または通常使用時の保温温度と同等以下である第1の保温温度を維持する保温用電力とする構成とすることにより、使用者がトイレへ入室したことを検出して着座部を加熱するので、一日の大半を占める便座非使用時の不要な電力を削減でき、大幅な省エネルギー化が実現できるとともに、使用者の「もったいない」という意識をなくすことができる。さらに、例えば使用者が男性で、小用のためにトイレに入室してから便座を開状態にした際にも、発熱体への印加電力が適切に制御されて着座部の温度が常に適切に保たれるため、万が一、使用者が小用中に便意を催し、便座を倒して着座するなど非定常な動作を行った場合にも、使用者が冷感に伴う不快感を感じることがなく、使い勝手のよい、快適な便座暖房を実現することができる。
また、人体検出後に、回動検出手段の出力により便座が開動作途中もしくは所定角度以上の開状態であると判断した時には、通常使用時の保温温度以上に昇温させた後、印加電力制御手段の印加電力を停止するか、または通常使用時の保温温度と同等以下である第1の保温温度を維持する保温用電力とすることにより、人体を検知している間、着座部を暖感が損なわれない所定の温度に保持しつつも非着座時の不要な消費電力を抑制するだけでなく、一旦着座部を通常使用時の保温温度以上に昇温させるので、例えば便座を途中まで上げてすぐさま下ろして閉状態にしたような場合でも、着座部は少なくとも通常使用時の保温温度になっており、使用者が冷感に伴う不快感を感じることがなく、使い勝手のよい快適な便座暖房を実現することができる。また、特にトイレ内の気温が低いと、便座の開動作と閉動作が続けてなされた場合、着座部周囲に発生する冷気の流れによって放熱が促進され、着座部の温度が低下してしまうことも考えられるが、印加電力制御手段が着座面の温度を一旦、通常使用時の保温温度以上に昇温させるので、この放熱分を補うことができ、使用者は冷感に伴う不快感を感じることがなく、快適な便座暖房を実現することができる。
第2の発明は、内部に空洞部を形成し回動可能な便座と、前記空洞部に設けられた輻射型発熱体と、輻射透過性材料からなる前記便座の着座部と、前記着座部の温度を検知する温度検知手段と、前記温度検知手段の信号により前記輻射型発熱体を制御する制御部と、人体の検出時に検出信号を出力する人体検出手段と、前記人体検出手段からの信号出力で動作する前記輻射型発熱体の付勢手段と、前記便座の回動状態を検出する回動検出手段と、前記回動検出手段の出力変化により前記便座の回動状態の変化を検出することで前記輻射型発熱体への印加電力を制御する印加電力制御手段とを有し、人体検出後に、回動検出手段の出力により便座が開動作途中もしくは所定角度以上の開状態であると判断した時には、通常使用時の保温温度以上に昇温させた後、印加電力制御手段の印加電力を停止するか、または通常使用時の保温温度と同等以下である第1の保温温度を維持する保温用電力とする構成とすることにより、使用者がトイレへ入室したことを検出して着座部を急速に加熱することが可能となるため、一日の大半を占める便座非使用時の不要な電力を削減でき、大幅な省エネルギー化が実現できることはもちろん着座部が適温になるまでの時間を短くでき、使用者の使い勝手が大幅に向上する。さらに、例えば使用者が男性で、小用のためにトイレに入室してから便座を開状態にした際にも、発熱体への印加電力が適切に制御されて着座部の温度が常に適切に保たれるため、万が一、使用者が小用中に便意を催し、便座を倒して着座するなど非定常な動作を行った場合にも、使用者が冷感に伴う不快感を感じることがなく、使い勝手のよい、快適な便座暖房を実現することができる。
また、人体検出後に、回動検出手段の出力により便座が開動作途中もしくは所定角度以上の開状態であると判断した時には、通常使用時の保温温度以上に昇温させた後、印加電力制御手段の印加電力を停止するか、または通常使用時の保温温度と同等以下である第1の保温温度を維持する保温用電力とすることにより、人体を検知している間、着座部を暖感が損なわれない所定の温度に保持しつつも非着座時の不要な消費電力を抑制するだけでなく、一旦着座部を通常使用時の保温温度以上に昇温させるので、例えば便座を途中まで上げてすぐさま下ろして閉状態にしたような場合でも、着座部は少なくとも通常使用時の保温温度になっており、使用者が冷感に伴う不快感を感じることがなく、使い勝手のよい快適な便座暖房を実現することができる。また、特にトイレ内の気温が低いと、便座の開動作と閉動作が続けてなされた場合、着座部周囲に発生する冷気の流れによって放熱が促進され、着座部の温度が低下してしまうことも考えられるが、印加電力制御手段が着座面の温度を一旦、通常使用時の保温温度以上に昇温させるので、この放熱分を補うことができ、使用者は冷感に伴う不快感を感じることがなく、快適な便座暖房を実現することができる。
第3の発明は、特に、第1または第2の発明の暖房便座で、人体検出手段により人体を検出していない間は、第1の保温温度よりも低い第2の保温温度以下であることを温度検知手段が検知すると、印加電力制御手段の印加電力を前記第2の保温温度を保持する保温用電力とすることにより、特に厳冬期などトイレ室内の気温が極端に下がったような場合でも、着座部が第2の保温温度以下になることを回避でき、これによって人体検知後の着座部昇温時間が極端に延びるなどの不具合が解消され、季節を問わず使用者が着座する際は常に同程度の着座部温度が実現できるので、使い勝手のよい快適な便座暖房を実現することができる。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における暖房便座を備えた衛生洗浄装置の概略構成図、図2は同便座を備えた衛生洗浄装置の斜視図、図3は同便座の一部を切り欠いて示した平面図で、図4は使用者がトイレに入室してから着座するまでの時間を調査した結果をまとめたグラフ、図5は同便座の着座部の要部断面図、図6は暖房原理を示す特性図である。
