JP4018512B2 - (メタ)アクリル酸類の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はアクリル酸又はメタクリル酸及びこれらのエステル(以下、「(メタ)アクリル酸類」という)の製造方法に関する。詳しくは、(メタ)アクリル酸類を製造する方法において、個々の工程単位から排出される高沸物を、取り扱い容易にかつ効率的に保管する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
接触気相酸化によってアクリル酸又はメタクリル酸(以下、(メタ)アクリル酸という)を製造するプロセス、更に直接エステル化によって(メタ)アクリル酸エステルを製造するプロセスにおいては、脱水塔、蒸留塔、酢酸分離塔、高沸物分解反応器(高沸物分解塔)など個々の工程単位から各種の高沸物が発生する。通常これら高沸物は一旦タンクに保管され、その後回収処理、焼却処理、あるいは埋め立て等の処理に付される。高沸物の種類によっては高沸物分解反応器を経由してタンクに保管されることもある。保管に際しては、高沸物の発生源が多岐にわたり、各プロセス特有の物性を有するため、個別の製造プロセス毎にタンクを設置していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来の保管方法は、それぞれのプロセスから発生する高沸物を混合すると、その中に含有される重合禁止剤、副生ポリマーなどが析出するので、これを回避するためのものである。析出ポリマーは装置内面に粘着成分として付着しトラブルを起こすからである。そのため、プラントの建設に当って、個別の高沸物用タンクが必要となり、建設費が高く、タンクの設置所要面積が広くなるという問題点があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、各プロセスより排出される高沸物を特定成分の組成で分類し、類似組成の高沸物を混合することにより、液性状の変化なしにタンクを統合して管理できることを見出し本発明を完成した。
【0005】
すなわち、本発明の要旨は、アクリル酸又はメタクリル酸及びこれらのエステルを製造する方法において、個々の工程単位から排出される高沸点重質成分を、その中のアクリル酸又はメタクリル酸及び/又はその二量体の合計含有量によって、該合計含有量が10重量%以上の親水性高沸物と、同合計含有量が10重量%未満の疎水性高沸物とに区分し、該親水性高沸物を2種類以上混合して同一の貯槽で保管することを特徴とする(メタ)アクリル酸類の製造方法、並びに、アクリル酸又はメタクリル酸及びこれらのエステルを製造する方法において、個々の工程単位から排出される高沸点重質成分を、その中のアクリル酸又はメタクリル酸及び/又はその二量体の合計含有量によって、該合計含有量が10重量%以上の親水性高沸物と、同合計含有量が10重量%未満の疎水性高沸物とに区分し、該疎水性高沸物を2種類以上混合して同一の貯槽で保管することを特徴とする(メタ)アクリル酸類の製造方法に存する。
【0006】
本発明の製造方法は、アクリル酸、メタクリル酸又はそれらのエステル、即ちアクリルモノマーの蒸留に際して取得される高沸点重質成分(高沸物)の処理に適用できる。例えば、プロパンをMo−V−Te系複合酸化物触媒、或いはMo−V−Sb系複合酸化物触媒等を用いて、気相酸化させて得られるアクリル酸、又はプロピレンもしくはイソブチレンをMo−Bi系複合酸化物触媒の存在下、気相接触酸化し、アクロレインもしくはメタクロレインを生成し、更にMo−V系複合酸化物触媒の存在下、気相接触酸化して得られるアクリル酸もしくはメタクリル酸の製造プロセスに適用できる。この際、プロピレンを酸化して主としてアクロレインを生成する前段反応とアクロレインを酸化して主としてアクリル酸を生成する後段反応をそれぞれ別の反応器で行うものでも、一つの反応器に前段反応を行う触媒と後段反応を行う触媒を同時に充填して反応を行うものでも構わない。更には、アクリル酸又はメタクリル酸を原料としてそのエステルを製造するプロセスにも適用できる。
