JP4044700B2 - 摩擦による駆動伝達部におけるスリップ検出方法およびスリップ検出装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ベルトコンベアなどの摩擦による駆動伝達部を有する搬送設備における駆動伝達部のスリップ検出方法およびスリップ検出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、摩擦による駆動伝達部を有する搬送設備、例えばベルトコンベアーにおいては、駆動伝達部となる駆動プーリーで被搬送物を積載したベルトを周回させ、被搬送物を搬送するものであり、駆動プーリーとベルト間においてスリップが発生すると搬送精度が阻害されるとともに、スリップによる摩擦熱により、ベルトや駆動プーリーが焼損して短命化したり、火災事故が発生する原因になることから、スリップを早期に検出して駆動プーリーの摩擦係数の回復処理、負荷調整などのスリップ抑制のための早期対策を講じる努力がなされている。
【0003】
例えば、このベルトコンベアにおけるスリップ検出方法としては、
(1)駆動プーリーの回転数による周速とベルト裏面に接触させたタッチロールによりベルトの速度を検出し、その速度差によって駆動プーリーとベルト間のスリップを検出する方法。
(2)特開平5−201519号の公報に開示されているように、駆動モーターの負荷電流を検出し、この負荷電流の値が予め設定値として与えられた無負荷電流域よりも所定時間以上低下したときにスリップが発生したと判定するスリップ検出方法。
などが知られている。
【0004】
しかし、タッチロールでのベルト速度検出による前者のスリップ検出方法においては、回転数の検出装置を駆動プーリーに、タッチロールをベルト裏面に、それぞれ設置する必要があり設備コスト負担が大きい。また、これらの検出装置はベルトやプーリーに直接に設置するため、被搬送物が、これらの検出装置や配線に接触したり、設置場所の環境に影響されやすく、機能劣化や異常信号が発生して検出精度の安定確保が難しいという問題がある。
【0005】
予め設定された無負荷電流に対する負荷電流の低下による前者のスリップ検出方法においては、前者の問題は解消できるものの、末期的な連続したスリップののみしか検出できないため、高負荷時、つまり電流値が高いときに発生する定常的な微小スリップおよび散発する過渡的なスリップについては、検出が不可能で、早期の対策が施せない。そのために、スリップを早期に検出してスリップを抑制するための対策を講じる努力がなされている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記の摩擦による駆動伝達部を有するベルトコンベアにおいて、プーリーやベルトに環境の影響を受けやすい各種検出器を必要としない、簡易で安価な手段により、高精度でかつ安定的にスリップを検出できるスリップ検出方法およびスリップ検出装置を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下の(1)〜(3)の発明から構成されるものである。
(1).摩擦による駆動伝達部と被搬送物間に搬送媒体が介在する搬送設備において、駆動源である電動機での運転開始から時々刻々と変化する電流を測定し、この測定電流を予め設定したフィルター通過後、絶対値処理により直前の予め設定した平均処理時間における平均電流との電流変化量(ΔI)を算出し、この電流変化量(ΔI)と、直前の平均電流(Ia)と、搬送媒体介在による駆動損失補正係数(K)にて補正した無負荷時の平均電流(Ib)とに基づいて電流変化率(A)を下記(1)式で求め、得られた電流変化率(A)を、設定されたスリップ発生に相当する電流変化率の閾値と比較し、設定された電流変化率の閾値以上となった場合にスリップ発生と判定することを特徴とする摩擦による駆動伝達部におけるスリップ検出方法。