図1から図3において、衛生洗浄装置20の便器21の後端部に横長の本体22aが取り付けられており、この本体22a内には温水洗浄機能の一部が内装され、かつ便器21上に載せられた輪状の便座23および便蓋24が回動自在に設けられ、便座23を使用していない時は、便蓋24は横倒されて便座23上面の採暖部である着座部25を覆うようになっている。着座部25は人が衛生洗浄装置20を利用するときに人体が直接触れる部分である。また、本体22aの袖部22bにはトイレ室の人体の有無を検知する人体検知手段である赤外線センサ26が内装されている。便座23は、図1に示すように合成樹脂製の便座上23a・便座下23bの2つの部材をそれぞれの内周縁および外周縁で接合することにより形成し、その内部には水等の浸入を阻止できる密閉された空洞部27を有する構造となっている。
空洞部27の内部には、衛生洗浄装置を使用する使用者が腰掛ける着座部25に対向して、アルミ板やステンレス板を鏡面仕上げした輻射反射板28と、着座部25の両側において輻射型発熱体である2本のランプヒータ29(以下、個別のランプヒータを指す場合以外はランプヒータ29と記す)とが着座部25の内表面から所定の空間を介して便座23の形状にあわせて設けられている。すなわち、図3に示すように、ランプヒータ29は、便座23の平面視で輪状である便座23の着座部25の横部25a、25bに便座23の形状に沿うように設けられている。この着座部25の横部25a、25bは人が着座した時に、大腿部が接触する部位である。輻射反射板28は、図1に示すように、その内外端部の全周に上方への折り曲げ部28aを有しており、その折り曲げ部28aによりランプヒータ29からの熱輻射が偏向されるので、ランプヒータ29から離れている外周縁部および内周縁部の輻射密度を上げるように作用し、空洞部27上部への輻射分布の均一化を図る工夫がなされている。このランプヒータ29の近傍には、ランプヒータ29と電気的に直列接続された(図示せず)サーモスタット30a、30bおよび温度ヒューズ31a、31bが設けられ、万一の不安全事態に対して温度過昇を防止するよう作用する。サーモスタット30a、30bおよび温度ヒューズ31a、31bは2本のランプヒータ29のそれぞれに対応するように設けており、安全性は向上する。
ランプヒータ29は、石英ガラス管32の内部にタングステンからなるフィラメント33を貫通しハロゲンガスを封入して構成されており、フィラメント33の発熱に伴ってハロゲン化タングステンを形成するハロゲンサイクル反応を繰り返すことにより、フィラメント33の消耗を防止するよう作用している。この作用により熱容量の非常に小さいフィラメント33を熱源とすることができ、輻射エネルギーの極めて急峻な立ち上がりを行わせることができる。従って、ランプヒータ29は、使用者がトイレに入室し、衣服を下ろし、便座23の着座部25に着座するまでの数秒間で便座23の着座部25を適温まで高速に昇温させることができるので、常時通電させておいて便座を加温しておく必要がなく省電力型発熱体となる。
使用者がトイレへ入室してから、下半身を脱衣し、便座に着座するまでに要する時間は、使用者が身につけている衣服の種類や、個人差、男女差、季節差などによりばらつきはあるものの、調査の結果、平均的には約10秒程度であることがわかった。図4はこの調査の結果をまとめたもので、この折れ線グラフは横軸に示す時間で着座した被験者数の累計パーセントを示す。この結果より、ごく一部の使用者はトイレ入室後、約5〜6秒で脱衣を終えて着座完了し、また約10秒で半数程度の使用者が着座を完了し、さらに約20秒あれば100%の使用者が着座を完了することがわかる。このことから、着座部25の昇温完了までに要する時間を約5〜6秒以内にできれば、ほぼ全ての使用者が着座する場面において着座部25が適温になっていることになり、また、着座部25の昇温完了までに要する時間を約10秒以内にできれば、ほぼ半数の使用者が着座する場面では着座部25が適温にまで昇温されているものの、残り半数の使用者が着座する場面では着座部25の温度が適温にまで昇温されておらず、少し時間をおいて着座しなければ、使用者は冷感に伴う不快感を感じることになる。ただし、ここでいう適温とは、必ずしもあらかじめ設定された便座の暖房温度である必要はなく、少なくとも使用者が冷感に伴う不快感を感じないレベルであればよい。
ランプヒータ29は、ランプヒータ固定具34により輻射反射板28に固定され、輻射反射板28はゴム足35により便座下23bに固定されている。36は便器21上に乗っている便座23の脚ゴム37内に設けられたマイクロスイッチで構成された着座検知手段で、便座23の着座部25に着座した使用者の荷重でマイクロスイッチがオンすることにより使用者の着座を検知するようになっている。着座検知手段は人体検知手段と同様の赤外線センサを用いたり、便座の静電容量変化を検知する方式であっても良い。
