JP4060252B2 - ファンモータ - Google Patents

Description

本発明は、電子機器の冷却等に用いられるファンモータに関するものである。

特開平１０−１９１６１１号公報等には、複数の回転子磁極を内周側に備えた筒状部及び筒状部の一端を塞ぐ底壁部を備えたカップ状部材と、筒状部の外側に設けられた複数枚のブレードとからなるインペラを備えたファンモータが示されている。この種のファンモータでは、高性能化を目的として風量と静圧性能を高くするために、巻線部への入力を増加させてモータの回転数を上げている。
特開平１０−１９１６１１号公報

しかしながら、このようにモータの回転数を上げると、巻線部の発熱量が増大する。そして、この発熱により軸受に熱が伝わって軸受の温度が上昇すると軸受の寿命が短くなる。そのため、温度上昇を抑える必要から、従来は、ファンモータの高性能化が妨げられている。

本発明の目的は、カップ状部材内の部材の温度上昇を低減してファンモータの高性能化を図ることができるファンモータを提供することにある。

本発明の他の目的は、ファンモータの軸受に伝わる熱の量を低減するすることにより、軸受の寿命を延ばすことができるファンモータを提供することにある。

本発明の他の目的は、通気孔からモータ内部に異物が入るのを防ぐことができるファンモータを提供することにある。

本発明が改良の対象とするファンモータは、複数の回転子磁極を内周側に備えた筒状部及び筒状部の一端を塞ぐ底壁部を備えたカップ状部材と、筒状部の外側に設けられた複数枚のブレードとからなるインペラを備えている。

本発明では、カップ状部材の底壁部に、カップ状部材の内部に空気を流入させる１以上の通気孔を形成する。本発明のように通気孔を形成すると、モータ回転時に通気孔からカップ状部材内に空気が流れ、カップ状部材の内部に入った空気は、カップ状部材の開口部から排出される。その結果、カップ状部材の内部、より具体的には、巻線部からカップ状部材内への放熱が良好になり、カップ状部材の内部の部材の温度上昇を低減することができて、ファンモータの高性能化が可能になる。

本発明が改良の対象とするより具体的なファンモータは、複数の突極部を有する固定子鉄心と、固定子鉄心に装着された電気的絶縁材料からなるインシュレータと、インシュレータを介して複数の突極部にそれぞれ設けられた複数の巻線部と、複数の巻線部に供給する電流を制御するための制御回路が実装された回路基板と、永久磁石からなる複数の回転子磁極を内周側に備えた筒状部及び筒状部の一端を塞ぐ底壁部を備えたカップ状部材及び筒状部の外側に設けられた複数枚のブレードからなるインペラと、一端にカップ状部材の底壁部が固定された回転軸と、回転軸を回転自在に支持する１以上の軸受と、底壁部側に一端を有し、１以上の軸受を内部に保持し且つ外周部に固定子鉄心が装着される軸受保持用筒部と、軸受保持用筒部の他端側に位置して回路基板を収納する基板収納部と、複数枚のブレードの外周を囲むハウジング部と、基板収納部とハウジング部とを連結する複数本のウエブとを備えている。そして本発明では、カップ状部材の底壁部にカップ状部材の内部に空気を流入させる複数の通気孔を形成する。本発明のように通気孔を形成すると、モータ回転時に通気孔からカップ状部材内に空気が流れこみ、カップ状部材内に配置された巻線部を冷却することができる。そのため、軸受に伝わる熱量を抑えて軸受の寿命を延ばすことができる。

通気孔は入口、出口、及び入口と出口との間に形成された通路を備えるように構成することができる。この場合、入口は出口に対してインペラの回転方向の前方側に位置している。通路は入口と出口との間に横断面積が一番小さくなる部分を有していることを特徴とする。このようにすると、通気孔を通る空気の速度を速くすることができて、冷却性能を上げることができる。