(2).(1)において、搬送設備がベルトコンベアであり、駆動伝達部である駆動プーリーと搬送媒体であるベルト間のスリップを検出するものであることを特徴とする搬送設備の摩擦駆動部におけるスリップ検出方法。
(3).摩擦による駆動伝達部と被搬送物間に搬送媒体が介在する搬送設備において、駆動伝達部の駆動源である電動機の電源回路に設置され電動機の運転開始からの電流を検出する電流検出器と、運転信号用リレーと運転信号用リレーからの信号により診断条件を判定する診断条件設定器と、電流検出器からの電流信号の低周波成分を除去するフィルターと、このフィルターを通過した電流を絶対値処理して直前の平均時間における平均電流とから電流変化量(ΔI)を演算し、この電流変化量(ΔI)と、直前の平均電流(Ia)と、搬送媒体介在による駆動損失補正係数(K)にて補正した無負荷時の平均電流(Ib)とに基づいて電流変化率(A)を下記(1)式で演算するスリップ演算器と、この電流変化率と設定されたスリップ発生に相当する電流変化率の閾値を比較演算するスリップ判定器と、このスリップ判定器からのスリップ発生信号に基づきスリップ発生を表示する表示器、警報器などの監視装置を備えたことを特徴とする搬送設備の摩擦駆動部におけるスリップ検出装置。
A=△I/(Ia−K*Ib) (1)
ここで、
△I:スリップに伴う電流の変化量(高周波)
Ia:直前の平均電流(低周波)
Ib:無負荷状態での平均電流(設定または測定)
K:駆動伝達部単独運転に相当する補正係数
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明は、主として、個々の駆動部に、速度制御機能を有しない搬送設備においてスリップを検出する場合に適用するものであり、この搬送設備の駆動伝達部を駆動する電動機として交流電動機を用いる場合に適用するものである。
基本的には、電動機により駆動する摩擦による駆動伝達部で被搬送物を積載した搬送媒体を支持し、この搬送媒体を介して被搬送物を搬送する搬送設備、例えば駆動プーリーにベルトを掛け回してベルトに被搬送物を積載し、駆動プーリーを駆動してベルトを移動し被搬送物を搬送するベルトコンベアにおいて、摩擦による駆動伝達部である駆動プーリーと被搬送物を積載して移動するベルト間のスリップを検出するものである。
【0009】
この場合においては、駆動源である電動機の運転開始から無負荷状態での電流値と、負荷状態に移行後の電動機の平均電流値をベルトによる駆動損失を加味し補正した値との差に対する負荷状態での急峻な電流量の比率により、駆動プーリーとベルトとの間のスリップの発生を検出するものである。
【0010】
上記でいう電動機の電流変化率について、図1〜図5を参照して説明する。 例えば、ベルトコンベアの駆動プーリーを駆動する電動機の電流値は、運転開始から運転終了までの間において、負荷状態の変化に応じて経時的に刻々と変化し、駆動プーリーとベルト間でスリップが発生した場合には、電流値が大きく低下することが知られている。
【0011】
図1は、運転開始からの経時的な電流変化例を概念的に示したものである。一般には、電動機の電流の変化は、起動変動域ー無負荷安定域ー負荷初期変動域ー負荷安定域に移行するが、無負荷安定域からの各過程でスリップが発生する場合があり、いずれの過程でスリップが発生した場合にも顕著な電流変化を生じる。この電流変化は、特に負荷状態でスリップが発生した場合において顕著であり摩耗に与える影響も大きいので、本発明では負荷状態で発生するスリップを選択的に検出・管理するものである。
【0012】
電流値の下限値でスリップ発生を判定・管理することも考えられるが、前記したように、高負荷時、つまり電流値が高いときに発生する定常的な微小スリップによる電流値は、低負荷時、つまり電流値が小さいときの負荷変動による電流変動が誤報とならないように低めに設定した下限値に達しないため、スリップ初期に早期の対策を施せない。
