JP4009109B2 - ビニルエーテルの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬、農薬、高分子化合物等の原料として有用なビニルエーテルの製造方法、さらに詳しくはエーテル交換によるビニルエーテルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
比較的入手しやすいビニルエーテルの分子中の置換基を変え、目的とするビニルエーテルを得る方法として、触媒の存在下、下記一般式(1)で表されるアルコールと下記一般式(2)で表されるアルキルビニルエーテルとを反応させて、下記一般式(3)で表されるビニルエーテルと下記一般式(4)で表されるアルコールとを生成させる方法が知られている。
【0003】
R1(OH)n (1)
R2OCH=CH2 (2)
R1(OCH=CH2)m(OH)n-m (3)
R2OH (4)
(式中、R1は有機残基を示し、R2はアルキル基を示し、R1とR2とは異なるものである。また、nおよびmは1〜3の整数を示し、n≧mである。)
このようなアルキルビニルエーテルとアルコールとをエーテル交換させる方法としては、例えば、J.Org.Chem., 14, 1057, (1949) には、触媒として水銀−カドミウム−スズ塩を使用する方法が記載されている。また、J.Am.Chem.Soc., 79(5), 2828, (1957) には、触媒として弱酸の水銀塩を使用する方法が記載されている。
【0004】
また、Tetrahedron, 28, 233, (1972) には、触媒としてジアセテート−(1,10−フェナントロリン)−、および、ジアセテート−(2,2′−ビピリジル)−パラジウム(II)−錯体を使用する方法が記載されている。欧州特許(EP−A)第351603号明細書には、触媒としてルテニウム化合物を使用する方法が記載されている。特開平9−87224号公報には、触媒として酢酸パラジウム−1,10−フェナントロリン錯体を使用する方法が開示されている。特開2001−97911号公報には、触媒としてコバルト錯体を使用する方法が開示されている。
【0005】
ところで、エーテル交換反応は平衡反応であり、目的物の収率を高めるために、通常、反応原料の上記一般式(1)で表されるアルコールまたは上記一般式(2)で表されるアルキルビニルエーテルを過剰に仕込む方法や、生成物の上記一般式(3)で表されるビニルエーテルまたは上記一般式(4)で表されるアルコールを反応系外に取り除きながら反応させる方法等が取られている。
【0006】
しかしながら、原料アルコールまたは原料アルキルビニルエーテルを過剰に仕込む方法は、過剰に仕込んだ方の原料が多く残るため、効率的な方法とは言い難い。
【0007】
また、生成ビニルエーテルまたは生成アルコールを反応系外に取り除きながら反応させる方法では、反応原料の上記一般式(1)で表されるアルコールの沸点と生成物の上記一般式(3)で表されるビニルエーテルの沸点とが、また、反応原料の一般式(2)で表されるアルキルビニルエーテルの沸点と生成物の上記一般式(4)で表されるアルコールの沸点とが近い場合が多く、そのような場合、生成物のみを反応系外に取り除くことは困難である。
【0008】
そのため、ビニルエーテルを効率的かつ容易に製造する方法が望まれる。
【0009】
なお、従来のビニルエーテル交換反応は、原料ビニルエーテルの沸点が他の化合物よりも低い場合が多く、原料ビニルエーテルのみが系内から揮発するなどの理由から、反応は密閉系、または、揮発したビニルエーテルを液化して戻す冷却管を備えた装置を用いる還流系で行われる。反応液中の溶存酸素は、反応関連物質の酸化反応などに使用されて減少するので、密閉系または還流系の場合、反応液中の溶存酸素濃度は、通常、反応初期の段階で5ppm以下になる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、アルキルビニルエーテルとアルコールとをエーテル交換させて目的とするビニルエーテルを効率よく、容易に製造する方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、以下の本発明により解決できる。
(I)触媒の存在下、下記一般式(1)で表されるアルコールと下記一般式(2)で表されるアルキルビニルエーテルとを反応させて、下記一般式(3)で表されるビニルエーテルを製造する方法であって、