図5において、着座部25は透明ポリプロピレン樹脂材料を用いて射出成形で構成された輻射透過材料である透過体38の外表面にフィルム材である表面層39を設け、この透過体38と表面層39の間にカーボンブラックなどの黒色顔料を主体とする輻射エネルギー吸収剤を多量に含有する輻射吸収層40を形成している。図6はランプヒータ29、透過体38、輻射吸収層40の特性を示したものである。図6(a)はランプヒータ29のフィラメント33の温度が2400Kの場合の波長分布を示したものであり、主に波長1200nm付近にピークを有する近赤外線から中赤外線の波長領域の光を発生する。図6(b)は透過体38が透明ポリプロピレンの厚さが3.0mmの場合の光透過特性を示したものであり、500nmから2300nmの波長領域、すなわちランプヒータ29から発せられる近赤外線から中赤外線の波長領域の光を透過する特性を有している。図6(c)は輻射吸収層40が厚さ黒色顔料を含む厚さ0.3mmのポリプロピレンシートである場合の光透過特性を示したものであり、ほぼ、完全に光が遮蔽されている。このような構成にすることで、ランプヒータ29から発せられた輻射エネルギーは透過体38を透過し、輻射吸収層40でほぼ完全に遮蔽され、ここで熱に変換される。したがって着座部25の表面をすばやく加熱することができる。
表面層39はランプヒータ29から放射される可視光を遮蔽するとともに、表面硬度、耐薬品性能、光沢等を考慮し、便座全体の色調と調和した色相を有するものであり、単色に限らず、複数色の組み合わせやデザイン化された模様等を使用しても良い。また、ランプヒータ29から放射される可視光の一部を意図的に透過させるものでも良い。着座部25は、あらかじめ輻射吸収層40を印刷した表面層39を、便座上23aを成型する金型に装着し、透過体38である透明ポリプロピレン樹脂材料を射出して成型する。または、あらかじめ輻射吸収層40を印刷した表面層39を真空成型等で便座上23aの形状に予備成型した後、便座上23aを成型する金型に装着して射出成型する。また、表面層39、輻射吸収層40は塗装や印刷で形成することもできる。
以上の成型方法では、便座上23a全体が着座部25を形成する透明体38で形成されるが、これに限ったものではない。たとえば、着座部25のみを透明ポリプロピレン樹脂で、その他の便座上23aを便座下23bと同一の色合いの着色ポリプロピレン樹脂で二色成型することもできる。この場合は、輻射吸収層40の面積を表面層39の面積より小さくして着座部25に対応する部分の表面層39に輻射吸収層40を印刷して成型すればよい。表面層39は輻射吸収層40の面積より大きければよいが、便座上23a全体を覆うように成型するほうが表面層39の境界が便座上23aの表面に現れることがなく仕上がりも美しく成型することができる。また、以上の説明では透明体38として透明ポリプロピレン樹脂を用いたが、透明のポリエステル樹脂やアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂なども利用可能である。
着座部25は透過体38である透明ポリプロピレン樹脂材料を平均厚み2.5mmにて成形することにより、輻射エネルギーを透過させると同時に、その剛性から便座の構造矩体として機能している。また、形成されている輻射吸収層40と表面層39の合計厚みは0.5mm以下であり、熱容量が非常に小さいので瞬時に昇温すると同時に、可視光を遮蔽し着座部25表面を加熱する。
なお、本実施の形態においては、便座23をポリプロピレン樹脂で構成し、着座部25は透明ポリプロプレン樹脂を透過した輻射エネルギーが、便座23の表面に設けた着座面25の輻射吸収層40で熱を発する構成としたが、便座23を金属のような良熱伝導材で構成し、便座空洞内部にランプヒータ29から放射される輻射エネルギーを吸収して発熱する輻射吸収層40を設け、この輻射吸収層40の熱を熱伝導で便座23表面の着座部25に伝える構成にすることも可能である。
着座部25には、その内面に開口した凹部に、温度検知手段であるサーミスタ41aが設定されており、輻射吸収層40近傍の温度を検知できるようになっている。すなわち2本のランプヒータ29が加熱する着座部25の表面近傍にサーミスタ41aを設けることにより着座部25のきめ細かい温度制御が可能であるし、また、異常温度上昇や断線による発熱停止なども検知できて、適切に対応できる。
また、便座23はその回動軸42にギアードモータからなる回動手段43が設けられ、さらに便座23の回動状態を検知する回動検知手段44を備えている。これらの構成により、便座23は使用者が便座23に触れることなく、自動もしくは、一般的に衛生洗浄装置のリモコン(図示せず)などに備えられる操作ボタンなどを操作するだけで、開閉操作することができる。また、便座の回動状態、つまり便座が開かれた状態にあるのか、着座して使用する際の略水平状態にあるのかといった静的な状態や、便座23を開く動作の途中なのか、閉じる動作の途中なのかといった動的な状態などを検出できるようになっている。さらに本体22aには、ランプヒータ29に通電することにより昇温を開始した時点からの経過時間をカウントするタイマー部45を有するマイクロコンピュータを主体とする制御部46が設けられている。そして、制御部46は赤外線センサ26の信号によりランプヒータ29への通電を開始する第一の付勢手段47や着座検知手段36、回動検知手段44、サーミスタ41aからの信号を取り込んで採暖面である着座部25の温度が所定の温度になるようランプヒータ29の通電制御を行う第1の印加電力制御手段48を有している。
