JP3998340B2 - エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物組成物の製造法 - Google Patents
エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物組成物の製造法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(以下、EVOHと略記する)組成物の製造法に関し、更に詳しくは多層積層体としたときの溶融成形性に優れたEVOH組成物の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、EVOHはその透明性、ガスバリヤー性、保香性、耐溶剤性、耐油性などに優れており、かかる特性を生かして、食品包装材料、医薬品包装材料、工業薬品包装材料、農薬包装材料等のフィルムやシート、或いはボトル等の容器等に成形されて利用されている。
【0003】
かかる成形にあたっては、通常溶融成形が行われ、かかる成形により、フィルム状、シート状、ボトル状、カップ状、チューブ状、パイプ状等の形状に加工されて実用に供されており、その加工性(成形性)は大変重要であり、また一般的には機械的強度、耐湿性、ヒートシール性等を付与するためにポリオレフィン系樹脂等の基材と接着樹脂層を介して共押出されて積層体とされており、その層間接着性も大変重要である。かかる成形性や層間接着性を向上させるために、EVOHにホウ素化合物を配合すること(特開昭59−192564号公報、特開昭55−12108号公報、特公昭49−20615号公報等)、EVOHにリン酸化合物を配合すること(特開昭52−954号公報、特開昭62−143954号公報、特開平2−235952号公報等)、EVOHに酢酸塩を配合すること(特開昭56−41204号公報、特開昭64−66262号公報等)が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、昨今の新たなる成形物への要求性能の高まりに対応すべく、上記の技術について、詳細に検討を重ねた結果、直径が0.1mm以上のフィッシュアイやゲル等の改善は認められるものの、0.1mm未満の小さなものについては、上記の技術では必ずしも解決できるものではなく、特に多層積層体製造時については十分な考慮がなされておらず、多層積層体としたときの成形条件等により0.1mm未満のフィッシュアイ等が発生する恐れがあり、新たなる改良が望まれることが判明した。
【0005】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者は、かかる現況に鑑みて、EVOHにホウ素化合物やリン酸化合物や脂肪酸塩を含有させた後の処理方法について鋭意研究を重ねた結果、EVOHをホウ酸またはその金属塩、リン酸二水素マグネシウム、リン酸二水素カルシウムから選ばれる少なくとも1種の水溶液と接触させてホウ酸またはその金属塩、リン酸二水素マグネシウム、リン酸二水素カルシウムの少なくとも1種を含有させた後、含水率0.001〜2重量%に乾燥させてから水と接触させることにより、溶融成形性に優れ、特に多層積層体製造時において直径が0.1mm未満のフィッシュアイ等の発生を抑制することのでき、かつロングラン成形性も良好であるEVOH組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に述べる。
【0007】
本発明に用いられるEVOHとしては、特に限定されないが、エチレン含有量が20〜60モル%(更には25〜55モル%)、ケン化度が90モル%以上(更には95モル%以上)のものが用いられ、該エチレン含有量が20モル%未満では高湿時のガスバリヤー性、溶融成形性が低下し、逆に60モル%を越えると充分なガスバリヤー性が得られず、更にケン化度が90モル%未満ではガスバリヤー性、熱安定性、耐湿性等が低下して、好ましくない。
【0008】
該EVOHは、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化によって得られ、該エチレン−酢酸ビニル共重合体は、公知の任意の重合法、例えば懸濁重合、エマルジョン重合、溶液重合などにより製造され、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化も公知の方法で行い得る。
【0009】