アクリル酸エステル類を例示すると、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ターシャリーブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸メトキシエチル等があげられ、メタクリル酸エステル類についても同様の化合物を例示することができる。
【0007】
これらの製造プロセスから得られる未精製のアクリルモノマーには、アクリルモノマーの2量体、3量体、これらのエステル化物、無水マレイン酸、ベンズアルデヒド、β―ヒドロキシプロピオン酸、β―ヒドロキシプロピオン酸エステル類、β―アルコキシプロピオン酸、β―アルコキシプロピオン酸エステル等の高沸点不純物が含有されるのが一般的である。
このような高沸点不純物を含むアクリルモノマーを蒸留すると、蒸留塔の塔頂成分として(メタ)アクリル酸類が取得される一方、塔底成分として高沸物が得られる。また、高沸物は蒸留塔以外の工程において、例えば、高沸物分解反応器において、濃縮、生成、分離されるもの(分解残留物、濃縮物など)も含まれる。本発明はかかる高沸物の貯蔵、輸送、保管などの処理に適用される。
【0008】
次に、図面を用いてアクリル酸及びアクリル酸エステルの製造プロセスを例として説明する。
図1は、プロピレンを原料としてアクリル酸を製造するプロセスフロー図の一例である。図中の記号と番号は下記の通りである。
A:アクリル酸捕集塔
B:脱水塔
C:軽沸分離塔(酢酸分離塔)
D:高沸分離塔(アクリル酸精製塔)
E:高沸分解反応器
1〜3:重合防止剤供給ライン
4 :アクリル酸を含有する酸化反応ガス
5 :アクリル酸水溶液
11:粗アクリル酸
15:アクリル酸抜出ライン
19:高純度アクリル酸抜出ライン
21:高沸物抜出ライン
【0009】
プロパン、プロピレンおよび/またはアクロレインを分子状酸素含有ガスを用いて接触気相酸化して得たアクリル酸含有ガスは、ライン4を経てアクリル酸捕集塔Aに導入し、水と接触させアクリル酸水溶液を得る。
次にアクリル酸水溶液を脱水塔Bへ供給する。脱水塔では、共沸剤を供給し、塔頂から水及び共沸剤からなる共沸混合物を留出させ、塔底からは酢酸を含むアクリル酸を得る。脱水塔の塔頂から留出した水および共沸剤からなる共沸混合物は貯槽10に導入し、ここで主として共沸剤からなる有機相と主として水からなる水相とに分離する。有機相は脱水塔Bに循環する。一方、水相はライン7を経てアクリル酸捕集塔Aに循環させて、アクリル酸含有ガスと接触させる捕集水として用いることにより有効に活用することができる。必要に応じてライン8から水を補給する。また、ライン7のプロセス液中の共沸剤を回収するため、共沸剤回収塔(図示せず)を経て、アクリル酸捕集塔Aに循環させてもよい。
【0010】
脱水塔Bの塔底から、ライン11を経て抜き出した粗アクリル酸は、残存する酢酸を除去するために軽沸分離塔(酢酸分離塔)Cに導入する。ここで塔頂からライン12,13を経て酢酸を分離除去する。ライン13の酢酸はアクリル酸を含むので、一部もしくは全量がプロセスへ戻される場合がある。一方、塔底からライン14を経て実質的に酢酸を含まないアクリル酸を得る。このアクリル酸は相当に純度が高いのでそのままアクリル酸エステルの製造原料として使用することもでき、場合によりライン15を経て製品とすることもある。更に高純度のアクリル酸を得るためには、ライン16を経て高沸分離塔(アクリル酸精製塔)Dに導入して高沸点物をライン17より分離除去し、高純度アクリル酸をライン18,19を経て得ることが出来る。ライン17の高沸物は高沸分解反応器Eに導かれ、一部はアクリル酸としてライン20よりプロセスへ回収される。高沸物はライン21より分離除去され、タンク(図示せず)に貯蔵保管される。
