JP4052982B2 - パスタ類の調理方法及びその調理方法により製造されたパスタ食品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、パスタ類の簡便な調理方法に関し、より詳しくは、簡便で、廃水の発生量が削減され、下水処理や環境への負荷が少なく、エネルギー効率も高いパスタ類の調理方法に関する。本発明はさらに、そのような調理方法により製造されたパスタ食品に関する。
【0002】
【従来の技術】
パスタ類は小麦粉に加水して混練し、押出機等で高圧で押出し成形したものである。通常は硬質小麦粉、好ましくはデュラムセモリナ、デュラム小麦粉等を主原料とし、卵白等の材料を配合することもある。このように製造されるパスタは固く緻密な組織を持ち、この組織から、パスタ独特のコシのある食感が生まれる。パスタ類はその製造方法や流通形態から乾燥パスタ、生パスタ、茹でパスタ、冷凍パスタ等に大別され、更に成形方法の変化により多種多様な形状、サイズの製品が製造されている。
パスタ類の調理方法を乾燥パスタを例にとれば、一例として次の通りである。パスタ質量の約10倍量の熱湯中にパスタを投入し、中程度の沸騰状態を保ちながら適度な硬さと食感になるまで茹でる。茹で上がったパスタを取り出して水を切り、好みに応じて他の材料を加え調味を行う。パスタの茹で時間は、使用するパスタの形状やサイズ、好みの食感等により変動するが、一般的には2分から20分程度である。
【0003】
このようにパスタ類は茹で時間が長いことが調理上の欠点となっているが、それにも増して茹でるために大量の湯を沸騰させること、高温の熱湯を扱うこと、茹でた後の水切りや茹で水の廃棄処理等の所謂「茹でこぼし」が必要なこと、茹で作業と並行し或いは茹で作業に続けて味付けなどの調理を要すること等が調理を煩雑で面倒なものにしている。特に家庭ではこれらの煩雑な作業が嫌われ、パスタの普及を妨げる原因となってきた。
また近年、環境問題への関心が高まり、水質保全も重要な課題となっている。従来、パスタ類を調理する際には大量の茹で水が廃棄され、この中には澱粉や蛋白質等の水溶性成分が溶出しているため、下水処理、ひいては環境に対し多大の負荷を与える。しかもパスタ類の量より遥かに多い茹で水を沸騰させるだけの熱エネルギーを消費するが、このエネルギーのかなりの部分が未利用のまま、廃水として廃棄される。このような理由から、茹で水を使用せず、廃水の発生しない新たな調理法が求められている。
【0004】
従来、パスタ類の調理を簡便化し、調理時間を短縮するための方法が種々考案されてきた。
例えば、茹で時間を短縮する試みとして、パスタの麺線に沿って一定の幅と深さの溝を設ける方法(例えば、特許文献1参照。)、デュラムセモリナにモチ性穀粉を組み合わせる方法(例えば、特許文献2参照。)、特定のねじれ度を持った螺旋状に成形する方法(例えば、特許文献3参照。)、パスタの表層部のみをα化した後に一定条件下で吸水させる方法(例えば、特許文献4参照。)、この方法にアルコール処理を組み合わせる方法(例えば、特許文献5参照。)、原料として食用乳化剤を添加し、特定温度で押出成形する方法(例えば、特許文献6参照。)などが提案されている。
これらの方法は、いずれもパスタの製造時に特殊な加工を施しているが、その効果は茹で時間を幾分か短縮するに止まり、従来の調理方法を根底から変えるものではない。このため、上述した欠点の多くは解消されないままであり、調理の手間も従来法と変わらない。しかも、その製造には特殊な工程や添加物を必要とし、調理後のパスタの食感も必ずしも満足すべきものではないため、従来のパスタに取って代わるに至っていない。
【0005】
