JP4013486B2 - 冷却水系のスライム防止方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷却水系のスライム防止方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、冷却水系において、金属部材の腐食を抑えて、しかもスライムの発生を効果的に防止することができる冷却水系のスライム防止方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
冷却水は、石油化学産業や鉄鋼産業などの種々の産業分野において、間接的又は直接的に被処理物を冷却する目的で、あるいは、ビルの空調、冷暖房、その関連装置などに多量に使用されている。近年は、水資源の不足や有効利用の観点から、冷却水の使用量を削減するために、開放循環冷却水系の高濃縮運転における強制ブロー量の削減など、冷却水の高度利用が行われている。このように冷却水を高度に利用した場合には、溶存塩類や栄養源の濃縮などにより、循環冷却水の水質が悪化し、細菌、黴、藻類などの微生物群に、土砂、塵埃などが混ざり合って形成されるスライムが発生しやすくなり、熱交換器における熱効率の低下や通水の悪化を引き起こし、またスライム付着下部において、機器や配管の局部腐食を誘発する。
そこで、このようなスライムによる障害を防止するために、種々の抗菌剤、例えば、次亜塩素酸ナトリウムや過酸化水素水などの酸化性抗菌剤などが用いられている。これらの抗菌剤は、薬剤タンクに貯留され、薬注ポンプによって冷却水系に注入されている。しかし、スライム防止のために抗菌剤を使用すると、ローリー運搬、コンテナ移動など、運搬に労力を要し、抗菌剤の取り扱い中に漏洩などを起こして人体に被害を与える危険性があり、抗菌剤の残量をチェックして定期的に補充する手間がかかるなどの問題がある。
冷却水系で問題となるスライム障害を防止するために、電解次亜塩素酸発生装置が用いられている。しかし、補給水中の塩化物イオン濃度が低い場合には、冷却水系において塩化物イオンが濃縮されても、スライム処理に十分な次亜塩素酸の発生速度が得られなかった。また、冷却水に食塩などを添加して塩化物イオン濃度を高めると、冷却水と接触する金属部材に腐食を生じやすくなるという問題があった。このために、金属部材の腐食を抑え、しかもスライムの発生を効果的に防止し得る冷却水系のスライム防止方法が求められていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、開放循環冷却水系において、金属部材の腐食を抑えて、しかもスライムの発生を効果的に防止することができる冷却水系のスライム防止方法を提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、開放循環冷却水系において、食塩水を電解し残留塩素を発生させた塩素水を補給水に添加し、さらに循環水系に電解槽を設置して残留塩素を発生させることにより、金属部材の腐食速度が小さく、しかもスライム防止に必要かつ十分な残留塩素の発生速度が得られることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、開放循環冷却水系の冷却水に塩素を添加してスライムを防止する方法において、冷却水系に補給される補給水に、補給水中の残留塩素が0 . 5〜2 mgCl /Lになるように食塩水を電解して残留塩素を発生させた塩素水を添加するとともに、濃縮された冷却水を電解し、残留塩素を発生させることを特徴とする冷却水系のスライム防止方法を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の冷却水系のスライム防止方法においては、開放循環冷却水系の冷却水に塩素を添加してスライムを防止する方法において、冷却水系に補給される補給水に食塩水を電解して残留塩素を発生させた塩素水を添加するとともに、濃縮された冷却水を電解し、残留塩素を発生させる。本発明方法は、補給水中の塩化物イオン濃度が低く、冷却水系において塩化物イオンを濃縮させても、スライム処理に十分な残留塩素を発生することができない冷却水系に好適に適用することができる。
