JP4036392B2 - 選択性の向上した電気泳動ゲル - Google Patents

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Description

発明の背景
ゲル電気泳動においては、帯電種の混合物は、電場をかけられた状態でのこれらの異なる可動性によりその成分に分別される。可動性は、主に、使用するゲルおよび、正味の表面電荷、寸法および形状を含むイオンそのものの特性に依存する。現在、ゲル電気泳動は、タンパク、核酸およびそれらの誘導体のような生物学的マクロ分子の分別に最も用いられている。ゲルは、天然または合成ポリマーからできている。作られる材料に関係なく、ゲルは、適当な電気泳動チャンバー内を垂直または水平に流すことができる、またはキャピラリー方式で用いることができる。各特定の方式は有利な点および不利な点を有するが、分別が成功する主な決定因子はゲルそのものである。
最近、多くの新しいゲル材料が化学文献に記載または特許に開示されている。これらは、新規モノマーまたはモノマーと架橋剤との組み合わせからなるポリマー、または変性された天然ポリマーを含む。新規材料からなるこれらの新規ゲルの一部は、実質的に異なる特性を示し、それにより電気泳動的分別の重要な向上に至る。
タンパクと核酸の分析のために、新規合成マトリクスが導入された(米国特許第5,319,046号)。このマトリクスは、アクリル系モノマーのN−アクリロイルトソス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(NAT)を基本材料とする。ポリ(NAT)ゲルは、以前に用いられてきたポリアクリルアミドゲルよりも親水性がより高く、大きな分子の分解能が優れている。新規モノマーおよびゲルから製造される一連のより親水性の高いポリマーも開示された(米国特許第5,185,466号および第5,202,007号)。これらのゲルは、DNA制限断片およびタンパクの分別に特に適していた。もう一つのゲルタイプが米国特許第5,371,208号に開示された。これらのゲルは、ポリマーのヒドロキシル基と反応してエーテル架橋を形成する架橋剤と架橋した線状ポリマーからなっていた。
電気泳動のためのゲルは、フリーラジカル重合、熱誘導ゲル化、およびゲル化と同時に起こる架橋反応により調製することができる。現在では、これらの各プロセスは、電気泳動のための予備注型ゲルの製造に用いられている。多くの出発材料が存在すると、これらの材料の異なる組み合わせを用いることにより非常に様々なゲルを製造することができる。形成されたゲルまたはゲル化溶液に添加剤を添加することからなる、電気泳動で用いるのに適したゲルの特性が変化するさらなる可能性がある。添加剤は、添加剤が添加されるゲルの特定の特性を向上させるように選択される。例えば、低濃度(3〜5%)のポリアクリルアミドゲルの機械的特性は低いことが知られている。機械的安定性は、そのようなゲルがアガロースの存在下に重合されるときに向上され得る。何故なら、アガロースゲルは低濃度において優れた機械的安定性を有するからである。そのような複合ゲルが引用1に記載されている。ポリアクリルアミドゲルの弾性は、別の予備形成されたポリマーを重合溶液に添加することにより向上させることができ、そのようなゲルはデュラクリル(Duracryl)(Oxford Glycosystems製)の商品名で市場で知られている。添加剤ポリマーの正確な性質が開示された。ポリアクリルアミドゲルと共に用いられていた他の添加剤は、低分子量ポリオールを含む(米国特許第5,159,049号)。
添加剤は、同様にアガロースゲルと組み合わされた用いられていた。アガロースゲルは、ポリアクリルアミドゲルと比べて劣る光学的特性を有している。この欠点は、ゲル化の前にアガロース溶液に別の多糖類を添加することにより部分的に修正することができる(米国特許第5,230,832号)。さらに、液体ポリアクリルアミドを含むアガロースゲルも知られており、これらのゲルにおいて、アガロースは機械的安定性を提供し、一方、ポリアクリルアミドはふるい媒体として作用した(引用2および3)。もう一つの例は、酢酸セルロースゲルのような予備形成ゲルにポリエチレングリコール(PEG)を添加することを含む。この組み合わせにおいて、酢酸セルロースは安定化媒体として作用し、一方、PEGはふるい媒体であった(引用4)。架橋線状多糖類ゲル中に組み込まれた分岐多糖類(米国特許第5,371,208号)を添加剤として考えることができる。
米国特許第5,319,046号において、ポリ(NAT)ゲルがさらにポリアクリルアミドまたはアガロースを含んでよいことが開示された。後者は、添加剤としてみなすことができるが、前者はみなすことはできない。ゲル重合中に二つのアクリル系モノマーが存在していると、それらは共重合して、二つのモノマーの各々から誘導される単位を含む一本のポリマー鎖が得られる。一方、添加剤の存在下における重合により形成されるポリマー間において関係はより複雑である。何故なら、ある場合には、新しく形成されたポリマーおよび予備形成添加剤が、フリーラジカル重合中の連鎖移動反応により共有結合されるからである。これは、添加剤がビニル基を含まない場合でも起こり得る。一方、熱誘導ゲルにおいては、予備形成ポリマー添加剤がゲルポリマーに共有結合することは予想されない。フリーラジカル重合により形成されたもの、または熱誘導ゲル化により製造されたもののいずれのタイプのゲルにおいても、ポリマー添加剤はゲル化ポリマー間に強く挿入されるので、全ての実際の適用において、それはゲルマトリクスの一部と考えられ得る。また、添加剤がゲルポリマーと緩くしか結合されない、またはゲル間空間に残り、ゲルから容易に拡散することもある。
従来技術で知られているゲル中で分析した分子の電気泳動可動性への添加剤の影響を考慮することが重要である。アガロースで安定化した少ない割合のポリアクリルアミドゲルにおいて、分別は主にゲルのアクリルアミド成分に依存する(引用1)。アガロース−液体ポリアクリルアミドゲルにおいて、ゲルを通過する分子の可動性はポリアクリルアミドの濃度の関数であるので、アガロースポリマーは非ふるい性であると考えられていた(引用2および3)。ポリマー(Duracryl)の添加により弾性の向上したポリアクリルアミドゲルにおいて、製造者によれば、電気泳動可動性は、通常はタンパクの2次元電気泳動である同じ目的で用いられる単純ポリアクリルアミドゲルにおいて見られるものに等しい。予備形成ゲル中に導入される添加剤に関しては、一部の低分子量ポリオールは分析された分子の可動性を変化させ、他のものは変化させなかった(米国特許第5,159,049号)。PEG添加酢酸セルロースゲルにおいて、SDSタンパク複合体はPEGを添加した場合にのみ分別することができた、すなわち、予め存在している酢酸セルロースマトリックスは安定化媒体としてしか作用しなかった(引用4)。
近年、PEG添加ポリアクリルアミドゲルにおいて幾つかのレポートが出された(引用5、6および国際出願WO93/11174)。重合前にアクリルアミド−N,N’−メチレン−ビス−アクリルアミド(Bis)溶液にPEGを添加すると、驚くほど異なる特性を有するゲルが得られた。第1に、ゲルの光学的特性が変化した。ゲルが強度の不透明になった。第2に、電気泳動可動性が大きく変化し、これらの新規ゲル中において、より大きなDNA分子がより速く動いた。すなわち、増加したDNA移動速度は、ゲルの光度の不透明性に一致する。結果は、ポリアクリルアミド繊維の側方凝集による大きな孔の形成に一致するようである(引用5および6)。Bisの濃度が約5%上昇するがアクリルアミドとBisとを合わせた濃度が一定に維持される場合、添加剤無しで不透明なポリアクリルアミドゲルが形成される(引用7および8)。ここで、ゲル成分の濃度は常に体積当りの重量で表される。合計ゲル濃度Tおよび架橋剤濃度Cは、従来技術において一般的であるように定義され、それにより、Tはモノマーと架橋剤との重合の合計に関係し、CはTに対する架橋剤の%を表す。高Bis濃度で形成される不透明ポリアクリルアミドゲルにおいてマクロ分子はより速い速度で移動することが知られており、そのようなゲルは、ふるい性の低いまたは無いマトリクスを必要とする電気泳動用途において有用である。最初に、それらは、多相領域電気泳動における積層ゲル用に薦められた(引用9)。何故なら、積層ゲルはできるだけ少ないふるい性を付与するからである。不透明なポリアクリルアミドBisゲルは重大な欠点を有する。それらは脆く、取り扱いが困難である。さらに、それらは、アクリルアミドよりも疎水性であるBisの割合が大きいために疎水性であり、そのためにゲルは水を排斥する(引用10)。不透明ゲルは、NATのような親水性の高いモノマー、または糖アルコール誘導モノマーを用いても、高いBis比において形成することができる。多くのモノマーと架橋剤の組み合わせが米国特許第5,319,046号および第5,185,466号に開示された。高度に不透明なゲルが、多くの組み合わせにおいて得られた。通常、不透明ゲルは、電気泳動用マトリクスとして用いる場合に不利益を有する。なぜなら、分別領域の検出が、高度のバックグラウンド不透明性故に困難だからである。従って、充分に透明なゲルが好ましいが、アガロースゲルの広い許容性により明らかであるように、実際にはある程度のゲルの不透明性は許容され得る。
近年、ゲル電気泳動の機構を記載している幾つかのモデルがある。拡張オグストン(Ogston)モデルによれば、マクロ分子の電気泳動可動性は、マクロ分子が入ることのできるゲルの孔の体積割合に比例している(引用11および12)。測定された電気泳動可動性μは、半径Rの移動分子の溶液中での自由可動性μo、およびゲル%T、ゲル繊維の合計長さl’、および繊維半径rに関係し得る。
logμ=logμo−πl’(r+R)2T (1)
または
logμ=logμo−Kr.T (2)
ここで、遅延計数Krは次のように定義される。
Kr=πl’(r+R)2 (3)
種々のタイプのマクロ分子の遅延計数は、それらを異なる割合のポリアクリルアミドゲル中を流すことにより決めた。すなわち、分子量670,000までの天然タンパクのKr値は約0.04から0.20に変化した(図2、引用11)。遅延計数がわかると、ゲル濃度の変化後に、タンパクの電気泳動可動性の相対的変化を計算することができる。例えば、ゲル濃度を10%増加させることにより、例えば、T=10%からT=11%にすることにより、Kr=0.04の最も小さいタンパクの可動性が8.8%変化する。この計算のために、実際の可動性を知る必要がない。何故なら、
μ=μo・10-Kr.T
μ=μo・10-0.04.10=μo・0.0398 (4)
であり、T=11%において、
μ=μo・10-0.04.11=μo・0.0363
であり、そのためにT=11%において可動性は以下のように低下するからである。
(0.398−0.363)・100/0.398=8.8%
rが0.2の最も大きなタンパクは、ゲル濃度が10%から11%に増加した後、36.9%低い可動性で移動する。低いT値においてゲル濃度を10%変化させると可動性の変化が小さく、高いT値において変化はより大きいことに注目すべきである。ゲル電気泳動の実際において、大きなマクロ分子の分析に低ゲル濃度が用いられる。高濃度においては、ほとんど移動できず、分析時間が許容できないほど長くなるからである。
SDSタンパク複合体の遅延計数が、ポリアクリルアミドゲルにおいて0.06から0.16に変化する(引用13)。10%から11%へのゲル濃度の10%の増加により最も小さなタンパクの可動性が12.8%減少し、最も大きなタンパクでは30.8%減少する。
r値は、ポリアクリルアミドゲル中の2本鎖DNA断片についても決められた(引用14)。約40から4000bpへの100倍の寸法範囲において、遅延計数は0.16から0.36に変化する。ゲル濃度の10%から11%への10%の変化により、最も小さなDNA断片の可動性が30.8%低下し、最も大きな断片では56.3%低下する。キロ塩基DNA断片は標準的10%または11%ポリアクリルアミドゲルにおいてほとんど変化しないことに注目すべきである。そのような断片の分析には、低い割合のゲルを用いなくてはならず、低いT値においては、可動性の相対的変化はここで10〜11%低い。異なるタイプのマクロ分子に係わる前記計算から、最も一般的に使用される範囲のゲル濃度においてゲル濃度が10%変化した後、せいぜい2倍の移動速度の変化を予想することができる。
最近、ドア−回廊(DC)モデルと呼ばれるゲル電気泳動のもう一つのモデルが提案された(引用15〜19)。このモデルによれば、電気泳動中に、マクロ分子が存在するゲル孔を通って移動しないが、その代わりに、移動するときにゲルポリマーを押しのける。ゲルは、移動分子により一時的に押し除かれ得るポリマーを含まなくてはならない。マクロ分子は不連続工程で移動し、各工程において、それらは一つのゲル層を通過する。DCモデルの本質的特徴は、マクロ分子がゲル層を通過することのできる方法が二つある、すなわちドアを通過するまたは回廊を通過するという概念がある。ドアは、ポリマー鎖が高い動作自由度を有するゲル層の領域で形成される開口である。ドアの形成は、他のゲル層のポリマーに影響を与えない。回廊は、ポリマーが低い動作自由度を有するゲル層の領域で形成される開口である。回廊を形成するためには、一またはそれ以上のポリマー端部またはポリマーがあまり架橋されないまたは絡まらない場所で開口ができるまでゲル層を移動分子が変形させなくてはならない。一つのゲル層の変形には、上側および下側の少なくとも一つの層におけるポリマーの分別が伴い、次の層上で、移動しているマクロ分子が同様の領域に遭遇すると、再び回廊を開く。二つの回廊が一緒になって幾つかのゲル層に渡る一つの長い回廊を形成することができる。大きな回廊を開くために、移動している分子は、異なるゲル層のポリマーを充分に押しのけることができなくてはならない。特定の移動マクロ分子により主にドアまたは回廊が開かれる選択は、二つの力のバランスに依存する。第1の力は電気動的なものであり、電場中を移動する全てのマクロイオンによりゲル層に付与される。この力は、ゲル層中のポリマーの抵抗により発生し、それにより、DNAの可動性と二つの力との関係は以下のようになる。
μ1=μ.e-Fr/Fe (5)
ここで、μ1は移動分子の単位寸法の可動性であり、Frはゲルポリマーの抵抗であり、Feは開口を形成するために分子が用いる電気動的力である。DCモデルにおいて、マクロ分子の可動性は分子の最も小さいセグメントの可動性μ1に比例し、二本鎖DNAの一つの塩基対に等しい。
ゲルポリマーがマクロ分子の移動に抵抗する力は、通常、高い合計ゲル濃度で増加し、それにより分子の可動性は低下する。これは、多くの経験的発見事項に従う。しかしながら、同じポリマーを同じ濃度で含む二つのゲルにおいて、これらのポリマーの配置が異なる場合、抵抗は異なり得る。例えば、DNA断片の可動性は、同じ量のポリマーを含むが、異なる温度で架橋したアガロースゲルにおいて大きく変化した(米国特許第5,371,208号)。等しいTおよびCのポリ(NAT)ゲルを含むもう一つの場合において、直鎖状ポリマー架橋剤を有するゲル中でのDNA移動速度は、直鎖状のものから調製した分岐状架橋剤を有するゲル中での速度から異なっていた(引用15)。第2のゲル中で可動性が低いのみならず、分離も失われた(引用15)。分離の損失は、移動しているDNA分子がゲル繊維を充分に押しのけられないからと解される。結果は、DNA断片の電気泳動分別が、ポリマーが充分に押しのけられて回廊を開かせ得るゲル中においてしか可能でないことを示した。分岐架橋剤を有するゲル中での充分に低下した移動速度に関する引用された発見のもう一つの局面は、実用的に重要でないようである。低下した可動性には、分別の損失が伴うからである。それにも拘わらず、結果は、ゲルポリマーの変化またはその配列の変化が、DCモデルに従うマクロ分子の電気泳動挙動に大きな影響を有し得ることを示した。
従来技術において、特定の組成を有し特定の合計濃度を有するゲルが、限定された寸法範囲においてしかマクロ分子の最適分別を提供しないことが知られている。所定のゲルにおいてどの分子が最適に分別されるかに関して異なる定義があるが(引用19)、特定の寸法範囲外において、分別が乏しいことが一般的に知られている。より小さい分子は広いバンドを与えるが、大きな分子は充分に移動して有意な流動時間内に分別されることがない。すなわち、低寸法範囲における分別能は分別により効果的に制限され、高寸法範囲においては分別により選択的に制限される。分別効率は、例えば引用20に定義されているように、移動経路と領域の幅との比に強く関係する。ゲルの端部における鋭敏なバンドに等しい、長い移動経路後に観察される狭い領域幅は、高い分別効率に特徴的である。選択性は、隣接バンド間の距離に関係し、距離が増加すると良好となり、ゲルの分別能が、効率または選択性あるいは両方を向上させることにより改良し得ることが明らかである。
