JP4039006B2 - 絞り成形加工用原紙及びそれを用いた紙製成形容器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、工業製品等を包装する包装用容器の素材として用いられる成形加工原紙に関するものである。さらに食肉、野菜、鮮魚等の生鮮食料品、あるいは、弁当、総菜、冷凍食品、菓子類、めん類などの各種加工食品等を収容する容器の素材である成形加工原紙に関する。さらに詳しくは、廃棄時の環境負荷が低く、特にプレス成形に適した特性を有する絞り成形加工用原紙に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、食品容器、あるいは各種工業製品の包装材料として、成形が容易であること、大量生産できること、安価に製造できることなどから、プラスチック製容器が大量に使用されてきた。これらのプラスチック製容器としては、例えば、発泡ポリスチレンビーズをモウルド成形または発泡ポリスチレンシートをプレス成形して得た発泡スチロール容器、またポリプロピレン容器、ポリエチレンテレフタレート容器、ポリ塩化ビニル容器等が広く用いられている。しかしながら、上記のようなプラスチック製容器は、廃棄処分時の環境に対する負荷が高いという問題があった。即ち、埋め立て処理をすると半永久的に分解されず地中に残存し、また、焼却処理をすると、燃焼カロリーが高いため焼却炉を傷めやすいこと、完全燃焼しにくく、特にポリ塩化ビニルを使用したものは、腐食性の強い塩化水素ガスを発生する恐れがあることなどの問題があった。
【0003】
そこで、近年、環境問題、リサイクル問題、省資源を考慮し、前述のプラスチック製容器に代わるものとして、リサイクルが可能で、廃棄された場合の燃焼カロリーも低く、生分解性能を有し、環境に対する負荷の低いパルプを素材とする容器が求められている。パルプ、もしくはパルプを主体とする素材による三次元形状を有する成形体としては、従来からパルプモウルド容器が存在する。パルプモウルド製容器は、以前から包装容器として広く使用されている。パルプモウルド容器の製造方法は、その目的とする容器形状に対応する凹凸形状を有する網型を作製し、その網型にパルプスラリーを吸引抄紙し、乾燥することで、パルプ原料を所望の形状に成形する方法である。従って、この方法により得られる容器形状はある程度自由度が高いものである。しかしパルプモウルドの製造には時間もかかり生産性に問題があった。さらに、パルプモウルド容器には食品用のトレー容器にはしばしば要求される十分な耐水性や耐油性を付与することは困難でありコスト増加を伴うものであった。
【0004】
パルプモウルド以外で、パルプを主体した成形品を得る方法として、板紙等のパルプを主体とした基材シートを加熱下でプレス成形する方法が知られている。この方法は、雌雄型の間に予め罫線を入れた基材シートを装填し、熱圧でプレス成形したものである。このようなプレス成形法は、1回のプレスで成形体が得られるため、生産性が非常に高い。しかし、樹脂や金属と異なり、紙パルプを主体とする基材シートは一般に延伸性、延展性、伸縮性に乏しい。従って、ある程度の深さを持つトレーを成形しようとして深いプレス成形を行うと、基材シートがその延伸に耐えられず破断する恐れがある。従って通常の板紙等を基材として使用した場合、いわゆる紙皿と呼ばれるような深さのほとんどない成形容器しか製造することできず、得られる成形体の形状が非常に限られていた。また破断が発生しなくても、罫線部分の折れ目部分に段差が生じたり容器表面を滑らかにすることは難しい。また、トレーの容器口縁部に段差が生じた場合等は、蓋をつけた場合や、またフィルム等でシールをしようとする場合に段差分の隙間ができるため、密閉性が問題となっていた。さらに、紙の折れ目を起点とする破断点がトレーの強度を下げる原因ともなっている。
【0005】
このような問題を解決するため、例えば特開平5−286023号では、紙材に波形の屈曲部を多数設けて延伸性を付与した波形紙を金型内で加熱圧搾する方法が、特開平6−134898号では、全面に亘って凹凸を形成して延伸性を付与した紙材を加湿後に加熱しながらプレス成形する方法が、特開平7−214705号では、加湿処理の施された原紙を接着剤を介して複数重ねあわせ、次いでコルゲート加工した後プレス成形する方法が開示されている。しかし、これらの方法はいずれも基材シートを予め波形状等にシワづけしておくことによって延伸性を持たせ、プレス加工適性を付与したのちプレス加工するというものである。従って、プレス加工前にシワ付け工程を必要とするばかりでなく、プレス加工後の容器全体にシワが存在し、美観を損なうばかりでなく、強度的にも十分なものではなかった。また、特開平7−315358号では、段ボールシートを金属型で加熱しながらプレス成形する方法が開示されているが、これは基材に段ボールシートを用いて、そのフルート構造によってプレス加工による歪みをある程度吸収させるものである。しかし、この方法は、基材シートに段ボールシートを使用しなくてはならず、一般的な板紙等の基材に適用できるものではない。また、プレス加工による発生したシワの凹凸を十分に吸収するものではなかった。また、特開平6−239334号では、パルプ繊維にオレフィン系樹脂を含ませ延伸性を付与したシートをプレス成形する方法が、特開平10−8393では、熱可塑性樹脂繊維とパルプ繊維と混抄して延伸性を向上させたシートを、加熱プレス成形する方法が開示されている。しかし、これらの方法は、紙を主体とする基材シートに熱可塑性樹脂を加えることによって基材シートにプレス加工適性を付与するものであって、紙基材の有するリサイクル性や、廃棄時の環境負荷の少なさなどの特性を損なうものである。
【0006】
