JP4011878B2 - 滅菌用有機ガスの処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、医療器具、生理用品などを滅菌するために使用される滅菌用有機ガスの処理方法及び処理装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
注射器などの医療器具、おむつなどの生理用品などは、滅菌装置内に収容し、この装置内にエチレンオキサイドガスを導入することによって滅菌している。しかしエチレンオキサイドガスは爆発性があって危険であり、人体に対して有害であるため、滅菌後は無害化する必要がある。
【0003】
エチレンオキサイドガスを無害化する方法として、例えば、特開平7−31664号公報には、滅菌槽からの排ガスを空気と混合した後、触媒反応器で処理し、水や二酸化炭素に分解する方法が開示されている。しかし、この方法では触媒処理に伴う発熱によって加熱された水や二酸化炭素をそのまま系外に放出しているため、発熱を有効利用することができずエネルギー効率が悪い。
【0004】
特開平8−215541号公報には、滅菌器からの酸化エチレンガスをエアレーションしながら複数回に分けて排出すると共に、排出初期の酸化エチレンガス濃度が高い場合には吸着塔で酸化エチレンガスを吸着させ、排出後期の酸化エチレンガス濃度が低くなってからは逆に吸着塔から酸化エチレンガスを脱着(離脱)させ、酸化エチレンガス濃度が約1.3〜2.8%の範囲で略一定に保たれたガスを触媒で処理する方法が開示されている。この方法では、吸着塔から離脱した酸化エチレン含有ガスを、触媒で処理したガスと熱交換することによって加熱しており、エネルギー効率に優れている。しかし、吸着塔を必要とするため装置が大型化してしまう。
【0005】
特開平11−76385号公報には、滅菌槽からの排ガス(酸化エチレンガス)をエアレーションしながら混合器(混合タンク)に蓄え、この混合器内で酸化エチレンガスの濃度を触媒燃焼最適濃度に調整した後、混合器から触媒に混合ガスを供給し、酸化エチレンを処理している。この方法も混合ガスを、触媒で処理したガスと熱交換することによって加熱しており、エネルギー効率に優れている。しかしこの方法も、混合器(混合タンク)を必要とするため装置が大型化してしまう。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前記特開平8−215541号公報、及び特開平11−76385号公報において装置を小型化しようとする場合、吸着塔や混合器(混合タンク)を取り外すことが考えられる。しかしこれら吸着塔や混合器を取り外すと、触媒に供給するガスの濃度を略一定に維持することができなくなり、高濃度ガスが触媒に供給される虞があり、触媒層での発熱量が大きくなる虞がある。そしてこれら公報の方法では、熱交換器を利用しているため、触媒層で高温になった処理ガスによって、高濃度ガスが必要以上に加熱され、この加熱高濃度ガスがさらに触媒層で発熱することによって触媒の耐熱温度以上に加熱されてしまう虞があり、触媒が熱により劣化し、失活する虞がある。
【0007】
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、エネルギー効率に優れているだけでなく、触媒に供給される滅菌用有機物の量(単位時間・単位体積当たりの量)が大きく変動しても、触媒の熱劣化による失活を防止できる滅菌用有機ガスの処理方法及び処理装置を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、装置を小型化できる滅菌用有機ガスの処理方法及び処理装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、滅菌用有機ガスを熱交換器(触媒槽で高温になった無害ガスと熱交換するための熱交換器)を介して触媒層に供給するメインラインの他に、滅菌用有機ガスを熱交換器を解することなく触媒層に供給するバイパスラインを設けると、このバイパスラインは前記吸着塔や混合器(混合タンク)に比べて占有体積が極めて小さくて装置を小型化できるだけでなく、ガス中の滅菌用有機物の濃度が高くて触媒槽の温度が高くなりすぎる虞がある場合には、滅菌用有機ガスを前記バイパスラインに供給して熱交換による加熱を回避することによって、触媒層の温度が高くなりすぎるのを防止でき、触媒の熱劣化による失活を防止できることを見出した。