以下に、本発明に係る固体素子デバイスについて、図面等を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る発光装置を示し、(a)は発光装置の縦断面図、(b)は光源であるGaN系LED素子の側面図である。この発光装置1は、図1(a)に示すようにフリップチップ型のGaN系LED素子2と、GaN系LED素子2を搭載するガラス含有Al2O3基板3と、タングステン(W)−ニッケル(Ni)−金(Au)で構成されてガラス含有Al2O3基板3に形成される回路パターン4と、GaN系LED素子2と回路パターン4とを電気的に接続するAuスタッドバンプ5と、GaN系LED素子2を封止するとともにガラス含有Al2O3基板3と接着されるP2O5−ZnO系ガラス封止部6とを有する。
GaN系LED素子2は、図1(b)に示されるようにサファイア(Al2O3)からなる基板20の表面に、バッファ層21、n型層22、発光する層を含む層23、p型層24を順次結晶成長させることによって形成されており、p型層24の表面に設けられるp電極25と、p型層24からn型層22の一部にかけてをエッチングすることにより除去して露出したn型層22に形成されるn電極26とを有する。このGaN系LED素子2は700℃以上でエピタキシャル成長され、耐熱温度は600℃以上であり、後述する低融点ガラスを用いて封止加工を行うときの温度に対して安定である。
また、p電極25は、発光する層を含む層23から発せられる光を基板20の方向に反射する下面反射鏡として機能する。そして、サイズは0.34mm0.34mm×厚さ0.09mmである。
ガラス含有Al2O3基板3は、熱膨張率:12.3×10−6/℃であり、ビアホール3Aを有する。このビアホール3Aは、基板の表面および裏面にメタライズされたWからなる回路パターン4を導通させている。
ガラス封止部6は、P2O5−ZnO系の低融点ガラス(熱膨張率:11.4×10−6/℃、屈伏点:415℃、屈折率:1.59、内部透過率:99%(470nm))によって形成されており、金型によるホットプレス加工によってガラス含有Al2O3基板3と接着された後にダイサーでカットされることに基づく上面6Aおよび側面6Bを有して矩形状に形成されている。
低融点ガラスは、一般に樹脂において高粘度といわれるレベルより、桁違いに高い粘度で加工される。また、ガラスの場合には屈伏点を数十℃超えても粘度が一般の樹脂封止レベルまで低くはならない。また、一般の樹脂成型時レベルの粘度にしようとすると、LED素子の結晶成長温度を超える温度を要するもの、あるいは金型に付着するものとなり、封止・成形加工が困難になる。このため、106ポアズ以上で加工するのが好ましい。
この発光装置1の製造方法について以下に説明する。
まず、ビアホール3Aを有したガラス含有Al2O3基板3を用意し、ガラス含有Al2O3基板3の表面に回路パターンに応じてWペーストをスクリーン印刷する。次に、Wペーストを印刷されたガラス含有Al2O3基板3を1000℃余で熱処理することによりWを基板3に焼き付け、さらにW上にNiめっき、Auめっきを施すことで回路パターン4を形成する。次に、ガラス含有Al2O3基板3の回路パターン4(表面側)にGaN系LED素子2をAuスタッドバンプ5によって電気的に接合する。次に、GaN系LED素子2を搭載したガラス含有Al2O3基板3に対して板状のP2O5−ZnO系の低融点ガラスを平行にセットし、窒素雰囲気中で圧力を60kgfとして465℃の温度でホットプレス加工を行う。この条件での低融点ガラスの粘度は108〜109ポアズであり、低融点ガラスはガラス含有Al2O3基板3とそれらに含まれる酸化物を介して接着される。次に、低融点ガラスと一体化されたガラス含有Al2O3基板3をダイサーにセットしてダイシングすることにより、矩形状の発光装置1を分離する。
上記した第1の実施の形態によると、以下の効果が得られる。
(1)低融点ガラスを用い、高粘度状態でホットプレス加工を行うことで、結晶成長温度に対し充分に低い加工が可能になる。
(2)ガラス含有Al2O3基板3とガラス封止部6とが酸化物を介した化学結合に基づいて接着することにより強固な封着強度が得られる。そのため、接合面積が小さい小形パッケージであっても具現化できる。
(3)封止ガラスとガラス含有Al2O3基板とは熱膨張率が同等であるため、高温で接着された後、常温あるいは低温状態としても剥離、クラック等の接着不良が生じにくい。しかも、ガラスは引っ張り応力にはクラックが生じないが、圧縮応力にはクラックは生じにくく、封止ガラスはガラス含有Al2O3基板に対しやや熱膨張率が小さいものとしてある。発明者の確認では、−40℃←→100℃の液相冷熱衝激試験1000サイクルでも剥離、クラックは生じていない。また5mm×5mmサイズのガラス片のセラミック基板への接合基礎確認として、ガラス、セラミック基板とも種々の熱膨張率の組み合わせで実験を行った結果では、熱膨張率が高い方の部材に対する低い方の部材の熱膨張率の比が0.85以上ではクラックを生じない接合を行うことができた。部材の剛性やサイズ、あるいは第8の実施の形態の応力吸収層などにも依存するが、熱膨張率が同等というのは、この程度の範囲を示す。
(4)フリップチップ接合によりワイヤを不要できるので、高粘度状態での加工に対しても電極の不具合を生じない。封止加工時の低融点ガラスの粘度は108から109ポアズと硬く、熱硬化処理前のエポキシ樹脂が5ポアズ程度の液状であることと比較して物性が大きく異なるため、素子表面の電極とリード等の給電部材とをワイヤで電気的に接続するフェイスアップ型のLED素子を封止する場合、ガラス封止加工時にワイヤが押し潰されたり変形するが、これを防げる。また、素子表面の電極を金(Au)等のバンプを介してリード等の給電部材にフリップチップ接合するフリップチップ型のLED素子を封止する場合、ガラスの粘度に基づいてLED素子に給電部材方向への圧力が付加され、そのことによるバンプの潰れやバンプ間での短絡が生じるが、これも防ぐことができる。
(5)低融点ガラスとガラス含有Al2O3基板3とを平行にセットし、高粘度状態でホットプレス加工することで、低融点ガラスがガラス含有Al2O3基板の表面に平行移動して密着し、GaN系LED素子2を封止するためにボイドが生じない。
(6)ガラス含有Al2O3基板3の配線用回路パターン4はビアホール3Aにて裏面に引き出されるため、ガラスが不必要な箇所へ入り込むことや、電気端子が覆われること等への特別な対策をとることなく板状の低融点ガラスを複数デバイスに対して一括封止加工するだけで、ダイサーカットに基づいて複数の発光装置1を容易に量産することができる。なお、低融点ガラスは高粘度状態で加工されるため、樹脂のように充分な対策をとる必要はなくビアホールによらなくても外部端子が裏面に引き出されていれば充分に量産対応可能である。
(7)GaN系LED素子2をフリップチップ実装とすることで、ガラス封止を具現化するにあたっての問題点を克服するとともに0.5mm角といった超小型の発光装置1を具現化できるという効果もある。これは、ワイヤのボンディングスペースが不要で、かつ、ガラス封止部6とガラス含有Al2O3基板3とは同等の熱膨張率部材が選択されるとともに、化学結合に基づく強固な接合によって、わずかなスペースでの接着でも界面剥離が生じないことによる。
図2は、第1の実施の形態に係る発光装置の第1の変形例を示し、(a)は発光装置の縦断面図、(b)は光源であるGaN系LED素子の側面図である。なお、以下の説明において、共通する構成部分については同一の引用数字を付して説明する。
この発光装置1は、フェイスアップ型のGaN系LED素子2を回路パターン4にフリップチップ接合するとともに、GaN系LED素子2の電極およびAuスタッドバンプ5を保護する白色系のアンダーフィル7を設けた構成において第1の実施の形態と相違している。
アンダーフィル7は、例えば、ボロンナイトライド(BN)等の光反射性の良好な充填材を用いることができ、GaN系LED素子2の接合前に予めガラス含有Al2O3基板3にポッティングしておき、その上にGaN系LED素子2をフリップチップ接合することにより設ける。
GaN系LED素子2は、図2(b)に示されるようにp型層24の表面に設けられるITO(Indium Tin Oxide)等の透光性電極27と、透光性電極27の表面に設けられるp電極25とを有する。
上記した第1の変形例によると、フェイスアップ型のGaN系LED素子2であってもアンダーフィル7で反射拡散された光がGaN系LED素子2の基板20から放射されるようになり、光取り出し性が向上する。なお、第2の実施の形態では、光取り出し効率を高めるものとして白色系のアンダーフィル7を選択したが、光取り出し効率を重視しなければ、白色系以外の他の色のアンダーフィル7を用いても良い。
第2の変形例として、ガラス封止部6の表面に耐湿性、耐酸・アルカリ性向上用の表面処理を施しても良い。この場合にはMgF2、SiO2、SiN表面処理が有効である。また、反射防止多層膜等により界面反射を減じる処理でも良い。この場合にはTiO2+SiO2多層コートが有効である。
図3は、第3の変形例として、他のアンダーフィルを用いた発光装置を示す縦断面図である。第3の変形例の発光装置1では、GaN系LED素子2の電極およびAuスタッドバンプ5を保護するアンダーフィル7として、熱伝導性の良好なダイヤモンドを用いたものである。なお、他の熱伝導性の良好なアンダーフィル7としてBN、窒化アルミニウム(AlN)、炭化ケイ素(SiC)を用いることができる。これらは、耐熱性セラミックコート材に平均粒径数ミクロンのフィラとして混入される。
図4は、第4の変形例として、樹脂材料からなるモールド部を設けた発光装置を示す縦断面図である。この発光装置1は、第1の実施の形態で説明した発光装置1をリードフレーム8に接合し、更に全体をエポキシ樹脂からなるモールド部9を設けたものである。
モールド部9は、半球状の光学形状面9Aを有して形成されており、トランスファーモールド法によって形成される。
このような構成によれば、ガラス封止型デバイスに光学系を容易に形成することができるとともに、ガラス含有Al2O3基板3およびガラス封止部6がモールド部9で包囲されることにより耐湿性がより向上する。なお、モールド部9はエポキシ樹脂以外の他の樹脂材料、例えば、シリコン樹脂によって形成されても良く、トランスファーモールド法以外のポッティングモールド法等の成型手法を適用することも可能である。また、アクリル、ポリカーボネート等の樹脂材料を用いてインジェクション法によって形成することも可能であり、この場合には生産性を向上させることができる。
また、モールド部9に蛍光体を含有させても良い。蛍光体としては、YAG蛍光体、珪酸塩蛍光体、あるいはこれらを所定の割合で混合したもの等であっても良い。
図5は、第2の実施の形態に係る発光装置を示す縦断面図である。この発光装置1は、第1の実施の形態の発光装置1で用いたガラス材料に代えて、SiO2−Nb2O5系ガラス封止部6を設けた構成と、ガラス含有Al2O3基板3にAg系回路パターン4とを設けた構成において相違している。
SiO2−Nb2O5系ガラス封止部6は、SiO2−Nb2O5系の低融点ガラス(熱膨張率:12.1×10−6/℃、屈伏点:507℃、屈折率:1.69、内部透過率:98%(470nm))によって形成されており、ホットプレス加工に基づいてガラス含有Al2O3基板3と接着された後にダイサーでカットされることに基づく上面6Aおよび側面6Bを有して矩形状にモールドされている。
ガラス含有Al2O3基板3は、熱膨張率:12.3×10−6/℃であり、ビアホール3Aを有する。このビアホール3Aは、基板の表面および裏面に電解めっきによるAgの回路パターン4を導通させている。
上記した第2の実施の形態によると、SiO2−Nb2O5系の低融点ガラスを用いることにより、透湿性を小さくでき、光取り出し性の向上を図ることができる。また、透湿性が小さい低融点ガラスを用いることにより、例えば、GaN系LED素子2をフリップチップ実装するにあたっての回路パターンのように、電圧が印加され、かつパターン間隔が数10ミクロンとなる場合のように、樹脂封止ではマイグレーションが懸念されることによって適用が困難であった場所でも高反射率材料であるAgを用いることができる。
図6は、本発明の第3の実施の形態に係る発光装置の縦断面図である。この発光装置1は、フェイスアップ型のGaN系LED素子2と、GaN系LED素子2を搭載するガラス含有Al2O3基板3と、Wで構成されてガラス含有Al2O3基板3に形成される回路パターン4と、GaN系LED素子2と回路パターン4とを電気的に接続するAuスタッドバンプ5と、GaN系LED素子2の電極と回路パターン4とを電気的に接続するAuからなるワイヤ10と、GaN系LED素子2、ワイヤ10、および回路パターン4とを包囲してコートする耐熱無機材コート11と、GaN系LED素子2を回路パターン4に接着する無機白色接着剤12と、封止するとともにガラス含有Al2O3基板3と接着されるP2O5−ZnO系ガラス封止部6とを有する。
耐熱無機材コート11は、透光性を有する多孔質のSiO2系ハードコートであり、P2O5−ZnO系ガラスの封止加工においてワイヤ10が変形することを防ぐものである。
無機白色接着剤12は、GaN系LED素子2から基板側に放射される光を反射して電極形成面から放射させる。
この発光装置1の製造方法について以下に説明する。
まず、ビアホール3Aを有したガラス含有Al2O3基板3を用意し、ガラス含有Al2O3基板3の表面に回路パターンに応じてWペーストをスクリーン印刷する。次に、Wペーストを印刷されたガラス含有Al2O3基板3を1500℃で熱処理することによりWを基板3に焼き付け、さらにW上にNiめっき、Auめっきを施すことで回路パターン4を形成する。次に、ガラス含有Al2O3基板3の回路パターン4(表面側)にGaN系LED素子2を無機白色接着剤12で接着する。次に、GaN系LED素子2のp電極およびn電極と回路パターン4とをワイヤ10で電気的に接合する。次に、GaN系LED素子2およびワイヤ10を包囲するようにSiO2系コート材をポッティングする。次に、これらに150℃の熱処理を施して多孔質の耐熱無機材コート11とする。次に、GaN系LED素子2を搭載したガラス含有Al2O3基板3に対してP2O5−ZnO系の低融点ガラスを平行にセットし、圧力を60kgfとして415℃以上の温度でホットプレス加工を行う。次に、低融点ガラスと一体化されたガラス含有Al2O3基板3をダイサーにセットしてダイシングすることにより、矩形状の発光装置1を分離する。
上記した第3の実施の形態によると、透光性を有する耐熱無機材コート11でワイヤ10をコートすることにより、ワイヤがボンディングされたGaN系LED素子2に対して高い歩留まりでP2O5−ZnO系低融点ガラスによるガラス封止加工が可能となり、ガラス封止型の発光装置1を具現化できる。
なお、耐熱無機材コート11を設けなくともガラス封止加工は具現化できるが、ワイヤ10の変形が生じることが避けられないので、電気的短絡を生じ易くなって歩留が低くなる。また、GaN系LED素子2上でAuワイヤ10のボール状接合部が潰れてしまい、電気的短絡が生じ易くなるほか、膜状のAuが素子表面を覆って光取り出しの妨げになる等の問題も生じ易い。
図7は、第3の実施の形態に係る発光装置の変形例を示す縦断面図である。この発光装置1は、素子の上下に電極を有するAlInGaP系LED素子2を用いた構成において第3の実施の形態と相違している。
AlInGaP系LED素子2は、上面の電極と回路パターン4とがワイヤ10によって電気的に接続され、下面の電極と回路パターン4とがAgペースト13によって電気的に接続されている。
このように上面および下面に電極が配されるLED素子に対しても、耐熱無機材コート11を施してP2O5−ZnO系低融点ガラスによるガラス封止加工を行うことにより、高い歩留まりでガラス封止型の発光装置1を具現化することができる。
図8は、第4の実施の形態に係る発光装置を示す縦断面図である。この発光装置1は、第1の実施の形態の発光装置1で用いたGaN系LED素子2について、スクライブ加工に基づいて形成されたものを使用している。スクライブ加工により形成されたGaN系LED素子2は、切断部である側面に尖った凹凸を有していることから、側面を素子コート材14で覆って構成されている。
素子コート材14は、例えば、SiO2系コート材を用いることができる。SiO2系コート材はGaN系LED素子2の側面を覆うようにコーティングされ、150℃の熱処理を経ることにより硬化する。
上記した第4の実施の形態によると、スクライブ加工によってGaN系LED素子2に生じる尖った凹凸の箇所はクラックの起点やボイドの原因となり易いので、素子コート材14材で凹凸の箇所を覆って滑らかにすることによりクラックの発生を防止できる。また、ボイドの発生も抑えることができる。
図9は、第4の実施の形態に係る発光装置の第1の変形例を示す縦断面図である。この発光装置1では、GaN系LED素子2の周囲全体を覆うようにSiO2系コート材からなる素子コート材14で覆って構成されている点において第4の実施の形態と相違している。
素子コート材14は、GaN系LED素子2の熱膨張率とP2O5−ZnO系低融点ガラスの熱膨張率の中間の熱膨張率とすることで、熱膨張率の大きいガラスを用いた場合やラージサイズのLED素子を用いた場合などでもクラックの発生を防ぐことができる。
上記した第1の変形例によると、GaN系LED素子2表面の形状に起因するクラックやボイドの発生を抑制するとともに、GaN系LED素子2と低融点ガラスの熱膨張率差に起因するクラックの発生を防ぐことができる。なお、GaN系LED素子2からの光取り出し性を考慮すると、素子コート材14はできるだけ薄く設けることが好ましい。
図10は、第4の実施の形態に係る発光装置の第2の変形例を示す縦断面図である。この発光装置1では、GaN系LED素子2の周囲全体を覆うように蛍光体を含有した蛍光体層15で覆って構成されている点において第4の実施の形態と相違している。
蛍光体層15は、第1の変形例で用いたSiO2系コート材からなる素子コート材14に蛍光体としてYAG系蛍光体を含有させたものである。なお、蛍光体は単独あるいは複数の種類の蛍光体を混合させても良い。他の蛍光体としては珪酸塩蛍光体を用いることができ、更にYAG系蛍光体と珪酸塩蛍光体とを混合して蛍光体層15に含有させても良い。
上記した第2の変形例によると、第1の変形例の好ましい効果に加えて蛍光体がガラス封止により外部の湿気から遮断されるので、蛍光体の劣化を防止でき、長期にわたって安定した波長変換性が得られる。
図11は、第5の実施の形態に係る発光装置を示し、(a)は発光装置の平面図、(b)は発光装置の側面図、(c)は発光装置の底面図である。この発光装置1は、フリップチップ型の複数のGaN系LED素子2と、正方形状に形成されてGaN系LED素子2を搭載する多層構造のガラス含有Al2O3基板3と、ガラス含有Al2O3基板3の表面および層内にタングステン(W)で構成される形成される回路パターン(基板表面のパターンには、さらにNi、Auめっきが施される。)4と、GaN系LED素子2と回路パターン4とを電気的に接続するAuスタッドバンプ5と、GaN系LED素子2を封止するとともにガラス含有Al2O3基板3と接着されるP2O5−ZnO系ガラス封止部6と、ガラス含有Al2O3基板3の四隅において層内の中間層から露出した底面回路パターン16A(アノード)、16C(カソード)と、GaN系LED素子2の発熱に基づく熱を外部へ放散する銅箔からなる放熱パターン17とを有し、円形の外形を有するように基板表面にパターン形成される回路パターン4にAuスタッドバンプ5を介して3個×3個の配列で合計9個のGaN系LED素子2を配列している。
ガラス含有Al2O3基板3は、Wからなる層内配線を有した多層構造を有し、図11(b)に示す列方向の3個のGaN系LED素子2を直列に接続して素子群を形成し、素子群のアノードを底面回路パターン16Aのひとつに接続するとともに、素子群のカソードを底面回路パターン16Cに接続して構成されている。また、カソードには他の2列について形成される素子群のカソードも接続されている。
上記した第5の実施の形態によると、複数個のGaN系LED素子2を用いたものについても、セラミック多層基板を用いることによって容易に直並列回路を形成することができ、電解めっきを施す際の配線引き回しも容易に形成できる。また、中間層から外部電気接続端子を取り出し、底面に放熱用金属パターンを設けることで、密実装された9個のGaN系LED素子2を発光させることに基づいて生じる熱を放熱用金属パターンからヒートシンク等へ速やかに熱伝導させることが可能になる。
図12は、第5の実施の形態に係る発光装置の第1の変形例を示す縦断面図である。この発光装置1では、P2O5−ZnO系ガラス封止部6の表面に蛍光体層15を設けて波長変換型の発光装置1とした点において第5の実施の形態と相違している。
上記した第1の変形例によると、P2O5−ZnO系ガラス封止部6にGaN系LED素子2全体を包囲する蛍光体層15を有しているので、高光出力の白色発光装置1を具現化できる。また、マルチ素子タイプの発光装置1における各LED素子特性にばらつきがあってもその差が顕著化しにくく、均一な発光特性を有する発光装置1を具現化できる。
図13は、第5の実施の形態に係る発光装置の第2の変形例を示す縦断面図である。この発光装置1では、青色あるいは緑色を発光するフリップチップ型のGaN系LED素子2と、赤色を発光する上下電極型のAlInGaP系LED素子2とを混在させてP2O5−ZnO系ガラス封止部6で封止した点において第5の実施の形態と相違している。AlInGaP系LED素子2は、耐熱無機材コート11によってワイヤ10とともに包囲されている。
上記した第2の変形例によると、フリップチップ型と上下電極型のLED素子が混在する場合であってもP2O5−ZnO系低融点ガラスによるガラス封止加工が可能である。なお、LED素子2の発光色の組み合わせについても任意に設定することができる。
図14は、第6の実施の形態に係る発光装置を示す断面図である。この発光装置1は、素子の上下に電極を有するAlInGaP系LED素子2と、AlInGaP系LED素子2を搭載するガラス含有Al2O3基板3と、Wで構成されてガラス含有Al2O3基板3に形成される回路パターン4と、AlInGaP系LED素子2の電極と回路パターン4とを電気的に接続するAuからなるワイヤ10と、AlInGaP系LED素子2、ワイヤ10、および回路パターン4とを包囲してコートするTiO2(屈折率:2.4)からなる高屈折率材料コート11Aと、AlInGaP系LED素子2を回路パターン4に接着するとともに電気的に接続するAgペースト13と、高屈折率材料コート11Aで包囲されたAlInGaP系LED素子2を封止するとともにガラス含有Al2O3基板3と接着されるSiO2−Nb2O5系ガラス封止部6を有する。
SiO2−Nb2O5系ガラス封止部6は、SiO2−Nb2O5系の低融点ガラス(熱膨張率:10.2×10−6/℃、屈伏点:543℃、屈折率:1.92、内部透過率:81%(470nm),91%(520nm(厚さ10mmにおける)))によって形成されており、半球面状に形成された光学形状面6Dを有し、AlInGaP系LED素子2から発せられて高屈折率材料コート11Aを介して至る光をガラス界面への略垂直入射するものとすることで界面反射を極力小さくして外部放射する。
なお、光学形状面6Dは、AlInGaP系LED素子2から発せられる光がガラス封止部6の界面に対する臨界角以内に入射する形状であれば半球状以外の他の形状であっても良く、具体的には、六面体や八面体であっても良い。
上記した第6の実施の形態によると、AlInGaP系LED素子2を屈折率2.4のTiO2の高屈折率材料コート11Aで包囲し、屈折率:1.92のSiO2−Nb2O5系ガラス封止部6で封止しているので、高屈折率材料コート11AとSiO2−Nb2O5系ガラス封止部6との界面における界面反射ロスの発生を抑えることができ、高屈折率媒体であるLED素子からの光取り出し効率を向上させることができる。
