JP4062943B2 - 分割ステータ構造を有する回転電動機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブラシレスモータ等の回転電動機に関し、特に、分割ステータ構造を有するものに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、図9に示すような分割ステータ構造を有するブラシレスモータ300が知られている。このブラシレスモータ300は、円筒状のアルミ製のハウジング310と、同ハウジング310の円筒内周面に密着するように同ハウジング310に同軸的に固定配置された磁性体からなる環状のステータ320と、同ハウジング310に同軸的かつ相対回転可能に軸支されたシャフト330と、同シャフト330の外周に同シャフト330と一体回転可能に同軸的に配置された円筒状のロータ340と、同ロータ340の外周面上において周方向に同一角度(30°)ごとにN極とS極が交互に配置された永久磁石350とを備えている。ハウジング310がアルミ製となっているのは、モータの軽量化のためである。
【0003】
ステータ320は、複数(12個)のステータ片322を環状に配置した構造(分割ステータ構造)からなっている。ステータ片322は、円弧状のヨーク部322aと、同ヨーク部322aから径方向内側に延在するティース部322bとを備えており、互いに隣り合う同ヨーク部322aの周方向端面同士は、径方向において互いに当接するように構成されている(図中Z部参照)。
【0004】
また、各ティース部322bにはそれぞれコイル360が巻線されており、コイル360は、図示しない駆動回路に接続されている。また、各ティース部322bの先端面は、周方向に同一角度(30°)ごとに放射状に配置されているとともに、所定のエアギャップを介して永久磁石350のそれぞれと対向するように配置されている。
【0005】
このような構成を有するブラシレスモータ300は、前記駆動回路より各コイル360を所定の順序にて通電して回転磁界を作ることにより、同回転磁界に連動して永久磁石350が回転駆動力を受け、これにより、ロータ340、ひいてはシャフト330が回転駆動されるようになっている。
【0006】
ところで、このような分割ステータ構造を有するブラシレスモータ300においては、互いに隣り合うステータ片322を、そのヨーク部322aの周方向端面同士が当接するように配置しても、各周方向端面の面精度が低い(寸法精度が低い、平面度及び面粗度が大きい等)と、前記端面間には微小な空隙が発生することがある(図中Z部参照)。この空隙の大きさは、前記隣り合うステータ片322のティース部322b間の磁気抵抗値を左右する。
【0007】
詳述すると、ロータ340とステータ320とが図9に示したような位置関係にあるとき、互いに隣り合うティース部322b間に形成される磁束通路は、図9の黒矢印にて模式的に示すように(磁束通路には流れの方向は存在しないが、説明の便宜上、磁束通路を矢印にて示している。他の図においても同様。)、永久磁石350のN極から、互いに隣り合うステータ片322のうちの一方(図9において左側)のティース部322bを通り、そのヨーク部322aを通った後、上記周方向端面同士の当接面を介して他方(図9において右側)のステータ片322のヨーク部322aを通り、そのティース部322bを通った後、永久磁石350のS極へ戻るように形成される。
【0008】
ここで、上記磁束通路が通る上記当接面の当接面積(磁束通路の面積)は、上記空隙の大きさにより変化する(空隙内(空気)の透磁率は、磁性体からなるステータ片322の透磁率に比して非常に小さいので、本明細書では、磁束(通路)は、空隙を通らないとしている。)。また、磁気抵抗値は、磁束通路の面積に反比例する特性を有している。従って、互いに隣り合うヨーク部322a間の磁気抵抗値は、上記空隙の大きさにより変化し、この磁気抵抗値は、同空隙の大きさが小さい程小さく、同空隙の大きさが大きい程大きくなる(図9において、黒矢印の太さは、磁気抵抗値に対応しており、矢印が太い程磁気抵抗値が小さいことを示している。他の図面においても同様。)。よって、互いに隣り合う各ステータ片322間の上記空隙の大きさがばらつけば、互いに隣り合う各ティース部322b間の磁気抵抗値もばらつくことになる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
このようなブラシレスモータ300においては、コイル360が通電されていないときに、所謂コギングトルクが不可避的に発生する。このコギングトルクは、互いに隣り合う各ティース部322b間の磁気抵抗値のばらつきが小さくなる程小さく、同磁気抵抗値のばらつきが大きくなる程大きくなることが知られている。従って、互いに隣り合う各ステータ片322間の上記空隙の大きさがばらつき易い分割ステータ構造を有するブラシレスモータ300には、非分割の環状ステータ構造を有するものより、コギングトルクが大きくなるという問題がある。
【0010】
この問題を解決するため、例えば、ステータ片322のヨーク幅(図9中のL)を広くし上記当接面の当接面積(磁束通路の面積)を広げることが考えられる。すなわち、上述したように、磁気抵抗値は磁束通路の面積に反比例する特性を有しているので、前記当接面積を広くすることにより、互いに隣り合うヨーク部322a間の磁気抵抗値に対する空隙の大きさの影響を小さくすることができる。従って、互いに隣り合う各ステータ片322間の上記空隙の大きさのばらつきに対する互いに隣り合う各ティース部322b間の磁気抵抗値のばらつきを小さくすることができ、コギングトルクを低減することができる。
