JP3999398B2 - 小型化学反応装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、化学反応、特にDNA増幅反応に用いられる装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
化学反応の1つであるポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction、以下PCRと略す)は、様々な種類の核酸の混合物中から特定の核酸配列を増幅する方法である。この方法は、混合物中に2種類以上のプライマーと熱安定性酵素及び4種類のデオキシリボヌクレオシド三リン酸(dATP、dCTP、dGTP、dTTP)を入れて核酸を分離する工程と、前記プライマーを結合する工程と、熱安定性酵素によってプライマーが結合した核酸を鋳型としてハイブリダイゼーションする工程とからなり、これらの操作を、少なくとも1回以上繰り返すことにより、特定の核酸配列を増幅することが可能になる。
【0003】
PCRを効率よく行うためには、加熱及び冷却を高速且つ高精度に行うことが必要である。加熱及び冷却を高速且つ高精度に行うために、必要であるのは、主に以下のような2つの条件である。
【0004】
第1の条件は、反応容器が、熱伝導率の高い材質で形成されていることである。
【0005】
シリコン、アルミニウム、銅等は高い熱伝導率を有しているため、反応セルの材質として有利である。その中でもシリコンは、半導体プロセス技術を用いて加工することが容易であり、且つ加熱体及び温度検出部等の様々なデバイスを、高い精度を保ちつつ、材質表面に直接形成することが可能であるので優れている。
【0006】
第2の条件は、容器の直ぐ近傍に、できるだけ熱的絶縁体を介在しない状態で、加熱体及び温度検出部を形成することである。
【0007】
反応液と加熱体及び温度検出部との間に熱的絶縁体が、全く存在しない条件を満たすことが可能な装置は、該反応を行う反応セル内に加熱体及び温度検出部を設置した装置である。しかしながら、反応セル内に加熱体及び温度検出部を設置することは、製作コスト及びランニングコストが高いことが問題である。
【0008】
例えば、特開平5−317030は、そのような装置を開示している。該発明は、シリコンウェハを微小なチャンバ状に加工し、その底部にペルチエ素子を形成した反応容器である。この装置は、反応セル内部に温度調節部を有しているため、反応容器内の温度を精密に制御することができる。しかし、多数のペルチエ素子を用いた場合、加熱及び冷却に大きな電流を必要とするため、電気抵抗が問題である。更に、多数の配線を並列に制御する装置は、製造コストもランニングコストも非常に高いことが欠点である。
【0009】
一方、反応セルの外側に加熱体及び温度検出部を配置する装置については、反応の温度制御に対する高精度と、反応セルの十分な強度とを同時に満たすものを提供することは困難である。即ち、反応セル内における温度管理の精度を向上するために、反応セルと加熱体及び温度検出部とをより近接しようとした場合、反応セルの壁が薄くなり、その結果、反応セルの強度が不足し、破損することが問題となるのである。
【0010】
例えば、特表平7−508928は、シリコンウェハをエッチングにより加工し、反応セルを形成した装置を開示している。この装置の製造工程では、ウエットケミカルエッチング液として水酸化カリウム水溶液を用いた異方性エッチング法が用いられている。同時に、シリコンウェハのエッチング停止方法は、窒化シリコン膜を利用する方法を使用している。窒化シリコンは、反応セルの形状を決めるためのマスキングにも一般的に使用され、最も簡便なエッチングの停止方法である。特表平7−508928における反応セルの製造方法の概要は、1)基板であるシリコンウェハの両面に窒化シリコン膜を形成する;2)反応セルの形態に合わせ、その開口部の窒化シリコン膜を除去し、残った窒化シリコン膜をマスクとして用いてシリコンウェハをエッチングする;3)反応セルの開口部から底部に至るまでの部分に当たるシリコンをエッチングにより削り去るというものである。その結果、反応セルの底部として、窒化シリコン膜だけが残る。即ち、この窒化シリコン膜により反応セルの底部が形成される。窒化シリコン膜は、製法上の制約によって最大でも数ミクロンの膜厚で形成することしかできない。これは、加熱体及び温度検出部と上記反応セル内の反応試薬との距離を短縮するためには非常に有利であるが、その反面、窒化シリコンの脆さが問題となる。即ち、反応セルの底部の強度が不足するため生じる反応セルの破損が問題となるのである。急熱及び急冷の繰り返しを必要とするPCRでは、これはより深刻な問題である。特表平7−508928では、窒化シリコン膜を挟んで反応セルの外側に加熱及び温度検出用の部材を配置している。
【0011】
また、シリコン底部を残さずに反応セルを形成する場合であって、且つ加熱体の形状が一様でなくパターンを描いているような場合には、パターンとパターンの間は発熱しないため、微小な範囲で、温度分布が生じ、反応が不均一になる欠点があった。
【0012】
このような問題を解決する方法として、エッチング時に、シリコンウェハを薄い厚さで残して底部とする方法がある。反応セル底部としてシリコンウェハを薄く残すことにより、微小な熱分布を緩和し、反応セル溶液に伝えるために温度分布を均一にすることが可能になる。従来技術では、シリコン基板をアルカリ液を用いたウエットエッチングで処理する場合、エッチングの停止方法として、時間を設定する方法、又は、窒化シリコン膜を設置する方法が使用される。或いは電気化学エッチング法では電気的にエッチングを停止する方法が用いられる。しかし、このような従来の方法では、シリコン基板を必要なだけ薄く加工することは困難である。
【0013】
また、PCR等の反応時に、1つの反応セルを繰り返して加熱及び冷却することなく、温度の調節を可能にする装置も開発されている。例えば、特表平7−506258は、反応セルをシリコン基板のエッチングにより形成する装置であるが、予め所定の温度に調製した反応チャンバを複数用意し、その反応チャンバの間を繰り返し試料溶液を移動させることを特徴としている。これにより加熱及び冷却時の内部圧力の変化を少なくすることが可能になる。しかし、そのためには、反応液を反復して移送することが可能な精密なポンプが必要である。特表平7−508928では、窒化シリコン膜を挟んでポンプ装置を配置している。また、完全に密閉しなければ、ポンプ動作に支障を来たす。そのため、試料溶液の注入方法が複雑になり、製造コストが非常に高くなることは必須であろう。
【0014】
また、場合によっては、基板の材質として、シリコンウェハの代わりにガラス等の材質を選択する必要性が生じる。ガラス等の非晶質は、シリコン単結晶又は他結晶体に比べて熱伝導率が非常に小さいことが問題になる。小型化学反応装置を作製した場合には、反応セル内部に大きな熱分布が生じ、精度の高いPCRは不可能となる。従って、反応セルの底部はなるべく薄い方がよいとされるが、このような場合にも反応セル底部の強度不足が大きな問題となっている。特表平7−508928では、検出感度と機械強度との間のバランスを考慮して3μm±10%の薄い窒化シリコン膜を境界層として、その外側に加熱体、温度検出体、ポンプ装置等を配置している。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、小型化学反応装置の性能を維持したまま、反応セルの薄い部分の強化された小型化学反応装置を提供すること、前記反応セルを複数具備するにも関わらず低コストである小型化学反応装置を提供すること、及びそのような反応セルを簡単に且つ低コストで形成する方法を提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、下記の(1)〜(8)によって達成される。