また、SiO2−Nb2O5系ガラス封止部6が凸面状に形成されているので、AlInGaP系LED素子2からガラス封止部6と空気の界面へは垂直入射に近い角度で入射し、そのことによって高い外部放射効率が得られる。
図15は、第6の実施の形態に係る発光装置の第1の変形例を示し、(a)は発光装置の縦断面図、(b)は光源であるGaN系LED素子の側面図である。この発光装置1は、AlInGaP系LED素子2に代えてSiC基板29を有するGaN系LED素子2を有する構成、SiO2−Nb2O5系ガラス封止部6の表面に1/4波長分の厚さを有するSiO2膜6Eを設けた光学形状面6Dを有する点において第6の実施の形態と相違している。
SiC基板29は、底面にn電極26を有しており、Agペースト13を介して回路パターン4に電気的に接続されている。
上記した第1の変形例によると、1/4波長分の厚さを有するSiO2膜6Eを光学形状面6Dに設けたので、光学形状面6Dに導かれた光がSiO2膜6Eで干渉することにより、反射を低減することができる。
図16は、第6の実施の形態に係る発光装置の第2の変形例を示し、(a)は発光装置の縦断面図、(b)は光源であるGaN系LED素子の側面図である。この発光装置1は、AlInGaP系LED素子2に代えてGaN基板30を有するフリップチップ型のGaN系LED素子2を用いた点において第6の実施の形態と相違している。
上記した第2の変形例によると、GaN基板30を有するGaN系LED素子2を用いることで、LED素子内部での界面反射を生じることなく基板表面に効率良く光を導くことができる。基板表面に導かれた光は、SiO2−Nb2O5系ガラス封止部6を介して光学形状面6Dから外部放射されることにより高い外部放射効率が得られる。
図17は、第7の実施の形態に係る発光装置を示し、(a)は発光装置の縦断面図、(b)は光源であるGaN系LED素子の側面図である。この発光装置1は、基板をガラス含有Al2O3に代えてAl2O3とし、このAl2O3の熱膨張率に相当する封止ガラス材料を用いている点において第6までの実施の形態と相違している。同図においては個々のデバイスに分断される前の状態を示している。個々の発光装置1は、図17(a)に示すようにフリップチップ型のGaN系LED素子2と、GaN系LED素子2を搭載するAl2O3基板3と、Al2O3基板3に形成される回路パターン4と、GaN系LED素子2と回路パターン4とを電気的に接続するAuスタッドバンプ5と、GaN系LED素子2を封止するとともにAl2O3基板3と接着されるB2O3−F系ガラス封止部6とを有する。
GaN系LED素子2は、(b)に示すようにB2O3−F系ガラスの封止加工時におけるAuスタッドバンプ5の損傷、電極間短絡を防ぐため、Al2O3基板3との間にアンダーフィル7が充填されている。
Al2O3基板3は、ビアホール3Aを有し、このビアホール3Aを介して表面と裏面の回路パターン4を電気的に接続している。また、基板分断位置となる溝3Bが所定の間隔で形成されている。
回路パターン4は、GaN系LED素子2を搭載する表面にB2O3−F系ガラス封止部6との接着強度を高める接着用パターン4A、4Bを有しており、接着用パターン4BはAl2O3基板3の裏面に取り出される回路パターン4の一部を兼ねている。
B2O3−F系ガラス封止部6は、B2O3−F系の低融点ガラス(熱膨張率:6.9×10−6/℃、屈伏点:539℃、屈折率:1.75、内部透過率:98%(470nm))によって形成されており、プレフォーム加工によって予め光学形状面6Dおよび薄肉部6Bを設けられたプレフォームガラスをホットプレス加工することによってAl2O3基板3の表面に接着されている。薄肉部6Bは、スクライブ加工部分に荷重を加えて分断する時に隣接する発光装置1にクラック等のダメージが及ぶことのない厚さで形成される。
発光装置1は、GaN系LED素子2を実装してB2O3−F系ガラス封止部6で封止した後、Al2O3基板3の溝3Bを分断位置として荷重を加えることにより、応力集中に基づいてAl2O3基板3が破断し、同時に薄肉部6BでB2O3−F系ガラス封止部6が分断される。
上記した第7の実施の形態によると、一般に多く用いられているAl2O3基板を使用することで白色光吸収が少なく光取り出し効率が向上する。また、入手が容易であるとともに廉価である。また、スクライブ加工部分に荷重を加えて個々の発光装置1に分断するので量産性に優れる。ダイシングによる発光装置1の分断では、ダイサーで切る際にガラスへの残留ひずみが発生し、ヒートショックでB2O3−F系ガラス封止部6に欠けが生じることがあるが、スクライブに基づいて分断された発光装置1では残留ひずみが小になり、欠け等の不良が生じにくい。
なお、B2O3−F系以外の低融点ガラスとして、SiO2−B2O3−La2O3系低融点ガラス(熱膨張率:8.3×10−6/℃、屈伏点:559℃、屈折率:1.81、内部透過率:99%(470nm))を用いることも可能である。
また、スクライブ以外の他の分断方法としてはレーザ光を用いて分断を行うことも可能である。
図18は、第7の実施の形態に係る発光装置の第1の変形例を示す縦断面図である。この発光装置1は、平坦なB2O3−F系の低融点ガラスによってB2O3−F系ガラス封止部6を形成している点において第7の実施の形態と相違している。
B2O3−F系SiO2−B2O3ガラス封止部6は、Al2O3基板3に形成されている溝3Bと相対する位置にけがき部6Cを有し、荷重が付加されたときに溝3Bと協働して応力集中を発生させることでB2O3−F系ガラス封止部6およびAl2O3基板3を分断する。
上記した第1の変形例によると、B2O3−F系ガラス封止部6のプレフォームを不要にして製造工程の簡素化を図ることができ、生産性に優れる。
また、ガラス封止部6に適用可能な他の低融点ガラスとして、SiO2−B2O3系低融点ガラスを用いることも可能である。
図19は、第8の実施の形態に係る発光装置を示し、(a)は発光装置の縦断面図、(b)は光源であるGaN系LED素子の側面図である。この発光装置1は、GaN系LED素子2の下部に熱伝導性に優れるBNのアンダーフィル7と、GaN系LED素子2を搭載するAlN基板3と、GaN系LED素子2を封止するとともにAlN基板3と接着されるAlNと同等の熱膨張率であるSiO2−B2O3系ガラス封止部6とを有する点において第7の実施の形態と相違している。
SiO2−B2O3系ガラス封止部6は、SiO2−B2O3系低融点ガラス(熱膨張率:4.9×10−6/℃、屈伏点:558℃、屈折率:1.61、内部透過率:96%(380nm))によって形成されており、GaN系LED素子2の熱膨張率:5×10−6/℃とほぼ同等の熱膨張率を有する。
上記した第8の実施の形態によると、GaN系LED素子2の発光に基づいて生じた熱は、熱伝導性に優れるアンダーフィル7、Auスタッドバンプ5を介して、高放熱材料のAlN基板3へ伝熱され、外部に効率良く放熱される。また、GaN系LED素子2、AlN基板3、SiO2−B2O3系ガラス封止部6等の主要部材がほぼ同等の熱膨張率となることによって熱膨張率差による剥離、封止性の低下を生じることがない。
例えば、主要部材間に熱膨張率差がある場合でも、応力緩和を果たす構成を設けることで内部応力を吸収し、封止性の低下や剥離を防止することが可能である。
図20は、第8の実施の形態に係る発光装置の変形例を示す縦断面図である。この発光装置1は、GaN系LED素子2を実装する回路パターン4の表面に内部応力吸収のための軟金属層を有する点において第7の実施の形態と相違している。
図21(a)から(e)は、AlN基板に回路パターンを形成する形成工程を示す図である。まず、(a)に示すように予めビアホール3Aを形成されたAlN基板3の両面に回路パターンに応じたWを含むペーストをスクリーン印刷する。次に、1500℃を越える温度でAlN基板3を焼結してWを焼き付ける。これにより、WとAlN基板3とが強固に結合される。このWをスパッタリングで形成することも可能である。また、Wの代わりにMo等の高融点金属を用いてもよい。次に、(b)に示すようにAlN基板3の表面側の回路パターン4の上にニッケル(Ni)層26をめっき法により設ける。次に、(c)に示すようにAlN基板3をでほぼ700℃で加熱してNiとWとを反応させる。これにより、AlN基板3の上に回路パターン4が強固に接合される。次に、(d)に示すように回路パターン4の表面に電解めっきによってAu層4Cを形成する。次に、(e)に示すようにAuスタッドバンプ5によりGaN系LED素子2を所定の位置にマウントする。
このようにしてGaN系LED素子2を回路パターン4上に実装されたAlN基板3に対してSiO2−B2O3系低融点ガラスをホットプレス加工し、スクライブに基づいて個々の発光装置1に分断する。
上記した変形例によると、強固な回路パターン4をAlN基板3に接合することができる。また、回路パターン4上にGaN系LED素子2をAuスタッドバンプを介して実装するためのAuパターン4Cと低融点ガラスと接合するためのNiパターン4Aとを設けることで、スタッドバンプ実装が可能となり、かつ、応力緩和を図ることができる。なお、ガラスは酸化物を介しての接合が行われ、Auとは接着されないがNiとはNi表面のNi酸化膜を介して接合が行われる。また、ガラスとAlNとも良好な接合が得られる。AlN基板は熱伝導度が高いためにGaN系LED素子2の点灯直後等にガラスとの温度差が生じ易いが、このような状況でもAu層4Cの弾性変形に基づいて応力の緩和し安定したガラス封止性が得られる。
図22は、第9の実施の形態に係る発光装置の縦断面図である。この発光装置1は、フリップチップ型のGaN系LED素子2と、GaN系LED素子2を搭載するAlNサブマウント18と、Wで構成されてAlNサブマウント18に形成される回路パターン4と、AlNサブマウント18を搭載する段部19Aを有する銅合金からなるリード19と、GaN系LED素子2と回路パターン4とを電気的に接続するAuスタッドバンプ5と、GaN系LED素子2およびリード19を包囲して一体的に封止するP2O5−F系ガラス封止部6とを有する。
AlNサブマウント18は、メタライズされた回路パターンを有する。
P2O5−F系ガラス封止部6は、P2O5−F系低融点ガラス(熱膨張率:16.9×10−6/℃、屈伏点:363℃、屈折率:1.54、内部透過率:99%(470nm))によって形成されており、半球面状に形成されて所望の放射範囲に光を放射する光学形状面6Dをホットプレス加工に基づいて形成されている。
ホットプレス加工は、リードフレームに形成されるリード19を挟み込むように2枚のP2O5−F系低融点ガラスを平行にセットし、窒素雰囲気中で圧力を10kgfとして410℃以上の温度で行う。この条件での低融点ガラスの粘度は108〜109ポアズである。
図23は、リードフレームに対してホットプレス加工に基づくガラス封止を行った状態を示す図である。同図においては、一対のリード311が一方向に引き出された板状の銅合金からなるリードフレーム31を示している。このリードフレーム31は、AlNサブマウント18を固定するリード311と、リード311の支持側に設けられる開口312と、リードフレーム31の熱変形を吸収する小判穴313と、リードフレーム31の送り位置を位置決めする位置決め穴314とを有し、リード311の周囲は、板状の銅合金を打ち抜く際に開口310として除去される。
以下に発光装置1の製造方法について説明する。
まず、AlNサブマウント18を搭載する段部19Aを形成されたリード19を有するリードフレーム31を形成する。次に、リードフレーム31に回路パターン4を形成されたAlNサブマウント18を接合する。次に、AlNサブマウント18の表面に設けられる回路パターン4にAuスタッドバンプ5を介してGaN系LED素子2をフリップチップ接合する。次に、リードフレーム31の上下にP2O5−F系低融点ガラスを平行にセットする。次に、図示しない金型を用いてP2O5−F系低融点ガラスに対するホットプレス加工を行う。P2O5−F系低融点ガラスは、ホットプレス加工に基づいて薄肉部6BおよびP2O5−F系ガラス封止部6に個別に成形される。次に、リード311をカットしてリードフレーム31から発光装置として分離する。
上記した第9の実施の形態によると、以下の効果が得られる。
(1)P2O5−F系低融点ガラスを使用して高粘度状態でホットプレス加工を行うので、結晶成長温度以下でのガラス封止加工が可能になる。
(2)ホットプレス加工を窒素雰囲気で行うので各部材が酸化しにくい。
(3)リードを挟み込むように2枚のガラスをセットするので、高粘度状態で封着される。
(4)P2O5−F系低融点ガラスと銅合金リードとは熱膨張率がほぼ同等であるので剥離、クラックなどの接合不具合が生じにくい。また、熱膨張率に多少差があっても軟金属である銅の塑性に基づいて内部応力が吸収される。第1から第8の実施の形態では、電力供給手段として回路パターンの形成されたセラミック基板を用いたが、一般に入手できるセラミック基板の熱膨張率は、低融点ガラスに対し低めである。相関は必ずしも大きくないが分子間結合の弱い材料が低融点となり、同時に熱膨張率の大きい特性となる傾向がある。これに対し、電力供給手段として、金属リードを用いることで熱膨張率15×10−6/℃以上のより低融点のガラスでも発光装置1を具現化できる。なお、低融点ガラスとして熱膨張率の大きい材料を選択すると、GaN系LED素子との熱膨張率差は大きくなるので、この差に対する対策を併用することが好ましい。
(5)フリップチップ実装としているので、電極部分の損傷が生じにくい。
(6)部材間熱膨張率差によるクラックが生じにくい構造を有する。
すなわち、リードにAlNサブマウントに応じた形状の段差を形成してあり、AlNサブマウント長さ方向は軟金属のリードの塑性により応力緩和が可能である。また、ガラスは引っ張り応力にはクラックが生じやすいが、圧縮応力にはクラックは生じにくい。熱膨張率が小なるGaN系LED素子が中央部、それと比較して高膨張率のリード、P2O5−F系低融点ガラスが周囲を取り囲む構成であるので、GaN系LED素子の各面に対して垂直方向に応力が作用し、ガラスには圧縮応力が生じる。これらによってLED素子やサブマウントに対し、低融点ガラスの熱膨張率が大きくても、具現化することができる。
(7)GaN系LED素子が発する熱は、AlNサブマウントおよびリードを通って速やかに外部放熱される。また、ガラスの熱伝導率は、樹脂封止材料の10倍程度優れているため、ガラスから放熱も無視できないレベルである。
(8)また、リードフレームに対してホットプレス加工を行い、リードへ個別にガラス封止するとともにリードフレームからタイバーカットすることで一括多量製造が可能になり、量産性に優れる。
なお、サブマウントを構成する材料についてはAlNに限定されず、サファイア(Al2O3)で形成されていても良い。Al2O3を用いた場合にはガラス材料との熱膨張率差が小になるので、クラック、剥離の発生を抑制できる。
また、図24に示すように、n層18Bとp層18Cによってツェナーダイオードとして機能するSiサブマウント18にGaN系LED素子2を搭載するようにしても良い。この場合にはGaN系LED素子を静電破壊から保護することができる。なお、Siサブマウント18のp層18Cとリード19との電気的接続を行うワイヤ10については先に説明した耐熱無機材コート11等の保護部材で保護することでガラス封止加工に伴う損傷を回避することができる。
また、リードを挟み込む2枚のガラスについて、下側のガラスに白色のものを用いても良い。この場合には下側に放射される光を反射して光学形状形成側に放射させることが可能になる。
また、リードを挟み込む2枚のガラスが異なる粘度を有していても良い。具体的には上側ガラスにP2O5−F系低融点ガラス(熱膨張率:17.3×10−6/℃、屈伏点:310℃、屈折率:1.51、内部透過率:99%(470nm))を使用し、下側ガラスにP2O5−F系低融点ガラス(熱膨張率:16.9×10−6/℃、屈伏点:363℃、屈折率:1.54、内部透過率:99%(470nm))を用いる。この場合、ホットプレス加工時に上側が高粘度、下側が低粘度となり、成形が容易になる。
図25は、第10の実施の形態に係る発光装置を示し、(a)は平面図、(b)は(a)A−A断面図、(c)は下部ガラスの斜視図である。この発光装置1は、フェイスアップ型のGaN系LED素子2と、GaN系LED素子2を搭載するリードカップ部19Bを有したリード19と、GaN系LED素子2とリード19とを電気的に接続するワイヤ10と、GaN系LED素子2、ワイヤ10を覆って保護するシリコンコート35と、プレフォームされた上部ガラス60Aおよび下部ガラス60Bによってリード19を一体的に封止するP2O5−F系ガラス封止部6と、を有する。
リードカップ部19Bは、傾斜面190および底面191によってすり鉢状に形成されており、(c)に示す下部ガラス60Bのリード収容溝60Cに収容される。リード収容溝60Cは、下部ガラス60Bを金型でプレフォームして成形する際に形成される。
以下に発光装置1の製造方法について説明する。
まず、銅を材料とし、表面に銀めっき処理が施された一対のリード19を設けられた図示しないリードフレームを用意する。次に、リード19のリードカップ部19BにGaN系LED素子2を搭載する。GaN系LED素子2は無機透明接着剤によってリードカップ部19Bの底面191に接着される。次に、一対のリード19とGaN系LED素子2の電極とをワイヤ10で電気的に接続する。次に、一対のリード19とGaN系LED素子2とが電気的に接続された状態で予めプレフォームされた下部ガラス60Bのリード収容溝60Cに収容する。次に、一対のリード19とGaN系LED素子2とが覆われるようにシリコン樹脂コート35をポッティングする。次に、上部ガラス60Aを用意し、ホットプレス加工に基づいて下部ガラス60Bと一体化する。次に、リードフレームから発光装置1を切り離す。
上記した第10の実施の形態によると、以下の効果が得られる。
シリコン樹脂はおよそ400℃以上で、熱によって分子結合が切れ、ガスが発生するが、シリコン樹脂コート35を熱分解しない360℃での加工が可能になるので、ガラス封止加工時の熱をシリコン樹脂で吸収して応力緩和できる。また、リードカップ部19Bを収容するプレフォームされた下部ガラス60Bを用いることで、一対のリード19のガラス封止状態が安定する。また、リードフレームに対してホットプレス加工を行い、リードへ個別にガラス封止するとともにリードフレームからタイバーカットすることで一括多量製造が可能になり、量産性に優れる。
図26は、第10の実施の形態に係る発光装置の第1の変形例を示す断面図である。この発光装置1は、フリップチップ型のGaN系LED素子2(0.3mm×0.3mm)と、GaN系LED素子2を搭載するAlNサブマウント18と、AlNサブマウント18を収容する段部19Aを有する一対のリードフレーム19とを有する点において第10の実施の形態と相違している。
一対のリードフレーム19は、段部19Aの上方に傾斜面19Dを有し、GaN系LED素子2から放射される光を傾斜面19Dで反射して外部放射する。
AlNサブマウント18は、表面および裏面に設けられる回路パターン4を電気的に接続するビアホール18Aを有する。
以下に発光装置1の製造方法について説明する。
まず、一対のリード19を設けられた図示しないリードフレームを用意する。次に、リード19の段部19Aに位置するようにAlNサブマウント18をAgペーストで電気的に接続する。次に、AlNサブマウント18にAuスタッドバンプ5を介してGaN系LED素子2を接合する。次に、一対のリード19とGaN系LED素子2とが電気的に接続された状態で予めプレフォームされた下部ガラス60Bのリード収容溝60Cに収容する。次に、一対のリード19とGaN系LED素子2とが覆われるようにシリコンコート35をポッティングする。次に、上部ガラス60Aを用意し、ホットプレス加工に基づいて下部ガラス60Bと一体化する。次に、リードフレームから発光装置1を切り離す。
上記した第1の変形例によると、フリップチップ型のGaN系LED素子2を用いることで基板側から効率良く光取り出しを行うことができる。
図27は、第10の実施の形態に係る発光装置の第2の変形例を示す断面図である。この発光装置1は、フリップチップ型のGaN系LED素子(ラージサイズ)2と、GaN系LED素子2を搭載するAlNサブマウント18と、AlNサブマウント18を収容する段部19Aを有する一対のリードフレーム19とを有する点において第10の実施の形態と相違している。ラージサイズのGaN系LED素子2のサイズは1mm×1mmである。
第2の変形例では、ラージサイズチップを用いた構成を説明したが、チップサイズが大になることで、P2O5−F系ガラスAlNサブマウント18、およびP2O5−F系ガラス封止部6の熱膨張率差が大である。このような場合においても良好な封止性が得られる。
図28は、第11の実施の形態に係る発光装置を示し、(a)は側面図、(b)はガラス封止にあたっての斜視図である。この発光装置1は、図28(a)に示すようにP2O5−F系ガラスからなる筒状体60Dを加熱することによってGaN系LED素子2、ワイヤ10、および一対のリード19をガラス封止したものである。
筒状体60Dは、図28(b)に示すように一部を切り欠いた筒状ガラスによって構成されており、図示しないバーナー等の加熱装置で筒状体60Dを加熱することによりガラスを溶融させてGaN系LED素子2、ワイヤ10、および一対のリード19をガラス封止する。
上記した第11の実施の形態によると、溶融したガラスの表面張力に基づいてGaN系LED素子2、ワイヤ10、および一対のリード19をガラス封止することができる。なお、本実施の形態では溶融したガラスを付着させることによりガラス封止しているが、ガラスが溶融している状態でホットプレス加工を行っても良い。
図29は、第12の実施の形態に係る発光装置を示す縦断面図である。この発光装置1は、第9の実施の形態で説明した発光装置1に対してエポキシ樹脂からなるモールド部9を設けたものである。
モールド部9は、半球状の光学形状面9Aを有して形成されており、トランスファーモールド法によって形成される。
このような構成によれば、ガラス封止型デバイスに光学系を容易に形成することができるとともに、ガラス封止部6がモールド部9で包囲されることにより耐湿性がより向上する。また、リード引き出し部がガラスから直接でなくなるため、リード曲げ時の応力等によりガラスのクラックやかけが生じることを防ぐ効果もある。なお、モールド部9はエポキシ樹脂以外の他の樹脂材料、例えば、シリコン樹脂によって形成されても良く、トランスファーモールド法以外のポッティングモールド法等の成型手法を適用することも可能である。また、アクリル、ポリカーボネート等の樹脂材料を用いてインジェクション法によって形成することも可能であり、この場合には生産性を向上させることができる。
以下、図30から図55に図示される実施の形態について詳細に説明する。
(光学素子)
光学素子には発光ダイオード、レーザダイオードその他の発光素子及び受光素子が含まれる。光学素子の受発光波長も特に限定されるものではなく、紫外光〜緑色系光に有効なIII族窒化物系化合物半導体素子や赤色系光に有効なGaAs系半導体素子などを用いることができる。
封止部材の問題が特に顕著になるのは短波長を放出するIII族窒化物系化合物半導体発光素子である。ここに、III族窒化物系化合物半導体は、一般式としてAlXGaYIn1−X−YN(0<X≦1、0≦Y≦1、0≦X+Y≦1)で表される。Alを含むものはこのうち、AlNのいわゆる2元系、AlXGa1−XN及びAlXIn1−XN(以上において0<X<1)のいわゆる3元系を包含する。
III族窒化物系化合物半導体及びGaNにおいて、III族元素の少なくとも一部をボロン(B)、タリウム(Tl)等で置換しても良く、また、窒素(N)の少なくとも一部もリン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)等で置換できる。