【0011】
しかし、ステータ片322の前記ヨーク幅を広くするにあたり、ヨーク部322aの内径を変えずに外径を大きくすると、モータが径方向に大きくなってしまうという問題が発生する。一方、ヨーク部322aの外径を変えずに内径を小さくすると、コイル360の巻線スペースが小さくなり、同コイル360を構成しているワイヤの高占積率化(例えば、ワイヤの角線化)が必要となるので、製造コストが上昇してしまうという問題が発生する。
【0012】
特開2000−78779号は、かかる問題に対処し得る分割ステータ構造を有するブラシレスモータ400を開示している。図10は、このブラシレスモータ400を示した図であって、図10において、図9における各構成と同一の構成については、図9における符号と同一の符号を付している。また、図11は、ステータ320を径方向外側の白矢印方向から見た図である。
【0013】
このブラシレスモータ400のステータ片322は、図11に示すように、2種類の磁性板324X,324Yを軸方向(シャフト330の回転軸方向)に2枚ずつ交互に積層することにより構成されている。この磁性板324X,324Yのヨーク部の周方向端部の形状は互いに異なっており、ステータ片322のヨーク部322aの周方向端面(図10中Z部参照)は、所謂櫛歯状となっている。
【0014】
また、互いに隣り合うステータ片322同士は、前記2種類の磁性板324X,324Yを積層する順番が互いに逆になっており、図11及び同図11を拡大した図12に示すように、磁性板324X,324Yのうち互いに異なる種類の磁性板のヨーク部同士が周方向にて互いに当接するように構成されている。従って、周方向に互いに隣り合うステータ片322同士は、ヨーク部322aの周方向端部において、磁性板2枚ごとに、軸方向に互いに隣り合う磁性板同士が周方向にラップして同ラップにより形成されるラップ面にて互いに当接するように、構成されている。
【0015】
このような構成により、周方向に互いに対向する磁性板の間に形成される磁束通路は、同磁性板のヨーク部の周方向端面同士の当接面を通るように形成されるのみならず、上記ラップ面によって、同当接面を迂回するように、軸方向に隣り合う磁性板内にも形成される(図12の白矢印参照)。従って、上記ラップ面にて新たな磁束通路が確保され、上記ヨーク幅を広げることなく、互いに隣り合うステータ片322のヨーク部322a間に形成される磁束通路の面積が広くなる。
【0016】
これにより、ブラシレスモータ400においては、上述したヨーク幅を拡大することと同一の作用が得られ、互いに隣り合う各ステータ片322間に発生する上記空隙の大きさのばらつきに対する互いに隣り合う各ティース部322b間の磁気抵抗値のばらつきが小さくなる。この結果、上記ヨーク幅を広げることなく、コギングトルクが低減する。
【0017】
しかし、このブラシレスモータ400のステータ320を組み付ける際には、互いに隣り合うステータ片322の上記櫛歯状を呈した周方向端面同士を互いにラップさせるように重ねる必要がある。この場合、磁性板324X,324Yの板厚自体のばらつきや、ステータ片322に巻線されているコイル360を構成するワイヤの巻きつけ張力のばらつきに起因して各ステータ片322の軸方向弾性変形量のばらつき等が発生すると、前記周方向端面同士がうまく重ならず、ステータ片322同士を組み付けることが非常に困難になるという問題が発生する。
【0018】
本発明は、上記した問題に対処するためになされたものであり、分割ステータ構造を有する回転電動機において、大型化を招くことなく簡易な構成でコギングトルクを低減できるものを提供することを、その課題とする。
【0025】
【発明の概略】
上記各ステータ片が、複数の磁性板を軸方向に積層することにより構成されている場合、ステータ片のヨーク部の周方向端面を構成する各磁性板のヨーク部の各周方向端面が同一平面上にないとき、又は前記各周方向端面が同一平面上にあっても前記各周方向端面の面精度が低い(寸法精度が低い、平面度及び面粗度が大きい等)とき、ステータ片のヨーク部の周方向端面の面精度が低くなる。そうすると、互いに隣り合う各ステータ片のヨーク部の周方向端面間に発生する上記空隙の大きさがばらつきやすくなり、コギングトルクが増大しやすくなる。また、このような磁性板は、通常はプレス加工にて作製される。
【0026】
本発明の特徴は、このような観点に基づくものであって、鉄の比重より小さい比重を有する非磁性体からなるハウジングと、円弧状のヨーク部と前記ヨーク部から径方向に延在するティース部とを備えるステータ片を複数有し、同複数のステータ片を環状に配置し、互いに隣り合う同ヨーク部の周方向端面同士が当接するように構成された、前記ハウジング内に固定配置された磁性体からなるステータと、前記ステータの各ティース部に巻線されたコイルと、前記ティース部先端面と対向しながら回転可能に前記ハウジング内に配置されたロータとを備えた分割ステータ構造を有する回転電動機において、前記各ステータ片は、所定の範囲内のばらつきを有する板厚からなる複数の磁性板を前記ロータの回転軸方向に積層することにより構成され、前記各磁性板のヨーク部の周方向端面は、プレス加工を経て作製されたシェア面を備えるとともに、前記各ステータ片ごとのヨーク部の周方向端面を構成する同各磁性板の各シェア面が、同一平面上に存在するように構成されており、前記各磁性板のヨーク部の周方向端面における前記板厚に対する前記シェア面の前記回転軸方向の長さの割合であるシェア面比率は、前記板厚の所定の範囲内のばらつきを考慮しても、周方向において互いに対向し合う前記磁性板のヨーク部の周方向端面同士が全て互いのシェア面同士にて当接するようになる値のうちの最小値を超える値に設定されることにある。