また、上記の方法で得られる基材シートは、これらを加圧プレスして得られる成形体が歪みの大きな曲面部を有する場合、この曲面に発生する折りシワ部分の凹凸が大きく、プレス後も表面が滑らかにならず、成形性が良好とは言えなかった。
【0007】
また、内容物として、水分を多く含有するものや、または飲料、汁物、またはカップ麺の容器等の液体を入れる場合など、さらに多様な用途に使用するには、トレー形状よりもさらに高さのある側壁を有するプラスチック成形容器やカップ成形容器が使用されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、プレス成形時に、基材に亀裂、及び折りシワ部分の凹凸が発生しない良好な成形性と、高い生産性とを有するプレス成形に適した、パルプを主成分とする成形加工原紙を提供することである。本発明は、比較的深いトレー、カップのような用途に適用できる、紙製絞り成形容器(深絞り容器)を提供することを課題とする。特に、フランジの平滑性に優れた紙製絞り成形容器を提供するものである。さらに本発明は、深絞り成形され、軽量であり、容器の胴膨れや底膨れ現象を起こさない、剛性の高い紙製容器を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するため以下の構成をとる。
【0010】
即ち、本発明の第1は、
下記の(1)〜(4)の4つの条件を満足し、
坪量15〜100g/m 2 で密度0.7〜0.9g/cm 3 の高密度層、及び密度0.3〜0.6g/cm 3 の低密度層を有し、坪量が100〜500g/m 2 、全体の密度が0.4〜0.7g/cm 3 、かつ低密度層が機械パルプ、カールドファイバー、及びマーセル化パルプの少なくとも一つから選ばれるパルプを主体として構成される成形加工原紙を多層抄き合わせフォーマを用いて抄紙した絞り成形加工用原紙である。
(1)引張強度(JIS−P8113)が2.0kN/m以上。
(2)破断伸び(JIS−P8113)が1.5%以上。
(3)下記式により定義される限界圧縮応力が1〜10MPaの範囲。
限界圧縮応力=A/B
但し、AはJIS−P8126による圧縮強度、Bは圧縮強度測定時における試験片の荷重部分面積を各々示す。
(4)厚さ方向に20kgf/cm2の圧縮応力を加えたときの圧縮変形量が10%以上。
【0011】
【0012】
【0013】
本発明の第2は、本発明の第1に記載の絞り成形加工用原紙を、プレス用金型を用いて、温度100〜150℃、プレス圧10〜100kgf/cm 2 条件で絞り成形した紙製成形容器である。
【0014】
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の成形加工原紙を構成する天然パルプ繊維としては、木材繊維(化学パルプ、機械パルプ)、非木材繊維、古紙パルプなどが必要に応じて任意に使用される。木材繊維のうち化学パルプとしては、木材チップ蒸解時に苛性ソーダと硫化ナトリウムを使用するクラフトパルプや、亜硫酸と亜硫酸水素塩を使用する亜硫酸パルプなどが挙げられる。これらのパルプは未晒品でも、漂白処理を施したものでもよい。また、機械パルプとしては、丸太をグラインダーで磨砕して得られるグラウンドウッドパルプ(GP)、製材工場の廃材をリファイナーで磨砕(リファイニング)して得られるリファイナーグラウンドウッドパルプ(RGP)、木材チップを加熱、リファイニング処理して得られるサーモメカニカルパルプ(TMP)などが挙げられる。これらの機械パルプのうち、シートの嵩高さ、及び強度の点からTMPが最適である。なおTMPとしては、木材チップを化学処理した後に加圧下でリファイニングするC−TMP、さらに漂白処理を施したBC−TMP等も含むものとする。また、こうした木材繊維パルプのうち、マツ、カラマツ、スギ、モミ、ヒノキ等の針葉樹から得られる繊維長の長いパルプは紙シートの延伸性、強度を向上させるために好適に使用される。また、本発明の効果を損なわない範囲で、カバ、ブナ、カエデ、ニレ、クリ等の広葉樹から得られる繊維長の短いパルプを併用することもできる。
【0016】
また、本発明で使用できる非木材繊維としては、コウゾ、ミツマタ、ガンピ、アマ、タイマ、ケナフ、チョマ、ジュート、サンヘンプなどの靱皮繊維類や、木綿、コットンリンターなどの種毛繊維類や、マニラ麻、サイザル麻、エスパルトなどの葉繊維類や、竹、イネワラ、ムギワラ、サトウキビバガスなどの茎繊維類などが挙げられる。特にコウゾ、ミツマタ、ケナフ、マニラ麻、サイザル麻、木綿、コットンリンターなどは、繊維長も長く、本発明原紙の延伸性、強度を向上させることができるため好適に用いられる。非木材繊維の蒸解は、木材繊維と同様の方法で行うことができる。
【0017】
本発明で使用できる古紙パルプとしては、段ボール古紙、雑誌古紙などが挙げられるが、特に段ボール古紙は紙シートの延伸性、強度を向上させることができ、好適に用いられる。
【0018】
これらのパルプ繊維は単独で、あるいは2種類以上を併用して使用することができる。また、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて合成樹脂繊維を混合することができる。使用できる合成樹脂繊維としては、例えば、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維などが挙げられる。
【0019】
上記パルプ繊維から構成される成形加工原紙は引張強度(JIS−P8113)が2.0kN/m以上で、かつ破断伸び(JIS−P8113)が1.5%以上であることが好ましい。成形加工原紙の引張強度が2.0kN/mより低い、あるいは破断伸びが1.5%より低いと延伸性が低く、プレス成形時に破断してしまい不適である。上記の範囲に制御するためには、紙層を多層とし、その少なくとも一層にNBKPを用いるか、紙力増強剤を配合する方法等、公知の方法で制御できる。