DNA断片の可動性とその寸法との間の関係は種々の方法で示すことができ、そのうち最も一般的なものは、DNA断片寸法のlogに対する可動性のプロットである。DNA分子の寸法に対する可動性の逆数のプロットも頻繁に用いられる。前者のプロットにおいて、例えば引用16の図1に示されるようにS字状曲線が常に得られる。このプロットから、大きなDNA分子が全て等しい速度で移動し得ることが明らかである。一部の例においては、大きな分子が小さな分子よりも素早く移動することができ、「バンド逆転」と呼ばれる現象を引き起こす。「バンド逆転」について異なる説明が可能である(引用19)が、大きなDNA分子のこの速い移動速度はその分別の可能性を制限することが明らかである。この制限を理解し克服するために多くの努力がなされた。パルス電場を導入することにより20,000bpよりもDNA分子を分別する性能が実質的に進歩した。この改良は、例えば引用21および22に記載されているDNAゲル電気泳動の歩行モデルの理論的構成に依存している。このモデルによれば、DNA分子そのものは電場の方向に配向し、配向の程度は、DNAの寸法およびかけられた電場強度に依存する。一旦配向されると、分子はゲル中を歩行する。この可動性は、寸法に依存しなくなり、分別は失われる。通過モデルに基づく改良されたDNA分別を意図する大部分の作業は1000bpより大きなDNA断片を用いて行われたが、小さいDNA分子の分別を改良する目的でモデルを用いた報告もされている。例えば、ゲル配列においてDNA分別を向上させるためにパルス電話を用いた(引用23)。さらに、ボール状分子を一つのDNA末端に結合させることによりDNA分子が移動の歩行モデルに推定されない可能性が実際上と理論上の両方で研究された(引用24および25)。
歩行モデルによれば、ゲル繊維の主な役割はDNA分子の側方動作を防止することであり、それによりDNAの電場の方向への配向が維持される。ゲル繊維がさらに分別して配される場合、DNA配向度は低く、分別はより優れる。すなわち、歩行モデルは、低い割合の大きな孔を有するゲルが、大きなDNA分子の分別に常に良好であることを予想する。この予想に基づき、高多孔性の新規ゲルの発見に多くの努力が払われた。最も最近の研究は、アリルグリシジルエーテルを用いて誘導されたアガロースと架橋された低濃度(3〜4%)のポリアクリルアミドゲルに関するようである(引用26)。電場におけるDNA分子の配向が、大きな寸法範囲における分別の損失の主な原因である場合、ゲル濃度を増加させることによる、またはDNA可動性を低下させるゲルポリマー(有効多孔性)を変化させることによる改良は期待できない。
ゲル電気泳動のDCモデルは、より大きなDNA寸法について観察される分別の損失のもう一つの説明を提供する。このモデルは、大きなDNA分子が、幾つかのゲル層に及ぶ長い回廊を形成するので、分別が損失されることを予想する。これは、ゲルポリマーが移動分子に充分な抵抗を与えられない場合に起こる。この説明が正しい場合、ゲルポリマーのタイプおよび配置が決定的役割を果たし、ゲル抵抗を増加させる方法の発見がゲルの分別能を向上させるはずである。すなわち歩行モデルの予想は、DCモデルのものに対立する。移動速度が低下したために、前記分岐状マクロ分子架橋剤を含むポリ(NAT)ゲルにおいてゲル抵抗が増加した。しかしながら、移動速度の低下に分別の損失が伴った。これはおそらく、移動しているDNA分子がゲルポリマーを充分に押しのけることができるからである。すなわち、充分なポリマー分別が、ゲル電気泳動によるDNA分子の良好な分別のための必要条件である。
移動しているDNA分子に高い抵抗を与え、ゲル層中での長い回廊の形成を望ましく防止するゲルを開発することを目的として、さらなる研究がなされた。望ましいゲルは、大きな力を与えた後にしか、または力を長時間与えた後にしかポリマーが押しのけられないトポロジーを有すべきである。そのようなゲルをつくることができるかどうかは不明であった。何故なら、前述の初期結果は、より安定な状態でゲルポリマーを結合させることはゲル分別力の損失につながり得ることを明らかに示しているからである。アガロース以外のポリマーを用いる新規架橋剤をスクリーニングした。種々の数のビニル基を有するポリマー架橋剤を調製し、分別の損失を引き起こすことなくゲル抵抗を増加させるのに充分な数のビニル基を有する架橋剤を発見し得ることの裏付けとした。一組の実験において、アリルグリシジルエーテルと反応させることにより重合性二重結合が導入されたヒドロキシエチルセルロース(HEC)を出発ポリマーとして用いた。そのような架橋剤を含むポリ(NAT)ゲルを調製し流した。対照として、いかなる変性もしていないHECを用いてゲルを調製した。一部の対照ゲルは、重合後にかなり不透明になった。一つのそのようなゲルにおいてDNA断片を電気泳動した後、二つの予想外の発見事項が見られた。第1として、移動速度が、HECを用いない対応ゲルにおけるよりも低かった。従来技術に基づくと、透明性が増加したゲルについて高い移動速度が予想される。第2に、より大きなDNA断片の移動速度が、より小さい断片よりも比例的に低下し、分別選択性が向上した。これらの予想外の結果が一旦認識されると、観察された現象を理解し、新規ゲルが実用的であり得るかどうか調べるために、他の天然および合成のポリマーをスクリーニングすることが合理的であった。以下に開示されるように、一部のポリマーのみが、同じ効果を生じることができ、すなわち、選択性の高いゲルが提供される。さらに、架橋剤、モノマーおよびポリマーの間の特定の範囲内においてのみ、向上した選択性を達成することができた。この臨界範囲を外れると、三つの本質的ゲル成分、モノマー、架橋剤およびポリマーを最適にしても向上した選択性は得ることができなかった。
本発明の目的
本発明の目的は、選択性の向上した電気泳動ゲルを提供することである。
本発明のもう一つの目的は、1〜4塩基対異なる幾つかの二本鎖DNA断片が10cm以下の移動後に分別されるような向上した選択性を有する電気泳動ゲルを提供することにある。
本発明のもう一つの目的は、1000塩基対以下のサイズのDNA分子を改良された分解能を有する電気泳動ゲルを提供することである。
さらなる目的は、二本鎖DNA断片の配列依存可動性が本質的に除かれている電気泳動ゲルを提供することである。
本発明のもう一つの目的は、電気泳動媒体として本発明のゲルを用いる新規ゲル電気泳動法を提供することである。
さらなる目的は、選択性の向上した電気泳動ゲルの調製方法を提供することである。
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面と共に読むと以下の明細書の説明からより明らかとなる。
本発明の幾つかの局面の簡単な説明
これらの目的に従い、また目的を達成するために、本発明の一つの局面は、電気泳動分別において用いるのに適しているが、他の重要な用途も有し得る新規ゲルである。このゲルは、同じまたは異なるモノマーからなるポリマーであり得る予備形成ポリマーの存在下に溶液中でモノマーおよび架橋材を重合するポリマー反応生成物である。本発明のポリマーゲルの形成において用いられるモノマーおよび架橋剤は、電気泳動分別において用いるのに適しているゲルの形成において有用であると一般的に知られているものを含む。これは、電気泳動分別において有用であるポリマーの形成において有用であると未だ認識されていなかった他のモノマーも含む。モノマーおよび架橋剤は、個々の成分として、または適当な化合物の混合物として用いることができる。必要により、適当な従来のフリーラジカル開始剤を重合溶液混合物に添加することができる。予備形成ポリマーは、好ましくは1種の材料または材料の混合物である。これは、重合溶液の約0.005〜2%(w/v)を構成する。モノマーおよび架橋剤の混合物は、溶液の少なくとも4%(w/v)を構成すべきである。溶媒は、モノマー、ポリマーおよび架橋剤のための相互溶媒である任意の1種またはそれ以上の材料であるが、重合反応を干渉しないものである。従来のフリーラジカル重合条件が用いられる。
本発明のもう一つの重要な局面に従い、このゲルは、電気泳動分別における床として最も有用である。電気泳動は、重要な変化のみはゲル床に特異的な性質にして、従来の方法で行われる。本発明によれば、本発明の特別のゲルの使用により、DNA断片のような大きな複雑な分子の混合物の電気泳動分別が可能になる。これらのゲルの使用により達成された予想されない結果は、大きな分子の電気泳動移動が、小さな分子の電気泳動移動に対して遅延されることである。すなわち、分子の混合物の成分が、従来可能であったよりもゲル中でより広がる。過去においては、実際、100〜3,000bpの寸法範囲のDNA断片を、本発明のゲルを用いる電気泳動に付すると、重合反応中に予備形成ポリマーが存在しない以外は正確に同じポリマーゲルを用いる同一の条件下に電気泳動を行ったときの混合物中の小さい分子の移動と比べて混合物中の大きな分子の移動速度が少なくとも5倍低下する。
電気泳動分別における本発明のポリマーゲルの性能が、本発明によりこれらの材料を適用する使用の指示ではないことを理解すべきである。本発明の発見により電気泳動におけるこれらのゲルの使用が特に薦められるが、決して請求の範囲の生成物の範囲を限定することを意味するのもではない。しかしながら、前述の寸法の混合DNA分子の電気泳動分別を行う結果は、本発明の要求が満たされたかを決める非常に優れた試験である。
【図面の簡単な説明】
図1は、12%Tおよび2.6%CのNAT−Bis溶液に添加されたヒドロキシエチルセルロース(HEC)の%に対する60〜1,000bpDNA断片の移動距離のプロットである。ゲルは、実施例1に記載のように10V/cmにて20℃で4時間流した。
図2A〜Fは、0(図2A)、0.05(図2B)、0.10(図2C)、0.15(図2D)、0.20(図2E)および0.30(図2F)を含む種々の%(w/v)の添加HECを含む12%T、2.6%Cのポリ(NAT)−Bisゲルのスペクトルを示す。
図3は、0.2%シープラク(Sea Plaque)アガロースを含み10V/cmにて20℃で4時間流した12%T、2.6%Cのポリ(NAT)−Bisゲルにおいて決めた可動性の逆数に対するDNA断片寸法のプロットを示す。
図4は、μ値が図3のものと同じμ1/3に対するDNA断片寸法のプロットである。
図5は、0.1%の線状ポリアクリルアミド(分子量10,000)を含む12%T、2.6%Cのポリ(NAT)−Bisゲルにおいて決めた可動性を有して得られたμ1/3に対するDNA寸法のもう一つのプロットである。ゲルは10V/cmにて20℃で4時間流した。
図6は、10V/cmにて20℃で12時間電気泳動した、0.3%(w/v)のポリ(NAT)を含む12%T、2.6%Cのポリ(NAT)−Bisゲルの図面である。以下のDNAサンプルをゲルに適用した:レーン1、50bpラダー(Pharmacia社製);レーン2、pBR322/Hhal;レーン4、pBR322/Mspl;レーン5、pBR322/HaeIII;レーン3、三つのpBR322消化物の混合物;レーン6、20bpラダー(Gensura社製);レーン7、100bpラダー(Gensura社製)、mおよびレーン8、1kbラダー(Life Technologies社製)。
図7は、10V/cmにて62℃で2.5時間流した、0.2%のシープラクアガロースを含む12%T、2.6%Cのポリ(NAT)−Bisゲルの図面である。DNAサンプル:レーン1、50bpラダー(Pharmacia社製);レーン2、pBR322/Hhal;レーン3、pBR322/HaeIIIおよびpBR322/Msplを含む二つのpBR322消化物の混合物;レーン4、三つのpBR322消化物の混合物;レーン5、pBR322/HaeIII;レーン6、pBR322/Mspl;およびレーン7、50bpラダー。
発明の詳細な説明
米国特許第5,371,208号においては、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)が、架橋反応によるゲルの調製に用いられた。この反応はゲル化と同時に生じるものである。この同じHECポリマーが、その重合前に、12%T及び2.6%CのNAT+Bis溶液に対して異なる濃度で添加された。実施例1に記載されているように、HECを含むゲルの透明度は、重合溶液中に存在するポリマーの量に応じて低下した。キュベットで重合された1cm厚さのゲルの吸光度測定は、600nmで行なわれた。この波長は可視スペクトルの真中にあるので、これが選ばれた。最低のHEC濃度、すなわち0.05%(容積あたりの重量)において、吸光度は0.121であった。最高のHECテスト濃度、すなわち0.3%において、これは2.239であった。HECを含まない対照ゲルは、吸光度が0.017であった。従ってゲル重合中のHECポリマーの存在は、ゲル透明度に大きな変化を生じた。様々なサイズのDNA断片の電気泳動に従って、比較的大きいDNAの顕著な遅滞(retardation)が見られた。移行距離が実施例1に示されており、図1はこれを図で示している。この図面は代表的なものであるが、その理由は、これと同様のパターンが下記のその他の多くのポリマーについても得られたからである。60bp〜300bp断片間の移行距離の比は、ゼロHECにおいて3.32(7.3/2.2)である。0.2%HECにおいて、この比は10倍以上も高く、34.5(6.9/0.2)である。100bp〜200bpのサイズ範囲において、この比は、1.69から5.11まで3倍増加した。対照ゲルにおいて、8.7cmの移行経路では、200bp断片は、100bp断片がゲルの末端に到達する時まで5.1cm移行すると計算することは容易である。0.2%HECを含む等しい長さのゲルにおいて、200bp断片は、100bp断片がゲルの末端に来る時に、1.7cmだけ移行したであろう。従ってこれら2つの断片間の距離は、3.6cmから7.0cmに増加するであろう。この向上した選択性は、ゲルの分解能が100〜200bp範囲において2倍だけ増加したことを意味する。
Tは同一(12%)であるが、架橋度が様々なポリ(NAT)ゲルが、等しい量(0.2%)のHECの存在下に重合された場合、600nmにおける吸光度は、架橋度と共に増加した(実施例3)。Bisを含有するゲルにおいて、これは、1%Cで0.103であり、1.5%では0.321、2.0%では0.720であった。この結果は次のことを示していた。すなわち、光を吸収又は散乱させる種の形成については、モノマー分子よりも架橋剤分子の方が、より多くその原因になるということである。この仮定をさらに支持したものは、次の実験から生じた。すなわちNATの12%溶液が、0.2%HECの存在下ではあるが、Bisの不存在下に重合したという実験である。その結果生じた粘性の高い溶液の不透明度の増加は、視覚的には観察されなかった。1.5%及び2.0%Cにおける不透明度の実質的な増加はあるが、ゲルの選択性はわずかしか改良されなかったということに注目すべきであろう。これらのゲルに関して、移動度における最大の変化は、キロベースのDNA分子の場合に2%Cにおいて見られた。これらはいずれにしても、このように高いT値のゲルにおいてはあまり分解されない。従って1〜2%Cの3つのゲルは、実際にはまったく利点がなかった。
HEC濃度と架橋度を変えることによって得られた発見事項が意味するところを考慮すべきであろう。可視光線の吸光度又は散乱の増加は、文献において、ポリマー凝集体又は束の形成と関連していた。これらのサイズは、可視光線の波長、すなわち400nm〜800nmのサイズに対応する。この解釈が正しいと仮定すると、その場合には前記発見事項が示唆することは、HEC及び架橋剤の濃度が増加する時、より多数のこのような凝集体が形成されるということである。架橋剤がなければ凝集体は形成されない。HECの存在下になぜこれらの凝集体が形成されるのかという疑問がある。もう1つの疑問は、これらの構造はどんなものかである。第三の疑問は、これらの凝集体を含むゲルが、なぜ向上した選択性を示すのかということである。
2つの追加の架橋剤、すなわちジヒドロキシエチレン−ビス−アクリルアミド(DHEBA)とピペラジン−ジ−アクリルアミド(PDA)もまた、HECの存在下にNATと共重合された(実施例4)。吸光度が、比較的高い架橋剤濃度において増加する場合、同じ一般的パターンが観察され、これらのゲルは向上した選択性を示した。しかしながらこれらの架橋剤間には1つの重要な差があった。様々な架橋剤濃度において、同様な吸光度の値に達した。5%Cにおいて、DHEBAは、吸光度が1.302の中程度に不透明なゲルを生じた。架橋剤としてBisを用いた場合、2.6%Cでは吸光度は1.780であった。架橋剤としてPDAを用いた場合、1.5%Cでは吸光度は1.998であった。3つの架橋剤のうち、DHEBAが最も親水性の高いものであり、次にBis、そしてPDAであるので、凝集体の形成は、架橋剤の親水性に応じたものであるように見える。しかしながら3つの架橋剤の二重結合が異なる速度で重合しうるという可能性を無視すべきでない。二重結合の反応性は、3つの架橋剤の親水性と一致していることもありうる。いずれにせよ、すべての場合に重合溶液中に存在するHECポリマーは、ゲルポリマーの配置にある変化を引起こしたことは明白である。これは、ゲル不透明度の変化として検知しうるものである。
HECポリマーの存在がゲル構造にどのようにしてこの変化を引起こしたかについては、いくつかの可能性がある。例えば架橋剤分子は、HECポリマーに親和性を有することがあり、従って架橋剤の局部濃度は、ポリマーの近くではより高いことがある。もう1つの可能性は、重合プロセス中に、HECが、架橋剤に富むポリマーの沈殿を生じるということである。第三の可能性は、HECポリマーが、次のようにして重合プロセスの動力学を変えるということである。すなわち架橋剤分子が、モノマーとではなく、それ自体の間で優先的に反応するようにしてである。これら3つの可能性の組合わせもありうる。実際のメカニズムとは無関係に、これらの結果が示しているのは、凝集体の形成は、架橋剤の種類のみならず、その濃度にも依るということである。ある濃度(これは各架橋剤について異なるが)以下では、HECを含むゲルは、HECを含まないゲルの力と同様な力でDNA断片を分解した。
