JP4030227B2 - キャンドモータポンプ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、蒸気圧の高い液であってもキャンドモータ室内で沸騰せずに液体のまま運転できるモータ付きポンプに関し、特に加圧サーキュレーション型のスラストの増加を抑制したキャンドモータポンプに関する。
【0002】
【従来の技術】
図6に示すように、従来のキャンドモータポンプ1においては、一段目の低圧側ポンプ60をキャンドモータポンプ1の一方の端に配置し、二段目の高圧側ポンプ70をキャンドモータの反対側の端に配置している。また、キャンドモータポンプ1の取り扱う液には蒸気圧が高いものがあるため、液に蒸気圧を上回る高い圧力をかけて沸騰を防ぐ必要がある。そこで、加圧サーキュレーション型のキャンドモータポンプ1はロータ部90における取り扱い液の圧力を保つようにし、高圧側の液の一部をベアリング80,82の潤滑とモータ冷却のためキャンドモータのロータ部90に導き、さらにその液を低圧側に戻すようにしている。
【0003】
この場合、二段目(高圧側)の軸端に一段目(低圧側)の圧力が作用し一段目の方向に軸スラストが発生する。さらに、キャンドモータのロータ部90の狭い隙間をかなりの量の液が流れるため、ロータ部90での前後差圧によりロータ部90でやはり一段目の方向に軸スラストTが発生する。
【0004】
近年、さらに装置が小型化したり、環境問題で別のプロセス液を使用したりし、このような分野においてさらに小流量で高揚程のポンプが望まれるようになっている。このような場合、揚程は一段当たり数百メートルを超えるようになり、一段目と二段目の差圧が更に大きくなっている。この差圧がキャンドモータ部のロータ部90を流れる内部サーキュレーション量を決めるため、一段目に向かう軸スラスト力がさらに増加する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
この軸スラスト力の増加を抑制するため一段目インペラにバランスホールを開けることがある。しかし、バランスホールが低圧側の一段目インペラの吸込側とロータ部90とのバイパス流路となることとなる。よって、ロータ部90の圧力低下を招く。本来加圧サーキュレーションでロータ部90の圧力を保たねばならないが、軸スラストのアンバランスを避けるため、本来の目的であるロータ部90の圧力をある程度犠牲にせざるをえない。よって、キャンドモータポンプの取り扱い液が沸騰することがある。
【0006】
さらに、サーキュレーション量が増えることによりモータ部での自己循環量が増え、モータ部での効率低下を招く。さらに、揚程を増加させるためには、モータを大出力とすることが必要になる。そこで、小出力モータでは問題がなかった起動、停止時の過渡時において発生する残留軸スラストが大きくなり問題である。起動時などは、特に気泡がポンプから送り出される液に混入しており、これが予期せぬ軸スラストのアンバランスを発生させることもわかった。
【0007】
そこで、本発明は、たとえ過渡時であっても軸スラストを抑制(小さく)し、取り扱い液の沸騰を防止する対向式多段インペラを備えた加圧サーキュレーションとなっているキャンドモータポンプを提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、インペラと、インペラが液体を吐出する吐出口と、インペラが液体を吸い込む吸込口とを有し、対向するインペラ室と、一方側に配置された前記インペラ室の前記吐出口と他方側に配置された前記インペラ室の前記吸込口を連結する主流路と、前記インペラを連結する回転軸と、前記インペラの間に配置され、前記回転軸を回転可能に支持し、前記回転軸とはすきまのある、対向した軸受けと、前記回転軸にはまりあい前記軸受けの間に配置されたロータと、前記ロータを囲み前記ロータとすきまがあるステータとを有するロータ部とを備えたキャンドモータポンプにおいて、前記他方側の前記インペラ室に吸込まれた液体の一部が、前記回転軸と前記他方側の前記軸受けのすきまから、前記ロータと前記ステータのすきま、および前記回転軸と前記一方側の前記軸受けのすきまを通って、前記一方側の前記インペラ室に流れ込み、かつ、前記液体の一部の流路の出口には、絞り機構が設けられていることを特徴とする。
【0009】