また、III族窒化物系化合物半導体は任意のドーパントを含むものであっても良い。n型不純物として、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、セレン(Se)、テルル(Te)、カーボン(C)等を用いることができる。p型不純物として、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、ベリリウム(Be)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)等を用いることができる。なお、p型不純物をドープした後にIII族窒化物系化合物半導体を電子線照射、プラズマ照射若しくは炉による加熱にさらすことができるが必須ではない。
III族窒化物系化合物半導体層はMOCVD(有機金属気相成長)法により形成される。素子を構成する全ての半導体層を当該MOCVD法で形成する必要はなく、分子線結晶成長法(MBE法)、ハライド系気相成長法(HVPE法)、スパッタ法、イオンプレーティング法等を併用することが可能である。
発光素子の構成としては、MIS接合、PIN接合やpn接合を有したホモ構造、ヘテロ構造若しくはダブルヘテロ構造のものを用いることができる。発光層として量子井戸構造(単一量子井戸構造若しくは多重量子井戸構造)を採用することもできる。かかるIII族窒化物系化合物半導体発光素子として、主たる光受発光方向(電極面)を光デバイスの光軸方向にしたフェイスアップタイプや主たる光受発光方向を光軸方向と反対方向にして反射光を利用するフリップチップタイプを用いることができる。
III族窒化物系化合物半導体素子の耐熱温度は600℃程度であり、またGaAs系の半導体素子の耐熱温度は600℃程度であり、いずれも低融点ガラスをモールドするときの温度に対して安定である。
(電力受送手段)
光デバイスには電力受送手段が含まれる。この電力受送手段は発光素子に電力を供給し、また光を受けて受光素子に生じた電力を取り出す電気部品であり、光デバイスを外部の電気回線に接続するためのリードと該リードと光学素子とを配線するボンディングワイヤ等が含まれる。ボンディングワイヤは金線若しくは金合金線からなることが多い。当該ボンディングワイヤー自体並びにボンディングワイヤとリード若しくは光学素子との間のボンディングの耐熱温度は600℃以上であり、いずれも低融点ガラスをモールドしたときの温度に対して安定である。
(第1の封止部材)
第1の封止部材は光学素子と電力受送手段の少なくとも一部を被覆する。この第1の封止部材としてこの発明ではSiO2−Nb2O5系、B2O3−F系、P2O5−F系、P2O5−ZnO系、SiO2−B2O3−La2O3系若しくはSiO2−B2O3系のガラスを選択した。
これらの低融点ガラスはいずれも350〜600℃においてプレス成形が可能である。この発明の第1の封止部材は自然溶着により形成することもできる。
第1の封止部材には蛍光材料を分散することもできる。かかる蛍光材料として無機系の蛍光材料の粉体を用い、これを低融点ガラス中に混合することができる。また、低融点ガラス中に希土類イオンをドープすることによりこれを蛍光させることも可能である。発光素子と蛍光材料とを適宜組合せることにより、白色光をはじめとして任意の発光色を得ることができる。
この第1の封止部材と光学素子との組合せにおいて、第1の封止部材のアッベ数を40以下、その屈折率を1.6以上とし、かつ光学素子の受発光波長を546.1nm(Naのe線の波長)以下とすることが好ましい。即ち、高屈折材料内で発光される光の外部量子効率は、発光される光の波長に対する封止材料の屈折率が高い方が有利である。光学材料の屈折率はNaのd線によって定義されるが、一般に短波長ほどその屈折率は高くなり、光の波長に対する屈折率の変化の度合いがアッベ数で示される。特に従来の樹脂封止で問題となる短波長発光の発光素子において、Naのd線における高屈折率で、かつ、波長に対する屈折率変化の大きい材料選択を行うことにより樹脂黄変による光出力低下を防ぐことができることに加え、実質、短波長光に対し、屈折率の高い材料による封止を実現でき、高い外部量子効率を得ることができる。
かかる光学特性を有する低融点ガラスとしてSiO2−Nb2O5系ガラスを挙げることができ、なかでもSiO2−Nb2O5−Na2Oガラスが好ましい。
第1の封止部材は発光素子において少なくとも光受発光方向に配置されてこれを被覆するようにすることが好ましい。当該方向においての変色を確実に防止するためである。
第1の封止部材の形状は特に限定されず、光デバイスに要求される光学特性に応じて適宜設計される。発光素子の場合、その光放出方向に配置される第1の封止部材は凸レンズ型にされることが好ましい。
(第2の封止部材)
この発明において光学素子は、既述の第1の封止部材を含めて複数の封止部材で封止される場合がある。ここに第2の封止部材は光学素子をその主たる光受発光方向と反対方向から被覆する。
第2の封止部材も、第1の封止部材と同様に、SiO2−Nb2O5系、B2O3−F系、P2O5−F系、P2O5−ZnO系、SiO2−B2O3−La2O3系、及びSiO2−B2O3系から選ばれる低融点ガラスとしてもよい。ここに第2の封止部材は第1の封止部材と同一材料であっても、異なる材料であってもよい。
両者を異なる低融点ガラス材料としたとき、第1の封止部材(光学素子の主たる光受発光方向に存在するもの)の屈折率を第2の封止部材の屈折率より高くすることが好ましい。これにより光学素子として発光素子を用いる場合、発光素子と封止部材の界面における臨界角が大きくなって光効率が向上することとなる。
低融点ガラスからなる第2の封止部材の場合、第1の封止部材と同様に、プレスモールド若しくは自然溶着により形成することができる。
また、低融点ガラスからなる第2の封止部材には、第1の封止部材と同様に、蛍光材料を分散することもできる。
第2の封止部材を非透明な材料で形成することも可能である。かかる第2の封止部材として低融点ガラスの他、金属板、セラミックス板等を挙げることができる。この場合、第2の封止部材は光を効率よく反射する材料製とすることが好ましい。第2の封止部材を低融点ガラス以外の材料で形成した場合には、第1の封止部材の線膨張係数の値を当該第2の封止部材の線膨張係数と光学素子の線膨張係数の間にすることが好ましい。これにより、光デバイスが半田リフロー炉等において熱処理された場合においても、異種材料の線膨張係数の違いに基づく光デバイスの内部応力を低減することができる。
以下、この発明を実施例により説明する。
(第1実施例)
この実施例では光学素子として図30に示すフェイスアップタイプのIII族窒化物系化合物半導体発光素子1010を用いた。この発光素子は青色系の光を放出する。
発光素子1010の各層のスペックは次の通りである。
層 : 組成
p型層1015 : p−GaN:Mg
発光する層を含む層1014 : InGaN層を含む
n型層1013 : n−GaN:Si
バッファ層1012 : AlN
基板1011 : サファイア
基板1011の上にはバッファ層1012を介してn型不純物としてSiをドープしたGaNからなるn型層1013を形成する。ここで、基板1011にはサファイアを用いたがこれに限定されることはなく、サファイア、スピネル、炭化シリコン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化マンガン、ジルコニウムボライド、III族窒化物系化合物半導体単結晶等を用いることができる。さらにバッファ層はAlNを用いてMOCVD法で形成されるがこれに限定されることはなく、材料としてはGaN、InN、AlGaN、InGaN及びAlInGaN等を用いることができ、製法としては分子線結晶成長法(MBE法)、ハライド系気相成長法(HVPE法)、スパッタ法、イオンプレーティング法等を用いることができる。III族窒化物系化合物半導体を基板として用いた場合は、当該バッファ層を省略することができる。
さらに基板とバッファ層は半導体素子形成後に、必要に応じて、除去することもできる。
ここでn型層1013はGaNで形成したが、AlGaN、InGaN若しくはAlInGaNを用いることができる。
また、n型層1013はn型不純物としてSiをドープしたが、このほかにn型不純物として、Ge、Se、Te、C等を用いることもできる。
発光する層を含む層1014は量子井戸構造(多重量子井戸構造、若しくは単一量子井戸構造)を含んでいてもよく、また発光素子の構造としてはシングルヘテロ型、ダブルヘテロ型及びホモ接合型のものなどでもよい。
発光する層を含む層1014はp型層1015の側にMg等をドープしたバンドギャップの広いIII族窒化物系化合物半導体層を含むこともできる。これは発光する層を含む層1014中に注入された電子がp型層1015に拡散するのを効果的に防止するためである。
発光する層を含む層1014の上にp型不純物としてMgをドープしたGaNからなるp型層1015を形成する。このp型層1015はAlGaN、InGaN又はInAlGaNとすることもできる、また、p型不純物としてはZn、Be、Ca、Sr、Baを用いることもできる。p型不純物の導入後に、電子線照射、炉による加熱、プラズマ照射等の周知の方法により低抵抗化することも可能である。上記構成の発光素子において、各III族窒化物系化合物半導体層は一般的な条件でMOCVDを実行して形成するか、分子線結晶成長法(MBE法)、ハライド系気相成長法(HVPE法)、スパッタ法、イオンプレーティング法等の方法で形成することもできる。
n電極1018はAlとVの2層で構成され、p型層1015を形成した後にp型層1015、発光する層を含む層1014、及びn型層1013の一部をエッチングにより除去することにより表出したn型層1013上に蒸着で形成される。
透光性電極1016は金を含む薄膜であって、p型層1015の上に積層される。p電極1017も金を含む材料で構成されており、蒸着により透光性電極1016の上に形成される。以上の工程により各層及び各電極を形成した後、各チップの分離工程を行う。
この発光素子1010は、図31に示すとおり、電力受送手段としてのマウントリード1021の上に発光素子1010を固定し、発光素子1010の上面の電極からマウントリード1021と他の電力受送手段としてのサブリード1022とへそれぞれボンディングワイヤ1023、1024が懸架されている。発光素子1010からの光を効率良く反射させるためマウントリード1021の表面は銀メッキされている。また、光反射効率を確保するために無機系の白色接着剤を用いて発光素子1010をマウントリード1021へ固定することもできる。更には純銅に近い銅合金を用い、高い放熱性のあるものとすることもできる。ボンディングワイヤには金線が用いられている。
図30に示した組み付け体1020は、中子として図32に示すようにプレス用金型1025にセットされる。このプレス用金型1025の凹部1026、1027へそれぞれ低融点ガラスをセットしておいて、当該金型1025を閉じることにより図33に示す封止部材1028(第1の封止部材)を成形する。この実施例では低融点ガラスとしてP2O5−F系ガラス(株式会社住田光学ガラス:商品名K−PG325)を選択し、成形温度は430℃とした。
その結果、図33に示すとおり、発光素子1010の全部とリード1021、1022の一部が半球型の封止部材1028により被覆されることとなる。この封止部材1028の形状は、光デバイス1002に要求される光学特性に応じて適宜設計可能であり、例えば砲弾型を採用することもできる。
(第2実施例)
図34に示す光デバイス1003は、図33の光デバイス1001において低融点ガラス中に蛍光材料を含有させたものである。なお、図33と同一の要素には同一の符号を付してその説明を省略する。この実施例では、蛍光材料として希土類元素をドープした低融点ガラスで封止部材1038を形成した。
任意の蛍光材料を低融点ガラスに含有させることにより、光デバイス1003の発光色の制御が可能になる。
(第3実施例)
図35に示す光デバイス1004は、図4の光デバイス1002において封止部材1028を砲弾型のカバー1048で被覆したものである。このカバー1048はエポキシ樹脂その他の透光性樹脂からなり、モールド成形される。このようにカバー1048を設けることにより大きなサイズの光デバイスを得ることができる。これにより、標準形状のガラス封止体を作成し、これをモールド型の設備や作業がより容易な樹脂により、多様な光学系を得ることができる。この際、発光素子から放射される光の密度が高く、温度上昇のある発光素子近傍はガラス材であるため、光出力劣化は無視できる程度に抑えることができる。なお、図34に示す封止部材1038をこのカバー1048で被覆することも可能である。また、後述する図36、図38、図39の各封止部材1058、1068、1069、1079をこのカバー1048で被覆することも可能である。このカバー1048中に蛍光材料を含有させることも可能である。
(第4実施例)
図36に示す光デバイス1005は自然溶着により形成された封止部材1058を有するものである。図33と同一の要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
この封止部材1058は次のようにして形成される。図37に示すように、低融点ガラスからなる筒状体1058aを準備してこれを発光素子1010とリード1021、1022の組み付け体1020に被せる。これを炉の中に入れて筒状体1058aを軟化させる。その結果、筒状体1058aはその材料の表面張力によりレンズ状に組み付け体1020を被覆することとなる。
この実施例によればプレス用金型が不要になるので、安価な光デバイスの提供が可能になる。
(第5実施例)
図38に示す光デバイス1006では異種の低融点ガラスを用いて発光素子1010及びリード1021、1022を被覆している。なお、図38において図33と同一要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
図38の例では、発光素子は前述の実施例同様、青色系の発光素子を用い、発光素子1010の上側(主たる光放出方向)をSiO2−Nb2O5系ガラスからなる第1の封止部材6108(屈折率1.8、アッベ数25)で封止し、発光素子1010の下側(主たる光放出方向と反対方向)をP2O5−F系ガラスからなる第2の封止部材1069で封止している。光取り出し効率を向上させる見地から、第1の封止部材1068は高い屈折率の材料選択を行っている。また、それによって生じる製造上の制約を第2封止部材によって緩和し、実際に作成できるものとしてある。この結果、第1の封止部材1068の屈折率は第2の封止部材1069の屈折率より大きくなる。また、第1の封止部材1068はアッベ数の小さい材料選択を行い、青色系の発光素子に対し、実際の屈折率が大きくなるのものとしてある。
図38に示される光デバイス1006は、図32において金型1025の凹部1026、1027に充填する材料を異ならせることにより形成することができる。
尚、発光素子として赤色系を用いる場合は、第1の封止部材1068として、屈折率が高く、アッベ数の大きい材料選択を行うことで、実際の屈折率が大きいものを選択できる。例えば、屈折率1.8、アッベ数45のSiO2−B2O3−La2O3系のガラスがある。
(第6実施例)
図39に示す光デバイス1007では、第2の封止部材1079として金属薄板(Al薄板)を用いた。図38と同一の要素には同一の符号を付してその説明を省略する。第2の封止部材として金属材料を用いることにより、発光素子1010からの光を効率よく反射することができる。この第2の封止部材1079は専ら反射板の役目を奏するものであり、金属薄板の他に樹脂板等を用いることができる。
この光デバイス1007は次の様に製造される。図40に示すように、発光素子1010とリード1021、1022との組み付け体1020の裏側に金属薄板1079を張り付ける。これを中子として金型1025にセットする。このとき、低融点ガラスはプレス金型1025の上側の凹部1026にのみ充填される。その後、型締めして、図39の光デバイス1007を得る。
この実施例のように第1の封止部材1068と第2の封止部材1079とを異種材料で形成する場合には、第1の封止部材の線膨張係数の値を第2の封止部材の線膨張係数と発光素子の線膨張係数の中間にすることが好ましい。
(第7実施例)
この実施例ではフリップチップタイプの発光素子1100を用いる。フリップチップタイプの発光素子は、図41に示すように、図30の発光素子において透光性電極1016及びp電極1017の代わりに、p型層1015の全面に厚膜のp電極1101を積層した構成である。なお、図30と同一の要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
当該フリップチップタイプの発光素子1100をサブマウント1110を介してマウントリード1021へマウントし、サブマウント1110とサブリード1022とをボンディングワイヤ1124で結線して組み付け体1120を形成する。このサブマウント1110には回路パターンが形成されており、発光素子1100の各電極1018、1101が直接若しくはボンディングワイヤ1124を介してリード1021、1022へ電気的に連結される。この組み付け体1120を中子として第1実施例と同様にして封止部材1028を形成し、図42に示す光デバイス1008を得る。このようにフリップチップタイプの発光素子を備えた発光装置においては、封止工程でデリケートなボンディングワイヤが1本のみになるので、工程管理が容易になるとともに製造歩留まりが向上する。また、ボンディングワイヤが発光素子の発光面に近接していないので、外部放射効率においてボンディングワイヤが影響しなくなる。
なお、第1実施例と同一の要素には同一の符号を付して、説明を簡素化している。
図41に示したフリップチップタイプの発光素子1100の組み付け体1120に対して、第2〜第6実施例で説明した封止部材を適用することが出来る。図42〜図45にその例を示した。なお、説明を簡素化するため、既述の要素と同一の要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
(第8実施例)
この実施例では、図47に示すように、AlN等からなる無機材料基板1200の表面に電力受送手段としての回路パターン1201、1202が形成されている。当該回路パターン1201、1202に対し、バンプ1205、1206を介してフリップチップタイプの発光素子1100がマウントされることとなる。また、基盤1200は共晶材により、リード1021、1022に実装されている。そして、この組み付け体1220を中子として第1実施例と同様にして封止部材1028を形成し、図48に示す光デバイス1009を得る。
なお、第1実施例と同一の要素には同一の符号を付して、説明を簡素化している。
図47に示した組み付け体1220に対して、第2〜第6実施例で説明した封止部材を適用することが出来る。図49〜図51にその例を示した。なお、説明を簡素化するため、既述の要素と同一の要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
上記の例では組み付け体1220の全体を封止部材で被覆してるが、図52に示すように発光素子1100と回路パターン1201、1202の一部を封止部材1228で被覆してもよい。図53に示した構成の光デバイスはチップLEDとして使用することができる。
この実施例の光デバイスには熱的に又機械的に脆弱なボンディングワイヤが存在せず、また、デバイス内に有機材料を含まないので、よい高い温度で低融点ガラスをプレス成形することができる。また、リフロー炉等における熱処理に対しても安定になる。従って、製造が容易になり、適用できる低融点ガラスの選択の幅も広がる。もって、安価な光デバイスの提供が可能となる。
上記の共晶材に限らず、金バンプによる光学素子マウントを行ってもよい。これによっても、ワイヤレス、無機材のみの安定したデバイス形成が可能である。
(第9実施例)
この実施例の光デバイスの断面図を図54に、同平面図を図55に示す。
この光デバイス1230はフリップチップタイプの発光素子1100、AlN基板1231、金属パターン1236及び封止部材1238を備えてなる。
基板1231としてこの実施例ではAlNからなるものを用いたが、少なくとも発光素子1100の実装面がAlN等の絶縁材料で形成されていればよい。例えば、基板の基部をアルミ板で形成し、その表面にAlNを積層したものを基板として用いることができる。絶縁材料としてはAlNの他にAl2O3等を用いることができる。
基板1231にはスルーホール1231、1232が形成されている。
金属パターン1235、1236とにより基板1231の実装面のほぼ全面が被覆されている。この実施例ではメタライズ法により金属パターン1235、1236は形成されている。このため、金属パターン1235、1236と基板1231との結合力は強く、さらに基板1231との接触面積を大きくすることにより両者の結合力が向上する。実施例の金属パターン1235、1236はタングステン上にニッケルめっきを施し、発光素子マウント部及び金属パターン露出部(低融点ガラス封止されない箇所)は更に金めっきを施してなる。かかる金属材料は、基板実装面の絶縁材料及び低融点ガラスからなる封止部材と強い結合力を備える。また、ガラスと金属材料とは線熱膨張係数が略同等(およそ10〜20×10−6(1/℃))であり、熱収縮での応力は生じにくい。なお、金属パターンの形状及び形成材料は、基板実装面の材料と封止部材の材料に応じて適宜選択されるものである。
金属パターン1235、1236が発光素子1100に対する電力受送手段となる。なお、当該電力受送手段と別体として金属パターンを形成し、基板と封止部材との結合力を確保することもできる。
フリップチップタイプの発光素子1100の電極面(図示下側面)には共晶材めっきが施される。そして汎用的なリフロー炉に通して発光素子1100が金属パターン1235、1236へはんだ付けされる。
ここに、共晶材めっきは発光素子1100の電極表面に広く薄く形成されているので、基板側への放熱性に優れている。また、フリップチップタイプの発光素子のようにp電極、n電極の間隔が狭くても短絡することがない。
封止部材1238は発光素子1100の波長に対して透明な低融点ガラスから構成される。かかる低融点ガラスとしてSiO2−Nb2O5系、B2O3−F系、P2O5−F系、P2O5−ZnO系、SiO2−B2O3−La2O3系、及びSiO2−B2O3系から選ばれる低融点ガラスを採用することができる。
封止部材1238は減圧下窒素雰囲気にて、モールド成形される。
かかる光デバイス1230によれば、封止部材1238を形成する低融点ガラスと金属パターン1235,1236を形成する金属との接着性が高く、また、当該金属とAlN基板1231との間にも高い接着性が確保される。このため、封止部材1238が基板1231にたいして強固に接合され、界面剥離が殆ど生じなくなる。また、この光デバイスでは熱的に又機械的に脆弱なボンディングワイヤが存在せず、また、デバイス内に有機材料を含まないので、より高い温度で低融点ガラスをプレス成形することができる。また、リフロー炉等における熱処理に対しても安定になる。従って、製造が容易になり、適用できる低融点ガラスの選択の幅も広がる。
以下、図56から図64に図示される実施の形態について詳細に説明する。
(光学素子)
光学素子には発光ダイオード、レーザダイオードその他の発光素子及び受光素子が含まれる。光学素子の受発光波長も特に限定されるものではなく、紫外光〜緑色系光に有効なIII族窒化物系化合物半導体素子や赤色系光に有効なGaAs系半導体素子などを用いることができる。その他、SiC、AlInGaPなどから形成される光学素子を用いることができる。
封止部材の問題が特に顕著になるのは短波長を放出するIII族窒化物系化合物半導体発光素子である。ここに、III族窒化物系化合物半導体は、一般式としてAlXGaYIn1−X−YN(0<X≦1、0≦Y≦1、0≦X+Y≦1)で表される。Alを含むものはこのうち、AlNのいわゆる2元系、AlXGa1−XN及びAlXIn1−XN(以上において0<X<1)のいわゆる3元系を包含する。III族窒化物系化合物半導体及びGaNにおいて、III族元素の少なくとも一部をボロン(B)、タリウム(Tl)等で置換しても良く、また、窒素(N)の少なくとも一部もリン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)等で置換できる。