そして、滅菌用有機ガスをバイパスさせるバイパスラインに代えて、無害ガスをバイパスさせるバイパスラインを用いても同様の効果が得られること、さらにはバイパスラインに代えて熱交換器として滅菌用有機ガスや無害ガスを途中から抜出すことができる熱交換器を用いても同様の効果が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち本発明に係る滅菌用有機ガスの処理方法は、滅菌槽から排気された滅菌用有機ガスを酸素含有ガスで希釈し、この希釈ガスを触媒槽に供給して発熱的に酸化分解して無害ガスにする方法であり、前記酸化分解の発熱によって自己加熱された前記無害ガスと、前記希釈ガスとの間で熱交換して希釈ガスを加熱することとしている。
【0011】
そして本発明は、前記触媒槽の温度が触媒の耐熱温度を超える虞がある場合には、前記希釈ガスの一部を、熱交換することなく又は熱交換の途中から抜出して、前記触媒槽に供給することによって触媒槽の過加熱を防止する点に要旨を有するものである。また本発明は、前記触媒槽の温度が前記触媒の耐熱温度を超える虞がある場合には、前記無害ガスの一部を、熱交換することなく又は熱交換の途中から抜出して、排出することによって触媒槽の過加熱を防止する点に他の要旨を有するものである。
【0012】
無害ガスの温度が触媒の耐熱温度−10℃を超える場合に、前記触媒槽の過加熱防止策を施してもよい。
【0013】
また前記滅菌用有機ガスがアルキレンオキサイドガスである場合、希釈ガス中のアルキレンオキサイド濃度が7500ppm(容量基準)を超える場合に、前記触媒槽の過加熱防止策を施してもよい。
【0014】
また前記処理方法では、滅菌槽から前記滅菌用有機ガスを排気する第1排気操作の後、滅菌槽に洗浄用ガスを供給して残りの滅菌用有機ガスを排気する第2排気操作を1回又は複数回繰り返すことにより、排気操作を追うごとに滅菌用有機物の濃度が低下していく排ガスを処理してもよく、この場合には第1排気操作において滅菌用有機ガスの流量が1.1Nm3/分以上になる場合に、前記触媒槽の過加熱防止策を施してもよい。
【0015】
また本発明には、滅菌用有機ガスを発熱的に酸化分解して無害ガスにするための触媒槽と、
滅菌槽からの滅菌用有機ガスを酸素含有ガスで希釈した希釈ガスを前記触媒槽に供給するためのファンとで構成された処理装置であって、
前記触媒槽に供給する希釈ガスを、前記触媒槽の発熱で自己加熱された無害ガスで予熱しておくための熱交換器を備えており、
前記希釈ガスを前記熱交換器の途中から抜出して前記触媒槽に供給するための抜出しライン、及び前記希釈ガスを熱交換器に通すことなくバイパスさせるためのバイパスラインのいずれか少なくとも一方をさらに備えている滅菌用有機ガスの処理装置も含まれる。
【0016】
さらに本発明には、前記抜出ライン及びバイパスラインに代えて、他の抜出ライン及びバイパスラインを備えている装置、すなわち前記無害ガスを前記熱交換器の途中から抜出して排出するための抜出しライン、及び前記無害ガスを熱交換器に通すことなくバイパスさせるためのバイパスラインのいずれか少なくとも一方を備えている装置も含まれる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明では、滅菌用有機ガス、例えば、医療器具、生理用品などを滅菌するために使用される滅菌用ガスを酸化分解して無害化処理する。本発明で処理できる滅菌用有機ガスとしては、例えば、アルキレンオキサイドガス(エチレンオキサイドガスなど)、アルデヒドガス(ホルムアルデヒドガスなど)など、好ましくはアルキレンオキサイドガス、特にエチレンオキサイドガスが挙げられる。