R1(OH)n (1)
R2OCH=CH2 (2)
R1(OCH=CH2)m(OH)n-m (3)
(式中、R1は有機残基を示し、R2はアルキル基を示し、R1とR2とは異なるものである。また、nおよびmは1〜3の整数を示し、n≧mである。)
上記一般式(1)で表されるアルコールと上記一般式(2)で表されるアルキルビニルエーテルとを含む反応液中の溶存酸素濃度を10ppm以上に調整しながら反応を行うことを含むことを特徴とするビニルエーテルの製造方法。
(II)反応液中に酸化剤を存在させて反応を行うことを特徴とする前記(I)のビニルエーテルの製造方法。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明では、上記一般式(1)で表されるアルコールと上記一般式(2)で表されるアルキルビニルエーテルとを含む反応液中の溶存酸素濃度を10ppm以上に調整しながらエーテル交換反応を行う。
【0013】
このようにして反応を行うことにより、反応液中の溶存酸素濃度を10ppm以上に調整せずに反応を行う場合と比べて、高収率で目的とするビニルエーテルが得られる。本発明の製造方法では、特に過剰に原料を使用したり、生成物を除去せずとも、目的とするビニルエーテルを容易に、効率よく製造することができるが、過剰に原料を使用したり、生成物を除去することで、より効率的にビニルエーテルを製造できる場合もある。
【0014】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0015】
原料アルコールである上記一般式(1)で表されるアルコールとしては特に限定されず、目的とするビニルエーテルに応じて適宜決めればよい。一般式(1)で表されるアルコールとして、具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、n−へキシルアルコール、n−へプチルアルコール、n−オクチルアルコール、n−ノニルアルコール、n−デシルアルコール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の直鎖または分枝鎖の脂肪族アルコール、アリルアルコール、ブチンジオール等の不飽和アルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、1−アダマンタノール、2−アダマンタノール、1−アダマンタンメタノール等の脂環式アルコール、フェノール、ベンジルアルコール等の芳香族アルコール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、グリセリン等の2価または3価のアルコール、さらには、これらのアルコールの少なくとも一つの位置がアミノ基、カルボキシル基、カルボニル基、アミド基等の置換基に置換されたアルコール、構造中にエーテル結合、エステル結合等を有したアルコールなどが挙げられる。また、これらのアルコールはヘテロ原子を有していてもよい。これらのアルコールの中でも、反応性の点から、第一アルコール、第二アルコールが好ましく、第一アルコールがより好ましい。
【0016】
上記一般式(1)で表されるアルコールは、2種以上を併用してもよいが、それぞれ単独で用いることが好ましい。目的生成物である上記一般式(3)で表されるビニルエーテルを蒸留操作により単離する場合、反応系中に存在する化合物の種類が多くなるとその操作が煩雑になることがある。
【0017】
原料アルキルビニルエーテルである上記一般式(2)で表されるアルキルビニルエーテルは特に限定されず、入手可能なものならいずれも使用できる。一般式(2)で表されるアルキルビニルエーテルとして、具体的には、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、ペンチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、ヘプチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、ノニルビニルエーテル、デカニルビニルエーテル、アリルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテルなどが挙げられる。これらのアルキルビニルエーテルの中でも、反応性の点から、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等のR2の炭素数が1〜4の第一ビニルエーテルが好ましく、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテルがより好ましい。