【0011】
図2は、アクリル酸を製造するプロセスフロー図の他の一例である。
図1における脱水塔Bと軽沸分離塔(酢酸分離塔)Cを1塔の蒸留塔Fに纏めたプロセスであり、物質の流れは基本的に図1と同じである。
【0012】
図3は、アクリル酸を製造するプロセスフロー図の他の一例である。
A:アクリル酸捕集塔
G:放散塔
D:高沸分離塔(アクリル酸精製塔)
H:高沸除去塔
K:溶剤精製塔
1〜3:重合防止剤供給ライン
4 :アクリル酸を含有する酸化反応ガス
5 :アクリル酸含有溶液
11:粗アクリル酸
13:高純度アクリル酸抜出ライン
【0013】
プロパン、プロピレンおよび/またはアクロレインを分子状酸素含有ガスを用いて接触気相酸化して得たアクリル酸含有ガスは、ライン4を経てアクリル酸捕集塔Aに導入し、溶剤と接触させアクリル酸含有溶液を得る。
次にアクリル酸含有溶液を放散塔Gへ供給する。放散塔Gでは、ライン10よりガス(アクリル酸捕集塔Aの塔頂より排出されるライン6のガス、或いは、ライン6のガス中の有機物を酸化して除去した後のガス等)を供給し、塔頂から水及び酢酸を留出させ、塔底からは溶剤を含むアクリル酸を得る。放散塔Gの塔頂から留出した水および酢酸はアクリル酸捕集塔Aに導入し、水と酢酸は最終的にアクリル酸捕集塔Aの塔頂より排出される。放散塔Gの塔底からライン11を経て、高純度のアクリル酸を得るために高沸分離塔(アクリル酸精製塔)Dに導入して高沸点物をライン14より分離除去し、高純度アクリル酸をライン13を経て得ることが出来る。ライン14の高沸物は具体的には無水マレイン酸、ベンズアルデヒド等であり、高沸除去塔Hに導かれ、これら高沸点物はライン16より排出される。塔底より溶剤はライン17を経て溶剤精製塔Kに導かれる。回収された溶剤は塔頂よりライン7を経てアクリル酸捕集塔Aに戻されるが、その一部又は大部分をライン17から直接ライン7を経て(図示せず)アクリル酸捕集塔Aに返送してもよい。塔底よりライン18を経て更なる高沸物が分離除去され、タンク(図示せず)に貯蔵保管される。
る。
【0014】
図4は、アクリル酸エステルを製造するプロセスフロー図の一例である。図中の記号と番号は下記の通りである。
L:エステル化反応器
M:アクリル酸分離塔
N:高沸分解反応器
Q:アルコール抽出塔
P:アルコール回収塔
R:軽沸分離塔
S:エステル精製塔
1〜3:重合防止剤供給ライン
31:アクリル酸供給ライン
32:アルコール供給ライン
33:エステル化反応混合物
35:循環アクリル酸
37:高沸点不純物の抜出ライン
39:粗アクリル酸エステルの抜出ライン
41:水供給ライン
42:回収アルコール水ライン
46:アクリル酸エステル製品抜出ライン
【0015】
ライン31からアクリル酸、ライン32からアルコール、ライン35から循環アクリル酸、ライン48から循環アルコールを、それぞれエステル化反応器Lに供給する。エステル化反応器Lには強酸性イオン交換樹脂などの触媒が充填される。ライン33を経て、生成エステル、未反応アクリル酸、未反応アルコール、及び生成水からなるエステル化反応混合物を抜き出し、アクリル酸分離塔Mに供給する。アクリル酸分離塔Mからライン34を経て未反応アクリル酸の実質的全量を含む塔底液を抜き出し、ライン35を経て循環液としてエステル化反応器Lへ供給する。
該塔底液の一部はライン36を経て高沸分解反応器Nに供給し、分解され得られた有価物はライン40を経てプロセスに循環される。循環されるプロセス内の場所は、プロセス条件によって異なる。重合物などの高沸点不純物はライン37を経て系外へ除去され、タンク(図示せず)に貯蔵保管される。また、アクリル酸分離塔Mの塔頂からは、ライン38を経て生成エステル、未反応アルコール、及び生成水が留出する。流出物の一部は還流液としてアクリル酸分離塔Mに循環し、残りはライン39を経て抽出塔Qに供給される。