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本発明をより詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の方法で使用する処理装置10aの一例を示す概略図であり、滅菌槽5からの滅菌用有機ガスを酸素含有ガスで希釈した希釈ガスを取り込むためのファン4、このファン4から取り込まれた希釈ガスを酸化分解して無害ガスにするための触媒槽1とで構成されている。またこの処理装置10aは、前記希釈ガスを触媒槽1に供給する前に予熱するための熱交換器2及びヒータ3を備えていると共に、希釈ガスを熱交換器2を介することなく触媒槽1に供給するためのバイパスラインL1も備えている。
【0020】
本発明では、滅菌槽5から滅菌用有機ガス(滅菌用有機物含有ガス)を排気し、この排ガスを酸素含有ガスで希釈する。そして、この希釈ガスをファン4によって熱交換器2を介して触媒槽1に供給することにより、又は熱交換器2を介することなくバイパスラインL1を通じて触媒槽1に供給することにより、滅菌用有機物を酸化分解して無害ガスにしている。そしてこの無害ガスも熱交換器2に供給している。前記無害ガスは、触媒槽1における酸化分解の発熱(自己加熱)によって高い熱(顕熱)を有しているため、熱交換器2を通過する前記希釈ガスを加熱することができる。そのため無害ガスの顕熱を有効利用でき、エネルギー効率を高めることができる。
【0021】
一方、バイパスラインL1を通過する希釈ガスは無害ガスによって加熱されることはない。そのため、希釈ガスを熱交換器2を通して触媒槽1に供給するか、バイパスラインL1を通して触媒槽1に供給するかを選択することによって、希釈ガスの加熱の有無を選択することができる。従って、希釈ガス中の滅菌用有機物の濃度が高くて触媒槽1の温度が高くなりすぎる虞がある場合には、希釈ガスの一部を前記バイパスラインL1に供給して熱交換による加熱を回避でき、触媒層の温度が高くなりすぎるのを防止でき、触媒の熱劣化による失活を防止できる。
【0022】
しかも前記バイパスラインL1は、従来使用されているような吸着塔や混合器(混合タンク)に比べて占有体積が極めて小さいため、装置を簡単に小型化できる。
【0023】
以下、本発明の処理方法について、滅菌槽5からの排気操作、排気ガスの希釈操作、希釈ガスの分解操作に分けてより詳細に説明する。
【0024】
[排気操作]
滅菌槽5は、当初、滅菌用有機ガスで充満されている。滅菌用ガス中の滅菌用有機物(例えば、アルキレンオキサイド)の濃度は、例えば、5〜40容量%(好ましくは10〜30容量%)程度である。前記ガス中の残余の成分は特に限定されないが、通常、CO2である。また滅菌槽5内の滅菌用有機ガスの圧力は常圧以上(例えば、加圧状態)であり、通常、0〜200kPa(ゲージ圧)程度、好ましくは30〜100kPa程度である。
【0025】
前記滅菌用有機ガスは、複数回の操作(バッチ)に分けて排気される。例えば、滅菌用有機ガスを滅菌槽5から排気する第1排気操作の後、滅菌槽5に洗浄用ガス[酸素含有ガス(空気など)など]を供給して残りの滅菌用有機ガスを排気する第2排気操作を1回又は複数回繰り返すことによって排気する。すなわち第1排気操作(第1バッチ)では滅菌用有機ガスが初期の濃度のままで排気され、第2排気操作(第2バッチ以降)では滅菌用有機物の濃度が排気操作(バッチ)を追うごとに低下していく。本発明では、後述するように所定の方法で滅菌用有機物を酸化分解しているため、滅菌用有機物の濃度が変動しても、触媒を痛めることなく酸化分解できる。なお第2排気操作は、滅菌槽5内の滅菌用有機物(アルキレンオキサイドなど)が所定濃度[例えば、1ppm(容量基準)以下]になるまで繰り返す。
【0026】
排気操作の手段は特に限定されないが、滅菌槽が加圧状態にある場合には、通常、前記加圧を利用して自然に排気する(自圧排気)。自圧排気は、滅菌槽5と処理装置10aとを直結するラインL2を通じて行う。一方、滅菌槽が常圧状態にある場合には、前記ラインL2から分岐して設けられた排気手段(真空ポンプなど)7を用いて強制排気する。なお強制排気する場合、滅菌槽5の圧力が、通常、−10〜−100kPa(ゲージ圧)程度、好ましくは−80〜−95kPa(ゲージ圧)程度になるまで強制排気する。
【0027】
また洗浄用ガスの供給手段も特に限定されないが、滅菌槽が強制排気の後で減圧状態にある場合には、復圧ガスとして洗浄用ガスを用いてもよい。また滅菌槽が常圧状態にある場合には、洗浄用ガスを供給して加圧してもよい。