【0017】
(1)基板と、該基板の表面に開口して設けられた1つ以上の反応セルと、前記基板の裏面側に形成された肉厚の樹脂膜と、前記樹脂膜に埋設された加熱体及び温度検出とを具備する小型化学反応装置。
【0018】
(2)請求項1に記載の小型化学反応装置であって、前記反応セル内壁部は高い熱伝導率を有する材質で形成され、且つ少なくとも前記基板の厚さの薄い部分に樹脂膜が形成されている小型化学反応装置。
【0019】
(3)請求項1に記載の小型化学反応装置であって、前記樹脂膜の膜厚が5μm以上、200μm以下である小型化学反応装置。
【0020】
(4)請求項2に記載の小型化学反応装置であって、前記基板の厚さの薄い部分にホウ素原子が高濃度で含まれている小型化学反応装置。
【0021】
(5)請求項1に記載の小型化学反応装置であって、前記反応セルを複数個で具備し、且つ該反応セルの数よりも少ない個数で具備された加熱体及び温度検出を具備する小型化学反応装置。
【0022】
(6)請求項1に記載の小型化学反応装置であって、更に、前記基板に具備される反応セルの開口部を覆うように配置された第2の基板を具備し、請求項1に記載の第1の基板及び第2の基板の一方又は両方に複数の穴が設けられている小型化学反応装置。
【0023】
(7)請求項6に記載の小型化学反応装置であって、前記複数の穴が光透過性薄膜で閉鎖されている小型化学反応装置。
【0024】
(8)請求項7に記載の小型化学反応装置であって、前記穴の面積が0.1平方mm以上100平方mm以下であり、且つ短辺が1mm以内の矩形状の窓である小型化学反応装置。
【0025】
【発明の実施の形態】
I.小型化学反応装置
本発明の小型化学反応装置(以下、装置ともいう)は、化学反応を行うための小型反応装置であり、特に、PCRを効率よく行うための反応装置である。本発明の装置を用いてPCRを行った場合、反応セル内に含まれる反応液に対し、正確な温度測定と迅速な昇温、降温を行うことが可能である。従って、高速、高精度、高増幅率のPCR反応を行うことができる。以下、本装置について詳細に説明する。
【0026】
本発明の小型化学反応装置は、基板の表面側に開口して具備された反応セルと、前記基板の反応セルを具備していない裏面側に具備された樹脂膜と、前記樹脂膜に埋設されることにより具備される加熱体及び温度検出部とからなる。
【0027】
本発明において、前記反応セルの底部が、前記加熱体により加熱又は冷却され、それにより反応セル内の反応液の温度が調節される。更に、該反応セル底部の温度を、温度検出部でモニターして管理することにより、該反応液の温度の高速且つ高精度な調節が可能になる。
【0028】
好ましい態様において、本発明の小型化学反応装置は、前述の第1の基板の他に、第2の基板を具備する。第2の基板は、第1の基板の該反応セルの開口部を覆うように配置され、主に蓋としての役割を果たし、それにより、反応液の蒸発等を防止する。
【0029】
本発明の小型反応装置の形状は、加工の容易さから正方形又は長方形の形状が好ましい。しかし、本発明においてはこれに限定されず、例えば菱形、六角形若しくは八角形等の多角形、円形、楕円形状が可能である。
【0030】
I−1.基板
本発明の第1の基板の表面側に、凹部が形成され、この凹部を反応セルとして使用することが可能である。
【0031】
本発明の第1の基板は、反応セルの壁面を直接構成する。従って、反応セル内の反応液の温度を、高速且つ精密に管理するためには、本発明の第1の基板が、高い熱伝導率を有する材質であることが好ましい。第1の基板は、シリコン単結晶板(以下、シリコンウェハとも称す)、石英、パイレックス等の非晶質基板、アルミニウム、ステンレス等の金属基板、フッ素樹脂、ポリプロピレン等の有機基板が好ましく、シリコンウェハは、半導体プロセス技術により容易に加工することができるので最も好ましい。
【0032】
一般的に、第1の基板の形状は本装置の形状により決定される。例えば、本装置の形状が長方形状である場合、第1の基板の大きさは、長辺は好ましくは0.1cmから15cmであり、短辺は好ましくは0.1cmから15cmであり、厚さは0.01cmから0.5cmである。
【0033】
また、本発明の第1の基板に、反応セルの破壊、又は反応液の突沸を防止するための脱気用の穴を設けてもよい。
【0034】
更に、本発明の第1の基板に、反応液の状態を観察するための穴を形成してもよい。また、これらの穴を光透過性の膜で閉鎖してもよい。
【0035】
このような光透過性の膜として使用することが可能な材質は、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、及び樹脂フィルム等、並びにパイレックスガラス、アルカリガラス、及び鉱物油等のミネラルオイルである。
【0036】
一般的に、小型化学反応装置を使用する場合、反応セル内に試料溶液するときに同時に気泡が混入する可能性がある。気泡が混在する場合、反応セル内の試料溶液を加熱すると、気泡との気水界面での蒸発が生じて気泡が膨張し、内部圧力が高まる。その結果、反応セルの破壊や試料溶液の突沸が生じる。2枚の基板の一方又は両方に形成した貫通穴は、膨張する気泡を外部に逃がすことで、そのような危険性を低めることが可能である。また、2枚の基板の一方又は両方に形成した貫通穴は、反応セルの破壊や試料の突沸を防ぐ機能を有する他に、後述するインターカレート色素を用いるDNA増幅の結果の検出方法にも利用することも可能である。
【0037】
化学反応、特にPCRを行う装置の場合、PCR試薬の中にDNAの2本鎖の中に入り込んで蛍光特性が変化する蛍光色素を入れ、PCRを行うのと同時にDNAが増幅されているかどうかを蛍光強度によって検出する方法が近年盛んに行われている。前述のような働きをする色素をインターカレーター色素と呼び、数多くの種類が知られている。
【0038】
もっとも良く使われているインターカレーター色素はエチジウムプロミドである。インターカレーター色素を用いてDNA増幅反応を検出するためには装置に励起光の入射と蛍光の検出を行う窓を2枚の基板の一方又は両方に形成する必要がある。この窓は、上述した第1及び第2の基板に形成する穴に相当する。
【0039】
この窓は貫通穴でも光透過性薄膜が形成されていても良い。窓を貫通穴とした場合、試料溶液の出し入れもこの穴を通して行う事が可能となる。動作手順としては、試料溶液を反応セル内に入れた後、穴にミネラルオイル等の沸点と光透過率が高く、PCR反応を阻害しない材料で反応セルを密閉する。次に加熱冷却を繰り返す時に外部から励起光を穴を通して反応セル内部の試料溶液に照射し、発した蛍光を穴を通して検出する。このように蛍光強度をモニターすることでDNAが増幅しているかどうかを同時に測定する事が可能となる。それにより、従来必要であったPCR後の電気泳動等での検出が不要となり、測定時間を大幅に短縮することか可能である。
【0040】
光透過性膜として窒化シリコン膜を使用する場合、反応セルの形成と同時期に形成することが可能である。即ち、目的となる穴を高濃度のアルカリ溶液でエッチングする際に、エッチングを開始する面とは反対の面にも窒化膜を形成しておき、その窒化膜でエッチングを停止すれば、窒化膜を光透過性薄膜として形成することができる。これは、穴を形成してから窓材を形成するよりも簡単であり、低コスト化が可能になる。
【0041】