異なる分子量のHECポリマーが、NATとBisとを含む重合溶液に添加された。実施例7に記載されているように、すべてのHECポリマーは、ゲル不透明度の増加を引起こすことが可能であった。しかしながら、ポリマーがゲル選択性を向上させる能力には大きな差があった。分子量が24,000〜27,000の最も短いHECポリマーは、ゲル分解能において小さい改良しか生じなかった。フルカ社(Fluka)から購入されたHECポリマーは、製造業者によって分子量が明記されていないが、これらのポリマーは、有意な改良を引起こすことが可能であった。より高い分子量、すなわち90,000〜105,000、及び160,000のHECポリマー(ポリサイエンス社(Polysciences)から購入されたもの)についても同じことがあてはまった。これらの結果が示すことは、凝集体の形成は、向上した選択性を得るのに十分な条件ではないということである。分子量24,000〜27,000のHECを含むゲルに形成された凝集体は、これより長いHECポリマーの存在下に形成されたものとは異なる挙動を示した。束になったゲルポリマーの組成、あるいはこれらのからみ合わされ方に、ある違いが存在することがある。しかしながら1つの特定のポリマーの存在下に形成された束は、同一の組成及び構造を有する可能性の方が高いように思える。そうであれば、その場合は選択性における大きな差が示すことは、短いHECポリマーが、移行DNA分子の通過中に凝集体を橋掛けしたり、これらをまとめておくことはできないということである。ポリマーは、そうするためにはある最小限の長さを有する必要がある。この結論は次の発見事項によるものである。すなわち、実施例7に開示されているように、選択性の大きな向上を得るためには、より長いHECポリマーのはるかに低い濃度で十分であったという発見事項である。
HECは、セルロースへの酸化エチレンの作用によって調製された工業用ポリマーである。この反応はかなり強烈な条件下で実施され、副反応が生じることが予測される。このような副反応は、ポリマーに他の官能基を導入することがある。例えば脱離反応は、HECポリマーに二重結合を導入しうるであろう。これらの二重結合は、NAT及びBisと共重合し、従ってHECは、ゲルマトリックスに共有結合的に結合されるであろう。さらには様々な製造業者によって、あるいは様々なバッチ及びポリマーサイズから製造されたHECは、様々な量の置換基を有するであろう。見られる差は、実際には様々な分子量と関連しているのではなく、ポリマーの何か他の性質と関連したものであると想像することができる。この問題を解決するために、HEC配合物は、実施例18に記載されているようにセファロース(Sepharose)CL6B上のゲル濾過に付された。3つのゲルが、分別HECと重合された。1つは最初に溶離する長いポリマーと、2つ目は中間のフラクションと、3つ目は最後に溶離するHECポリマーと重合された。最長ポリマーを含むゲルだけが、選択性の大きな改良を示したが、一方、最短ポリマーを含むゲルは、対照ゲルと比較して、変化を示さなかった。両方のポリマーフラクションが同じHECサンプルから生じたものなので、ポリマーの化学構造は同じであろう。従ってこの実験は、ポリマーの分子量がゲル特性に対して大きな影響を有することをしっかりと立証した。
ゲル濾過実験のもう1つの側面についても記載する価値がある。HECは非常に幅広いピークとして溶離され、このHEC配合物におけるポリマーサイズ分布が非常に幅広いことを示している。同様のことが、おそらく他のHEC配合物についてもあてはまる。さらには、ポリサイエンス社製の90,000〜105,000HECは、はるかに高い分子量のポリマーを含んでいることが最近報告された(引例27)。従って製造業者が示した分子量の値はここではそのまま取上げられているが、これらの値は、条件付きで考慮されるべきであろう。多分散性(polydispersity)は、所望であればゲル濾過又はその他の分別方法によって減少させることができる。実施例18に示されでいるように、向上した選択性を有するゲルの調製には、このようにより均質なポリマー配合物も適している。
向上した選択性を有するゲルはまた、実施例5に記載されているように、NATの代わりにその他のモノマーを用いて調製することもできる。モノマーとしてアクリルアミド、架橋剤としてBis、予め形成されたポリマーとしてHECが用いられる場合、モノマーとしてNATを用いる場合よりも高い架橋度が必要であった。モノマーとしてN−アクリロイル−1−アミノ−1−デオキシ−D−ガラクチトールを用いても、向上した選択性が得られるであろう(実施例5)。これらの発見事項が証明していることは、新しいゲルにおける比較的大きいDNA分子の選択的遅滞は、特定のモノマーとは関連していないということである。これはまた、特定の架橋剤とも関連していない。その理由は、DHEBA及びPDAで架橋されたゲルもまた、前記のように向上した選択性を示したからである。従って観察された現象は一般的であるように見えるが、ゲルトポロジーを変更することによって選択性の所望の向上が生じるようなモノマー及び架橋剤の濃度範囲は限定されていることを認識することが重要である。この条件が満たされた場合、多くの様々のモノマー及び架橋剤が適したものになる。実施例6に記載されているように、1つ以上のモノマーと1つ以上の架橋剤とを重合溶液に溶解することも可能である。このような複合ゲルもまた、向上した選択性を示した。
当初からNAT及びBisと組合わされて用いられたHECは、DNA特異性染料で染色した後、高いバックグラウンドのゲルを生じることが多かった。このバックグラウンドは、より高いHEC濃度においてより顕著であったので、セルロース中に存在する内生DNAがその原因であろうと推論された。このバックグラウンドは、実施例2に記載されているように、DEAE−セファロース上でのイオン交換クロマトグラフィーによって精製されたHECを含むゲルにおいては、実際により低かった。しかしながらこれらのゲルはその分解能を失った。同じことがDEAE−セルロース(サーバ社(Serva))上で精製されたHECを用いた場合も生じた6DEAE−セファロース上で精製されたHECをCM−セファロース上に通過させた時に、分解能が回復したので、いくつかの正電荷アガロースポリマーが、DEAE−セファロースから解放されたように思われる。架橋セファロースビーズが用いられたので、これらの量は比較的低いと予測される。ゲル分解能の、少量のポリカチオンの存在に対する感受性を、商業用イオン交換器からの漏れをチェックするための分析的方法として用いることができる。少量の負電荷アガロースポリマーが、CM−セファロースから漏れたようである。DNA分子もポリアニオンであるので、これらはDNA分離に影響を与えないと予測される。電気泳動に用いられるアガロースゲルには、少量の負電荷が存在することが知られており、これは不利な影響を伴なわない。実施例2に記載された精製方法は、電気泳動用のゲルにおいてこれらを使用する前、他の多糖類の精製に適している。
セルロースのその他の誘導体も、向上した選択性を有するゲルの調製に適している(実施例8)。メチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースは、NAT及びBisと組合わせた場合、大きなDNA断片の向上した遅滞を示すゲルを生じた。これらの結果が示すことは、セルロースと結合した様々な基が、例えば溶解性、粘性、及び疎水性を含むその特性のいくつかに影響を与えることが知られているが、セルロースポリマーに存在する基の種類は、あまり重要ではないということである。
様々なセルロース誘導体の記載されているような能力があるとすれば、その他の多糖類をテストするのも合理性のあるものであった。アガロースはまた、ゲルが向上した選択性を示すように、NAT−Bisゲルの特性を変えることができた。実施例10に開示されているように、誘導体化アガロースにも同じことがあてはまった。様々な種類のアガロース間にはいくつかの大きな差があった。同じ遅滞効果を得るには、例えばヌシーブ(NuSieve)アガロースよりはるかに低い濃度のシープラク(SeaPlaque)アガロースが必要であった。さらには選択的遅滞は、高い温度で操作されるヌシーブ含有ゲルではほぼ完全に失われているが、一方同じ操作条件下において、シープラクアガロースを含むゲルは、その向上した選択性を保持した。ヌシーブアガロースとシープラクアガロースのどちらも、ヒドロキシエチル基を含むアガロース誘導体である(米国特許第3,956,273号及び第4,319,975号)が、ヌシーブアガロースにおけるポリマーの長さはより低い。従ってアガロースポリマーの分子量は、HECポリマーに関して既に見られているように、重要な役割を果たした。アガロースとセルロースとは、どちらも線状ポリマーである点で似ている。これらは、糖成分、グリコシド結合、及びゲル形成能力において異なる。誘導体化セルロースは、高温及び低温において溶液のままに止まるが、アガロースポリマーは熱可逆ゲルを形成する。アガロースポリマーの会合状態は温度依存性であるので、重合温度を変えることによって様々な選択性を有するゲルを製造しうると予測されよう。等しい量のシープラクアガロースを含有するが、様々な温度で重合されたポリ(NAT)−Bisゲルの場合に、このことが実際に観察された。最良の結果は、約35℃で重合されたゲルの場合に得られた。この温度は、このアガロースのゲル化温度よりも高い。非常に多くの場合、様々なアガロース誘導体を含むゲルに擾乱が見られた。これらの擾乱は、大部分、波状の裂けたバンドの形態で現われた。これらの起源はおそらく、重合中のゲルの長さ又は厚さにおける温度変動と関連しているであろう。遊離基重合は、発熱反応であり、局部温度変動が、アガロースポリマーの会合状態に影響を与えることもあろう。このことが今度は、ゲルポリマーのトポロジーに影響を与えることもありうる。それにもかかわらず、向上した選択性を有する最良のゲルの1つは、0.2%シープラクアガロースを含む12%T、2.6%Cゲルであった。ゲル化多糖類が用いられる時、重合条件はより正確に制御される必要があるが、様々な重合温度を選択することによってゲル特性を変えることは、向上した選択性を有するゲルを目的に合わせて作るためのもう1つの方法である。
実施例11に記載されているように、その他の多糖類も用いられた。これらには、デキストラン、イナゴマメから生じた多糖、及びカルビン型のガラクトマンナンが含まれる。イナゴマメの多糖はガラクトマンナンでもあり、これはイナゴマメガムから抽出した後でさらに精製することなく用いられた。これらの3つのものはすべて、枝分かれ多糖類である。デキストランは、分子量が500,000であり、一方イナゴマメから生じたガラクトマンナンは、それぞれの製造業者が明記しているように、分子量が300,000であった。デキストランは高度に枝分かれしたグルコースポリマーであるが、ガラクトマンナンは、2つの別々の単糖類、すなわちガラクトースとマンノースとを含んでいる。ガラクトース残さは、ポリマンノースバックボーン上の枝として生じる。ポリマーはすべて、向上した選択性を有するゲルを生じることが可能であった。しかしながらデキストランの必要とされる濃度は、ガラクトマンナンのものよりもはるかに高かった。後者の場合、ポリマー0.01%(カルビンガラクトマンナン)又は0.02%(イナゴマメのガラクトマンナン)のみを含むゲルにおいて強い遅滞があった(実施例11)。その他のいくつかのポリマーの場合、向上した選択性を有するゲルは、0.01%より低い濃度においてさえ、あるいは別のT値において、あるいは別のモノマー又は架橋剤を用いてでさえ得ることができることもありうる。より高いテスト濃度において、イナゴマメのガラクトマンナンは、DEAE−セファロース上を通過させられたHECの場合に見られたものと同様なゲル分解能の減少を生じたことは興味深いことである。この減少を生じた原因は、詳細には調査されなかった。重要な事実は、テストされたすべての多糖類は、向上した選択性を有するゲルを生じうるということである。実施例に記載されているように、多くの様々な多糖類が用いられたが、適したものになりうるものが他にもある。これらには、スターチ、レバン、グルカン、マンナン、キシラン、及びその他の多糖類が含まれる。向上した選択性を有するゲルは、実施例13に示されているように、1つ以上のポリマーを含んでいてもよい。
合成ポリマーも重合溶液に添加された。2つの分子量(4,000及び8,000)のポリエチレングリコールは、向上した選択性を有するゲルを生じなかった。ただしゲル不透明度は、2%のPEG8,000を含むゲルにおいて実質的に増加した(実施例14)。分子量360,000のポリビニルピロリドン(PVP)は、0.5%までの濃度で重合溶液に添加された時に、ゲル不透明度の顕著な増加を生じなかった。PVPを含むゲルにおけるDNA移行距離は、対照ゲルのものと同様であった。分子量22,000のポリビニルアルコール(PVA)がポリマーとして用いられた場合、ゲル不透明度は、PVA濃度に応じて変化した。しかしながら選択性の増加はなかった。実際には選択性の減少があり、DNAバンドは、対照ゲルにおいてよりもPVAを含むゲルにおいて、より広がっていた(実施例14)。これらの結果は次の結論を確認している。すなわち、ゲル不透明度の増加は、向上した選択性を有するゲルを得るのに十分な条件ではないということである。3つの合成ポリマーは、その構造において、及びその平均分子量においても異なっていた。重合溶液中のPVPの存在は、用いられた方法によって検知しうるゲルポリマーの新たな配置を、結果として生じなかった。これはPEG及びPVAの存在下に生じたが、これらの凝集体は次のような構造のものであり、あるいは次のように結合されていた。すなわち、ゲル選択性の増加が得られないようなものである。
線状ポリアクリルアミドもポリマーとして用いられた。用いられたポリマーは、分子量が10,000であった(ポリサイエンス社)。12%T、2.6%C NAT−Bis溶液中のポリアクリルアミドの存在によって、実施例15に記載されているように、ゲル透明度に大きな変化が生じた。同様に、ポリアクリルアミドを含むゲルにおいて、比較的大きいDNA分子の強力な遅滞があった。この発見事項は、その他の合成ポリマーの場合に得られた結果を見ると驚くべきことであった。ポリアクリルアミドを含むゲルはまた、高温で操作された場合もその向上した選択性を保持した。
ポリアクリルアミドの場合の予期されなかった発見事項に従って、ポリ(NAT)ポリマーがテストされた。これは、重合前にNAT+Bis溶液に添加された場合、これらのゲルが向上した選択性を示すような変化を、ゲルポリマーの配置に引起こした。従って、この発明の予め形成されたポリマーは、ゲルポリマーと同じ反復モノマー単位から構成されていてもよい。しかしながらこのポリマーは、その存在が新たに規定された特性を有するゲルの形成を生じるような比で、モノマー及び架橋剤に添加されなければならない。当業者なら、適したものになりうるような多くの合成ポリマーがあることを理解するであろう。第一にこれらには、米国特許第5,185,466号に記載されているもののような、その他のN−ヒドロキシアルキルアクリルアミドが含まれる。その他のN−ヒドキシアルキルアクリルアミド、並びにその他のビニルモノマーも、文献から知られている。このポリマーはまた、1つ以上のモノマーから誘導された単位を含んでいてもよい。このようなポリマーの調製は、様々なモノマーの重合率が匹敵しうるものである場合、簡単である。本発明のゲルの調製のためには、ポリマーは、モノマー及び架橋剤が溶解されているのと同じ溶媒中に可溶である必要がある。大部分の場合、水は優れた溶媒であろうが、その他の溶媒又は溶媒混合物も用いることができる。
新しいゲルにおける選択的遅滞の規模は最も驚くべきことである。ゲル濃度全体を増加させた時に、移行分子が遅滞させられることが予測できる。しかしながら前記のように、ゲル濃度を10%増加させた後、拡大オガトンモデルに基づいた場合、移行速度のせいぜい2倍の減少を予測するのが合理性のあるものであった。この有名なモデルによって、ゲル濃度に伴なう電気泳動移動度の変化について予測することはできない。新しいゲルにおいて、例えば0.1%ポリマーを含む12%Tゲルにおいては、総ゲル濃度は多くの場合、1%以下しか増加しなかったが、より長いDNA断片の移行速度は、1桁以上の程度の規模だけ変化することが多かった。実際に、10V/cmにおいて15時間もの長さの電気泳動後に、いくつかのゲルにおいて、100倍以上も低いDNA移動度が検知された。一晩の操作後に数ミリメートルだけ移行したDNA断片が、鋭いバンドを示したことは注目すべきである。従って、高分子の枝分かれ架橋剤を含んでいたゲルを用いた初期の場合のように、強力な遅滞はゲル分解能の減少とは関連していなかった(引例15)。