また麺類を調理する際の茹でこぼしを排除する手法も提唱されている。例えば、特定のアミラーゼ活性と特定のアミロペクチン/アミロース比率を持つ穀粉を利用する方法(例えば、特許文献7参照。)、キサンタンガムと卵白粉末を特定量添加する方法(例えば、特許文献8参照。)、麺水分、α化度、比容積を規定した例(例えば、特許文献9参照。)などが代表的である。
ただしこれらの方法は、ラーメンやうどんのようにスープと共に食する麺類を想定し、茹で水をそのままスープに転用するために、茹で溶けを抑えることを目的としている。本発明のようなパスタ調理とは全く別箇の技術であり、いずれの記述でもパスタ類については言及していない。パスタ類を想定した技術としては、電子レンジを利用して調理時間の削減を図り、併せて茹でこぼしを不要にした例(例えば、特許文献10参照。)もある。しかし、この方法はマイクロ波加熱の特性上加熱時間が短く、パスタの水和が十分に行われないため、食感が犠牲となっていることは否めない。
【0006】
一方、茹で作業を省略し、喫食時に熱湯を加えるだけで可食状態に復元させる即席パスタも試みられている。この技術としては、パスタを加熱処理後、特定の温度条件で乾燥する方法(例えば、特許文献11参照。)、パスタを特定のα化度と水分含量に茹で上げ、凍結乾燥する方法(例えば、特許文献12参照。)、パスタを茹でた後、アルカリ溶液を含浸させ凍結乾燥する方法(例えば、特許文献13参照。)、地下澱粉を加えて成形、蒸煮、直後に熱気流中で表面水分を急激に気化させる方法(例えば、特許文献14参照。)、パスタを茹でた後、表面に親水性界面活性剤を存在させ乾燥する方法(例えば、特許文献15参照。)、α化したパスタをプロテアーゼand/orアミラーゼ液に浸漬し、凍結乾燥する方法(例えば、特許文献16参照。)などが提示されている。これらの試みは夫々幾分かの効果を示してはいるものの、技術の主要な価値はその即席性にあり、本来の方法で調理したパスタ類の食味には及ぶべくもない。また特殊な添加物を使用する方法は、現在の消費者嗜好に合致せず好ましくない。
【0007】
別の試みとして、半生状態まで或いは完全調理したパスタの変質を抑制しながら流通し、家庭では再加熱するだけで簡便に喫食できる技術も公知である。変質抑制の手段としては、レトルトの如き加圧加熱殺菌や冷凍流通が代表的である。レトルトによる方法としては、パスタを蒸熱処理し、調味液と共に容器に充填しレトルト処理する方法(例えば、特許文献17参照。)、パスタ生地に乾燥卵白等を配合することによりレトルト時の煮崩れや調味液の濁りを抑える方法(例えば、特許文献18参照。)、パスタを茹でた後、有機酸溶液ついで重合リン酸塩溶液に浸漬し品質改善を図る方法(例えば、特許文献19参照。)、原料にアルギン酸エステルを添加し、水分含量を特定範囲に調整して、ソースからの水分吸収を抑制する方法(例えば、特許文献20参照。)、水溶性ヘミセルロースでパスタを表面処理し、レトルト後の麺のほぐれを改善する方法(例えば、特許文献21参照。)など等がある。
調理済みの製品は微生物的に不安定な状態にあり、変質を抑制することが大前提となる。上記の各技術は、その制約の中でより一層の品質向上を狙ってはいるが、パスタの嗜好性よりも微生物的安定性が優先される結果となったことはやむを得ない。
【0008】
冷凍流通により変質の抑制を図った例として、α化したパスタの表面に食塩を付着させ凍結する方法(例えば、特許文献22参照。)、調理したパスタと、ゼラチンを添加してゲル状にした調味液とを接触させて容器に収容する方法(例えば、特許文献23参照。)、澱粉、カードランを配合した冷凍用穀粉組成物に関する方法(例えば、特許文献24参照)、パスタを短時間茹でて半生状態としてチルド流通または冷凍流通し、電子レンジで調理する方法(例えば、特許文献25参照。)、パスタを硬めに茹で上げ、直ちに水洗冷却し、特定の水分含量とする方法(例えば、特許文献26参照。)などを始めとする手法が公開されている。