該EVOHは、少量であればα−オレフィン、不飽和カルボン酸系化合物、不飽和スルホン酸系化合物、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルシラン化合物、塩化ビニル、スチレンなどの他のコモノマーで「共重合変性」されても差し支えない。又、本発明の趣旨を損なわない範囲で、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化など「後変性」されても差し支えない。
【0010】
また、本発明で用いられるホウ素化合物としては、ホウ酸またはその金属塩、例えばホウ酸カルシウム、ホウ酸コバルト、ホウ酸亜鉛(四ホウ酸亜鉛,メタホウ酸亜鉛等)、ホウ酸アルミニウム・カリウム、ホウ酸アンモニウム(メタホウ酸アンモニウム、四ホウ酸アンモニウム、五ホウ酸アンモニウム、八ホウ酸アンモニウム等)、ホウ酸カドミウム(オルトホウ酸カドミウム、四ホウ酸カドミウム等)、ホウ酸カリウム(メタホウ酸カリウム、四ホウ酸カリウム、五ホウ酸カリウム、六ホウ酸カリウム、八ホウ酸カリウム等)、ホウ酸銀(メタホウ酸銀、四ホウ酸銀等)、ホウ酸銅(ホウ酸第2銅、メタホウ酸銅、四ホウ酸銅等)、ホウ酸ナトリウム(メタホウ酸ナトリウム、二ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、五ホウ酸ナトリウム、六ホウ酸ナトリウム、八ホウ酸ナトリウム等)、ホウ酸鉛(メタホウ酸鉛、六ホウ酸鉛等)、ホウ酸ニッケル(オルトホウ酸ニッケル、二ホウ酸ニッケル、四ホウ酸ニッケル、八ホウ酸ニッケル等)、ホウ酸バリウム(オルトホウ酸バリウム、メタホウ酸バリウム、二ホウ酸バリウム、四ホウ酸バリウム等)、ホウ酸ビスマス、ホウ酸マグネシウム(オルトホウ酸マグネシウム、二ホウ酸マグネシウム、メタホウ酸マグネシウム、四ホウ酸三マグネシウム、四ホウ酸五マグネシウム等)、ホウ酸マンガン(ホウ酸第1マンガン、メタホウ酸マンガン、四ホウ酸マンガン等)、ホウ酸リチウム(メタホウ酸リチウム、四ホウ酸リチウム、五ホウ酸リチウム等)などの他、ホウ砂、カーナイト、インヨーアイト、コトウ石、スイアン石、ザイベリ石等のホウ酸塩鉱物などが挙げられ、好適にはホウ砂、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム(メタホウ酸ナトリウム、二ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、五ホウ酸ナトリウム、六ホウ酸ナトリウム、八ホウ酸ナトリウム等)が用いられる。
【0011】
また、本発明で用いられるリン酸化合物としては、リン酸二水素カルシウム、リン酸二水素マグネシウムが用いられる。
【0012】
本発明においては、先ず、EVOHにホウ素化合物やリン酸化合物を含有させるのであるが、かかる含有にあたっては、ホウ素化合物やリン酸化合物の水溶液にEVOHを接触させることで含有させることができ、このときの該水溶液中のホウ素化合物やリン酸化合物の濃度は、ホウ素化合物の場合は0.001〜1重量%(更には0.003〜0.5重量%)が好ましく、0.001重量%未満では所定量のホウ素化合物を含有させることが困難となり、逆に1重量%を越えると最終的に得られる成形物の外観性が低下して好ましくない。また、リン酸化合物の場合は0.0001〜1重量%(更には0.0005〜0.5重量%)が好ましく、0.0001重量%未満では所定量のリン酸化合物を含有させることが困難となり、逆に1重量%を越えると最終的に得られる成形物の外観性が低下して好ましくない。ホウ素化合物、リン酸化合物の中から任意の2種以上を併用する場合はそれぞれの濃度が上記の条件を満足することが好ましい。
【0013】
かかる水溶液にEVOHを接触させる方法としては特に限定されないが、該水溶液にEVOHを投入して撹拌しながら、上記の化合物を含有させることが好ましく、このときのEVOHの形状としては、ペレット状(円柱状、球状、不定形状等)のものが好ましく、円柱状の場合は直径が1〜10mm、長さが1〜10mmが好ましく、球状の場合は直径が1〜10mmが好ましい。またかかるEVOHは、直径が0.1〜10μm程度の細孔が均一に分布したミクロポーラスな内部構造をもつものが好ましく、通常EVOHの溶液(水/アルコール混合溶媒等)を凝固浴中に押し出すときに、EVOH溶液の濃度(20〜80重量%)、押し出し温度(45〜70℃)、溶媒の種類(水/アルコール混合重量比=80/20〜5/95等)、凝固浴の温度(1〜20℃)、滞留時間(0.25〜30時間)、凝固浴中でのEVOH量(0.02〜2重量%)などを任意に調節することで、該構造のEVOHを得ることが可能となる。更には含水率20〜80重量%のものが、上記の化合物等を均一にかつ迅速に含有させることができて好ましい。