本発明方法において、補給水に添加する食塩水を電解して残留塩素を発生させた塩素水の製造方法に特に制限はなく、例えば、食塩水電解次亜塩素酸発生装置を用いて製造することができる。食塩水電解次亜塩素酸発生装置を用いて、無隔膜式電解槽で食塩水を電解すると、陽極と陰極で次のような反応が起こって塩素と水酸化ナトリウムが生成し、さらに塩素と水酸化ナトリウムが反応して次亜塩素酸ナトリウムが生成する。市販の食塩水電解次亜塩素酸発生装置を用いて、残留塩素濃度60〜80mgCl/L程度の塩素水を製造することができる。
2Cl- → Cl2 + 2e-
2Na+ + 2H2O + 2e- → 2NaOH + H2
Cl2 + 2NaOH → NaOCl + NaCl + H2O
本発明方法において、補給水への塩素水の添加量に特に制限はないが、補給水中の残留塩素濃度が0.1〜3mgCl/Lとなるように添加することが好ましく、0.5〜2mgCl/Lとなるように添加することがより好ましい。補給水中の残留塩素濃度が0.1mgCl/L未満であると、スライム防止効果が不十分となるおそれがある。補給水中の残留塩素濃度が3mgCl/Lを超えると、冷却水系の金属部材の腐食が速くなるおそれがある。
食塩水を電解して残留塩素を発生させた塩素水には、通常は残留塩素濃度の10倍程度の塩化物イオンが含まれているので、補給水中の残留塩素濃度が0.1〜3mgCl/Lであると、補給水中に含まれる1〜30mgCl-/L程度の塩化物イオンが冷却水系に送り込まれ、冷却水の濃縮とともに濃縮され、例えば、濃縮倍率10倍で冷却水系を運転すると、濃縮された冷却水中の塩化物イオン濃度は10〜300mgCl-/L程度となる。
【0006】
本発明方法において、濃縮された冷却水の電解方法に特に制限はなく、例えば、電極を冷却水のピットに浸漬して電解することができ、あるいは、冷却水系の配管に電解槽を設置して電解することもできる。電解槽の設置場所に特に制限はなく、例えば、冷却水の送り配管にバイパス配管を設けて電解槽を設置し、電解により残留塩素を発生させた冷却水をピットに返送することができ、冷却水の送り配管に電解槽を設置することもでき、あるいは、冷却水の戻り配管に電解槽を設置することもできる。
本発明方法に用いる電極の材質に特に制限はないが、陽極としては、例えば、チタンなどの耐食性の材料に、白金、イリジウムなどの白金系元素の単体又はその酸化物を被覆した残留塩素の発生効率が良好な材質を好適に用いることができる。陰極としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、銀などを用いることができるが、陰極と陽極を同一の材質とすることもできる。また、電流の方向を固定する必要はなく、電流の正負を定期的又は随意的に逆転させ、陰極と陽極とを反転させながら電解を行うことができる。電極の反転により、陰極に付着した炭酸カルシウムなどのスケールを剥離しながら運転することができるので、電解効率の低下を防ぐことができる。なお、この場合、両電極を同一の材質とすれば、一定の残留塩素の発生効率が得られる。この場合、用いる電極としては、例えば、チタンなどを基材とし、白金やイリジウムなどを被覆した電極などを挙げることができる。
【0007】
本発明方法において、電解のために印加する直流電圧に特に制限はないが、2〜40Vであることが好ましく、4〜30Vであることがより好ましい。印加する電圧が2V未満であると、残留塩素の発生効率が低下するおそれがある。印加する電圧が40Vを超えると、人体に対して危険性が生ずるおそれがある。本発明方法において、電解のために通電する電流に特に制限はないが、冷却水系の循環水量1m3/hに対して、0.1〜3Aであることが好ましい。電流が循環水量1m3/hに対して0.1A未満であると、残留塩素の発生量が過少となって、スライム防止効果が不十分となるおそれがある。電流が循環水量1m3/hに対して3Aを超えると、残留塩素濃度が高くなりすぎて金属の腐食を招くおそれがある。
図1は、本発明の冷却水系のスライム防止方法の実施の一態様の工程系統図である。補給水に食塩水電解残留塩素発生装置(図示していない。)において残留塩素を発生させた塩素水が添加され、冷却塔1のピット2に供給される。冷却水はピットから循環ポンプ3により送り出され、送り配管4、熱交換器5、戻り配管6を経由して冷却塔に返送される。送り配管にはバイパス配管7が接続され、バイパス配管へ流入した冷却水は、電解槽8で電解されて残留塩素が発生し、ピットに返送される。
本発明のスライム防止方法によれば、冷却水系において、抗菌剤などを使用することなく、金属部材の腐食を抑えて、しかもスライムの発生を効果的に防止することができる