【0027】
なお、ここにおいて、「シェア面」とは、プレス加工にて切断された磁性板の端面(分離面)のうち、引張応力に基づく破断により切断された面(以下、「破断面」と呼ぶ。)ではなく、プレスの歯(打ち抜き面)が接触しながらプレスによるせん断力で切断された面、及びこの面に対してシェービング加工等の追加工がなされた面である(以下、本明細書において同じ。)。
【0028】
通常のプレス加工にて切断されたワーク(製品側)の端面(分離面)には、同ワークの板厚方向において同加工開始側(打ち抜き開始側)に前記シェア面が形成されるとともに、同ワークの板厚方向において同加工終了側(打ち抜き終了側)に前記破断面が形成される。ここで、このシェア面は、破断面よりも、ワークの端面において同ワークの外側に形成される(詳細は後述する。)。また、このシェア面の面精度は、前記破断面の面精度より十分高くなる。
【0029】
従って、上記本発明の特徴を採用すれば、各磁性板のヨーク部の周方向端面のシェア面比率が前記最小値を超える大きい値に設定されており同端面自体の面精度が向上するとともに、各ステータ片ごとのヨーク部の周方向端面を構成する各磁性板の各シェア面は同一平面上に存在しており、各磁性板の板厚の所定の範囲内のばらつきを考慮しても、周方向において互いに対向し合う磁性板のヨーク部の周方向端面同士が全て、面精度が高い互いのシェア面同士にて当接する。従って、互いに隣り合う各ステータ片のヨーク部の周方向端面間に発生する上記空隙の大きさがばらつきにくくなり、簡易な構成にてコギングトルクが低減する。
【0030】
また、この構成により、ステータ片のヨーク部の周方向端面の面精度が向上する。その結果、互いに隣り合うステータ片の相対位置精度が向上するので、ロータの位置に対する各ステータ片のティース部先端の位置の精度も向上する。従って、ロータ(ロータの外周面に永久磁石が配置されているときは永久磁石)と各ティース部先端とのエアギャップのばらつきが小さくなるので、これによっても、コギングトルクが低減する。
【0031】
また、これによれば、コギングトルクを低減するために、回転電動機全体としての質量のうちの大きな割合を占めることが多いハウジングを鉄(磁性体)製とする必要がない。従って、上記本発明の特徴を採用した回転電動機では、ハウジングが、鉄の比重より小さい比重を有する非磁性体(アルミ材、樹脂等)から構成されており、この結果、ハウジングを鉄で構成する場合よりも、回転電動機全体として軽量化が図られる。
【0032】
なお、上記本発明の特徴におけるシェア面比率の上記最小値の算定方法の詳細については後述する。また、上記シェア面比率を上記最小値を超える値にするには、例えば、プレス加工後にシェア面に所謂シェービング加工を追加する、あるいは所謂ファインブランキングによりプレス加工を実施すればよい。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下に、添付の図面を参照しながら、本発明の各実施形態について詳細に説明する。
(第1実施形態)
まず、図1を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る分割ステータ構造を有するブラシレスモータ100の概略構成について説明する。このブラシレスモータ100の概略構成は、上述した図9に示した従来技術に係るブラシレスモータ300の概略構成において、円筒状のアルミ製のハウジングの円筒内周面とステータの円筒外周面との間に円筒状の鉄製スリーブ(磁束通路形成部材)120を挿入したものである。
【0034】
具体的には、このブラシレスモータ100は、円筒状のアルミ製のハウジング110と、同ハウジング110の円筒内周面に同ハウジング110と同軸的に固定配置された円筒状の鉄製スリーブ120と、同鉄製スリーブ120の円筒内周面に同鉄製スリーブ120と同軸的に固定配置された磁性体からなる環状のステータ130と、前記ハウジング110に同軸的かつ相対回転可能に軸支されたシャフト140と、同シャフト140の外周に同シャフト140と一体回転可能に同軸的に配置された円筒状のロータ150と、同ロータ150の外周面上において周方向に同一角度(30°)ごとにN極とS極が交互に配置された永久磁石160とを備えている。
【0035】
鉄製スリーブ120は、アルミ製のハウジング110に対して、焼き嵌めにより固定されている。なお、鉄製スリーブ120は、ハウジング110に対して、圧入、接着、鋳込み等により固定されてもよい。
【0036】
ステータ130は、一塊の磁性体から構成された複数(12個)のステータ片132を環状に配置した構造(分割ステータ構造)からなっている。このステータ片132は、円弧状のヨーク部132aと、同ヨーク部132aから径方向内側に延在するティース部132bとを備えており、互いに隣り合う同ヨーク部132aの周方向端面同士は、径方向において互いに当接するように構成されている(図中Z部参照)。この結果、ステータ130は、各ステータ片132のヨーク部132aの外周面が周方向に接続されて形成される円筒外周面を備えている。
【0037】
このステータ130は、鉄製スリーブ120に対して、焼き嵌めにより固定されており、鉄製スリーブ120の円筒内周面は、ステータ130の円筒外周面に密着している。なお、このステータ片132は、複数の磁性板を軸方向(シャフト140の回転軸方向)に積層することにより構成されていてもよい。
【0038】
各ステータ片132の各ティース部132bにはそれぞれコイル170が巻線されており、コイル170は、図示しない駆動回路に接続されている。また、各ティース部132bの先端面は、周方向に同一角度(30°)ごとに放射状に配置されているとともに、所定のエアギャップを介して永久磁石160のそれぞれと対向するように配置されている。