例えば、図2は電動機の起動から無負荷運転−負荷運転−停止までの経時的な電流値を示したものであるが、電流はスリップ発生時に大きく変化しているものの、その値は無負荷電流値以下まで下がっていない。
【0013】
本発明者等は、スリップ発生に伴い変化する顕著な電流変化が高周波であり、スリップ以外の負荷変動による電流変化が低周波であることに着眼し、低周波を除去して、スリップ発生を示す急峻な高周波を精度良く検出できることを知見し、併せて低周波を除去する前の平均電流に対する急峻な電流変化の比率でスリップ発生を判定・管理することを考えた。
【0014】
なお、電流投入および遮断に伴う高周波の電流変化は、電動機の運転信号を用い、スリップの誤検出にならないように判定する。つまり、電流投入時は運転信号が印加した後からスリップを診断し、電源遮断時の誤検出防止は、高周波を検出直後に運転信号が印加されていなかった場合は警報を出力しない判定部を設けることで対応する。
図3は、図2の電流値の変化を、高域通過フィルター通過させて低周波を除去後、電流変化値の絶対値処理を行った電流波形例を示したものであるり、図4は、図3の電流変化を電流変化率の変化で表したものである。
【0015】
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであり、基本的には、図5に示すように、運転開始から時々刻々と変化する電流をフィルターにより基準周波数以下の低周波を除去し絶対値処理して得られる急峻な電流変化量を、直前の予め設定した平均処理時間における平均電流と、無負荷状態での平均電流と駆動プーリーの単独運転時の無負荷電流に相当する補正係数とから得られる電流との差電流で除して得られる電流変化率を、設定された電流変化率の閾値と比較し、この電流変化率が電流変化率の閾値以上となった場合にスリップ発生と判定するものである。理想的には、ベルトを外して完全スリップ時の電流に相当する駆動プーリー単独運転時の電流を測定すべきであるが実現は困難である。
【0016】
ベルトの曲げ損失および多数の従動プーリーの回転摩擦損失等、摩擦による駆動伝達部より被搬送物側にある設備による無負荷時の電流増分を補正するための係数が必要である。通常のベルトコンベアでは、この補正係数は0.1〜0.5である。
【0017】
本発明でいう電流変化率Aは、以下の式に基づいて求めることができる。
A=△I/(Ia−K*Ib) (1)
ここで、
△I:スリップに伴う電流の変化量(高周波)
Ia:直前の平均電流(低周波)
Ib:無負荷状態での平均電流(設定または測定)
K:駆動プーリー単独運転に相当する補正係数
本発明では、予め設定した電流変化率の閾値ADと、(1)式で得られる電流変化率Aとを比較して、
電流変化率A>電流変化率の閾値AD (2)
となった場合にスリップ発生と判定するものである。
【0018】
この電流変化率の閾値ADは、被搬送物の負荷移動や搬送設備の構造や搬送設備を駆動する電動機の形式、容量、電流特性などによって決まる、無負荷運転時、負荷運転時の電流変化、実際にスリップが発生した場合の電流変化量の実績等に基づいて、管理対象のスリップ相当の電流変化率として設定するものである。例えば、図4では、15%を電流変化率の閾値ADとしており、測定した電流により得られた電流変化率Aが電流変化率の閾値ADを超えた場合に、スリップが発生したと判定するものである。
【0019】
平均処理時間Taとは、電流を平均処理する時間を意味するものである。この平均処理時間は1〜5秒の範囲で設定することが好ましい。1秒未満では、高周波の外乱に影響され、急峻に変化しない比較的緩やかな負荷変動に影響する平均電流が検出できなくなる。また、5秒超では、被搬送物の変動による電流変化に追従できず、スリップ判定の信頼性が低下する。
【0020】
なお、本発明では、電流検出器からの電流をフィルターで基準周波数以下の低周波を除去するが、そのためのフィルターとしては、0.1Hz以上の高域を通過するフィルターを用いる。