しかし、この方法で作られる光透過性薄膜としての窒化膜の膜厚は、0.01μm〜10μm程度が限界であり、大変薄く、破損しやすい光透過性薄膜となってしまう。従って、光透過性薄膜を形成した穴の面積を、0.1平方mm以上100平方mm以下且つ、短辺が1mm以内の矩形状の窓とすることで、光透過性薄膜の薄さをカバーすることのできる十分な強度が得られる。また、穴を小さくすることによる面積の不足は、穴を多数空けることで透過光照射不足を補うことができる。このとき、穴の面積が0.1平方mm以下では穴が小さすぎ、穴を複数開けたとしても透過光が十分照射されない。例えば、蛍光強度により反応達成度を検出する場合には、蛍光強度が弱くなり、その検出が困難になる。また、前述の面積が100平方mmであり、且つ短辺が1mm以上の形状では、光透過性薄膜が大きくなりすぎ、破損の原因となる。
【0042】
また、上記の穴に光透過性薄膜を形成させることにより、ミネラルオイル等を蓋とすることなく、より簡便な操作により、DNAの増幅程度をPCRと同時に測定するための穴が形成できる。このような方法により、簡便で低コストな装置が提供できる。
【0043】
また、本発明の第1の基板にシリコンウェハを使用する場合、該シリコンウェハに高濃度のホウ素原子をドープすることが好ましい。シリコンウェハのエッチングをしない片側に、ホウ素原子を高濃度でドープさせることにより、容易に、且つ膜厚の再現性良く、エッチングを停止することが可能である。これは、高濃度のホウ素原子により、アルカリ性エッチング液によるエッチングレートが極端に小さくなるためである。
【0044】
従来技術で見られるように、エッチングの際に、シリコンウェハを完全にエッチング仕切らず、薄く残したシリコンを反応セルの底部とする場合、エッチングの停止方法が問題となる。均一な厚さを維持し、且つ必要な程度に薄く残すことは、従来の反応セル製造技術を用いた場合、達成することが不可能である。本発明では、シリコンウェハのエッチングをしない片側にホウ素原子を高濃度でドープしておくことにより、目的の反応セルの底部を形成することを達成した。
【0045】
ドープするホウ素原子の好ましい濃度は、1×1019から1×1020原子/cmであり、より好ましい濃度は1×1020原子/cmである。
【0046】
上述した通り、本発明の第2の基板は、第1の基板の該反応セルの開口部に配置され、主に蓋としての役割を果たす。従って、第2の基板の大きさは、第1の基板と同じ大きさが好ましいが、これに限定するものではない。
【0047】
第2の基板として用いることが可能な材質には、石英、パイレックス等のガラス基板、シリコンウェハ、アルミニウム、ステンレス等の金属基板、フッ素樹脂、ポリプロピレン等の有機基板がある。反応セル内の視認性の観点から、石英、パイレックス等のガラス基板が優れている。また、熱伝導率の高さからはシリコンウェハが優れている。
【0048】
また、本発明の第2の基板は、第1の基板に設けられた反応セルの位置に合わせ、試料溶液を出し入れするための穴を施設してもよい。また、第1の基板と同様に、本発明の第2の基板に、脱気用の穴を設けてもよく、また、反応液の状態を観察するための穴を形成してもよい。
【0049】
I−2.反応セル
本発明の好ましい態様において、反応セルの形状は、その中において化学反応、特にPCRを行うために都合がよい形態であれば、どのような形態を用いてもよい。反応セル大きさは、1辺が2〜50mm、深さが0.1〜1.0mmであることが適当であるが、深さの浅い反応セルの方が、深いセルよりも加熱体からの伝熱効率が高くなるので好ましい。反応セルの大きさは、上記範囲内で目的の試料溶液量と考え合わせ適宜選択する。
【0050】
また、PCRを行う場合、1〜2℃の反応温度の違いが反応産物に大きく影響する。従って、温度調節を迅速に且つ精密に行うために、反応セルの底部の厚さは、5μmから200μmが好ましく、30μmから100μmがより好ましい。
【0051】
本発明の反応セルは、第1の基板に単数で配置することも、複数で配置することも可能である。
【0052】
また、本発明の反応セルの内側に、窒化シリコン膜を形成してもよく、容器内壁の表面を親水化することにより、非特異的吸着を抑制してもよい。例えば、シリコン酸化膜を、反応セルの側壁部、有機薄膜層及び基板に成膜することにより、表面を親水化することが可能である。
【0053】
本発明の小型化学反応装置は、PCR以外の生化学試験や免疫学的試験等に用いてもよい。目的とする反応に応じて、必要な表面処理を第1及び/又は第2の基板に施すことが可能である。
【0054】
I−3.樹脂膜
本発明の装置の樹脂膜は、第1の基板の反応セルが開口していない片側に形成される。
【0055】
上述した通り、本発明の第1の基板は、その加工の容易さからシリコンウェハを使用することが好ましい。シリコンウェハを基板材料として使う場合、アルカリ溶液でのエッチングによる反応セルの形成する方法が一般的に用いられる方法であるが、反応セル内の温度を十分に管理するためには、ある程度の薄さが要求される。目的とする反応を行うためには、加熱及び冷却を行う場合に生じる内部圧力の変化や、本発明の小型化学反応装置を他の装置と組合わせる場合に生じる外部からの加圧に対して、十分な強度を持たせる必要がある。本発明は、該薄い部分に十分な強度を持たせるために、肉厚の樹脂膜を形成する。
【0056】
樹脂膜は、少なくとも表面の反応セルの開口により第1の基板の厚みの不足する部分の裏面側に配置することが好ましいが、第1の基板の裏面全体に配置してもよい。
【0057】
また、上述した通り、本発明は、前記樹脂膜内に加熱体及び温度検出部を埋設している。加熱体及び温度検出部を、十分な機械的強度が保証できると共に熱拡散が過度にならない程度の5μm以上、200μm以下、好ましくは8から50μmの肉厚の該樹脂膜内に埋設して配置することにより、加熱体及び温度検出部から、反応セルまでの距離を、反応セルの破損や傷を防止しながら最も加熱及び温度検出し易い2.5μm以下、好ましくは0.5μmから2.0μmという近傍位置にまで短縮することが可能になる。それにより加熱体の熱効率が向上し、且つ反応セル内の溶液の温度を正確に測定することが可能になる。
【0058】
本発明の好ましい態様における樹脂膜は、反応セルの底部の壁の薄い部分を強化する役割と、該樹脂膜中に加熱体及び温度検出部を保持するための電気絶縁体としての役割とを同時に果たすことが可能である。従って、製作プロセスの簡略化、及び低コスト化が可能になる。
【0059】
本発明の装置に使用する樹脂膜は、非水溶性であり、0℃から100℃までの温度範囲で耐熱性があり、強い強度を有し、且つ電気絶縁性に優れていることが必要である。そのような要求を満たすことが可能な具体的な材料は、テフロン等のフッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂等である。中でもポリイミド樹脂は成膜とパターニングの容易さから好適である。
【0060】
また、ポリイミドは、約350℃までの耐熱性を有している。従って、ポリイミドを使用した場合、金属薄膜の成膜プロセスがポリイミド膜上ででき、それにより種々の作製プロセスが容易になり、製造工程が短縮できる。
【0061】
ポリイミドを用いた場合の好ましい樹脂膜の厚さは、5μm以上200μm以下である。このとき、5μm未満、特に4μm以下では、強度の不足を補うためには薄すぎ、製造、梱包、運搬等の間に亀裂が生じたり、折れることも有り得ることが判明した。また、ポリイミドにより形成した樹脂膜は、シリコンウェハに比べ熱伝導率が小さいので、200μm以上の厚さがある場合には、加熱速度及び冷却速度が低下する。
【0062】
I−4.加熱体
本発明の装置に用いることが可能な加熱体は、効率よく反応セルを加熱できる部材であればよく、ある程度、抵抗率の高い金属が適している。炭化ケイ素、チタン、ニッケル−クロム合金等のある程度の抵抗値を持っている材質が適切である。より好ましくは、ニッケルクロム、チタン等の金属である。
【0063】
また、本発明で使用できる加熱体の形状は、反応セル内の試料溶液を効率よく加熱できる形状であれば特に限定されない。例えば、反応セルの全体を加熱できるように蛇行形状の加熱体としてもよい。