これらの技術はいずれも、凍結状態で流通することを前提とするので、製品の輸送や保管が大きな制約を受け、特に冷凍保管スペースの限られた家庭では、重大な問題である。また冷凍によるコスト上昇も無視できない。
【0009】
機械装置等、システム面から調理時間の削減を図った例も提案されている。例えば、マグネトロン制御を利用して茹で上げる方法(例えば、特許文献27参照。)、電磁加熱用コイルを利用し、高圧高温条件下で茹で上げる方法(例えば、特許文献28参照。)、サーモダイナミック行程を利用した方法(例えば、特許文献29参照。)などが代表例である。これらの方法は全て専用の特殊装置を必要とし、一般家庭への導入は困難である。しかも期待できる効果は調理時間の短縮のみであり、普遍的な調理方法として受容される可能性は低いと考えられる。工場での量産に利用した場合でも、調理したパスタの流通に伴う問題が避けられないことは、前述した冷凍流通の場合と同様である。
【0010】
【特許文献1】
特開平02−200155号公報
【特許文献2】
特開2000−333630号公報
【特許文献3】
特開平08−266236号公報
【特許文献4】
特開平09−191846号公報
【特許文献5】
特開平09−28337号公報
【特許文献6】
特開昭63−167751号公報
【特許文献7】
特開平04−141058号公報
【特許文献8】
特開平03−232466号公報
【特許文献9】
特開昭60−105466号公報
【特許文献10】
特開平10−23871号公報
【特許文献11】
特開昭58−16653号公報
【特許文献12】
特開平07−274880号公報
【特許文献13】
特開平08−163962号公報
【特許文献14】
特開昭61−25455号公報
【特許文献15】
特開平02−145164号公報
【特許文献16】
特開平05−328926号公報
【特許文献17】
特開平10−271971号公報
【特許文献18】
特開平07−132060号公報
【特許文献19】
特開平10−262585号公報
【特許文献20】
特開2000−41605号公報
【特許文献21】
特開2001−314161号公報
【特許文献22】
特開平09−75023号公報
【特許文献23】
特開2001−37434号公報
【特許文献24】
特開2000−342207号公報
【特許文献25】
特開平10−295302号公報
【特許文献26】
特開2000−332938号公報
【特許文献27】
特開2002−349870号公報
【特許文献28】
特開平08−266237号公報
【特許文献29】
特開昭63−503115号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明は、家庭でも特別なパスタ原料及び特殊な機器を使わず、パスタ類を簡便に調理し、良好な食感のパスタ食品を得ることができる、パスタ類の調理方法を提供する。また通常のパスタ調理に不可避的に伴う廃水を発生せず、調理に要する熱量も削減された、環境への負荷の少ないパスタ類の調理方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、パスタ類を水和させるに必要十分な量に加水量を設定し、調理に使用する水量を従来の一般的な茹で調理より大幅に減じ、熱伝導性の容器で見掛け上の水がほぼ消失するまで加熱を維持し、パスタ類を可食状態とすることを見出し、本発明を完成させるに至った。さらにパスタ同士の付着を防止しほぐれを改善するため油脂を添加することが適当であることを見出した。
従って本発明は、パスタ類に加水し及び油脂を添加して、加熱容器において加熱、沸騰させ、次いで水が見掛け上ほぼ消失するまで沸騰状態を保持することを特徴とするパスタ類の調理方法である。本発明は、パスタ類、パスタ類を吸水させるに必要十分な量の水、及び油脂を含む材料を熱伝導性の容器に投入し、適当な手段で加熱を行い水を沸騰させ、次いで見かけ上の水分がほぼ消失し、パスタが可食状態になるまで加熱を続けることによって達成される。
