JP4004965B2 - 光情報記録媒体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、情報を記録又は再生する光情報記録媒体に関し、特に、環境変化や経時変化による反りを抑制できる光情報記録媒体、および、光情報記録媒体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図1は、光情報記録媒体の構成を示す断面模式図である。図6は、その光情報記録媒体の平面図(a)及び側面図(b)である。
【0003】
この光情報記録媒体は、図1,6に示すように、ポリカーボネート等からなる円板状の基板20上に、スパッタ等により誘電体膜41,43(窒化シリコン等)、記録膜42(TbFeCo等)、反射膜44(Al等)等の薄膜からなる単層、または多層からなる薄膜層40が形成されている。また、この薄膜層40上に樹脂膜等による薄膜保護膜50が、基板の光入射面上には樹脂等からなる基板保護膜30が形成されている。これらのそれぞれの層及び膜の膜厚は、基板20が約1.2〔mm〕、スパッタ等で形成される単層あるいは多層薄膜層40の厚さは10〜300〔nm〕、薄膜保護膜50の厚さが1〜30〔μm〕、基板保護膜30の厚さが1〜30〔μm〕であり、全厚のほとんどがポリカーボネイト基板20によって占められている。このため光情報記録媒体の剛性は、そのほとんどが、ポリカーボネート基板20に依存しており、ポリカーボネート基板20が十分に厚いため、環境変化(温湿度変化)による変形は非常に小さかった。このため、通常は、各層に発生する応力や曲げモーメントのバランスはほとんどの場合考慮されていなかった。
【0004】
しかしながら、光情報記録媒体においては、更なる高密度記録再生が求められており、収差の発生を抑制するために基板が薄型化する傾向(例1.2〔mm〕厚→0.6〔mm〕厚)にある。この場合、当然、光情報記録媒体の剛性は低下し、環境変化(温湿度変化)によって光情報記録媒体を形成している各層に発生する応力に起因する変形が大きくなり、情報の記録再生が困難になるという問題が生じる。したがって、基板が薄くなり剛性が低下した場合においても、対環境性能の高い光情報記録媒体が求められている。
【0005】
光情報記録媒体の変形を抑制する手法として、特開平4−195745号公報には基板の裏面(薄膜層の形成されていない側の面)に反り防止用の誘電体膜を設ける手法が提案されている。
【0006】
図7はこの光情報記録媒体の構成を示す断面図である。なお、図7において図1と同一部分については同一符号を付している。図7に示すように、ここでは、ポリカーボネート基板20の光入射側に誘電体層60を設けて、透明基板20の両側に位置する記録膜42と誘電体層60との膨張率を同等とすることで、光情報記録媒体を透明基板20に対して対称構造として、これにより光情報記録媒体の反りを防止できるようにしている。
【0007】
また、特開平10−64119号公報には、薄膜保護膜を厚く塗布することにより、光ディスクの温度上昇による反りを少なくすることが記載されている。
【0008】
また、光情報記録媒体が湿度変化によって反ることを問題として、図8に示すような、薄膜保護膜50,薄膜層40,基板20,基板保護膜30を有する光情報記録媒体において、基板20と基板保護膜30との間にSiO2やAlNからなる透湿防止膜70を設けたものが特開平4−364248号公報で提案されている。なお、図8において図1と同一部分については同一符号を付している。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平4−195745号公報に記載の手法(図7参照)では、基板の光入射側にスパッタ等により誘電体層を設ける必要が有るため、生産において、基板に対して一方側の面に薄膜層を形成した後、その基板を引っ繰り返して反対側の面に誘電体層を形成する必要があり、工程が複雑化するとともに生産設備の高価格化を齎し、コストアップに繋がるという問題がある。
【0010】