【0064】
また、加熱体は、1つの反応セルに対して1つである必要はなく、2つ以上の加熱体を備えておき、反応セルの中心部と周辺部という様に各部を別々に加熱できるようにしてもよい。或いは、複数の反応セルを1つの加熱体により、加熱してもよい。全ての反応セルを個別に温度制御しないことで、製作コスト及びランニングコストを下げることが可能になり、また使用時の利便性も向上される。
【0065】
I−5.温度検出部
本発明の小型化学反応装置は、樹脂膜内に温度検出部を具備する。
【0066】
該温度検出部は抵抗率の温度依存性が高く、また0℃〜100℃の温度範囲において抵抗率が直線状に変化する金属が好ましく、例えば白金、チタン等を好適に使用することができる。
【0067】
本発明で使用可能な温度検出部の形状は、反応セル内の温度を効率よく検出できる形状であれば特に限定されない。例えば、U字形状とすることができる。また、温度検出部は1つである必要はなく、2つ以上の温度検出部を備えておき、反応セルの中心部と周辺部という様に各部の温度を別々に測定できるようにしてもよい。
【0068】
或いは、複数の反応セルを1つの加熱体により、加熱してもよい。全ての反応セルを個別に温度制御しないことで、製作コスト及びランニングコストを下げることが可能になり、また使用時の利便性も向上される。
【0069】
また、温度検出部と加熱体との間に電気絶縁層を形成することも好ましい。電気絶縁層として使用可能な材質は、酸化シリコン、窒化シリコン、ポリイミド等であるが、ポリイミドがより好ましい。第1の基板の裏面と温度検出部との間に位置するポリイミド樹脂膜の厚さは、2.5μm以下、好ましくは0.5μmから2.0μmである。この範囲より、厚いと温度検出の検出の応答速度が低下し、温度変化を精度良く検出できないことがある。また、温度検出部と加熱体との間に位置するポリイミド樹脂膜の厚さは、1.0μmから10μmが好ましい。
【0070】
I−6.任意の構成要素
本発明の小型化学反応装置において、第1の基板と第2の基板は接合されていることが好ましい。ここで、前記2枚の基板からなる部材をモジュールと呼ぶ。このモジュールのみであっても、電気接点に電源及びコントローラー等を接続することにより作動できる。該配線及び外部接続端子部には、抵抗が小さい金属が好ましく、アルミニウムがより好ましい。ただし、アルミニウムで作製した外部接続端子部はハンダが付きにくいのでアルミニウムの上に銅やニッケル等の金属膜を形成しておくことが好ましい。
【0071】
更に、本発明の用途に応じて必要となる如何なる任意の構成要素を、更に具備することが可能であることも当業者には明白であろう。
【0072】
I−7.枠部材
前述したように、該モジュールのみであっても電気接点に電源、コントローラー等を接続すれば作動できるが、試料溶液の出し入れ等が困難であるため、枠材料と組み合わせて小型化学反応装置とすることが好ましい。
【0073】
枠部材は、接着剤、ネジ又ははめ込み等の手段によって該モジュールに固定することが好ましい。このように、モジュール部分を枠部材と組み合わせることによって試料溶液の注入が容易な小型化学反応装置を製作することができる。また、枠部材は裏面にモジュール部分を組み込むための穴を具備してよく、更に、効率よく放熱をするための穴を具備してもよい。
【0074】
枠部材は樹脂又は金属によって作られることが好ましい。樹脂材料としてはポリイミド、テフロン、ポリカーボネート等の100℃以上の耐熱性を有している材料が望ましい。また、金属としては銅、アルミニウム、ステンレススティール、マグネシウム合金、チタン合金等様々な材料が適応できる。
【0075】
モジュール部分と枠部材の間にシリコンゴム等のパッキング材を挿入しても良い。
【0076】
また、該モジュール部分と枠部材とを組合わせた部材を、更に、電極を具備するアタッチメント部材と組み合わせ、電気コンタクトを取ることも可能である。更に、反応セル内の試料溶液の温度を強制的に下げるためにアタッチメントの内部に電動ファンを設けることも可能である。
【0077】
I−8.DNA増幅システム
上記に説明した本発明の小型反応装置を、以下に説明するDNA増幅システムと組合わせて用いることも可能である。
【0078】
DNA増幅システムは、例えば、PCR反応を行う試料を貯蔵するための導入試料溶液容器、温度検出部反応セルでPCR増幅反応が行われた試料溶液をストックするための排出試料容器、温度検出装置、加熱体検出装置、制御装置、試料導入管、試料排出管、ポンプ及びバルブ等から構成することが可能であるが、これに限定されるものではない。
【0079】
また、試料導入部及び試料排出部を具備してもよい。この場合、該試料導入部及び試料排出部はDNA等の試料の非特異的吸着の少ない材料、柔軟性の高い材料から選択することが好ましい。本発明においては、DNA等の非特異的吸着が少ないことからテフロンチューブ、ポリプロピレンチューブ等が適しているが、柔軟性の高さの観点からはシリコンゴムチューブも優れている。
【0080】
また、本発明の小型化学反応装置は、PCR以外の化学的反応に応用することが可能である。
【0081】
II.小型化学反応装置の製造方法
II−1.第1の基板及び反応セル
本発明の基板及び反応セルは、基板の材質に応じ、それ自体当業者に公知の方法により製造することが可能である。例えば、シリコンを基板に使用した場合、例えば、ウェットエッチング法、ドライエッチング法等の種々の半導体技術を用いて製造することが可能である。
【0082】
本発明の好ましい態様の1つである、シリコンウェハを基板として使用する装置を例に、基板及び反応セルの製造方法を説明するが、これに限定されるものではない。
【0083】
先ず第1に、窒化シリコン膜を任意の膜厚でシリコンウェハ表面に成膜し、反応セルの形状にフォトリソグラフィ等の技術を利用してパターニングした後、TMAH等のアルカリ水溶液を用いるフォトレジストを除去する。第2に、前記シリコンウェハを水酸化カリウム、TMAH(Tetra Methyl Ammonium Hydride)等の高濃度のアルカリ溶液中に浸漬することでエッチングする。
【0084】
第3に、反応セルの底に薄い部分を残してエッチングを終了させる。この場合、エッチング終了の判断は、エッチング時間を測定して終了する等のそれ自体公知の何れの方法を用いてもよいが、反応セルの底の部分に高濃度のホウ素原子をドープさせることによる方法が好ましい。ホウ素原子のドーピングにより、エッチング速度は極端に遅くなる。この原理を利用することにより、反応セルの底部の薄い部分の厚さを、容易に再現性よく均一化する事が可能である。
【0085】
第4に、エッチングが終了した後、フッ酸溶液に浸漬させて窒化シリコン膜を除去する。
【0086】
以上のようにして得られた反応セルを具備する第1の基板に、以下の方法により樹脂膜を形成する。
【0087】
II−2.樹脂膜、加熱部及び温度検出部
本発明の小型反応装置に具備される樹脂膜は、それ自体公知の種々の方法により形成することが可能である。また、樹脂膜の中に埋設されて具備される加熱部及び温度検出部も、当業者に公知の種々の方法により形成することが可能である。
【0088】
以下に、シリコン基板を用いた場合の1製造方法を例示する。II−1の工程で得られた第1の基板に、エッチングによる反応セルの開口を行わない裏面側にポリイミドを成膜する。ポリイミドの成膜方法は前駆体であるポリアミド酸をスピンコート法によって成膜した後に、ポリイミド膜に変性することにより得ることが可能である。
【0089】
次に、温度検出部をポリイミド膜上に形成する。温度検出部の材質により、その形成方法を選択する必要がある。チタン薄膜により温度検出部を形成することが、加熱体とのプロセスの整合性を考慮した場合にはより好ましい。しかし、これに限られるものではない。