図7は回動検出手段44の一例を示したものである。44aは便座23の回動軸42の周縁に設置された回動検出手段であるマイクロスイッチであり、便座23が所定角度以上開かれたら、カム49がマイクロスイッチ44aのレバー50を押し、マイクロスイッチ44aの導通がONになる構成になっている。この構成によって、制御部46は、マイクロスイッチ44aの導通を検出することで、第1の印加電力制御手段48を介してランプヒータ22a、ランプヒータ29bへの通電を制御する。なお、この構成では、便座23が所定角度以上開いている状態かどうかを判断できるに過ぎないが、カム49とマイクロスイッチ44aを複数組設け(図示しない)、カム49の取り付け角度をずらして構成すれば、複数のマイクロスイッチにおいて導通がONされているものを判別したり、各々の導通ON−OFFのタイミングを検知することで、便座23がどの程度開かれた状態なのか、便座23を開く動作の途中なのか、それとも便座23を閉じる動作の途中なのかなどを判断することもできる。
図8は回動検出手段44の別の例を示したものである。44bは便座23の回動軸42の周縁に設置されたポテンショメータであり、便座23の角度に応じて抵抗値が変化し、端子51からの出力電圧が変動する構成になっている。このような構成とすることで、端子51からの出力電圧値によって便座23が水平面からどれだけの角度で開かれた状態なのかを判別することができる。また、端子51からの出力電圧の変化によって、便座23を開く動作の途中なのか、閉じる動作の途中なのかが判別できる。制御部46はこの端子51からの出力電圧の値や変化を検出することで、第1の印加電力制御手段48を介してランプヒータ22a、ランプヒータ29への通電を制御する。
なお、本実施の形態において回動検出手段44は、回動手段43とは別部材の独立した構成としたが、例えば回動手段43をステッピングモータや同期モータのように回動角度をフィードバックなしで決定できるアクチュエータを用いて構成すれば、この回動手段43に与えた回動信号に基づいて便座23の回動状態を判別することも可能となる。
上記実施の形態において、電源を投入すると、衛生洗浄装置が使用可能な状態となり、使用者がトイレに入室した場合、赤外線センサ26がそれを検知し、その信号が制御部47に送られる。このとき、便座の回動状態を検知する回動検出手段44の信号により便座23が略水平の使用位置にあるのを確認すると、制御部46は、第1の付勢手段47を介してランプヒータ29への通電を開始する。この初期通電により投入エネルギーは瞬時に光、つまり輻射エネルギーに変換され、一部はフィラメント33からガラス管32を経て直接、また残りの一部は輻射反射板28によって反射されて着座部25へと放射される。
このランプヒータ29から放射された輻射エネルギーは、着座部25の透過体38内部で一部吸収あるいは反射されるが、その大半はここを透過し輻射吸収層40および表面層39の昇温に寄与する。そのため、着座部25を構成する透過体38はこの輻射エネルギーによってほとんど加熱されず、表面層39が加熱されることになる。
このように、発熱体の熱容量が小さいことに起因して輻射エネルギーを瞬間的に発生できるランプヒータ29を用い、さらにこのランプヒータ29によって加熱される輻射吸収層40および表面層39の厚みを必要最小限に構成して熱容量を抑制することで、便座23の着座部25を極短時間で昇温させることが可能となる。この結果、使用者がトイレに入室してから着座部25の加熱を開始しても、使用者が便座23に着座するまでに着座部25の温度を冷感が感じられない温度まで昇温させることが可能となり、着座部25を常時通電して保温する必要性がなくなる。つまり、使用する直前に便座23を昇温加熱する瞬間加熱型の暖房便座を実現することができ、結果的に非使用時の便座保温電力を大幅に削減できるので、省エネ型の衛生洗浄装置が実現できる。
なお、例えば本実施の形態において、合計1200Wの定格容量で、電力密度1W/mmのランプヒータを用い、ランプヒータ29から着座部25下面までの距離を20mmとしたが、この場合、室温15℃の時は4秒程度で着座部25を冷感が感じられない温度(27〜28℃)に昇温可能であることが確認できた。つまり本実施の形態の構成であれば、約3K/秒の昇温速度で着座部25を昇温させることが可能となる。
図9は、着座部の温度と快適性について評価を行った結果である。図9は冬季を想定した5℃雰囲気中において、着座部25の温度を変えて被験者に着座してもらい、このとき被験者が感じる快適性についての申告結果をまとめたものである。これによると、冷え込んだ5℃雰囲気中でも、着座部25が約27〜28℃以上に昇温していれば、使用者が冷感に伴う不快感を感じることは少ないということがわかる。一般的に、人間は物に触れた際、その部分の皮膚温度が約2〜3℃を越えて低下した際に冷感を感じると言われ、また人体臀部の皮膚温度は約32〜33℃程度であることから考えても妥当な結果である。つまり人間は、臀部に約29℃より低い温度の物が接触すると冷感を感じやすくなるが、しかしながら、これより1〜2℃低い27〜28℃程度の物との接触であれば、多少の冷感は感じるものの、その感覚が不快感までは至りにくいということになる。
本実施の形態では、定格容量の合計が1200Wとなるランプヒータ29を用いる構成としたが、衛生洗浄装置の便座暖房以外で消費する電力が約100W弱であることから、便座暖房時に最大約1300Wの消費電力、つまり約13Aの電流がコンセントから供給されることになる。これは一般家庭に設置されたコンセントの電流上限値が15Aであることに配慮したもので、設置の際、一般家庭で特別な電源工事を不要として設置を容易にできるとともに、電源事情のあまりよくない旧家などにも設置することができる。ただし、あくまでも一般家庭に設置されたコンセントの電流上限値は15Aであるので、衛生洗浄装置が便座の暖房以外に利用する電力量を極限まで低減し、また、衛生洗浄装置に搭載された他の機能との同時使用を回避するよう機器を構成すれば、ランプヒータ29などの発熱体の定格容量を1500Wに限りなく近いものとすることができる。当然ながら、発熱体の定格容量が大きくなれば、着座部25の昇温速度は大きくなり、より短時間で着座部25を適温にまで昇温させることが可能となるため、使い勝手のよい便座暖房が実現できる。