前記ゲル電気泳動の3つのモデルに加えて、4つ目のモデルは次のことを提案している。すなわち高分子の電気泳動移行は、ゲル粘度として記載することができるということである(引例28及び29)。従って重合溶液に添加された様々なポリマーの粘度を測定することは有利であった。これらの測定は、20℃で、通常は落球粘度計(ギルモント社(Gilmont))を用いて、ゲル中のものと同一のポリマー濃度において実施された。この粘度計は、水でキャリブレーションされた。精製HEC(フルカ社(Fluka))溶液は、0.2%において粘度が1.5cpsであった。精製HEC(分子量90,000〜105,000、ポリサイエンス社)溶液は、0.2%において2.9cpsの粘度を示した。0.5%PVP(分子量360,000)の粘度は、1.4cps、ガラクトマンナン0.2%溶液(カルビン型、セン・ケミカルズ社(Senn Chemicals))は、4.5cps、2%PEG8,000については1.5cpsであった。従ってHEC(フルカ社)、PVP、及びPEG溶液は、同様な粘度を有していたが、これらのポリマーを含んでいるゲルは、各実施例に開示されているように、非常に異なる選択性を有していた。従って粘度測定に基づいた場合、ポリマーが向上した選択性を有するゲルを生じるかどうかを予測することはできない。他方で、ゲル選択性の改良を生じたポリマー群において、比較的大きい分子の選択的遅滞は、より高い粘度のポリマーの場合により強かった。HECの場合、粘度がポリマーサイズに比例し、かつ以前の実験では比較的長いポリマーがより強い遅滞効果を生じることが立証されているので、このことは予期されていたことである。一般にポリマーを含む重合溶液の粘度は、ポリマーを含まない対照溶液の粘度よりもせいぜい数倍高いだけであるということに注目することは重要である。いくつかのDNA分子の移動度が、1桁以上の程度の規模だけ減少することが多かったので、DNA分子の移動度と重合溶液の粘度とを相互に関連させることはできない。
本発明の実施において、ゲル重合中に存在するポリマーは、大きいDNA分子が低下した速度で移行するというような変化をゲル構造に引起こす。ゲル構造における変化は、ゲル不透明度、あるいは透明度として測定された。不透明度における変化は、新しいゲルにおいて常に見られたが、実施例に開示されているように、この変化の規模は大きく異なっていたことは注目に値する。その規模からすると、ゲルが向上した選択性を有するかどうかについて言うことは不可能であった。いくつかの場合に、不透明度が少しだけ増加したゲルは、良好な選択性を示した。例えば0.02%イナゴマメガム又は0.01%カルビン型ガラクトマンナンを含むゲルである(実施例11)。これらのゲルの600nmにおける吸光度は、約0.08に過ぎなかった。光学的性質においてより小さい変化のあるゲルでさえ、あるいは検知しうる変化のないゲルもまた、改良された選択性を示すことはありうる。さらにはポリマートポロジーにおける変化を検知するもう1つの方法は、これらの変化と向上した選択性とを相互に関連させるのにより適しているであろう。幅広い波長範囲において記録されたスペクトルは、単一の波長における吸光度測定よりも多くの情報を与えてくれる。400〜800nmの範囲において多くのスペクトルが記録された。どちらのゲルもキュベットで重合され、3mm厚さのゲルピースのものである。図2は、12%T、2.6%Cポリ(NAT)−Bisゲルのこのようなスペクトルを示しており、HECを含まないもの(図2A)、あるいは0.05%HECを含むもの(図2B)、0.10%HECを含むもの(図2C)、0.15%HECを含むもの(図2D)、0.20%HECを含むもの(図2E)、及び0.3%HECを含むもの(図2F)を示している。HEC濃度を増した場合のゲル不透明度の強い増加は明白である。その他の多くのポリマーを用いて、同様なスペクトルが得られた。このスペクトルから、どのゲルが向上した選択性を示すかを予測することは不可能であった。様々なポリマーを含んでいる同様なスペクトルを有するゲルは、多くの場合、大きく異なる選択性を示した。あるケースでは、PVAがポリマーとして用いられた場合、400〜800nm範囲における吸光度の増加は、選択性の悪化と関連していた(実施例14)。スペクトルからは、ゲルが向上した選択性を有するかどうかを予測することはできなかったが、どのゲルが幅広いバンドによって低い分解能を有するかを予測することはできた。実験したすべてのケースにおいて、DNAバンドは、ゲルの吸光度が400〜800nm範囲全体において2.0以上である場合に常に幅広く分散していた。このようなゲルは、強いバックグラウンド染色を示すことが多かった。さらには可視領域におけるスペクトルから、400nm及び800nmにおける吸光度比は一般に、ポリマー濃度の増加と共に減少したことが観察された。この比は、ポリマーがまったく添加されていないゲルの場合に最高であったが、絶対吸光度の値は最低であった。例えば12%T、2.6%C NAT−Bis対照ゲルは、400nm及び800nmにおける吸光度が各々0.109と0.008であり、一方、吸光度の値は、0.02%カルビン型ガラクトマンナンを含む等しいT及びCのゲルについては、0.656と0.101であった。その他の多くのゲルについても同じ挙動が見られた。この発見事項が示すことは、比較的大きい凝集体の量は、比較的小さい凝集体の量よりもさらに比例的に増加したということである。しかしながら絶対的な意味では、すべてのゲルにおいて800nmにおいてよりも400nmにおいての方が吸光度がより高いことから判断して、比較的小さい凝集体の量は、比較的大きい凝集体の量より常に多かった。
ゲル不透明度の増加として検知された、ゲルポリマー配置における変化は、前記のように、向上した選択性を有するゲルの製造にとって十分なものではない。選択性を改良することなく、ゲル不透明度における顕著な変化を生じた1つのポリマーは、PEG8,000であった。PEGは、小さい−CH2−CH2−O−反復単位から構成されている線状ポリマーである。このようなポリマーが、他のポリマーのネットワークを通して引張られる時には摩擦はほとんどないであろう。構造−CH2−CH(OH)−を有するポリビニルアルコールもまた、小さい反復単位を含んでいる。PVAを含むゲルの不透明度は増加したが、選択性は増加しない(実施例14)。これらの発見事項が示すことは、本発明のポリマーは、向上した選択性を生じるためには、ある最小サイズの反復単位を有する必要があるということである。ポリアクリルアミド、すなわち−CH2−CH(CONH2)−は、向上した選択性を有するゲルを生じるので、既にこの基準を満たしている(実施例5)。嵩高い反復単位を有するポリマーは、一般に効果的であった。例外はポリビニルピロリドンであったが、このポリマーは、最初はゲル不透明度に重要な変化を生じなかった。たとえポリマー構造が適切であっても、ポリマー鎖が短すぎるならば、選択性の向上はないであろうということに注目することが重要である。これは、分子量24,000〜27,000のHECが、十分に向上した選択性を有するゲルを生じることができないということによって例証されている。
正しい構造及び分子量のポリマーは、ゲル重合中にこれが存在することによって、大きなDNA分子の移行速度の大きな減少を特徴とするゲルを生じるようなものである。この減少は、ゲルポリマー間のより高い摩擦と関連することもあろう。DCモデルによって提案されているように、ゲル電気泳動中にDNA分子がゲルポリマーを置換するならば、その場合にはゲルポリマー間の摩擦の増加によってDNAの運動が減速されるであろう。小さいDNA断片は、2〜3のポリマーだけしか置換する必要がない。大きい断片は、これらが移行する開口部を形成するために、多くのものを押しのける。ゲルがポリマー凝集体を含んでいる時、その場合には大きいDNA分子はこれらの凝集体を置換する。これらの凝集体が別のポリマーによって連結されるならば、その場合には移行DNAは、ゲル繊維と、凝集体を結合している予め形成されたポリマーとの間の、凝集体内部の高い摩擦によって、凝集体を置換させることはできないかもしれない。従って新しいゲルは、移行DNA分子に適切な抵抗性を与えることができる。このような摩擦の増加を発生させうるということは現実的であろうか。最近の論文において(引例30)、狭い空間へと閉じ込められたポリマーの挙動が考察されている。有効空間がポリマーサイズの空間に近付く時に、新しい動的挙動が生じる。現在、ナノレオロジーをよりよく理解する方向へ、多くの研究活動が向けられている。すなわち、分子の大きさの空間へと閉じ込められた物質の変形のことである(引例30)。記載されている引例において取扱われている状況は、電界及び移行分子が存在しないので、本発明のものとは異なる。それにもかかわらずこれは、ポリマーのディスロケーションのための空間が制限されている時に、摩擦の非常に大きな増加が生じうるという見解への支持を与える。このような状況がゲル凝集体にも存在することが、ここで提案されている。ポリマーの存在下に形成された凝集体は、前記のように、おそらく架橋剤に富むものであろう。架橋剤のレベルの増加によって、及びゲルポリマーの高い局部濃度によって、凝集体の内部では、加えられたポリマーはほとんど自由空間を有していない。さらにはこれらの長さに沿って、ゲルポリマーとからみ合ったループ及びヘアピン構造があることがある。2つの凝集体の置換によって、加えられたポリマーが、これらのうちの1つから引張られる必要がある。もしこのことが、移行DNAが有する以上の力を必要とするならば、その場合にはDNAはまったく移行しないであろう。サンプルのくぼみ(well)の壁に残っっているDNAバンドは、実施例に記載されているように、この発明の多くのゲルにおいて見られた。
これらの新しいゲルにおいて、ゲルポリマーと移行DNA分子との間に比較的高い摩擦があるならば、その結果としてDNAサイズと可動性との間に異なる関係が生じることもあろう。実際、DNA断片のサイズ対これらの可動性の相互関係をプロットした後でこのことに気が付いた。天然及び合成ポリマーから構成されるものを含む、多くの様々な化学組成の標準的ゲルにおいては、以前に報告されているように(引用16〜18)、DNAサイズとこれらの可動性の相互関係との間に直線的関係がある。この関係は、新しいゲルのいくつかについてのみ詳細に調査された。0.2%シープラクアガロースを含む12%T、2.6%Cゲルにおいて、DNAサイズ対可動性の相互関係のプロットは、強い湾曲を示す(図3)。図4においてDNAサイズがμ1/3に対してプロットされた時に、はるかに良好な直線性が見られた。図5に示されているように、0.1%ポリアクリルアミド(分子量10,000)を含む12%T、2.6%Cゲルの場合も直線が得られた。従って本発明のゲルには、DNA断片サイズとこれらの可動性との間に新たな関係が存在する。図4及び5に示されているプロットから、外挿による値μ1を評価することができ、ついで方程式5を用いて、移行DNA分子とゲル繊維との間の摩擦を、以前に記載されているように(引用16〜19)計算することができる。計算された摩擦は、古いゲルよりもはるかに高かったが、その詳細は本発明の範囲外である。
異常な配列依存性DNA可動性は、ゲル電気泳動によるDNAサイズ評価の主な限界である。驚くべきことに、新しいゲルのいくつかにおいて、ゲルが20℃で流された場合でさえ、異常な可動性は大幅に抑制されることが観察された。このようなゲルの例は、0.2%シープラクアガロースを含むポリ(NAT)−Bis(12%T、2.6%C)ゲル、及びポリ(NAT)を含む同じゲルである。図6は、10V/cmにおいて、20℃で12時間電気泳動された、0.3%のポリ(NAT)が加えられたゲルを示している。異常な可動性は、ゲルが55〜65℃で電気泳動された時に完全に取り除かれる。これは、0.2%シープラクアガロースを含む12%T、2.6%Cゲルの隣接レーンにおいて操作された3つの別々のpBR322消化から判断したものである(図7)。ゲルは10V/cmにおいて、62℃で2.5時間流された。様々な制限酵素でのpBR322の消化によって得られたDNA断片のサイズは、「分子生物学ラブファックス(Molecular Biology Labfax)」(T.A.Brown,Ed.,Blackwell Scientific Publications,Oxford,UK)から取られたものである。これらの異常な可動性の原因になるメカニズムに関して、現在は2つの見解がある。1つの意見では、異常な移行DNA分子は曲がっていると規定しているが、もう一方の意見では、このような分子がいくつかの接点において増加した柔軟性を示すと考えられている。どちらの意見が本発明の結果によって支持されるかについての考察は、この発明の範囲から外れるが、DNA断片サイズの正確な評価を必要とするような用途にとって新しいゲルが有利なものであると認識することが重要である。
新しいゲルにおいては、異常な可動性が大幅に取り除かれているだけでなく、これらのゲルはまた、100bp範囲においてDNA断片間の1bp差を分離(resolve)することができる。このような分離は図6に示されている。ここでは、131及び132bpの断片、及びまた151、152、及び153bpの断片も、pBR322/Hhal消化において分解されている(レーン2及び3)。従って選択性の向上によって、以前に可能であったものよりもはるかに短いゲル長さに関して良好な分解が可能にされた。200bp範囲における4bp差は、DNA断片が約2cmだけ移行した後で分解されたことは注目に値する。これもまた向上した選択性を証明している(図6、レーン3)。新しいゲルのゲル長さは、ここで例に挙げられているものより長くなりうるのは明らかである。重要な事実は、実質的により短いゲルでも、より長い古いゲルと比較して、同じ分離を得るには十分であるということである。短いゲルが好ましいのは、注型及び取扱いがより容易であるからだけでなく、ゲル調製のため及び分離されたバンドの検知のために必要な試薬がより少ないからである。さらにはバンド幅が移行距離と共に増加するので、短いゲルにおいてバンドはより鋭い。
本発明のゲルは、従来技術において知られている様々なフォーマットで操作しうる。添付実施例において開示されているように、大部分のゲルは、液内ゲル電気泳動方法で操作されたが、垂直に操作されたものもあった(実施例9)。同様に平台及び毛管方法でこれらを操作することも可能である。これらの方法の各々は、特定の用途に対して利点がある。当業者は、ある電気泳動法を別の方法に変える時に行なわなければならない通常の適応方法を知っている。ゲルは様々な電界強度で操作することができる。大部分の本発明のゲルは、様々なゲルの比較を容易に行なうことができるように、10V/cmで電気泳動にかけられた。同様に、より低い電圧で操作されたゲルもあり(実施例8)、より高い電圧のものもある。15V/cmでの液中方法において、HEC、ポリアクリルアミド、及びポリ(NAT)を含むテストゲルは、その向上した選択性を保持していた。薄いゲル又はゲル充填毛管を用いる時は、より高い電場強度を用いることができる。これらのゲルは、多くの実施例によって示されているように、様々な温度で用いることができる。本発明のゲルは、ここでは分析的用途に用いられたが、これらは製造のための用途にも用いることができる。電気泳動中、移行分子は新しいゲル全体を通って移行することもあり、あるいは新しいゲルは分離マトリックスの一部のみを表わすこともある。ゲル長さは、特定の分離ニーズの必要条件を満足させるために様々なものであってもよい。新しいゲルの高い選択性によって、長さ1mm又はそれ以下の非常に短いゲルは、必要とされる分離を生じうる。ゲルの濃厚さも様々であってもよい。速い操作には非常に薄いゲルが一般に最も適している。ゲルは膜の形態で製造されてもよい。総ゲル濃度は、分析されるサイズ範囲に従って様々である。最低のゲル濃度は、モノマーの重合効率によって制限されており、これは大部分の場合、約4%であろう。最も高いゲル濃度はまた、分離される分子のサイズ範囲によって、及びモノマーの溶解性によっても決定される。ゲル濃度はその長さに沿って様々であってもよい。このような勾配のゲルは、いくつかの用途においては有益であろう。同様に、ポリマー濃度勾配を有するゲルを作ることも可能である。
新しいゲルは添加剤及び変性剤を含んでいてもよい。これらの向上した選択性は、実施例17に開示されているように、変性剤のウレアの存在下に保持された。変性条件下の電気泳動が、DNA配列のために用いられ、この用途もまた、向上したゲル選択性から利益を得る。重合が実施例17に記載されているように変性剤の存在下に実施される場合、必須ゲル成分の比は調節する必要があるであろうということに留意することが大事である。