【0018】
上記一般式(2)で表されるアルキルビニルエーテルは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
一般式(2)で表されるアルキルビニルエーテルの使用量(仕込み混合比率)は、通常、一般式(1)で表されるアルコール1モルに対して0.1〜100モルである。一般式(2)で表されるアルキルビニルエーテルの使用量は、収率の点から、一般式(1)で表されるアルコール1モルに対して0.5モル以上が好ましく、1モル以上がより好ましい。また、一般式(2)で表されるアルキルビニルエーテルの使用量は、副反応防止の点から、一般式(1)で表されるアルコール1モルに対して20モル以下が好ましく、10モル以下がより好ましい。
【0020】
本発明で用いる触媒としては、酸触媒、塩基触媒、金属(合金も含む)、金属を含む化合物などのビニルエーテル交換反応に使用される触媒いずれも用いることができる。触媒は、1種を用いても、2種以上を併用してもよい。
【0021】
触媒としては、反応速度の点から、金属または合金、金属を含む化合物が好ましく、金属錯体がより好ましい。金属としては、例えば、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム、イリジウム、白金、金などの貴金属、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、インジウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウムなどが挙げられる。金属を含む化合物としては、金属の錯体、塩、酸化物、硫化物、窒化物や、有機金属化合物などが挙げられる。なお、金属を含む化合物は、1種の金属を含むものであっても、複合酸化物等の2種以上の金属を含むものであってもよい。
【0022】
触媒としては、溶媒への溶解性および目的生成物の選択性の点から、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム、イリジウム、白金、金などの貴金属の錯体、あるいは、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、インジウム、ハフニウム、タンタル、タングステンまたはレニウムのいずれか1種以上の金属の錯体が特に好ましい。
【0023】
貴金属の錯体として、具体的には、1,10−フェナントロリンパラジウムジクロリド、1,10−フェナントロリンロジウムジクロリド、2,2−ビピリジンパラジウムジブロミド、2,2−ビピリジンパラジウムジクロリド、1,10−フェナントロリンルテニウムトリクロリド、2,2−ビピリジンルテニウムジクロリド、1,10−フェナントロリンパラジウムジアセテート、1,10−フェナントロリンロジウムトリアセテート、2,2−ビピリジンパラジウムジアセテート、2,2−ビピリジンロジウムトリアセテート、1,10−フェナントロリンルテニウムトリアセテート、パラジウムアセチルアセトネートジクロリド、ルテニウムアセチルアセトネートトリクロリド、ロジウムアセチルアセトネートトリニトレート、パラジウムアセチルアセトネートスルフェート、白金アセチルアセトネートジクロリドなどが挙げられる。これらの中では、パラジウム錯体が好ましく、目的物の生成量の点から、酢酸パラジウム−1,10−フェナントロリン錯体、塩化パラジウム−1,10−フェナントロリン錯体などのパラジウムの1,10−フェナントロリン錯体がより好ましい。
【0024】
アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、インジウム、ハフニウム、タンタル、タングステンまたはレニウムのいずれか1種以上の金属の錯体として、具体的には、これらの金属とアセチルアセトナート、1,10−フェナントロリン等との錯体、フェロセンなどが挙げられる。これらの中では、コバルト錯体が好ましく、収率の点から、Co(CH3COCHCOCH3)2、Co(CH3COCHCOCH3)3、Co(CH3COCHCOCH3)2・2H2O、Co2(CO)8などのコバルトカルボニル錯体がより好ましい。
【0025】