【0014】
かかる方法により得られるEVOH組成物中のホウ素化合物やリン酸化合物の含有量は特に限定されないが、ホウ素化合物の場合は、EVOH100重量部に対してホウ素換算で0.001〜1重量部(更には0.002〜0.5重量部)が好ましく、0.001重量部未満ではホウ素化合物の添加効果が十分ではなく、逆に1重量部を越えると最終的に得られる成形物の外観性が低下して好ましくない。また、リン酸化合物の場合は、EVOH100重量部に対してリン酸根換算で0.0005〜0.1重量部(更には0.001〜0.05重量部)が好ましく、0.0005重量部未満ではリン酸化合物の添加効果が十分ではなく、逆に0.1重量部を越えると最終的に得られる成形物の外観性が低下して好ましくない。ホウ素化合物、リン酸化合物の中から2種以上を併用する場合はそれぞれの含有量が上記の条件を満足することが好ましい。
【0015】
上記の化合物等の含有量の調整にあたっては、特に限定されないが、前述の水溶液との接触処理において、化合物等の水溶液濃度、接触処理時間、接触処理温度、接触処理時の撹拌速度や処理されるEVOHの含水率等をコントロールすることで可能である。
【0016】
上記の如くホウ素化合物やリン酸化合物を含有したEVOH組成物は、次いで含水率が0.001〜2重量%(更には0.01〜2重量%、特には0.1〜1重量%)まで乾燥されることが必要で、該含水率が0.001重量%未満ではEVOH組成物のロングラン成形性が悪化し、逆に2重量%を越えると水と接触させても微小フィッシュアイの抑制効果が得ることができず本発明の目的を達成することはできない。
【0017】
かかる乾燥に際しては公知の方法を採用することができ、例えば、円筒・溝型撹拌乾燥器、円筒乾燥器、回転乾燥器、流動層乾燥器、振動流動層乾燥器、円錐回転型乾燥器等を用いた流動乾燥や回分式箱型乾燥器、バンド乾燥器、トンネル乾燥器、竪型サイロ乾燥器等を用いた静置乾燥などにより乾燥すればよい。尚、乾燥後のEVOH組成物のメルトインデックス(MI)(210℃、荷重2160g)は、0.1〜50g/10分(更には0.5〜30g/10分)とすることが好ましく、該メルトインデックスが該範囲よりも小さい場合には、成形時に押出機内が高トルク状態となって押出し加工が困難となり、逆に該範囲よりも大きい場合には、成形安定性や成形物の機械的強度が低下して好ましくない。かかるMIの調整にあたっては、EVOHの分子量や上記の化合物等の含有量等によりコントロールすることができる。
【0018】
本発明においては、かかる乾燥されたEVOH組成物を水と接触させることを最大の特徴とするもので、かかる接触については特に限定はなく、乾燥後のEVOH組成物を水に浸漬させて撹拌したり、流水中を循環させたり、或いは該EVOH組成物に水を吹き付けたり、等の方法により水と接触させることができ、更に該水中浸漬中に超音波等の振動を与えたりすることも有効であるが、工業上、好適にはEVOH組成物を水に浸漬させて撹拌したり、流水中を循環させたりする方法が用いられる。
【0019】
これらの水との接触においては、特に限定されないが、接触時間を5分〜48時間(更には10分〜24時間)、水温を10〜80℃(更には20〜60℃)、水のpHを5〜10(更には6〜9)とすることが好ましく、更には接触させる水とEVOH組成物の重量比(水/EVOH組成物)を1以上(更には2〜30)とすることも好ましく、また用いる水中の不純物(硫酸イオン、塩素イオン、鉄等)を極力少なくすることが好ましい。
【0020】
更に、水との接触により得られたEVOH組成物は、その後再度乾燥することも好ましく、かかる乾燥方法に特に制限はないが、微小フィッシュアイの低減など品質の良いものを得るには、流動乾燥が好ましい。また、乾燥後のEVOH組成物の含水率は0.001〜2重量%(更には0.01〜1重量%)とすることが好ましい。かかる含水率が0.001未満ではロングラン成形性が低下する傾向にあり、逆に2重量%を越えると成形時に発泡の恐れがあり好ましくない。
【0021】
かくして本発明の方法により目的とするEVOH組成物が得られるのであるが、本発明においては、水と接触させる前と後のEVOH組成物のメルトフローインデックス(MI)の比を0.1〜10(更には0.5〜5、特には0.8〜2)にすることも好ましく、かかる比が0.1未満では微小フィッシュアイを抑制することが困難となり、逆に10を越えるとEVOH組成物の熱安定性が悪く、ロングラン成形性や層間接着性も低下して好ましくない。かかるMIの調整にあたっては、水との接触時間や温度等によりコントロールすることができる。