【0090】
チタン薄膜は、スパッタ法により成膜することが可能である。成膜したチタン薄膜上にフォトレジストを形成し、目的とする形状にパターニングする。フッ酸と硝酸の混合液等のパターニング溶液中に浸漬することによりチタン膜をパターニングする。続いて、アセトン等のフォトレジストを溶解する溶液に浸漬することによりフォトレジストを除去する。
【0091】
次に温度検出部の上に電気絶縁層としてポリイミド膜を成膜する。成膜方法は、例えば、ポリアミド酸をスピンコート法によって成膜した後に、フォトレジストを成膜し、温度検出部の電気接点の部分のポリアミド酸膜をパターニングした後、フォトレジストを除去し、加熱によりポリイミド膜を形成することが可能である。
【0092】
加熱体の形成方法は、使用する材質に応じ、それ自体公知の適切な方法から選択してよい。温度検出部にチタンを用いる場合、加熱体も同様にチタンを使用することが好ましい。このように温度検出部と加熱体との材質を同一にする事で、プロセスを均一化でき、低コストや設計の自由度の向上が可能となる。
【0093】
加熱体は、温度検出部の形成方法と同様にスパッタ法により形成することが可能である。パターニングされ、フォトレジストを除去しし、加熱体の上に更にポリイミドを成膜し、エッチングにより温度検出部と加熱体の電気接点部分のみを露出させることが好ましい。
【0094】
また、上記方法では温度検出部及び加熱体のパターンは、すべてチタン膜のみで形成することになるが、反応セルに対応しない部分までチタン膜で形成した場合、反応セルの温度の測定が不正確になる。その加熱体の加熱効率が落ちる等の不具合が心配される。本発明の装置では、温度検出部及び加熱体を反応セルに対応する部分のみに形成し、金やアルミニウム等の抵抗値の低い材料により配線することで上記の問題を解決できる。この場合、電気接点部は、金又はアルミニウムが露出した状態になる。更に、アルミニウムは表面が酸化しやすいため、更に、金等により酸化防止膜を形成することが好ましい。
【0095】
II−3.第2の基板
第2の基板であるシリコンウェハへの試料溶液流入穴の形成は、第1の基板に反応セルを形成する方法と同様にして行うことが可能である。但し、該試料溶液流入穴は、反応セルに対する方法とは異なり、エッチングを途中で中止せず、シリコンウェハの裏面側面まで完全にエッチングし、貫通穴を形成する必要がある。
【0096】
II−4.モジュール
本発明のモジュールを形成するために、第1の基板と第2の基板とを接合する。本発明の装置において使用することが可能な接合方法は、接着剤による方法と、陽極接合による方法、熱融着による方法等であるが、これに限られるものではない。
【0097】
本発明の装置に使用することが可能な接着剤は、例えば、シリコーン系、ゴム系等である。特に、PCR反応に本発明の装置を使用する場合には、ポリメラーゼ酵素の活性を阻害しない接着剤を選択しなくてはならない。そのような接着剤の例は、シリコーン系である。
【0098】
しかし、接着剤による方法は、反応セルと試料溶液流入穴等が形成されている基板部材の接合面のみに接着剤を均一に塗布する方法が難しいため、陽極接合による方法が最も好ましい。
【0099】
シリコン表面の酵素反応に対する阻害性や、タンパク質に対する吸着性等を防止するために、ガラス膜を前記2枚の基板の接合面に形成してもよい。これにより、反応効率の向上が得られる場合がある。ガラス膜の形成は、スパッタ法等のそれ自体公知の方法によって行うことが可能である。
【0100】
また、モジュールの電気接点に、電源、コントローラー等を接続する方法は、従来公知の方法により行うことが可能である。
【0101】
II−5.光透過性薄膜
第1の基板に光透過性薄膜を形成する手段として、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、樹脂フィルム等が考えられる。しかし、作製の容易さから、窒化シリコン膜を光透過性薄膜とすることが好ましい。窒化シリコン膜で光透過性薄膜を形成する場合、反応セルの形成と同時に穴を形成することが可能である。この場合、高濃度のアルカリ溶液でエッチングする際に、エッチングを開始する面とは反対の面である裏面に、窒化膜を形成し、その窒化膜でエッチングを停止すれば、該窒化膜が光透過性薄膜として形成される。このように光透過性薄膜を形成することが好ましい方法であるが、これに限定されるものではない。
【0102】
第2の基板であるシリコンウェハに、試料溶液流入穴を形成する方法も、窒化シリコン膜をマスクにした方法により行うことが可能であるが、これに限定されるものではない。
【0103】
II−4.枠部材
枠部材は、目的により選択された材質に応じて、それ自体公知の方法により製造することが可能である。
【0104】
III.実施例
更に、本発明の小型化学反応装置について、以下に4つの実施例を挙げることにより更に詳しく説明する。しかし、これに限定されるものではない。
【0105】
III−1.第1の実施の形態
図1〜15を用いて、本発明の第1の実施の形態を示す。
【0106】
図1は、本発明の好ましい実施例である小型化学反応装置の一部分をなす第1の基板である。基板1は、複数の反応セル2を具備する。
【0107】
図2は、図1中に示す線A−A’に沿って基板1を切断した断面を示す。第1の基板の反応セルの形成されていない片側に、樹脂膜3が形成されている。
【0108】
図3は、図2に示される円Bで囲まれる部分を示している。図3に示す通り、複数の反応セルの底部には、基板1の薄い部分4が残っており、また、樹脂膜3の内部には加熱体5及び温度検出部6が埋設されている。
【0109】
図4は、図1に示される第1の基板の樹脂膜3を示している。加熱体の電気接点7及び温度検出部の電気接点8は、樹脂膜の外側に露出している。この部分の電気接点に、電源及びコントローラー等を接続すれば作動する。
【0110】
図5は、図3中に示される線C−C’に沿って切断した断面を示す。加熱体5は、樹脂膜3に埋設され、且つ全ての反応セルに対応する位置に配置されている。また、温度検出部の電気接点8が、図に示すように加熱体5と重ならない位置に形成されている。
【0111】
図6は、図3中に示される線D−D’に沿って切断された断面を示している。温度検出部6は、樹脂膜3に埋設され、且つ、全ての反応セルに対応する位置に図に示すように形成されている。
【0112】
図7は、小型化学反応装置の一部分をなす第2の基板を示している。第1の基板の反応セルの長手方向の両端に対応する位置に、且つ夫々の反応セル1つに対し2つずつ、第2の基板9は試料溶液流入穴10を有している。
【0113】
図8は、図7中に示される線E−E’に沿って切断された断面を示す。
【0114】
図9は、図1〜6に示される第1の基板と、図7〜8に示される第2の基板とを重ね合わせる様子を示している。
【0115】
図10は、図9に示される2枚の基板を重ね合わせたモジュール部分を、図7中に示す線E−E’に沿って切断したときの断面を示す。夫々の試料溶液流入穴10と、夫々の反応セル2が重なり合うように、該2枚の基板は(1及び9)は接合される。
【0116】
図11は、図10と同様に図9に示されるモジュール部分を、図7中に示す線G−G’に沿って切断した断面を示している。
【0117】
図12は、小型化学反応装置の一部をなす枠部材11を示す。枠部材11は、図7に示される夫々の試料流入穴に対応した位置で、試料流入口12を有している。
【0118】
図13は、図12中に示される線G−G’に沿って切断した断面を示している。ここで示される通り、図9に示されるモジュール部分をはめ込む穴13と、放冷穴14が形成されている。ここで、試料流入口12は、モジュールをはめ込む穴13の反対側にテーパが施される。
【0119】