【0039】
このような構成を有するブラシレスモータ100は、前記駆動回路より各コイル170を所定の順序にて通電して回転磁界を作ることにより、同回転磁界に連動して永久磁石160が回転駆動力を受け、これにより、ロータ150、ひいてはシャフト140が回転駆動されるようになっている。なお、ブラシレスモータの具体的な作動については周知であるので、ここではその詳細な説明を省略する。
【0040】
次に、以上のように構成されたブラシレスモータ100の隣り合うティース部132b間に形成される磁束(通路)について、コイル170が通電されていない場合とコイル170が通電されている場合とに分けて説明する。
【0041】
(コイル170が通電されていない場合)
コイル170が通電されていないときは、ステータ片132を通る磁束は、永久磁石160から発生する磁束のみである。ロータ150とステータ130とが図1に示したような位置関係にあるとき、隣り合うティース部132b間に形成される磁束通路は、図1の矢印にて模式的に示すように、永久磁石160のN極から、互いに隣り合うステータ片132のうちの一方(図1において左側)のティース部132bを通り、そのヨーク部132aを通った後、他方(図1において右側)のステータ片132のヨーク部132aを通り、そのティース部132bを通った後、永久磁石160のS極へ戻るように形成される。
【0042】
また、互いに隣り合うヨーク部132a間に形成される磁束通路は、図1のヨーク部132a近傍を拡大した図である図2に示すように、ヨーク部132aの周方向端面同士の当接面を通るように形成される(矢印A参照)のみならず、同当接面を迂回するように、鉄製スリーブ120の円筒内周面とステータ片132のヨーク部132aの外周面との当接面を介して鉄製スリーブ120内にも形成される(矢印B参照)。
【0043】
これにより、互いに隣り合うヨーク部132a間に形成される磁束通路の面積が、鉄製スリーブ120内に迂回する磁束通路の面積分だけ広くなる。従って、互いに隣り合うヨーク部132a間の磁気抵抗値に対する空隙の大きさの影響を小さくすることができるので、互いに隣り合う各ヨーク部132aの周方向端面間に発生する空隙の大きさのばらつきに対する互いに隣り合う各ティース部132b間の磁気抵抗値のばらつきが小さくなり、その結果、コギングトルクが低減する。
【0044】
(コイル170が通電されている場合)
コイル170が通電されると、前述したコイル170が通電されていない場合に比してステータ片132を通る磁束が増大するものの、互いに隣り合うヨーク部132a間に形成される磁束通路は、コイル170が通電されていない場合と同様、ヨーク部132aの周方向端面同士の当接面を通るように形成される(図2の矢印A参照)のみならず同当接面を迂回するように鉄製スリーブ120内にも形成される(図2の矢印B参照)。
【0045】
よって、ヨーク部132aの周方向端面同士の当接面を通る磁束の最大値は、前記鉄製スリーブ120内を通る磁束の分だけ、同鉄製スリーブ120を配置しない場合より小さくなる。これにより、ステータ片132のヨーク部132aのヨーク幅(図1中のL)を狭く設計することが可能となる。また、このようにヨーク幅を狭く設計することができるので、鉄製スリーブ120を挿入したことによるモータの外径の増大量が小さくなる。
【0046】
次に、上述したブラシレスモータ100において鉄製スリーブ120を配置したことによるコギングトルクの低減効果について、図3に示したコンピュータシミュレーション(FEM解析)結果の一例を参照しながら説明する。
【0047】
図3(a)は、ステータ片132のヨーク幅Lが3mmであり鉄製スリーブ120を配置しない場合を基本形状とし、この基本形状の場合と、基本形状からヨーク幅Lを1mmづつ3mmまで広げた場合と、基本形状からヨーク幅Lを1mm狭くし厚さtが1mmの鉄製スリーブを配置した場合のそれぞれにおけるコギングトルクを演算した結果を示している。なお、この演算結果は、互いに隣り合う各ステータ片132のヨーク部132aの周方向端面間に発生する空隙の大きさのばらつきを一定値(空隙の大きさの最大値と最小値との差が一定)とし、鉄製スリーブ120の円筒内周面と各ステータ片132のヨーク部132aの外周面との間に発生する空隙の大きさのばらつきはないものとしたときのものである。
【0048】
図3(a)から理解できるように、鉄製スリーブ120を配置しない場合は、ヨーク幅Lを基本形状から広げていっても、コギングトルクの低減効果は小さい。一方、厚さtが1mmの鉄製スリーブ120を配置した場合には、ヨーク幅Lを基本形状から1mm狭くしても、コギングトルクの低減効果は非常に大きい。
【0049】
図3(b)は、ステータ片132のヨーク幅Lと鉄製スリーブ120の厚さtとの組み合わせ、及び互いに隣り合う各ステータ片132のヨーク部132aの周方向端面間に発生する空隙の大きさのばらつき(ステータ片間空隙ばらつき)を変更した場合のそれぞれにおいて、鉄製スリーブ120の円筒内周面と各ステータ片132のヨーク部132aの外周面との間に発生する空隙の大きさのばらつき(スリーブ×ステータ片空隙ばらつき)をゼロから所定値X0まで変化させたときのコギングトルクの演算結果の推移を示している。
【0050】