また、通気孔入口の開口面積は出口の開口面積よりも広く、通路は、出口側に隣接する位置で入口から流入した空気の流れを内側に向けるように、空気の流れを変更する形状を有するように形成できる。このようにすると、通気孔から入った空気の流れは、巻線部の方向に流れ易くなり冷却効果をあげることができる。

さらに本発明では、底壁部の内面部に、出口から流入した空気を巻線部に向けるように、周方向に間隔を開けて配置されてそれぞれ径方向に延びるリブを一体に設けることができる。このようにすると、出口から流出した空気の流れは、巻線部に向かうため巻線部を直接冷却することができて、巻線部の温度上昇を効果的に低減できる。

またこのリブの回転方向側の側面には、回転方向の前方側から後方側に向かって傾斜する傾斜面を形成することができる。この傾斜面の角度は、出口から流入した空気が巻線部に向かうように定める。このようにすると、巻線部の冷却効率は更に向上する。

さらに本発明では、底壁部の内面部に、リブとは別に、カップ状部材の内部の空気を撹拌する複数の撹拌用リブを設けることができる。このようにすると、カップ状部材内部の空気を積極的に撹拌して内部の温度差を小さくすることができるので冷却性能が向上する。

また本発明では、カップ状部材の底壁部の内面部に、複数の出口よりも径方向内側の位置に第１の円筒部を一体に形成し、インシュレータには、第１の円筒部の外周面または内周面との間に僅かな間隙を形成するように第２の円筒部を一体に設けることができる。このようにすると、第１の円筒部と第２の円筒部との間に形成された僅かな間隙がラビリンスとなり、回転時に通気孔から入った異物から軸受内に進入するのを防ぐことができる。

またさらに本発明では、第２の円筒部の端部は、回転軸が軸線方向に変位したときに、底壁部の内面と当接して、回転軸の変位量を規制するストッパ部を構成するのが好ましい。このようにすると、カップ状部材が固定された回転軸が軸線方向に移動してカップ状部材が固定子側に近付いても、ストッパ部が底壁部の内面と接触してカップ状部材の回路基板側への移動を阻止することができるので、回路基板上の電子部品と永久磁石の端面が接触して電子部品が破損するのを防ぐことができる。

本発明によれば、モータ回転時に通気孔からカップ状部材の内部に外気を導入して、巻線部の温度上昇を抑制することができる。そのため、軸受に伝わる熱量を抑えて軸受の寿命を延ばすことができる。その結果、風量と静圧性能を高くした高性能タイプのファンモータにおいても長寿命化が可能となる。

以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。図１は、本発明のファンモータの一実施の形態の半部断面図である。図１において、符号１で示した部材は固定子である。この固定子１は複数枚の珪素鋼板が積層されて構成された鉄心２を備えている。鉄心２は、周方向に並ぶ複数の突極部を有している。そしてこの鉄心２の各突極部にインシュレータ３０を介して巻線が巻装されて巻線部３が形成されている。これら複数の突極部は、巻線部３が励磁されて固定子磁極として機能する。各突極部の先端面が、固定子磁極の磁極面となる。

符号４で示した部材は、固定子１側に配置された回路基板である。この回路基板４には巻線部３に流す電流を制御するための制御回路を構成する電子部品３２が実装されている。回路基板４上の制御回路と巻線部３とは、回路基板４上の電極に半田付けされた端子ピン５に巻線部３から延びるリード線が巻き付けられて、電気的に接続されている。