【0022】
また、EVOH組成物中の最終的なホウ素化合物やリン酸化合物の含有量は、ホウ素化合物の場合は、EVOH100重量部に対してホウ素換算で0.001〜1重量部(更には0.002〜0.5重量部)が好ましく、0.001重量部未満ではホウ素化合物の添加効果が十分ではなく、逆に1重量部を越えると最終的に得られる成形物の外観性が低下して好ましくない。また、リン酸化合物の場合は、EVOH100重量部に対してリン酸根換算で0.0005〜0.1重量部(更には0.001〜0.05重量部)が好ましく、0.0005重量部未満ではリン酸化合物の添加効果が十分ではなく、逆に0.1重量部を越えると最終的に得られる成形物の外観性が低下して好ましくない。
【0023】
上記の如き本発明方法により、成形物の外観性やロングラン成形性等に優れたEVOH組成物が得られるわけであるが、かかる組成物には、更に、必要に応じて、可塑剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、抗菌剤、フィラー、他樹脂などの添加剤を使用することも可能である。特にゲル発生防止剤として、ハイドロタルサイト系化合物、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系熱安定剤、高級脂肪族カルボン酸の金属塩を添加することもできる。
【0024】
また、EVOHとして、異なる2種以上のEVOHを用いることも可能で、このときは、エチレン含有量が5モル%以上異なり、及び/又はケン化度が1モル%以上異なるEVOHのブレンド物を用いることにより、ガスバリヤー性を保持したまま、更に高延伸時の延伸性、真空圧空成形や深絞り成形などの2次加工性が向上するので有用である。
【0025】
かくして得られたEVOH樹脂組成物は、成形物の用途に多用され、溶融成形等によりペレット、フィルム、シート、容器、繊維、棒、管、各種成形品等に成形され、又、これらの粉砕品(回収品を再使用する時など)やペレットを用いて再び溶融成形に供することもでき、かかる溶融成形方法としては、押出成形法(T−ダイ押出、インフレーション押出、ブロー成形、溶融紡糸、異型押出等)、射出成形法が主として採用される。溶融成形温度は、150〜300℃の範囲から選ぶことが多い。
【0026】
また、本発明で得られたEVOH組成物は、単層として用いることができるが、前述のように、特に積層体用途に供した時に本発明の作用効果を十分に発揮することができ、具体的には該EVOH組成物からなる層の少なくとも片面に熱可塑性樹脂層等を積層して多層積層体として用いることが有用である。
【0027】
該積層体を製造するに当たっては、該EVOH組成物の層の片面又は両面に他の基材を積層するのであるが、積層方法としては、例えば該EVOH組成物のフィルムやシートに熱可塑性樹脂を溶融押出する方法、逆に熱可塑性樹脂等の基材に該EVOH組成物を溶融押出する方法、該EVOH組成物と他の熱可塑性樹脂とを共押出する方法、更には本発明で得られたEVOH組成物のフィルムやシートと他の基材のフィルム、シートとを有機チタン化合物、イソシアネート化合物、ポリエステル系化合物、ポリウレタン化合物等の公知の接着剤を用いてドライラミネートする方法等が挙げられる。
【0028】
共押出の場合の相手側樹脂としては直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体、ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンの単独又は共重合体、或いはこれらのオレフィンの単独又は共重合体を不飽和カルボン酸又はそのエステルでグラフト変性したものなどの広義のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル、ポリアミド、共重合ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、ポリスチレン、ビニルエステル系樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等が挙げられる。EVOHも共押出可能である。上記のなかでも、共押出製膜の容易さ、フィルム物性(特に強度)の実用性の点から、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、PETが好ましく用いられる。