【0021】
スリップ発生は、予め設定した平均処理時間における直前の平均電流と、無負荷状態での平均電流に駆動プーリーの単独運転時の無負荷電流に相当する補正係数を乗じた電流との差電流に対する高域通過フィルター通過した高周波を絶対値処理した値の比率に基づき判別する。この高域通過周波数は、予め電動機の定格、搬送設備の構成、規模などに応じて設定するものである。
【0022】
本発明では、電流変化率Aを、設定した電流変化率の閾値ADと比較して、スリップ発生を検出するので、スリップの発生と必ずしも関係なく発生する比較的大きい電流変動や被搬送物による負荷変動に伴う電流変動に影響を受けることなく、スリップを定量的に判別することができ、検出精度を十分に確保することが可能である。
【0023】
【実施例】
(実施例1)
以下に本発明の実施例1を図6〜図7に示に基づいて説明する。この実施例は、ベルトコンベア1において、摩擦による駆動伝達部となる駆動プーリー2と、この駆動プーリーと従動プーリー3に掛け回された被搬送物4を積載したベルト5との間のスリップ検出する場合のものである。
【0024】
(A).[無負荷電流Ibを予め測定して運転開始前に手動設定する場合]
この実施例では、電流変化率Aを算出するために用いられる無負荷時の平均電流Ibを予め測定して運転開始前に手動設定する場合のものである。図6、図7は、この実施例で用いるスリップ検出装置の構成例を概念的に示したものである。
【0025】
このスリップ検出装置は、図6に示すように、ベルト5を駆動する駆動プーリー2を駆動する電動機6の電流回路に、電流検出器7と運転信号リレー8を設け、電流検出器7からの電流信号と、運転信号リレー8からの運転信号をスリップ検出処理装置9に入力して、電流検出器7からの電流信号を、高域通過フィルター10で処理後、絶対値処理器11で絶対値処理することにより電流変化量△Iを算出し、また、電流検出器7からの電流信号を低域通過フィルター(または平均処理器)12で、時々刻々と変化する電流を予め設定した平均処理時間Taで平均処理した平均電流Iaを算出し、スリップ演算器13でベルト介在による動力損失補正係数Kを加味して予め設定した無負荷時の電流Ibとから、(1)式によって電流変化率Aを演算し、設定された電流変化率の閾値ADと比較してその差によりスリップの発生を検出するようにしたものである。
【0026】
上記のスリップ検出処理装置9は、より具体的には、スリップ検出処理装置9全体を統括管理し、各種診断項目を設定する診断設定器14と、運転信号リレー8からの運転信号に基づきスリップ診断条件を判定する診断条件判定器16と、電流検出器7からの電流信号の低周波を除去する高域通過フィルター10と、この高域通過フィルターを通過した高周波を絶対値処理して電流変化量△Iを算出する絶対値処理器11と、電流検出器7からの時々刻々と変化する電流信号を予め設定した平均処理時間Taで平均処理した平均電流Iaを計算する低域通過フィルター(または平均処理器)12と、電流変化量△Iと、平均電流Iaと予め設定した無負荷時の電流Ibとベルト介在による動力損失補正係数Kによる(1)式 A=△I/(Ia−K*Ib) を用いて電流変化率Aを演算するスリップ演算器13と、この電流変化率Aと予め設定した電流変化率の閾値ADと比較して、(2)式 A>AD となるスリップの発生を判別するスリップ判別器15と、このスリップ判別器15からのスリップ発生信号と診断条件判定器16からの信号により電動機6の電源遮断時に誤検出するスリップ発生信号を予め設定したスリップ判定時間Twdに基づき除外する誤検出防止装置17と、スリップの発生を表示する表示器や警報器などの監視装置18から構成されている。
【0027】
このように構成されたスリップ検出装置によるスリップ診断手順例を図7に示す。