図3(b)に示された線Aは、ヨーク幅Lを基本形状から2mm狭くして1mmとし、厚さtが2mmの鉄製スリーブ120を配置するとともに、ヨーク部132aの周方向端面間に発生する空隙の大きさのばらつきを上記一定値(ステータ片間空隙ばらつきあり)とした場合の演算結果を示しており、線Bは、ヨーク幅Lを基本形状から1mm狭くして2mmとし、厚さtが1mmの鉄製スリーブ120を配置するとともに、ヨーク部132aの周方向端面間に発生する空隙の大きさのばらつきを上記一定値(ステータ片間空隙ばらつきあり)とした場合の演算結果を示しており、線Cは、ヨーク幅Lを基本形状から2mm狭くして1mmとし、厚さtが2mmの鉄製スリーブ120を配置するとともに、ヨーク部132aの周方向端面間に発生する空隙の大きさのばらつきをゼロ(ステータ片間空隙ばらつき無し)とした場合の演算結果を示しており、線Dは、ヨーク幅Lを基本形状から1mm狭くして2mmとし、厚さtが1mmの鉄製スリーブ120を配置するとともに、ヨーク部132aの周方向端面間に発生する空隙の大きさのばらつきをゼロ(ステータ片間空隙ばらつき無し)とした場合の演算結果を示している。
【0051】
このように、図3(b)に示された線A〜Dは全て、ヨーク幅Lと鉄製スリーブ120の厚さtとの合計が3mmに固定された場合の演算結果を示している。なお、ここにおいて鉄スリーブ120とヨーク部132aとの間に発生する空隙を考慮するのは、焼き嵌め条件の不均一性、ステータ片132の外周面及び鉄製スリーブ120の円筒内周面の形状精度等により、実際には、両者間に空隙が発生する場合が考えられるからである。
【0052】
図3(b)から理解できるように、互いに隣り合う各ヨーク部132aの周方向端面間に発生する空隙の大きさのばらつきがないとき(線C,D)より同空隙の大きさのばらつきが上記一定値のとき(線A,B)の方がコギングトルクが増大する傾向がある。この結果は、予想された結果と一致する。また、上記鉄スリーブ120と各ヨーク部132aとの間の空隙の大きさのばらつきが増大すればするほど(図3(b)において右側へ推移するほど)、コギングトルクが増大する傾向がある。この結果も、予想された結果と一致する。
【0053】
また、図3(a)と図3(b)とから理解できるように、互いに隣り合う各ヨーク部132aの周方向端面間の空隙の大きさのばらつきを上記一定値とした場合においては、鉄製スリーブ120を配置せずにヨーク幅Lを上記基本形状から3mm広くしたとき(基本形状からのモータ外径の増大量が6mm)にはコギングトルクは約26mNmまでしか低減されない(図3(a)参照)のに対し、ヨーク幅Lを上記基本形状から1mm狭くして2mmとし厚さtが1mmの鉄製スリーブ120を配置したとき(基本形状からのモータ外径の増大量がゼロ)には、上記鉄製スリーブ120と各ヨーク部132aとの間の空隙の大きさのばらつきを上記所定値X0まで考慮しても、コギングトルクは約18mNmまで低減される(図3(b)の線B参照)。従って、この場合、厚さtが1mmの鉄製スリーブ120を配置すれば、モータ外径を上記基本形状から増大させることなしに、コギングトルクを大幅に低減することができる。
【0054】
以上、説明したように、第1実施形態によれば、互いに隣り合うヨーク部132a間に形成される磁束通路は、同ヨーク部132aの周方向端面同士の当接面を通るように形成されるのみならず、同当接面を迂回するように、鉄製スリーブ120の円筒内周面とステータ片132のヨーク部132aの外周面との当接面を介して鉄製スリーブ120内にも形成される。従って、互いに隣り合う各ヨーク部132aの周方向端面間に発生する空隙の大きさのばらつきに対する互いに隣り合う各ティース部132b間の磁気抵抗値のばらつきが小さくなり、その結果、コギングトルクが低減させることができた。
【0055】
また、これによれば、コギングトルクを低減するために、ブラシレスモータ100全体としての質量のうちの大きな割合を占めることが多いハウジング110を鉄(磁性体)製とする必要がないので、ハウジング110を、鉄の比重より小さい比重を有するアルミ材から構成することができた。この結果、ハウジング110を鉄で構成する場合よりも、ブラシレスモータ100全体として軽量化が図られた。
【0056】
さらには、鉄製スリーブ120は、製造容易な形状である円筒状を呈しているので、同鉄製スリーブ120自体の製造コストを抑えることができ、ひいてはブラシレスモータ100全体としての製造コストを安価とすることができた。
【0057】
加えて、鉄製スリーブ120を配置したことにより、ヨーク部132aの周方向端面同士の当接面を通る磁束の最大値は、鉄製スリーブ120内を通る磁束の分だけ、同鉄製スリーブ120を配置しない場合より小さくなる。これにより、ステータ片132のヨーク部132aのヨーク幅(図1中のL)を狭く設計することが可能となった。また、このようにヨーク幅を狭く設計することができるので、鉄製スリーブ120を挿入したことによるブラシレスモータ100の外径の増大量が小さくなった(図3に示したように、鉄製スリーブ120の厚さtだけヨーク幅Lを狭くすれば、モータ外径の増大量はゼロになる)。
【0058】
なお、本第1実施形態においては、ハウジング110がアルミ材にて構成されているが、これに限ることはなく、鉄の比重より小さい比重を有する他の非磁性体(例えば、樹脂)によりハウジング110が構成されていてもよい。また、本第1実施形態においては、磁束通路形成部材として円筒状の鉄製スリーブ120が採用されているが、これに限ることはなく、磁束通路形成部材は、鉄以外の磁性体から構成されていてもよいし、円筒状以外の形状のものであってもよい。
【0059】
(第2実施形態)