【0028】
通常、滅菌操作中は滅菌用ガスが加圧状態にあることが多いため、第1排気操作としては、自圧排気で行った後、排気手段で強制排気することが多い。第2排気操作としては、洗浄用ガス(空気など)で復圧した後、排気手段で強制排気することが多い。
【0029】
各排気操作(各バッチ)では、排ガスの流量を略一定に維持してもよく、経時的に変動(特に経時的に減少)させてもよい。後述するように本発明では、排ガスを略一定流量の酸素含有ガスと混合して希釈ガスを調整することが多いため、排ガスの流量も略一定(例えば、0.1〜2Nm3/分程度、好ましくは0.2〜1Nm3/分程度の範囲から選択される流量で略一定)に維持する場合には、各排気操作中(各バッチ中)は、希釈ガス中の滅菌用有機物の濃度が略一定に維持される。なお各排気操作間(各バッチ間)では、前述したように、排気操作(バッチ)を追うごとに排ガス中の滅菌用有機物の濃度が低下していくため、希釈ガス中の滅菌用有機物濃度は、図2に示すように経時的に階段状に減少していく。一方、排ガスの流量を経時的に減少させていくと、各排気操作中(各バッチ中)でも希釈ガス中の滅菌用有機物の濃度は経時的に減少していく。従って、各排気操作間(各バッチ間)を併せた全体としては、図3に示すように経時的に略減衰波状に滅菌用有機物の濃度が減少していく。本発明では、後述の所定の方法で滅菌用有機物を酸化分解しているため、図2及び図3のいずれの濃度パターンを示す希釈ガスであっても、触媒を痛めることなく酸化分解できる。
【0030】
なお滅菌槽からの排ガスの温度は、通常、室温〜60℃程度である。
【0031】
[希釈操作]
前記排気ガス(第1排気操作による排気ガス、第2排気操作による排気ガスなど)は、処理装置10aに設けられた排ガス導入弁V1を通じて処理装置10a内に取り込まれる。一方、処理装置10aには、酸素含有ガス(空気など)取入口7及び酸素含有ガス量調整弁V2で構成された酸素含有ガス取入手段8が設けられている。そして前記排ガス導入弁V1及び酸素含有ガス取入手段8に接続する混合器(スタティックミキサーなど)6において、排ガスと酸素含有ガスとを混合・希釈する。この希釈ガスは、前記混合器6の下流側に設けられたファン4によって、熱交換器2及び/又はバイパスラインL1に供給される。なお前記ファン4は、混合器6の上流側に設けてもよい。
【0032】
混合・希釈では、安全のため、希釈ガス中の滅菌用有機物(アルキレンオキサイドなど)の濃度を、爆発下限界濃度の1/4以下[例えば、7500ppm(容量基準)以下]にすることが多い。
【0033】
酸素含有ガスの取り込み量(流量)は、希釈ガスを所定濃度(例えば、爆発下限界の1/4程度)にできる限り特に限定されず、排ガスの濃度及び流量に応じて適宜設定できるが、例えば、排ガス流量の10〜50倍程度、好ましくは15〜30倍程度、さらに好ましくは20〜25倍程度の範囲内で適宜設定できる。
【0034】
また酸素含有ガスの流量は、排ガスの流量に併せて変動させてもよいが、略一定にする方が操作が簡便である。略一定にする場合、酸素含有ガスの流量は、例えば、5〜40Nm3/分程度、好ましくは10〜30Nm3/分程度、さらに好ましくは15〜25Nm3/分程度の範囲から選択できる。
【0035】
このようにして得られた希釈ガス中の滅菌用有機物の濃度は、排ガスの流量及び/又は濃度に応じて大きく変動し、例えば、上述の図2又は図3に示すように、経時的に階段状に又は減衰波状に減少していく。希釈ガス中の滅菌用有機物(アルキレンオキサイドなど)の濃度は、濃い場合で9000〜10000ppm(容量基準)程度[好ましくは7000〜9000ppm(容量基準)程度、さらに好ましくは5000〜7500ppm(容量基準)程度]であり、薄い場合で1000ppm(容量基準)以下程度である。このように幅広い範囲で濃度が変動しても、本発明では、後述の所定の方法で滅菌用有機物を酸化分解しているため、触媒を痛めることなく酸化分解できる。
【0036】
[分解操作]