また、特開平10−64119号公報に記載の手法では、薄膜保護膜の膜厚が厚くなりすぎ、製造上難があるという問題がある。また、例えば、光情報記録媒体が光磁気記録媒体であった場合、記録時に印加する磁界を高速で反転させるには磁界発生手段と薄膜層とを近接することが望ましく、薄膜保護膜の膜厚が厚くなることは磁気特性の劣化を齎し、問題である。
【0011】
さらに、特開平4−364248号公報に記載の手法(図8参照)でも、基板の光入射側にスパッタ等によりSiO2やAlNを設ける必要が有るため、生産において、基板に対して一方側の面に薄膜層を形成した後、その基板を引っ繰り返して反対側の面に誘電体層を形成する必要があり、工程が複雑化するとともに生産設備の高価格化を齎し、コストアップに繋がるという問題がある。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、温湿度変化に伴う変形(反り)を防止でき、且つ、その製造が容易な光情報記録媒体、および、光情報記録媒体の製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の光情報記録媒体は、透明基板と、該透明基板上に形成され記録膜または反射膜のいずれか一方を少なくとも含む薄膜層と、該薄膜層上に形成された樹脂を主成分とする薄膜保護膜と、を少なくとも有する光情報記録媒体において、温度変化時に前記薄膜層に対し、透明基板による曲げモーメントと逆向きの曲げモーメントを与え、記録再生時の温度変化による膜厚方向の変形の中立面が前記薄膜層内あるいはその近傍となるように、前記薄膜保護膜の線膨張係数、ヤング率、及び膜厚が調整されており、前記薄膜保護膜は、そのヤング率及び線膨張係数の少なくとも一方が前記透明基板よりも大きいことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の第2の光情報記録媒体は、透明基板と、該透明基板上に形成され記録膜または反射膜のいずれか一方を少なくとも含む薄膜層と、該薄膜層上に形成された樹脂を主成分とする薄膜保護膜と、を少なくとも有する光情報記録媒体において、前記薄膜層において、膜厚方向におけるその両側から受ける温度変化による曲げモーメントが、略等しくなるように、前記薄膜保護膜の線膨張係数、ヤング率、及び膜厚が調整されており、前記薄膜保護膜は、そのヤング率及び線膨張係数の少なくとも一方が前記透明基板よりも大きいことを特徴とする。
【0015】
また、上記した第1および第2の光情報記録媒体では、前記薄膜保護膜の膜厚が、20μm以下であることが好ましい。
【0016】
また、本発明の第3の光情報記録媒体は、透明基板と、該透明基板上に形成され記録膜または反射膜のいずれか一方を少なくとも含む薄膜層と、該薄膜層上に形成された樹脂を主成分とする薄膜保護膜と、前記透明基板の光入射側に形成された樹脂を主成分とする基板保護膜と、を少なくとも有する光情報記録媒体において、前記薄膜保護膜の透湿度より前記基板保護膜の透湿度が小さいことを特徴とする。
【0017】
また、この第3の光情報記録媒体は、温度変化時に前記薄膜層に対し、透明基板による曲げモーメントと逆向きの曲げモーメントを与え、記録再生時の温度変化による膜厚方向の変形の中立面が前記薄膜層内あるいはその近傍となるように、前記薄膜保護膜の線膨張係数、ヤング率、及び膜厚が調整されており、且つ、前記薄膜保護膜の膜厚が、前記基板保護膜の膜厚よりも厚いことが好ましい。
【0018】
なお、上記した変形の中立面とは、後述する式(1)〜(5)において、yの値により表される面を示している。
【0019】
また、本発明の第1の光情報記録媒体の製造方法は、透明基板と、該透明基板上に形成され記録膜または反射膜のいずれか一方を少なくとも含む薄膜層と、該薄膜層上に形成された樹脂を主成分とする薄膜保護膜と、を少なくとも有する光情報記録媒体の製造方法において、温度変化時に前記薄膜層に対し、透明基板による曲げモーメントと逆向きの曲げモーメントを与え、記録再生時の温度変化による膜厚方向の変形の中立面が前記薄膜層内あるいはその近傍となるように、前記薄膜保護膜の線膨張係数、ヤング率、及び膜厚を調整することを特徴とする。