【0020】
また、プレス成形体が歪みの大きい曲面部を有する場合、プレス成形時に曲面部分に折りシワを形成させて歪みを吸収させる必要がある。このとき折りシワ部分は平面方向にアコーディオンのように折り込まれて凹凸を形成し、その後、プレスによりこの凹凸が厚さ方向に圧縮される。このため、良好な成形性を得るためには限界圧縮応力が1〜10MPaの範囲に、厚さ方向の圧縮率が10%以上の範囲とする。
なお、本発明における圧縮率とは、荷重20kgf/cm2の圧縮応力を加えたときの厚さ方向の圧縮率を示す。限界圧縮応力が10MPaを越えると折りシワ部分が十分に折り込まれず、また圧縮率が10%より低いと折りシワ部分の圧縮成形が不十分となり、良好な成形性が得られなくなる。
【0021】
限界圧縮応力、厚さ方向の圧縮率が上記範囲にあるためには紙シートの密度を低くする必要があるが、そのためには剛直なパルプ繊維を用いるとよい。一般に、均一な地合の紙シートを得るのにパルプ繊維を叩解して(パルプ繊維に機械的外力を加えて繊維の細胞壁の一部をフィブリル化する)使用するが、本発明では、繊維の剛直性を保持するために叩解を軽度にとどめる必要がある。叩解の程度としては、例えば化学パルプの場合フリーネス(Tappi T−227カナダ標準型)が500mlcsf以上、機械パルプの場合180mlcsf以上、麻パルプ、ケナフパルプの場合500mlcsf以上、段ボール古紙パルプの場合500mlcsf以上のものが好ましい。パルプ繊維の叩解には、ビーター、コニカル型リファイナー、ドラム型リファイナー、ディスク型リファイナーなどが用いられる。
【0022】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、シート内に発泡剤を混入してシート密度を下げることもできる。発泡剤としては、マイクロカプセル内に低沸点溶剤を封入した熱膨張性マイクロカプセルが使用できる。このカプセルは80〜200℃の比較的低温度で短時間の加熱により、直径が約4〜5倍、体積が50〜100倍に膨張する平均粒径10〜30μmの粒子である。その構成は、イソブタン、ペンタン、石油エーテル、ヘキサン、低沸点ハロゲン化炭化水素、メチルシラン等の揮発性有機溶媒(膨張剤)を、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、アクリル酸エステル等の共重合体からなる熱可塑性樹脂で包み込んだものであり、カプセルがポリマーの軟化点以上に加熱されると膜ポリマーが軟化しはじめ、内包される膨張剤の蒸気圧が上昇して膜が広がり、カプセルが膨張する。こうした発泡剤は、パルプスラリーに添加され、紙シート抄造時の加熱乾燥により発泡、あるいは発泡剤を含有するシートを高温水に通すことにより発泡する。また、紙シート抄造時シラスバルーンといった軽量無機顔料をパルプスラリー中に添加してシート密度を下げることもできる。
【0023】
本発明の原紙を抄造するために添加する製紙用薬品としては、通常の抄紙で用いられるのと同様のサイズ剤、紙力剤、歩留まり向上剤等を必要に応じて使用することができる。例えばサイズ剤としてはアルキルケテンダイマー、スチレンアクリル樹脂、ロジン等の内添サイズ剤が使用される。また、紙力剤、歩留まり向上剤としてはポリアクリルアミド系樹脂、ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂、ポリエチレンイミン及びその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリアミン、ポリアミド、ポリアミドポリアミン及びその誘導体、カチオン性及び両性デンプン、酸化デンプン、カルボキシメチル化デンプン、植物ガム、ポリビニルアルコール等の有機系化合物、及び硫酸バンド、アルミナゾル、コロイダルシリカ、ベントナイト等の無機系化合物等を適宜組み合わせて使用することができる。また、これらは抄造工程中に紙層間にスプレーしたり、抄造中、もしくは抄造後に原紙表面に塗工する方法で添加することも可能である。
【0024】
また、本発明においては抄造時に填料を添加することができる。填料としてはタルク、カオリン、焼成カオリン、クレー、ケイソウ土、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、硫酸マグネシウム、シリカ、アルミノ珪酸塩、ベントナイト等の鉱物質填料や、ポリスチレン粒子、尿素ホルマリン樹脂粒子等の有機合成填料等を適宜選択して使用することができる。また、これらを任意に併用して使用してもよい。
【0025】
さらに、染料、pH調整剤、スライムコントロール剤、消泡剤、粘剤等の抄紙用添加助剤も用途に応じて適宜使用できる。本発明の抄紙時pHは酸性抄紙である4.5付近から中性抄紙の6〜8程度の間で必要に応じて任意に選択することが可能である。
【0026】
上記材料からなる原料、薬品のスラリーを常法により抄紙する。抄紙は通常の長網抄紙機、円網抄紙機、短網抄紙機、傾斜抄紙機、各種コンビネーション抄紙機等のいずれでも良く、特に限定されるものではない。また、乾燥は通常の多筒ドライヤー、ヤンキードライヤー、スルードライヤー等のいずれでも良く、特に限定されない。また、本発明において、上記抄紙工程から得られる成形加工原紙は、2層以上の抄き合せ紙である。
【0027】
このようにして得られる成形加工原紙の坪量は100〜500g/m2の範囲が好ましく、さらに好ましくは200〜400g/m2の範囲である。坪量が100g/m2より低いとプレス成形後に得られる成形体に十分な強度が発現せず、また500g/m2を越えると折りシワ部分の成形性が低下して好ましくない。前記した方法により、本発明の〜の要件を満たす紙が製造できるが、強度と伸びと剛性と圧縮率形成のバランスをとるためには、クラフトパルプ、または上質古紙を主体とする密度0.7〜0.9g/cm3の両がいそうの間に、機械パルプを主体とする密度0.7g/cm3未満の中層を有する、密度0.4〜0.7g/cm3の多層紙を用いることが最も好ましい。