【0029】
更に、本発明で得られるEVOH組成物から一旦フィルムやシート等の成形物を得、これに他の基材を押出コートしたり、他の基材のフィルム、シート等を接着剤を用いてラミネートする場合、前記の熱可塑性樹脂以外に任意の基材(紙、金属箔、一軸又は二軸延伸プラスチックフィルム又はシート、織布、不織布、金属綿状、木質等)が使用可能である。
【0030】
積層体の層構成は、本発明で得られたEVOH組成物の層をa(a1、a2、・・・)、他の基材、例えば熱可塑性樹脂層をb(b1、b2、・・・)とするとき、フィルム、シート、ボトル状であれば、a/bの二層構造のみならず、b/a/b、a/b/a、a1/a2/b、a/b1/b2、b2/b1/a/b1/b2等任意の組み合わせが可能であり、フィラメント状ではa、bがバイメタル型、芯(a)−鞘(b)型、芯(b)−鞘(a)型、或いは偏心芯鞘型等任意の組み合わせが可能である。
【0031】
該積層体は、そのまま各種形状のものに使用されるが、更に該積層体の物性を改善するためには延伸処理を施すことも好ましく、かかる延伸については、一軸延伸、二軸延伸のいずれであってもよく、できるだけ高倍率の延伸を行ったほうが物性的に良好で、延伸時にピンホールやクラック、延伸ムラ、デラミ等の生じない延伸フィルムや延伸シート等が得られる。
【0032】
延伸方法としては、ロール延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法、延伸ブロー法等の他、深絞成形、真空成形等のうち延伸倍率の高いものも採用できる。二軸延伸の場合は同時二軸延伸方式、逐次二軸延伸方式のいずれの方式も採用できる。延伸温度は60〜170℃、好ましくは80〜160℃程度の範囲から選ばれる。
【0033】
延伸が終了した後、次いで熱固定を行う。熱固定は周知の手段で実施可能であり、上記延伸フィルムを緊張状態を保ちながら80〜170℃、好ましくは100〜160℃で2〜600秒間程度熱処理を行う。
【0034】
また、生肉、加工肉、チーズ等の熱収縮包装用途に用いる場合には、延伸後の熱固定は行わずに製品フィルムとし、上記の生肉、加工肉、チーズ等を該フィルムに収納した後、50〜130℃、好ましくは70〜120℃で、2〜300秒程度の熱処理を行って、該フィルムを熱収縮させて密着包装をする。
【0035】
かくして得られた積層体の形状としては任意のものであってよく、フィルム、シート、テープ、ボトル、パイプ、フィラメント、異型断面押出物等が例示される。又、得られる積層体は必要に応じ、熱処理、冷却処理、圧延処理、印刷処理、ドライラミネート処理、溶液又は溶融コート処理、製袋加工、深絞り加工、箱加工、チューブ加工、スプリット加工等を行うことができる。
【0036】
上記の如く得られたフィルム、シート或いは容器等は食品、医薬品、工業薬品、農薬等各種の包装材料として有用である。
【0037】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
尚、実施例中「部」、「%」とあるのは特に断りのない限り重量基準を示す。
【0038】
実施例1
含水率50%の多孔性のペレット状のEVOH[エチレン含有量35モル%、ケン化度99.5モル%]を0.1%のホウ酸水溶液に投入して、30℃で5時間撹拌した後、110℃で7.5時間乾燥を行って、含水率0.5%のEVOH組成物[ホウ素化合物含有量がEVOH100部に対してホウ素換算で0.04部、MI(210℃、荷重2160g)が4.1g/10分]を得た。
【0039】
次いで、得られたEVOH組成物100部を500部の水に投入して、35℃で1時間撹拌した後、85℃で2時間乾燥を行って目的とするEVOH組成物[含水率0.2%、ホウ素化合物含有量がEVOH100部に対してホウ素換算で0.039部、MI(210℃、荷重2160g)は4.2g/10分で、水に投入する前との比は1.02]を得た。
【0040】
得られたEVOH組成物をフィードブロック5層Tダイを備えた多層押出装置に供給して、ポリエチレン層(三菱化学社製『ノバテックLD LF525H』)/接着樹脂層(三菱化学社製『モディックAP240H』)/樹脂組成物層/接着樹脂層(同左)/ポリエチレン層(同左)の3種5層の多層積層体(厚みが50/10/20/10/50(μm))を得て、下記の要領で直径が0.1mm未満の微細なフィッシュアイの発生およびロングラン成形性の評価を行った。(フィッシュアイ)