符号１４で示した部材は、固定子側ケースである。固定子側ケース１４は、軸受保持用筒部１７と、回転子６の複数枚のブレード１２の外周を囲むハウジング部１８と、回路基板４が収納されて固定される基板収納部１９と、この基板収納部１９とハウジング部１８とを連結する複数本のウエブ２９とを備えて構成されている。軸受保持用筒部１７の内周部には後述する回転軸１３側に突出する段部１６が形成されている。段部１６の両端には、軸受保持用筒部１７の内周部に配置された２つの軸受１５ａ，１５ｂが当接している。２つの軸受１５ａ，１５ｂは、環状の外輪２２と、環状の内輪２３と、外輪２２及び内輪２３の間に配置された球状の複数の転動体２４とから構成されたいわゆるボールベアリングであり、回転軸１３を回転自在に支持している。軸受１５ｂの内輪２３の端面２３ａは回転軸１３に固定されたリング２０に当接している。軸受１５ａの内輪２３の端面２３ｂにはコイルバネ２１の端面が当接している。これにより、軸受１５ａは、コイルバネ２１により与圧されている。外輪２２と内輪２３との間の空間には、図示しないグリースからなる潤滑油が充填されている。回転軸１３が回転すると、摩擦熱で潤滑油は粘度が低下し、転動体２４の周囲には、潤滑油の油膜が形成される。

符号６で示した部材は、インペラ７を備えた回転子である。なお、図２は固定子１側から見た回転子６の裏面図であり、図３は本実施の形態のファンモータの正面図である。この回転子６は、導磁性材料からなる筒状の永久磁石支持部材８と、該永久磁石支持部材８の外側に嵌合されたカップ状部材９とを備えている。永久磁石支持部材８は、筒形状部８ａと筒形状部８ａの端部から径方向内側に延びる環状部８ｂとを有している。筒形状部８ａの内周面上には複数の回転子磁極（永久磁石）１０が固定されている。カップ状部材９は、筒状部９ａと、この筒状部９ａの一端を塞ぐ底壁部９ｂとを有している。筒状部９ａの内周部には、永久磁石支持部材８が嵌合されて固定され、外周部には複数枚のブレード１２が一体に設けられている。

カップ状部材９の底壁部９ｂの輪郭は、ほぼ円形を呈しており、その中心には、回転軸１３の一端が嵌合されて固定される貫通孔９ｃが形成されている。この底壁部９ｂには、底壁部９ｂを貫通してカップ状部材９の内部に空気を流入させる５個の通気孔３３…が形成されている。図２及び図３に示されるように、５個の通気孔３３…は、底壁部９ｂの中心を中心とする仮想円に沿って周方向に等間隔しい間隔をあけて形成されている。

一個の通気孔３３は、図３のＩＶ−ＩＶ線断面図である図４に示すように、外部に向かって開口して空気を流入させる入口３３ａと、カップ状部材９の内部に向かって開口して空気を流出させる出口３３ｂと、入口３３ａと出口３３ｂとの間に形成された通路３３ｃとを備えている。入口３３ａ及び出口３３ｂは、いずれも矩形状を呈している。そして、入口３３ａは、出口３３ｂに対してインペラ７の回転方向（矢印Ｒ）の前方側に位置している。入口３３ａの開口面積は、出口３３ｂの開口面積よりも広い。

通路３３ｃを囲む４つの壁面には、底壁部９ｂを外側から見たときに、入口３３ａを通して見ることができる前方壁面３３ｄと、底壁部９ｂを内側から見たときに、出口３３ｂを通して見ることができる後方壁面３３ｅとが含まれている。インペラ７の回転方向（矢印Ｒ）の前方側に位置する前方壁面３３ｄは、入口３３ａの回転方向前方側縁部から出口３３ｂに向かって延びるように傾斜している。また後方壁面３３ｅは、底壁部９ｂの内面と平行に延びる第１の壁面部分３３ｆと、この第１の壁面部部３３ｆと連続し且つ回転軸の軸線と直交する方向に沿って出口３３ｂに向かって延びる第２の壁面部分３３ｇとを備えている。これにより、通路３３ｃは、入口３３ａと出口３３ｂとの間に横断面積が一番小さくなる絞り込み部分３３ｈを有する。入口３３ａから流入して空気は、矢印Ｆで示すように、前方壁面３３ｄに沿って流れ、絞り込み部分３３ｈを通過して加速された後、第２の壁面部分３３ｇに当たって出口３３ｂから流出する。