また、これらの化合物は、水和物であってもよい。
【0026】
触媒の使用量は、通常、一般式(2)で表されるアルキルビニルエーテル1モルに対して0.001〜1モルである。触媒の使用量は、反応速度の点から、一般式(2)で表されるアルキルビニルエーテル1モルに対して0.005モル以上が好ましく、0.01モル以上がより好ましい。また、触媒の使用量は、副反応防止の点から、一般式(2)で表されるアルキルビニルエーテル1モルに対して0.8モル以下が好ましく、0.5モル以下がより好ましい。
【0027】
触媒の使用形態としては特に限定されず、例えば、そのまま反応液に溶解した溶液の状態で用いてもよく、触媒の一部または全量が反応液に懸濁したスラリーの状態で用いてもよい。また、反応液に不溶な触媒であれば、担体へ担持させて用いてもよい。担体は特に限定されず、例えば、シリカ、アルミナ、ゼオライト等の金属酸化物や活性炭などが挙げられる。また、担体としてメチルアクリレート、エチルアクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルアクリレート等のアクリル酸エステル類、o−、m−、p−メチルスチレン、o−、m−、p−エチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルトルエンならびにスチレン等からなる群から少なくとも1種の化合物とジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジアリルフタレート、ジアクリレート、ジビニルピリジン、エチレングリコールジメタクリレート、ジビニルキシレン、ジビニルエチルキシレン、アリルアクリレート、p−スチリル−1,4−ブタンジオール、p−スチリル−1,4−ペンタンジオール、p−スチリル−1,4−エタンジオール、N,N'−エチレンジアクリルアミド、トリビニルベンゼン、トリビニルナフタレン、ジビニルアントラセン、グリコールグリセロールとペンタエリスリトール等から選ばれる少なくともひとつの架橋剤との共重合体などを用いてもよい。
【0028】
本発明では、必要に応じて、反応液に有機溶媒を混合してもよい。このような有機溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、スルホラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、ベンゼン、トルエンなどが挙げられる。中でも、反応を円滑に進行させるので、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、ベンゼン、トルエンなどが好ましい。
【0029】
有機溶媒を使用する場合、その使用量は、反応を円滑に進め、副生成物を抑制する点から、一般式(1)で表されるアルコールに対して0.1質量倍以上が好ましく、0.5質量倍以上がより好ましく、1質量倍以上が特に好ましい。また、有機溶媒の使用量は、反応速度や廃溶媒量の点から、一般式(1)で表されるアルコールに対して100質量倍以下が好ましく、50質量倍以下がより好ましく、10質量倍以下が特に好ましい。
【0030】
有機溶媒中に水が含まれていてもよいが、触媒の活性低下防止および副反応抑制の点から、有機溶媒中の水の量はできる限り少ない方が好ましい。
【0031】
本発明の反応の形態としては、開口容器を使用した開放系、密閉容器を使用し、常圧または加圧して反応を行う密閉系、沸点付近で反応を行い、原料または溶媒を冷却器で還流する還流系などがある。
【0032】
本発明においては、反応原料である上記一般式(1)で表されるアルコールと上記一般式(2)で表されるアルキルビニルエーテルとを含む反応液中の溶存酸素濃度を10ppm以上に調整しながらエーテル交換反応を行う。
【0033】
反応液中の溶存酸素濃度を10ppm以上に調整する方法としては、例えば、反応液中に空気または酸素をバブリングさせる方法、密閉容器内で空気または酸素で加圧して反応液中に酸素を溶解させる方法、反応液中に酸素または酸素ラジカルを発生する薬剤を添加する方法などがある。また、必要な反応液中の溶存酸素濃度が得られるならば、反応液の液面に空気または酸素を吹き付ける方法、反応器の気相部に酸素を流通させる方法などを用いてもよい。この場合、反応液は攪拌することが好ましい。
【0034】