また、III族窒化物系化合物半導体は任意のドーパントを含むものであっても良い。n型不純物として、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、セレン(Se)、テルル(Te)、カーボン(C)等を用いることができる。p型不純物として、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、ベリリウム(Be)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)等を用いることができる。なお、p型不純物をドープした後にIII族窒化物系化合物半導体を電子線照射、プラズマ照射若しくは炉による加熱にさらすことができるが必須ではない。
III族窒化物系化合物半導体層はMOCVD(有機金属気相成長)法により形成される。素子を構成する全ての半導体層を当該MOCVD法で形成する必要はなく、分子線結晶成長法(MBE法)、ハライド系気相成長法(HVPE法)、スパッタ法、イオンプレーティング法等を併用することが可能である。
発光素子の構成としては、MIS接合、PIN接合やpn接合を有したホモ構造、ヘテロ構造若しくはダブルヘテロ構造のものを用いることができる。発光層として量子井戸構造(単一量子井戸構造若しくは多重量子井戸構造)を採用することもできる。かかるIII族窒化物系化合物半導体発光素子として、主たる光受発光方向(電極面)を光デバイスの光軸方向にしたフェイスアップタイプや主たる光受発光方向を光軸方向と反対方向にして反射光を利用するフリップチップタイプを用いることができる。
III族窒化物系化合物半導体素子のエピ成長温度は1050℃程度であり、またGaAs系の半導体素子のエピ成長温度は耐熱温度は600℃以上であり、いずれも低融点ガラスを用いることで熱によるダメージ影響のない加工が可能である。
(無機材料基板)
この発明の光デバイスは既述の光学素子が無機材料基板へマウントされている。無機材料基板のベース材料及び形状は光デバイスの用途に応じて適宜選択することが出できるが、例えばAlN、Al2O3、ガラス含有Al2O3等の矩形板状のものを用いることができる。
基板において少なくともその表面が当該ベース材料で形成されていればよい。例えば、中心部分をAl若しくはAl合金で形成してその表面をAlNで囲繞してなる基板を用いることができる。
(金属パターン)
無機材料基板には金属パターンが形成され、光学素子の各電極と外部回路とを電気的に結合して光学素子に対して電力を受送する。即ち、光学素子が発光素子の場合は外部回路から光学素子へ電力を印加し、光学素子が受光素子の場合は光学素子の発生した電力を外部回路へ取り出す。
この発明の金属パターンはかかる電力の送受機能に加えて、無機系の封止部材を無機材料基板へ安定して接着させる接着層の機能を併せ持つ。封止部材は光学素子を取り囲むように配置されるので、この金属パターンも光学素子をとり囲むようにエリアに形成することにより、封止部材と無機材料基板との間に介在される金属パターンの面積を極大化することができる。なお、光学素子を取り囲む金属パターンは連続体に限られるものではなく、非連続体であってもよい。かかる非連続体の金属パターンの全ての部分が電力の受送機能を担う必要はない。
金属パターンは光を反射する機能も有するので、これで光学素子を取り囲むことにより、光学素子の光をもれなく反射させて光取り出し効率を向上させる機能も有する。例えば黒色のAlNからなる基板は光学素子からの光を吸収してしまい、またAl2O3からなる基板は光学素子からの光を透過させてしまうので、かかる金属パターンで光学素子をとり囲むことにより、光学素子からの光を外部へ効率よく反射することができる。
金属パターンの形成材料は封止部材の材質及び無機材料基板の材質に応じてこれらと結合性に優れたものが適宜選択される。金属パターンはこれを多層構造とすることもできる。例えば、金属パターンの形成材料としてW、W\Ni(Wの上にNiを積層したもの)、W\Ni\Ag(Wの上にNiとAgを順次積層したもの)、Cu箔などを採用することができる。
ここに、W層は加熱により封止部材や基板の無機材料へ楔のように入り込み、両者の間に強固な結合が形成される。W層の上にNi層を形成した場合、加熱によりNi層と封止部材との間に化学結合が生じ、両者の間に強固な結合が得られる。
Ag層は金属パターンの光反射効率を向上させる高反射率層であり、光学素子の周辺部位へ部分的に形成することが好ましい。また、光学素子をマウントする部分に結合手段としてAu層を形成することもできる。このAu層により光学素子を金属パターンへ接着することができる。
結合手段としてAuバンプを用いることができる。また、Auバンプ以外にも、はんだバンプやはんだめっきなどの共晶材によるマウント結合手段を用いてもかまわない。
基板の熱変形量を小さくする見地から、基板の光学素子マウント面(表面)の実質的な全面に当該金属パターンを形成することが好ましい。
金属パターンを基板の裏面まで形成するときには、基板にスルーホール(ビアホール)を形成してそこへ金属パターンの材料を通すことにより基板表面とパターンと基板裏面のパターンとを連結させることができる。電気端子は基板の光学素子がマウントされる面からその裏面側に引き出されているため、特に基板の光学素子がマウントされる面側に電気端子のための光学素子の封止部材で覆われない箇所を設ける必要がなく、全面を板状の封止部材で封止することができる。このため、量産性の優れたものとすることができる。尚この際、基板には貫通孔がないものとすれば、光学素子がマウントされる面側の光学素子の封止部材がその裏面側へ出ることがない。
金属パターンの形成方法は特に限定されるものではないが、実施例では無機材料基板へWのペーストをスクリーン印刷し、更にこれを焼成してWの金属パターンを無機材料基板に形成した。このW層にNi層を鍍金してW\Niからなる金属パターンを形成し、加熱処理する。W\Ni\Agは、鍍金したNi層へ更にAgを鍍金する。
これら金属層をスパッタ法その他の周知の方法で形成することもできる。
(封止部材)
無機系の封止部材は光学素子の受発光波長に対して透明であり、光学素子を保護できるものであれば特に限定されないが、光学素子の耐熱温度が600℃程度であることを考えれば、それより低い融点(軟化点)を有する低融点ガラスを採用することが好ましい。
かかる低融点ガラスとして、鉛ガラスやカルコゲン化物ガラスの他、SiO2−Nb2O5系、B2O3−F系、P2O5−F系、P2O5−ZnO系、SiO2−B2O3−La2O3系若しくはSiO2−B2O3系のガラスを採用することができる。これらの低融点ガラスはいずれも350〜600℃においてプレス成形が可能である。
封止部材には蛍光材料を分散することもできる。かかる蛍光材料として無機系の蛍光材料の粉体を用い、これを低融点ガラス中に混合することができる。また、低融点ガラス中に希土類イオンをドープすることによりこれを蛍光させることも可能である。発光素子と蛍光材料とを適宜組合せることにより、白色光をはじめとして任意の発光色を得ることができる。
この封止部材と光学素子との組合せにおいて、封止部材のアッベ数を40以下、その屈折率を1.6以上とし、かつ光学素子の受発光波長を546.1nm(Naのe線の波長)以下とすることが好ましい。即ち、高屈折材料内で発光される光の外部量子効率は、発光される光の波長に対する封止材料の屈折率が高い方が有利である。光学材料の屈折率はNaのd線によって定義されるが、一般に短波長ほどその屈折率は高くなり、光の波長に対する屈折率の変化の度合いがアッベ数で示される。特に従来の樹脂封止で問題となる短波長発光の発光素子において、Naのd線における高屈折率で、かつ、波長に対する屈折率変化の大きい材料選択を行うことにより樹脂黄変による光出力低下を防ぐことができることに加え、実質、短波長光に対し、屈折率の高い材料による封止を実現でき、高い外部量子効率を得ることができる。
かかる光学特性を有する低融点ガラスとしてSiO2−Nb2O5系ガラスを挙げることができ、なかでもSiO2−Nb2O5−Na2Oガラスが好ましい。
板状の低融点ガラスからなる封止部材を光学素子へ重ねてこれが軟化するように加熱することにより、発光素子を封止部材で囲繞することができる。封止部材と光学素子との間に空気が入り込まないように、この加熱は減圧雰囲気下で行うことが好ましい。この加熱により、低融点ガラスと金属パターンとの界面において化学反応が生じて両者が強固に接着される。
以下、この発明を実施例により説明する。
(第10実施例)
この実施例では光学素子として図56に示すフリップチップタイプのIII族窒化物系化合物半導体発光素子2010を用いた。この発光素子は青色系の光を放出する。
発光素子2010の各層のスペックは次の通りである。
層 : 組成
p型層2015 : p−GaN:Mg
発光する層を含む層2014 : InGaN層を含む
n型層2013 : n−GaN:Si
バッファ層2012 : AlN
基板2011 : サファイア
基板2011の上にはバッファ層12を介してn型不純物としてSiをドープしたGaNからなるn型層2013を形成する。ここで、基板2011にはサファイアを用いたがこれに限定されることはなく、サファイア、スピネル、炭化シリコン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化マンガン、ジルコニウムボライド、III族窒化物系化合物半導体単結晶等を用いることができる。さらにバッファ層はAlNを用いてMOCVD法で形成されるがこれに限定されることはなく、材料としてはGaN、InN、AlGaN、InGaN及びAlInGaN等を用いることができ、製法としては分子線結晶成長法(MBE法)、ハライド系気相成長法(HVPE法)、スパッタ法、イオンプレーティング法等を用いることができる。III族窒化物系化合物半導体を基板として用いた場合は、当該バッファ層を省略することができる。
さらに基板とバッファ層は半導体素子形成後に、必要に応じて、除去することもできる。
ここでn型層2013はGaNで形成したが、AlGaN、InGaN若しくはAlInGaNを用いることができる。
また、n型層2013はn型不純物としてSiをドープしたが、このほかにn型不純物として、Ge、Se、Te、C等を用いることもできる。
発光する層を含む層2014は量子井戸構造(多重量子井戸構造、若しくは単一量子井戸構造)を含んでいてもよく、また発光素子の構造としてはシングルヘテロ型、ダブルヘテロ型及びホモ接合型のものなどでもよい。
発光する層を含む層2014はp型層2015の側にMg等をドープしたバンドギャップの広いIII族窒化物系化合物半導体層を含むこともできる。これは発光する層を含む層2014中に注入された電子がp型層2015に拡散するのを効果的に防止するためである。
発光する層を含む層2014の上にp型不純物としてMgをドープしたGaNからなるp型層2015を形成する。このp型層2015はAlGaN、InGaN又はInAlGaNとすることもできる、また、p型不純物としてはZn、Be、Ca、Sr、Baを用いることもできる。p型不純物の導入後に、電子線照射、炉による加熱、プラズマ照射等の周知の方法により低抵抗化することも可能である。
上記構成の発光素子において、各III族窒化物系化合物半導体層は一般的な条件でMOCVDを実行して形成するか、分子線結晶成長法(MBE法)、ハライド系気相成長法(HVPE法)、スパッタ法、イオンプレーティング法等の方法で形成することもできる。
n電極2018はAlとVの2層で構成され、p型層2015を形成した後にp型層2015、発光する層を含む層2014、及びn型層2013の一部をエッチングにより除去することにより表出したn型層2013上に蒸着で形成される。
p電極2016は蒸着によりp型層2015の上に積層される。以上の工程により各層及び各電極を形成した後、各チップの分離工程を行う。
次に、この発光素子2010をマウントする無機材料基板を準備する。
AlNからなる焼成前の無機材料基板2021の両面にWを含むペーストをスクリーン印刷し、図57に示すパターン2023、2024とする。図57(b)に示されるように、基板2021にはスルーホール2025が形成され、当該スルーホール2025を介してマウント面(表面)のパターン2023と裏面のパターン2024との電気的結合を図る。
その後、1500℃を越える温度でAlNを焼結するとともにペーストのWを基板2021へ焼き付ける。これにより、Wと基板とが強固に結合される。このWをスパッタリングで形成することも可能である。また、Wの代わりにMo、などの高融点金属を用いてもよい。
次に、基板2021の表面側のWパターン2023の上にNi層2026をめっき法によりほぼ700℃で加熱してNiとWとを反応させる。これにより、AlN基板2021の上に金属パターンが強固に接合される。
次に、図58に示すように、金のバンプ2027、2028により発光素子2010を所定の位置にマウントする。なお、バンプ2027は発光素子2010のn電極2018に連結され、バンプ2028は発光素子2010のp電極2016に連結される。図58(a)の状態で発光素子2010は金属パターン2023でとり囲まれた状態となる。
次に、図59に示すとおり、基板2021の表面側に封止部材となる板状の低融点ガラスを重ね、これを減圧雰囲気下において加熱して融着させ、発光素子2010を封止する。これにより、金属パターン表面のNiと低融点ガラス2029とが、Ni表面の酸化物を介して、化学的に結合し、強固に結合する。また、封止時の残留気泡発生を防ぐことができる。
また、発光素子2010としてフリップチップタイプのものを採用することにより、ボンディングワイヤが省略されるので、この点においても機械的に安定している。よって、かかる構成の光デバイスは量産工程に適したものといえる。
最後に、基板2021を分割線Dにおいて分割して実施例の光デバイスを得る。
(第11実施例)
図60〜図63に他の実施例の光デバイスを示す。
図60はこの光デバイスの平面図である。この光デバイスでは基板表面(マウント面)側のパターンが第1の部分(環状部分)2103と第2の部分(結合部分)2104、2105に分割されている。第1の部分2103には穴2107が複数形成されている。第1の部分2103には基板の周縁にまで伸びる導電部2108が形成されている。この導電部2108はめっき時に電界を印加するために使用される。
第1の部分2103は第10実施例と同様にして形成されたW層とNi層の積層体であり、この上に無機系の封止部材を貼り付けることにより、基板2110−第1の部分2103−封止部材2140間に強固な結合が得られる。めっき形成されたCuからなる第2の部分2104、2105は第1の基板2111を貫通している。
この実施例の基板2110はベース材料をAl2O3とし、第1の基板2111と第2の基板2112を貼り合わせてなる。各基板のベース材料としてAlN、ガラス含有Al2O3その他の無機材料を用いることができ、第1の基板2111のベース材料と第2の基板2112のそれとを異なるものとすることも可能である。
第1の基板2111のベース材料には貫通した穴2107が形成され、当該穴2107の周面にも金属パターンである第1の部分2103の金属層が積層されている。
第2の基板2112の表面には図62に示す金属パターン2120、2121,212が形成されている。切り欠きを有する環状の金属パターン2120は第1の基板111の穴2107に対向している。この金属パターン2120は、第1の金属パターンの第1の部分2103と同様にW層とNi層の積層体からなる。このように構成された金属パターン2120によれば、穴2107の底部まで入り込んだ封止部材の無機系材料(低融点ガラスなど)との間に充分な結合力を得られる。
第2の基板2112の中央に形成される金属パターン2121、2122はそれぞれ第1の基板2111の金属パターンのうちの第2の部分2104、2105に対向する位置に形成されている。第1の基板2111と第2の基板2112とを貼り合わせたとき、金属パターン2121、2122はそれぞれ第2の部分2104、2105と電気的に結合される。この金属パターン2121、2122はW層とNi層の積層体の上に更にAu層を積層させたものとした。Au層を設けることにより、金属パターン2121、2122と第2の部分2104、2105との結合性が向上する。
第2の基板2112には貫通孔2125、2126が形成されている。第2の基板2112の裏面には広い面積の金属パターン2131、2132が形成されている。第2の基板2112の表面側の金属パターン2121は貫通孔2125内に充填された導電性金属材料を介して裏面側の金属パターン2131と電気的に結合している。これにより、金属パターン2131から第1の基板2111の表面の金属パターン2104を介して、素子2010の一方の電極へ電力が送受されることとなる。同様に、第2の基板2112の表面側の金属パターン2122は貫通孔2126内に充填された導電性金属材料を介して裏面側の金属パターン2132と電気的に結合している。これにより、金属パターン2132から第1の基板2111の表面の金属パターン2105を介して素子2010の他方の電極へ電力が送受されることとなる。
第2の基板2112の裏面に形成された金属パターン2131、2132にはそれぞれ導電部2135、2136が形成されている。この導電部2135、2136は金属パターン2131、2132のめっき形成時に使用される。
第2の基板2112の裏面の金属パターン2131、2132はW層とNi層の積層体の上に更にAu層を積層させたものとした。Au層を設けることにより、金属パターン2131、2132と外部電極との結合性が向上する。貫通孔2125及び2126内の金属材料は当該金属パターン2131、2132並びに表面側の金属パターン2121、2122を形成するときに併せて形成される。
この実施例では、第1の基板2111と第2の基板2112を別個に準備しておいて、これを結合させることにより無機材料基板2110を形成する。第1の基板2111と第2の基板2112の結合の方法は特に限定されず、接着剤を用いることもできる。
基板2110を分割することにより、分割面に金属パターンを形成することが可能になり、回路設計の自由度が向上する。また、穴2107が基板2110を貫通するものであると、封止部材の材料如何によっては基板2110を支える下型に接着して、型離れが悪くなるおそれがある。この実施例のように穴2107が有底であると、封止部材の材料と下型との接触を未然に防止できる。また、穴2107が貫通していると、封止部材と基板表面との間の空気を抜くための負圧を基板の全面にかけづらくなる。他方、穴2107が有底であると封止部材と基板との間の空気が残存したとしてもその空気が当該穴へ逃げ込むこととなるので、封止部材と基板との間に気泡が発生することを防止できる。ここに、第1の基板2111に形成された貫通孔の一方の開口部を第2の基板2112で塞ぐことにより有底の穴2107を形成することは、一枚板状の基板へ有底の穴を穿設することに比べて、量産性に優れている。
無機系透光性材料からなる封止部材2140が基板2110の表面に被覆される。封止部材2140の材料は基板2110の表面の金属パターン2103と強固に結合することはもとより、この実施例では封止部材2140の材料が穴2107の中まで回り込み、当該封止部材2140の材料と基板2110とが物理的に係合する。これにより、封止部材2140と基板2110との間に大きな熱膨張係数の違いがあっても、両者の変形が物理的に抑止され、封止部材2140が基板2110から剥離することがより確実に防止される。
このように、封止部材が被覆される基板面に凹凸を設けることにより、封止部材と基板とが物理的に係合するので、封止部材が基板から剥離することをより確実に防止できる。当該凹凸として、実施例の有底の穴の他、溝や貫通孔を用いることもできる。更には、基板面を荒くする(Ra=0.5μm以上)ことにより、両者の物理的係合を得ることができる。基板においてベース材料の表面を荒くしておけば、その上に金属パターンを形成してもその荒さが金属パターン表面にも反映する。また、金属パターン2103のみに穴を設けることにより、即ち、金属パターン2103を例えば格子状に形成することにより、当該凹凸を形成することもできる。
当該凹凸の作用は、無機系透光性材料からなる封止部材を何ら金属パターンを介することなく直接無機材料基板のベース材料へ被覆する場合においても有効である。
図64の例は、第10実施例の光学素子の基板に有底の穴2257を穿設した例を示す。当該図64及び図60に示すとおり、穴即ち凹凸は基板面において均等に分配されることが好ましい。基板面の全面において封止材料と凹凸との係合を確保し、両者の剥離を防止するためである。
以下、図65から図74に図示される実施の形態について詳細に説明する。
(光学素子)
光学素子には発光ダイオード、レーザダイオードその他の発光素子及び受光素子が含まれる。光学素子の受発光波長も特に限定されるものではなく、紫外光〜緑色系光に有効なIII族窒化物系化合物半導体素子や赤色系光に有効なGaAs系半導体素子などを用いることができる。その他、SiC、AlInGaPなどから形成される光学素子を用いることができる。
封止部材の問題が特に顕著になるのは短波長を放出するIII族窒化物系化合物半導体発光素子である。ここに、III族窒化物系化合物半導体は、一般式としてAlXGaYIn1−X−YN(0<X≦1、0≦Y≦1、0≦X+Y≦1)で表される。Alを含むものはこのうち、AlNのいわゆる2元系、AlXGa1−XN及びAlXIn1−XN(以上において0<X<1)のいわゆる3元系を包含する。III族窒化物系化合物半導体及びGaNにおいて、III族元素の少なくとも一部をボロン(B)、タリウム(Tl)等で置換しても良く、また、窒素(N)の少なくとも一部もリン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)等で置換できる。
また、III族窒化物系化合物半導体は任意のドーパントを含むものであっても良い。n型不純物として、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、セレン(Se)、テルル(Te)、カーボン(C)等を用いることができる。p型不純物として、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、ベリリウム(Be)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)等を用いることができる。なお、p型不純物をドープした後にIII族窒化物系化合物半導体を電子線照射、プラズマ照射若しくは炉による加熱にさらすことができるが必須ではない。
III族窒化物系化合物半導体層はMOCVD(有機金属気相成長)法により形成される。素子を構成する全ての半導体層を当該MOCVD法で形成する必要はなく、分子線結晶成長法(MBE法)、ハライド系気相成長法(HVPE法)、スパッタ法、イオンプレーティング法等を併用することが可能である。
発光素子の構成としては、MIS接合、PIN接合やpn接合を有したホモ構造、ヘテロ構造若しくはダブルヘテロ構造のものを用いることができる。発光層として量子井戸構造(単一量子井戸構造若しくは多重量子井戸構造)を採用することもできる。かかるIII族窒化物系化合物半導体発光素子として、主たる光受発光方向(電極面)を光デバイスの光軸方向にしたフェイスアップタイプや主たる光受発光方向を光軸方向と反対方向にして反射光を利用するフリップチップタイプを用いることができる。
III族窒化物系化合物半導体素子のエピ成長温度は1050℃程度であり、またGaAs系の半導体素子のエピ成長温度は耐熱温度は600℃以上であり、いずれも低融点ガラスを用いることで熱によるダメージ影響のない加工が可能である。
(無機材料基板)
この発明の光デバイスは既述の光学素子が無機材料基板へマウントされている。無機材料基板のベース材料及び形状は光デバイスの用途に応じて適宜選択することが出できるが、例えばAlN、Al2O3、ガラス含有Al2O3等の矩形板状のものを用いることができる。