【0028】
さらに軽量で胴膨れや底膨れしない剛性の高い深絞り容器を製造するには、密度が0.3〜0.6g/cm 3 の低密度層と、坪量15〜100g/m 2 で密度0.7〜0.9g/cm3の高密度層を含む2層以上の多層抄き紙であり、かつ、全体の密度が0.4〜0.7g/cm3の紙を使用する。
【0029】
本発明の多層抄き紙は、低密度層と高密度層を各々1層有すればよいが、さらに望ましくは表裏の外層を共に高密度層とし、低密度層である中層が挟まれた構造とすることがより嵩高で剛度の高い原紙を得る上でさらに効果的である。
【0030】
紙、板紙等のシートの剛度Sは、該シートを片持ち梁と考えたとき、S=E・I/B・W=E・T3/12・W、(E:ヤング率MPa、I:断面二次モーメントN・cm2、B:試料巾mm、W:試料重量kg、T:試料厚さmm)で示される。即ち、剛度Sはヤング率とシート厚さの3乗に比例すると考えることができる。
【0031】
さらに、板紙のような多層構造のシートの剛度は、Tappi Nov、1963、Vol.46、No.11のA.T.Lueyによると、同様に前述の式を用い、各層のヤング率と断面二次モーメントから各層の剛度値を求め、それら各層の剛度値の和でシート全体の剛度値が求められるとされる。この考え方に基づけば、紙の厚さ中心からの距離が遠い、即ち、紙厚が厚いほど剛度が得られるので、中層は嵩高にすればよい。また、剛度は厚さの3乗とヤング率の積で示されるので、ヤング率は外層ほど高い方が剛度向上に効果的である。
【0032】
このことから、中層の密度は0.3〜0.6g/cm3である。さらに好ましくは0.3〜0.5g/cm3である。中層の密度を0.3g/cm3以下にすると層間強度の低下が激しく、また、0.6g/cm3を越えると、原紙全体の密度を0.4〜0.7g/cm3とすることができない。
本発明においては、外層の密度は、0.7〜0.9g/cm3であることが必要である。0.7g/cm3未満だと外層のヤング率が低下し、本発明の剛度の向上が期待できない。また、密度0.9g/cm3を越えた場合は原紙の外層表面が緊密になりすぎることによって、抄紙段階でこれ以上の高密度層を得ることは実質的には困難であるばかりか、プレス成形適性が伴わなくなる。
【0033】
高密度層に用いるパルプの種類には特段の制約はないが、NUKP、NBKP、などのN材(針葉樹)パルプの叩解度を高くして剛度を失わないようにしたものが特に望ましい。なお、本発明を効果的なものとするためには、高密度層とした外層の坪量は15〜100g/m2である。即ち15g/m2未満では高ヤング率の層を得ることは困難であり、また抄紙すること自体も困難である。一方、前記外層が100g/m2を越えると、相対的に低密度層の坪量が減るために原紙全体の密度が上がり、0.4〜0.7g/cm3の範囲とすることが困難であるからである。
【0034】
本発明の多層抄き紙の製造は、一般的な板紙を製造するのと同様に多層抄き合わせフォーマを用いて行う。例えば、10ステーション程度の複数のワイヤーパート上に数十g/m2の乾燥坪量に対応するパルプスラリーを順次積層しウエットシートを形成する。さらに具体的に例示すると、最初に外層となる紙層を形成するワイヤーパートに40g/m2程度のパルプ層を形成、脱水したのち毛布に転移させる。次に中層も別のワイヤーパートで同様に紙層を形成し、前記の外層上に必要な層数だけ積層する工程を繰り返して中層を形成する。最後にもう一方の外層となる紙層を形成して本発明成形加工原紙を得る。
【0035】
本発明において、低密度層として用いるパルプは、JIS−P8121のカナダ標準形に準じたフリーネスが再離解状態で200〜650mlの範囲となるものを用いることが好適である。フリーネスが200ml未満の場合、パルプ繊維の水切れが悪いため、搾水されたシートが緻密な構造になりやすく、低密度な紙層構造を得にくくなる。反対にフリーネスが650mlを越えると、シートが低密度になりすぎて抄紙時にプレス工程で層間剥離を発生してバルーン状の膨れが発生しやすくなる。なお、再離解状態で200〜650mlのフリーネスを示す紙料は、用いられたパルプ原料の如何に関わらず、カナダ標準型フリーネスで250〜700mlとすることができる。また、使用されたパルプのフリーネスを原紙を再離解して測定することは、良好な操業性を示した製品から必要なパルプ特性を単時間で把握するのに有効である。
【0036】
また、低密度層に用いるパルプ原料は、低密度な紙層を得やすいパルプ原料を主体とする。具体的にはこのようなパルプとしては機械パルプが挙げられる。機械パルプは通常は木材、とりわけN材を機械力で破砕した後離解して製造したパルプであり、GP、TMP、RGP等があるが、TMP、RGPがより好ましい。その中でもラジアータパインやサザンパイン、ダグラスファー等を原料とするものが、繊維が剛直で変形しにくいという特徴を有するため、低密度な紙層を得ることができ、またプレス成形時の密度低下も少ないので特に好ましい。しかし、ケナフや葦、竹、サトウキビの砂糖絞り粕であるバガスなど各種非木材原料を使用することも可能である。なお、機械破砕する際に化学薬品を添加して得たパルプや、漂白工程を経たパルプ等、一部化学処理したパルプも機械パルプとして扱うものとする。さらに、マーセル化パルプやカールドファイバー等、化学処理によってパルプを低密度化特性を付与したものも好適に使用できる。本発明においては、低密度層を構成するためには前述のパルプを主体として使用するが、その他、通常用いられる木材を原料とした化学パルプ、または、ケナフ、葦、竹、バガス等の各種非木材を原料とした化学パルプ等を適宜配合して使用することも可能である。