ライン41よりアルコール抽出の為の水が供給され、ライン42を経て回収されたアルコールを含む水はアルコール回収塔Pに供給される。回収されたアルコールはライン48を経てエステル化反応器に循環される。
【0016】
ライン43より粗アクリル酸エステルは軽沸分離塔Rへ供給される。ライン44よりアクリル酸エステルを含む軽沸物は抜き出され、プロセス内へ循環される。循環されるプロセス内の場所は、プロセス条件によって異なる。軽沸物を除去された粗アクリル酸エステルはライン45を経てアクリル酸エステル製品精製塔Sへ供給される。塔頂よりライン46を経て、高純度アクリル酸エステルを得る。塔底から若干の高沸物を含む液は、通常アクリル酸を多く含むのでライン47を経て抜き出され、プロセス内へ循環される。循環されるプロセス内の場所は、プロセス条件によって異なる。
【0017】
本発明が適用される高沸物は、上記で例示したように、(メタ)アクリル酸類を分離、濃縮、回収、精製するための個々の工程単位から排出される高沸点不純物成分の全てを含むものである。代表的には、図1及び図2に示されるライン21、図3に示されるライン16及びライン18、図4に示されるライン37から排出される塔底液が該当する。
【0018】
このような高沸物は、蒸留塔の塔底成分、高沸物分解塔の塔底成分、高沸物分解反応器の分解残留物などとして得られる。蒸留塔の形式やその棚段形状、充填物形状などは特に限定されるものではない。また蒸留中や蒸留後の操作において、(メタ)アクリル酸類の重合を防止するために重合防止剤を特に制限なく使用することができる。これらの重合防止剤も高沸物の一部を構成することがある。高沸物分解反応器の形状・形式なども限定されず、例えば、塔型反応器、槽型反応器などいずれも使用できる。
【0019】
本発明の対象となる高沸物について、更に詳述するに、その組成は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸類のラジカル重合物(単に、ポリマーと呼ばれることも多い)、(メタ)アクリル酸のミカエル付加物である二量体(ダイマー)、三量体(トリマー)、四量体(テトラマー)などのオリゴマー、アクリル酸ダイマーエステル、アクリル酸トリマーエステル、アクリル酸テトラマーエステル、重合禁止剤、マレイン酸、ベンズアルデヒド、フルフラール、アルコキシプロピオン酸、アルコキシプロピオン酸エステル、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、ノルマルブタノール、イソブタノール、2−エチルヘキシルアルコール等)、ポリマーと(メタ)アクリル酸とのミカエル付加物等が含まれている。
【0020】
なお、アクリル酸のミカエル付加物である二量体(ダイマー)、三量体(トリマー)の構造式は次のように表わされる。
アクリル酸の二量体: H2C=CH-C(=O)-O-CH2-CH2-C(=O)-OH
アクリル酸の三量体: H2C=CH-C(=O)-O-CH2-CH2-C(=O)-O-CH2-CH2-C(=O)-OH
【0021】
ベンズアルデヒド、フルフラール等の微量アルデヒド類は、高純度(メタ)アクリル酸を製造する際にアルデヒド除去剤(例えば、ヒドラジン類など)と反応させて重沸物化し排出されることがある。これも高沸物に含有される一成分となることがある。従って、既に述べた通り、本発明では高純度(メタ)アクリル酸製造プロセスより排出される高沸物は、粗アクリル酸プロセスの高沸物と同様に取り扱うことができる。
【0022】
本発明で取り扱う高沸物は、その発生由来により、その組成は一様ではない。例えば、(メタ)アクリル酸製造プロセスにおいて、(メタ)アクリル酸を5〜30重量%、(メタ)アクリル酸二量体を5〜90重量%、エトキシプロピオン酸を0〜50重量%、ポリマー成分その他を5〜50重量%、水分1重量%以下の高沸物を挙げることができる。また、(メタ)アクリル酸エステル製造プロセスにおいて、(メタ)アクリル酸エステル5〜40重量%、(メタ)アクリル酸0.1〜10重量%、ポリマー成分その他を5〜60重量%、水分1重量%以下の高沸物を挙げることができる。