回転軸には、他方側のインペラ室から一方側へのインペラ室へのスラストが働く。スラストは、他方側のインペラ室から軸受けと回転軸とのすきまおよびロータとステータのすきまを通じて一方側のインペラ室へと流れる液体の流量、すなわち内部サーキュレーション流量、が大きいときは大きくなり、小さいときは小さくなる。そこで、絞り機構により内部サーキュレーション流量が小さくなるため、スラストが小さくなる。
【0010】
しかも、絞り機構よりも前(上流側)にある軸受けにおいては液圧が高くなるため、軸受けにおけるモータ付きポンプ特にキャンドモータポンプの取り扱い液の沸騰を防止できる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明であって、前記絞り機構は、前記一方側の前記インペラが前記一方側へ動いた場合は、流路をより狭め、前記一方側の前記インペラが前記他方側へ動いた場合は、前記流路をより広げることを特徴とする。
【0012】
ここで、流路とは、一方側のインペラと一方側の軸受けとの間における取り扱い液の流れる部分である。
【0013】
他方側から一方側へスラストが回転軸に働くと、一方側のインペラは一方側へ動く。この時に、絞り機構は流路を狭めるので、スラストが小さくなる。そこで、一方側のインペラが他方側へ動く。この時に、絞り機構は流路を広げるので、スラストが大きくなる。このようにして、スラストが小さくなる最適の位置にインペラが回転軸方向に関して静止する。
【0014】
よって、スラストが小さくなる最適の位置にインペラを自動的に静止させることができる。しかも、作業者の手により、スラストのバランスをとる必要がなくなる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明であって、前記絞り機構は、前記一方側の前記インペラと前記一方側の前記軸受けとの間に配置され、前記回転軸にはめあわされているリング部材と、前記一方側の前記インペラと前記リング部材との間にせり出すせり出し部材とを備えたことを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。まず、第1の実施形態の構成を説明する。図1は、本発明の第1の実施形態にかかるキャンドモータポンプの側面断面図である。第1の実施形態にかかるキャンドモータ1は、インペラ室10,12、主流路14、回転軸16、軸受け18,20、ロータ部22、絞り機構26、ケーシング30、端子台32を備える。
【0017】
インペラ室10とインペラ室12とは互いに対向する。ここで、インペラ室10のある側を一方側、インペラ室12のある側を他方側という。インペラ室10、12はそれぞれ、インペラ10a、12aと、吐出口10b、12bと、吸込口10c、12cとを備える。
【0018】
インペラ10a、12aは偏平な羽根車である。インペラ10a、12aは回転軸16により連結されており、それぞれが回転軸16にはめあわされている。インペラ室10、12はインペラ10a、12aの中央部付近から回転軸16の長手方向に向かって開口する吸込口10c、12cを備える。吸込口10cは一方側へ、吸込口12cは他方側へ向かって開口する。吐出口10b、12bは回転軸16の長手方向に垂直な方向に向かって開口する。
【0019】
吐出口10bと吸込口12cは主流路14により連結されている。主流路14は、例えばパイプであり、直線部分と曲線部分が継ぎ手により結合されているものである。
【0020】
ケーシング30はインペラ室10、12との間にあり、ロータ部22、軸受け18,20を支持する。なお、軸受け18はインペラ室10からケーシング30の内側の方向に配置され、回転軸16を回転可能に支持する。軸受け20はインペラ室12からケーシング30の内側の方向に配置され、回転軸16を回転可能に支持する。また、軸受け18,20と回転軸16との間にはすきまがある。軸受け18,20の間にはロータ部22が設けられている。ロータ部22は、ロータ22aおよびステータ22bを備えている。ロータ22aは軸受け18,20の間に配置され、回転軸16にはめあわされている。ステータ22bはその内径がロータ22aの外径よりもやや大きく、ロータ22aを取り囲んでいる。従って、ロータ22aとステータ22bとの間にはすきまがある。端子台32はケーシング30に設けられ、端子台32とステータ22bとは電気的に接続されている。
【0021】
絞り機構26は一方側のインペラ10aと軸受け18の間に配置されている。絞り機構26は例えばラビリンスなどである。
【0022】