基板において少なくともその表面が当該ベース材料で形成されていればよい。例えば、中心部分をAl若しくはAl合金で形成してその表面をAlNで囲繞してなる基板を用いることができる。
(金属パターン)
無機材料基板には第1の金属パターンと第2の金属パターンが形成される。
第1の金属パターンは光学素子の各電極と外部回路とを電気的に結合して光学素子に対して電力を受送する。即ち、光学素子が発光素子の場合は外部回路から光学素子へ電力を印加し、光学素子が受光素子の場合は光学素子の発生した電力を外部回路へ取り出す。
第2の金属パターンは、無機系の封止部材を無機材料基板へ安定して接着させる接着層の機能を有する。封止部材は光学素子を取り囲むように配置されるので、この第2の金属パターンも光学素子をマウントする第1の金属パターンをとり囲むように配置することにより、封止部材と無機材料基板との間に介在される第2の金属パターンの面積を極大化することができる。なお、第2の金属パターンは連続体に限られるものではなく、非連続体であってもよい。
第1の金属パターンと第2の金属パターンとは連続でもよいが、第1の金属パターンと第2の金属パターンとが絶縁されていれば、独立して電界を印加することにより、それぞれの機能に最適な材料を電界めっきすることができる。
金属層は光を反射する機能も有するので、第1の金属パターン及び第2の金属パターンで光学素子を取り囲むことにより、光学素子の光をもれなく反射させて光取り出し効率を向上させる機能も有する。例えば黒色のAlNからなる基板は光学素子からの光を吸収してしまい、またAl2O3からなる基板は光学素子からの光を透過させてしまうので、かかる金属パターンで光学素子をとり囲むことにより、光学素子からの光を外部へ効率よく反射することができる。
光の反射効率を向上するには、光学素子により近く形成される第1の金属パターンの表面をAg等の高反射率の金属層とすることが好ましい。
第1の金属パターンの形成材料はその表面層が光学素子を結合するための結合材料に適合したものである必要がある。例えば、結合材料としてAuバンプを用いるときは第1の金属パターンの表面層をAuやAgで形成する。当該表面層以外の層は生産性向上の見地から、第2の金属パターンと共通の材料で形成することが好ましい。
光学素子と基板とを結合するための結合材料として上記のAuバンプ以外に、はんだバンプやはんだめっきなどの共晶材を用いることができる。
Ag層は高い光反射率を有するので、第1の金属パターンにおいて光学素子の周辺部位へ部分的に形成することが好ましい。
第2の金属パターンの形成材料は封止部材の材質及び無機材料基板の材質に応じてこれらと結合性に優れたものが適宜選択される。金属パターンはこれを多層構造とすることもできる。例えば、金属パターンの形成材料としてW、W\Ni(Wの上にNiを積層したもの)、W\Ni\Ag(Wの上にNiとAgを順次積層したもの)、Cu箔(ガラスを含有するAl2O3基板とは酸化物を介して、接着強度を得ることができ、同基板は13×10−6(1/℃)といった無機系の封止部材に近い熱膨張係数である。)などを採用することができる。
ここに、W層は加熱により封止部材や基板の無機材料へ楔のように入り込み、両者の間に強固な結合が形成される。W層の上にNi層を形成した場合、加熱によりNi層と封止部材との間に化学結合が生じ、両者の間に強固な結合が得られる。
第2の金属パターンの表面は軟化状態の封止部材とぬれ性がよい材料とすることが好ましい。かかる材料としてNi、Cr、Ti、Cu若しくはこれらの合金の少なくとも1種をあげることができる。
基板表面と封止部材とを接合する第2の金属パターンは基板表面においてできる限り大面積に形成されることが好ましい。
封止部材(熱膨張係数:小)及び無機材料基板(熱膨張係数:大)の各熱膨張係数の中間の熱膨張係数を有する材料により基板表面において大面積を占めるべき第2の金属パターンを形成することが好ましい。これにより封止部材と無機材料基板の各熱膨張係数の差異が緩和される。封止部材で光学素子を被覆する際の高温状態からこれを常温まで冷却すると、封止部材と無機材料基板とは夫々の熱膨張係数に応じて収縮するが、両者の熱膨張係数の差異が大きいと基板が変形したり、また基板から封止部材が剥離するおそれがある。両者の間にその中間の熱膨張係数を有する第2の金属パターンを介在させることにより、両者の熱膨張係数の差異に基づくストレスが緩和される。
封止部材を低融点ガラスとし、基板をAlNとしたときの各熱膨張係数は低融点ガラス:17.3×10−6/℃、AlN:4.5×10−6/℃である。この場合、Ni(熱膨張係数:12.8×10−6/℃)が中間値を有し、これらの金属パターンの形成材料として採用することが好ましい。
基板の熱変形量を小さくする見地から、基板の光学素子マウント面(表面)へ広範囲に当該第2の金属パターンを形成することが好ましい。更には基板の裏面にも広範囲に同一若しくは同種の材料からなる金属パターンを形成して、基板の熱変形量をより抑制することが更に好ましい。
基板表面の金属パターンの材料を基板の裏面まで延ばして形成するには、基板にスルーホール(ビアホール)を設けてそこへ金属パターンの材料を通すことにより基板表面とパターンと基板裏面のパターンとを連結させることができる。電気端子が基板の光学素子がマウントされる面からその裏面側に引き出されているため、特に基板の光学素子がマウントされる面側に電気端子のための光学素子の封止部材で覆われない箇所を設ける必要がなく、全面を板状の封止部材で封止することができる。このため、量産性の優れたものとすることができる。尚この際、基板には貫通孔がないものとすれば、光学素子がマウントされる面側の光学素子の封止部材がその裏面側へ出ることがない。また、当該スルーホールを光学素子のマウント位置に形成すると、光学素子の熱がスルーホール内の金属パターン材料を通して外部放出できる。これにより放熱効率が向上し、特に発熱量の大きなIII族窒化物系化合物半導体発光素子にとって好適なものとなる。
第1及び第2の金属パターンの形成方法は特に限定されるものではないが、実施例では無機材料基板へWのペーストをスクリーン印刷し、更にこれを焼成してWの金属パターンを無機材料基板に形成した。このW層にNi層を鍍金してW\Niからなる金属パターンを形成し、加熱処理する。W\Ni\Agは、鍍金したNi層へ更にAgを鍍金する。
これら金属層をスパッタ法その他の周知の方法で形成することもできる。
複雑かつ正確なパターン形状の要求されない基板の裏面にはCu箔のような金属薄膜を接着することもできる。
(封止部材)
無機系の封止部材は光学素子の受発光波長に対して透明であり、光学素子を保護できるものであれば特に限定されないが、光学素子の耐熱温度が600℃程度であることを考えれば、それより低い融点(軟化点)を有する低融点ガラスを採用することが好ましい。
かかる低融点ガラスとして、鉛ガラスやカルコゲン化物ガラスの他、SiO2−Nb2O5系、B2O3−F系、P2O5−F系、P2O5−ZnO系、SiO2−B2O3−La2O3系若しくはSiO2−B2O3系のガラスを採用することができる。これらの低融点ガラスはいずれも350〜600℃においてプレス成形が可能である。
封止部材には蛍光材料を分散することもできる。かかる蛍光材料として無機系の蛍光材料の粉体を用い、これを低融点ガラス中に混合することができる。また、低融点ガラス中に希土類イオンをドープすることによりこれを蛍光させることも可能である。発光素子と蛍光材料とを適宜組合せることにより、白色光をはじめとして任意の発光色を得ることができる。
この封止部材と光学素子との組合せにおいて、封止部材のアッベ数を40以下、その屈折率を1.6以上とし、かつ光学素子の受発光波長を546.1nm(Naのe線の波長)以下とすることが好ましい。即ち、高屈折材料内で発光される光の外部量子効率は、発光される光の波長に対する封止材料の屈折率が高い方が有利である。光学材料の屈折率はNaのd線によって定義されるが、一般に短波長ほどその屈折率は高くなり、光の波長に対する屈折率の変化の度合いがアッベ数で示される。特に従来の樹脂封止で問題となる短波長発光の発光素子において、Naのd線における高屈折率で、かつ、波長に対する屈折率変化の大きい材料選択を行うことにより樹脂黄変による光出力低下を防ぐことができることに加え、実質、短波長光に対し、屈折率の高い材料による封止を実現でき、高い外部量子効率を得ることができる。
かかる光学特性を有する低融点ガラスとしてSiO2−Nb2O5系ガラスを挙げることができ、なかでもSiO2−Nb2O5−Na2Oガラスが好ましい。
板状の低融点ガラスからなる封止部材を光学素子へ重ねてこれが軟化するように加熱することにより、発光素子を封止部材で囲繞することができる。封止部材と光学素子との間に空気が入り込まないように、この加熱は減圧雰囲気下で行うことが好ましい。この加熱により、低融点ガラスと第2の金属パターンとの界面において化学反応が生じて両者が強固に接着される。
光学素子へ重ねられた軟化状態の封止部材へ凹凸を形成することができる。例えば、無機材料基板の分割ラインにそって封止部材に凹部(薄肉部)を設けることにより分割作業が容易になる。またこれにより、封止部材はチップに対応する凸部と分割ラインに沿った凹部とが細かく格子状に形成される。よって、熱変形が凹凸形成前の板状のサイズに相当するのではなく、細かい格子状のサイズに相当するものとなるので、封止部材の熱変形を小さくすることができ、封止部材と基板との間に大きな熱膨張係数の差があったとしても、基板−封止部材間の剥離が生じないものとすることができ、更には基板の反りの問題を緩和することができる。
封止部材の凸部はこれを凸レンズ状に形成することにより、発光素子からの光を光軸方向へ集中することができる。また、外部からの光を受光素子に対して集中することができる。この場合、封止部材の材料として高屈折率の材料を用いることが好ましい。
軟化状態の封止部材を光学素子へ貼り合わせるときは減圧状態で行うことが好ましい。封止部材の内部に空気が閉じ込められることを防止するためである。封止部材の凹凸は板状の封止部材を光学素子へ張り合わせた後、封止部材が軟化状態を維持している間に若しくは再加熱して封止部材を軟化させて、プレス成形により形成可能である。
以下、この発明を実施例により説明する。
(第12実施例)
この実施例では光学素子として図65に示すフリップチップタイプのIII族窒化物系化合物半導体発光素子3010を用いた。この発光素子は青色系の光を放出する。
発光素子3010の各層のスペックは次の通りである。
層 : 組成
p型層3015 : p−GaN:Mg
発光する層を含む層3014 : InGaN層を含む
n型層3013 : n−GaN:Si
バッファ層3012 : AlN
基板3011 : サファイア
基板3011の上にはバッファ層3012を介してn型不純物としてSiをドープしたGaNからなるn型層3013を形成する。ここで、基板3011にはサファイアを用いたがこれに限定されることはなく、サファイア、スピネル、炭化シリコン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化マンガン、ジルコニウムボライド、III族窒化物系化合物半導体単結晶等を用いることができる。さらにバッファ層はAlNを用いてMOCVD法で形成されるがこれに限定されることはなく、材料としてはGaN、InN、AlGaN、InGaN及びAlInGaN等を用いることができ、製法としては分子線結晶成長法(MBE法)、ハライド系気相成長法(HVPE法)、スパッタ法、イオンプレーティング法等を用いることができる。III族窒化物系化合物半導体を基板として用いた場合は、当該バッファ層を省略することができる。
さらに基板とバッファ層は半導体素子形成後に、必要に応じて、除去することもできる。
ここでn型層3013はGaNで形成したが、AlGaN、InGaN若しくはAlInGaNを用いることができる。
また、n型層3013はn型不純物としてSiをドープしたが、このほかにn型不純物として、Ge、Se、Te、C等を用いることもできる。
発光する層を含む層3014は量子井戸構造(多重量子井戸構造、若しくは単一量子井戸構造)を含んでいてもよく、また発光素子の構造としてはシングルヘテロ型、ダブルヘテロ型及びホモ接合型のものなどでもよい。
発光する層を含む層3014はp型層3015の側にMg等をドープしたバンドギャップの広いIII族窒化物系化合物半導体層を含むこともできる。これは発光する層を含む層3014中に注入された電子がp型層3015に拡散するのを効果的に防止するためである。
発光する層を含む層3014の上にp型不純物としてMgをドープしたGaNからなるp型層3015を形成する。このp型層3015はAlGaN、InGaN又はInAlGaNとすることもできる、また、p型不純物としてはZn、Be、Ca、Sr、Baを用いることもできる。p型不純物の導入後に、電子線照射、炉による加熱、プラズマ照射等の周知の方法により低抵抗化することも可能である。
上記構成の発光素子において、各III族窒化物系化合物半導体層は一般的な条件でMOCVDを実行して形成するか、分子線結晶成長法(MBE法)、ハライド系気相成長法(HVPE法)、スパッタ法、イオンプレーティング法等の方法で形成することもできる。
n電極3018はAlとVの2層で構成され、p型層3015を形成した後にp型層15、発光する層を含む層3014、及びn型層3013の一部をエッチングにより除去することにより表出したn型層3013上に蒸着で形成される。
p電極3016は蒸着によりp型層3015の上に積層される。以上の工程により各層及び各電極を形成した後、各チップの分離工程を行う。
次に、この発光素子3010をマウントする無機材料基板を準備する。
実施例の無機材料基板3021のベース材料はAlNであり、その上下面に金属パターン3023、3024が形成されている。上面側のパターン3023は、図66に示すとおり、第1の金属パターン3025n、3025pと第2の金属パターン26から構成される。第1の金属パターン3025nは光学素子3010のn電極3018にAuバンプ3027を介して連結され、第1の金属パターン3025pは光学素子のp電極3016にAuバンプ3028を介して連結される。第1の金属パターン25nは、図67に示すように、無機材料基板3021のベース材料に穿設されたスルーホール3031を介して基板裏面の金属パターン3024nに電気的に結合されている。同様に、第1の金属パターン3025pはスルーホール3032を介して基板裏面の金属パターン3024pに電気的に結合されている。各スルーホール3031、3032は、図68(図67の要部拡大図)に示すように、めっきによるCuで充填されている。
第2の金属パターン3026は、第1の金属パターン3025n、3025pから離隔してかつこれらを取り囲む環状領域に形成されている。
裏面側の金属パターン3024n及び3024pは、図69に示すように、できる限り大面積に形成することが好ましい。このように封止部材と基板との中間の熱膨張係数有する金属材料からなる大面積のパターンを基板3021の裏面へ結合することにより、熱履歴を加えたときの基板3021の変形量を封止部材3029の変形量により近いものとすることができる。これにより、基板3021の反りや封止部材−基板間の剥離をより確実に防止できることとなる。
各金属パターンは次のようにして形成される。まず、スクリーン印刷などにより貫通孔が形成された焼成前の無機材料基板3021の両面及びスルーホールを形成する貫通孔にWを含むペーストを塗布する。その後、1500℃を越える温度でAlNを焼結するとともにペーストのWを基板3021へ焼き付ける。これにより、Wと基板とが強固に結合される。このWをスパッタリングで形成することも可能である。また、Wの代わりにMo、などの高融点金属を用いてもよい。
次に、Wパターンの上にNi層をめっき法により形成し、さらにほぼ700℃で加熱してNiとWとを反応させる。これにより、AlN基板3021の上に金属パターンが強固に接合される。
Niは無機系光透過性材料からなる封止部材と強く化学結合する。また、軟化状態の封止部材の無機系材料はNiに対してぬれが良いので、当該封止部材の材料が第2の電極パターンの全面に接触して気泡の発生を防止し、かつ両者の間に強い結合力が得られる。
第1の金属パターン3025n、3025pにおいては、Ni層の上にAuバンプによるボンディングを良好に行うことができ、かつ高反射率のAg層を形成することが好ましい。尚、発光素子が底面に反射面を形成したものであればAuバンプによるボンディング性のみを考慮すればよく、例えば青色発光の発光素子に対し、Ni層の上にAu層を形成したものであってもよい。
第1の金属パターン3025n、3025pの真下の位置にスルーホール3031、3032が形成されているので、当該スルーホール内の金属材料を介して、光学素子10の熱を効率よく外部(基板3021の裏面)へ放出することができる。
次に、図67に示すように、Auバンプ3027、3028により発光素子3010を所定の位置にマウントする。なお、バンプ3027は発光素子3010のn電極3018に連結され、バンプ3028は発光素子3010のp電極3016に連結される。図66の状態で発光素子3010は第1の金属パターン3025n及び3025pでとり囲まれた状態となる。
次に、図67に示すとおり、基板3021の表面側に封止部材となる板状の低融点ガラスを重ね、これを減圧雰囲気下において加熱して融着させ、発光素子3010を封止する。これにより、金属パターン表面のNiと低融点ガラス3039とが、Ni表面の酸化物を介して、化学的に結合し、強固に結合する。また、封止時の残留気泡発生を防ぐことができる。
板状の低融点ガラスが軟化したときにプレス加工をしてそれに凹凸を形成することが好ましい。封止部材3039の凹部を基板3021の分割線3037(ノッチ)に一致させることで基板の分割作業が容易になる。封止部材3039の凸部はレンズ形状として、光取り出し効率を向上させることが好ましい。
上記一連の製造工程において、発光素子3010と第1の金属パターン3025n、3025pとは加工温度より融点の高い金バンプ3027、3028で連結されているので、封止温度でバンプ3027、3028が軟化することはない。よって、封止作業において発光素子に力がかかったとしても、発光素子3010が規定の位置からずれることがない。また、発光素子3010としてフリップチップタイプのものを採用することにより、ボンディングワイヤが省略されるので、この点においても機械的に安定している。よって、かかる構成の光デバイスは量産工程に適したものといえる。
更に、金属パターンの膜厚の大部分を占めるNi層の熱膨張係数は12.8×10−6/℃であり、AlNの熱膨張係数(4.5×10−6/℃)と低融点ガラス3039の熱膨張係数(17.3×10−6/℃)の中間値をとる。
このように、金属パターンを無機系の封止部材3039と無機材料基板3021との間に介在させることにより、封止部材3039と基板3021とを強固に結合することに加え、封止部材3039と基板3021の各熱膨張係数の差に起因する応力を緩和させることができる。よって、基板3021に反りやクラックが生じたりまた封止部材3039と基板3021とが剥離する不具合を確実に防止することができる。
最後に、基板3021を分割線3037において分割して実施例の光デバイスを得る。
図70〜図73にこの実施例の変形態様を示す。図70〜図73において、図22と同一の要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
図69の光デバイスでは、第2の金属パターン3041が矩形の環状である。
図70の光デバイスでは、第2の金属パターン43を非連続体とした。
図72に示す例では、フリップチップタイプの発光素子の基板としてサファイア基板の代わりにGaN基板3011a若しくはSiCを採用した。かかる素子用基板はサファイア基板より高屈折率を有するので、これと高屈折率の封止部材(低融点ガラスなど)とを組み合わせることにより、光取り出し効率を向上させることができる。
GaN基板3011aの周縁部を面取りすることにより、光学素子3010からの光取出し効率が更に向上する。
また、図72の例では、無機材料基板3051のベース材料としてAlNより熱膨張係数が大きく安価なAl2O3(熱膨張係数:6.7×10−6)を採用した。
図73に示す例では、無機材料基板3061のベース材料としてガラスを含有したAl2O3を採用した。そして、Cu箔を基板3061の全面へ接着した。貫通孔3031及び3032内はめっきによりCuを充填した。かかる無機材料基板3061を1000℃に加熱すると、CuとAl2O3が化学結合する。ガラスを含有したAl2O3基板の裏面へ広範囲にガラスと同等の熱膨張率であるCu層を形成することにより、基板の反りや封止部材一基板間の剥離の問題を防止できる。
第1の金属パターンと第2の金属パターンとは同一の下地(Cu箔)とし、発光素子をマウントするエリア3025n、3025pのみAgやAuめっきを施すことで形成されている。これは、第2の金属パターンエリアをマスキングすることにより、容易に形成できる。
尚、例えば同一の下地Cu箔にNiめっきし、青色発光素子に対し第2の金属パターンの反射層としてもよい。このように第1の金属パターン3025n、3025pと第2の金属パターン3026とは分離されていなくてもかまわない。
(第13実施例)
図74にこの実施例の光デバイスを示した。この実施例に用いられる発光素子3100は上下に電極を有すタイプであり、その結果、ボンディングワイヤ3101が必要となる。
AlNからなる無機材料基板3110にはスルーホール3111が形成され、このスルーホール3111はめっきによりCuが充填されている。基板3110の両面には広範囲にW\Niからなる金属パターンが形成されている。この金属パターンの形成方法は実施例12と同様である。
熱の取出し効率を向上させる見地から、スルーホール3111の上の第1の金属パターン3113aに発光素子3100の一方の電極をマウントする。他方の電極からはボンディングワイヤ3101が引き出されて、第2の金属パターン3113bへボンディングされる。
他方、低融点ガラスからなる板状のスペーサ3120を準備する。このスペーサ3120には発光素子3100及びボンディングワイヤ3101を通す穴が形成されており、これらと何ら干渉することなくスペーサ3120を基板3110へ重ね合わせることができる(図74の状態)。この状態で低融点ガラスからなる封止部材3130を取り付ける。このとき封止部材の材料によりボンディングワイヤ3101が変形されるおそれがあるが、その変形はスペーサ3120より規制される。よって、ボンディングワイヤ3101の切断や短絡を未然に防止することができる。
なお、ボンディングワイヤ3101を保護する見地から、スペーサ3120はボンディングワイヤ3101の下側まで回りこんでいることが好ましい。
以下、図75から図83に図示される実施の形態について詳細に説明する。
(発光素子)
発光素子には発光ダイオード、レーザダイオードその他の発光素子が含まれる。発光素子の発光波長も特に限定されるものではなく、紫外光〜緑色系光に有効なIII族窒化物系化合物半導体素子や赤色系光に有効なGaAs系半導体素子などを用いることができる。その他、SiC、AlInGaPなどから形成される発光素子を用いることができる。
上記において、絶縁性基板を有するIII族窒化物系化合物半導体発光素子に排熱の課題があることは既述の通りであり、またこの発光素子を例えば白色光源として使用する場合に特に高出力が求められている。
ここに、III族窒化物系化合物半導体は、一般式としてAlXGaYIn1−X−YN(0<X≦1、0≦Y≦1、0≦X+Y≦1)で表される。Alを含むものはこのうち、AlNのいわゆる2元系、AlXGa1−XN及びAlXIn1−XN(以上において0<X<1)のいわゆる3元系を包含する。III族窒化物系化合物半導体及びGaNにおいて、III族元素の少なくとも一部をボロン(B)、タリウム(Tl)等で置換しても良く、また、窒素(N)の少なくとも一部もリン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)等で置換できる。