前記希釈ガスは、熱交換器2で加熱した後で触媒槽1に供給する。また希釈ガスの一部を熱交換器2で加熱することなくバイパスラインL1を通過させることにより触媒槽1に供給する場合もある。触媒槽1では、希釈ガス中の滅菌用有機物を酸化し、水やCO2などに分解することができ、無害化できる。なお、前記触媒槽1に供給する希釈ガスの温度が低すぎると、反応効率が低下する虞がある。従って、希釈ガスの温度が低すぎる場合には、触媒槽1の上流側に設けられたヒーター3で希釈ガスを加熱し、触媒ごとに定められた反応可能温度(例えば、触媒が貴金属触媒である場合、200℃以上、好ましくは230〜300℃程度、さらに好ましくは250〜280℃程度)にするのが望ましい。
【0037】
前記酸化反応は発熱反応であるため、触媒槽1から流出する無害ガスは温度が上昇している。従って本発明では、前記無害ガスを前記熱交換器2に供給している。これにより希釈ガスの加熱のために無害ガスの顕熱を有効利用でき、エネルギー効率を高めることができる。例えば、触媒として貴金属触媒を用いてアルキレンオキサイド(特にエチレンオキサイド)を処理する場合、前記反応可能温度(触媒槽の入口温度)としては250℃が最も好ましく、無害ガス(出口温度)は500℃程度であることが多い。そして熱交換前の希釈ガスの温度は20℃程度であることが多いため、前記入口温度(250℃程度)までヒーター3だけで加熱しようとすると、250−20=230℃も加熱する必要があるのに対して、熱交換すれば希釈ガスの温度を約250℃程度にまで高めることができ、ヒーター3による加熱が不要となる。
【0038】
なおヒーター3は熱交換器2の上流側に設けてもよいが、下流側に設けるのが望ましい。下流側に設けると、熱交換器2における加熱の程度に応じて、ヒータ3における追加の加熱の程度を調節でき、ヒーター3に要するエネルギーを無駄に消費する虞がない。
【0039】
ところが、上述したように、排ガス中の滅菌用有機物の濃度は変動する場合が多く、排ガスの流量も変動する場合があるため、希釈ガス中の滅菌用有機物の濃度は大きく変動する場合が多い。また希釈ガスの流量も常に一定ではなく、変動する場合がある。これらの場合、触媒槽1では単位時間・単位体積当たりの滅菌用有機物の処理量が大きくなり、従って発熱量も大きくなるため、無害ガスの温度が触媒の耐熱温度を超えて高くなる虞がある。
【0040】
そこで本発明では、触媒槽1の温度(無害ガスの温度)が触媒の耐熱温度を超える虞がある場合には、希釈ガスの一部(希釈ガスの流量を100としたとき、例えば、0〜80程度、好ましくは10〜70程度)を熱交換器2に通すことなく、バイパスラインL1を通じて触媒槽1に供給することによって、希釈ガスの必要以上の加熱を防止して、無害ガスの高温化及び触媒槽の過加熱を防止する。これにより、単位時間・単位体積当たりの滅菌用有機物の処理量が大きくなっても、無害ガスの高温化を防止でき、触媒の熱劣化による失活を防止できる。
【0041】
無害ガスの温度が触媒の耐熱温度を超えないようにするためには、すなわち熱交換器を通過する希釈ガス量の管理は、無害ガスの温度を直接測定して当該温度に基づいて行ってもよく、他の手段によって行ってもよい。
【0042】
無害ガスの温度を直接測定する場合には、例えば、無害ガスの温度が耐熱温度−10℃を超える場合、好ましくは耐熱温度−20℃を超える場合、さらに好ましくは耐熱温度−50℃を超える場合に、希釈ガスの一部をバイパスラインL1に供給して、熱交換量を低減してもよい。
【0043】
他の手段によって熱交換器を通過する希釈ガス量を管理する場合、例えば、排ガスのバッチ順に応じて熱交換器を通過する希釈ガス量を管理してもよく(以下、第1の管理方法と称する)、前記バッチ順及び希釈ガス流量に応じて熱交換器を通過する希釈ガス量を管理してもよく(以下、第2の管理方法と称する)、前記バッチ順及び排ガス流量(酸素含有ガスで希釈する前の排ガスの流量)に応じて熱交換器を通過する希釈ガス量を管理してもよく(以下、第3の管理方法と称する)、希釈ガス中の滅菌用有機物の濃度に応じて熱交換器を通過する希釈ガス量を管理してもよい(以下、第4の管理方法と称する)。
【0044】