次に、第1の実施形態のキャンドモータポンプの作用を説明する。端子台32を通じて図示省略した電源からステータ22bに電流が供給されると、ロータ22aが回転し、ロータ22aとはめわされている回転軸16も回転する。回転軸16が回転すると、回転軸16にはめ合わされているインペラ10a、12aも回転する。
【0023】
インペラ10aが回転すると、吸込口10cからキャンドモータポンプ1の取り扱う液体が、インペラ室10に吸込まれる。インペラ室10に吸込まれた液体は吐出口10bから吐き出される。吐き出された液体は主流路14を通り、インペラ室12の吸込口12cに吸込まれる。インペラ室12に吸込まれた液体の大部分は吐出口12bから吐き出され、吐出口12bに連結された図示省略した管に送出される。
【0024】
インペラ室12に吸込まれた液体の一部は回転軸16と軸受け20のすきまに流れ込み、ロータ22aとステータ22bとのすきまを通り、回転軸16と軸受け18のすきまに流れ込む。この液体の流路の出口には、ラビリンス等の絞り機構26がある。ここで、この液体の流量を内部サーキュレーション流量という。
【0025】
一般的に、絞り機構を追加すると、流路抵抗が増加し流量が減少する。しかも、絞り機構の前では流体の圧力は高くなり、後では低くなる。
【0026】
よって、絞り機構26により、内部サーキュレーション流量は減少する。しかも、軸受け18,20は絞り機構26の前にあるため、軸受け18,20における液圧は高く保たれる。図2は、第1の実施形態における液圧分布と従来のキャンドモータポンプの液圧分布を比較したグラフである。絞り機構26により圧力差が生じているため(絞り追加の圧力)、軸受け18,20の液圧が従来よりも高くなっていることがわかる。
【0027】
ここで、図3に、第1実施形態にかかるキャンドモータポンプ1における液体の流れおよび液圧を模式的に表したものを示す。ロータ22aの受圧面積をAとすると、ロータ部で発生する軸スラスト力Tは数1のようになる。
【0028】
【数1】
ただし、P1は他方側からの圧力、P2は一方側からの圧力である。P1とP2は内部サーキュレーション流量Qによって決まる。Qが大きいときは、P1−P2が大きくなり、軸スラスト力Tが大きくなる。Qが小さいときは、P1−P2が小さくなり、軸スラスト力Tが小さくなる。
【0029】
第1の実施形態によれば、絞り機構26により、内部サーキュレーション流量Qは減少するため、回転軸16に働くスラストTが小さくなる。
【0030】
しかも、軸受け18,20は絞り機構26の前にあるため、軸受け18,20における液圧は高く保たれることから、取り扱う液体は軸受け18,20において沸騰しない。液体が沸騰することにより機能喪失を起こすのは軸受け18,20であり、軸受け18,20の機能喪失を防止し、キャンドモータの信頼性を高められる。
【0031】
なお、内部サーキュレーション流量Qは自己循環量であり、キャンドモータポンプ1の効率の低下を招くため少ないことが望ましい。よって、絞り機構26によりモータ効率の向上を図ることができる。
【0032】
図4は、本発明の第2の実施形態にかかるキャンドモータポンプの部分側面断面図である。第2の実施形態においては、第1の実施形態の絞り機構26が、リング部材40、せり出し部材42に変更されたものである。なお、リング部材40、せり出し部材42が可変オリフィスを構成する。
【0033】
まず、第2の実施形態の構成を説明する。リング部材40はリング状の部材であり、インペラ10aと軸受け18の間に配置され、回転軸16にはめあわされている。せり出し部材42はインペラ10aとリング部材40との間にせり出している。せり出し部材42の内径D2はリング部材40の外径D1以下である。せり出し部材42はインペラ室10にはめあわされている。
【0034】
次に作用を図5を参照して説明する。起動、停止時などの過渡時を想定する。まず、スラストが回転軸16に他方側から一方側へと働く。過渡時であるがゆえに、スラストは大きい。よって、ロータ22aは一方側へ動き、それに伴いインペラ10aもまた一方側へ動く(図5(a))。この時、リング部材40とせり出し部材42の間隔Cが狭まる。よって、内部サーキュレーション流路24を流れる液体の流量が減少する。よって、スラストもまた小さくなる。スラストが小さくなった分、回転軸16に対し他方側へ働く力が増加したことになる。
【0035】