また、本実施の形態では、約3K/秒の昇温速度になるよう発熱体や着座部を構成したが、この構成にすることで、先述した使用者がトイレに入室してから便座に着座するまでの約5〜6秒の間に着座部を15K以上昇温できることになる。この場合、一般的に季節が春、夏、秋の場合、日本の広い範囲においてトイレ室内の温度が15℃を下回ることがないため、使用者が着座するほぼ全ての場面において、着座部25の温度を使用者が冷感に伴う不快感を感じない温度から快適感を感じることのできる温度まで昇温させることが可能となる。つまり、冬季以外は、使用者がトイレに入室してから着座部25が昇温するまで着座を待つ必要があったり、急いで着座して冷感に伴う不快感を感じたりすることがなく、快適で使い勝手に優れた便座暖房が実現できることになる。
一方で、冬季を除いて、ほぼ半数の使用者が着座する場面において着座部25が適温になるよう機器を構成するのであれば、約10秒間で15℃から27〜28℃までの約12〜13K、着座部25を昇温させればよく、この場合であれば約1K/秒強の昇温速度になるよう発熱体や着座部を構成すればよい。特に最近は高気密高断熱住宅が普及し、またマンションのような集合住宅の数も増えていることから、トイレ室内の気温が年間通じて15℃を下回るどころか、17〜18℃以上という場合も多くなっており、この場合であれば着座部25の昇温速度は1K/秒以上あれば十分であり、使用者は着座時の冷感に伴う不快感を感じることは回避できる。また、この1K/秒程度の昇温速度であれば、約300W程度の発熱体で実現可能であるので、このように発熱体を小容量のものにできれば、省エネ性や快適性を犠牲にすることなく、さらに電灯のちらつきを防止できたり、機器の故障の際にも発熱体の過熱が周囲に与える損傷が低減できるなど、安全性が向上するといった利点も生まれる。
また一方で、冬季も含めて、ほぼ全ての使用者が着座する場面において、着座部25が適温にまで昇温可能なように機器を構成するのであれば、着座部25の昇温速度が大きくなるよう機器を構成する必要がある。しかしながら、いくら冬季とは言え、一般家庭におけるトイレ室内の気温が0℃を下回る場合というのはそう多くは想定しにくいので、この最悪条件である0℃雰囲気で冷却された着座部25を、使用者がトイレに入室して着座するまでの最短時間と考えられる5〜6秒で、冷感に伴う不快感を感じない27〜28℃以上の温度まで昇温させるという条件で考えればよく、その結果、5K/秒程度の昇温速度を満足するよう機器を構成すればよいことになる。このように、着座部25が5K/秒程度の昇温速度になるよう機器を構成すれば、冬期であってもほぼ全ての使用者がトイレに入室してから着座するまでの間に着座部25を冷感に伴う不快感を感じない温度である27〜28℃まで昇温させることが可能となるため、省エネ性に優れ、快適で使い勝手のよい便座暖房を実現することができる。
上記のことから、発熱体の定格容量を望ましくは300〜1500Wとし、一方、機器の使用条件等に応じて着座部25の昇温速度を望ましくは1〜5K/秒に設定することで、省エネ性に優れ、快適で使い勝手のよい便座暖房を実現できるとともに、設置できる家庭を限定したり特別な電源工事が必要になるなどの不具合点を回避することができる。
なお、着座部25をおよそ5K/秒で昇温させる構成であるが、本実施例のランプヒータ29を用いた方式では、ランプヒータ29の定格容量を1350Wまで引き上げるとともに、輻射吸収層40と表面層39の合計厚みを0.3mm程度まで薄くして被加熱部の熱容量を減らし、さらに透過体38である透明ポリプロピレン樹脂材料の厚みを便座としての強度が不足しないよう、着座部25のみ2.2mmで構成すれば実現可能であることを確認済みである。
なお、当然のことではあるが、冬季は着衣の枚数も増えるため、使用者がトイレに入室してから着座するまでの時間は延びる傾向があり、上記の条件を満たしておけばほぼ、使用者が冷感を感じることなく快適に着座することが可能となる。
図10はランプヒータ29への通電制御のフローチャートを示したものである。
冬期以外で、気温があまり低くなく着座部25の温度がT2(たとえば15℃)以上の場合において、赤外線センサ26によって人が検知されないときは、制御部46は、ランプヒータ29に通電を行わず、また回動検知手段44の信号を確認することで、便座が開かれた状態(以下、開と記す)であると判断すれば、ギアードモータ43を駆動し、便座23を略水平状態(以下、閉と記す)にする。したがって、使用者がトイレに入室したことが検知されるまで、便座は常に閉の状態に保持される。
この状態で、赤外線センサ26で人の存在が検出、つまり使用者のトイレへの入室が検出されると制御部46は、第1の付勢手段47を介してランプヒータ29への通電を開始し、着座部25を急速に昇温させる。このとき、タイマー部45は第1の付勢手段47はランプヒータ29への通電を開始するとともに通電時間をカウントし、制御部46はこのタイマー部45からの通電時間の信号とサーミスタ41aであらかじめ検知していた着座部25の温度信号によって、第1の付勢手段47を介してランプヒータ29への通電を制御する。