反応液中に酸素または酸素ラジカルを発生する薬剤を添加する方法において使用する薬剤としては、例えば、過酸化水素、過マンガン酸塩、次亜塩素酸塩、過硫酸塩などの酸化剤が挙げられる。中でも、副反応の少ない過酸化水素が好ましい。
【0035】
酸素または酸素ラジカルを発生する薬剤の添加方法としては、例えば、反応開始前に全量の薬剤を反応液に添加しておく方法、反応中に薬剤を連続的または間欠的に反応液に添加する方法などが挙げられる。薬剤は、例えば、粉末状、スラリー状または溶液の状態などで添加することができる。
【0036】
薬剤の使用量は種類により異なるが、例えば過酸化水素の場合、反応速度の点から、一般式(1)で表されるアルコール1モルに対して0.1モル以上が好ましく、0.5モル以上がより好ましく、1モル以上が特に好ましい。また、過酸化水素の使用量は、安全性の点から、一般式(1)で表されるアルコール1モルに対して20モル以下が好ましく、10モル以下がより好ましく、5モル以下が特に好ましい。
【0037】
反応中における反応液中の溶存酸素濃度は、反応速度の点から30ppm以上がより好ましく、50ppm以上が特に好ましい。また、反応液中の溶存酸素濃度の上限は特に規定されず、飽和溶解量まで酸素が反応液に溶解していてもよい。
【0038】
エーテル交換反応の反応条件は特に限定されず、原料アルコールや原料アルキルビニルエーテル、反応液中の溶存酸素濃度等に応じて適宜決めればよい。
【0039】
本発明において、エーテル交換反応を行う際の反応圧力は特に制限されず、減圧、常圧、加圧いずれの圧力下においても実施できる。
【0040】
反応温度は、通常、−20〜150℃の範囲で行われる。反応温度は、反応速度の点から、0℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましく、20℃以上が特に好ましい。また、反応温度は、副反応防止の点から、100℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましく、50℃以下が特に好ましい。
【0041】
反応時間は適宜決めればよいが、通常、1〜48時間程度が好ましい。
【0042】
本発明では、エーテル交換反応を行う際、必要に応じて重合禁止剤を反応液に添加してもよい。
【0043】
重合禁止剤は特に限定されず、例えば、ヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、ベンゾキノン、p−tert−ブチルカテコール等のキノン系重合禁止剤、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2,6―ジ―tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノール等のアルキルフェノール系重合禁止剤、アルキル化ジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン等のアミン系重合禁止剤、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅等のジチオカルバミン酸銅系重合禁止剤などが挙げられる。重合禁止剤は、1種を用いても、2種以上を併用してもよい。
【0044】
重合禁止剤の添加量は、一般式(2)で表されるアルキルビニルエーテルに対して5質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下が特に好ましい。
【0045】
本発明においては、このようにしてエーテル交換反応を行い、上記一般式(3)で表されるビニルエーテルを製造する。生成したビニルエーテルは、通常、有機溶媒/水系による抽出、水や有機溶媒による洗浄、溶媒分別法、カラムクロマトグラフィー、蒸留等の公知の方法により精製する。
【0046】
また、目的生成物である一般式(3)で表されるビニルエーテル取得の際に回収された原料アルコール、原料アルキルビニルエーテルは、再度反応に使用することができる。
【0047】
【実施例】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0048】
反応液中の目的生成物(ビニルエーテル)の濃度はFIDガスクロマトグラフィーにて測定した。また、反応液中の溶存酸素濃度はTCDガスクロマトグラフィーにて測定した。
【0049】
<実施例1>