本発明で使用する加熱容器は熱伝導性容器であれば特に限定されないが、一例として自動制御機能を有する炊飯器が好ましく用いられる。本発明のパスタ類の調理方法は、一般的な炊飯用加熱器に上記材料を投入し、通常の炊飯に準じて水の状態からパスタ類を加熱調理する態様を包含する。
本発明の一実施態様では、パスタ類に加水し及び油脂を添加した後、加熱するまでに12時間程度までの浸漬時間を設けてもよく、すなわち、12時間以内に加熱を開始することができる。本発明の一実施態様では、水が見掛け上ほぼ消失するまで沸騰状態を保持した後、60℃以上の温度で更に8時間程度まで、保持してもよい。
【0013】
本発明の好ましい実施態様では、調理後、適度な粘弾性と硬さを有するパスタ食品を得るために、加水前のパスタ類が水分含量7〜15%且つ見掛け密度0.25〜0.70(g/cm3)を有することが好ましい。本発明の好ましい実施態様では、パスタ類への加水量及び添加する油脂量は、パスタ類100質量部に対し200〜1500質量部の水、及び0.1〜15質量部の油脂が適当である。
本発明の調理方法ではさらに、パスタ類にさらに調味料、着色剤及び具材から選ばれる少なくとも1種を添加して加熱、沸騰させることができる。
本発明はさらに、上記パスタ類の調理方法により製造されたパスタ食品、その冷蔵品又は冷凍品に向けられている。
【0014】
茹でこぼしをせず、直接パスタ類を煮熱処理する方法は、十分な加熱時間さえかければ喫食可能な状態とすることは可能である。しかし、この方法でパスタ類本来のより良い歯ごたえや口当たりを得るために、本発明者は調理を施すパスタ類の水分と見掛け密度に注目し、これらを厳密に規定することにより、目的をより良く達成できることを見出した。この理由は未だ明らかではないが、次のように考えられる。
パスタ類を沸騰水中に入れると、パスタ類の表面から熱湯が麺線中に浸透するとともに、麺の外側から中心部に水和と澱粉のα化が進行する。適度に茹でられたパスタ類の断面は、表面から中心部に向かって水分とα化度に一定の勾配を生じ、これがコシのある歯ごたえとして認知される。茹でこぼしをしない方法では、水和とα化のバランスが崩れ、麺線中で両者の最適勾配が得られにくくなる。その結果、パスタ類の表面だけが煮え、中心部が生のまま残ったり、逆に中心部まで煮えてしまい、パスタ類独特のコシが失われる等の現象に至る。見掛け密度はパスタ類の表面積とほぼ相関すると考えられ、見掛け密度の小さいものほど表面積が大きく、水との接触面積が増え、麺の内部への伝熱とα化速度が増大する。パスタ類の水分は主に水和速度に影響すると考えられ、水分が高いものほど短時間で中心部まで水和が進みやすい。より良好にするには、見掛け密度と水分を上記の範囲内に収めることにより、水和とα化の両者が、本来の調理方法と同等の適切なバランスと勾配に保持されるものと推測される。
【0015】
【発明の実施の形態】
パスタ類は、ロングパスタ及びショートパスタに大別され、更に太さや長さ、表面の溝や模様、中心部の空洞の有無、及びこれら諸属性の組合せにより、極めて多くの種類が製造され市販されている。本発明の調理方法を適用するパスタ類は特に限定されるものではない。また、乾燥品、半乾燥品、茹で品、生品、半生品、冷凍品など、いずれでもよく、特に限定されるものではない。
本発明で用いるパスタ類は、その製造に用いる原料を問わず、一般的なデュラムセモリナやデュラム小麦粉はもとより、これ以外の小麦粉や全粒粉を用いることも可能であり、更には小麦以外の穀粉も必要に応じて使用できる。また穀粉以外の副原料を添加したパスタ類も使用でき、一般的には生卵、乾燥卵、植物蛋白、着色料、各種野菜や末、小麦フスマ、調味料等が代表的な副原料として知られる。
【0016】