図２に示すように、底壁部９ｂの内面部には、第１の円筒部３５と５本の空気流出方向規制用リブ３７…と５本の空気撹拌用リブ３９…とが一体に形成されている。第１の円筒部３５は、固定子１側に突出し且つ回転軸１３と同心的になるように形成され、５つの出口３３ｂよりも径方向内側の位置に配置されている。図１に示すように、第１の円筒部３５は、その内周面とインシュレータ３０に一体に設けられた第２の円筒部３０ａとの間に僅かな間隙からなるラビリンス構造を形成している。このようなラビリンス構造を形成することにより、インペラ７が回転しているときに、通気孔３３から入ったゴミまたはホコリが軸受１５ａ側に進入して、ゴミまたはホコリが軸受１５に付着するのを防ぐことができる。また、本例では、第２の円筒部３０ａの端部は、回転軸１３が軸線方向に変位したときに、底壁部９ｂの内面と当接して、回転軸１３の変位量を規制するストッパ部を構成している。

図２に示すように、空気流出方向規制用リブ３７…及び空気撹拌用リブ３９…は、回転軸１３を中心にして放射状に延び、且つ周方向にほぼ等しい間隔を開けて交互に配置されている。また、空気流出方向規制用リブ３７…及び空気撹拌用リブ３９…の突出寸法は、第１の円筒部３５の突出寸法よりも小さい。そして、底壁部９ｂには、空気流出方向規制用リブ３７と空気撹拌用リブ３９との間に位置する１０ヶ所の部分のうち、一つおきの５つの部分に、それぞれ通気孔３３が形成されている。

空気流出方向規制用リブ３７は、図４の矢印Ｆで示すように、通気孔３３の出口３３ｂから流出した空気を巻線部３に向けるように、出口３３ｂのインペラの回転方向（矢印Ｒ）の後方側に形成されている。また、空気流出方向規制用リブ３７の回転方向（矢印Ｒ）側の側面には、回転方向の前方側から後方側に向かって傾斜する傾斜面３７ａが形成されている。この傾斜面３７ａの傾斜する角度θは、出口３３ｂから流出した空気が巻線部３に向くように１０°〜４５°に定められている。また空気撹拌用リブ３９は、空気流出方向規制用リブ３７との間に通気孔３３が位置するように配置されており、カップ状部材９の内部の空気を撹拌する機能を果たす。

本例のファンモータでは、通気孔３３から入った空気は、図１の矢印に示すように、巻線部３を冷却してから、固定子１と回転子６との間の隙間を通過する。そして基板収納部１９とカップ状部材９の筒状部９ａとの間の間隙から排出される。そのため、本例のファンモータによれば、巻線部３の温度上昇を抑制することができ、軸受１５ａ，１５ｂに伝わる熱量を抑えて軸受１５ａ，１５ｂの温度上昇を抑制することができる。

本実施の形態のファンモータと、通気孔３３を設けずその他は本実施の形態のファンモータと同じ構造を有する比較例のファンモータとを作り、各ファンモータを定格入力で入力して、室温、無負荷の条件で回転して、巻線部及びカップ状部材側の軸受のそれぞれの温度上昇値（Ｋ）を測定した。表１は、その測定結果を示している。

表１に示すように、本実施例のファンモータは、通気孔３３を設けない比較例のファンモータに比べて、巻線部及び軸受のいずれにおいても温度上昇を抑えられるのが分かる。

本発明を実施するための最良の形態のファンモータの半部断面図である。 図１に示すファンモータの回転子の裏面図である。 図１に示すファンモータの正面図である。 図３のＩＶ−ＩＶ線断面図である。

符号の説明

１ 固定子
２ 鉄心
３ 巻線部
６ 回転子
７ 回転子側ケース
９ カップ状部材
１０ 永久磁石
１３ 回転軸
１４ 固定子側ケース
１５ａ，１５ｂ 軸受
１７ 軸受保持用筒部
１８ ハウジング部
１９ 基板収納部
３３ 通気孔
３７ 空気流出方向規制用リブ（リブ）
３９ 空気撹拌用リブ

Claims (5)