第1の管理方法(バッチ順で管理する方法)の場合、例えば、第1バッチの排ガスに対応する希釈ガスでは、希釈ガスの一部をバイパスラインL1に通して熱交換させないこととし、第2バッチ以降は希釈ガスの全部を熱交換器2に供給して熱交換させることとする。上述の図2や図3で示したように、第1バッチの希釈ガスにおいて滅菌用有機物濃度が高い場合が多いため、この第1バッチの希釈ガスの過加熱を防止することによって、無害ガスの過加熱を防止できる。
【0045】
第2の管理方法(バッチ順及び希釈ガス流量で管理する方法)の場合、例えば、以下のようにすることができる。すなわち第1バッチ(高濃度バッチ)において、希釈ガスの流量が30Nm3/分以上(特に29Nm3/分以上)になる場合に、希釈ガスの一部をバイパスラインL1に通して熱交換させないこととし、希釈ガスの流量が前記流量未満になる場合に、希釈ガスの全部を熱交換器2に供給して熱交換させることとする。なお第2バッチ以降は、前記第1の管理方法と同様に、希釈ガスの全部を熱交換器2に供給してもよい。
【0046】
第3の管理方法(バッチ順及び排ガス流量で管理する方法)の場合、例えば、以下のようにすることができる。すなわち第1バッチ(高濃度バッチ)において、排ガス(希釈前の滅菌用有機ガス)の流量が1.1Nm3/分以上(特に1.0Nm3/分以上)になる場合に、希釈ガスの一部をバイパスラインL1に通して熱交換させないこととし、排ガスの流量が前記流量未満になる場合に、希釈ガスの全部を熱交換器2に供給して熱交換させることとする。なお第2バッチ以降は、前記第2の管理方法と同様に、希釈ガスの全部を熱交換器2に供給してもよい。
【0047】
第4の管理方法(滅菌用有機物の濃度で管理する方法)の場合、例えば、希釈ガス中の滅菌用有機物(アルキレンオキサイドなど)の濃度が7500ppm(容量基準)以上[特に7000ppm(容量基準)以上]となる場合に、希釈ガスの一部をバイパスラインL1に通して熱交換させないこととし、希釈ガスの濃度が前記濃度未満になる場合に、希釈ガスの全部を熱交換器2に供給して熱交換させることとする。
【0048】
また前記第1〜第4の管理方法は適宜組合わせてもよい。例えば、第1バッチの希釈ガスに対しては第1の管理方法で管理し、第2バッチ以降の希釈ガスに対しては、第4の管理方法(濃度管理)で管理してもよい。
【0049】
なお管理方法によっては、安全のために必要以上にバイパスラインL1に希釈ガスを通してしまう場合があり、触媒槽1に供給するには希釈ガスの温度が低くなり過ぎてしまう場合がある。その場合、ヒーター3で希釈ガスを加熱してもよい。
【0050】
バイパスラインL1及び熱交換器2に対する希釈ガスの分配比率は、弁(バルブ)の開度によって制御できる。すなわち前記バイパスラインL1の入口側にはバイパス調整弁V3が取り付けられており、熱交換器2の入口側にも調整弁V4が取り付けられている。従って、これら弁V3,V4の開度を調整することによって、希釈ガスの分配比を制御できる。
【0051】
触媒槽1における滅菌用有機物の分解率は、例えば、99.5%以上、好ましくは99.9%以上、さらに好ましくは99.99%以上である。
【0052】
[予熱操作]
なお処理装置10aでは、排ガスを受け入れるに先立って、触媒槽1を予熱しておくのが望ましい。予熱では、例えば、酸素含有ガス取入手段8から取り入れた媒体ガス(空気など)を、熱交換器2及びヒーター3で加熱し、この加熱媒体ガスを触媒槽1に供給することによって触媒槽1を加熱する。なお触媒槽1の加熱に利用した媒体ガスは、未だ顕熱が残っているため、再び熱交換器2に供給し、新たに導入する媒体ガスを加熱するのに利用する。
【0053】
前記予熱用の媒体ガスの流量は、上記希釈ガスの流量に対して、例えば、100%以下、好ましくは10〜70%程度、さらに好ましくは20〜60%程度である。媒体ガスの流量を絞ることによって、熱交換器2における熱交換効率を高めることができ、エネルギー効率を高めることができる。
【0054】
前記予熱は、触媒槽1の出口ガスが所定温度[例えば、200℃以上(好ましくは230℃以上、さらに好ましくは250℃以上)、350℃以下(好ましくは300℃以下、さらに好ましくは280℃以下)]になるまで継続する。
【0055】