本発明のゲルにおいて、選択的遅滞は、DNA分子の場合にのみ詳細に調査された。その他の高分子も同様な挙動を示すであろう。大きなタンパク質も選択的に遅滞されるかどうかを解明することは有利なことであった。バイオ−ラッド・ミニプロテアン(Bio−Rad Mini Protean)電気泳動装置を用い、垂直フォーマットで電気泳動を実施した。サイズ範囲660,000Da〜66,000Daの天然タンパク質(ファーマシア・ハイ・モレキュラー・ウエイト・マーカーズ社(Pharmacia High Molecular Weight Markers))が、0.06%HEC(分子量90,000〜105,000)を含む9%T、2.6%Cポリ(NAT)−BIsゲルにおいて操作された場合、HECを含まない対照ゲルと比較して、移行距離にはほとんど差はなかった。大きなDNA分子は、同じ組成のゲルにおいて強く遅滞された。必須ゲル成分の比がタンパク質分離に最適なものでなかったこともありうるが、前記発見事項が示しうることは、ゲルを通るタンパク質移行のメカニズムが、DNA移行のメカニズムとは異なるということである。この仮定は、様々なポリマーを含むポリアクリルアミドゲルにおけるSDS−タンパク質の電気泳動に関する論文に記載されている結果と一致しているように思われる(引用31)。ここでは天然タンパク質が操作され、引用の出版物では変性タンパク質が操作されたことに注目すべきであろう。選択性の中程度の変化だけが引用31において報告された。興味深いことには、比較的小さいSDS−タンパク質が比較的大きいものよりもさらに比例的に遅滞させられた。この結果は、ここに記載された発見事項とは正反対である。ここでは比較的大きいDNA分子は、小さいものよりもより多く遅滞させられた。この引用において、ポリアクリルアミド−Bisゲルの架橋度は、この研究においてDNA分離に最適であると分かったものよりもはるかに低かった(2.66%)。さらにはゲルの不透明度は測定されず、従って不透明性についての比較を行なうことはできない。低い架橋度は、この研究の結果と引用の出版物の結果との差の主な理由でありうる。同様に、SDS−タンパク質複合体の電気泳動移行のメカニズムは、DNA移行のメカニズムとは異なることもありうる。その場合、SDS−タンパク質の場合に得られた結果は、DNAにはあてはまらないし、逆も同じである。この問題を明確にするには、さらなる研究が必要である。
ポリアクリルアミド−Bisゲルの分離選択性が実質的に改良されうるであろうという本発明の発見は、長年にわたるこのマトリックスの広範な研究から考えれば驚くべきことである。ここに記載された実験的研究が完成した時、文献をさらに調べた結果、2つの興味深い論文が発見された。第一の論文(引用32)において研究者らは、アガロースを非制限的濃度で含むポリアクリルアミドゲルを用いることによって、自由可動性を測定する可能性について研究していた。アガロースの濃度は0.4%であり、架橋度は2.5%であり、Tは、0〜10%の様々なものであった。タンパク質とDNAは、様々な組成のゲルにおいて操作された。これらの可動性が測定され、ファーグスン(Ferguson)プロットを構成するのに用いられた。引用の図7は、アガロースを含むゲルと含まないゲルにおいてファーグスンプロットを比較している。アガロースを含むゲルの向上した選択性は明らかである。これは、1.3kbp断片の移行が、アガロースを含むゲルにおいて約8倍も少なかったからである。しかしながら、引用の出版物において、DNAは、電気泳動中に記録することができるように、臭化エチジウム(EtBr)で予め染色されていたことに留意すべきであろう。従って引用の図7は、DNA−EtBr複合体の可動性を示しているのであって、純粋DNAの可動性を示しているのではない。本発明において、DNAは常に電気泳動後に染色され、従って移行速度は、純粋DNA断片に関するものである。EtBrの結合は、DNA可動性を減少させることが知られている。さらには、約5%以上の高いゲル濃度において、EtBrは、電気泳動中にDNAから解離する。この結果、異常な移行速度と広がったバンドとが生じる。従って引用32の結果と本発明の結果とを直接比較することはできない。さらにはゲルの光学的性質に関するデータは引用には示されていない。実施例5に記載された結果に基づく場合、2.5%の架橋度は、向上した選択性を有するポリアクリルアミド−Bisゲルを得るのに最適ではない。同様にこれらの研究者らは、調査されたゲルのどれに関しても、向上した選択性、あるいはよりよい分解能について言及していないことにも注目すべきであろう。
ファーグスンプロットを用いたポリアクリルアミドゲルの細孔サイズの評価に関する研究において(引用33)、架橋度3%のポリアクリルアミド−Bisゲルに、アガロースが0.5%で添加された。アガロースを含むゲルの細孔サイズは、アガロースを含まないゲルの細孔サイズの約1/2であったと報告された。
アガロースを含むゲルの光学的性質は、アガロースを含まないゲルのものと異なるという指摘はなかった。さらには様々なゲルの分解能については扱われていなかった。DNAゲル可動性の第一の決定要因は、総アクリルアミド濃度であることが示唆されていた(引用33)。これに対して本発明の結果は、モノマー及び架橋剤に、あるい一定の割合でポリマーを添加することによって、ゲル濃度を少し増加させると、DNA分子の電気泳動可動性を大きく変えることができることを示した。
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実施例
ゲルは、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)と過硫酸ナトリウムを開始剤として用い、フリーラジカル重合により調製した。ほとんどの場合、モノマー−架橋剤溶液20mlに、TEMED45μlおよび過硫酸ナトリウム60μl(110mg/ml)を加えた。別に記載しない限り、NATをモノマーとして、Bisを架橋剤として用いた。ゲルは、厚さ3mm、長さ92mmであった。ほとんどの場合、引き続き行う生成ゲルの吸光度測定用に、重合溶液2mlアリコートを1cmの使い捨てプラスチック製キュベットに入れた。重合中に、電気泳動用ゲルをプラスチック支持物(ゲルボンドフィルム、FMC社)に共有結合にて固定した。ゲルは浸漬電気泳動モードで実験を行い、したがって、そのイオン組成は、米国特許第5,458,760号に従って調整した。電気泳動には、Guest Elchrom Scientific のSEA 2000浸漬電気泳動装置を用いた。この装置の特徴は、米国特許第5,259,943号で開示されたように、電場の直線性、緩衝液の再循環および温度制御が改善されたことである。すべての電気泳動実験は、設定時間後に自動停止するプログラム可能な電源を用いて行った。大半の実験で、泳動緩衝液の温度は、泳動緩衝液中に配置した温度プローブを用いて制御した。このプローブは循環水浴(ドイツ、Huber)に接続した。電気泳動の開始時のアンダーシュートに続く2、3℃のオーバーシュートの後、温度は通常、設定値の1℃以内で安定した。1台の電気泳動装置では、典型的に、ゲル3〜4個で実験した。別に記載しない限り、0.2〜0.4μg/mlの臭化エチジウム水溶液で染色した。同一バッチのゲルから測定したDNA泳動度の再現性は、5%以内であった。指定された組成のゲルを重合し、別の日に別の装置で実験すると、移動度の変化が5%を超える場合もあった。
実験したDNAサンプルは、複数の市販マーカー及びプラスミドダイジェストを含む。100bpラダーおよび20bpラダーはGenSura Laboratoriesより、1kbラダーはLife Technologiesより、50bpラダーはPharmaciaより入手した。プラスミドpBR322は、さらにDNA断片を与えるために、HaeIII、MspIまたはHhaIを用いて消化した。HaeIIまたはHaeIIIを用いて消化したLambda DNAも、一部のゲルに加えた。
実施例1 異なる量のヒドロキシエチルセルロースを用いたポリ(NAT)ゲル HEC(Fluka、試薬番号54290、Cellosize 40−W、中粘度)の2%溶液を、pH8のトリス−アセテート−EDTA(TAE)緩衝液に、磁気スターラを用いて一晩攪拌して溶解させた。この溶液を、多孔度2の焼結ガラスフィルタでろ過した。この溶液はやや褐色を帯びていた。ゲルの組成は、T 12%、C 2.6%であった。モノマー−架橋剤溶液のHEC濃度は、それぞれ、0.05%、0.10%、0.15%、0.20%、0.30%であった。対照ゲルは、HECを含まなかった。HECを含まないゲルの600nmでの吸光度は、0.017であり、HECを含むゲルの吸光度はそれぞれ、0.121、0.474、1.020、1.780および2.239であった。400〜800nm範囲におけるゲルのスペクトルを、図3に示す。ゲルは、20℃で4時間、10V/cmにて泳動を行った。HECを含まないゲルの場合、20bp断片による60bp断片は7.3cm、100bp断片は5.4cm、200bp断片は3.2cm、300bp断片は2.2cm、500bp断片は1.2cm、1000bp断片は0.5cm移動した。HECを0.05%含むゲルの場合、同じ断片がそれぞれ、7.1cm、5.1cm、2.7cm、1.5cm、0.4cm、0.1cm移動した。HECが0.1%の移動距離は、6.9cm、4.7cm、1.8cm、0.7cm、0.1cm、0.1cm未満であった。HECが0.15%のゲルでは、60、100、300、500bp断片の移動距離は、7.1cm、4.6cm、1.3cm、0.3cmおよび1mm未満であった。HEC0.2%における距離は、6.9cm、4.1cm、0.9cm、0.2cm、0.1cm未満であった。HEC0.3%の場合、同じDNA分子がそれぞれ、6.4cm、3.6cm、0.7cm、0.2cm、0.1cm未満であった。このHEC調製品で、さらに多くのゲルを重合した。泳動および染色後、特に、分離されたDNAの検出にSYBR Green(Molecular Probas)を用いた場合に、高いバックグラウンドがよく見られた。これは、このバックグラウンドがHECに存在する内因性DNAに由来するものであるため、実施例2で説明するようにHEC溶液の精製を行った。
実施例2 HECの精製
15mM TAE緩衝液によるHEC 1%溶液(Fluka)を、直径5cmのカラムに充填したDEAE Sepharose CL 6Bに、流速 約40ml/時で通過させた。このイオン交換剤は、最初に同じ緩衝液で平衡させた。この交換剤は、HEC調製品に存在する褐色を帯びた不純物と結合した。このHEC溶液を使用した場合、ゲルの示すバックグラウンドの染色は無視できるほどであった。しかし、DNA断片がスメアー状で特にサイズの小さい範囲を移動すると、ゲルの分解能はほぼ完全に消失した。DEAE−Sepharoseによって精製したHEC溶液を、直径5cmで、CM−Sepharose を100ml充填した別のカラムに通過させた。この2度目のクロマトグラフィーの後、精製したHECをNAT−Bis溶液に添加した。ゲルの分解能は回復した。上の結果が示すのは、DEAE−Sepharoseから放出された微量のカチオン性ポリマーが、電気泳動ゲルの分解能を失わせることが可能なことである。放出されたポリマーは、陽イオン交換剤であるCM−Sepharoseに結合する。高分子量のHEC調製品は、粘度を低下させるためにポリマー濃度を下げて、同様の方法で精製した。精製済みのHECを用いて、多くのゲルを重合した。これらのゲルは一貫して、バックグラウンドが低下した。精製HECによる、全体的に向上した選択性は、上記の精製処理を行わないHECによる選択性と類似していた。0.2%の精製HECを含むゲルは、特に選択性が大きく向上した。これらのゲルに対して、さまざまな電気泳動条件によって実験を行った。たとえば、HEC0.2%を含む T 12%、C 2.6%のゲルにより、60℃で2.5時間、10V/cmの条件で泳動を行った場合、100、200、300、400、500bp 断片の移動距離はそれぞれ、8.5cm、3.2cm、1.1cm、0.4cm、0.2cmであった。
実施例3 架橋剤の量を変化させた、同量の精製HECを含む、T 12%のポリ(NAT)ゲル
ポリ(NAT)ゲルは、0.2%のHECと、1%、1.5%、2.0%のBisで調製した。別の3種類のゲルは、モノマーおよび架橋剤濃度は同一であるが、HECを含まなかった。3個の対照ゲルの600nmでの吸光度は0.010未満であったが、0.2%のHECを含むゲルの吸光度はこれよりも高かった。Bis 1%では、0.103、1.5%では0.321、2.0%では、0.720であった。ゲルは、10V/cm、20℃で4時間電気泳動を行った。C 1%のゲルではどちらも、1kbによる154bpおよび3,054bp断片は、実質的に同じ距離だけ移動した。HECを含むC 1.5%のゲルでは、100bpラダーによる100bp断片および1kbラダーによる3,054bpバンドは、HECを含まない対照ゲルよりも約10%移動距離が短かった。HECを含むC 2.0%ゲルでは、100bp断片の移動度は、HECを含まない対照ゲルよりも約10%小さかったが、3,054bp断片は、HECを含むゲルは含まないゲルと比べて、移動距離は半分以下であった。これらすべてのゲルで、DNAバンドは、C 2.6%のゲルよりも鮮明ではなかった。HECを含むゲルについて、400nm〜800nmの可視スペクトルを記録し、架橋剤 1.5%および2.0%でキャラクタリゼーションを行った。2.0%のゲルの400nmでの吸光度は、600nmでの吸光度よりも約2倍で、800nmでは、600nmでの測定値の約半分であった。
実施例4 HECとBis以外の架橋剤を含むポリ(NAT)ゲル
1,2−ジヒドロキシエチレン−ビス−アクリルアミド(DHEBA、Flukaより購入)を架橋剤として用いて、12%のポリ(NAT)ゲル6種類を調製した。各ゲルは、Cを3%、4%、5%を含み、HECを含むものと含まないものがある。C 3%を含むゲルの600nmでの吸光度は、0.018、C 4%では0.031、5%では0.076であった。HEC 0.2%を含む各ゲルの吸光度は、0.320、0.755、1.302であった。ゲルは、10V/cm、20℃で4時間電気泳動を行った。3%では、DNAバンドは、HEC 0.2%を含むゲルのほうが鮮明であった。100bp ラダーによる200bp断片の移動距離は、HECを含むゲルよりも約30%短かった。3,054bpバンドの移動距離は、HECを含まないゲルの移動距離の半分未満であった。C 4%の場合、100bp断片は、実質的に移動距離が同じであった。3,054bp断片は、HECを含まないゲルでは明確に分解されたが、HECを含むゲルでは、ほとんど移動しないクラスターのままであった。pBR322/HaeIII消化による587bp断片は、HECを含むゲルでは約5分の1(2.4cmに対して0.5cm)の移動距離であった。C 5%では、50bpラダーによる50bp断片は、どちらのゲルも同じ距離(8.4cm)移動した。1,000bpの移動距離は、HECを含まないゲルでは0.7cmであったが、HECを含むゲルの断片は全く移動せず、すなわちDNAはサンプルのくぼみの入口前端に残留した。587bp断片は、HECを含まないゲルでは1.1cm、HECを含むゲルでは0.1cm移動した。
ピペラジン−ジ−アクリルアミド(PDA、Bio−Radより購入)を用いて、12%のポリ(NAT)ゲル6種類を重合した。各ゲルは、Cを1%、1.5%、2%を含み、HEC 0.2%を含むものと含まないものがある。HECを含まないゲルの600nmでの吸光度はそれぞれ、0.010、0.045、0.238であった。HECを含むゲルの吸光度は、0.807、1.998、2.358である。ゲルは、10V/cm、20℃で4時間電気泳動を行った。C 1%の場合は、どちらのゲルでも、100bp断片は約7cm移動した。同一のラダーによる1,000bpの断片は、HECを含まないゲルでは1.8cm移動し、HECを含むゲルではわずか0.3cmしか移動しなかった。Cが1.5%の場合、HECを含まない対照ゲルでは、100bp断片は6.3cm移動し、同じラダーによる1,000bp断片は0.8cm移動した。HECを含むゲルでは、100bp断片の移動距離は5.5cmで、1,000bp断片はサンプルのくぼみから移動しなかった。587bp断片は、約1mm移動した。Cが2%の場合、HECを含むゲルと含まないゲルでの、DNAの大型断片の相対移動度は、Cが1.5%の場合と同様であった。しかし、Cが2%の場合、HECを含むゲルのほうがバックグラウンドが強く、このシリーズの他のゲルよりもバンドが広がっていた。このゲルの可視スペクトルは、400〜800nmの全波長において、2.0を超える高い吸光度を示した。
DHEBAおよびPDAでの上の結果により、異なる架橋剤によって、より高い選択性を備えたゲルが得られることがわかった。
実施例5 NAT以外のモノマーより成る、向上した選択性を有するゲル
Bisを架橋剤として、12%のポリアクリルアミドゲルを4種類重合した。架橋度は、5%および6%で、2種類のゲルは0.2%HECを含む。HECを含まないゲルの600nmでの吸光度は、Cが5%の場合は0.019、6%の場合は0.069であった。HECを含むゲルでは、Cが5%の場合は1.507、6%の場合は2.247であった。ゲルは、10V/cm、20℃で4時間電気泳動を行った。Cが5%の場合、HECを含まないゲルでは、20bpラダーの20bp断片はゲルの底部(8.7cm)にあったが、同じラダーによる500bp断片は0.5cm移動した。該当するHECを含むゲルでは、20bp断片の移動距離は8.6cmであった。500bp断片は全く移動しなかった。実際、300bpを超える断片の移動距離は、目に見えてわかるほどではなかった。Cが6%の場合、HECを含まないゲルでは、20bp断片は8.4cm、200bp断片は0.7cm、300bp断片は0.4cm移動した。HECを含むゲルでは、20bp断片の移動距離は7.9cmであったが、200bp断片は約1mm移動した。300bp断片は、それより大きい断片と同様、全く移動しなかった。ゲルは高いバックグラウンドを有し、DNAバンドは他の3種類のゲルよりも広がっていた。