1. 複数の回転子磁極を内周側に備えた筒状部及び前記筒状部の一端を塞ぐ底壁部を備えたカップ状部材と、前記筒状部の外側に設けられた複数枚のブレードとからなるインペラを備えたファンモータであって、
   前記カップ状部材の前記底壁部には、前記カップ状部材の内部に空気を流入させる１以上の通気孔が形成されており、
   前記通気孔は入口、出口、及び前記入口と前記出口との間に形成された通路を備え、
   前記入口は前記出口に対して前記インペラの回転方向の前方側に位置しており、
   前記通路は前記入口と前記出口との間に横断面積が一番小さくなる部分を有しており、
   前記入口の開口面積が前記出口の開口面積よりも広くなっており、
   前記底壁部の内面部には、前記出口から流出した空気を前記巻線部に向けるように、周方向に間隔を開けて配置されてそれぞれ径方向に延びるリブが一体に設けられており、
   前記リブの前記回転方向側の側面には、前記前方側から前記後方側に向かって傾斜する傾斜面が形成されており、
   前記傾斜面の角度は、前記出口から流出した空気が前記巻線部に向くように定められていることを特徴とするファンモータ。
2. 複数の突極部を有する固定子鉄心と、
   前記固定子鉄心に装着された電気的絶縁材料からなるインシュレータと、
   前記インシュレータを介して前記複数の突極部にそれぞれ設けられた複数の巻線部と、
   前記複数の巻線部に供給する電流を制御するための制御回路が実装された回路基板と、
   永久磁石からなる複数の回転子磁極を内周側に備えた筒状部及び前記筒状部の一端を塞ぐ底壁部を備えたカップ状部材及び前記筒状部の外側に設けられた複数枚のブレードからなるインペラと、
   一端に前記カップ状部材の前記底壁部が固定された回転軸と、
   前記回転軸を回転自在に支持する１以上の軸受と、
   前記底壁部側に一端を有し、前記１以上の軸受を内部に保持し且つ外周部に前記固定子鉄心が装着される軸受保持用筒部と、
   前記軸受保持用筒部の他端側に位置して前記回路基板を収納する基板収納部と、
   前記複数枚のブレードの外周を囲むハウジング部と、
   前記基板収納部と前記ハウジング部とを連結する複数本のウエブとを備えたファンモータであって、
   前記カップ状部材の前記底壁部には、前記カップ状部材の内部に空気を流入させる複数の通気孔が形成されており、
   前記通気孔は入口、出口、及び前記入口と前記出口との間に形成された通路を備え、
   前記入口は前記出口に対して前記インペラの回転方向の前方側に位置しており、
   前記通路は前記入口と前記出口との間に横断面積が一番小さくなる部分を有しており、
   前記入口の開口面積が前記出口の開口面積よりも広くなっており、
   前記底壁部の内面部には、前記出口から流出した空気を前記巻線部に向けるように、周方向に間隔を開けて配置されてそれぞれ径方向に延びるリブが一体に設けられており、
   前記リブの前記回転方向側の側面には、前記前方側から前記後方側に向かって傾斜する傾斜面が形成されており、
   前記傾斜面の角度は、前記出口から流出した空気が前記巻線部に向くように定められていることを特徴とするファンモータ。
3. 前記底壁部の内面部には、前記リブとは別に、前記カップ状部材の内部の空気を撹拌する複数の撹拌用リブが設けられている請求項１または２に記載のファンモータ。
4. 前記カップ状部材の前記底壁部の前記内面部には、前記複数の出口よりも径方向内側の位置に第１の円筒部が一体に形成され、
   前記インシュレータには、前記第１の円筒部の外周面または内周面との間に僅かな間隙を形成するように第２の円筒部が一体に設けられている請求項２に記載のファンモータ。
5. 前記第２の円筒部の端部は、前記回転軸が軸線方向に変位したときに、前記底壁部の内面と当接して、前記回転軸の変位量を規制するストッパ部を構成している請求項４に記載のファンモータ。

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