いずれにせよ本発明においては、低密度層の密度が0.3〜0.6g/cm3となるように各種のパルプを選択し、必要に応じて複数の種類を配合して使用するものとする。
なお、本発明においては、機械パルプ、マーセル化パルプ、カールドファイバーの少なくともいずれかが成形加工原紙の全パルプ中の50%以上含まれることがさらに望ましい。
【0037】
<その他の説明>
本発明における成形加工原紙には、必要に応じてその片面、あるいは両面に顔料と接着剤からなる塗工層を設けることができる。このような塗工層を設けることにより、成形加工原紙表面に良好な印刷適性を付与することができる。さらに、染料インキ、顔料インキ等の任意のインキを用い、通常用いられる印刷機を使用して印刷層を設けることも可能である。前記塗工層に用いられる顔料としては、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、酸化チタン、プラスチックピグメント等既知のものが任意に使用できる。前記塗工層に用いられる接着剤としては、澱粉、カゼイン、SBRラテックス、ポリビニルアルコールなど既知のものが任意に使用できる。これらの塗工層は単層、あるいは多層に形成することができる。またその塗工量は全体で20〜30g/m2程度が望ましい。また、このような塗工層を設ける場合は、塗工層直下の層は、叩解度を高め、表面をより平滑にしておくことがさらに好ましい。このような塗工層は、公知である各種の塗工装置を適宜用いて塗工することができる。また、このような塗工層の上にさらに印刷層を設けることが可能である。
【0038】
本発明の成形加工原紙には、必要に応じてその片面あるいは両面に、液体の浸み込みや液漏れを防止するために、耐水性被膜を設けることができる。この耐水性被膜は、原紙上に直接、もしくは前記顔料塗工層上、あるいは印刷層上、任意の箇所に設けることができる。耐水性被膜を設ける方法としては、耐水性塗料の塗工、合成樹脂のラミネート等が存在し、状況に応じて任意に選択できる。原紙表面に塗工して耐水性をもたせる塗料としては、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス等のワックス類のエマルジョン、SBRラテックス、ポリ塩化ビニリデンラテックス等のラテックス類、アクリルエマルジョン類、自己乳化型ポリオレフィン類、ポリエチレン系共重合樹脂エマルジョン等の各種合成樹脂エマルジョンが存在する。これら耐水性塗料の塗工設備としては、通常用いられるバーコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、ブレードコーター、ゲートロール、サイズプレス等のいずれでも良く、特に限定されるものではない。また、これらの塗工量は全体で1.0〜20.0g/m2程度が好適であり、これら塗工層を単層、もしくは多層に形成することができる。また、原紙表面にラミネートされる合成樹脂層としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂や、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の飽和ポリエステル系樹脂、ナイロン等のポリアミド樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリスチレン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂等が挙げられ、これらの合成樹脂を単体、または2種類以上混合あるいは積層したもので被覆して耐水性被膜を形成する。合成樹脂層を積層させる方法としては、通常用いられるウエットラミネーション、ホットメルトラミネーション、押出ラミネーション、ドライラミネーション、サーマルラミネーション等のいずれでも良く、特に限定されるものではない。
【0039】
より高いプレス圧力で絞り成形を行った場合、容器表面となる成形加工原紙の折りしわの発生する罫線部分に色ムラが発生し、美粧性を著しく阻害し、商品価値を損なうこともある。その問題を解決するため、合成樹脂層中に顔料を混合することが有効である。
【0040】
合成樹脂中の顔料の配合量は、3〜40重量%の範囲が好適である。3重量%未満であると、容器表面の色むらの隠蔽効果が十分得られない恐れがある。一方、40重量%以上配合すると、合成樹脂の物理的、化学的安定性が低下し、安定した合成樹脂層を基材紙上に形成することが困難となる。例えば、Tダイでの溶融フィルムのネックインの発生や、合成樹脂層の延展性の欠如による欠落などが発生する。なお、合成樹脂がポリオレフィン系樹脂、顔料が酸化チタンを使用した場合には、酸化チタンの配合量が5〜10重量%、坪量15〜60g/m2が好ましい。
【0041】
前記した耐水性塗料、あるいは合成樹脂は、生分解性熱可塑性樹脂でもよい。生分解性の熱可塑性樹脂としては、紙と同等もしくはそれ以上の生分解性を有する樹脂であれば、特にその種類に限定はない。即ち、3−ヒドロキシブチレート・3ヒドロキシバリレート共重合体、3−ヒドロキシブチレート重合体、ポリカプロラクトンなどの脂肪族ポリエステル、ポリ乳酸などのポリグリコリド、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールとデンプンの複合体、セルロースアセテートなどのセルロース誘導体など、合成あるいは天然の樹脂を単独あるいは混合して用いることができる。これらの生分解性の熱可塑性樹脂の中で本発明に特に好適な樹脂は、脂肪族ポリエステルである。生分解性の脂肪族ポリエステルは、原紙に積層する際の加工性に優れ、製品の耐水性においても優れている。これらの熱可塑性樹脂の加工性や物性を向上させる目的で、樹脂に生分解性あるいは、生分解性を有さない樹脂や添加剤を添加することも差し支えない。生分解性を有さない樹脂や添加剤を添加する場合は、その添加量が元の樹脂の重量を越えない範囲で添加することが望ましく、これを越えるとトレー全体の生分解性に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0042】