図14は、図9で示されるモジュール部分と、図12で示される枠部材11を組み合わせる様子を示している。該モジュール部分は、枠部材の穴13にはめ込まれ、押え部材15で固定される。図示していないが、押え部材は、接着剤又はネジ止される。
【0120】
図15は、図14で示されたモジュール部分と枠部材とを組合わせた小型化学反応装置を、アタッチメント部材16に装着する様子を示している。アタッチメント部材16には、電極17が設けられている。前記小型化学反応装置を、ガイド溝18を通して挿入した場合、加熱体の電気接点7及び温度検出部の電気接点8が、電極17と接触し、電気コンタクトを得ることができる。
【0121】
以上が、第1の実施の形態の構成である。本発明の小型化学反応装置は、反応セル2をその表面に開口するように形成した第1の基板と、試料溶液流入穴10を形成した第2の基板とを接合したモジュール部分(図9〜11)を、枠部材に組み込み(図14)、押え部材で一体化した構成(図14)を有する。更に、モジュール部分と枠部材11とからなる前記小型化学反応装置を挿入するアタッチメント部材16と組み合わせることで(図15)、電源及びコントローラーと電気的に接続し(図示せず)、温度制御を行うことができる。以下、それぞれの部材について製造方法を詳述するが、これに限定されるものではない。
【0122】
シリコンウェハからなる基板部材に反応セル2を形成するために、先ず、窒化シリコン膜を4000Aの膜厚でシリコンウェハ表面に成膜した。次に、反応セルの形状にフォトリソグラフィ技術によりパターニングした。反応セルの形状は短辺2mm、長辺20mmとし、基板部材の形状は短辺30mm、長辺40mmとした。また、シリコンウェハの厚さは0.5mmとした。8つの反応セル2を形成した。このシリコンウェハを水酸化カリウム溶液に浸漬することでエッチングした。反応セルの底に薄い部分を残してエッチングを終了させる判断は、反応セルの底の部分に1×1020原子/cmのホウ素をドーピングすることで行った。
【0123】
エッチングが終了した後、フッ酸溶液に浸漬させて窒化シリコン膜を除去し、エッチングをしなかった面にポリイミドを成膜した。ポリイミドの成膜方法は、前駆体であるポリアミド酸をスピンコート法によって形成し、更に、350℃で1時間加熱し、ポリイミド膜に変性した。ポリイミド膜の膜厚は、約1μmとした。次に温度検出部をポリイミド膜上に形成する。温度検出部を、チタン薄膜により形成した。チタン薄膜は、スパッタ法によって膜厚4000Aに成膜した。成膜したチタン薄膜上にフォトレジストをスピンコート法によって成膜した。
【0124】
その後、図6に示す形状にパターニングし、フッ酸と硝酸の混合液中に浸漬し、チタン膜をパターニングした。純水洗浄後、アセトンに浸漬しフォトレジストを除去した。次に、温度検出部の上に電気絶縁層としてポリイミド膜を成膜した。ポリイミド膜の成膜法は、以下の通りである。ポリアミド酸をスピンコート法によって形成し、150℃で30分間加熱した後、ポリアミド酸膜の上にフォトレジストをスピンコート法で形成した。次に、温度検出部の電気接点の部分のポリアミド酸膜をパターニングした後で、フォトレジストを除去した。これを、350℃で1時間加熱することにより、電気接点の部分のみを露出させたポリイミド膜を形成した。
【0125】
加熱体の材質にはチタンを選択した。このように温度検出部と加熱体との材質を同一にすることで、プロセスを均一化でき、低コストや設計の自由度の向上が可能となる。加熱体としてのチタン膜は膜厚4000Aとし、前述の方法と同様にスパッタ法によって成膜した。加熱体は、図5に示す形状に前述と同様の方法によってパターニングされ、フォトレジストを除去した。加熱体の上に更にポリイミドを成膜し、前述と同様の方法によって温度検出部と加熱体の電気接点部分のみを露出した。温度検出部及び加熱体は、反応セルに対応する部分のみチタン膜で形成し、他の必要な配線にはアルミニウムを用いた。電気接点部で、アルミニウムを露出した。アルミニウムは表面が酸化しやすいので、更に金による酸化防止膜を形成した。
【0126】
次に、第2の基板の具体的な製造例を示す。シリコンウェハに試料溶液流入穴を形成した。これは、窒化シリコン膜をマスクとして用いて、0.5kg/lの水酸化カリウム溶液に浸漬することで形成する。ここで、前述した、第1の基板1における反応セル2の形成方法と違うところはエッチングを途中で中止せず、反対面までエッチングし、貫通穴を形成する点である。その後、フッ酸溶液に浸漬し、窒化シリコン膜を除去した。
【0127】
上記2枚の基板を、陽極接合法によって2枚の基板部材を接合した。また、ガラス膜をスパッタ法によって前記2枚の基板の接合面に形成した。この接合した前記2枚の基板からなる部材が、モジュール部分である。
【0128】
枠部材11にはポリカーボネートを、押え部材15にはアルマイト処理をしたアルミニウムを選択した。枠部材は、裏面にモジュール部分を組み込むための穴13があり、更に効率よく放熱をするための穴14が開口している。この穴13に、前記モジュール部分を挿入し、押え部材15で抑えて組み上げた。ここで、前記モジュール部分の試料溶液流入穴10と、枠部材の穴12の位置は一致しているので、この穴を通して試料溶液をモジュールの反応セル2内に注入することができる。
【0129】
また、モジュール部分と枠部材11の間にシリコンゴムを用いたパッキング材を挿入した。穴12は、使い捨ての樹脂製ピペットチップの先端を差し込める径にした。ピペットチップで計量した試料溶液を直接反応セル2に注入できる。更に、穴12の上部にテーパを形成し、ピペットチップを差し込み易い構造にした。また、押え部材15は、温度検出部6及び加熱体5の電気接点を避けるような形状にした。枠部材11と押え部材15は、はめ込みによって固定した。このように枠部材と組み合わせることにより、試料溶液の注入が容易な小型化学反応装置を製作できた。
【0130】
また、小型化学反応装置を、図15に示すようにアタッチメント部材16に挿入して固定した。ここで、アタッチメント部材16に形成された電極17は、小型化学反応装置の電気接点の位置と一致するように配置した。従って、小型化学反応装置を挿入することにより、簡単に電気的コンタクトが得られる。この様に固定化された小型化学反応装置は、試料溶液の出し入れも容易である。即ち、アタッチメント部材16に挿入した後で、試料溶液を注入すること、温度制御を伴う反応を行うこと、更に、試料溶液を取り出すことが容易に行える。
【0131】
また、アタッチメントの内部に電動ファンを設けた(図示せず)。
【0132】
III−2.第2の実施の形態
図16〜21に本発明の第2の実施の形態を示す。
【0133】
図16は、本発明の好ましい実施例である小型化学反応装置の一部分をなす第1の基板19である。第1の基板19は、複数の反応セル20を有している。
【0134】
図17は、図16中に示す線H−H’に沿って切断した断面を拡大したものである。第1の基板19の反応セル20の形成されていない面に、樹脂膜22が設けられている。反応セル20の底部には、基板部材19の薄い部分21が残っている。樹脂膜22の内部には、加熱体24と温度検出部23が埋設されている。
【0135】
図18は、図16に示される第1の基板19の裏面側に形成された樹脂膜22を示している。加熱体の電気接点25,27,29,31及び温度検出部の電気接点26,28,30,32が形成されている。
【0136】
図19は、図17中に示される線I−I’に沿って切断した断面である。樹脂膜22に、4つの加熱体32,33,34,35が、それぞれ4つの反応セルに対応した位置に埋設され配置されている。また、温度検出部の電気接点26,28,30,32が形成されている。
【0137】
図20は、図17中に示される線J−J’に沿って切断された断面を示している。温度検出部36,37,38,39が、樹脂膜22に埋設された状態で、且つ加熱体24と同様に反応セル20に対応した位置に形成されている。