また、III族窒化物系化合物半導体は任意のドーパントを含むものであっても良い。n型不純物として、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、セレン(Se)、テルル(Te)、カーボン(C)等を用いることができる。p型不純物として、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、ベリリウム(Be)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)等を用いることができる。なお、p型不純物をドープした後にIII族窒化物系化合物半導体を電子線照射、プラズマ照射若しくは炉による加熱にさらすことができるが必須ではない。
III族窒化物系化合物半導体層はMOCVD(有機金属気相成長)法により形成される。素子を構成する全ての半導体層を当該MOCVD法で形成する必要はなく、分子線結晶成長法(MBE法)、ハライド系気相成長法(HVPE法)、スパッタ法、イオンプレーティング法等を併用することが可能である。
発光素子の構成としては、MIS接合、PIN接合やpn接合を有したホモ構造、ヘテロ構造若しくはダブルヘテロ構造のものを用いることができる。発光層として量子井戸構造(単一量子井戸構造若しくは多重量子井戸構造)を採用することもできる。かかるIII族窒化物系化合物半導体発光素子として、主たる発光方向(電極面)を発光装置の光軸方向にしたフェイスアップタイプや主たる発光方向を光軸方向と反対方向にして反射光を利用するフリップチップタイプを用いることができる。
(サブマウント)
サブマウントのベース材は、熱伝導性の高いものであれば、発光装置の用途に応じて適宜選択することができる。例えばAlN、Al2O3、SiC、Si3N4、Si等の無機材料を選択することができる。
サブマウントを形成する無機材料は発光素子の半導体材料とリードフレームの金属材料との中間の熱膨張率を有する。従って、発光装置の製造工程で大きな熱履歴が加えられたとしても(例えばサブマウントを第1及び第2のリードフレームにハンダ付けするとき等)、発光素子とリードフレームとの熱膨張率に起因する応力を緩和することができる。
サブマウントの形状はその一端が第1のリードフレームに形成される第1の凹部へセットすることができ、かつその他端が第2のリードフレームに形成される第2の凹部にセットすることができればよい。
フリップチップタイプの発光素子を採用した場合、ワイヤが省略されるので、大電流を発光素子へ印加することが可能になる。その結果発光素子を高輝度に発光させられるとともに、発光素子の熱も効率よく逃がすことができる。また、ワイヤを省略することにより、発光装置として耐衝撃性が向上する。
ワイヤの代わりに、サブマウントにはスルーホールやサイドメタルなどの配線パターンが形成される。この配線パターンにより、サブマウントの上面にマウントされた発光素子の各電極が第1のリードフレーム及び第2のリードフレームに電気的に結合される。金属パターンの形成材料はその表面層が発光素子を結合するための結合材料に適合したものである必要がある。例えば、結合材料としてAuバンプを用いるときは金属パターンの表面層をAuやAgで形成する。
なお、発光素子とサブマウントの配線パターンとを結合するための結合材料として上記のAuバンプ以外に、はんだバンプやはんだめっきなどの共晶材を用いることができる。
(第1のリードフレーム、第2のリードフレーム)
第1のリードフレームの一端には第1の凹部が形成され、第2のリードフレームの一端に第2の凹部が形成されている。第1の凹部及び第2の凹部はそれぞれ第1及び第2のリードフレームにおいて、厚み方向に溝を切削又はエッチングして形成することができる。また、第1及び第2のリードフレームの材料をプレスすることによりそれぞれ第1及び第2の凹部を形成することもできる。また、第1及び第2のリードフレームの表面に凸部を設け、その凸部で囲まれる部分を凹部とすることもできる。
これらの凹部はサブマウントの受け座となるものであり、その形状及び深さはサブマウントに応じて適宜設計される。
サブマウントの一端を上記の第1の凹部へセットし、その他端を第2の凹部へセットし、サブマウントと第1及び第2のリードフレームとを金属の共晶材からなる半田(例えば、Pb−Sn,Au−Sn等)又はAgペースト等で機械的に固定する。
サブマウントと第1及び第2の凹部周壁との間のマージンを小さくすることにより、例えば、当該サブマウントと第1及び第2の凹部とが実質的に嵌合状態にあるとき、サブマウントの取り付け位置が安定し、もって発光素子の位置ズレが防止される。よって、発光素子をレンズ状の封止部材で封止したときの配光特性が安定する。
また、第1の凹部と第2の凹部へセットされた状態で、サブマウントと第1及び第2のリードフレームとを実質的に同じ高さとすると、発光素子から側方へ放出された光の制御が容易になり、光取り出し効率を向上させられる。
更には、サブマウントと第1及び第2のリードフレームとが実質的に同じ高さであって、かつサブマウントと第1及び第2のリードフレームとの間の隙間が小さいと(嵌合状態)、即ち両者が実質的に面一であると、リードフレームによる反射効率も向上する。
以下、この発明の実施例について説明をする。
発光素子10は、III族窒化物系化合物半導体発光素子である。その構成を図75に模式的に示した。図75に示されるように、発光素子4010は、サファイア基板上に、複数のIII族窒化物系化合物半導体層が積層された構成からなる。発光素子4010の各層のスペックは次の通りである。
層 : 組成
p型半導体層4015 : p−GaN:Mg
発光する層を含む層4014 : InGaN層を含む
n型半導体層4013 : n−GaN:Si
バッファ層4012 : AlN
基板4011 : サファイア
基板4011の上にはバッファ層4012を介してn型不純物としてSiをドープしたGaNからなるn型半導体層4013を形成した。ここで、基板4011にはサファイアを用いたが、これに限定されることはなく、サファイア、スピネル、シリコン、炭化シリコン、酸化亜鉛、リン化ガリウム、ヒ化ガリウム、酸化マグネシウム、酸化マンガン、III族窒化物系化合物半導体単結晶等を用いることができる。さらにバッファ層はAlNを用いてMOCVD法で形成されるがこれに限定されることはなく、材料としてはGaN、InN、AlGaN、InGaN及びAlInGaN等を用いることができ、製法としては分子線結晶成長法(MBE法)、ハライド系気相成長法(HVPE法)、スパッタ法、イオンプレーティング法、電子シャワー法等を用いることができる。III族窒化物系化合物半導体を基板として用いた場合は、当該バッファ層を省略することができる。
さらに基板とバッファ層は半導体素子形成後に、必要に応じて、除去することもできる。
ここでn型半導体層4013はGaNで形成したが、AlGaN、InGaN若しくはAlInGaNを用いることができる。
また、n型半導体層4013はn型不純物してSiをドープしたが、このほかにn型不純物として、Ge、Se、Te、C等を用いることもできる。
n型半導体層4013は発光する層を含む層4014側の低電子濃度n層とバッファ層12側の高電子濃度n+層とからなる2層構造とすることができる。
発光する層を含む層4014は量子井戸構造(多重量子井戸構造、若しくは単一量子井戸構造)を含んでいてもよく、また発光素子の構造としてはシングルヘテロ型、ダブルヘテロ型及びホモ接合型のものなどでもよい。
発光する層を含む層4014はp型半導体層4015の側にマグネシウム等のアクセプタをドープしたバンドギャップの広いIII族窒化物系化合物半導体層を含むこともできる。これは発光する層を含む層4014中に注入された電子がp型層4015に拡散するのを効果的に防止するためである。
発光する層を含む層4014の上にp型不純物としてMgをドープしたGaNからなるp型半導体層4015を形成した。このp型半導体層4015はAlGaN、InGaN又はInAlGaNとすることもできる、また、p型不純物としてはZn、Be、Ca、Sr、Baを用いることもできる。
さらに、p型半導体層4015を発光する層を含む層4014側の低ホール濃度p−層と電極側の高ホール濃度p+層とからなる2層構造とすることができる。
上記構成の発光ダイオードにおいて、各III族窒化物系化合物半導体層は一般的な条件でMOCVDを実行して形成するか、分子線結晶成長法(MBE法)、ハライド系気相成長法(HVPE法)、スパッタ法、イオンプレーティング法、電子シャワー法等の方法で形成することもできる。
n電極4018はAlとVの2層で構成され、p型半導体層4015を形成した後、p型半導体層4015、発光する層を含む層4014、及びn型半導体層4013の一部をエッチングにより除去し、蒸着によりn型半導体層4013上に形成される。
p電極4016は金を含む膜状であり、p型半導体層4015の上に蒸着により積層される。
上記の工程により各半導体層及び各電極を形成した後、各チップの分離工程を行う。
サブマウント4020は、図76Aに示すように、AlNからなる絶縁性の板状部材であって、その上側表面に表面電極4021、4022が形成され、裏面側には裏面電極4023,4024が形成されている。これらの電極4021、4022、4023,4024はチタン、Ni及びAuをこの順に積層してなり、スルーホール4025(導電性金属が充填されている)により導通されている。
この実施例のサブマウント4020ではスルーホールにより表面電極4021、4022と裏面電極4023、4024とを導通させているが、サブマウント4020の側面に金属層(サイドメタル)を形成して両者の導通を図ることもできる。
発光素子4010のn電極はAuバンプ4031を介して表面電極4021に電気的に接続され、p電極はAuバンプ4032を介して表面電極4022へ電気的に接続される。バンプの代わりに半田ボールを用いることも可能である。
第1のリードフレーム4041と第2のリードフレーム4042の相互に対向する端縁にはそれぞれ溝4043、溝4044が切削により形成されている。各溝4043、4044の形状はサブマウント4020の両端をほぼ隙間なく嵌め込めるものであり、これにより、サブマウント4020の位置が規定される。第1及び第2のリードフレーム4041、4042とサブマウント4020とは半田(Sn−Ag系のクリーム半田など)4035で固定されている。
この実施例では第1及び第2のリードフレーム4041、4042の表面とサブマウント4020の表面とがほぼ同一の高さになるように溝4043及び溝4044の深さを調整した。これにより、発光素子4010から放出される光(特に側方へ放出されるもの)の制御が容易になる。
また、溝を深くして、溝の側壁で発光素子4010から放出される光を反射させる構造をとることもできる。
その後、図77に示すように、発光素子4010を封止部材4051で被覆して実施例の発光装置4050とする。封止部材4051中に蛍光材料を混在させることにより、白色等任意の発光色を得ることができる。封止部材4051は発光素子からの光を透過できるものの中から発光装置の用途等に応じて適宜選択される。例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド、シリコーンエラストマー等の有機材料及び低融点ガラス等の無機材料で形成することができる。この実施例では、リフローに耐えうるイミド系の樹脂で封止部材4051を型形成し、その後、サブマウント4020を第1及び第2のリードフレーム4041、4042に対して半田付けする。
図78には他の形態の封止部材4053を示す。この例では、第1及び第2のリードフレーム4041、4042の端部及びサブマウント4020も封止部材4053で覆われている。かかる封止部材4053はサブマウント4022を第1及び第2のリードフレーム4041、4042へ固定したのち、型成形により形成される。成形材料にはエポキシ樹脂を採用することができる。
このように構成された実施例の発光装置4050によれば、発光素子4010で生じた熱はサブマウント4020を介して第1及び第2のリードフレーム4041、4042へほぼ均等に伝達される。従って、熱の伝達経路が充分に確保されて、放熱効率が向上する。
また、溝4043及び溝4044によりサブマウント4020の位置、即ち発光素子4010の位置が規定される。従って、発光装置としての配光特性が安定することとなる。
上記実施例の各要素についての変形態様について以下に説明する。図77−78に示した要素と同一の要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
図80の例では、第1のリードフレーム4041の溝4045を短く、第2のリードフレーム4042に溝4046を長く形成した。これにより、第2のリードフレーム4042の部材(溝4046の周壁)が発光素子4010の直下に位置することとなる。よって、発光素子4010からリードフレームまでの距離が最も短くなり、発光素子4010からより効率よく熱を逃がすことができる。
図80の例では、溝4047及び溝4048が各リードフレーム4041、4042の側面まで開いている。これにより、溝4047及び溝4048に対するサブマウント4020のセットがより容易になる。
図81の例では、第1のリードフレーム4041の側方に溝4049を形成した。この実施例が示す通り、リードフレームにおける溝の形成方向及び形成位置は任意であり、発光装置の用途に応じて適宜選択できるものである。
図82に示す例では、第1及び第2のリードフレーム4041、4042の先端へプレス加工により凹部4061、4062を形成した。この凹部4061、4062へ、図76と同様にしてサブマウントをセットすることができる。
図83に示す例では、第1及び第2のリードフレーム4041、4042の先端へプレス加工によりコ字形の凸部4071、4072を形成した。この凸部4071、4072で囲まれた部分が凹部4073、4074となる。この凹部4073、4074へ図76と同様にしてサブマウントがセットされることとなる。
図84は、第13の実施の形態に係る発光装置の構成を示す断面図である。この発光装置5010は、給電部材としての基板部5011と、この基板部5011の上面に搭載されたLED素子5012と、基板部5011の上面にLED素子5012を覆うように封止された緩衝層5013と、この緩衝層5013及び基板部5011の上面を覆うように形成された封止部材5014とを備えて構成される。
基板部5011は、高膨脹率のセラミック基板5011a(絶縁性基板)と、このセラミック基板5011aの上面に所定のパターンで形成された配線層5011b,5011c,5011d,5011eと、セラミック基板5011aの下面に所定のパターンで形成された配線層5011f,5011gと、配線層11cの表面に被覆されたAuメッキ膜5011hと、配線層5011dの表面に被覆されたAuメッキ膜5011iと、配線層5011fの表面に被覆されたAuメッキ膜5011jと、配線層5011gの表面に被覆されたAuメッキ膜5011kと、配線層5011bと配線層5011fを接続するスルーホール511lと、配線層5011dと配線層5011gを接続するスルーホール5011mとを備えている。
セラミック基板5011aは、例えば、ガラス含有Al2O3材(熱膨張率:13.2×10−6/℃)を用いることができる。配線層5011b,5011d,5011j,5011gは、電源を供給するための電極として機能する。また、Auメッキ膜5011h,5011i,5011j,5011kは、接続性、導電性、及び耐腐食性を向上させるために設けられている。なお、基板部5011は、LED素子5012の搭載の前に、配線層5011b〜5011g、Auメッキ膜5011h,5011i,5011j,Auメッキ膜5011k、及びスルーホール511l,5011mは、予めセラミック基板5011aに形成しておく必要がある。
LED素子12は、例えば、GaN、AlInGaP等の半導体を用いて構成されており、そのチップサイズは、0.3×0.3mm(標準サイズ)、1×1mm(ラージサイズ)等である。緩衝層5013には、シリコン樹脂が用いられる。封止部材5014には、例えば、株式会社住田光学ガラス製の「K−PSK100」(熱膨張率:11.4×10−6/℃)がある。
封止部材5014は、透光性で低融点の特性を有するガラス材を用いている。LED素子5012は、下面に電源用の電極5012a,5012bを有し、この電極5012a,5012bが基板部11の所定の配線層上に半田付けされる。
以下に、発光装置10の組み立てについて説明する。
まず、基板部5011の配線層5011c,5011d上に電極5012a,5012bが載るようにしてLED素子5012を位置決めして、配線層5011cと電極5012a、及び配線層5011dと電極5012bとをそれぞれ半田付けする。
次に、液状のシリコン樹脂材をLED素子5012の中心部の真上から滴下して、LED素子5012の上面及び側面の全体に層状にコーティングすることにより緩衝層13を形成する。
次に、緩衝層5013を形成された状態で基板部5011およびLED素子5002を150℃程度の温度雰囲気に置き、緩衝層5013を一次硬化させる。
次に、緩衝層5013の表面及び基板部5011の表面にガラス材による封止部材5014を封止する。封止部材5014の封止には金型を用い、所定の温度雰囲気及び加圧プレスにより図84のように半円型に成形する。以上により、発光装置5010が完成する。なお、シリコン樹脂はガラス封止加工の際、熱によって化学結合が切れSiO2化するが、黒化現象は生ぜず、光吸収要因とはならない。
上記構成の発光装置5010において、例えば、配線層5011fがLED素子5012のアノード側であるとすると、配線層5011fに直流電源(図示せず)のプラス側が接続され、配線層5011gにはマイナス側が接続される。LED素子12に対して、パッド電極5108及びn型電極5109に電気的に接続されたバンプ2を介して順方向の電圧を印加すると、LED素子5012内の発光層内においてホール及びエレクトロンのキャリア再結合が発生して発光し、出力光がサファイア基板5101を介してLED素子5012の外部へ放射される。この光の殆どは封止部材5014内を透過して封止部材5014の外へ出光し、一部は内面反射をして封止部材5014の外へ出光する。
上記した第13の実施の形態によると、以下の効果が得られる。
(1)ガラス材による封止部材5014で全体を封止したことにより、樹脂封止で問題になった黄変や着色による光の減衰を低減することができる。
(2)LED素子5012の周囲に緩衝層5013を設けたことにより、封止部材5014の封止時に粘度の高いガラス材を介してLED素子5012に付与される外力が緩和される。すなわち、緩衝層5013の介在によってLED素子5012と封止部材5014とが直接接触しないので、熱膨張・熱収縮によって生じる応力を緩衝層5013によって吸収できる。
(3)緩衝層5013を介してLED素子5012をガラス封止することによって、LED素子5012近傍に生じていたクラックの発生を防止することが可能になる。このような緩衝層5013を設ける構成は、封止部材5014との接触面積が広くなるラージサイズ(1mm×1mm)のLED素子5012において特に有効である。
(4)LED素子5012を緩衝層5013で包囲することによって、バンプ5002の圧潰による電極間の短絡を防ぐことができる。また、緩衝層5013がバンプ形状の崩れを抑制することから、ガラス封止によってLED素子5012の光軸が傾くことを防げる。
(5)ウェハをスクライブすることによりLED素子5012を形成する場合、スクライブされたLED素子5012の側面には微細な凹凸が生じている。この凹凸はガラス封止型の発光装置5010にとってLED素子5012と封止部材5014との界面に応力の不均衡部分を形成し、ひいてはマイクロクラックを発生させる要因となる。このような問題に対しては、LED素子5012のスクライブ面となる側面に緩衝層5021を設けることで、封止部材5014の熱収縮時におけるマイクロクラックの発生を防げる。
図85は、第13の実施の形態に係る発光装置の変形例を示す断面図である。この発光装置5020では、LED素子5012の側面にのみ緩衝層5021を設けている構成が相違している。このような構成としてもバンプ5002の圧潰による電極間の短絡や、封止部材5014の熱収縮に伴う応力を緩和することができる。また、LED素子12の基板側に緩衝層が設けられないことから、LED素子5012から放射される光の取り出しを阻害することがない。
図86は、第14の実施の形態に係る発光装置を示す断面図である。図86の発光装置5030は、フェイスアップ型であり、給電部材としての基板部31と、この基板部31の上面に搭載されたLED素子5032と、LED素子5032の全体を覆うように封止された緩衝層5033と、この緩衝層33及び基板部31の上面を覆うように形成された封止部材5034と、LED素子5032の電極と基板部5031上の配線層とを接続するワイヤ5035a,5035bとを備えて構成されている。
基板部5031は、図84の基板部5011と同じ材料を用いた絶縁性基板としてのセラミック基板5031aと、セラミック基板5031aの上面に所定のパターンで形成された配線層5031b,5031cと、セラミック基板5031aの下面に所定のパターンで形成された配線層5031d,5031eと、配線層5031bと配線層5031dを接続するスルーホール5031fと、配線層5031cと配線層5031eを接続するスルーホール5031gとを備えている。なお、配線層5031b〜5031eは、表面にAuメッキ膜が設けられているが、ここでは図示を省略している。
セラミック基板5031aは、例えば、ガラス含有Al2O3材を用いることができる。配線層5031b〜5031eは、電源を供給するための電極として機能する。なお、基板部5031は、LED素子5032の搭載の前に、配線層5031b〜5031eとスルーホール5031f,5031gが、予めセラミック基板5031aに形成されている必要がある。封止部材5034は、透光性で低融点の特性を有するガラス材を用いる。
LED素子5032は、配線層5031c上に接着剤等により固定され、LED素子5032の上面の一方の電極(図示せず)と配線層5031bとはワイヤ5035aで接続され、LED素子5032の上面の他方の電極(図示せず)と配線層5031cとはワイヤ5035bで接続されている。
緩衝層5033は、LED素子5032の露出面及びワイヤ5035a,5035bを覆うように被覆している。
封止部材5034は、緩衝層5033の表面、及び基板部5031の上面に露出する配線層や基板部5031の露出部の一部を覆うようにして、半球状に成形されている。
以下に、発光装置5030の組み立てについて説明する。
まず、セラミック基板5031aに配線層5031b〜5031e及びスルーホール5031f,5031gが形成済みの基板部5031を準備し、その配線層5031c上の所定の位置にLED素子5032を搭載する。
次に、ワイヤ5035a,5035bによりLED素子5032と配線層5031b,5031cとをボンディングにより接続する。
次に、LED素子5032の露出面及びワイヤ5035a,5035bを覆うように液状のシリコン材を所定の厚みになるように滴下する。
次に、LED素子5032およびワイヤ5035a,5035bを有する150℃程度の温度雰囲気に置き、緩衝層5033の一次硬化を行った後、緩衝層5033の周辺にガラス材の成形に基づく封止部材5034を形成する。以上により発光装置5030が完成する。
この発光装置5030では、例えば、配線層5031dがLED素子5032のアノード側であれば、配線層5031dに直流電源(図示せず)のプラス側が接続され、配線層5031eにはマイナス側が接続される。この通電により、LED素子5032が発光する。その光は、図のLED素子5032の上面から出射し、その殆どは封止部材5034内を通して外部へ出光し、他の一部は封止部材5034内で内面反射した後、封止部材5034の外へ出光する。