本発明では、無害ガスの温度が触媒の耐熱温度を超える虞がある場合に、希釈ガスの一部を熱交換することなく触媒槽1に供給できる限り、前記処理装置10aに限らず種々の装置が使用できる。図4は本発明に使用できる別の処理装置10bの概略図である。なお図1と同じ構成部分については同一の符号を付して重複説明を避ける(以下、他の図についても同様)。
【0056】
この処理装置10bでは、無害ガスをバイパスさせる点で、希釈ガスをバイパスさせる前記装置10aとは異なる。より詳細には、前記装置10aに比べると、希釈ガスをバイパスさせるラインL1が無い代わりに、無害ガスを熱交換器2に通すことなくバイパスさせるバイパスラインL3が触媒槽1の出口から分岐している。そして熱交換器2及びバイパスラインL3に対する無害ガスの分配比率を調整するためのバルブV5,V6が、熱交換器2及びバイパスラインL3の入口に設けられている。
【0057】
触媒槽の温度(無害ガスの温度)が触媒の耐熱温度を超える虞がある場合には、無害ガスの一部(無害ガスの流量を100としたとき、例えば、0〜80程度、好ましくは10〜70程度)を熱交換器2に通すことなく、バイパスラインL3を通じて排出することによって、希釈ガスの必要以上の加熱を防止することができる。
【0058】
さらにバイパスラインは必ずしも必要ではなく、前記熱交換器2として、希釈ガス又は無害ガスを途中から抜出すことができる熱交換器を用いても同様の効果が得られる。図5は希釈ガスを途中から抜出すことができる熱交換器2bを備えた処理装置10cの概略図である。
【0059】
この装置10cは、バイパスラインL1(及び、バルブV3,V4)が無く、通常の熱交換器2に代えて、1つ又は複数(この例では、2個)の分岐ライン(抜出ライン)L4及びL5を備えた熱交換器2bを備えている点を除いては、前記装置10aと同様である。より詳細には、熱交換器2の分岐ラインL4及びL5は希釈ガスを途中から抜出すことが可能である。抜出した希釈ガスは、ヒータ3を介して触媒槽1に供給可能である。そして、各分岐ラインL4,L5と、分岐することなく熱交換器2bから希釈ガスを流出させるための出口ラインL6には、それぞれ独立して開閉可能なバルブV7,V8,V9が配設されている。これらバルブV7〜V9の開度を調節することにより、熱交換器2bによる希釈ガスの加熱の程度を制御できる。そのため、触媒に供給される滅菌用有機物の量(単位時間・単位体積当たりの量)が大きく変動しても、触媒の熱劣化による失活を防止できる。しかも前記分岐ラインL4,L5は、従来使用されているような吸着塔や混合器(混合タンク)に比べて占有体積が極めて小さいため、装置を簡単に小型化できる。
【0060】
なお前記装置10cでは、無害ガスを熱交換器の途中から抜出して排出すための分岐ライン(抜出ライン)を備えた熱交換器を用いてもよい。この場合も、分岐ラインと、分岐することなく熱交換器から無害ガスを流出させるための出口ラインとに独立して開閉可能なバルブを配設することにより、無害ガスによる希釈ガスの加熱の程度を制御できる。
【0061】
なお本発明では、各操作は、センサ(温度センサ、濃度センサ、流量センサなど)などに対応させて自動化してもよい。
【0062】
本発明で使用する触媒としては、公知の種々の触媒が使用できる。好ましい触媒には、貴金属触媒、例えば、下記A成分から選択された少なくとも一種と、下記B成分から選択された少なくとも一種とを含有する貴金属系触媒が含まれる。
【0063】
A成分:アルミニウム、チタニウム、シリコン、ジルコニウム、セリウム、鉄B成分:金、銀、白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、ニッケル、コバルト、クロム、マンガン、銅
前記公知の触媒(特に貴金属触媒)は、汎用型触媒と高温型触媒とに分類される。各触媒の反応可能温度は、触媒の種類に応じて下記の通り適宜設定できる。
【0064】
汎用型触媒:約200〜250℃程度(特に約250℃程度)
高温型触媒:約200〜350℃程度(特に約250℃程度)
また前記各触媒の耐熱温度は、触媒の種類に応じて、下記の通り適宜設定できる。
【0065】
汎用型触媒:約550℃程度
高温型触媒:約750℃程度