【0138】
図21は、小型化学反応装置の一部分を第2の基板40である。反応セル20の長手方向の両端に位置に、且つ1つの反応セル当たり2つずつの割合で、第2の基板40は試料溶液流入穴41を有する。
【0139】
以上が、第2の実施の形態の構成である。本発明の小型化学反応装置は、多数の反応セルを形成した第1の基板(図16〜20)と試料溶液流入穴41を形成した第2の基板(図21)とを接合して形成したモジュール部分を、枠部材と押え部材によって一体化した構造を持つ(図示せず)。枠部材及び押え部材は、実施の形態1で示した各部材を、試料流入穴の位置と数を変更することにより形成することが可能である。
【0140】
本実施の形態の反応セル20は、第1の基板19に16個形成した。これらの反応セル20の全てを、個別に温度制御するのではなく、4個の反応セル毎に温度制御ができるように加熱体32,33,34,35と温度検出部36,37,38,39を形成した。
【0141】
反応セル20、ポリイミド膜22、加熱体23、温度検出部24の形成方法は実施の形態1と同様に行った。反応セルの形状は、短辺2mm、長辺10mmとし、基板部材の形状は短辺30mm、長辺40mmとした。シリコンウェハの厚さは0.5mmとした。
【0142】
本実施の形態の小型化学反応装置の電気接点は、計16個必要であるが、この16個の電気接点を、基板長辺40mmに1列に並べ、且つ両端にスペースを取ることを考慮すると、電気接点の幅は1mm、間隔は約1mmとなった。仮に、これ以上の電気接点を一列に並べたい場合には、基板部材を大きくしない限り、電極とのコンタクト精度のため困難である。仮に、電気接点を2列又は3列にした場合、それらを配置することは可能であるが、加熱体24、温度検出体23との配線が難しくなる。従って、大幅に電気接点の数、すなわち加熱体24、温度検出部23の数を増やすことは難しい。
【0143】
また、例えば、PCR反応を行う場合、プライマーとDNAのハイブリダイゼーションの温度を特定することは、非特異増幅の防止等の点から大変重要である。しかし、酵素濃度、PH等の条件も合わせて考えなければならないため、実際には数種類の試薬を同温度条件でテストすることが必要となる。そのような場合、本実施の形態の小型化学反応装置を用いることで、上記実験が一度に実行できるようになる。更に、前記実験においては、すべての反応セルを別々の温度条件で実験する必要はない。
【0144】
本実施の形態は、様々に想定される実験条件に対応することが可能である。また、装置構成を簡単にして低コスト化を図れる点で大変有用である。
【0145】
III−3.第3の実施の形態
図22〜26に本発明の第3の実施の形態を示す。
【0146】
図22は、小型化学反応装置の一部分をなす第1の基板である。第1の基板42は、図に示す通り複数の反応セル43を有している。
【0147】
図23は、小型化学反応装置の一部分をなす第2の基板である。基板部材44は、それぞれの反応セルの長手方向の両端と、長手方向の長さを2分する位置に、計3つの穴45が形成される。
【0148】
図24は、図22に示される第1の基板42と、図23に示される第2の基板44とを、第1の実施の形態を示す図9に示されるのと同様に接合しモジュール部分を形成した後、前記モジュール部分を、図23中に示される線K−K’に沿って切断した断面を示している。第2の基板44には、試料流入口を兼ねた穴45が形成されている。第1の基板42には、反応セル43と樹脂膜46が形成されている。樹脂膜46内には、加熱体47と温度検出部48が埋設されている。
【0149】
図25は、図24に示したモジュール部分に、ピペットチップ49を用いて試料溶液を注入する様子を表している。
【0150】
図26は、図25に示されるように試料溶液50を注入した後に、ミネラルオイル51をそれぞれの穴に滴下した様子を示している。本実施の形態のモジュール部分は、更に枠部分と押え部材によって一体化された構成になっているが、枠部材及び押え部材は図示していない。これらは、上述の第2の実施の形態において述べた方法と同様に形成することが可能である。
【0151】
本実施の形態の小型化学反応装置において、試料流入穴を兼ねた穴45が、第2の基板44に施設されていることが特徴である。この穴45は、試料溶液を注入するためにピペットチップを直接挿入することが可能である。試料溶液50を注入した後で、ミネラルオイル51を添加して穴を封入する。それにより、試料溶液50を加熱しても、液が蒸発することはない。反応が終了した後は、ピペットチップを再度差し込み、試料溶液を取り出すことが可能である。また、反応セルに多数の穴が空いているので、試料溶液中に気泡が入ってしまった場合でも、加熱に伴い気泡が膨張した後に、穴から圧力を抜くことができ、それにより反応セルの破壊や突沸を防止できる。
【0152】
本発明の実施の形態では、試料溶液の出し入れを簡単にすることと、反応セルの破壊や試料溶液の突沸を防止することが可能である。
【0153】
III−4.第4の実施の形態
図27〜30に本発明の第4の実施の形態を示す。
【0154】
図27は、小型化学反応装置の一部分をなす第1の基板である。第一の基板52は、複数の反応セル53を有している。
【0155】
図28は、小型化学反応装置の一部分をなす第2の基板である。第2の基板54は、夫々の反応セル53の両端に相当する位置に、試料流入穴55が形成される。また、反応セルの長手方向の長さを2分する位置に複数の穴56が開いている。
【0156】
図29は、図27に示される第1の基板52と図28に示される第2の基板54とを、第1の実施の形態を示す図9と同様に接合しモジュール部分とした後で、図28の示す線L−L’に沿って切断した断面を示している。第2の基板54には、試料流入穴55及び光透過性薄膜57が形成されている穴56がある。第1の基板52には、反応セル53と樹脂膜58とが形成される。樹脂膜58内に、加熱体59と温度検出部60が埋設されている。
【0157】
図30は、図29で示されるモジュール部分に試料溶液65を注入する様子を示している。励起光照射装置61から、励起光62を、試料溶液65に照射し、試料溶液65から生じた蛍光64を検出器63で検出する。
【0158】
本実施の形態のモジュールは、第1、第2及び第3の実施の形態と同様に、枠部材と押え部材によって一体化された構成である(図示せず)。枠部材及び押え部材は、各々第2の実施の形態と同様に形成することが可能である。
【0159】
以上が、第4の実施の形態の構成である。本実施の形態の小型化学反応装置は、光透過性薄膜57を有した穴56が形成されていることを特徴とする。光透過性薄膜57は、窒化シリコン膜からなる。これは、第1の実施の形態で述べた、試料流入穴55を形成する方法を応用して制作することができる。窒化シリコン膜を、エッチングの停止膜として使用するため、穴55,57をエッチングした際に、穴の底部に窒化シリコン膜が残る。この窒化シリコン膜の面にフォトレジストを塗布し、マスクで穴(57)の周囲を保護し、フォトレジストをパターニングした。更に、RIE(Reactive Ion Ecthing)装置によってフォトレジストを除去し、露出している窒化シリコン膜をドライエッチングで除去した。その後、第1の実施の形態と同様に、陽極接合法によりモジュール部分を制作した。更に、第2の実施の形態と同様な方法により、モジュール部分と枠部材を、押さえ部材により一体化し、小型化学反応装置を完成した(図示せず)。
【0160】