Bisで架橋した、ポリアクリルアミドの割合がさらに低いゲルも、HECを含まない溶液またはHECを0.2%含む溶液から調製した。Tが9%のゲルの架橋度は、2%、3%、4%、5%、6%であった。HECを含まないゲルの600nmにおける吸光度はそれぞれ、0.000、0.004、0.017、0.066、0.279であった。HECを含むゲルでは、0.136、0.466、1.374、2.131、2.300であった。すべてのゲルは、10V/cm、20℃で4時間電気泳動を行った。Cが2%の場合、DNA断片のサイズ範囲が200〜2000bpの範囲では、HECを含むゲルと含まないゲルの移動度の差は10%未満であった。Cが3%の場合、HECを含むゲルでは100bp断片は8.0cm移動し、1,000bp断片は1.9cm移動した。該当するHECを含まないゲルでは、100bp断片は7.5cm、1,000bp断片は0.1cm移動した。Cが4%の場合、20bpラダーの80bp断片は6.5cm移動し、500bp断片は1mm未満であった。Cが5%では、60bp断片の移動距離は8.1cm、400bp断片の移動距離は1.0cmであった。HECを含むゲルでの移動距離は、同じ2種類のDNA断片について、6.1cmおよび0.1cmであった。500bpより長いDNA分子は、全く移動しなかった。Cが6%の場合は、60bp断片は7.1cm移動し、400bp断片は0.3cm移動した。HECを含むゲルでは、60bp断片は5.6cm、400bp断片は0.2cm移動した。ゲルは強いバックグラウンドを示し、DNAバンドはやや広がっていた。可視スペクトルは、400〜800nm範囲全体に渡る(2.0を超える)高い吸光度値が特徴であった。
別のモノマーであるN−アクリロイル−1−アミノ−1−デオキシ−D−ガラクチトールも、Bisを架橋剤として重合した。T 9%とC 3%のゲルの吸光度は、600nmで0.009であった。TとCの量は同じで、分子量90,000〜105,000のヒドロキシエチルセルロース0.1%を含むゲルの吸光度は、0.873であった(供給者であるPolyscience が示す分子量、実施例2で説明したように精製したHEC)。どちらのゲルも、10V/cm、20℃で4時間電気泳動を行った。HECを含まないゲルでは、300bp断片は8.1cm、500bp断片は6.1cm、1,000bp断片は3.9cm、5,090断片は1.1cm移動した。HECを含むゲルでは、300bp断片は5.6cm、500bp断片は2.1cm、1,000bp断片は0.2cm移動したが、5,090断片はサンプルのくぼみから約3mm広がったクラスタにとどまっていた。
実施例6 2種類以上のモノマーと2種類以上の架橋剤より成る、向上した選択性を有するゲル
NATとアクリルアミドをモノマーとして、Bisを架橋剤として含む4種類の複合ゲルを調整した。2種類のゲルは、10%のNATと2%のアクリルアミド(AA)を含み、残りの2種類のゲルは、11%のNATと1%のAAを含んでいた。架橋度はすべてのゲルで2.6%であった。各複合ゲルは、0.2%の精製HECを含んでいた。10%NAT−2%AAのゲルの600nmの吸光度は、0.010であり、HECを含む該当するゲルの吸光度は1.173であった。11%NAT−1%AAゲルの吸光度は0.013で、HECを含むゲルでは1.129であった。すべてのゲルは、10V/cm、20℃で4時間電気泳動を行った。10%NAT−2%AAの対照ゲルでは、40bp断片は8.5cm、1,000bp断片は1.3cm移動した。HECを含むゲルでは、40bp断片は8.6cm移動したが、1,000bp断片の移動距離は1mmであった。11%NAT−1%AAの対照ゲルでは、60bp断片の移動距離は、7.7cm、1,000bp断片の移動距離は1.3cmであった。HECを含むゲルでは、60bp断片は7.8cm移動したが、1,000bp断片の移動距離は0.1cmであった。
2種類の架橋剤を含む複合ゲルも調製した。1つはDHEBA3%とBis1%を含む12%のポリ(NAT)がHECなしで重合させ、他の1つは0.2%のHEC存在下で重合した。HECを含まないゲルの800nmにおける吸光度は0.041で、HECを含むゲルは、1.835であった。どちらのゲルも、10V/cm、20℃で4時間電気泳動を行った。HECを含まないゲルでは、60bpDNA断片は7.6cm、500bp断片は1.6cm、1,000bp断片は0.8cm移動した。HECを含むゲルでは、60bp断片は7.4cm、500bp断片は0.1cm移動したが、1,000p断片は実質的には入口点にとどまった。
実施例7 分子量の異なるHECを含む、向上した選択性を有するゲル
使用した4種類のHEC調製品は、(製造者のPolyscienceによる表示、試薬番号05570)分子量24,000〜27,000のHEC、中粘度のHEC(Fluka、実施例2で説明したように精製)、分子量90,000〜105,000のHEC(Polyscience、試薬番号05569、精製済み)、高分子量のHEC(Polyscience、試薬番号05568)であった。最初のシリーズでは、異なるHEC調製品の量を変化させて、ポリ(NAT)9%と2.6%のBisのゲルを調製した。ゲルは、10V/cm、20℃で4時間電気泳動を行った。4種類のゲルは、HEC 24,000〜27,000を0.1%、0.2%、0.3%、0.4%含む。600nmの吸光度値はそれぞれ、0.068、0.214、0.521、0.995であったが、HECを含まない対照ゲルの吸光度は、0.023であった。対照ゲルでは、20bpラダーの140bp断片は8.3cm、500bp断片は3.4cm、1,000bp断片は1.6cm移動した。HEC(24,000〜27,000)が0.1%のゲルでは、140bp断片は7.5cm、500bp断片は2.6cm、1,000bp断片は1.3cm移動した。HEC 0.2%のゲルでは、3つの断片の移動距離は、7.4cm、2.0cm、0.8cmであった。HEC 0.3%のゲルの移動距離は、7.2cm、1.7cm、0.5cmであった。HEC 0.4%のゲルの移動距離は、6.8cm、1.5cm、0.5cmであった。HECが0.3%と0.4%のゲルは、高いバックグラウンドを示した。上記の移動距離から、ゲルの不透明度は大きく変化したが、選択性はほとんど変わらないことが明らかである。
9%のTと2.6%のCを含む3種類のゲルを、別のHEC(Fluke製)を0.1%、0.15%、0.2%含む溶液から重合した。600nmにおける吸光度は、0.389、0.883、1.509であった。140bp、500bp、1,000bp断片の移動距離はそれぞれ、8.3cm、3.4cm、1.6cmであった。HECを0.1%含むゲルの移動距離は、7.5cm、1.3cm、0.2cmであった。HECを0.15%含むゲルの移動距離は、7.0cm、0.7cm、および0.1cm未満であった。HEC 0.2%のゲルでは、140bp断片は6.7cm、500bp断片は0.5cm、800bpを超える長さのDNA断片は、移動距離が1mm未満のクラスタに残留した。
9%のTと2.6%のCを含む6種類のゲルを、分子量90,000〜105,000のHECを0.04%、0.06%、0.08%、0.10%、0.15%含む溶液で調製した。600nmにおける吸光度は、0.151、0.480、0.942、1.392、1.438、1.903であった。ゲルは、10V/cm、20℃で4時間電気泳動を行った。対照ゲルは、600nmの吸光度が0.023で、140bp DNA断片は8.3cm、300bp断片は5.1cm、500bp断片は3.4cm、1,000bp断片は1.6cm移動した。HEC 0.02%のゲルでは、140bp断片は6.6cm、500bp断片は0.4cm移動し、1,000bp断片は測定できるほど移動しなかった。HEC 0.04%のゲルでは、140bp断片は5.7cm、300bp断片は1.1cm、500bp断片は0.2cmそれぞれ移動した。HEC 0.06%のゲルでは、同じ3つの断片の移動距離は、5.0cm、0.7cm、0.1cmであった。HEC 0.08%のゲルでは、移動距離は、5.2cm、0.8cm、0.1cmであった。HEC 0.1%のゲルでは、140bp断片は7.5cm、300bp断片は2.6cm、500bp断片は0.6cmそれぞれ移動した。HEC 0.15%のゲルでは、3つの断片はそれぞれ、6.8cm、3.1cm、0.9cm移動した。このように、HEC濃度がある値を超えた場合、DNAの断片が長くなると、移動度は上昇した。20℃で見られた選択性の向上は、高温で実験したゲルにも認められた。たとえば、HEC 0.04%のゲルについて、10V/cm、55℃で2時間電気泳動を行うと、200bp DNA断片はゲルの端まで移動したが、1,000bp断片の移動距離は2mm未満であった。
高分子量のHEC(PoIyscience)を用いて、このポリマーを0.02%、0.04%、0.1%、0.2%を含む4種類のゲルを調整した。600nmで測定した吸光度値は、0.166、0.501、1.765、2.037であった。ゲルは、10V/cm、20℃で4時間電気泳動を行った。HECを含まない9%のTと2.6%のCのゲルと比べると、HECを含むゲルでは、分子が大きいほど、顕著な遅延が見られた。このように、HEC 0.02%のゲルでは、140bp、300bp、500bp、1000bpのDNA断片の移動距離はそれぞれ、8.1cm、3.8cm、1.1cm、0.1cmであった。HEC 0.04%では、移動距離は、7.4cm、2.4cm、0.4cm、および1mm未満であった。HEC 0.1%の場合、移動距離は、6.8cm、1.3cm、0.4cm、および1mm未満であった。HEC 0.2%では、140bp、300bp、500bp、1,000bpの断片の移動距離はそれぞれ、8.0cm、4.3cm、1.9cm、0.3cmであった。したがって、この場合も、HEC濃度が高くなると、移動度が上昇した。HEC 0.2%のゲルはバックグラウンドが高く、DNAバンドはやや広がっていた。
上記のT 9%、C 2.6%のポリ(NAT)ゲルに加え、異なる分子量のHECを用いて、T 12%、C 2.6%のゲルも調製した。他の架橋度のゲルも同じく重合した。これらのゲルで得られた結果は、ここでは詳細に説明しない。同様の一般的なパターンが見られたと言えば十分である。DNAの移動度は、重合溶液に存在するHECの量と関連して低下した。遅延効果は、HECポリマーの分子量が大きくなるほど顕著になった。
実施例8 向上した選択性を有する、低い割合のポリ(NAT)ゲル
Cが2.6%で、架橋剤としてBisを含む、6%のポリ(NAT)ゲル4種類を調製した。3種類のゲルは、分子量95,000〜105,000のHECを0.05%、0.10%、0.2%含んでいた。4種類のゲルはすべて、7V/cm、20℃で4時間電気泳動を行った。対照ゲルでは、20bpラダーによる220bpDNA断片は8.6cm、同じラダーの1000bp断片は3.5cm移動し、1kbラダーの3,054bp断片は1.7cm移動した。このラダーの5,090バンドは、他のバンドからはっきりと分解された。HEC 0.05%を含むゲルでは、220bp断片は7.5cm、1,000bp断片は0.5cm、3,054bp断片は0.3cm未満移動した。この断片は、他の2,000bpを超える断片と同様、前端が3mm移動したクラスタのまま分解されなかった。HEC 0.1%のゲルでは、220bp断片は7.3mm、1,000bp断片は0.9cm移動したが、3,054バンドは分解されなかった。HEC 0.2%のゲルでは、220bp断片は8.0cm、1,000bp断片は2.9cm、そして部分的に分解した3,054bp断片は1.1cm移動した。ゲル中の移動距離が長くなるほど、特に1,000bpを超えるサイズ範囲では、バンドがさらに広がった。これにより、あるレベル以上にHEC濃度が上昇すると、6% ポリ(NAT)ゲルでもDNAの移動がさらに高速になる。
実施例7では、向上した選択性を有するゲルは、乾燥重量が約9%であり、本例では、そのようなゲルの乾燥重量は6%であった。
実施例9 他のセルロースポリマーを含む、向上した選択性を有するゲル
メチルセルロース(MC、Fluka製、試薬番号64620)を0.05%、0.10%、0.15%、0.20%の濃度で含む、T 12%、C 2.6%のゲル4種類を調製した。600nmの吸光度はそれぞれ、0.225、0.757、1.533、2.053であった。ゲルは、10V/cm、20℃で4時間電気泳動を行った。MC 0.05%を含むゲルでは、60、100、300、500、1,000bpのDAN断片の移動度はそれぞれ、7.5cm、5.9cm、2.8cm、1.5cm、0.6cmであった。MC 0.1%では、同じ分子が、6.8cm、5.6cm、1.9cm、0.6cm、0.1cmであった。MC 0.15%では、各断片は、6.5cm、5.4cm、0.9cm、0.2cm、そして1mm未満であった。MC 0.2%では、60、100、300、500bpの断片の移動距離はそれぞれ、6.8cm、4,9cm、0.8cm、0.2cmであった。
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC、Aldrich製、試薬番号29,441−1)をポリマーとして用いて、T 12%、C 2.6%のゲル4種類を調製した。HPMCの濃度は、0.05%、0.10%、0.15%、0.20%であった。1cmのキュベットで重合したゲルの600nmにおける吸光度はそれぞれ、0.052、0.215、0.524、1.006であった。ゲルは、10V/cm、20℃で4時間電気泳動を行った。HPMC 0.05%のゲルでは、60、100、300、500、1,000bpのDAN断片の移動距離はそれぞれ、7.5cm、5.8cm、2.9cm、1.8cm、0.9cmであった。HMPC 0.1%の場合は、7.5cm、5.8cm、2.6cm、1.4cm、0.5cmであった。0.15%の場合は、同じ断片が、7.3cm、5.6cm、2.2cm、0.9cm、0.2cm移動した。HMPC 0.2%のゲルでは、5種類の断片は、7.4cm、5.7cm、1.7cm、0.5cm、0.1cm移動した。
実施例10 アガロースおよびアガロース誘導体を含む、向上した選択性を有するゲル
異なる濃度のアガロース(Serva、試薬番号11401)を含む溶液で、T 12%、C 2.6%のゲルを3種類重合した。最初にアガロースを、30mM TAE緩衝液に1%の濃度で沸騰させて溶解した。約60℃に冷却後、この溶液の適量を、アガロース濃度が最終的に0.1%、0.15%、0.2%となるように、モノマーおよび架橋剤溶液と混合した。3種類のゲルは、10V/cm、20℃で4時間電気泳動を行った。アガロースが0.1%の場合は、60bp DNA断片は8.3cm、100bp断片は5.5cm、200bp断片は1.2cm、300bp断片は0.2cm移動し、それ以上長いDNA分子はほとんど移動しなかった。アガロースが0.15%のゲルでは、同じ断片がそれぞれ、7.5cm、4.6cm、0.8cm、0.2cm移動した。アガロースが0.2%の場合は、60、100、200、300bp断片の移動距離はそれぞれ、8.0cm、5.0cm、1.3cm、0.4cmであった。
SeaPlaqueアガロース(FMC社)はポリマーとして、NATおよびBisと組み合わせて使用した。SeaPlaque 0.05%を含むT 12%、C 2.6%のゲルに対し、10V/cm、20℃で4時間電気泳動を行うと、60bp、100bp、200bp、300bp断片の移動距離はそれぞれ、7.3cm、5.6cm、2.6cm、0.8cmであった。SeaPlaqueが0.1%の場合の距離は、7.3cm、4.6cm、0.6cm、0.1cmであった。SeaPlaqueアガロースが0.2%のゲルでは、60bp断片は6.5cm、100bp断片は2.9cm、200bp断片は0.2cm移動した。300bpを超える大きさのDNA分子の移動距離は、1mm未満であった。
SeaPlaqueアガロースを0.2%含み、上記と同量のTとCのゲルを、15〜35℃の異なる温度の重合溶液により、6種類のバッチで重合した。重合溶液は、ゲルが生成する前に、15℃でやや不透明となった。この場合のDNAバンドは、これより高い温度で重合したゲルよりも鮮明でなかった。35℃で重合したゲルは、これより低い温度で重合したゲルよりも、透明度が高かった。すべてのゲルは、重合温度とは関係なく、すべてのゲルにおいて500bp断片の移動距離が0.3cmというように、選択性が向上した。しかし、バンドの鮮明度と選択的遅延の程度は異なり、35℃で重合したゲルで最も高い値となった。さらに、ゲルは、30〜62℃に温度を上げて電気泳動を行った。60℃で泳動を行った場合、20〜35℃で重合したゲルでは、300bpを超えるDNA断片の移動度に著しい違いが見られた。20℃で重合したゲルのほうが移動度が大きかった。10V/cm、62℃で2.5時間泳動を行った後、35℃で重合したゲルでは、pBR322/MspIの104bp断片はゲルの底部にあったが、622bp断片は約1mm移動した。