次に該成形加工原紙のプレス成形について述べる。
<成形方法について>
(1)原紙水分調整
本発明の紙製成形容器の製造方法としては、成形加工原紙を容器ブランクシートに打ち抜き、必要箇所に罫線を入れ、雄型と雌型よりなるプレス型に該ブランクシートを挟み、加熱、加圧して成形する、いわゆる絞り成形という製造方法をとる。
このとき、成形加工原紙は、予め調湿し、原紙水分を調節することが好ましい。原紙水分は10〜20%の範囲が好ましく、好ましくは11〜17%、さらに好ましくは12〜15%、最も好適には12.5〜14.5%である。なおここでいう原紙水分とは、加工原紙中の全パルプ分の絶乾重量に対する、水分の重量%をいう。原紙水分をこの好適範囲とすると、成形加工原紙の可塑化が起こって成形性が向上し、また、成形時の紙層の破壊を低減することができる。この結果、より深さがあり、外観が滑らかで美しく、しかも高い剛性を有した絞り成形容器を得ることができる。原紙水分が10%未満であると成形体に十分な剛性が得られず、また20%を越えると、成形加工原紙にブリスターが発生して原紙の紙層が剥離する、水分量が多くなるため乾燥に時間がかかり生産性が落ちる等の問題が発生する恐れがあり、好ましくない。
なお、原紙水分の調整方法として、プレス成形直前に原紙に水分を供与する方法や、紙の抄造時において、ドライヤーを出た後に加湿し、水分が維持される状態で輸送・保存する方法などが挙げられる。
【0043】
(2)成形方法
次に、ブランクシートから成形容器を製造する工程について説明する。本発明で絞り成形は一対のプレス用金型により行う。一対の加熱プレス用金型とは、凸状で成形品の内容積部に対応する形状の凸型と、凹状で成形品の外形に対応する形状の凹型である。前記一対のプレス用金型は前後または上下方向に少なくとも片方の型が動くことにより成形品をプレスすることができる。以下説明の便宜上、凸状の型を上型とし、凹状の型を下型とし、上型が下方に移動することによりプレスする方式(図1)で説明する。
【0044】
ブランクシートを加熱する方法としては、高周波加熱、熱風加熱、赤外線加熱などの方法でもよい。また、金型全体を加熱しておいてもよい。この場合、金型を加熱する手段を必要とする。金型加熱手段としては該プレス用金型に電熱加熱装置を設け加熱することが一般的であるが、プレス用金型に高周波発振機を接続して、高周波を印加して乾燥する手段もある。また、電熱加熱と高周波加熱を併用することもできる。
【0045】
また、成形時の加熱温度は加工原紙が100℃〜150℃となるような範囲が好ましく、さらに好ましくは110〜140℃である。100℃未満であると、成形に時間がかかり生産性が落ちる。また150℃を越えると、特に原紙水分が高い場合、ブリスターが発生しやすくなるため好ましくない。成形加工原紙は、前記した加熱されたプレス機械にセットした際に前記所定の温度にすることができる。また、別の手段として、水分を含有する加工原紙にマイクロ波などの電磁波をあてて昇温させてから、プレス機械に導入する方法も可能である。
【0046】
絞り成形を完了した容器は、金型から取り出し、空冷してもよいが、寸法安定性を高めるためには、高温の容器を冷却用の金型に一定時間だけ固定冷却することも好ましい。
【0047】
前記加熱プレス用金型の材質としては、アルミニウム、アルミニウム系合金、黄銅、鉄、ステンレス鋼、セラミックなど公知のものが使用できる。
【0048】
金型を動作させる方法としては、油圧プレス、エアーシリンダー、カム機構のいずれの方法も可能である。本発明で上型と下型のクリアランスを制御する具体的な方式としては、油圧あるいはエアー圧による場合、成形品厚さに応じて、コンピューター制御により圧力を制御してもよいし、ストッパーの位置を制御してもよい。カム機構による場合、予め設計されたカム形状と型の下降速度により制御することが可能である。
【0049】
プレス成形時のプレス圧力については、10〜100kgf/cm2の範囲が好ましい。プレス圧力が10kgf/cm2より低いと罫線部分の圧縮変形が不十分となり、100kgf/cm2を越えると折りシワ部分の紙層が破壊されるため好ましくない。
【0050】
プレス成形時のプレス時間については、成形性、作業性の点から2〜30秒の範囲が好ましい。
【0051】
<高温・高湿下での原紙特性>
絞り成形時のような、高温・高湿条件下において、成形加工原紙の破断強度(引張強度)は弱くなり、小さな力で破断するようになる。さらに、高湿条件においては、温度が高い程破断伸びも小さくなり、即ち、破断しやすくなる傾向がある。そのため、高温・高湿下における原紙の引張特性が、絞り成形適性において重要な要件となるが、実際の成形時における紙の温度、水分を測定することは困難である。また、高温・高湿下における紙の引張特性を測定することは容易でない。
【0052】
しかし、本発明者らは研究の結果、温度23℃、紙中水分量14重量%の条件下において、下記の(5)及び(6)の条件を満たす成形加工原紙は、高温・高湿下での絞り成形に適していることを見出した。
(5)縦方向の破断伸び(JIS−P8113)が2%、さらに好ましくは3%以上。