上記した第14の実施の形態によると、LED素子5032をフェイスアップで搭載する発光装置5030のLED素子5032周囲に緩衝層5033を設けたため、ガラス材の封止時にワイヤ5035a,5035bが変形したり、圧潰して電極間のショートが生じることを防止できるとともに、第1の実施の形態と同様に封止部材5034の高熱膨脹に起因してLED素子5012の近傍に生じていたクラックの発生を防止することが可能になる。
例えば、緩衝層5033が設けられていない場合、ガラス封止加工後温度を高く設定するとLED素子にダメージを与えるため、温度制約があり、ガラス封止加工はガラスが高い粘度の状態で行われるため、ワイヤ5035a,5035bに外力が加わることは避けられず、ワイヤ5035a,5035bを所望の姿勢に維持することは難しい。例えば、ワイヤ5035aがガラス材の加圧プレスにより押し潰された場合、配線層5031bと5031cとがショートする問題がある。この場合、発光しないだけでなく、図示しない電源側に影響を及ぼすことにもなる。因みに、樹脂材ではこのような問題は生じない。
フェイスアップタイプのLED素子では、上面に金属部材であるワイヤがあること自体が緩衝材になる。しかし、潰れて電気的短絡を生じることが問題である。このため、緩衝材的な要素がなくても、潰れ防止等による電気的短絡防止要素があることが重要である。
図87は、本発明の第15の実施の形態に係る発光装置を示す断面図である。この発光装置5040は、LED素子5041を搭載するサブマウント5043をリード部5044a、5044bに搭載している。なお、図87においては、サブマウントは非断面の状態で図示している。
この発光装置5040は、実装面にバンプ5042が設けられたLED素子5041と、LED素子5041が搭載されるサブマウント5043と、サブマウント5043が搭載される給電部材としてのリード部5044a,5044bと、LED素子5041の露出面を覆うように設けられる緩衝層5045と、緩衝層5045及びその周囲を封止する透光性ガラスによる封止部材5046とを有する。
サブマウント5043は、例えば、高熱伝導のAlN(窒化アルミニウム)が用いられ、バンプ5042に接続される電極5043aがLED素子5041の実装面側に形成されており、反対側の面(リードフレーム側の面)には一対のリード部5044a,5044bに接続するための電極5043bが形成されている。電極5043aと電極5043bとを接続するために、サブマウント5043内にはスルーホール5043cが設けられている。
リード部5044a,5044bは、リードフレームの一部として両側の帯状部分より内側に所定の間隙をもって向かい合うように形成され、1個のLED素子に対して一対が割り当てられている。リード部5044a,5044bの先端部の一部は、段差が生じるように薄厚に作られており、この段差部分にサブマウント5043が載置される。
緩衝層5045は、前述の他の実施の形態に示した緩衝層5013,5021,及び5033と同一の材料及び加工に基づいて設けられる。
封止部材5046は、前述の他の実施の形態と同様に、透光性で低融点の特性を有するガラス材が用いられる。
この発光装置5040では、リード部5044aが正(+)電源供給端子であるとすると、リード部5044aに供給された電流は、リード部5044a、電極5043bの一方、スルーホール5043cの一方、電極5043aの一方、及びバンプ42の一方を経てLED素子5041のアノードに流れ、さらに、LED素子41のカソードを出た電流は、バンプ5042の他方、電極5043aの他方、スルーホール5043cの他方、及び電極5043bの他方を経てリード部5044bに流れることにより、LED素子5041が発光する。
以下に、発光装置5040の組み立てについて説明する。
まず、電極5043a,5043b、及びスルーホール5043cが予め形成済みのサブマウント5043を準備し、サブマウント5043上の所定位置にバンプ5042を介し、LED素子5041を搭載する。このことによりLED素子5041を電気的に接続すると共に機械的に固定する。
次に、サブマウント5043に搭載されたLED素子5041をリード部5044a,5044bの先端部の窪み内に通電方向を合致させて配置する。
次に、LED素子5041の周囲を覆うように液状のシリコン材を所定の厚みになるように滴下する。
次に、LED素子5032、サブマウント5043、およびリード部5044a,5044bを150℃程度の温度雰囲気に置き、一次硬化を行って緩衝層5045をLED素子5032の周囲に形成する。
次に、封止部材5045を形成するためのガラスシートをLED素子5041の上方及び下方に配置し、更にLED素子5041の上側および下側にそれぞれ金型を配置する。
次に、所定の温度雰囲気において金型による加圧プレスを行うことによりガラスシートを所定の形状に成形する。このことにより、発光装置5040が完成する。最終的には、リードフレームからリード部5044a,5044bの他端が分離され、個々の発光装置5040に個別化される。
上記した第15の実施の形態によると、高熱伝導性のサブマウント5043に搭載されたLED素子5041をガラス材で封止する際に、緩衝層5045によって熱膨張率の差によってLED素子5041やサブマウント5043の周囲にクラックや剥離が生じることを防ぐことができる。
なお、発光装置5040において、緩衝層5045に蛍光体を混合するようにしても良い。この場合、LED素子5041の放射光で励起された蛍光体から放射される励起光とLED素子5041の放射光との混合に基づく波長変換が行われる。蛍光体として、例えば、LED素子5041が発光する青色光によって励起されて黄色光を放射するCe(セリウム):YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)を用いることができる。
図88は、本発明の第16の実施の形態に係る発光装置を示す断面図である。この発光装置5050は、図87の発光装置5040に放熱部材を装着した構成を有する。すなわち、AlN等によるサブマウント5052の下部に銅等の熱伝導性に優れる金属材料を用いた放熱部材5051を取り付けたところに特徴がある。
発光装置5050は、放熱器として機能する放熱部材5051と、放熱部材5051上に搭載されるサブマウント5052と、サブマウント5052の両端の段差部上に先端部が載置されるリード部5053a,5053bと、下面に電源供給用の一対のバンプ5042を備えると共にサブマウント5052上に搭載されるLED素子5041と、LED素子5041の露出面を覆うように設けられる緩衝層5054と、緩衝層5054及びその周囲を封止する低融点の透明ガラスによる封止部材5055とを有する。
サブマウント5052は、両端の所定範囲が段差を生じる様に薄厚に加工されており、この薄厚部上にリード部5053a,5053bの先端部が載置され、その先端が配線パターン5052a,5052bの側面に半田等により接続される。さらに、サブマウント5052には、一対のバンプ5042に接触する配線パターン5052a,5052bが、上面から側面にかけて設けられている。
緩衝層5054は、Si系アルコキシドに蛍光体が混合され、焼結した多孔質状態の蛍光体含有のSiO2とすることで、応力緩衝と共に波長変換の機能を持たせている。
蛍光体は、第15の実施の形態で説明した様に、Ce(セリウム):YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)等を用いることができる。
第16の実施の形態における発光装置5050の組み立ては、第15の実施の形態に準ずるので、ここでは重複する説明を省略するが、図88のサブマウント5052より上の部分を先に完成させた後、下面に放熱部材5051を接着等により取り付ければ良い。
上記した第16の実施の形態によると、以下の効果が得られる。
(1)サブマウント5052の下部に放熱を促す放熱部材5051を設けたため、LED素子5041の点灯に伴う発熱を効率良く外部へ放散でき、ガラス材による封止部材5055等の温度上昇に伴う熱膨張・熱収縮の発生を抑制してクラックの発生を防止することができる。
(2)緩衝層5054に蛍光体を混合させたことにより、波長変換が行えると共に光の取り出し効率の向上が可能になる。
なお、上記した各実施の形態において、基板部5011,5031やリード部5044a,5044b,5053a,5053bの表面に反射面を形成し、光の出射効率を高めるようにしても良い。
また、封止部材5014,5034内のLED素子5012,5032の上部に蛍光体を部分的に混合し、或いは、緩衝層5013,5033内に波長変換用の蛍光体を混合することもできる。
また、緩衝層5054にTiO2系セラミック材を用いた場合、その屈折率が2.4という大きい値を有するため、LED素子5041からの光の取り出し効率を高めることができる。
更に、上記した各実施の形態においては、1つの封止部材内に配設されるLED素子の個数は1個であるとしたが、LED素子が2個以上のマルチ発光型の発光装置にすることもできる。搭載する複数のLED素子は、異なる発光色のLED素子を複数設ける構成でも、同一発光色のLED素子を複数設ける構成でも良い。更に、LED素子の駆動形態としては、複数のLED素子の全部を並列接続し又はグループ単位で並列接続しても、複数単位に直列接続し又は全数を直列接続しても良い。
また、封止部材5014を株式会社住田光学ガラス製の「K−PSK100」と説明したが、これに限らず、発光素子に熱的ダメージを与えずに封止加工できる温度で軟化するガラスであれば他でも構わない。
また、封止部材5014,5034,5046,5055の形状として、半球状の構成を示したが、本発明は図示した形状に限定されるものではなく、レンズ部を有しない形状、多角形、円柱形等、任意の形状にすることができる。
更に、封止部材5014,5034,5046,5055の成形に際しては、ガラスシートを用いた加圧プレスによる成形方法に限定されるものではなく、例えば、溶融ガラスをLED素子の近傍に供給して金型により加熱成形する等の他の封止方法を用いても良い。
また、緩衝層5054は、多孔質に限らず、脆く応力吸収する、熱膨張率がLED素子と封止ガラスとの中間である等、緩衝効果があり、かつ、絶縁性、耐熱性を有するものであれば良い。
図89は、本発明の第17の実施の形態に係る発光装置の構成を示す断面図である。この発光装置6010は、給電部材としての基板部6011と、電源供給用の少なくとも一対のAuからなるバンプ6012a,6012bを有すると共に基板部6011の上面に搭載されるLED素子6012と、LED素子6012の下面と基板部6011の間に充填される絶縁層6013と、LED素子6012及び基板部6011の上面を覆うように形成された封止部材6014とを備えて構成される。
基板部6011は、セラミック基板6011aと、セラミック基板6011aの上面に所定のパターンで形成された配線層6011b,6011c,6011d,6011eと、セラミック基板6011aの下面に所定のパターンで形成された配線層6011f,6011gと、配線層6011cの表面に被覆されたAuメッキ膜6011hと、配線層6011dの表面に被覆されたAuメッキ膜6011iと、配線層6011fの表面に被覆されたAuメッキ膜6011jと、配線層6011gの表面に被覆されたAuメッキ膜6011kと、配線層6011bと配線層6011fを接続するスルーホール611lと、配線層6011dと配線層6011gを接続するスルーホール6011mとを備えている。
セラミック基板6011aは、例えば、ガラス含有Al2O3材(熱膨張率:13.2×10−6/℃)が用いられる。配線層6011c,6011d,6011f,6011gは、電源を供給するための電極として機能する。また、Auメッキ膜6011h,6011i,6011j,6011kは、接続性、導電性、及び耐腐食性を向上させるために設けられている。なお、基板部6011は、LED素子6012を搭載する前に、配線層6011b〜6011g、Auメッキ膜6011h,6011i,6011j,6011k、及びスルーホール6011l,6011mは予めセラミック基板6011aに形成される。
LED素子6012は、例えば、GaN、AlInGaP等の半導体を用いて構成されており、そのチップサイズは、0.3×0.3mm(標準サイズ)、1×1mm(ラージサイズ)等である。また、LED素子6012は、下面に電源用の電極6012a,6012bを有し、この電極6012a,6012bが基板部6011の所定の配線層上に半田付けされる。
絶縁層6013は、シリコン系材料、又はダイヤモンド、BN、SiC、あるいはAlNの粉末を含む絶縁材で形成されている。シリコン系材料としてシリコン樹脂を用いた場合、封止部材6014の封止に伴う高温により、化学結合が切れることでSiO2になり、耐熱性を有する絶縁体として機能する。また、シリコン樹脂によって形成されるSiO2に代えてSi系やTi系等のアルコキシドによって形成されるセラミックを用いることもできる。なお、ダイヤモンドは高い熱伝導性を有する。BN、SiC、AlNはダイヤモンドと比べて熱伝導性は劣るが廉価である。また、ダイヤモンド、BN、SiCは透明あるいは白色であり、光吸収が少ないという特徴を有している。
封止部材6014は、透光性で低融点の特性を有するガラス材を用いて形成されており例えば、株式会社住田光学ガラス製の「K−PSK100」(熱膨張率:11.4×10−6/℃)を用いることができる。なお、発明者らの実験では、セラミックとガラスとの良好な接合を得るためにはセラミック基板6011aと封止部材6014とを略同等の熱膨張率(熱膨張率差の比が15%以内)とする必要があり、ここでは熱膨張率の比は0.86である。
以下に、発光装置6010の組み立てについて説明する。
Auのバンプ6012a,6012bが配線層6011c,6011dに載るように位置決めし、基板部6011上にLED素子6012を配設した後、滴下、充填等により絶縁層6013を形成する。
次に、LED素子6012、絶縁層6013の露出面及び基板部6011の露出面にガラス材による封止部材6014を封止する。封止部材6014の封止には金型を用い、所定の温度雰囲気及び加圧プレスにより図89のように半円型に成形する。この封止の際、絶縁層6013としてのシリコン材がSiO2化され、LED素子6012の下面、及びバンプ6012a,6012bが固定された状態になるため、バンプ6012a,6012bの変形やバンプ間短絡等が回避される。以上により、発光装置6010が完成する。
この発光装置6010では、例えば、配線層6011fがLED素子6012のアノード側であるとすると、配線層6011fに直流電源(図示せず)のプラス側が接続され、配線層6011gにはマイナス側が接続される。LED素子6012に対して、図示しないp型電極及びn型電極に電気的に接続されたバンプ6002を介して順方向の電圧を印加すると、LED素子6012の活性層においてホール及びエレクトロンのキャリア再結合が発生して発光し、出力光がLED素子6012の外部へ放射される。この光の殆どは封止部材6014内を透過して封止部材6014の外へ出光し、一部は内面反射をして封止部材6014の外へ出光する。
上記した第17の実施の形態によると、以下の効果が得られる。
(1)ガラス材による封止部材6014で全体を封止したことにより、樹脂封止で問題になった黄変や着色による光の減衰を低減することができる。
(2)LED素子6012の下側に耐熱性を有する絶縁層13を設けたことにより、封止部材14の封止時に、バンプ6012a,6012bを封止部材6014が高熱で押圧してLED素子6012にダメージを及ぼすことがなくなる。すなわち、封止部材14の高熱及び高圧力によりバンプ6012a,6012bが変形したり、破損したりしてバンプ間で短絡を生じることを防止できる。
(3)ダイヤモンド、BN、SiC、あるいはAlNの粉末を含む絶縁材を用いた場合、LED素子6012の発する熱を放熱する効果を期待できるため、放熱性の向上を図ることができる。
図90は、第18の実施の形態に係る発光装置の構成を示す断面図である。この発光装置6020は、サブマウント6022を用いてリードフレームに搭載される金属リードタイプであり、実装面にバンプ6021a,6021bが設けられたLED素子6021と、このLED素子6021が搭載されるサブマウント6022と、このサブマウント6022が搭載される給電部材としてのリード部6023a,6023bと、リード部6023a,6023bの上面とLED素子6021の下面との間に充填される絶縁層6024と、絶縁層6024の端部及びLED素子6021の表面を含むリード部6023a,6023bの先端部を封止するための透光性ガラスによる封止部材6025とを有する。
サブマウント6022は、例えば、高熱伝導のAlN(窒化アルミニウム)が用いられ、バンプ6021aの一方に接続される配線層6022aが上面、側面、及び下面にかけてコの字形を成すように形成されており、反対側にはバンプ6021bに接続される配線層6022bが上面、側面、及び下面かけてコの字形を成すように形成されている。
また、サブマウント6022は、必要に応じて素子破壊防止用のツェナーダイオード等の回路を内蔵させることもできる。また、配線層6022a,6022bに代えて、上下面に設けた電極と、その上下の電極相互を連通させるスルーホールとによる組み合わせによる配線手段を用いても良い。
リード部6023a,6023bは、銅系や鉄系の金属からなり、図示しないリードフレームの一部として両側の帯状部分より内側に所定の間隙で向かい合うように形成されており、1個のLED素子に対して一対が割り当てられている。リード部6023a,6023bの先端部の一部は、段差が形成されるように薄厚に作られており、この段差部分にサブマウント6022が載置される。
絶縁層6024は、第17の実施の形態における絶縁層6013と同様に、シリコン材、又はダイヤモンドやAlNの粉末を含む絶縁材を用いることができる。封止部材6025の封止時に化学結合が切れてシリコン材がSiO2になる生成過程、及びダイヤモンド、BN、SiC、あるいはAlNの粉末を含む絶縁材を用いた場合の放熱効果等は絶縁層6013の場合と同様である。
封止部材6025には、上記した上記実施の形態と同様に、透光性で低融点の特性を有するガラス材が用いられる。
この発光装置6020では、リード部6023aが正(+)電源供給端子であるとすると、リード部6023aに供給された電流は、リード部6023a、配線層6022a、及びバンプ6021aを経てLED素子6021のアノードに流れ、さらに、LED素子21のカソードを出た電流は、バンプ6021b、配線層6022bを経てリード部6023bに流れることにより、LED素子6021が発光する。
以下に、発光装置6020の組み立てについて説明する。
まず、配線層6022a,6022bが予め形成済みのサブマウント6022を準備する。このサブマウント6022上の所定位置にバンプ6021a,6021bを形成し、そこへLED素子6021を搭載し、バンプ6021aと配線層6022a、及びバンプ6021bと配線層6022bを電気的に接続すると共に機械的に固定する。
次に、サブマウント6022に搭載されたLED素子6021をリード部6023a,6023bの先端部の窪み内に通電方向を合致させて配置する。なお、LED素子21をサブマウント6022に搭載した後、このサブマウント6022をリード部6023a,6023bに搭載する順序であっても良い。
次に、絶縁層6024としてのシリコーン材をLED素子6021の下面とサブマウント6022の上面との間に充填する(この充填は、サブマウント22をリード部6023a,6023bに搭載する前に行っても良い。)。この状態のまま金型内に搬入し、封止部材25を形成するためのガラスシート(図示せず)をLED素子6021の上方及び下方に配置し、所定の温度及び加圧プレスにより半球状に成形する。この封止の際、シリコーン材がSiO2化されて絶縁層6024となり、LED素子6021の下面及びバンプ6012a,6012bを固定するため、バンプ6012a,6012bの変形やバンプ間短絡等が回避される。以上により、発光装置6020が完成する。最終的には、図示しないリードフレームからリード部6023a,6023bの他端を分離することにより、個々の発光装置6020に個別化される。
上記した第18の実施の形態によると、ガラス材との密着性に優れるリード部6023a,6023bを用いるとともにLED素子6021の下側に絶縁層6024を設けたことにより、封止部材6025の封止時に、封止部材6025がLED素子6021にダメージを及ぼすことがなくなるので、バンプ6021a,6021bに変形、移動、短絡等が生じるのを防止することができる。さらに、ガラス材による封止部材6025で全体を封止したことにより、封止部材が樹脂材のときのような黄変や着色による光の減衰が生じるのを防止することができる。
図91は、第19の実施の形態に係る発光装置を示す断面図である。この発光装置6030は、第18の実施の形態と同様に、サブマウントを用いてリードフレームに搭載される金属リードタイプである。ここでは、図90と同様に、主要部の構成のみを図示し、更に、サブマウント6032は非断面の状態で図示している。本実施の形態が第18の実施の形態と異なるところは、サブマウントの構造と、絶縁層の構成及び形成範囲にある。
この発光装置30は、実装面にバンプ6031a,6031bが設けられたLED素子6031と、このLED素子6031が搭載されるサブマウント6032と、このサブマウント6032が先端部に搭載される給電部材としてのリード部6033a,6033bと、蛍光体6034aが混合されていると共にLED素子6031の全面を覆うように充填又は滴下される絶縁層6034と、LED素子6031の上面を含むリード部6033a,6033bの先端部を封止する透光性ガラスによる封止部材6035とを有する。
サブマウント6032は、例えば高熱伝導のAlN(窒化アルミニウム)が用いられ、バンプ6031a,6031bに接続される電極6032a,6032bがLED素子6031の実装面側に形成されており、反対側の面(リードフレーム側の面)には一対のリード部6033a,6033bに接続するための電極6032c,6032dが形成されている。電極6032aと電極6032c、及び電極6032cと電極6032dとを接続するために、サブマウント6032内にはスルーホール6032e,6032fが設けられている。
リード部6033a,6033bは、銅系や鉄系の金属からなり、図示しないリードフレームの一部として両側の帯状部分より内側に所定の間隙で対向するように形成され、1個のLED素子に対して一対が割り当てられている。リード部6033a,6033bの先端部の一部は、段差が生じるように薄厚に作られており、この段差部分にサブマウント6032が載置される。
絶縁層6034は、シリコーン材を主体とし、これに蛍光体6034aが混合されている。なお、封止部材6025の封止時にシリコーン材の化学結合が切れてSiO2になる生成過程、及びダイヤモンドやAlNの粉末を含む絶縁材を用いた場合の放熱効果等は、絶縁層6013の場合と同様である。
蛍光体6034aは、例えば、LED素子6021が青色発光である場合、この青色光によって励起されることにより黄色光を放射する特性を有するCe(セリウム):YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)を用いる。
封止部材6035は、上記した各実施の形態と同様に、透光性で低融点の特性を有するガラス材が用いられる。
この発光装置6030では、リード部6033aが正(+)電源供給端子であるとすると、リード部6033aに供給された電流は、リード部6033a、電極6032c、スルーホール6032e、電極6032a、及びバンプ6031aを経てLED素子6031のアノードに流れ、さらに、LED素子6031のカソードを出た電流は、バンプ6031b、電極6032b、スルーホール6032f、及び電極6032dを経てリード部6033bに流れることにより、LED素子6031が発光する。
以下に、発光装置6030の組み立てについて説明する。