次に、図4を参照しながら、本発明の第2実施形態に係る分割ステータ構造を有するブラシレスモータ200の概略構成について説明する。このブラシレスモータ200の概略構成は、上述した図9に示した従来技術に係るブラシレスモータ300の概略構成に対して、ステータ片が複数の磁性板を軸方向に積層することにより構成されたものである点を除き、同一である。
【0060】
すなわち、ブラシレスモータ200は、アルミ製のハウジング210と、環状のステータ220(円弧状のヨーク部222a及び同ヨーク部222aから径方ク内側に延在するティース部222bとを備える複数のステータ片222を環状に配置した構造を有する)と、シャフト230と、ロータ240と、永久磁石250と、コイル260とを備えており、このうち、ハウジング210、シャフト230、ロータ240、永久磁石250、及びコイル260は、図9に示した従来技術に係るブラシレスモータ300と実質的に同一の構成を備えている。従って、ここではこのブラシレスモータ200の作動、及び互いに隣り合うティース部222b間に形成される磁束(通路)等の説明は省略する。以下、ステータ片222について詳述する。
【0061】
ステータ片222は、ステータ220を径方向外側の白矢印方向から見た図5に示すように、所定の範囲内のばらつきを有する板厚からなる略同一形状の複数の磁性板224を軸方向(シャフト230の回転軸方向)に積層することにより構成されており、この複数の磁性板224は、溶接等により互いに機械的に連結されている。
【0062】
この磁性板224は、プレス加工を経て作製されており、上述したように、同プレス加工により切断された磁性板224の端面には、板厚方向において打ち抜き開始側にシェア面が形成されるとともに、打ち抜き終了側には破断面が形成される。以下、プレス加工において、このようなシェア面と破断面とが形成される過程を図6を参照しながら説明する。
【0063】
図6は、プレス加工にてワークが打ち抜かれる過程を示した模式図であり、図6(a)はワークを打ち抜く前の状態を、図6(b)はワークを打ち抜いている途中の状態を、図6(c)は、ワークを打ち抜き完了した後の状態を示している。図6(a)に示すように、ダイスの打ち抜き面とプレスの打ち抜き面との間には、クリアランスRが形成されている。
【0064】
図6(a)の状態から、ダイス上面上に配置されたワークに向けてプレスが下降し、プレスの先端面がワークの上面に当接すると、プレスの打ち抜き面は、ワークの加工を開始し、まず、プレスの先端面がワークの上面から所定量sだけ下降する(図6(b)参照)までは、プレスの打ち抜き面は、ワークを切断せずに同ワークを下方に向けて塑性変形させる。
【0065】
その後、図6(b)に示すように、プレスの先端面が、その位置(ワークの上面から所定量sだけ下降した位置)からさらに所定量pだけ下降するまでは、プレスの打ち抜き面は、ワークの端面(分離面)Pと接触しながら、同ワークの端面をプレスによるせん断力で切断する。この端面Pがシェア面である。従って、図6(b)において、(シェア面厚さp)/(ワークの板厚h)がシェア面比率となる。
【0066】
一方、このとき、ワークの端面(分離面)のうちシェア面Pより下側の面Qには、クリアランスRの存在に起因して引張応力が作用し、この面Qは、同引張応力に基づく破断により切断される。この面Qが破断面である。そして、この状態からさらにプレスが下降すると、図6(c)に示すように、ワークの打ち抜きが終了する。
【0067】
この破断面Qは、クリアランスRの大きさに応じて、図示のようにプレスの下降方向に対してななめに形成される。従って、シェア面Pは、破断面Qよりも、ワーク(製品側)の端面(分離面)において同ワーク(製品側)の外側に形成される。また、シェア面Pの面精度は、破断面Qの面精度より十分高くなる。
【0068】
上記シェア面比率を向上させる手法としては、例えば、プレス加工後のシェア面Pに所謂シェービング加工を追加する方法、所謂ファインブランキングにより上記クリアランスRを小さくした状態でプレス加工を行う方法等がある。なお、シェービング加工及びファインブランキングについては周知であるので、ここではそれらの詳細な説明を省略する。
【0069】
図7は、図5に示された磁性板224のヨーク部の周方向端面同士が対向する部分近傍の拡大図であり、図7(a)は、上述したプレス加工を経て作製された磁性板224の同端面のシェア面比率が約30パーセントの場合を、図7(b)は、同シェア面比率が約70パーセントの場合を示している。また、各磁性板224の板厚には所定の範囲内のばらつきが存在することにより、各磁性板224の前記端面は、図7に示したように、軸方向において互いにずれた状態で対向し合っている。
【0070】
図7(a)から理解できるように、前記端面のシェア面比率が小さい(例えば約30パーセント。通常のプレス加工ではこの程度の値となる。)と、シェア面Pの領域の全てが破断面Qと対向する場合が生じ、このとき、この対向面には比較的大きな空隙が発生する。このような場合、互いに隣り合う各ステータ片222のヨーク部222aの周方向端面間に発生する上記空隙の大きさがばらつきやすくなり、コギングトルクが増大しやすくなる。
【0071】
一方、図7(b)から理解できるように、前記端面のシェア面比率が大きい(例えば約70パーセント)と、各磁性板224の板厚の上記所定の範囲内のばらつきを考慮しても、互いに対向し合う磁性板224のヨーク部の周方向端面同士が全て互いのシェア面P同士にて当接するようになり、上記空隙量も小さくなる。この場合は、前述した空隙の大きさがばらつきにくくなり、コギングトルクが低減する。
【0072】