(6)縦方向の引張弾性率が1000〜2000MPa、さらに好ましくは1200〜1800MPaの範囲。なお、上記の紙中水分量とは、伸びや弾性率測定時点において、紙中の水分重量を紙の全重量(パルプ+添加剤+水分)で除した値を指す。紙層の上に合成樹脂層を形成する場合、上記測定は合成樹脂層が存在しない状態の測定である。
【0053】
上記の温度23℃、紙中水分量14重量%での縦方向の破断伸びが2.0%未満の場合、プレス成形加工時、延伸性が低いため破断してしまうという問題が発生する可能性がある。
【0054】
また、温度23℃、紙中水分量14重量%での引張弾性率を2500MPa以下の範囲にすると、成形加工原紙のパルプ繊維の流動性が高まり、成形時の折りシワ部分の紙層破壊を低減することができ、この結果、強度の高い成形体を得ることができる。前記引張弾性率が1000MPa未満の場合、成形容器の剛性が不足するという問題が発生する恐れがある。前記した第1発明の構成を使用すれば、上記(5)及び(6)の性質を有する成形加工原紙を容易に得ることができる。
【0055】
<容器の形状について>
本発明が対象とする容器は、1枚の紙を一対の凸型と凹型のプレス金型で絞り成形して得られる容器であり、容器上部は開口しており、上部端縁はフランジを有する形態が代表的なものである。またフランジをカーリング成形したものでもよい。
【0056】
なお、本発明の成形加工原紙を使用した絞り成形容器は、前述のように、従来存在する原紙等を使用したものと比較して表面が滑らかで外観が美しい製品を得ることができるが、特にフランジ部分の平滑性に優れている。即ち、従来の原紙を用いた製品において、0.20mm〜0.50mmであったフランジ部分の凹凸の段差を、本発明においては0.03mm〜0.10mmの範囲にまで減少させることが可能となる。従って、フランジを有するトレー状紙製成形容器の開口部に紙やフィルム等のシート状基材を用いて蓋をする場合、フランジ部の平滑性が高いことによって、シール性が極めて良好となり、密封性の高い容器を得ることが可能となる。
【0057】
容器の平面図の外形としては、正方形、長方形、円形、楕円形などである。各形の場合、角の部分は通常は丸みを帯びている。図2、図3に、本発明の絞り成形容器の一例を、見取り図として記載する。
【0058】
<容器高さについて>
本発明は、比較的深い紙製絞り成形容器を製造可能な成形加工原紙、及び製造された紙製成形容器に関するものであるが、その深さ(容器高さ)は容器底面積との関係で考慮されるべきものであって、本発明の絞り成形された紙製成形容器容器の底面積をS1、高さをHとした場合、下記(1)式を満たすような深絞り容器を作製することが可能である。
(1)式:0.2≦H/(S1)1/2
【0059】
また、容器が概略平面状の底部を有さないとき(例えば図4の形状)には、高さHと上部開口面積S2との関係において、下記(2)式を満たす深絞り容器を作製することが可能である。
(2)式:0.15≦H/(S2)1/2
本発明の成形加工原紙を用いれば、上記(1)式、あるいは(2)式を満足する深絞り容器が容易に得られる。
【0060】
なお、本発明の成形加工原紙を紙製成形容器としての形状に成形するには、絞り成形によらず、原紙を罫線で底面と側面とに区画し、該側面部を折り立てて、さらに側面部のコーナーを折り込むか、重ね合わせて糊付けする等して成形する方法もある(図8参照)。
本発明成形加工原紙は嵩高であるため、罫線を深く入れても紙の破れが生じず、また、罫線を深く入れることにより、折り曲げて接合した部分に隙間ができにくくなり、結果的に内容物の漏れを防止できる。また、本発明の成形加工原紙は、各種一般の紙器の素材や、使い捨て紙製鍋の素材等としても利用できる。
【0061】
本発明による成形加工原紙は天然パルプを主成分とし、従来の成形加工原紙に比べて良好な成形性を有する。
【実施例】
【0062】
以下に実施例により本発明をさらに詳しく説明する。なお、本発明は以下実施例に限定されるものではない。なお、特に断らない限り、重量部は固形分重量で示した。
【0063】
<実施例1−1>
ディスクリファイナーを用い、市販NBKPを550mlcsf(TappiT−227カナダ標準型)に、ラジアータパインTMPを300mlcsfに、市販NUKPを550mlcsfに叩解した。これらを紙料とし、多層抄き合せ抄紙機を用いて第1層NBKP40g/m2、第2層TMP250g/m2、第3層NUKP40g/m2の3層構成からなる板紙を抄造し、成形加工原紙とした。この原紙を後述の測定方法により、引張強度、破断伸び、限界圧縮応力、厚さ方向の圧縮変形量を測定した。また、トレー形状に成形して成形性を評価した。
【0064】
<参考例1−2>
ディスクリファイナーで500mlcsfに叩解した市販LBKP80部、同じく500mlcsfに叩解した市販NBKP20部、発泡性マイクロカプセル粒子(商品名:マツモトマイクロスフェアF−30D、松本油脂製薬製)10部からなる紙料を調製した。この紙料から実験用手抄きマシンで坪量150g/m2の紙を抄紙し、回転式ドライヤーで110℃で乾燥した。この手抄き紙を成形加工原紙として実施例1−1と同様に評価した。
【0065】
<参考例1−3>
市販NBKPをディスクリファイナーで600mlcsfに叩解した紙料から、実験用手抄きマシンで坪量260g/m2の紙を抄紙し、回転式ドライヤーで110℃で乾燥した。この手抄き紙を成形加工原紙として実施例1−1と同様に評価した。
【0066】
<参考例1−4>
ラジアータパインTMPをディスクリファイナーで300mlcsfに叩解した紙料から、実験用手抄きマシンで坪量280g/m2の紙を抄紙し、回転式ドライヤーで110℃で乾燥した。この手抄き紙を成形加工原紙として実施例1−1と同様に評価した。
【0067】
<比較例1−1>