第1の付勢手段47によってランプヒータ29への通電が開始された状態で、回動検知手段44からの検知信号によって便座が閉であると判断された場合、制御部46は、使用者がこのまま便座23に着座するものと判断し、第1の印加電力制御手段48を介して、所定の温度まで昇温された着座部25の温度を通常使用時の保温温度T0(例えば38℃)に保持するようランプヒータ29への印加電力を制御する。
また、第1の付勢手段47によってランプヒータ29への通電が開始された状態で、回動検知手段44からの検知信号によって便座が開であると判断された場合、制御部46は、使用者が便座23に着座はしないと判断し、第1の付勢手段47を介してのランプヒータ29への通電制御を停止し、第1の印加電力制御手段48を介して、第1の付勢手段47によって昇温された着座部25の温度を、使用者が冷感を伴う不快感を感じないレベルの温度T1(例えば27℃)に保持するようランプヒータ29への印加電力を制御する。当然、第1の付勢手段47による昇温が不十分であれば通常使用時の保温温度T1になるよう、また第1の付勢手段47による昇温が一旦完了しているならば、通常使用時の保温温度T0が保持できるよう印加電力を制御する。
ここで使用者によって、便座が開の状態から、閉の状態に操作された場合、回動検知手段44によってこの状態変化が検知され、この検知信号によって制御部46は、使用者が便座23に着座すると判断し、第1の印加電力制御手段48を介して、着座部25の温度を通常使用時の保温温度T0へと昇温せしめる。
ランプヒータ29はその特性からきわめて短時間で着座部25を昇温させられるが、便座23が開の状態から閉の状態へ倒されてから着座するまでの動作はきわめて短時間で行われることが予想されるため、便座23が開の状態でランプヒータ29への通電を停止したままにしておくと着座部25の温度が低下してしまい、再度便座23が閉とされて使用者が着座したとき、着座部25の昇温が不十分な場合もあり得る。しかしながら、本実施の形態の構成であれば、便座23が開状態になっていても、着座部25は常に使用者が保温温度T1に保持されているので、冷感に伴う不快感を感じることが回避でき、快適に便座を使用することができる。
なお、ここでは保温温度T1を使用者が冷感に伴う不快感を感じない温度である27℃の設定にしたが、これはなるべく無駄な消費電力を削減するための設定であり、あくまでも一例に過ぎない。つまり、この保温温度T1を通常の保温温度T0と同じにすることも可能であり、この場合は仮に便座23を一旦開状態にしてすぐさま閉状態にして着座がなされた場合でも、着座部25は常に通常使用時の保温温度T0となっているため、使用者が着座した場合の快適感は大きく向上する。
この場合の、制御部46の行う制御フローは上記とほぼ同様であるが、第1の印加電力制御手段48を介して、第1の付勢手段47によって昇温された着座部25の温度を、通常使用時の保温温度T0(例えば38℃)に保持するようランプヒータ29への印加電力を制御する。当然、第1の付勢手段47による昇温が不十分であれば通常使用時の保温温度T0になるよう、また第1の付勢手段47による昇温が一旦完了しているならば、通常使用時の保温温度T0が保持できるよう印加電力を制御する。
第1の付勢手段47によってランプヒータ29への通電が開始された状態で、回動検知手段44からの検知信号によって便座が開であると判断された場合、制御部46は、使用者が便座23に着座はしないと判断しつつも、すぐさま便座が閉じられて着座される場合に備え、第1の付勢手段47を介してのランプヒータ29への通電制御によって着座部25の温度を通常使用時の保温温度T0以上に昇温せしめ、その後、第1の印加電力制御手段48を介して、第1の付勢手段47によって昇温された着座部25の温度を、使用者が冷感を伴う不快感を感じないレベルの温度T1(例えば27℃)に保持するようランプヒータ29への印加電力を制御してもよい。
制御部46が、このような制御を行うことで、例えば使用者が便座23を途中まで上げてすぐさま下ろして閉状態にしたような場合でも、着座部は少なくとも通常使用時の保温温度になっており、使用者が冷感に伴う不快感を感じることがなく、使い勝手のよい快適な便座暖房を実現することができる。また、特にトイレ内の気温が低いと、便座23の開動作と閉動作が続けてなされた場合、着座部25周囲に発生する冷気の流れによって放熱が促進され、着座部25の温度が低下してしまうことも考えられるが、第1の印加電力制御手段48が着座部25の温度を一旦、通常使用時の保温温度以上に昇温させるので、この放熱分を補うことができ、使用者は冷感に伴う不快感を感じることがなく、快適な便座暖房を実現することができる。
冬期など、気温が低く着座部25の温度がT2以下の場合、制御部46は赤外線センサ26からの人体検知信号に関わらず、第1の印加電力制御手段48を介して着座部25の温度をT2に保持してもよい。これは、特に着座の際、着座部25から受ける冷感が不快感につながりやすい冬季において、使用者がトイレに入室してから着座するまでの時間で、確実に冷感に伴う不快感を感じない温度まで着座部25を昇温させるための措置である。
例えば、本実施の形態において、着座部25の温度が、冬季一般的に考えられる5℃の場合、7秒強で冷感に伴う不快感を感じない温度まで着座部25を昇温させることが可能である。しかしながら、使用者がトイレに入室してから着座するまで、冬季は着衣の数も増えることから平均7〜9秒かかるものの、個人差や、着衣の状態でもこの時間は変動し、例えば屋内でリラックスした服装の場合は着座までの時間が短くなることが考えられる。