【0023】
本発明の特徴とするところは、高沸物の組成を(メタ)アクリル酸及び/又はその二量体の含有量によって区分して処理することにある。(メタ)アクリル酸及び/又はその二量体の含有量が大きい高沸物、中でもそれらの合計含有量が10重量%以上、特に20重量%以上の高沸物は親水性が大きく、ポリマーに対する溶解性も大きい。従って、(メタ)アクリル酸及びその二量体の合計含有量が10重量%以上の高沸物は相互に混合しても液性状が変化することなく、ポリマーの析出もない。
【0024】
一方、(メタ)アクリル酸及び/又はその二量体の含有量が小さい高沸物、中でもそれらの合計含有量が10重量%未満、特に8重量%未満の高沸物は疎水性が大きい。かかる高沸物は疎水性が大きくて,かつポリマー成分を相当量溶解しているものである。従って、(メタ)アクリル酸及びその二量体の合計含有量が10重量%未満の高沸物は相互に混合しても液性状が変化することなく、ポリマーの析出もない。
しかしながら、(メタ)アクリル酸及び/又はその二量体の含有量が大きい親水性高沸物と、該含有量の小さい疎水性高沸物とは、液性状が異なるので、ポリマー含有量に関わらず両者を混合するとポリマーの析出が起こる。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル酸及び/又はその二量体の含有量」とは、高沸物がいずれか一成分のみを含有する場合は、当該成分の含有量を意味し、二成分以上を含有する場合は、両者の合計含有量を意味するものである。
【0025】
性状が類似する高沸物は、混合割合に制限なく任意の割合で混合することができ、いずれの場合もポリマーの析出を回避することができる。混合操作も特に限定されるものではない。例えば、蒸留塔の塔底液として得られた各種の高沸物、高沸物分解反応器における分解物あるいは分解残留物などを、(メタ)アクリル酸及び/又はその二量体の含有量によって区分した後は、同種の液性状を有する高沸物同士を配管ラインで混合し、又は直接タンクに導入して保管することができる。場合によっては、混合用の小さな予備タンクを用いて混合することもできる。
【0026】
図5に示すように、タンク内の高沸物同士の混合状態を高める目的で、外部循環ラインを設けることもできる。該循環ラインにストレーナーを設置して微量のポリマーなどの固形成分を除去することが好ましい。なお、図5において、71,72は高沸物導入ライン、73は高沸物排出ライン、74は循環ポンプ、75はストレーナーを表わす。
【0027】
上記のように性状が類似する高沸物は互いに混合してもポリマーの析出はないので自由に、任意の割合で混合することができる。更に、(メタ)アクリル酸及び/又はその二量体の含有量が10重量%以上である親水性高沸物は、それ自体が親水性であるので、プロセス内で発生する有価物を含有する各種の排水、酢酸水などと混合しても、ポリマーの析出がない。この場合、親水性高沸物の粘度を下げ、タンクへの移送や洗浄を容易にする効果もある。なお、(メタ)アクリル酸及び/又はその二量体の含有量が10重量%未満である疎水性高沸物は少量の水であっても、ポリマーの析出を促進するので、その含有量は2重量%以下、特に1重量%以下に保持することが好ましい。
【0028】
【実施例】
次に本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り下記の実施例に限定されるものではない。なお、アクリル酸二量体の分析は、下記の通りである。
アクリル酸の加熱により二量体を生成させ、高真空下で蒸留精製したアクリル酸二量体(純度≧95重量%)によるガスクロマトグラフィーの検量線を予め作成しておき、これに基づいてサンプル中の二量体を定量した。機器は島津製作所製GC14A、カラムは東京化成社製FFAP-10を使用した。