SeaPlaqueアガロースを0.2%含む、T 12%、C 2.6%のゲルを、2枚のガラス板の間(ゲル厚 0.7mm)で重合し、Pharmacia GE−2/4装置を用いて、垂直形式で泳動を行った。このゲルでも、同じ組成の浸漬ゲルと同様、向上した選択性が見られた。
別のアガロース誘導体、NuSleve(FMC社)も、T 12%、C 2.6%のポリ(NAT)−Bisゲルで、ポリマーとして使用した。重合溶液におけるNuSleveの濃度は、0.05%、0.1%、0.15%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%であった。すべてのゲルは、10V/cm、20℃で4時間電気泳動を行った。NuSleveアガロース0.05%を含むゲルでは、60bp断片は8.0cm、100bp断片は6.2cm、200bp断片は4.0cm、300bp断片は2.9cm、500bp断片は1.7cm、1,000bp断片は0.9cm移動した。NuSleve 0.1%のゲルでは、同じ断片がそれぞれ、8.2cm、6.2cm、3.8cm、1.3cm、0.6cm移動した。NuSleve 0.15%の移動距離は、8.2cm、6.0cm、3.1cm、1.7cm、0.6cm、0.2cmであった。NuSleve 0.2%では、60、100、200、300、500bp断片はそれぞれ、7.1cm、5.0cm、1.7cm、0.4cm、0.1cm移動した。NuSleve 0.3%の場合、60、100、200bp断片の移動距離はそれぞれ、6.8cm、3.5cm、0.4cmであった。これより大きいDNA分子すべての移動距離は、0.2cm未満であった。NuSleve 0.4%では、3種類のDNA分子の移動距離は、6.6cm、3.0cm、0.2cmであり、NuSleve 0.5%ではそれぞれ、5.8cm、2.3cm、0.1cmであった。
電気泳動を温度を上げて行うと、SeaPlaqueおよびNuSleveを含むゲルの挙動に著しい違いが見られた。NuSleveを含むゲルでは、NuSleve 0.3%のゲルにおいて、10V/cm、65℃で3時間泳動を行うと、500bp断片が2.7cm移動したように、大きい分子の遅延が著しく低下した。
第3のアガロース誘導体、SeaPrep(FMC社)も、NATおよびBisと組み合わせて使用した。T 12%、C 2.6%のゲルは、SeaPrepアガロースを0.05%、0.1%、0.15%、0.2%、0.25%、0.3%、0.4%含んでいた。これらのゲルは、10V/cm、20℃で4時間電気泳動を行った。SeaPrep 0.05%のゲルでは、60、100、200、300、500、1,000bp DNA断片の移動距離はそれぞれ、8.4cm、6.6cm、4.1cm、2.9cm、1.6cm、0.7cmであった。SeaPrep 0.1%のゲルでは、同じ断片が8.2cm、6.1cm、3.4cm、1.9cm、0.7cm、0.2cm移動した。SeaPrep0.15%では、移動距離は8.0cm、5.8cm、2.5cm、1.0cm、0.3cm、および0.1cm未満であった。SeaPrep 0.2%では、60、100、200、300bp断片がそれぞれ、7.7cm、5.4cm、1.7cm、0.5cm移動した。0.25%ではそれぞれ7.5cm、4.9cm、1.2cm、0.3cmであった。0.3%での移動距離は、7.4cm、4.6cm、0.9cm、0.3cmであり、0.4%では、7.1cm、4.3cm、0.9cm、0.3cmであった。この0.4%のゲルでは、DNAバンドがやや広がり、高いバックグラウンドを示した。
実施例11 他の多糖類を含む、向上した選択性を有するゲル
分子量500,000のデキストラン(Fluka、試薬番号31392)の量を変化させて、T 12%、C 2.6%のゲルを4種類重合した。ゲルは、デキストランを0.4%、0.6%、0.8%、1.0%含む。通常通り1cmのキュベットで重合したゲルの、600nmでの吸光度はそれぞれ、0.345、0.779、1.639、2.167であった。ゲルは、10V/cm、20℃で4時間電気泳動を行った。デキストラン0.4%のゲルでは、60、100、200、500、1,000bp断片の移動距離はそれぞれ、7.3cm、5.2cm、2.3cm、0.4cm、および1mm未満であった。デキストラン0.6%では、7.2cm、4.9cm、1.9cm、0.3cm、0.1cm未満であった。デキストラン0.8%では、同じ断片が、6.9cm、4.5cm、1.6cm、0.3cm、0.1cm未満移動した。デキストラン1.0%では、各断片が6.7cm、4.4cm、1.8cm、0.4cm、0.1cm移動した。このように、デキストラン1.0%のゲルでは、300〜1,000bp断片の移動度がわずかに上昇した。このゲルではDNAバンドがやや広がり、バックグラウンドも顕著であった。
イナゴマメガム(Sigma製、試薬番号G−0753)も、T 12%、C 2.6%のNAT−Bisゲルの重合時に存在するポリマーとして使用した。未精製のポリマーは0.5%の濃度で、沸騰した30mM TAE緩衝液に部分的に溶解させ、濁った溶液を焼結ガラスフィルタ(多孔度4)で濾過した。透明な濾液は、放置すると再び不透明になった。ゲル中のこのポリマーの濃度は、溶解および濾過時のロスがないという前提で、0.02%、0.03%、0.05%、0.1%、0.15%であった。ゲルの600nmにおける吸光度はそれぞれ、0.076、0.147、0.372、1.240、1.811であった。ゲルは、10V/cm、20℃で4時間電気泳動を行った。T 12%、C 2.6%の対照ゲルでは、60、100、200、300、500、1,000bpのDNA断片はそれぞれ、8.0cm、6.2cm、4.2cm、3.1cm、1.9cm、1.0cm移動した。イナゴマメガム 0.02%では、同じ断片が7.5cm、5.7cm、3.2cm、1.6cm、0.3cm、0.1cm未満移動した。0.03%での移動距離は、7.4cm、5.5cm、2.7cm、1.0cm、0.1cm、0.1cm未満であった。イナゴマメガム 0.05%では、規定のDNA断片は、8.4cm、6.4cm、3.1cm、1.1cm、0.2cm、0.1cm未満であった。このゲルは、特に200bp未満の断片では、バックグラウンドの染色が顕著で、DNAバンドはやや広がっていた。イナゴマメガムを0.1%含むゲルでは、300bp未満のDNAバンドはすべて大きく広がり、ゲルの分解能は非常に低下した。500bpを超えるDNA断片はほとんど移動せず、バックグラウンドは強度であった。イナゴマメガム0.15%では、約300bp未満の範囲では、分解能は完全に消失し、すべてのバンドは広がり、バックグラウンドは強度であった。500bp断片は、0.3cm移動した。
もうひとつのガラクトマンナン(カルビン型、Senn Chemicals製、試薬番号24024)もテストした。この多糖類は、30mM TAE緩衝液中で、0.2%の濃度で煮沸して溶解させた。ガラクトマンナンをそれぞれ0.01%、0.02%、0.03%、0.04%含む、T 12%、C 2.6%のゲルを4種類調製した。4種類のゲルの600nmにおける吸光度はそれぞれ、0.079、0.218、0.431、0.697であった。ゲルは、10V/cm、20℃で4時間電気泳動を行った。対照ゲルは、吸光度が0.023で、60bp断片が7.1cm、100bp断片が5.2cm、200bp断片が3.0cm、500bp断片が1.1cm移動した。ガラクトマンナン0.01%のゲルでは、同じ断片が7.0cm、4.9cm、2.2cm、0.1cm移動した。0.02%での移動距離は、6.9cm、4.6cm、1.2cm、0.1cm未満であった。0.03%では、断片は6.8cm、4.2cm、0.8cm、1mm未満移動した。ガラクトマンナン0.04%の場合、60、100、200bp断片はそれぞれ、6.9cm、4.1cm、0.7cm移動した。
実施例12 2種類以上のポリマーを含む、向上した選択性を有するゲル
精製したHEC(Fluka)およびSeaPlaqueアガロースの混合物を用いて、T 12%、C 2.6%のゲル6種類を重合した。HECおよびアガロースの最終濃度はそれぞれ、0.15%と0.1%になるようにした。ひとつのゲルは、10V/cm、40℃で3時間電気泳動を行った。これらの条件では、60bp DNA断片はゲル外に移動し、80、100、200、300bp断片の移動距離はそれぞれ、7.6cm、5.8cm、1.2cm、0.3cmであった。500bpより大きい断片は、ほとんど移動しなかった。もうひとつのゲルは、10V/cm、60℃で2.5時間電気泳動を行った。100、200、300、500bp断片はそれぞれ、8.5cm、2.8cm、0.9cm、0.2cm移動した。pBR322/HhaI消化物では、131および132断片が分離された。
実施例13
ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)を含むゲル
分子量の異なるPEGの調製品2種類をテストした。PEGの分子量は4,000(Merck)と8,000(Sigma)であった。T 12%、C 2.6%のゲルとPEG 4,000では、PEG濃度を上昇させても、600nmの吸光度はほとんど変化しなかった。2%PEGを用いたゲルの吸光度は、0.073であった。同じ割合のTとCで、PEG 8,000を2%含むゲルの吸光度は、0.400であった。どちらのゲルも、PEGを含まないゲルとともに、10V/cm、20℃で4時間電気泳動を行った。PEG 4,000ゲルの100、200、500、1,000bp断片の移動距離はそれぞれ、7.2cm、5.0cm、2.4cm、1.2cmであった。PEG 8,000を2%含むゲルでは、同じ断片が、7.7cm、5.6cm、2.7cm、1.3cm移動した。DNAバンドは、PEG 8,000を2%含むゲルのほうが広がっており、このゲルは高いバックグラウンドを示した。対照ゲルの移動距離は、7.0cm、4.9cm、2.4cm、1.3cmであった。このように、DNA断片の移動距離は、PEGを重合溶液に加えた後に、わずか10〜20%しか変化しなかった。
分子量360,000のPVP(Sigma)の存在下で、T 12%、C 2.6%のゲルを重合した。ひとつのゲルは0.2%のPVPを、もう一方のゲルは0.5%のPVPを含有していた。肉眼ではゲルの不透明度に変化は見られなかった。ゲルは、10V/cm、20℃で4時間電気泳動を行った。PVP 0.2%では、100、200、500、1,000bp断片はそれぞれ、7.0cm、4.8cm、2.2cm、1.2cm移動した。0.5%での移動距離は、5.9cm、4.1cm、1.9cm、1.0cmであった。このように、PVP 0.5%のゲルにわずかな遅延効果があったが、大小のDNA断片が両方とも同程度遅延されたため、選択性は向上しなかった。PVP 0.5%のゲルでは、ブロムフェノールブルー追跡用色素は、対照ゲルと比べて約1/3しか移動しなかった。
分子量22,000のポリビニルアルコール(PVA)(Fluka、試薬番号81382)を、濃度が0.2%、0.4%、0.6%、0.8%となるように、T 12%、C 2.6%のゲルに添加した。対照ゲルの600nmにおける吸光度は0.011であり、PVAを含むゲルは、PVAの少ない順に、0.017、0.026、0.042、0.064であった。400nmでは、同じ5種類のゲルの吸光度値はそれぞれ、0.059、0.081、0.119、0.181、0.271であった。800nmでの測定値は、0.005、0.007、0.010、0.016、0.024であった。対照ゲルと比較すると、PVAを含むゲルすべての吸光度は高くなっているが、興味深いことに、400nmと800nmの吸光度の比は、すべてのゲルで実質的には変わらなかった。他のポリマーの場合は、この比はポリマー濃度とともに減少した。ゲルは、10V/cm、20℃で4時間電気泳動を行った。対照ゲルでは、60bp断片は7.0cm、1,000bp断片は1.1cm移動した。PVA 0.2%では、これら2種類の断片はそれぞれ、6.9cm、1.2cm移動した。PVA 0.4%では、移動距離は、6.9cmおよび1.4cmであった。0.6%ではそれぞれ、6.9cmおよび1.6cmであった。PVA 0.8%のゲルでは、60bp断片は7.2cm、1,000bp断片は1.9cm移動した。このように、PVAは、600nmでの吸光度が対照ゲルより高いが、ゲルの選択性を低下させた。PVAを含むゲルのほうが、DNAバンドも広がっていた。
実施例14 ポリアクリルアミドを含む、向上した選択性を有するゲル
分子量10,000のポリアクリルアミド(PAA)(Polyscience、試薬番号17271)を加えて、T 12%、C 2.6%のゲルを重合した。このポリマーは、0.05%、0.10%、0.15%、0.2%の濃度で使用した。キュベットで重合したゲルの600nmでの吸光度はそれぞれ、0.320、0.862、1.375、1.732であった。ゲルは、10V/cm、20℃で4時間電気泳動を行った。PAAを0.05%含むゲルでは、60、100、200、300、500bp断片はそれぞれ、6.6cm、4.5cm、1.0cm、0.2cmおよび0.1cm未満であった。PAA 0.1%では、断片は6.7cm、4.1cm、0.7cm、0.2cmおよび0.1cm未満移動した。PAA 0.15%では、断片は、6.7cm、3.9cm、0.6cm、0.1cm移動した。PAA 0.2%の移動距離は、7.0cm、4.2cm、1.0cm、0.3cmであった。このように、移動度は、PAA 0.2%を含むゲルのほうが、0.15%含むゲルよりも大きかった。
実施例15 ポリマーがゲルと同じモノマーを含む、向上した選択性を有するゲル
ポリ(NAT)ゲルは、5%NATを加えた80mM TAE緩衝液100mlを、アルゴン雰囲気下で約45分攪拌しながら重合させて調製した。生成したポリマーは、NATとBisを含む溶液に添加した。あるシリーズでは、最初の濃度は NATが9%、Cが2.6%であり、上記の重合が100%完了したという前提で、溶液には0.5%、1%、2%のポリ(NAT)も含まれていた。対照用として、NATモノマーをポリマーの代わりにそれぞれ、0.5%、1%、2%添加した。したがって、最終的なTの値は、9.5%、10%、11%であった。Cの値は、添加したモノマーまたはポリマーが架橋剤を希釈するにつれて、減少した。ポリ(NAT)を含まないゲルの600nmでの吸光度は無視しうる値であったが、ポリ(NAT)が0.5%のゲルの吸光度は1.063、1%のゲルは1.922、2%の場合は2.093であった。すべてのゲルは、10V/cm、20℃で4時間電気泳動を行った。ポリ(NAT)を含まない9.5%のゲルでは、120bp断片は8.7cm、220bp断片は6.5cm、1,000bp断片は2.3cm移動したが、5090bp断片は0.8cm移動した。ポリ(NAT)0.5%を含む9.5%のゲルは、120bp断片は5.2cm、220bp断片は1.3cm、500bpを超える大きさの分子はすべてほとんど移動しなかった(1mm未満)。ポリマーを添加しない、T が10%のゲルで測定した移動距離は、Tが9.5%のゲルよりも少しだけ小さく、Tが11%の場合はさらに少し減少した。ポリ(NAT)を1%添加したTが10%のゲルでは、DNA断片の移動度は、ポリ(NAT)0.5%を含む9.5%のゲルよりも大きかった。たとえば、120bp断片は5.8cm移動し、220bp断片は3.1cm移動した。500bpのDNA分子は約0.7cm移動した。ポリ(NAT)を2%添加したゲルの場合は、すべてのDNA断片の移動度がさらに増大し、1,000bp断片は約1.3cm移動した。ポリマーを1%および2%添加したゲルは、バックグラウンドが高く、DNAバンドは、ポリ(NAT)を0.5%添加したゲルよりも広がった。
実施例16 変性条件下で電気泳動を行った、向上した選択性を有するゲル
ポリ(NAT)ゲルは、6Mの尿素の存在下で重合した。精製HEC(Fluka製)を0%、0.15%、0.2%、0.3%、0.4%用いて、T 12%、C 2.6%のゲルを5種類重合した。この5種類のゲルの600nmでの吸光度はそれぞれ、0.000、0.050、0.105、0.295、0562であった。ゲルは、10V/cm、55℃で2時間、6Mの尿素を含むTAE緩衝液中で電気泳動を行った。これらの泳動条件下で、大半のDNA断片は、種々のメーカーの特性バンドパターンで判定されたように、二本鎖のままであった。あるDNA断片は部分的に、また、ある断片は完全に変性していた。これは、ある断片がバンドがさらに広がっていたことと、あるバンドが通常の位置になかったことから判定された。たとえば、1kbラダーでは、1,018bp断片、2,038およびさらに分子量の大きい断片は、大部分が消失した。それらの場所には、数ミリメートルしか移動していないスメアーが見られた。このラダーの517bp断片も消失した。MspI、HaeIII、HhaIで消化したpBR332消化物では、新しい鮮明なバンドが高分子量領域に出現した。これらのバンドの同定は行われなかった。HECを含まないゲルでは、100bpラダーの100bp断片は5.9mm、500bp断片は2.5cm、1,000bp断片は1.4cm移動した。HECを0.15%含むゲルでは、これらの3種類の断片の移動距離はそれぞれ、5.9cm、2.4cm、1.3cmであった。HEC 0.2%では、移動距離は、5.7cm、2.1cm、1.1cmであった。HEC 0.3%では、断片は、5.4cm、1.4cm、0.4cm移動した。HEC 0.4%を含むゲルでは、3種類のゲルはそれぞれ、5.3cm、0.8cm、0.3cm移動した。HEC 0.3%および0.4%のゲルにおける1,000bpバンドの同定は、ラダーに複数の新しいバンドが出現したため、確実ではなかった。