そこで、ロータ22aは他方側へ動き、それに伴いインペラ10aもまた他方側へ動く(図5(b))。この時、リング部材40とせり出し部材42の間隔Cが広がる。よって、内部サーキュレーション流路24を流れる液体の流量が増加する。よって、スラストもまた大きくなる。
【0036】
このようにして、スラストが一方側と他方側でバランスし、スラストが抑制される間隔Cでインペラ10aは、回転軸16の長手方向に関して静止する。
【0037】
第2の実施形態によれば、人手によらず、自動的にスラストを抑制し、一方側と他方側でバランスさせるため、簡単にスラストを抑制し、バランスがとれる。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、一方側のインペラと一方側の軸受けとの間に配置された絞り機構により、内部サーキュレーション流量が小さくなるため、スラストが小さくできる。
【0039】
しかも、絞り機構よりも前(上流側)にある軸受けにおいては液圧が高くなるため、軸受けにおけるモータ付きポンプ特にキャンドモータポンプの取り扱い液の沸騰を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかるキャンドモータポンプの側面断面図である。
【図2】第1の実施形態における液圧分布と従来のキャンドモータポンプの液圧分布を比較したグラフである。
【図3】第1実施形態にかかるキャンドモータポンプ1における液体の流れおよび液圧を模式的に表した線図である。
【図4】本発明の第2の実施形態にかかるキャンドモータポンプの部分側面断面図である。
【図5】リング部材40とせり出し部材42の間隔Cの変化を表した側面断面図である。
【図6】従来技術におけるキャンドモータポンプの側面断面図である。
【符号の説明】
10、12 インペラ室
10a、12a インペラ
10b、12b 吐出口
10c、12c 吸込口
14 主流路
16 回転軸
18、20 軸受け
22 ロータ部
26 絞り機構
40 リング部材
42 せり出し部材
Claims (3)
- インペラと、インペラが液体を吐出する吐出口と、インペラが液体を吸い込む吸込口とを有し、対向するインペラ室と、
一方側に配置された前記インペラ室の前記吐出口と他方側に配置された前記インペラ室の前記吸込口を連結する主流路と、
前記インペラを連結する回転軸と、
前記インペラの間に配置され、前記回転軸を回転可能に支持し、前記回転軸とはすきまのある、対向した軸受けと、
前記回転軸にはまりあい前記軸受けの間に配置されたロータと、前記ロータを囲み前記ロータとすきまがあるステータとを有するロータ部と
を備えたキャンドモータポンプであって、
前記他方側の前記インペラ室に吸込まれた液体の一部は、前記回転軸と前記他方側の前記軸受けのすきまから、前記ロータと前記ステータのすきま、および前記回転軸と前記一方側の前記軸受けのすきまを通って、前記一方側の前記インペラ室に流れ込み、かつ、
前記液体の一部の流路の出口には、絞り機構が設けられていることを特徴とするキャンドモータポンプ。 - 前記絞り機構は、
前記一方側の前記インペラが前記一方側へ動いた場合は、流路をより狭め、
前記一方側の前記インペラが前記他方側へ動いた場合は、前記流路をより広げる、
ことを特徴とする請求項1に記載のキャンドモータポンプ。 - 前記絞り機構は、
前記一方側の前記インペラと前記一方側の前記軸受けとの間に配置され、前記回転軸にはめあわされているリング部材と、
前記一方側の前記インペラと前記リング部材との間にせり出すせり出し部材と、
を備えたことを特徴とする請求項2に記載のキャンドモータポンプ。
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JP12548899A JP4030227B2 (ja) | 1999-05-06 | 1999-05-06 | キャンドモータポンプ |
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Family Applications (1)
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JP12548899A Expired - Lifetime JP4030227B2 (ja) | 1999-05-06 | 1999-05-06 | キャンドモータポンプ |
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