代表的なパスタ類の形状と名称、その見掛け密度の実測値の一例を以下に示す。もとより同じ種類のパスタでも、太さ、肉厚、空洞の有無と大きさ、溝や襞の深さと数、その他の要因により見掛け密度も一様ではない。本発明は下記に挙げたパスタの種類に限定されない。本明細書中でいう見掛け密度は、一定容積の円筒状の容器中にパスタを密充填した際のパスタ質量を、容器の容積で除して算出して求めたものである。尚、見掛け密度の測定にはすべて水分10〜13%のパスタを使用した。
【0017】
【0018】
本発明の調理方法において、水分含量7〜15%、見掛け密度0.25〜0.70(g/cm3)の範囲のパスタ類が好ましく使用でき、特に水分含量10〜13%、見掛け密度0.35〜0.50(g/cm3)の範囲が好適である。上記の水分含量及び見掛け密度の範囲内では、火通りがよく、またα化と水和が適度に進み、調理によってとりわけ適度な粘弾性と硬さが得られる。
【0019】
パスタ類へ加える水は、パスタ類の組織中に浸透し加熱されることにより水和を生じ、パスタ類に含まれる澱粉をα化して可食化するとともに、蛋白質の変性を促進し、適度な粘弾性と硬さを持ったコシのある食感を付与する作用を有する。また、熱源の熱エネルギーをパスタ類に伝導する熱媒体の役割も果たす。従来、パスタ類の調理には茹で水として大量の水が使用されていたが、本発明ではパスタを水和させるに必要十分な量の水を用いればよい。調理するパスタの形状やサイズ、好みの硬さや歯ごたえ等により加水量の調整が可能である。
具体的には、パスタ類100質量部に対し水200〜1500質量部が適当であり、特に300〜600質量部が好適である。また水と同様の性状を持つ食品素材、例えば牛乳等も水に準じて使用でき、その場合は水量との合計が上記範囲に入るようにする。
なお、後述のように、パスタ類にさらに、野菜、その他の素材を加える場合は、素材の水分に応じて加水量を調整することが望ましい。
従来の調理方法では、水が沸騰してからパスタを投入するが、本発明の範囲内であれば常温の状態で水に投入することが可能となり、調理を一層簡便にしている。
【0020】
油脂は、パスタ類を調理する際に、麺同士の付着を防止し、ほぐれを良好に保つ効果がある。本発明で使用する油脂としては一般に食用に供されるものであれば何でもよく、サラダ油、白絞油、バター、マーガリン、ショートニング等、液状、固形を問わず使用できる。油脂の原料としては、大豆、菜種、コーン、綿実、オリーブ、米、ゴマ等、多くが知られ、またこれらに原料に水素添加等の加工を加えたものも市販されているが、好みに応じていずれも利用できる。また油脂に類似した性状の素材、例えばジアシルグリセロール等も、油脂と同様に使用できる。更には、乳化剤、消泡剤その他の添加物等を配合した油脂類も、本発明の目的に沿うものであれば使用することが可能である。調理の際に添加する油脂量は、パスタ同士の付着を防止しほぐれを改善するに必要十分な量であればよい。具体的には、パスタ100質量部に対し0.1〜15重量部が適当であり、特に5〜10質量部が望ましい。パスタ類への油脂の添加方法は、加水する前にパスタ類へ油脂を絡めてもよく、水中へパスタ投入と同時に行うのが効果的である。
【0021】
本発明では調理に際しさらに、パスタ類、水及び油脂のほかに、食塩、例えば胡椒、スープの素などの調味料、着色料、並びに、例えば野菜類、茸類、肉類、魚介類及び卵などの具材から選ばれる少なくとも1種を同時に添加してもよい。こうすることで、バラエティーに富んだパスタ食品を提供することができる。肉類や魚介類であれば、予め調理しておいたものを添加してもよい。上記食塩、調味料、着色剤及び具材の添加量は、適宜選択すればよい。
従来はパスタ類の茹で工程と副材料を合わせる工程を別々に行う必要があったが、本発明のように茹でこぼしを排することによって一工程化が可能となり、一層の作業簡略化が達成される。