HEC(Fluka)0.2%を含む、さらに架橋度の大きい4種類のT 12%のゲルも同様に重合した。2種類のゲルでの架橋度は3.4%で、残りの2種類のゲルでは、4.0%であった。HECを含まない場合、どちらのCの値においても、ゲルの600nmでの吸光度は無視し得る値であった。吸光度は、Cが3.4%の場合は0.263、4.0%の場合は0.483であった。ゲルは、10V/cm、55℃で2時間、6Mの尿素を含むTAE緩衝液中で電気泳動を行った。Cが3.4%の対照ゲルでは、1kbラダーの75bp断片は5.9cm、506bp断片は1.6cm、1,636bp断片は0.6cm移動した。HECを含むゲルにおいて、3種類の断片はそれぞれ、5.7cm、0.3cm、0.1cm移動した。Cが4.0%の場合、対照ゲルでは、75bp、506bp、1,636bpのDNA断片の移動距離はそれぞれ、5.2cm、1.1cm、0.4cmであった。HECを含むゲルでは、75bp断片は4.2cm移動したが、506bp、1,636bp断片の移動距離は、1mm未満であったため測定できなかった。
実施例17 ゲル濾過により分別したHECを用いて調製した、向上した選択性を有するゲル
直径5mmのカラムにSepharose CL 6B 500mlを満たし、30mM TAE中で平衡させた。実施例2で説明したように精製した1%HEC(Fluka)のサンプル50mlをこのカラムに注ぎ、約100ml/時間の流速でクロマトグラフィを行った。約11.5mlのフラクションを収集した。代わりのフラクションは、オルシノール−硫酸法によって糖度を分析した。溶出液はフラクション18から糖が陽性で、それ以降検査したフラクション42まですべてに糖が検出された。フラクション中のHEC濃度は、開始時のHEC溶液にて作成した標準曲線より決定した。異なるフラクションのHECを用いて、T 12%、C 2.6%のゲルを3種類調製した。最初のゲルにはフラクション18および19、2番目のゲルにはフラクション30および31、3番目のゲルにはフラクション40および41を使用した。糖測定に基づく、3種類のゲル中のHEC最終濃度はそれぞれ、0.08%、0.19%、0.08%であった。600nmにおける吸光度は、1.019、0.455、0.028であった。ゲルは、10V/cm、20℃で4時間電気泳動を行った。フラクション18−19によるHECを含むゲルでは、60、100、200、500および1,000bp断片はそれぞれ、7.8cm、5.6cm、2.3cm、0.1cm、0.1cm未満移動した。フラクション30および31によるHECを含むゲルでは、同じ分子の移動距離は、7.8cm、6.1cm、3.8cm、1.1cm、0.3cmであった。フラクション40および41によるHECを含むゲルでは、同じDNA断片が、7.8cm、6.2cm、4.2cm、2.1cm、1.1cm移動した。このように、HECポリマーの分子量が減少するにつれ、選択性は低下した。
前記発明は、かなり詳細に説明した。実験結果は、現在の全結果および先行技術に、最も矛盾しないと考えられる方法で解釈したが、この解釈はあらゆる点で限定されないものと考えるべきである。以下の請求の範囲で説明するように、発明の概念および範囲から外れずに、利用される手順および材料を修正および変更可できることは、当業者にとっては明白なことである。

Claims (90)

  1. 少なくとも一つのビニルモノマー、前記モノマーおよび前記モノマーのポリマーと反応性で前記ポリマーを架橋させるのに充分である少なくとも一つのビニル基を含む架橋剤、および少なくとも一つの予備形成ポリマーを混合させた状態で、前記モノマーおよび前記架橋剤をフリーラジカル重合させて生じるフリーラジカル重合反応生成物を含んでなる、高分子量分子の電気泳動分離において用いるのに適したゲルであって、前記モノマーおよび前記架橋剤の合計濃度は少なくとも約4%(w/v)であり、前記予備形成ポリマーの濃度が約0.005〜2%(w/v)であり;
    100bp〜3,000bpの範囲の鎖長を有し電気泳動移動距離が測定可能であるDNA断片のうち、最も大きなDNA断片の電気泳動移動速度に対する最も小さなDNA断片の電気泳動移動速度の比が、前記予備形成ポリマーを含まないこと以外は前記ゲルと同じ濃度および組成のゲル中における同じ条件下での、前記最も大きなDNA断片の電気泳動移動速度に対する前記最も小さなDNA断片の電気泳動移動速度の比と比べて少なくとも5倍大きくなる、大きなDNA断片の電気泳動移動速度を選択的に遅延させるゲル。
  2. 一つのモノマーを含む請求項1に記載のゲル。
  3. モノマーがN−アクリロイル−トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンである請求項2に記載のゲル。
  4. モノマーがアクリルアミドである請求項2に記載のゲル。
  5. モノマーがN−アクリロイル−1−アミノ−1−デオキシ−D−ガラクチトールである請求項2に記載のゲル。
  6. 2種以上のモノマーを含む請求項1に記載のゲル。
  7. モノマーがアクリルアミドおよびN−アクリロイル−トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンである請求項6に記載のゲル。
  8. 一つの架橋剤を含む請求項1に記載のゲル。
  9. 架橋剤がN,N’−メチレン−ビス−アクリルアミドである請求項8に記載のゲル。
  10. 架橋剤がジヒドロキシエチレン−ビス−アクリルアミドである請求項8に記載のゲル。
  11. 架橋剤がピペラジンジアクリルアミドである請求項8に記載のゲル。
  12. 2種以上の架橋剤を含む請求項1に記載のゲル。
  13. 架橋剤がN,N’−メチレン−ビス−アクリルアミドおよびジヒドロキシエチレン−ビス−アクリルアミドである請求項12に記載のゲル。
  14. 一つのポリマーを含む請求項1に記載のゲル。
  15. ポリマーが多糖類である請求項14に記載のゲル。
  16. ポリマーがヒドロキシエチルセルロースである請求項15に記載のゲル。
  17. ポリマーがヒドロキシプロピルメチルセルロースである請求項15に記載のゲル。
  18. ポリマーがメチルセルロースである請求項15に記載のゲル。
  19. ポリマーがアガロースである請求項15に記載のゲル。
  20. ポリマーがヒドロキシエチルアガロースである請求項15に記載のゲル。
  21. ポリマーがガラクトマンナンである請求項15に記載のゲル。
  22. ポリマーがデキストランである請求項15に記載のゲル。
  23. 前記予備形成ポリマーが多分散性を有し、前記ポリマーがその多分散性を低下させるのに充分な条件下において分別されたものである請求項15に記載のゲル。
  24. 分別法がゲル濾過である請求項23に記載のゲル。
  25. ポリマーがヒドロキシエチルセルロースである請求項23に記載のゲル。
  26. 2種以上のポリマーを含む請求項1に記載のゲル。
  27. ポリマーがヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシエチルアガロースである請求項26に記載のゲル。
  28. 合成ポリマーを含む請求項1に記載のゲル。
  29. ポリマーがポリアクリルアミドである請求項28に記載のゲル。
  30. ポリマーがポリ−N−アクリロイル−リス(ヒドロキシメチル)アミノメタンである請求項28に記載のゲル。
  31. 予備形成ポリマーの濃度が約0.005〜2%(w/v)およびビニルモノマーとビニル基を含む架橋剤との合計濃度が少なくとも4%(w/v)となるような量で少なくとも一つのビニルモノマー、少なくとも一つのビニル基を含む架橋剤および少なくとも一つの予備形成ポリマーを相互溶媒に溶解することからな工程;および
    ゲルを形成するのに充分な前記ビニル基を介して前記溶液中で前記モノマーおよび前記架橋剤をフリーラジカル重合および架橋する工程;
    を含んでなる高分子量分子の電気泳動分別において用いるのに適したゲルを調製する方法であって、
    前記重合は、約100bp〜3,000bpの範囲の鎖長を有し電気泳動距離が測定可能であるDNA断片のうち、最も大きなDNA断片の電気泳動移動速度に対する最も小さなDNA断片の電気泳動移動速度の比が、前記予備形成ポリマーを含まないこと以外は前記ゲルと同じ濃度および組成のゲル中における同じ条件下での、前記最も大きなDNA断片の電気泳動移動速度に対する前記最も小さなDNA断片の電気泳動移動速度の比と比べて少なくとも5倍大きくなる、大ききなDNA断片の電気泳動移動速度を選択的に遅延させるゲルを形成するのに充分な条件下に行う方法。
  32. ゲルが一つのモノマーを含む請求項31に記載の方法。
  33. モノマーがN−アクリロイル−トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンである請求項32に記載の方法。
  34. モノマーがアクリルアミドである請求項32に記載の方法。
  35. モノマーがN−アクリロイル−1−アミノ−1−デオキシ−D−ガラクチトールである請求項32に記載の方法。
  36. ゲルが2種以上のモノマーを含む請求項31に記載の方法。
  37. モノマーがアクリルアミドおよびN−アクリロイル−トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンである請求項36に記載の方法。
  38. ゲルが一つの架橋剤を含む請求項31に記載の方法。
  39. 架橋剤がN,N’−メチレン−ビス−アクリルアミドである請求項38に記載の方法。
  40. 架橋剤がジヒドロキシエチレン−ビス−アクリルアミドである請求項38に記載の方法。
  41. 架橋剤がピペラジンジアクリルアミドである請求項38に記載の方法。
  42. ゲルが2種以上の架橋剤を含む請求項31に記載の方法。
  43. 架橋剤がN,N’−メチレン−ビス−アクリルアミドおよびジヒドロキシエチレン−ビス−アクリルアミドである請求項42に記載の方法。
  44. ゲルが一つのポリマーを含む請求項31に記載の方法。
  45. ポリマーが多糖類である請求項44に記載の方法。
  46. ポリマーがヒドロキシエチルセルロースである請求項45に記載の方法。
  47. ポリマーがヒドロキシプロピルメチルセルロースである請求項45に記載の方法。
  48. ポリマーがメチルセルロースである請求項45に記載の方法。
  49. ポリマーがアガロースである請求項45に記載の方法。
  50. ポリマーがヒドロキシエチルアガロースである請求項45に記載の方法
  51. ポリマーがガラクトマンナンである請求項45に記載の方法。
  52. ポリマーがデキストランである請求項45に記載の方法。
  53. 前記ポリマーの多分散性を低下させるのに充分な条件下に、前記予備形成ポリマーを前記モノマーおよび前記架橋剤に組み合わせる前に、前記予備形成ポリマーを多分散させる工程をさらに含む請求項45に記載の方法。
  54. 分別法がゲル濾過である請求項53に記載の方法。
  55. ポリマーがヒドロキシエチルセルロースである請求項53に記載の方法。
  56. ゲルが2種以上のポリマーを含む請求項31に記載の方法。
  57. ポリマーがヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシエチルアガロースである請求項56に記載の方法。
  58. ゲルが合成ポリマーを含む請求項31に記載の方法。
  59. ポリマーがポリアクリルアミドである請求項58に記載の方法。
  60. ポリマーがポリ−N−アクリロイル−トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンである請求項58に記載のゲル。
  61. 略DNAの寸法および電荷の大きな分子を電気泳動分別する方法であって、
    少なくとも一つのビニルモノマー、前記モノマーおよび前記モノマーのポリマーと反応性で前記ポリマーを架橋させるのに充分である少なくとも一つのビニル基を含む架橋剤、および少なくとも一つの予備形成ポリマーの混合物であって、前記モノマーおよび前記架橋剤の合計濃度は少なくとも約4%(w/v)であり、前記予備形成ポリマーの濃度が約0.005〜2%(w/v)である混合物中で前記モノマーおよび前記架橋剤をフリーラジカル重合させることにより生じるフリーラジカル重合反応生成物を含んでなるゲルを形成する工程;
    前記ゲルを電気泳動通過手段内に形成する工程;
    前記通過手段の一端に前記分子の混合物を配する工程;および
    前記分子の混合物を、前記分子の分子量の係わる距離だけ前記分子を前記ゲルを通過させるのに充分な温度で充分な時間、電気泳動電流および電圧に付する工程;
    を含み、
    前記ゲルは、約100bp〜3,000bpの範囲の鎖長を有し電気泳動移動距離が測定可能であるDNA断片のうち、最も大きなDNA断片の電気泳動移動速度に対する最も小さなDNA断片の電気泳動移動速度の比が、前記予備形成ポリマーを含まないこと以外は前記ゲルと同じ濃度および組成のゲル中における同じ条件下での、前記最も大きなDNA断片の電気泳動移動速度に対する前記最も小さなDNA断片の電気泳動移動速度の比と比べて少なくとも5倍大きくなる、大きなDNA断片の電気泳動移動速度を選択的に遅延させるゲルである、方法。
  62. ゲルが一つのモノマーを含む請求項61に記載の電気泳動的方法。
  63. モノマーがN−アクリロイル−トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンである請求項62に記載の電気泳動的方法。
  64. モノマーがアクリルアミドである請求項62に記載の電気泳動的方法。
  65. モノマーがN−アクリロイル−1−アミノ−1−デオキシ−D−ガラクチトールである請求項62に記載の電気泳動的方法。
  66. ゲルが2種以上のモノマーを含む請求項61に記載の電気泳動的方法。
  67. モノマーがアクリルアミドおよびN−アクリロイル−トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンである請求項66に記載の電気泳動的方法。
  68. ゲルが一つの架橋剤を含む請求項61に記載の電気泳動的方法。
  69. 架橋剤がN,N’−メチレン−ビス−アクリルアミドである請求項68に記載の電気泳動的方法。
  70. 架橋剤がジヒドロキシエチレン−ビス−アクリルアミドである請求項68に記載の電気泳動的方法。
  71. 架橋剤がピペラジンジアクリルアミドである請求項68に記載の電気泳動的方法。
  72. ゲルが2種以上の架橋剤を含む請求項61に記載の電気泳動的方法。
  73. 架橋剤がN,N’−メチレン−ビス−アクリルアミドおよびジヒドロキシエチレン−ビス−アクリルアミドである請求項72に記載の電気泳動的方法。
  74. ゲルが一つのポリマーを含む請求項61に記載の電気泳動的方法。
  75. ポリマーが多糖類である請求項74に記載の電気泳動的方法。
  76. ポリマーがヒドロキシエチルセルロースである請求項75に記載の電気泳動的方法。
  77. ポリマーがヒドロキシプロピルメチルセルロースである請求項75に記載の電気泳動的方法。
  78. ポリマーがメチルセルロースである請求項75に記載の電気泳動的方法。
  79. ポリマーがアガロースである請求項75に記載の電気泳動的方法。
  80. ポリマーがヒドロキシエチルアガロースである請求項75に記載の電気泳動的方法。
  81. ポリマーがガラクトマンナンである請求項75に記載の電気泳動的方法。
  82. ポリマーがデキストランである請求項75に記載の電気泳動的方法。
  83. 前記モノマーおよび前記架橋剤と混合する前に、前記ポリマーの多分散性を低下させるのに充分な条件下に、前記予備形成ポリマーを分別させておく請求項75に記載の電気泳動的方法。
  84. 分別法がゲル濾過である請求項83に記載の電気泳動的方法。
  85. ポリマーがヒドロキシエチルセルロースである請求項83に記載の電気泳動的方法。
  86. ゲルが2種以上のポリマーを含む請求項61に記載の電気泳動的方法。
  87. ポリマーがヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシエチルアガロースである請求項86に記載の電気泳動的方法。
  88. ゲルが合成ポリマーを含む請求項61に記載の電気泳動的方法。
  89. ポリマーがポリアクリルアミドである請求項88に記載の電気泳動的方法。
  90. ポリマーがポリ−N−アクリロイル−トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンである請求項88に記載の電気泳動的方法。
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