【0020】
また、本発明の第2の光情報記録媒体の製造方法は、透明基板と、該透明基板上に形成され記録膜または反射膜のいずれか一方を少なくとも含む薄膜層と、該薄膜層上に形成された樹脂を主成分とする薄膜保護膜と、を少なくとも有する光情報記録媒体の製造方法において、前記薄膜層において、膜厚方向におけるその両側から受ける温度変化による曲げモーメントが、略等しくなるように、前記薄膜保護膜の線膨張係数、ヤング率、及び膜厚を調整することを特徴とする。
【0021】
また、これら第1および第2の光情報記録媒体の製造方法では、前記薄膜保護膜のヤング率及び線膨張係数の少なくとも一方を、前記透明基板よりも大きくすることが好ましい。
さらに、前記薄膜保護膜の膜厚を、20μm以下とすることが好ましい。
【0022】
また、本発明の第3の光情報記録媒体の製造方法は、透明基板と、該透明基板上に形成され記録膜または反射膜のいずれか一方を少なくとも含む薄膜層と、該薄膜層上に形成された樹脂を主成分とする薄膜保護膜と、前記透明基板の光入射側に形成された樹脂を主成分とする基板保護膜と、を少なくとも有する光情報記録媒体の製造方法において、前記薄膜保護膜の透湿度より前記基板保護膜の透湿度を小さくすることを特徴とする。
【0023】
また、この第3の光情報記録媒体の製造方法では、温度変化時に前記薄膜層に対し、透明基板による曲げモーメントと逆向きの曲げモーメントを与え、記録再生時の温度変化による膜厚方向の変形の中立面が前記薄膜層内あるいはその近傍となるように、前記薄膜保護膜の線膨張係数、ヤング率、及び膜厚を調整し、前記薄膜保護膜の膜厚を、前記基板保護膜の膜厚よりも厚くすることが好ましい。
【0024】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)
以下、本実施の形態の光情報記録媒体について説明するが、まず、本発明の原理を説明する。
【0025】
▲1▼原理
従来の技術の項で説明したように、特開平4−195745号公報(図7参照)に記載の光情報記録媒体では、透明基板20に対して対称になるよう層を構成することで、光情報記録媒体の反りを抑制していた。
【0026】
これに対して、本発明者は、例えば、図1の断面模式図に示すような薄膜保護膜50,薄膜層40,透明基板20,基板保護膜30を有する光情報記録媒体において、(a)薄膜層40を温度変化による変形の中心とすること,すなわち、薄膜層に対して対称に構成することで反りが抑制できる点、及び、(b)反りの抑制に併せて薄膜保護膜50の膜厚を薄くできる点を見出した。以下、さらに詳しく説明する。
【0027】
図1に示すように、一般に、光情報記録媒体は、ポリカーボネート等の透明基板20上にスパッタ等により誘電体膜41,43(窒化シリコン等)、記録膜42(TbFeCo等)、反射膜44(Al等)等の薄膜からなる単層又は多層の薄膜層40を有し、その薄膜層40上に樹脂を主成分とする薄膜保護膜50が形成されているとともに、その透明基板20の反対の面上に透明基板20を保護するために樹脂を主成分とする基板保護膜30が形成されている。
【0028】
このように光情報記録媒体は通常多層で構成されており、このため、各層の物性値である線膨張係数の相違等に起因して、温度変化時に各層に発生する応力が異なる結果となる。具体的には、一般に、ポリカーボネートからなる透明基板20、及び、基板保護膜30,薄膜保護膜50の線膨張係数は薄膜層40のそれに比較して大きく、薄膜層40の基板の半径方向への膨張はその他の各層に比較して非常に小さくなる。また、透明基板20の厚さは基板保護膜30及び薄膜保護膜50の厚さに比較して非常に大きく、薄膜層40の各薄膜のヤング率が他の層に比較して非常に大きくなる。このため、温度変化が生じると、薄膜層40の膨張が小さいの比して、透明基板20の膨張が大きくなり、結果的に、光情報記録媒体10は半径方向に垂直で且つ膜厚方向において薄膜保護膜50側に向かう反りが生じ易くなる。図2はその反りを説明する模式図であり、(a)は平面図,(b)は側面図である。