これに対し、第1の印加電力制御手段48によって、着座部25をT2に保温しておけば、冬期であっても約4秒程度で、使用者が冷感に伴う不快感を感じない温度まで、着座部25を昇温させることが可能となり、快適に便座を使用することができる。
また、赤外線センサ26によって、使用者がトイレにいないことが検知されると、制御部46は回動手段であるギアードモータ43を駆動して、便座23を常に閉の状態に保持する。当然のことながら、使用者がトイレにいないことの判断は、誤動作防止のため、所定時間、赤外線センサ26からの人体検知信号がないことを確認して制御部46が行う。
便座23が開の状態のままランプヒータ29への通電が行われると、便座23が開の状態で上方に位置する便座23の先端部の温度が、便座23内部で発生する対流等の影響で他の場所と比較して高くなってしまい、ランプヒータ29の信頼性・耐久性が損なわれてしまう。また、ランプヒータ29のフィラメント33が鉛直方向に保持されると、重力の影響で部分的に応力がかかり、この状態で通電することによっても、ランプヒータ29の信頼性・耐久性が損なわれてしまう。また、ランプヒータだけでなく、一般的な発熱体であっても鉛直方向に配置して通電すると、対流等の影響で部分的な温度ばらつきが生じ、その信頼性・耐久性が損なわれることは周知の事実である。さらには着座部25にも温度ばらつきが生じ、使用者が不快感を感じることにもつながる。
赤外線センサ26によって使用者がトイレにいないことを検知し、便座23を略水平の閉状態に保つことで、上記の不具合点を回避することが可能となる。
なお、本実施の形態において、説明をわかりやすくするため第1の付勢手段47と第1の印加電力制御手段48を、制御部46からそれぞれ独立させて説明したが、制御部46が第1の付勢手段47と第1の印加電力制御手段48の機能を包含することや、第1の付勢手段47が第1の印加電力制御手段48の機能を包含したり、その逆の構成にしてもよい。つまり、これらのいずれかが存在しなくとも、機能的にこれらの役割を果たせば、同様の効果が得られることは明白であり、この構成によって発明の効果が限定されるものではない。
なおまた、本実施の形態において、回動検出手段44は便座23が静的に開状態であるか、閉状態であるかを検知して、制御部46が制御を行う構成としたが、回動検出手段44からの信号で便座が動的に開動作中であるか、閉動作中であるかを検出して、制御部46が同様の制御を行ってもよい。このように便座23の動的な状態を検出して制御を行うことで、さらに誤差の少ない、的確な制御が行えるとともに、先述した説明と同様の効果が得られることは言うまでもない。
なおまた、本実施の形態においては、回動検出手段44の信号によって便座23の回動状態を検出し、制御部46がさまざまな制御を行う構成としたが、回動手段であるギアードモータ43を手動で稼動させるためのスイッチが、例えば、衛生洗浄装置に備えられたリモコンなどにある場合は、その操作信号を元に同様の制御を行ってもよい。また、制御部46が、この回動手段に対する操作信号と回動検出手段44からの信号の両方に基づいて制御を行うよう構成すれば、さらに迅速で的確な制御が行えるようになることも容易に考えられる。
なおまた、本実施の形態においては、人体検知手段としての赤外線センサ26を本体袖部22bに備える構成としたが、例えば衛生洗浄装置に備えられたリモコンや、独立した人体検知ユニットを別設する構成とすれば、使用者のトイレへの入室をすばやく検知できるので、着座部25の昇温完了が早くなり、さらに使い勝手が向上することは言うまでもない。特に、トイレのドアは便器に対して多種多様な位置関係になっているため、例えば赤外線センサ26のような人体検知手段を備えた小型の人体検知ユニット(図示しない)を構成し、これをトイレドアの正面などに配置すれば、ドアが開いた瞬間に使用者が入室することが検知でき、使用者が着座するまでの間に着座部25を昇温完了させられる確率が高くなる。
なおまた、本実施の形態においては、発熱体として、ランプヒータ29を例に挙げて説明をしてきたが、これはほんの一例に過ぎず、一般的なチュービングヒータ(図示せず)やシーズヒータ(図示せず)、図11に示すようなエキスパンドメタル型の発熱体、図12に示すような金属箔をパターニングし両面を絶縁フィルムで被覆した平面状ヒータ、PTC特性を備えたヒータ(図示せず)などであっても、熱容量を小さく昇温特性を向上させることができれば、これまで述べてきた発明と同様の効果が得られることは言うまでもない。例えば、上記チュービングヒータを応用する場合であれば、被覆に耐熱性や絶縁性に優れた材料を使用し、被覆厚を極限まで薄く構成すれば、ヒータ線材そのものの昇温は非常に速いため、ランプヒータと比較しても決して劣らない昇温性能を確保することができる。なお、ここで挙げたような発熱体を用いれば、いずれもランプヒータと比較して耐衝撃性の面で優れるので、信頼性や耐久性に優れた暖房便座を提供することができる。
なおまた、本実施の形態においては、一般的な家庭のコンセントから供給される100V電源を利用する構成のものについて説明をしてきたが、近年増加しつつあるオール電化住宅などで、200V電源が利用できれば、発熱体の定格容量は2000〜3000Wクラスのものを採用することもでき、着座部の昇温速度をより速く、例えば10K/秒近くまで引き上げることも可能となる。こうなれば、厳冬期でトイレ室内の気温が0℃を下回るような極端な場合でも、使用者が入室してから着座部25を、冷感を感じない温度ではなく、使用者の体温に近い快適な温度まで確実に昇温させることが可能となり、便座暖房の快適性と使い勝手、省エネ性がさらに向上することは言うまでもない。また、200V電源に対応できるよう構成すれば、200Vクラスの電源が一般的である海外の、特に日本と比較して冬の寒さが厳しい地域でも快適な便座暖房が実現できる。