このブラシレスモータ200においては、各ステータ片222ごとのヨーク部222aの周方向端面を構成する各磁性板224の各シェア面が、同一平面上に存在するように製造工程において管理された上で積層されている。また、各磁性板224の板厚の所定の範囲内のばらつきを考慮しても互いに対向し合う磁性板224のヨーク部の周方向端面同士が全て互いのシェア面P同士にて当接するように(図7(b)の状態)構成するため、上記したシェア面比率を向上させる手法が採用され、各磁性板224のヨーク部の周方向端面におけるシェア面比率は所定の最小値を超える値となっている。以下、図8を参照しながら、シェア面比率の下限を決定する前記所定の最小値の算出方法について説明する。
【0073】
図8は、前記所定最小値を算出する際の理解を容易にするための図である。図8(a)は、各磁性板224が、そのシェア面Pが積層方向において必ず一方向側に配置されるように積層される場合の図であり、図8(b)は、各磁性板224が、そのシェア面Pが積層方向において両方向側に配置されることがありえる場合の図である。なお、図8においては、説明の便宜上、図6に示した塑性変形量sはないものとしている。
【0074】
(シェア面Pが積層方向において必ず一方向側に配置される場合(図8(a)))
磁性板224(M)と磁性板224(m)に着目しながら説明する。磁性板224(M)の板厚は、所定の範囲内のばらつきを考慮した上での最大値Xであり、磁性板224(m)の板厚は、所定の範囲内のばらつきを考慮した上での最小値(X−L)である。従って、磁性板224の板厚のばらつきはLである。
【0075】
また、各磁性板224のシェア面比率はxで一定であるとする。従って、磁性板224(m)のシェア面Pの軸方向長さは、 (X−L)・x であり、磁性板224(M)の破断面Qの軸方向長さは、X・(1−x) である。ここで、(X−L)・x = X・(1−x) が成立するときのxより各磁性板224のシェア面比率が小さいと、磁性板224(m)のシェア面Pの領域の全てが磁性板224(M)の破断面Qと対向する場合が生じ得る。一方、上記等式が成立するときのxより各磁性板224のシェア面比率が大きいと、磁性板224(m)のシェア面Pの少なくとも一部は、必ず対向する磁性板224のシェア面Pと対向することになる。
【0076】
従って、各磁性板224のシェア面比率が、上記等式が成立するときのx = X/(2X−L) を超える値となるとき、各磁性板224の板厚の所定の範囲内のばらつきLを考慮しても互いに対向し合う磁性板224のヨーク部の周方向端面同士が全て互いのシェア面P同士にて当接するようになる。よって、シェア面Pが積層方向において必ず一方向側に配置される場合は、x = X/(2X−L)が上記所定の最小値となる。この場合、磁性板224の最大板厚X = 0.5mm,ばらつきL = 0.01mmを一例として挙げると、所定の最小値は、50.51パーセントとなる。
【0077】
(シェア面Pが積層方向において両方向側に配置されることがありえる場合(図8(b)))
シェア面Pが積層方向(軸方向)において互いに逆側に配置された互いに隣り合う2枚の磁性板224(M)と磁性板224(m)に着目しながら説明する。図8(a)と同様、この2枚の磁性板224(M)の板厚は、所定の範囲内のばらつきを考慮した上での最大値Xであり、磁性板224(m)の板厚は、所定の範囲内のばらつきを考慮した上での最小値(X−L)である。従って、磁性板224の板厚のばらつきはLである。
【0078】
また、各磁性板224のシェア面比率はxで一定であるとする。従って、磁性板224(m)のシェア面Pの軸方向長さは、 (X−L)・x であり、前記2枚の磁性板224(M)により形成される軸方向に連続した破断面Qの軸方向長さは、2X・(1−x) である。ここで、(X−L)・x = 2X・(1−x) が成立するときのxより各磁性板224のシェア面比率が小さいと、磁性板224(m)のシェア面Pの領域の全てが前記連続した破断面Qと対向する場合が生じ得る。一方、上記等式が成立するときのxより各磁性板224のシェア面比率が大きいと、磁性板224(m)のシェア面Pの少なくとも一部は、必ず対向する磁性板224のシェア面Pと対向することになる。
【0079】
従って、各磁性板224のシェア面比率が、上記等式が成立するときのx = 2X/(3X−L) を超える値となるとき、各磁性板224の板厚の所定の範囲内のばらつきLを考慮しても互いに対向し合う磁性板224のヨーク部の周方向端面同士が全て互いのシェア面P同士にて当接するようになる。よって、シェア面Pが積層方向において両方向側に配置されることがありえる場合は、x = 2X/(3X−L)が上記所定の最小値となる。この場合、磁性板224の最大板厚X = 0.5mm,ばらつきL = 0.01mmを一例として挙げると、所定の最小値は、67.11パーセントとなる。
【0080】
以上、説明したように、第2実施形態によれば、各磁性板224のヨーク部の周方向端面のシェア面比率が上記所定の最小値を超える大きい値に設定されているので、同端面自体の面精度が向上するとともに、各ステータ片222ごとのヨーク部222aの周方向端面を構成する各磁性板224の各シェア面Pは同一平面上に存在しており、各磁性板224の板厚の所定の範囲内のばらつきLを考慮しても、周方向において互いに対向し合う磁性板224のヨーク部の周方向端面同士が全て、面精度が高い互いのシェア面P同士にて当接する。従って、互いに隣り合う各ステータ片222のヨーク部222aの周方向端面間に発生する上記空隙の大きさがばらつきにくくなり、簡易な構成にてコギングトルクが低減する。
【0081】