▲1▼.診断設定器14にディレィタイムTd、平均処理時間Ta、電流変化率の閾値AD、無負荷時の平均電流Ib、スリップ判定時間Twd、 A=△I/(Ia−K*Ib)、ベルト介在による動力損失補正係数K等の条件を設定し、運転信号リレー8からの運転信号により診断処理をスタートさせる
▲2▼.運転開始からディレィタイムTd経過を診断条件判定器16で判定し、電流検出器7からの電流信号を、平均処理時間Taで平均処理する低域通過フィルター12と、高域通過フィルター10の後の絶対値処理器11で処理する
▲3▼.低域通過フィルター12を通過した直前の平均処理時間Ta内の平均電流Iaと高域通過フィルター10を通過した電流を絶対値処理器11で絶対値処理して電流変化量△Iを算出し、直前の平均電流Iaと▲1▼で設定したベルト介在による動力損失補正係数Kで補正した無負荷時の平均電流Ibとから、電流変化率A=△I/(Ia−K*Ib)を算出する
▲4▼.この電流変化率Aと予め設定した電流変化率の閾値ADを比較する
▲5▼.電流変化率A>電流変化率の閾値ADで、スリップ判定時間Twd経過後でも、運転信号がONしている場合は、スリップが発生していると判定し、表示器または警報器などの監視装置にアラームを出力し、必要に応じて電動機6を停止させる。
【0028】
(B).[無負荷電流Ibを運転開始後に測定して自動設定する場合]
この実施例では、電流変化率Aを算出するために用いられる無負荷時の平均電流Ibを運転開始後に測定して自動設定する場合のものである。図8、図9は、この実施例で用いるストリップ検出装置の構成例を概念的に示したものである。
【0029】
このストリップ検出装置は、図8に示すように、ベルトコンベア1の被搬送物4の供給側に被搬送物検出器19と、この被搬送物検出器での負荷状態判定に連動した負荷信号リレー22を設けるとともに、ベルト5を駆動する駆動プーリー2を駆動する電動機6の電流回路に電流検出器7と運転信号リレー8を設け、電流検出器7からの電流信号と、運転信号リレー8からの運転信号と、負荷信号リレー22からの負荷信号をスリップ検出処理装置21に入力して、無負荷電流設定器20で、無負荷運転中の電流を予め設定した平均処理時間Taで平均処理した無負荷時の平均電流Ibを設定して、高域通過フィルター10を通過した電流を、絶対値処理器11で絶対値処理して電流変化量△Iを算出し、また、電流検出器7からの電流信号を低域通過フィルター(または平均処理器)12で、時々刻々と変化する電流を予め設定した平均処理時間Taで平均処理した平均電流Iaを算出し、スリップ演算器13でベルト介在による動力損失補正係数Kを加味して無負荷時の電流Ibとから、(1)式によって電流変化率Aを演算し、設定された電流変化率の閾値ADと比較してその差によりスリップの発生を検出するようにしたものである。
【0030】
上記のスリップ検出処理装置21は、より具体的には、スリップ検出処理装置21を統括管理し、各種診断項目を設定する診断設定器14と、運転信号リレー8からの運転信号からの運転信号に基づき、スリップ診断条件を判定する診断条件判定器16と、負荷信号リレー22からの負荷信号と運転信号リレー8からの運転信号で無負荷運転状態を検出し電流検出器7からの電流信号を予め設定した平均処理時間Taで平均処理した無負荷時の平均電流Ibを設定する無負荷電流設定器20と、電流検出器7からの電流信号の低周波を除去する高域通過フィルター10と、高域通過フィルター10を通過した高周波を絶対値処理して電流変化量△Iを算出する絶対値処理器11と、電流検出器7からの時々刻々と変化する電流信号を予め設定した平均処理時間Taで平均処理した平均電流Iaを計算する低域通過フィルター(または平均処理器)12と、電流変化量△Iと平均電流Ibと予め設定されたベルト介在による動力損失補正係数Kと平均電流Ibにより(1)式 A=△I/(Ia−K*Ib) を用いて電流変化率Aを演算するスリップ演算器13と、この電流変化率Aと予め設定した電流変化率の閾値ADと比較して(2)式 A>AD となるスリップの発生を判別するスリップ判別器15と、このスリップ判別器15からのスリップの発生信号と診断条件判定器16からの信号により電動機6の電源遮断時に誤検出するスリップ発生信号を予め設定したスリップ判定時間Twdに基づき除外する誤検出防止装置17と、スリップの発生を表示する表示器や警報器などの監視装置18から構成されている。