まず、電極6032a〜6032d、及びスルーホール6032e,6032fが予め形成済みのサブマウント6032を準備する。このサブマウント6032上の所定位置に、バンプ6031a,6031bを形成し、LED素子6031を搭載する。これによってLED素子6031をバンプ6031a,6031bを介して電極6032a,6032bと電気的に接続し、同時に機械的に固定する。
次に、サブマウント6032に搭載されたLED素子6031をリード部6033a,6033bの先端部の窪み内に通電方向を合致させて配置する。或いは、サブマウント6032をリード部6033a,6033bに搭載した後、サブマウント6032にLED素子6031を実装する手順であっても良い。
次に、サブマウント6032の上面、側面、及び上面に及ぶように蛍光体6034aを混入済みの絶縁層6034を滴下又は充填する。
次に、金型内に搬入し、封止部材35を形成するためのガラスシート(図示せず)をLED素子6031の上方及び下方に配置し、所定の温度のもとで加圧プレスにより半球状に成形すれば、発光装置6030が完成する。この封止の際、シリコン材がSiO2化されて絶縁層6034となり、LED素子6031の下面及びバンプ6031a,6031bが固定された状態になるため、バンプ6012aの変形やバンプ間短絡等が回避される。最終的には、リードフレームからリード部6033a,6033bの他端が分離され、個々の発光装置に個別化される。
上記した第19の実施の形態によると、以下の効果が得られる。
(1)絶縁層6034を設けたことにより、封止部材6035の封止時に、封止部材6035がLED素子6031にダメージを及ぼすことがなくなるので、バンプ6031a,6031bに変形、移動、短絡等が生じるのを防止することができる。
(2)絶縁層6034に蛍光体6034aが混入されているため、リード部上の電極(又は、サブマウント上の配線層)による光の吸収を低減することができる。通常、電極や配線層にはAuメッキが施されている。このAuメッキは、青又は紫の光の吸収率が高いが、蛍光体入りの絶縁層6034を設けることにより、LED素子側面から放射される光を波長変換することができ、Auメッキ面における光吸収を防止することができる。
(3)LED素子6031の上面から放射される光に対しても波長変換をすることができる。
また、ガラス材による封止部材6035で全体を封止したことにより、封止部材が樹脂材のときのような黄変や着色による光の減衰を防止することができる。
なお、サブマウント6032は、これに代えて図90に示した″コ″の字形の配線層6022a,6022bを有するサブマウント6022を用いても良い。逆に、図90のサブマウント6022に代えて、図91に示したサブマウント6032を用いても良い。
図92は、標準サイズのLED素子のバンプ形成面を示す平面図である。このLED素子6031は、0.3mm角のLED素子であり、n電極に接続されたパンプ6041を搭載する小パターン6042と、p電極に接続された大パターン6043と、この大パターン6043に搭載されたパンプ6044a,6044bとが設けられている。LED素子6031は高出力型になるほど大電流が流れる。そこで、p電極側のパンプ数を複数にし、大きな電流容量に対応できるようにしている。
図93は、ラージサイズのLED素子のバンプ形成面を示す平面図である。このLED素子6031は、1mm角のLED素子であり、バンプ6052a,6052bを設けられる配線パターン6054と、バンプ6053a〜6053pを設けられる配線パターン6055とを有する。ラージサイズのLED素子は標準サイズよりも発光面積が大になるため、更に大電流が流れる。そこで、発光面での均一発光を図るために配線パターン6054、6055の形状面積に応じて、電極接点となるそれぞれのバンプを複数個にしている。
図92及び図93に示すように、バンプを介して電気的接続を行うLED素子では、ガラス封止時の温度および圧力によってバンプが圧潰し易くなる。特に、図93に示すように、多数のバンプ6053a〜6053pを有するものでは、各バンブ間の距離が接近するために、バンブに変形が生じるとより短絡が生じ易くなる。このようなLED素子6031に対し、絶縁層6034は、バンプ形成面を覆ってバンプ間の絶縁を確保するとともに、ガラス封止時の圧力に耐えることでバンプ6053a〜6053pの変形を抑制する。その結果、ガラス材による封止部材6035の形成が可能になる。
なお、上記した各実施の形態では、Auからなるバンプ6012a、6012bとして説明したが、Auに限定されず、半田で形成されるバンプとしても良い。また、バンプに限らず、電極に形成された半田めっきであっても良い。株式会社住田光学ガラス製の「K−PSK100」では400℃を超える温度での封止加工で、かつ、加工時のガラス粘度も高いためにAuバンプでも潰れが生じる。一方、無機有機混合をハイブリッド低融点ガラスでは、更に低い温度での封止加工が可能であるが、はんだバンプのように融点が封止加工温度より低ければ、小さな圧力でも電極間の短絡が生じる。これに対しても本発明は有効である。
また、上記した各実施の形態では、封止部材6014,6025,6035内のLED素子6012,6032の上部に、波長変換のための蛍光体層を形成することもできる。
更に、上記した各実施の形態においては、1つの封止部材内に配設されるLED素子の個数は1個であるとしたが、LED素子が2個以上のマルチ発光型の発光装置にすることもできる。搭載する複数のLED素子は、異なる発光色のLED素子を複数設ける構成でも、同一発光色のLED素子を複数設ける構成でも良い。更に、LED素子の駆動形態としては、複数のLED素子の全部を並列接続し又はグループ単位で並列接続しても、複数単位に直列接続し又は全数を直列接続しても良い。
また、封止部材6014,6025,6035の形状として、ドーム状の構成を示したが、本発明は図示した形状に限定されるものではなく、レンズ部を有しない形状、多角形、円柱形等、任意の形状にすることができる。
更に、封止部材6014,6025,6035の成形に際しては、ガラスシートを用いた加圧プレスによる成形方法に限定されるものではなく、他の封止方法を用いても良い。
図94は、本発明の第20の実施の形態に係る発光装置の構成を示す断面図である。通常、リードフレームには両側に各リード部のアウター側を連結している帯状部が設けられているが、ここでは図示を省略している。また、リードフレーム上には、通常、複数のLED素子が実装されるが、ここではそのうちの1個のみを図示している。更に、図94においては、サブマウントは非断面の状態で図示している。
発光装置7010は、金属リード実装タイプであり、実装面にバンプ7002を介してフリップチップ接合されるGaN系のLED素子7001(熱膨張率4.5〜6×10−6/℃)と、このLED素子7001が搭載されるサブマウント7003と、サブマウント3が搭載される給電部材としてのCuからなるリード部(熱膨張率15〜17×10−6/℃、熱伝導率400W・m−1・K−1)7004A,7004Bと、LED素子7001を中心にしてその周囲を封止する透明ガラス製の封止部材7005とを備えて構成されている。
サブマウント7003は、例えば、AlN(窒化アルミニウム:熱膨張率5×10−6/℃、熱伝導率180W・m−1・K−1)が用いられ、バンプ7002に接続される電極7031A,7031BがLED素子1の実装面側に形成されており、反対側の面(リードフレーム側の面)には一対のリード部7004A,7004Bに接続するための電極7032A,7032Bが形成されている。リード部7004A,7004Bの上面のLED素子7001の搭載面は、他の部分より1段低く加工されており、この窪み部分内にサブマウント7003が配設される。電極7031A,7031Bと電極7032A,7032Bとを接続するために、サブマウント7003内にはスルーホール7033が設けられている。
封止部材7005は、透明かつ低融点で、しかも熱膨張率がリード部7004A,7004Bに近い(又は、所定の熱膨張率差の範囲値内)特性を有するシート状のガラスを熱融着させることによってLED素子7001、サブマウンド7003、およびリード部7004A,7004Bの一部を封止する透光性ガラス部を形成している。
リード部7004Aが正(+)電源供給端子であるとすると、リード部7004Aに供給された電流は、リード部7004A、電極7032A,7032Bの一方、ビアホール7033の一方、電極7031A,7031Bの一方、及びバンプ7002の一方を経てLED素子7001のアノードに流れ、更に、LED素子7001のカソードを出た電流は、パンプ7002の他方、電極7031A,7031Bの他方、ビアホール7033の他方、及び電極7032A,7032Bの他方を経てリード部704Bに流れることにより、LED素子7001が発光する。
図95は、リードフレームにサブマウントを搭載した状態を示す平面図である。サブマウント7003は、中央部にLED素子7001を搭載している。リード部7004A,7004Bは、リードフレームの一部として両側の帯状部分より内側に所定の間隙をもって向かい合うように形成され、1個のLED素子に対して一対が割り当てられている。
図96は、金型を用いてガラス封止を行う直前の状態を示す図である。同図においては図95のA−A部で切断した状態を示している。以下に、図94から図96の図面を参照して発光装置7010の製造方法について説明する。
まず、バンプ7002が設けられているLED素子7001をサブマウント7003上に位置決めし、リフローを行ってバンプ7002と電極7031を電気的に接続すると共に、機械的に固定する。
次にサブマウント7003に搭載されたLED素子7001をリード部7004A,7004Bの先端部の窪み内に通電方向を合致させて配置する。なお、サブマウント7003は、電極7031A,7031B,電極7032A,7032B、及びビアホール7033が予め形成済みのものを用いる。
次に、リードフレーム7006を金型内に搬入し、LED素子7001の上方及び下方にガラスシート7007,7008を配置する。ガラスシート7007,7008は、封止部材7005を形成するためのものであり、同時に複数個のLED素子7001を封止できる大きさを有している。
次に、ガラスシート7007を覆うようにして上金型7011を配置し、更に、ガラスシート7008を覆うようにして下金型7012を配置する。次に、真空雰囲気中でガラスシート7007,7008を450℃に加熱して軟化させた状態で上金型7011と下金型7012とを図95の矢印方向に移動させることによってガラスシート7007,7008に圧力をかけると、上金型7011の凹部7011A及び下金型7012の凹部7012Aに沿ってガラスシート7007,7008が図94に示す封止部材7005のようなドーム状に成形される。
次に、リードフレーム7004の帯部等の不要部分を除去することにより、発光装置7010の各々をリードフレーム7004から分離する。
発光装置7010は、パッド電極7108及びn型電極7109に電気的に接続されたバンプ7002を介して順方向の電圧を印加すると、LED素子7001の活性層内においてホール及びエレクトロンのキャリア再結合が発生して発光し、出力光がサファイア基板7101を介してLED素子7001の外部へ放射される。この出力光は、封止部材7005を透過して外部に放射される。
上記した第20の実施の形態によると、以下の効果が得られる。
(1)熱膨張率の小なるLED素子7001を熱膨張率の大なるガラス材の封止材料7005で全体を包囲するように封止したため、熱膨張率の差に基づいて生じる内部応力がLED素子7001の中心に向かうように調整される。すなわち、ガラス加工後にガラス材の熱収縮に基づく内部応力が生じても、その内部応力はLED素子1の中心方向に向かう圧縮力となるため、圧縮に対して強度を有するガラス材は破壊することなくガラス封止構造を実現できる。
(2)熱膨張率の小なるLED素子7001を熱膨張率の小なるサブマウント7003に搭載して熱膨張率の大なるリード部7004A、7004Bに搭載しているため、封止部材7005を形成しているガラス材については、熱膨張率の小なるLED素子7001と熱膨張率の大なるリード部7004A、7004Bの双方との接着性が要求されるが、LED素子7001に近い熱膨張率のものを選択して封止することが好ましい。Cu等の軟金属によって形成されたリード部7004A、7004Bはガラス材と比べて弾性に富むことから、仮に、LED素子1およびサブマウント3に対して熱膨張率の差が150%から400%の範囲であれば、ガラス材との良好な接着性を維持しながら熱収縮差に基づく応力を構造的に吸収することができる。このことから、リード部7004A、7004Bをガラス材で挟み込んで封止する場合でもクラック等の不良を生じることはない。
(3)LED素子7001への投入電力が大きく発熱温度が高くなるような場合でも、LED素子7001が発する熱を外部放熱することができ、発光効率の低下を効果的に防止できる。特に、サブマウント7003およびリード部7004A,7004Bの熱伝導率を100W・m−1・K−1以上とすることで実現できる。
(4)低融点のガラスシート7007,7008を用いて封止部材7005を形成するので、加熱に要する時間の短縮や、簡易な加熱装置の使用が可能となり、ガラス封止加工が容易になる。
(5)加工時にクラック等の不良を生じにくくなるため、ガラスによる高い封止性を長期にわたって安定的に維持することができ、水中や多湿条件下でも発光特性の低下を生じず、長期にわたる優れた耐久性を発揮する。
なお、第1の実施の形態では、LED素子7001としてGaN系のLED素子7001を用いた構成を説明したが、LED素子はGaN系に限定されるものではなく、他のLED素子を用いることも可能である。
また、上記した実施の形態では、Cuからなるリード部7004A,7004BにAlNからなるサブマウント7003を搭載した構成を説明したが、例えば、真鍮からなるリード部(熱伝導率106W・m−1・K−1)にSiからなるサブマウント3(熱伝導率170W・m−1・K−1)を搭載するといった構成も可能である。
また、封止部材7005についても、シート状のガラスを用いて複数個のLED素子7001およびサブマウント7003を一括して封止する方法で形成するものに限定されず、溶融させたガラス材をLED素子7001およびサブマウント7003の周囲に供給して上金型7011と下金型7012とで加熱プレス成形することによって形成するようにしても良い。また、使用されるガラス材についても光透過性を有するものであれば透明に限定されるものではなく、着色されているものであっても良い。
また、封止部材7005は、仕様等に応じて種々の形状にすることができる。例えば、丸形、楕円形、四角形等のほか、レンズ付き、レンズ無し等の形状も可能である。
上記した第20の実施の形態では、金属リードを給電部材とするフリップチップ型発光装置を説明したが、他の形態の発光装置に適用することも可能である。例えば、ワイヤボンディングを用いたフェイスアップ(FU)型の発光装置等にも適用可能である。
図97は、第20の実施の形態に係る発光装置の変形例を示す断面図である。この発光装置7010では、封止部材7005の熱膨張・熱収縮によるクラックを防止するものとして、サブマウント7003の角部を除去することにより傾斜部7003Aを設けた構成としている。このようサブマウント3を用いることで、第20の実施の形態の好ましい効果に加えてクラックの発生しにくいガラス封止型発光装置7010を実現できる。
図98は、本発明の第21の実施の形態に係るフェイスアップ型の発光装置を示す断面図である。この発光装置7040は、先端部に間隔を設けて水平及び一直線上に配置された給電部材としてのリード部7004A、7004Bと、リード部7004Aの先端部の上面に接着剤等を介して搭載されたGaN系のLED素子7041と、LED素子7041上の2つの電極(図示せず)とリード部7004A、7004Bとを接続するワイヤ7042と、LED素子7041及びリード部7004A、7004Bの先端部を封止するガラス材による封止部材7005とを備えて構成されている。
封止部材7005は、透明、低融点、及び所定値内の熱膨張率を有するガラス材を用いている。特に、フェイスアップ型では、ワイヤを用いることにより、ガラス封止の際、加熱により軟化したワイヤ7042およびワイヤ接続部7042Aが加圧によって押しつぶされ易くなるので、ショート等を生じ易くなる。このため、できるだけ低融点のガラス材を用いるのが望ましい。
以下に、発光装置7040の組み立てについて説明する。
まず、リードフレームの分離前の状態において、リード部7004Aの先端上面にLED素子7041が搭載される。次に、LED素子7041の上面の1方の電極とリード部7004Aの上面とがワイヤ7042で接続され、更に、LED素子7041の上面の他方の電極とリード部7004Bの上面とがワイヤ7042で接続される。次に、第20の実施の形態で説明したように、金型によるガラス材の成形が行われ、所定形状の封止部材7005が形成される。最後に、リードフレーム7004の不要部分が除去されることにより、発光装置7040の各々がリードフレーム7004から分離される。
図98において、例えば、リード部7004Aがアノード側であれば、リード部7004Aに直流電源(図示せず)のプラス側が接続され、リード部7004Bにはマイナス側が接続される。この通電により、LED素子7041が発光する。その光は、LED素子7041の上面から出射し、その殆どは封止部材7005内を透過して外部へ出光し、他の一部は内面反射を経て封止部材7005の外へ出光する。
上記した第21の実施の形態によると、第20の実施の形態の好ましい効果に加え、リード部7004A,7004Bと封止部材7005との熱膨張率の値を考慮し、かつ低融点のガラス材を用いたことにより、フェイスアップ型の発光装置7040であっても剥離やクラックの発生を防止することができる。
なお、上記した各実施の形態において、リード部7004A,7004Bの表面に反射面を形成し、光の出射効率を高めるようにしても良い。
また、LED素子7001,7042の上部の封止部材7005内に、所定の波長の光で励起される蛍光体等を用いた波長変換部を設けることもできる。
更に、上記した各実施の形態においては、1つの封止部材内に配設されるLED素子の個数は1個であるとしたが、LED素子が2個以上のマルチ発光型の発光装置にすることもできる。この場合の発光装置のタイプとしては、フリップチップ接合型である図94の構成が適している。搭載する複数のLED素子は、異なる発光色のLED素子を複数設ける構成でも、同一発光色のLED素子を複数設ける構成でも良い。
更に、LED素子の駆動形態としては、複数のLED素子の全部を並列接続し又はグループ単位で並列接続しても、複数単位に直列接続し又は全数を直列接続しても良い。
また、封止部材7005の形状として、頂部にレンズ部が形成された半球状の構成を示したが、封止部材7005は図示した形状に限定されるものではなく、レンズ部を有しない形状、多角形、円柱形等、任意の形状にすることができる。
更に、封止部材7005の成形に際しては、ガラスシートを用いたが、ガラスシートを用いた方法に限定されるものではなく、他の封止方法を用いても良い。
図99は、本発明の第22の実施の形態に係るフリップチップ型の発光装置を示し(a)は断面図、(b)は(a)の右側面から見た側面図である。なお、第20の実施の形態と同一の構成を有する部分については共通する引用数字を付している。この発光装置7010は、図99(a)に示すようにサブマウント素子7003をCuからなる放熱部7050に搭載して低融点ガラスからなる封止部材7005で一体的に封止した構成を有し、封止部材7005にはレンズ7005Aが形成されている。
サブマウント素子7003は、放熱部7050に設けられる溝部7051に収容されており、その表面に設けられる配線パターン7053とLED素子7001の電極とがバンプ7002によって電気的に接続されることによって給電部の一部を構成している。配線パターン7053は、LED素子7001との接合後に軟金属であるCuからなるリード部7004A、7004Bとはんだ接合される。リード部7004Bは、図99(b)に示すように溝部7051に長方形断面で棒状のガラス材7052を介在させることによって放熱部7050と絶縁された状態で封止部材5を加熱プレスされる。このとき、リード部7004Aについてもリード部7004Bと同様に処理される。リード部7004A、7004Bは、加熱プレスに基づいて溶融したガラス材7052および封止部材7005により放熱部7050と絶縁された状態で一体化される。
第22の実施の形態によると、サブマウント素子7003を搭載した放熱部7050をガラス材からなる封止部材7005で一体的に封止するようにしたため、第1の実施の形態の好ましい効果に加えてサブマウント素子7003から伝わる熱の放熱性を高めることができ、ガラス封止加工時だけでなく、例えば、大電流化によってLED素子7001からの発熱量が増大する場合であっても放熱性に優れ、かつ、熱膨張率差によるパッケージクラックを生じにくい発光装置7001が得られる。
なお、上記した第22の実施の形態では、Cuからなる放熱部7050を用いた構成を説明したが、例えば、Cu合金やアルミニウム等の熱伝導性が良好で、かつ、封止部材7005との熱膨張率差が小であるものを用いることもできる。仮に、アルミニウムからなる放熱部7050とした場合には、LED素子7001およびサブマウント7003に対して熱膨張率の差は約500%となる。
図100は、本発明の第23の実施の形態に係るフェイスアップ型の発光装置を示し(a)は断面図、(b)は(a)の右側面から見た側面図である。なお、第21の実施の形態と同一の構成を有する部分については共通する引用数字を付している。この発光装置70040は、図100(a)に示すようにCuからなる放熱部50の中央にLED素子7040を接着し、このLED素子7040に給電するリード部7004A、7004BとLED素子7040の電極とをワイヤ7042で電気的に接続して構成されている。また、LED素子7040、ワイヤ7042、およびリード部7004A、7004Bは低融点ガラスの加工時の熱に対して耐熱性を有するようにシリコン樹脂からなるシリコンコート部7060によって覆われている。封止部材7005はシリコンコート部7060を覆うとともに放熱部7050と一体化されている。なお、封止部材7005にはレンズ7005Aが形成されている。
第23の実施の形態によると、フェイスアップ型の発光装置7040であっても耐熱性および弾性を有するシリコンコート部7060によってLED素子7041の周囲を覆うことにより、ガラス封止加工時の圧力によるLED素子7041の電極やワイヤ7042の変形を防ぎながらガラス封止が可能となるため、第21の実施の形態の好ましい効果に加えてLED素子7041の実装性に優れ、ガラス封止加工時だけでなく、例えば、大電流化によってLED素子7041からの発熱量が大になる場合であっても放熱性が良好で、かつ、熱膨張率差によるパッケージクラックを生じにくい発光装置7001が得られる。また、シリコンコート部7060は、蛍光体を含有させたものであっても良い。
なお、上記した第23の実施の形態では、放熱部7050に搭載されたLED素子7041に対して一対のリード部7004A、7004Bから給電する構成を説明したが、例えば、放熱部7050と一方のリード部を一体化し、他方のリード部と放熱部7050とをガラス材7052によって絶縁する構成としても良い。
また、コート材としてシリコン樹脂を用いる他に、セラミックコート材等の他の耐熱性を有する材料を用いることができる。このコート材を施す構成については、フェイスアップ型のLED素子に限定されず、フリップチップ型LED素子へも適用することができる。
なお、LEDのような発光素子で、発光素子の屈折率が2以上の材料であれば、屈折率1.5程度以上の封止材料によって素子を封止することで、素子からの光の取り出し効率を約2倍以上高めることができる。この際、封止材料は透光性である必要がある。受光素子ではこの効果がなく、透光性材料で直接素子を密着封止する効果は、媒質の異なる界面での反射を低減する効果のみである。光学素子でなければ、透光性の必要はない。
また、封止材料をガラスとして説明したが、ガラス加工後に結晶化したものであっても良く、化学的安定性の高い無機材料であれば良い。