【0022】
本発明の調理方法では、パスタ類に加水し及び油脂を添加した後、すぐに加熱を開始してもよく、あるいは、12時間程度までの浸漬時間を設けてもよい。適度な浸漬時間を設けることによって、良好な食感のパスタ食品を得ることができる。
【0023】
本発明による調理は、上記の原材料を熱伝導性の容器に同時に投入し、適当な手段で加熱を行い水を沸騰させ、水が見掛け上ほぼ消失するまで沸騰状態を必要時間保持することによって達成される。本発明の一実施態様では、水が見掛け上ほぼ消失するまで沸騰状態を保持した後、60℃以上の温度で更に8時間程度まで、保持してもよい。
加熱の継続時間は特に制限されないが、要するに見掛け上の水分がほぼなくなり、パスタ類が可食状態になればよい。加熱は電熱式、ガス式、電磁式等、必要十分の熱量が得られる方法であれば何でもよく、また容器上部に耐熱性の蓋を載置して調理中の容器内圧を常圧以上に保持する方法も、必要に応じ適宜使用できる。
本発明の調理方法に用いる加熱容器として、鍋のほか、マイコン等で調理状態を自動制御し米飯を最適の状態に炊き上げるための機器(炊飯器)が特に好適である。更に、炊飯器の場合は、組込みのタイマーを利用することににより、予め調理終了時刻を設定することも可能となり、調理の時間的融通性を向上できる。
本発明の調理方法で製造されたパスタ食品は、そのまま食することができる。また、さらに常法により冷蔵あるいは冷凍して保存することができ、さらには適当な包装をして流通させることもできる。
【0024】
【発明の効果】
本発明のパスタ類の調理方法によれば、湯沸かし、茹で揚げ後の湯切り、茹で水の廃棄等の手間が不要となり、調理方法が簡便である。また、本発明のパスタ類の調理方法は、特殊な機器や装置を必要とせず、家庭にある一般的な調理器具と熱源で十分である。また、茹でこぼしが不要となるため、廃水の量を削減でき、環境への負荷を低減できる。
本発明の調理方法で作られたパスタ食品は適度な粘弾性段と硬さ、歯ごたえを持ち、従来の調理法によるものと遜色ない。本発明の調理方法では、副材料を加える場合、パスタと同時投入が可能となり、一層簡便である。
さらに本発明の調理方法では、必要な量の水だけを加熱するため、熱量の無駄が少なく、エネルギー効率が高い。さらに、本発明の調理方法では加熱容器として家庭用の一般的な炊飯器を利用することによって、更に簡便な調理が可能となる。
【0025】
以下に、パスタ類の見掛け密度、パスタ類への加水量、及びパスタ類への油脂の添加量を検討した結果を示す。
<パスタ類の見掛け密度>
種々の見掛け密度を有するパスタ類を使って、パスタ類100質量部に対して水300質量部、油脂(サラダ油)10質量部を加え、自動炊飯器(家庭用)を使って炊き時間45分で調理し、得られたパスタ食品の食感を調べた。結果を以下に示す。
【表1】
××・・・やわらかすぎ
×・・・硬い
○・・・良好
◎・・・コシがあって良好
【0026】
<パスタ類への加水量>
加水量を種々に振って、自動炊飯器(家庭用)を使って調理し、得られたパスタ食品の食感を調べた。なお、パスタ100質量部に対して油脂を10質量部加え、使用したパスタは、マカロニ(商品名:オーマイ Fusili、日本製粉(株)製乾燥パスタ、水分 11.0%、見掛け密度 0.30g/cm3)である。
【表2】
××・・・硬い
×・・・やわらかすぎ
○・・・良好
◎・・・コシがあって良好
【0027】
<パスタ類への油脂の添加量>
パスタ類100質量部に対して300質量部の水を加え、そこへサラダ油を加え、自動炊飯器(家庭用)を使って調理した。得られたパスタ食品の様子、食味を調べた。なお、使用したパスタは、マカロニ(商品名:オーマイ Fusili、日本製粉(株)製乾燥パスタ、同上)である。
【表3】
××・・・めん同士が付着していた。
×・・・食味不良
○・・・付着なし