【0029】
本実施の形態ではこの反りを防止するために、薄膜層40上に形成される薄膜保護膜50の線膨張係数、ヤング率、及び膜厚を調整することで、薄膜層40に対して、透明基板20による曲げモーメントと逆向きの曲げモーメントを与え、そして、薄膜層40内に含まれ、膜面と平行な面を変形の中立面とすることで、温度変化による変形(図2に示すような反り)を抑制する。
【0030】
上記のような薄膜保護膜50の線膨張係数、ヤング率、及び膜厚の設定は、次のような近似計算によって行える。
【0031】
光情報記録媒体10には、温度変化時に半径方向に働く応力(軸力)と円周方向に働く応力と膜厚方向に働く応力が発生するが、光情報記録媒体10は、円板状であるため、円周方向に働く応力は円周内で均一になり、膜厚方向の力も各層内では一様に働くため、変形には寄与しないと仮定できるため、光情報記録媒体10の変形すなわち反り(図2参照)は、その断面部に相当する多層はりにおける反りに置換できる。図3はその多層はりを示す図である。なお、図3ではn層はりを示しているが、このnは光情報記録媒体の層数であり、図1の光情報記録媒体の場合にはn=7である。
【0032】
この多層はりにおける温度変化時の反り角度θは各層の軸力Pi(i=1,2,…,n)と曲げモーメントMiの釣り合いから導かれる式(1)〜(5)によって表わすことができる。
【0033】
【数1】
【0034】
なお、式(1)〜(5)における各記号は、αi:i層の線膨張係数、Ei:i層のヤング率、ti:i層の厚さ、Pi:i層における軸力、Mi:i層における曲げモーメント、Ri:曲率半径、Ii:i層の断面2次モーメント、b:はりの幅(単位長とする)、T:変化温度、L:はりの長さ、y:n層はりの中立面位置、θ:最大変位部における長さ4mmでの反り角度、を示している。また、各層の厚さは曲率半径に比較してはるかに小さいため、各層(i=1,2,…,n)における曲率半径は同一(R1=R2=R3=…=R)とする。また、変化温度Tは光情報記録媒体の使用温度環境(一般に−15℃〜80℃)内における変化温度である。
【0035】
そして、この式(1)〜(5)においてyを薄膜層40内に設定したときにθが小さくなるように、すなわち曲率半径Rが大きくなるように各層(特に薄膜保護膜50(薄膜層40については光情報記録媒体の特性により予め決められていることが多い))の厚さ,線膨張係数α,ヤング率Eを決定すれば、温度変化に伴う図2の反りを抑制できる光情報記録媒体を得ることができる。
【0036】
ところで、光情報記録媒体において薄膜保護膜50の膜厚が厚くなると、それをスピンコートで形成することが難しくなる。また、光情報記録媒体が光磁気記録媒体の場合には薄膜保護膜50の膜厚が厚くなると、磁気ヘッドと薄膜層40との距離が離れることになり、磁気特性上好ましくない。これらのことから薄膜保護膜50の膜厚は30μm以下、更に良くは20μm以下に設定することが望ましい。したがって、薄膜保護膜50としては、上記膜厚条件(30μm以下(望ましくは20μm以下))を満たすとともに、上記式(1)〜(5)においてθを小さくできる線膨張係数α,ヤング率Eの材料を選定することが必要である。式(1)〜(5)によれば、線膨張係数α,ヤング率Eの少なくとも一方が大きければ、膜厚が小さくてもθを小さくすることが可能である。
【0037】
以上説明したように、本実施の形態の光情報記録媒体では薄膜層40内に温度変化時における変形の中立面がくるように各層(特に薄膜保護膜50)を設定するため、反りの発生を抑制できる。また、光情報記録媒体を構成している各層の中で変形速度の最も遅い薄膜層40の変形がごく小さくなり、実際の温度変化時に問題となる変位のオーバーシュートも小さなものになる。さらに、透明基板20の光入射側には樹脂を主成分とする基板保護膜30のみを形成すればよいため、スピンコート等により簡単に製造でき、製造工程を簡略化できる。
【0038】