−10℃の冷媒を流した冷却管及び酸素バブリング用ボールフィルタを備えた200ml反応容器に、n−ドデシルアルコール18.6g(0.1モル)、n−ブチルビニルエーテル50.0g(0.5モル)、コバルト(III)アセチルアセトナート1.78g(0.005モル)を入れた。そして、内温を30℃にし、反応液に酸素を10ml/minの割合で供給(バブリング)し、攪拌しながら6時間反応させた。
【0050】
反応終了後、反応液を分析した結果、n−ドデシルビニルエーテルが19.5g(n−ドデシルアルコールベース収率:92%)含まれていた。また、反応開始時、反応時間2時間後、4時間後の反応液中の溶存酸素濃度は、それぞれ、80ppm、90ppm、120ppmであり、反応期間中の反応液中の溶存酸素濃度は常に10ppm以上であった。
【0051】
<比較例1>
密閉型の100ml反応容器を用い、反応液に酸素を供給せず(反応開始当初は容器内気相部に空気が存在)に反応を行った以外は実施例1と同様にして6時間反応を行った。
【0052】
反応終了後、反応液を分析した結果、n−ドデシルビニルエーテルが7.2g(n−ドデシルアルコールベース収率:34%)含まれていた。この反応液をさらに反応させたが、結果はほとんど変わらなかった。また、反応開始時は溶存酸素濃度が80ppmであったが、反応時間2時間後、4時間後の反応液中の溶存酸素濃度は、それぞれ、検出限界(1ppm)以下であり、反応期間中の反応液中の溶存酸素濃度は反応開始直後を除き常に10ppm未満であった。
【0053】
<実施例2>
1000mlの密閉型耐圧反応容器に、n−ブチルアルコール7.4g(0.1モル)、エチルビニルエーテル21.6g(0.3モル)、酢酸パラジウム−1,10−フェナントロリン錯体2.0g(0.005モル)を入れ、酸素を導入して内圧を5気圧にした。そして、内温を30℃にし、反応液を攪拌しながら6時間反応させた。
【0054】
反応終了後、反応液を分析した結果、n−ブチルビニルエーテルが9.4g(n−ブチルアルコールベース収率:94%)含まれていた。また、反応終了後の反応液中の溶存酸素濃度は、約110ppmであり、反応期間中の反応液中の溶存酸素濃度は常に10ppm以上であった。
【0055】
<比較例2>
酸素の代わりに窒素を導入して内圧を5気圧にして反応を行った以外は実施例2と同様にして6時間反応を行った。
【0056】
反応終了後、反応液を分析した結果、n−ブチルビニルエーテルが2.8g(n−ブチルアルコールベース収率:28%)含まれていた。この反応液をさらに反応させたが、結果はほとんど変わらなかった。また、反応時間6時間後の反応液中の溶存酸素濃度は、それぞれ、検出限界(1ppm)以下であり、反応期間中の反応液中の溶存酸素濃度は反応開始直後を除き常に10ppm未満であった。
【0057】
<実施例3>
−10℃の冷媒を流した冷却管及び酸素バブリング用ボールフィルタを備えた200ml反応容器に、アダマンタンメタノール16.6g(0.1モル)、n−ブチルビニルエーテル50.0g(0.5モル)、コバルト(II)アセチルアセトナート・二水和物1.47g(0.005モル)を入れた。そして、内温を30℃にし、反応液に酸素を10ml/minの割合で供給(バブリング)し、攪拌しながら6時間反応させた。
【0058】
反応終了後、反応液を分析した結果、アダマンタンメチルビニルエーテルが17.5g(アダマンタンメタノールベース収率:91%)含まれていた。また、反応開始時、反応時間2時間後、4時間後の反応液中の溶存酸素濃度は、それぞれ、80ppm、70ppm、90ppmであり、反応期間中の反応液中の溶存酸素濃度は常に10ppm以上であった。
【0059】
<比較例3>
密閉型の100ml反応容器を用い、反応液に酸素を供給せず(反応開始当初は容器内気相部に空気が存在)に反応を行った以外は実施例3と同様にして6時間反応を行った。
【0060】
反応終了後、反応液を分析した結果、アダマンタンメチルビニルエーテルが3.6g(アダマンタンメタノールベース収率:19%)含まれていた。この反応液をさらに反応させたが、結果はほとんど変わらなかった。また、反応開始時は溶存酸素濃度が80ppmであったが、反応時間2時間後、4時間後の反応液中の溶存酸素濃度は、それぞれ、検出限界(1ppm)以下であり、反応期間中の反応液中の溶存酸素濃度は反応開始直後を除き常に10ppm未満であった。
【0061】
<実施例4>