【0029】
<実施例1>
アクリル酸プラントの高沸分解反応器から下記組成の高沸物1を取得した。
アクリル酸 ; 8重量%
アクリル酸ダイマー ; 72重量%
マレイン酸 ; 8重量%
その他(ポリマー、重合禁止剤等) ; 12重量%
水分 ; 0.1重量%以下
同様に、アクリル酸エチルプラントの高沸分解反応器から下記組成の高沸物2を取得した。
アクリル酸 ; 15重量%
アクリル酸ダイマー ; 7重量%
アクリル酸エチル ; 3重量%
エトキシプロピオン酸 ; 36重量%
エトキシプロピオン酸エチル ; 13重量%
その他(ポリマー、重合禁止剤等) ;25.4重量%
水分 ; 0.6重量%
【0030】
上記の高沸物1と高沸物2を、重量比10:90、50:50、及び90:10で常温下に混合した。混合後の液性状を観察したがいずれの場合も析出物は認められなかった。本実施例1は、アクリル酸及びその二量体の含有量が80重量%の高沸物1と、同含有量が22重量%の高沸物2の混合態様を示すものである。いずれも親水性高沸物であるので混合しても液性状の変化がないことが分かる。
【0031】
<実施例2>
図5に示す高沸物タンクTに上記の高沸物1と高沸物2を重量比10:4で導入した。両者の混合結果は良好で、タンク液の循環に用いたポンプのストレーナーに析出物は認められなかった。
【0032】
<比較例1>
アクリル酸ブチルプラントの高沸分解反応器から下記組成の高沸物3を取得した。
アクリル酸 ; 7重量%
アクリル酸ダイマー ; 0重量%
ブトキシプロピオン酸ブチル ; 68重量%
アクリル酸ブチル ; 11重量%
その他(ポリマー、重合禁止剤等) ; 14重量%
水分 ;0.1重量%以下
上記の高沸物1と高沸物3を、重量比10:90、50:50、及び90:10で常温下に混合した。いずれの場合も、混合後速やかに混合容器の内面にべっとりとしたポリマーの析出が認められた。その後の液性状を観察したところ、固形浮遊物の発生が認められた。本比較例1は、アクリル酸及びその二量体の含有量が80重量%の親水性高沸物1と、同含有量が7重量%の疎水性高沸物3の混合態様を示すものである。高沸物の液性状が異なり、混合によりポリマーの析出が生じたことを示すものである。
【0033】
<実施例3>
アクリル酸2−エチルヘキシルプラントの高沸分解反応器から下記の組成の高沸物4を取得した。
比較例1で使用した高沸物3と上記高沸物4を、重量比10:90、50:50、及び90:10で常温下に混合した。混合後の液性状を観察したがいずれの場合も析出物は認められなかった。本実施例3は、アクリル酸及びその二量体の含有量が7重量%の高沸物3と、同含有量が0.2重量%の高沸物4の混合態様を示すものである。いずれも疎水性高沸物であるので混合しても液性状の変化がないことが分かる。
【0034】
<実施例4>
図5に示す高沸物タンクTに、上記の高沸物3と高沸物4を重量比2:1で導入した。両者の混合結果は良好で、タンク液の循環に用いたポンプのストレーナーに析出物は認められなかった。
【0035】
<比較例2>
上記の高沸物1と高沸物4を、重量比10:90、50:50、及び90:10で常温下に混合した。いずれの場合も、混合後速やかに混合容器の内面にべっとりとしたポリマーの析出が認められた。その後の液性状を観察したところ、固形浮遊物の発生が認められた。本比較例2は、アクリル酸及びその二量体の含有量が80重量%の親水性高沸物1と、同含有量が0.2重量%の疎水性高沸物4の混合態様を示すものである。高沸物の液性状が異なり、混合によりポリマーの析出が生じたことを示すものである。
【0036】
<比較例3>
上記の高沸物2と高沸物3を、重量比10:90、50:50、及び90:10で常温下に混合した。いずれの場合も、混合後速やかに混合容器の内面にべっとりとしたポリマーの析出が認められた。その後の液性状を観察したところ、固形浮遊物の発生が認められた。本比較例3は、アクリル酸及びその二量体の含有量が22重量%の親水性高沸物2と、同含有量が7重量%の疎水性高沸物3の混合態様を示すものである。高沸物の液性状が異なり、混合によりポリマーの析出が生じたことを示すものである。