PCR反応は、この小型化学反応装置にインターカレート色素を含む試料溶液を注入して行う。このとき、DNAが増幅していれば、インターカレート色素が、DNAの2本鎖の間に入り込み、蛍光を発するようになる。従って、装置外部に設置した励起光照射装置61からの励起光62を、光透過性薄膜57を形成した穴56を経て、試料溶液65に照射すれば、インターカレート色素から生じた蛍光64が、光透過性薄膜57を形成した穴56を再度経て、検出部63に到達する。これにより、PCR反応によってDNAが増幅程度を、PCR反応と同時に測定することが可能になる。
【0161】
ここで、光透過性薄膜57を形成した穴56は、短辺0.5mm、長辺2mmの穴を9個集積したものである。これにより、約5000Aである非常に薄く脆い窒化シリコン膜を使用しても、十分な強度を得ることができる。
【0162】
本実施の形態は試料溶液中にインターカレーター色素を含み、PCR反応と同時にDNA増幅の程度を確認できるため、PCR後の電気泳動等の手段に比べ時間短縮と低コスト化に大変有利である。しかも、光透過性薄膜を形成させた穴を小さくすることによって、十分な強度を有し、実用的である。
【0163】
【発明の効果】
本発明は、基板の表面に反応セルを形成しことにより基板の一部が薄くなり、強度不足となった基板の裏面側に樹脂薄間を形成することにより、該基板の強度不足を補うことが可能である。また、同時に、前記樹脂膜中に加熱体及び温度検出部を埋設して配置することにより、製造コストを低くすることが可能である。
【0164】
本発明は、シリコンウェハを基板とした場合であって、且つ反応セルをアルカリ液によるウェットエッチング法により形成する場合、シリコンウェハのエッチングをしない片側にホウ素原子を高濃度でドーピングすることにより、容易に且つ精度良く、エッチングを停止することが可能である。これにより、形成する膜厚の再現性を向上することが可能である。
【0165】
本発明は、反応セルの配置及び大きさ等を変更することにより、様々に想定される実験条件に対応することが可能である。また、多数の反応セルの幾つかを纏めて制御することで、装置構成を簡略化することが可能である。これにより低コスト化が図れ、且つ利便性が向上する。
【0166】
本発明は、試料溶液の出し入れを簡単に行うことが可能である。また、小さい脱気用の穴を設けることにより、反応セルの破壊や試料溶液の突沸を防止することが可能である。
【0167】
本実施の形態は試料溶液中にインターカレーター色素を含み、PCR反応と同時にDNA増幅を確認できるため、PCR後の電気泳動等の手段に比べ時間短縮と低コスト化に大変有利である。しかも、光透過性薄膜を形成させた穴を小さくすることによって、十分な強度を有し、実用的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 好ましい態様である小型化学反応装置の第1の基板の表面側を示す図。
【図2】 図1に示される線A−A’に沿って切断した断面図。
【図3】 図2に示される円Bの拡大図。
【図4】 図1の第1の基板の裏面側に設置された樹脂膜を示す図。
【図5】 図3に示される線C−C’に沿って切断した断面図。
【図6】 図3に示される線D−D’に沿って切断した断面図。
【図7】 図1に示す第1の基板と組合わせて使用することを目的とする第2の基板を示す図。
【図8】 図7に示される線E−E’に沿って切断した断面図。
【図9】 第1の基板と第2の基板とを重ねあわせる様子を示す図。
【図10】 図9に示される第1の基板と第2の基板とを重ねあわせて構成されるモジュール部分を、図7に示される線E−E’に相当する位置に沿って切断した断面図。
【図11】 図9に示される第1の基板と第2の基板とを重ねあわせて構成されるモジュール部分を図7に示される線F−F’に相当する位置に沿って切断した断面図。
【図12】 枠部材を示す図。
【図13】 図12に示される線G−G’に沿って切断された断面図。
【図14】 図9のモジュール部分と枠部材を組合わせる様子を示す図。
【図15】 図14で示されたモジュール部分と枠部材とを組合わせた部材をアタッチメント部材に挿入する様子を示す図。
【図16】 第2の好ましい態様における小型反応装置の第1の基板を示す図。
【図17】 図16に示される線H−H’に沿って切断された断面図。
【図18】 図16に示される第1の基板の裏面側に設置される樹脂膜を示す図。
【図19】 図17に示される線I−I’に沿って切断された断面図。
【図20】 図17に示される線J−J’に沿って切断された断面図。
【図21】 図16に示す第1の基板と組合わせて使用することを目的とする第2の基板を示す図。
【図22】 第3の好ましい態様における小型反応装置の第1の基板を示す図。
【図23】 図22に示す第1の基板と組合わせて使用することを目的とする第2の基板を示す図。
【図24】 図22の第1の基板と図23の第2の基板とを重ねあわせてモジュール部分とした後に、図23に示される線K−K’に相当する位置に沿って切断した断面図。
【図25】 図24に示されるモジュールに、ピペットチップを用いて試料溶液を注入する様子を示す図。
【図26】 図25に示されるようにモジュールに試料を注入した後に、ミネラルオイルを各穴に滴下した様子を示す図。
【図27】 第4の好ましい態様における第1の基板を示す図。
【図28】 図27の第1の基板と組合わせて使用することを目的とする第2の基板を示す図。
【図29】 図27に示す第1の基板と図28に示す第2の基板とを重ねあわせて構成されるモジュール部分を、図28に示される線L−L’に相当する位置に沿って切断した断面図。
【図30】 図29で示されるモジュールに試料溶液を注入した後に、励起光照射装置からの励起光を試料溶液中に照射し、それにより生じる試料溶液からの蛍光を検出器で検出している様子を示す図。
【符号の説明】
1.第1の基板、2.反応セル、3.樹脂膜、4.基板の薄い部分、5.加熱体、6.温度検出部、9.第2の基板、10.試料溶液流入穴、11.枠部材、12.試料流入口、13.モジュール用はめ込み穴、14.放冷穴、15.押え部材、16.アタッチメント部材、18.ガイド溝、20.反応セル、21.基板の薄い部分、22.樹脂膜、23.温度検出部、24.加熱体、46.樹脂膜、47.加熱体、48.温度検出部、51.ミネラルオイル、57.光透過性薄膜、58.樹脂膜、59.加熱体、60.温度検出部、61.励起光照射装置、62.励起光、63.検出器、64.蛍光、65.試料溶液

Claims (5)

  1. 基板と、該基板の表面に開口して設けられた1つ以上の反応セルと、前記基板の裏面側に形成された30μm〜200μmの肉厚の電気絶縁性の樹脂膜と、前記樹脂膜に反応セルから0.5μm以上2.5μm以下の距離に配置されるように埋設された加熱体及び温度検出部を具備する小型化学反応装置であって、前記基板がシリコン単結晶板であり、前記樹脂膜が少なくとも前記基板の反応セル底面の裏面に形成され、前記基板の反応セル底面より当該樹脂膜側の領域には、当該反応セル底面よりも上方の領域よりも高濃度のホウ素原子が含まれる小型化学反応装置
  2. 請求項1に記載の小型化学反応装置であって、前記反応セルを複数個で具備し、且つ該反応セルの数よりも少ない個数で具備された加熱体及び温度検出部を具備する小型化学反応装置。
  3. 請求項1に記載の小型化学反応装置であって、更に、前記基板に具備される反応セルの開口部を覆うように配置された第2の基板を具備し、請求項1に記載の第1の基板及び第2の基板の一方又は両方に複数の穴が設けられている小型化学反応装置。
  4. 請求項3に記載の小型化学反応装置であって、前記複数の穴が光透過性薄膜で閉鎖されている小型化学反応装置。
  5. 請求項4に記載の小型化学反応装置であって、前記穴の面積が0.1平方mm以上100平方mm以下であり、且つ短辺が1mm以内の矩形状の窓である小型化学反応装置。
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