−10℃の冷媒を流した冷却管を備え付けた100ml反応容器に、シクロヘキサノール10.0g(0.1モル)、n−ブチルビニルエーテル50.0g(0.5モル)、コバルト(II)アセチルアセトナート・二水和物1.47g(0.005モル)を入れた。そして、内温を40℃にし、反応液を攪拌しながら液面に乾燥空気を50ml/minで吹きつけて6時間反応させた。
【0062】
反応終了後、反応液を分析した結果、シクロヘキシルビニルエーテルが9.7g(シクロヘキサノールベース収率:77%)含まれていた。また、反応開始時、反応時間2時間後、4時間後の反応液中の溶存酸素濃度は、それぞれ、80ppm、60ppm、90ppmであり、反応期間中の反応液中の溶存酸素濃度は常に10ppm以上であった。
【0063】
<比較例4>
密閉型の100ml反応容器を用い、反応液の液面に乾燥空気を吹きつけず(反応開始当初は容器内気相部に空気が存在)に反応を行った以外は実施例4と同様にして6時間反応を行った。
【0064】
反応終了後、反応液を分析した結果、シクロヘキシルビニルエーテルが1.6g(シクロヘキサノールベース収率:13%)含まれていた。この反応液をさらに反応させたが、結果はほとんど変わらなかった。また、反応開始時は溶存酸素濃度が80ppmであったが、反応時間2時間後、4時間後の反応液中の溶存酸素濃度は、それぞれ、検出限界(1ppm)以下であり、反応期間中の反応液中の溶存酸素濃度は反応開始直後を除き常に10ppm未満であった。
【0065】
<実施例5>
100ml反応容器に、5−ノナノール14.4g(0.1モル)、n−ブチルビニルエーテル50.0g(0.5モル)、酢酸パラジウム−1,10−フェナントロリン錯体2.0g(0.005モル)を入れた。そして、内温を20℃にし、反応液を攪拌しながら17%過酸化水素水60g(0.3モル)を10ml/hrの割合で供給して6時間反応させた。
【0066】
反応終了後、反応液を分析した結果、5−ノニルビニルエーテルが13.8g(5−ノナノールベース収率:81%)含まれていた。また、反応開始時、反応時間2時間後、4時間後の反応液中の溶存酸素濃度は、それぞれ、70ppm、80ppm、120ppmであり、反応期間中の反応液中の溶存酸素濃度は常に10ppm以上であった。
【0067】
<比較例5>
密閉型の100ml反応容器を用い、反応液に過酸化水素水を供給せず(反応開始当初は容器内気相部に空気が存在)に反応を行った以外は実施例5と同様にして6時間反応を行った。
【0068】
反応終了後、反応液を分析した結果、5−ノニルビニルエーテルが4.6g(5−ノナノールベース収率:27%)含まれていた。この反応液をさらに反応させたが、結果はほとんど変わらなかった。また、反応開始時は溶存酸素濃度が80ppmであったが、反応時間2時間後、4時間後の反応液中の溶存酸素濃度は、それぞれ、検出限界(1ppm)以下であり、反応期間中の反応液中の溶存酸素濃度は反応開始直後を除き常に10ppm未満であった。
【0069】
【発明の効果】
本発明によれば、アルキルビニルエーテルとアルコールとをエーテル交換させて目的とするビニルエーテルを効率よく、容易に製造することができる。
Claims (5)
- 触媒の存在下、下記一般式(1)で表されるアルコールと下記一般式(2)で表されるアルキルビニルエーテルとを反応させて、下記一般式(3)で表されるビニルエーテルを製造する方法であって、
R1(OH)n (1)
R2OCH=CH2 (2)
R1(OCH=CH2)m(OH)n-m (3)
(式中、R1は有機残基を示し、R2はアルキル基を示し、R1とR2とは異なるものである。また、nおよびmは1〜3の整数を示し、n≧mである。)
上記一般式(1)で表されるアルコールと上記一般式(2)で表されるアルキルビニルエーテルとを含む反応液中の溶存酸素濃度を10ppm以上に調整しながら反応を行うことを含むことを特徴とするビニルエーテルの製造方法。 - 反応液中に酸化剤を存在させて反応を行うことを特徴とする請求項1に記載のビニルエーテルの製造方法。
- 反応液中に空気または酸素をバブリングさせて反応を行うことを特徴とする請求項1または2に記載のビニルエーテルの製造方法。
- 密閉容器内で空気または酸素で加圧して反応を行うことを特徴とする請求項1または2に記載のビニルエーテルの製造方法。
- 反応液の液面に空気または酸素を吹き付けて反応を行うことを特徴とする請求項1または2に記載のビニルエーテルの製造方法。
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