◎・・・付着なし、食味良好
【0028】
【実施例】
以下に本発明の調理方法による調理例を挙げる。
実施例1
材料
乾燥パスタ フジリ(水分11%、見掛け密度0.3) 120g
水 500cc
オリーブオイル 10g
しめじ 100g
ベーコン 70g
赤ピーマン 適量
パセリ 適量
にんにくみじん 少々
食塩 少々
鶏がらスープの素 少々
胡椒 少々
作り方:▲1▼しめじを小房に分け、ベーコンを適当な大きさに切った。
▲2▼釜にしめじ、ベーコン、にんにく、スープの素、オリーブオイル、水、乾燥パスタ、食塩、胡椒を入れ混ぜた。
▲3▼2時間浸漬し、自動炊飯器で炊いた。
▲4▼器に盛り付け、赤ピーマンとパセリのみじん切りをかけた。
【0029】
参考例1
材料
生パスタ ファルファッレ 150g
(水分30%、見掛け密度0.25)
鶏胸肉 50g
枝豆 80g
生クリーム 20g
水 300g
バター 10g
食塩 適量
胡椒 適量
作り方:(i)小口切りにした鶏胸肉、枝豆、水、バター、食塩、胡椒、生パスタを釜に入れて混ぜた。
(ii)自動炊飯器で炊いた。
(iii)生クリームを和え、器に盛った。
【0030】
参考例2
材料
茹でパスタ マカロニ 150g
(水分62.0%、見掛け密度0.15)
えび(大きいものは小さく切る) 80g
にんにくスライス 1片分
赤唐辛子(種取り輪切り) 1/2本
サラダ油 10g
水 300g
食塩 適量
胡椒 適量
パセリみじん切り 適量
作り方:(i)えび、にんにく、赤唐辛子、サラダ油、水、食塩、胡椒、茹でパスタを釜に入れ混ぜた。
(ii)自動炊飯器で炊いた。
(iii)器に盛り,パセリのみじん切りをかけた。
【0031】
実施例2
材料
乾燥マカロニ(水分12.2%、見掛け密度0.50) 120g
水 400cc
オリーブオイル 10g
しめじ 100g
ベーコン 70g
赤ピーマン 適量
パセリ 適量
にんにく(みじん) 少々
食塩 少々
鶏ガラスープの素 少々
胡椒 少々
作り方:(i)しめじを小房に分け、ベーコンを適当な大きさに切った。
(ii)鍋にしめじ、ベーコン、にんにく(みじん)、スープの素、オリーブオイル、水、マカロニ、食塩、胡椒を入れ、混ぜた。
(iii)中火のガスで沸騰させ、さらに時々攪拌しながら水が見掛け上消失するまで煮た。
(iv)器に盛りつけ、赤ピーマンとパセリをかけた。
【0032】
上記の方法で得られたパスタ食品は、適度な歯ごたえを有し、従来の調理方法によるものと比較して、外観、食感、食味等に全く遜色なく、しかも調理の手間は大幅に簡略化された。加えて茹で湯を廃棄する必要がない点でも、従来法より格段に優れていた。
Claims (6)
- パスタ類に加水し及び油脂を添加して、加熱容器において加熱、沸騰させ、次いで水が見掛け上ほぼ消失するまで沸騰状態を保持することを特徴とするパスタ類の調理方法であって、前記加水前のパスタ類が水分含量7〜15%且つ見掛け密度0.25〜0.70( g/cm 3 )である、パスタ類の調理方法。
- パスタ類100質量部に対し200〜1500質量部の水、及び0.1〜15質量部の油脂を加える、請求項1項記載のパスタの調理方法。
- パスタ類にさらに調味料、着色剤及び具材から選ばれる少なくとも1種を添加して加熱、沸騰させる請求項1又は2記載の調理方法。
- 加熱容器が自動制御機能を有する炊飯器である請求項1〜3のいずれか1項記載のパスタ類の調理方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項記載のパスタ類の調理方法により製造されたパスタ食品。
- 冷蔵品又は冷凍品である請求項5記載のパスタ食品。
Priority Applications (1)
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