【0031】
このように構成されたストリップ検出装置によるストリップ診断処理手順例を図9に示す。
▲1▼.診断設定器14にディレィタイムTd、平均処理時間Ta、電流変化率の閾値Ad、スリップ判定時間wd、A=△I/(Ia−K*Ib)、ベルト介在による動力損失補正係数K等の条件を設定し、運転信号リレー8からの運転信号により診断処理をスタートさせる
▲2▼.運転開始からディレィタイムTd経過を診断条件判定器16で判定し、負荷信号リレー22からの負荷信号に基づき無負荷電流設定器20で無負荷信号により無負荷状態を検知し、この無負荷状態において電流検出器7からの電流信号を平均処理時間Taで処理し、これを無負荷時の平均電流Ibとして設定する
▲3▼.運転開始からディレィタイムTd経過により負荷状態移行を検知し、電流検出器7からの電流信号を平均処理時間Taで平均処理する低域通過フィルター12と、高域通過フィルター10の後の絶対値処理器11とで処理する▲4▼.低域通過フィルター12を通過した直前の平均処理時間Ta内の平均電流Iaと高域通過フィルター10を通過した電流を絶対値処理器11で絶対値処理して電流変化量ΔIを算出し、直前の平均電流Iaと▲1▼で設定したベルト介在による動力損失補正係数K、▲2▼で得られた無負荷時の平均電流Ibとから電流変化率A=△I/(Ia−K*Ib)を算出する
▲5▼.この電流変化率Aと予め設定した電流変化率の閾値ADを比較する
▲6▼.電流変化率A>電流変化率の閾値ADで、スリップ判定時間Twd経過後でも運転信号がONしている場合は、スリップが発生していると判定し、表示器または警報器などの監視装置18にアラームを出力し、必要に応じて電動機6を停止させる。
【0032】
上記の実施例の(A)と(B)での補正係数Kの設定については、ベルト張力を受けるプーリー数によって概ね決まるものであるが、例えば、180度捲付けのプーリーが2つと、90度捲付けのプーリーが2つの場合では、補正係数K=0.2程度を設定するとよい。
【0033】
なお、本発明におけるスリップ検出処理のための装置構成およびスリップ検出の処理手順等は、上記の実施例の内容に限定されるものではなく、適用対象の搬送設備の型式、構造、規模、被搬送物の種類、最大荷重、駆動伝達部の摩擦係数、電動機の型式、容量、スリップの管理精度の要求水準等に応じて、上記本発明の請求項を満足できる範囲内で変更のあるものである。
【0034】
【発明の効果】
本発明では、駆動伝達部の駆動源である電動機における運転開始後の時々刻々と変化する電流を測定して、スリップの発生に直接関係のある高周波電流を電流変化量として算出し、それを直前の平均電流と無負荷時の平均電流との差から得られる差電流に対する比率とする電流変化率によってスリップの発生を検出するものであり、スリップ発生に伴う電流変化を精度良く検出することができ、スリップ管理精度を安定確保することができる。
また、従来のような多数の検出器(回転検出器、ベルト速度計等)の設置の必要なしに、ストリップ検出処理を簡単にでき、設備コストを安価にできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】摩擦による駆動伝達部を有する搬送設備で、駆動伝達部と被搬送材間にスリップ発生した場合の駆動電動機で電流変化の概念説明図。
【図2】摩擦による駆動伝達部を有する搬送設備で、駆動伝達部と被搬送材間にスリップ発生した場合の駆動電動機での経時的な電流変化例を示す説明図。