【0008】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
実施例1
図1に示す循環水量100m3/hの冷却水系において、試験を行った。
塩化物イオン濃度1.0mgCl-/Lの水に、食塩水電解次亜塩素酸発生装置により発生させた次亜塩素酸を含有する塩素水を、残留塩素濃度1.0mgCl/Lとなるように添加して補給水とした。補給水中の塩化物イオン濃度は、11mgCl-/Lであった。
腐食性試験の試験片として、材質が低炭素鋼のJIS G 3141の1種(SPCC)であり、JIS K 0100の付図4に記載された円形試験片を冷却水ピットに浸漬した。
濃縮された冷却水中の塩化物イオン濃度を110mgCl-/Lとして、冷却水系を濃縮倍数が10倍となるように運転し、さらに循環水を電解槽に通水して次亜塩素酸を発生させ、残留塩素濃度を0.5mgCl/Lに維持しつつ30日間の運転を行った。
30日後の冷却水中の一般細菌数は102CFU(colony forming unit)/mLであり、低炭素鋼試験片の腐食速度は10mdd(mg/dm2/day)であった。
比較例1
循環水を電解槽に通水して次亜塩素酸を発生させる操作を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、冷却水系の運転を30日間行った。濃縮された冷却水中の塩化物イオン濃度は110mgCl-/Lであり、残留塩素濃度は0.1mgCl/Lであった。
30日後の冷却水中の一般細菌数は105CFU/mLであり、低炭素鋼試験片の腐食速度は15mddであった。
比較例2
実施例1と同じ冷却水系において、塩化物イオン濃度1.0mgCl-/Lの水に、食塩水電解次亜塩素酸発生装置から発生させた次亜塩素酸を含有する塩素水を、残留塩素濃度5.0mgCl/Lとなるように添加して補給水とした。補給水中の塩化物イオン濃度は、51mgCl-/Lであった。冷却水ピットには、実施例1と同じ低炭素鋼試験片を浸漬した。
循環水を電解槽に通水して次亜塩素酸を発生させる操作を行うことなく、冷却水系を濃縮倍数10倍となるようにして30日間運転した。濃縮された冷却水中の塩化物イオン濃度は510mgCl-/Lであり、残留塩素濃度は0.5mgCl/Lであった。
30日後の冷却水中の一般細菌数は102CFU/mLであり、低炭素鋼試験片の腐食速度は40mddであった。
実施例1及び比較例1〜2の結果を、第1表に示す。
【0009】
【表1】
【0010】
第1表に見られるように、補給水に食塩水電解次亜塩素酸発生装置により発生させた次亜塩素酸を含有する塩素水を添加し、さらに循環水を電解槽に通水して次亜塩素酸を発生させた実施例1においては、冷却水中の一般細菌数が少なく、スライム防止効果が十分に発現することが予測され、また、低炭素鋼試験片の腐食速度も小さい。
これに対して、循環水を電解槽に通水して次亜塩素酸を発生させる操作を行わなかった比較例では、補給水中の塩化物イオン濃度を実施例1と同じにすると、循環水中の残留塩素濃度が低くなり、低炭素鋼試験片の腐食速度は大きくないが、一般細菌数が多く、スライムの発生が予測される。一方、補給水中の塩化物イオン濃度を高くして、循環水中の残留塩素濃度を実施例1と同じにすると、冷却水中の一般細菌数は少なくなるが、低炭素鋼試験片の腐食速度が大きく、冷却水系における金属部材の腐食の進行が速いことが予測される。
【0011】
【発明の効果】
本発明のスライム防止方法によれば、冷却水系において、抗菌剤などを使用することなく、金属部材の腐食を抑えて、しかもスライムの発生を効果的に防止することができる
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明方法の実施の一態様の工程系統図である。
【符号の説明】
1 冷却塔
2 ピット
3 循環ポンプ
4 送り配管
5 熱交換器
6 戻り配管
7 バイパス配管
8 電解槽
Claims (1)
- 開放循環冷却水系の冷却水に塩素を添加してスライムを防止する方法において、冷却水系に補給される補給水に、補給水中の残留塩素が0 . 5〜2 mgCl /Lになるように食塩水を電解して残留塩素を発生させた塩素水を添加するとともに、濃縮された冷却水を電解し、残留塩素を発生させることを特徴とする冷却水系のスライム防止方法。
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