なお、上記説明では、光情報記録媒体を構成する全ての層の材料特性を用いて、温度変化による変形の中立面が薄膜層40の内部に存在するように、各層(特に薄膜保護膜50)の設定を行うことについて述べたが、一般に、光情報記録媒体における薄膜層40を構成する各層は非常に薄いものであるため、薄膜層40を1つの層と見なして、薄膜層40に対してその両側(一方側が透明基板20及び基板保護膜30、他方側が薄膜保護膜50)が温度変化により与える曲げモーメントが略打ち消し合うように、各層(特に薄膜保護膜50)を設定しても良い。この場合でも、薄膜層40の温度変化による反りを略無くすことができる。このとき、薄膜保護膜50の膜厚を小さくする(30μm以下(望ましくは20μm以下))には、透明基板20の厚さが大きいことを鑑みると、薄膜保護膜50の線膨張係数α,ヤング率Eの少なくとも一方は、透明基板20よりも大きいものである必要がある。
【0039】
▲2▼実施例
次に、上記原理に基づき形成した光情報記録媒体の実施例について説明する。なお、本実施例は、薄膜層40が窒化アルミニウム1層のみからなると仮定している。これは、薄膜層40の変形は一般に窒化アルミニウム等の誘電体層が主にその原因となる場合が多いからである。また、本実施例では基板保護膜30が無い例を示している。基板保護膜30が存在する場合にはそれをも考慮して各層(特に薄膜保護膜50)の設定を行う必要がある。
【0040】
実施例1として、ポリカーボネイト基板(透明基板20)上に、窒化アルミニウム薄膜層(薄膜層40)と式(1)〜(5)を用いて設計された条件の紫外線(UV)硬化樹脂1(薄膜保護膜50)が形成された媒体を形成した。また、比較例1として、ポリカーボネイト基板上に、窒化アルミニウム薄膜層と従来の紫外線(UV)硬化樹脂2(薄膜保護膜)が形成された光情報記録媒体を形成した。表1,2にそれぞれ実施例1,比較例1の構成を示す。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
表1,2から分かるように、両者の違いは、主にUV硬化樹脂(薄膜保護膜50)の線膨張係数であり、実施例1の方が線膨張係数が大きいものを使用している。なお、透明基板20としては、両者とも内径φ15mm,外径120mmのものを使用している。
【0044】
実施例1と比較例1の媒体に対して25℃→55℃に上昇する温度変化(上記のT=30℃)を与えて、そのときの外周部(r=56mm)での反り角θの変化量の経時変化を測定した。なお、反り角そのものでなく反り角の変化量を測定した理由は、常温状態において、媒体は独自の反り角を持っているため、温度変化による変形を示すには不適格であるためである。
【0045】
図4はその結果を示す図である。実施例1の媒体の反り角の変化量は、最大値及び定常状態値のいずれも比較例1の媒体よりも小さく、変形を抑制していることが分かる。また、この図から、実施例1によれば、20μm以下の膜厚であっても、温度が変化により一時的にも大きな反りが生じることがないことが分かる。さらに、図4には、上記式(1)〜(5)を用いて予想した反り角θの変化量を併記しているが、上記式(1)〜(5)による近似が実測値に非常に近く、その近似は実際に適合していることが分かる。
【0046】
次に、ヤング率の大きなUV硬化樹脂3を使用した媒体(実施例2)について説明する。この実施例2の媒体は実施例1の媒体とUV硬化樹脂の特性が異なっているものである。表3に実施例2の構成を示す。
【0047】
【表3】
【0048】
この実施例2の媒体について、上記式(1)〜(5)を用いて反り角θの変化量を予想すると、その値は5.18〔mrad〕であり、上述の比較例1に比して大幅に温度変化に起因する反りが減少していることが分かる。
【0049】
以上のように、本実施の形態の光情報記録媒体によれば、温度変化により一時的にも大きな反りが生じることを抑制できるため、記録再生時の温度上昇によても再生不良等の問題が生じることを抑えることができる。また、薄膜保護膜50の膜厚を薄くすることができる。
【0050】
(実施の形態2)
本実施の形態では、湿度変化による変形を防止できる光情報記録媒体について説明する。