(実施の形態2)
図9は本発明の実施の形態2における暖房便座の概略構成図、図10は同暖房便座の加熱方法を示すフローチャートである。実施の形態1と同様の符号を付したものは、同様の動作作用をするもので、説明は省略して、実施の形態1と異なる構成についてのみ、説明する。図9において便座23の内部には実施の形態1で説明した、第1の発熱体であり輻射型の発熱体であるランプヒータ29が設けてあり、さらに着座部25裏面にはヒータ線を耐熱塩ビやシリコン等で絶縁被覆した第2の発熱体であり、熱伝導型発熱体であるチュービングヒータ52が敷設されている。制御部46は第1の付勢手段48、第1の印加電力制御手段に加え、赤外線センサ26の信号によりチュ―ビングヒータ52の通電制御を行う第2の付勢手段47と赤外線センサ26、回動検知手段44、サーミスタ41bからの信号を取り込んで採暖面である着座部25の温度が所定の温度になるようチュービングヒータ52の温度制御を行う第2の印加電力制御手段54を有している。
この構成により、温度に敏感な太ももに対応する部分を速熱型のランプヒータ29で加熱して速暖して、温度に鈍感な臀部をチュ―ビングヒータ52で加熱する。チュ―ビングヒータ52は速暖性に劣るが温度の均一性は良好であるので、比較的温度に敏感でない部分や、ランプヒータ29で加熱しにくい部分の加熱を行う。ランプヒータ29、チュ―ビングヒータ52は加熱特性が異なるので、ランプヒータ29は第1の付勢手段47及び第1の印加電力制御手段48で加熱制御を行い、チュ―ビングヒータ52は第2の付勢手段53及び第2の印加電力制御手段54で加熱制御を行う。
図10において着座部25が温度T1以下の場合、チュ―ビングヒータ52は即暖性がないため、チュ―ビングヒータ52に対応する部分の着座部25をT1に保持する。さらに着座部25の温度がT2以下の場合はランプヒータ29に対応する部分の着座部25での即暖性を確保するためT2に保持する。したがって、着座部25の温度がT1以上の場合は第1の印加電力制御手段48も第2の印加電力制御手段も作動せず、着座部25温度がT2以上T1以下の場合は第2の印加電力制御手段54のみ作動し、チュ―ビングヒータ52に対応する部分の着座部25をT1に保持し、着座部25の温度がT2以下の場合は第2の印加電力制御手段54でチュ―ビングヒータ52に対応する部分の着座部25をT1に保持し、第1の印加電力制御手段48でランプヒータ29に対応する部分の着座部25をT2に保持する。
赤外線センサ26で人が検出されたときに第1の付勢手段47に印加して、着座部25を短時間で昇温する。また同時に第2の付勢手段53にも印加する。このとき便座が開になると回動検知手段44で検知し、例えば男子の小便時のように着座ははしないと判断し、一旦ランプヒータ29およびチュ―ビングヒータ52への通電を停止し、着座部25の温度が徐々に低下して温度T1になったとき、第1の印加電力制御手段48および第2の印加電力制御手段54によって温度T1に保持する。ここで、もし便座が閉とされると、回動検知手段44で検知し、着座すると判断して第1の印加電力制御手段48および第2の印加電力制御手段54によって着座部25を通常の保温温度T0に保持する。
以上のように、異なる方式のヒータを使うことで着座部の部位に応じて、加熱の仕方を変えたり、時系列に応じて発熱体の使い分けをしたりして適切に暖房することができるので、快適な暖房が得られる。以上の例では、人体の温度感度が高く、接触面積が多い場所と、そうでない場所は加熱方式を異ならせて設けた例を示したが、ランプヒータ29とチュ―ビングヒータ52併設して、ランプヒータ29の輻射で着座部25を短時間で暖め、その後の保温をチュ―ビングヒータ52の熱伝導で均一に保温するなど、目的に応じて適切な暖房が可能になる。
なお、本実施の形態では、第1の発熱体として輻射型発熱体であるランプヒータ29を例に挙げて説明したが、何もランプヒータや輻射型ヒータに限定されるものではなく、実施の形態1と同様に、速熱型の発熱体であればこれまで述べてきたものと同様の効果が得られることは言うまでもない。
なお、本実施の形態では、第2の発熱体として熱伝導型発熱体であるチュービングヒータを例に挙げて説明したが、第1の発熱体と方式は同じであってもパターニングや、定格容量の異なる発熱体をうまく組み合わせることで、これまで述べてきたものと同様の効果が得られることは言うまでもない。また、第2の発熱体としては、金属薄板をパターニングし、両面を絶縁フィルムで被覆した平面状ヒータやPTC特性を備えたヒータなども利用可能である。
なお、本実施の形態では、複数の発熱体によって異なる部位を加熱する構成としたが、例えば同じ部位を加熱するように配置し、時系列的にうまく使い分けることで、速暖性と均熱性を両立させるなど、発熱体の特性に応じて、さまざまな応用ができることは言うまでもない。
また、人の温度に対する感覚はある程度ばらつきがあるので、上述したT0、T1、T2の温度はそれぞれある程度の幅を持たせ、使用者が設定できるようにしても良い。また、省エネルギー性を重視する場合は、使用者がマニュアルで保温モードを選択しないように構成することも可能である。さらに、日常生活においてトイレが使用されないと判っている時間帯は保温を実行しないように選択することもできる。