カールドファイバー(ウェアハウザー製)50重量部とラジアータパインTMP50重量部とを未叩解で離解、混合した紙料から、抄紙機を用いて坪量290g/m2の紙を抄紙した。この紙を成形加工原紙として実施例1−1と同様に評価した。
【0068】
<比較例1−2>
成形加工原紙を生産用濾紙(商品名:標準用濾紙No.2、アドバンテック東洋製、坪量125g/m2)とし、実施例1−1と同様に評価した。
【0069】
<比較例1−3>
成形加工原紙をKライナー(商品名:NRK280、王子製紙製、坪量280g/m2)とし、実施例1−1と同様に評価した。
【0070】
<比較例1−4>
成形加工原紙をカップ原紙(新富士製紙製、坪量290g/m2)とし、実施例1−1と同様に評価した。
【0071】
[評価方法]
(1)引張強度
流れ方向、幅方向それぞれに幅15mm、長さ250mmに裁断した試験片を23℃、50%RHの条件で24時間以上調湿した後、ストログラフM2型試験機(東洋精機製作所製)を用いて、JIS−P8113に従って引張速度20mm/minで測定した。
【0072】
(2)破断伸び
流れ方向、幅方向それぞれに幅15mm、長さ250mmに裁断した試験片を23℃、50%RHの条件で24時間以上調湿した後、ストログラフM2型試験機(東洋精機製作所製)を用いて、JIS−P8113に従って引張速度20mm/minで測定した。
【0073】
(3)限界圧縮応力
流れ方向、幅方向それぞれに幅12.7mm、長さ152.4mmに裁断した試験片を23℃、50%RHの条件で24時間以上調湿した後、デジタル式リングクラッシュテスターX−1104(オリエンテック製)を用いて、JIS−P−8126に従って圧縮強度Aを測定、さらに圧縮強度測定時における試験片の荷重部分面積Bを求め、下記式から算出した。
限界圧縮応力=A/B
ここで
限界圧縮応力単位:MPa
圧縮強度単位 :N
試験片の荷重部分の面積=試験片の厚さ(mm)×152.4mm
(試験片の厚さは23℃、50%RHの条件で24時間以上調湿したサンプルをJIS−P8118に従って測定した値)
【0074】
(4)圧縮変形量
50mm×50mmの試験片を23℃、50%RHの条件で24時間以上調湿した後、ストログラフM2型試験機(東洋精機製作所製)を用いて、圧縮速度1.0mm/minで試験片1枚を厚さ方向に圧縮して応力−歪み曲線を描き、圧縮応力20kgf/cm2における圧縮量(歪み量)を測定した。
【0075】
(5)成形性
成形加工原紙に図5に示したような24本の罫線を設けた成形用ブランクシートを得た。このブランクシートを成形用金型とプレス成形機を用いて、プレス圧力35kgf/cm2、プレス温度150℃、プレス時間5秒で図6のようなトレー形状(長径約20cm、短径約14cm、高さ約4cm)に成形した。このときの成形性を次のように3段階に評価した。
○:トレー形状に成形でき、かつ成形体の表面が滑らかである。
△:トレー形状に成形可能であるが、成形体の表面、特に折りシワ部分に大きな凹凸がある。
×:成形の際にブランクが破断してトレー形状に成形不可能。
【0076】
評価結果を表1、及び表2に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
表1、及び表2より、本発明による成形加工原紙は、成形時に亀裂及び折りシワ部分の凹凸が発生せず、成形性に優れていることがわかる。
【0080】
【発明の効果】
本発明により、プレス成形時に、基材に亀裂、及び折りシワ部分の凹凸が発生しない良好な成形性と、高い生産性とを有するプレス成形に適した、パルプを主成分とする成形加工原紙を提供することが可能となる。さらに本発明により、比較的深いトレー、カップのような用途に適用できる、紙製絞り成形容器(深絞り容器)を提供することが可能となる。特に、フランジの平滑性に優れた紙製絞り成型容器を提供することが可能となる。加えて本発明により、深絞り成形され、軽量であり、容器の胴膨れや底膨れ現象を起こさない、剛性の高い紙製容器を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】プレスによる絞り成型方法の模式図
【図2】本発明実施例の斜視図
【図3】本発明実施例の斜視図
【図4】本発明実施例の斜視図
【図5】絞り紙製成形容器のブランクシート平面図
【図6】絞り紙製成形容器の斜視図
【図7】箱成形容器のブランクシート平面図
【図8】箱成形容器の斜視図
【図9】本発明実施例の斜視図
【符号の説明】
1.雄型
2.雌型
3.成形加工原紙
4.罫線
Claims (2)
- 下記の(1)〜(4)の4つの条件を満足し、
坪量15〜100g/m 2 で密度0.7〜0.9g/cm 3 の高密度層、及び密度0.3〜0.6g/cm 3 の低密度層を有し、坪量が100〜500g/m 2 、全体の密度が0.4〜0.7g/cm 3 、かつ低密度層が機械パルプ、カールドファイバー、及びマーセル化パルプの少なくとも一つから選ばれるパルプを主体として構成される成形加工原紙を多層抄き合わせフォーマを用いて抄紙したことを特徴とする絞り成形加工用原紙。
(1)引張強度(JIS−P8113)が2.0kN/m以上。
(2)破断伸び(JIS−P8113)が1.5%以上。
(3)下記式により定義される限界圧縮応力が1〜10MPaの範囲。
限界圧縮応力=A/B
但し、AはJIS−P8126による圧縮強度、Bは圧縮強度測定時における試験片の荷重部分面積を各々示す。
(4)厚さ方向に20kgf/cm2の圧縮応力を加えたときの圧縮変形量が10%以上。 - 請求項1に記載の絞り成形加工用原紙を、プレス用金型を用いて、温度100〜150℃、プレス圧10〜100kgf/cm 2 条件で絞り成形したことを特徴とする紙製成形容器。
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