【0037】
<比較例4>
上記の高沸物2と高沸物4を、重量比10:90、50:50、及び90:10で常温下に混合した。いずれの場合も、混合後速やかに混合容器の内面にべっとりとしたポリマーの析出が認められた。その後の液性状を観察したところ、固形浮遊物の発生が認められた。本比較例4は、アクリル酸及びその二量体の含有量が22重量%の親水性高沸物2と、同含有量が0.2重量%の疎水性高沸物4の混合態様を示すものである。高沸物の液性状が異なり、混合によりポリマーの析出が生じたことを示すものである。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、(メタ)アクリル酸及び/又はそのエステルを製造するプラントから排出される液性状の類似する高沸物同士を同一のタンクで混合しても、ポリマーの析出がないので、取り扱いや保管が容易である。従って、タンクを統合することができ、建設費及び設備面積を低減する上に極めて有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】プロピレンを原料としてアクリル酸を製造するプロセスフロー図の一例である。
【図2】アクリル酸を製造するプロセスフロー図の他の一例である。
【図3】アクリル酸を製造するプロセスフロー図の他の一例である。
【図4】アクリル酸エステルを製造するプロセスフロー図の一例である。
【図5】高沸物混合タンク及びその付帯設備の一例である。
【符号の説明】
A:アクリル酸捕集塔
B:脱水塔
C:軽沸分離塔(酢酸分離塔)
D:高沸分離塔(アクリル酸精製塔)
E:高沸分解反応器
F:脱水塔Bと軽沸分離塔(酢酸分離塔)Cを1塔にまとめた蒸留塔
G:放散塔
H:高沸除去塔
K:溶剤精製塔
L:エステル化反応器
M:アクリル酸分離塔
N:高沸分解反応器
Q:アルコール抽出塔
P:アルコール回収塔
R:軽沸分離塔
S:エステル精製塔
T:高沸物貯蔵タンク
Claims (5)
- アクリル酸又はメタクリル酸及びこれらのエステル(以下、「(メタ)アクリル酸類」という)を製造する方法において、個々の工程単位から排出される高沸点重質成分(以下「高沸物」という)を、その中のアクリル酸又はメタクリル酸(以下、(メタ)アクリル酸という)及び/又はその二量体の合計含有量によって、該合計含有量が10重量%以上の親水性高沸物と、同合計含有量が10重量%未満の疎水性高沸物とに区分し、該親水性高沸物を2種類以上混合して同一の貯槽で保管することを特徴とする(メタ)アクリル酸類の製造方法。
- アクリル酸又はメタクリル酸及びこれらのエステル(以下、「(メタ)アクリル酸類」という)を製造する方法において、個々の工程単位から排出される高沸点重質成分(以下「高沸物」という)を、その中のアクリル酸又はメタクリル酸(以下、(メタ)アクリル酸という)及び/又はその二量体の合計含有量によって、該合計含有量が10重量%以上の親水性高沸物と、同合計含有量が10重量%未満の疎水性高沸物とに区分し、該疎水性高沸物を2種類以上混合して同一の貯槽で保管することを特徴とする(メタ)アクリル酸類の製造方法。
- 高沸物が(メタ)アクリル酸類を塔頂成分として取得する蒸留塔の塔底成分である請求項1又は2に記載の(メタ)アクリル酸類の製造方法。
- 高沸物が(メタ)アクリル酸類の分解反応器の残留物である請求項1又は2に記載の(メタ)アクリル酸類の製造方法。
- 高沸物中の水分含有量が2重量%以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の(メタ)アクリル酸類の製造方法。
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