【0051】
▲1▼原理
上述した図1に記載の光情報記録媒体10は、透明基板20としてポリカーボネート等からなる基板を用いているため、周辺が高湿となったとき、透明基板20が吸湿により膨張する。そして、これにより光情報記録媒体10に変形が生じる。特に、基板保護膜30の透湿度が薄膜保護膜50の透湿度に比較して大きい場合は、基板20の変形速度が薄膜保護膜50の変形速度より大きくなるため、実際の湿度変化時に大きな変位のオーバーシュートが起き実用上において大きな問題となっていた。
【0052】
本実施の形態では、基板保護膜30の透湿度を薄膜保護膜50の透湿度に比較して小さくして、このオーバーシュートを抑制しすることにより、実用時における問題を解決する。
【0053】
▲2▼実施例
実施例3として上述の実施例1に記載の媒体にUV硬化樹脂4からなる基板保護膜30を付加した媒体を形成した。また、比較のため、比較例2として、上述の実施例1に記載の媒体にUV硬化樹脂5からなる基板保護膜30を付加した媒体を形成した。この実施例3,比較例2における各UV硬化樹脂の透湿度について表4に示す。
【0054】
【表4】
【0055】
この実施例3,比較例2の媒体に対して、湿度変化(周囲湿度を50%→90%に変化)を与えて、各媒体の外周部(r=56mm)における反り角θの変化量の経時変化を測定した。
【0056】
図5はその結果を示す図である。実施例3の反り角の変化量の最大値(オーバーシュート時に発生)は比較例2のそれに比較して非常に小さなものとなり、湿度変化による変形が抑制されていることがわかる。
【0057】
このように本実施の形態の光情報記録媒体によれば、湿度が変化しても一時的にも大きな反りが生じることがなく、記録再生時に再生不良等の問題が生じることを抑制できる。
【0058】
なお、本実施の形態の光情報記録媒体においても、実施の形態1に記載のように薄膜層40内に温度変化による変形の中立面を有するように、また、薄膜層40に対してその両側(一方側が透明基板20及び基板保護膜30、他方側が薄膜保護膜50)が温度変化により与える曲げモーメントが略打ち消し合うように、薄膜保護膜50及び基板保護膜30の設定を行えば、本実施の形態における湿度変化に起因する変形の防止のみならず、温度変化に起因する変形をも防止することができる。
【0059】
上記のように変形の中立面を薄膜層40内に設ける場合には、一般に光ビームの入射側となる基板保護膜30の膜厚は、薄膜保護膜50の膜厚より薄い方が良いため、それを満たすような線膨張係数等を有する保護膜材料を選択することが望ましい。
【0060】
なお、以上の実施の形態では変形の中立面が薄膜層内に位置するように媒体を構成したが、薄膜層近傍にあっても良い。勿論、薄膜層内にあることが変形量を減少させる上で望ましい。
【0061】
以上の実施の形態1、実施の形態2において説明した本発明の原理は、実施例1〜3より薄いポリカーボネイト基板等を用いた場合においても成り立つ。その具体例について、以下に説明する。
【0062】
実施例4として、板厚0.5mmの透明基板を用い、下記表5に示す構成の媒体を形成した。
【0063】
【表5】
【0064】
この実施例4の媒体の温度変化時、及び湿度変化時における反り角θの変化量を測定した。図9、10はその結果を示す図である。なお、透明基板の大きさは、内径φ7mm、外径φ50mmである。
【0065】
図9は、雰囲気を温度25℃湿度50%から温度70℃湿度30%に変化させたときの媒体の外周部における反り角θの変化量を示している。この結果では、基板厚がより薄い(実施例4では0.5mm)場合においても、温度変化時における反りの変化量は3mrad程度であった。従来の手法により表5の条件の薄い透明基板を用いた場合、反りの変化量が10mradはるかに超えていたため、本発明により反りの変化を大幅に抑制できることがわかる。
【0066】