【図3】図2の電流変化例において、フィルターを通過させた場合の電流変化例を示す説明図。
【図4】電流変化を電流変化率の変化で表した説明図。
【図5】本発明でスリップ発生を検出に用いるフィルター通過後の電流変化例と電流変化率の説明図。
【図6】本発明をベルトコンベアでの駆動プーリーとベルト間のスリップ検出に適用した他の実施例を示す概念説明図。
【図7】図6の実施例におけるスリップ検出処理手順例を示す説明図。
【図8】本発明をベルトコンベアでの駆動プーリーとベルト間のスリップ検出に適用した他の実施例を示す概念説明図。
【図9】図8の実施例におけるスリップ検出処理手順例を示す説明図。
【符号の説明】
1 ベルトコンベア
2 駆動プーリー
3 従動プーリー
4 被搬送物
5 ベルト
6 電動機
7 電流検出器
8 運転信号リレー
9 スリップ検出処理装置
10 高域通過フィルター
11 絶対値処理器
12 低域通過フィルター(または平均処理器)
13 スリップ演算器
14 診断設定器
15 スリップ判別器
16 診断条件判定器
17 誤差検出防止装置
18 スリップ監視装置
19 被搬送物検出器
20 無負荷電流設定器
21 スリップ検出処理装置
22 負荷信号リレー
Claims (3)
- 摩擦による駆動伝達部と被搬送物間に搬送媒体が介在する搬送設備において、駆動源である電動機での運転開始から時々刻々と変化する電流を測定し、この測定電流を予め設定したフィルター通過後、絶対値処理により直前の予め設定した平均処理時間における平均電流との電流変化量(ΔI)を算出し、この電流変化量(ΔI)と、直前の平均電流(Ia)と、搬送媒体介在による駆動損失補正係数(K)にて補正した無負荷時の平均電流(Ib)とに基づいて電流変化率(A)を下記(1)式で求め、得られた電流変化率(A)を設定されたスリップ発生に相当する電流変化率の閾値と比較し、設定された電流変化率の閾値以上となった場合にスリップ発生と判定することを特徴とする摩擦による駆動伝達部におけるスリップ検出方法。
A=△I/(Ia−K*Ib) (1)
ここで、
△I:スリップに伴う電流の変化量(高周波)
Ia:直前の平均電流(低周波)
Ib:無負荷状態での平均電流(設定または測定)
K:駆動伝達部単独運転に相当する補正係数 - 搬送設備がベルトコンベアであり、駆動伝達部である駆動プーリーと搬送媒体であるベルト間のスリップを検出するものであることを特徴とする請求項1に記載の搬送設備の摩擦駆動部におけるスリップ検出方法。
- 摩擦による駆動伝達部と被搬送物間に搬送媒体が介在する搬送設備において、駆動伝達部の駆動源である電動機の電源回路に設置され電動機の運転開始からの電流を検出する電流検出器と、運転信号用リレーと運転信号用リレーからの信号により診断条件を判定する診断条件設定器と、電流検出器からの電流信号の低周波成分を除去するフィルターと、このフィルターを通過した電流を絶対値処理して直前の平均時間における平均電流とから電流変化量(ΔI)を演算し、この電流変化量(ΔI)と、直前の平均電流(Ia)と、搬送媒体介在による駆動損失補正係数(K)にて補正した無負荷時の平均電流(Ib)とに基づいて電流変化率(A)を下記(1)式で演算するスリップ演算器と、この電流変化率と設定されたスリップ発生に相当する電流変化率の閾値を比較演算するスリップ判定器と、このスリップ判定器からのスリップ発生信号に基づきスリップ発生を表示する表示器、警報器などの監視装置を備えたことを特徴とする搬送設備の摩擦駆動部におけるスリップ検出装置。
A=△I/(Ia−K*Ib) (1)
ここで、
△I:スリップに伴う電流の変化量(高周波)
Ia:直前の平均電流(低周波)
Ib:無負荷状態での平均電流(設定または測定)
K:駆動伝達部単独運転に相当する補正係数
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