【0066】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、無害ガスの熱によって希釈ガスを加熱しているため、エネルギー効率を高めることができる。しかも触媒槽の温度(無害ガスの温度)が触媒の耐熱温度を超える虞がある場合には、(1)希釈ガスの一部を、熱交換することなく又は熱交換の途中から抜出して、触媒槽に供給するため、又は(2)無害ガスの一部を、熱交換することなく又は熱交換の途中から抜出して、排出するため、滅菌用有機物の量(単位時間・単位体積当たりの量)が大きく変動しても、触媒槽の温度が上がりすぎるのを防止でき、触媒の熱劣化による失活を防止できる。
【0067】
さらに希釈ガスの加熱の程度を、希釈ガスと無害ガスとの間での熱交換の有無によって制御する場合には、希釈ガス及び無害ガスのいずれかを熱交換器に供給させないためのバイパスラインを設けるだけでよい。また希釈ガスの加熱の程度を、希釈ガス又は無害ガスを熱交換の途中で抜出すことによって制御する場合には、熱交換器に抜出ラインを設けるだけでよい。これらバイパスラインや抜出ラインは、大きな体積を必要としないため、装置を簡単に小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に使用する装置の一例を示す概略斜視図である。
【図2】 希釈ガス中のアルキレンオキサイド濃度の経時変化の一例を示すグラフである。
【図3】 希釈ガス中のアルキレンオキサイド濃度の経時変化の他の例を示すグラフである。
【図4】 本発明に使用する装置の他の例を示す概略斜視図である。
【図5】 本発明に使用する装置の別の例を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
1…触媒槽
2、2b…熱交換器
3…ヒータ
4…ファン
5…滅菌槽
6…混合器
10a、10b、10c…処理装置
L1、L3…バイパスライン
L4、L5…抜出ライン
Claims (3)
- 滅菌槽から排気された滅菌用有機ガスを酸素含有ガスで希釈し、この希釈ガスを触媒槽に供給して発熱的に酸化分解して無害ガスにする方法であって、
前記滅菌槽からの排気は、滅菌槽から前記滅菌用有機ガスを排気する第1排気操作の後、滅菌槽に洗浄用ガスを供給して残りの滅菌用有機ガスを排気する第2排気操作を1回又は複数回繰り返すことによって行うものであり、
希釈ガス中の滅菌用有機ガスは、排気操作を追うごとに経時的に階段状又は減衰波状に減少していき、その濃度は、濃い場合で5000ppm(容量基準)以上、薄い場合で1000ppm(容量基準)以下であり、
前記酸化分解の発熱によって自己加熱された前記無害ガスと、前記希釈ガスとの間で熱交換して希釈ガスを加熱することとし、
前記触媒槽の温度が触媒の耐熱温度を超える虞がある場合には、前記希釈ガスの一部を、熱交換することなく又は熱交換の途中から抜出して、前記触媒槽に供給することによって触媒槽の過加熱を防止することを特徴とする滅菌用有機ガスの処理方法。 - 滅菌槽から排気された滅菌用有機ガスを酸素含有ガスで希釈し、この希釈ガスを触媒槽に供給して発熱的に酸化分解して無害ガスにする方法であって、
前記滅菌槽からの排気は、滅菌槽から前記滅菌用有機ガスを排気する第1排気操作の後、滅菌槽に洗浄用ガスを供給して残りの滅菌用有機ガスを排気する第2排気操作を1回又は複数回繰り返すことによって行うものであり、
希釈ガス中の滅菌用有機ガスは、排気操作を追うごとに経時的に階段状又は減衰波状に減少していき、その濃度は、濃い場合で5000ppm(容量基準)以上、薄い場合で1000ppm(容量基準)以下であり、
前記酸化分解の発熱によって自己加熱された前記無害ガスと、前記希釈ガスとの間で熱交換して希釈ガスを加熱することとし、
前記触媒槽の温度が前記触媒の耐熱温度を超える虞がある場合には、前記無害ガスの一部を、熱交換することなく又は熱交換の途中から抜出して、排出することによって触媒槽の過加熱を防止することを特徴とする滅菌用有機ガスの処理方法。 - 無害ガスの温度が触媒の耐熱温度−10℃を超える場合に、前記触媒槽の過加熱防止策を施す請求項1又は2に記載の方法。
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