また、図10は雰囲気を温度25℃湿度60%から温度25℃湿度90%に湿度を変化させたときの媒体の外周部における反り角θの変化量を示している。この結果より、基板厚がより薄い(実施例4では0.5mm)場合においても、湿度変化時における反りの変化量が非常に小さいことが分かった。
【0067】
【発明の効果】
本発明では、光情報記録媒体を温度変化による変形時の中立面が磁性膜等の薄膜層近傍(望ましくは薄膜層内)にあるように構成することにより、温度変化時における変形量を小さくして、記録再生の信頼性を高めることができる。
【0068】
また、上記光情報記録媒体において、透明基板よりもヤング率,線膨張係数の少なくとも一方が大きな薄膜保護膜を設けることにより、薄膜保護膜の膜厚を薄くできる。これにより製造が容易になると共に、光磁気記録媒体の場合、その磁気特性を向上することができる。
【0069】
また、光情報記録媒体において薄膜保護膜の透湿度より小さい透湿度を有する基板保護膜を設けることにより、湿度変化時における変形量が小さくなり、記録再生の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】光情報記録媒体の構成を示す断面模式図である。
【図2】光情報記録媒体の反りを説明する図である。
【図3】多層はりを説明する図である。
【図4】温度変化時における反り角の変化量の時間依存性を示す図である。
【図5】湿度変化時における反り角の変化量の時間依存性を示す図である。
【図6】光情報記録媒体の構成を示す平面図,側面図である。
【図7】従来の光情報記録媒体の一例を示す断面模式図である。
【図8】従来の光情報記録媒体の他の例を示す断面模式図である。
【図9】板厚0.5mmの光記録媒体の温度・湿度を変化させたときの反り角の変化量の時間依存性を示す図である。
【図10】板厚0.5mmの光記録媒体の湿度変化時における反り角の変化量の時間依存性を示す図である。
【符号の説明】
10 光情報記録媒体
20 透明基板
30 基板保護膜
40 薄膜層
41 第1誘電体膜
42 記録膜
43 第2誘電体膜
44 反射膜
50 薄膜保護膜
Claims (3)
- 透明基板層上に、記録膜または反射膜のいずれか一方を少なくとも含む薄膜層と、樹脂を主成分とする薄膜保護膜層とがこの順で積層されており、前記透明基板層をひとつだけ有するn(nは3以上の自然数)層の光情報記録媒体の製造方法において、
前記透明基板層の厚さは、1.2mmより薄く、
記録再生時の前記光情報記録媒体の断面部を、はりの幅(単位長とする)b、はりの長さL、及び各層の曲率半径を同一の曲率半径Rとしたn層はりに置換した場合に、
前記n層はりに―15℃から80℃までの範囲内の変化温度Tを与えたときに生じる前記n層はりの最大変位部における長さ4mmでの反り角の変化量をθとし、前記変化温度Tを与えたときの前記反り角の変化量が定常状態値をとった場合における第i層(i=1,2,…,n)の線膨張係数をα i 、ヤング率をE i 、厚さをt i 、及び断面2次モーメントをI i 、並びに、第i層における軸力及び曲げモーメントをそれぞれP i 及びM i とするとき、
前記光情報記録媒体における前記断面部のはりの幅、はりの長さ、及び前記変化温度T、並びに各層の線膨張係数、ヤング率、厚さ、及び断面2次モーメントの値を、次式
変形前における前記透明基板層の、前記薄膜保護膜層と異なる側の表面に相当する位置を基準面とする位置yを、t 1 ≦y≦t 1 +t 2 (t 1 :透明基板層の厚さ,t 2 :薄膜層の厚さ)を満たす位置に設定して得られた、前記n層はりの前記反り角の変化量の近似値を6mrad以下とすることを特徴とする光情報記録媒体の製造方法。 - 前記薄膜保護膜層のヤング率及び線膨張係数の少なくとも一方を、前記透明基板層よりも大きくすることを特徴とする請求項1に記載の光情報記録媒体の製造方法。
- 前記薄膜保護膜層の厚さを、20μm以下とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の光情報記録媒体の製造方法。
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