また、この構成により、ステータ片222のヨーク部222aの周方向端面の面精度が向上する。その結果、互いに隣り合うステータ片222の相対位置精度が向上するので、ロータ240の位置に対する各ステータ片222のティース部222b先端の位置の精度も向上する。従って、ロータ240の外周面に配置された永久磁石250と各ティース部222b先端とのエアギャップのばらつきが小さくなるので、これによっても、コギングトルクが低減する。
【0082】
さらには、ハウジング210が、鉄の比重より小さい比重を有するアルミ材から構成されており、この結果、ハウジング210を鉄で構成する場合よりも、ブラシレスモータ200全体として軽量化が図られる。
【0083】
以上、本発明の第1実施形態及び第2実施形態について説明したが、本発明の実施形態は、これらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に含まれる範囲内にて適宜変更されることができる。
【0084】
例えば、第2実施形態において、第1実施形態における円筒状の鉄製スリーブ120が、ハウジング210の円筒内周面とステータ220の円筒外周面との間に挿入されてもよい。これによれば、互いに隣り合うヨーク部222a間に形成される磁束通路の面積が一層広くなる。従って、互いに隣り合う各ティース部222b間の磁気抵抗値のばらつきが一層小さくなり、より一層コギングトルクが低減する。
【0085】
また、第1実施形態及び第2実施形態において、環状のステータのティース部は、径方向外側に放射状に延在するように構成されていてもよい。この場合、各ステータ片は、環状のステータの円筒内周面を構成するヨーク部と、同ヨーク部から径方向外側に延在するティース部から構成され、ロータ及び永久磁石は、ハウジングの円筒内周面と環状のステータとの間の円筒状の空間内に、シャフトと一体回転可能に同軸的に配置される。また、鉄製スリーブは、その円筒外周面がステータの円筒内周面に密着するように、ステータに対して焼き嵌め等により固定される。
【0086】
さらには、第1実施形態及び第2実施形態においては、回転電動機としてブラシレスモータが採用されているが、これに限られることはなく、例えば、回転電動機として、永久磁石を構成上有していない所謂SRモータ(スイッチト・リラクタンス・モータ)が採用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態に係る分割ステータ構造を有するブラシレスモータをシャフトの回転軸に直交する平面で切断した部分断面の概略構成を示した図である。
【図2】 図1におけるヨーク部近傍を拡大した図である。
【図3】 本発明の第1実施形態において鉄製スリーブを配置したことによるコギングトルクの低減効果を示すために行ったコンピュータシミュレーション(FEM解析)の演算結果の一例を示した図である。
【図4】 本発明の第2実施形態に係る分割ステータ構造を有するブラシレスモータをシャフトの回転軸に直交する平面で切断した部分断面の概略構成を示した図である。
【図5】 図4に示されたステータを径方向外側の白矢印方向から見た図である。
【図6】 プレス加工にてワークが打ち抜かれる過程を示した模式図である。
【図7】 図5に示された磁性板のヨーク部の周方向端面同士が対向する部分近傍の拡大図である。
【図8】 本発明の第2実施形態において、磁性板のヨーク部の周方向端面のシェア面比率の下限を決定する所定の最小値を算出する際の理解を容易にするための図である。
【図9】 従来における分割ステータ構造を有するブラシレスモータをシャフトの回転軸に直交する平面で切断した部分断面の概略構成を示した図である。
【図10】 従来における分割ステータ構造を有するブラシレスモータをシャフトの回転軸に直交する平面で切断した部分断面の概略構成を示した図である。
【図11】 図10に示されたステータを径方向外側の白矢印方向から見た図である。
【図12】 図11を拡大し、磁性板内の磁束通路を模式的に示した図である。
【符号の説明】
110,210…ハウジング、120…鉄製スリーブ、130,220…ステータ、132,222…ステータ片、132a,222a…ヨーク部、132b,222b…ティース部、224…磁性板、150,240…ロータ、160,250…永久磁石、170,260…コイル。
Claims (1)
- 鉄の比重より小さい比重を有する非磁性体からなるハウジングと、
円弧状のヨーク部と前記ヨーク部から径方向に延在するティース部とを備えるステータ片を複数有し、同複数のステータ片を環状に配置し、互いに隣り合う同ヨーク部の周方向端面同士が当接するように構成された、前記ハウジング内に固定配置された磁性体からなるステータと、
前記ステータの各ティース部に巻線されたコイルと、
前記ティース部先端面と対向しながら回転可能に前記ハウジング内に配置されたロータとを備えた分割ステータ構造を有する回転電動機において、
前記各ステータ片は、所定の範囲内のばらつきを有する板厚からなる複数の磁性板を前記ロータの回転軸方向に積層することにより構成され、
前記各磁性板のヨーク部の周方向端面は、プレス加工を経て作製されたシェア面を備えるとともに、前記各ステータ片ごとのヨーク部の周方向端面を構成する同各磁性板の各シェア面が、同一平面上に存在するように構成されており、
前記各磁性板のヨーク部の周方向端面における前記板厚に対する前記シェア面の前記回転軸方向の長さの割合であるシェア面比率は、前記板厚の所定の範囲内のばらつきを考慮しても、周方向において互いに対向し合う前記磁性板のヨーク部の周方向端面同士が全て互いのシェア面同士にて当接するようになる値のうちの最小値を超える値に設定されたことを特徴とする分割ステータ構造を有する回転電動機。
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