【0041】
上記の成形直後のフィルム(10cm×10cm)について、直径が0.01〜0.1mm未満のフィッシュアイの発生状況を目視観察して、以下のとおり評価とした。
【0042】
◎ −−− 0〜 3個
○ −−− 4〜10個
△ −−− 11〜50個
× −−− 51個以上
(ロングラン成形性)
また、上記の成形を10日間連続に行って、その時の成形フィルムについて、同様にフィッシュアイの増加状況を目視観察して、以下のとおり評価した。
【0043】
○ −−− 増加は認められなかった
△ −−− 若干の増加が認められた
× −−− 著しい増加が認められた
実施例2
含水率55%の多孔性のペレット状のEVOH[エチレン含有量40モル%、ケン化度99.0モル%]を0.06%のリン酸二水素マグネシウム水溶液に投入して、35℃で4時間撹拌した後、105℃で10時間乾燥を行って、含水率0.8%のEVOH組成物[リン酸化合物含有量がEVOH100部に対してリン酸根換算で0.012部、MI(210℃、荷重2160g)が6.4g/10分]を得た。
【0044】
次いで、得られたEVOH組成物100部を350部の水に投入して、30℃で0.5時間撹拌した後、90℃で1時間乾燥を行って目的とするEVOH組成物[含水率0.3%、リン酸化合物含有量がEVOH100部に対してリン酸根換算で0.010部、MI(210℃、荷重2160g)は5.8g/10分で、水に投入する前との比は0.91]を得た。
【0045】
得られたEVOH組成物について、実施例1と同様に評価を行った。
【0046】
実施例3
含水率50%の多孔性のペレット状のEVOH[エチレン含有量35モル%、ケン化度99.5モル%]を0.03%のホウ酸及び0.007%のリン酸二水素カルシウムを含有する水溶液に投入して、35℃で5時間撹拌した後、120℃で9時間乾燥を行って、含水率0.15%のEVOH組成物[ホウ素化合物含有量がEVOH100部に対してホウ素換算で0.017部、リン酸化合物含有量がEVOH100部に対してリン酸根換算で0.006部、MI(210℃、荷重2160g)が8.7g/10分]を得た。
【0047】
次いで、得られたEVOH組成物100部を600部の水に投入して、25℃で5時間撹拌した後、90℃で2時間乾燥を行って目的とするEVOH組成物[含水率0.13%、ホウ素化合物含有量がEVOH100部に対してホウ素換算で0.015部、リン酸化合物含有量がEVOH100部に対してリン酸根換算で0.0055部、MI(210℃、荷重2160g)は8.9g/10分で、水に投入する前との比は1.02]を得た。
【0048】
得られたEVOH組成物について、実施例1と同様に評価を行った。
【0049】
実施例4
実施例1において、水との接触条件を、EVOH組成物100部を500部の水に投入して、25℃で12時間撹拌した後、90℃で1時間乾燥した以外は同様に行って目的とするEVOH組成物[含水率0.4%、ホウ素化合物含有量がEVOH100部に対してホウ素換算で0.038部、MI(210℃、荷重2160g)は4.5g/10分で、水に投入する前との比は1.10]を得て同様に評価を行った。
【0050】
比較例1
実施例1において、110℃で12時間乾燥を行った含水率0.1%のペレット状EVOH組成物を用いて、水に投入することなくEVOH組成物を得て同様に評価を行った。
【0051】
比較例2
実施例1において、乾燥条件を150℃で48時間として、含水率0.0008%のペレット状EVOH組成物を用いた以外は同様に行ってEVOH組成物を得て同様に評価を行った。
【0052】
比較例3
実施例1において、乾燥条件を90℃で24時間として、含水率5%のペレット状EVOH組成物を用いた以外は同様に行ってEVOH組成物を得て同様に評価を行った。
【0053】
実施例、比較例のそれぞれの評価結果を表1にまとめて示す。
【0054】
【表1】
【0055】
【発明の効果】
本発明の方法で得られたEVOH組成物は、多層積層体としたとき直径が0.1mm未満の微細なフィッシュアイの発生がなく、かつロングラン成形性にも優れ、各種の積層体とすることができ、食品や医薬品、農薬品、工業薬品包装用のフィルム、シート、チューブ、袋、容器等の用途に非常に有用で、延伸を伴う二次加工製品等にも好適に用いることができる。
Claims (2)
- エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物をホウ酸またはその金属塩、リン酸二水素マグネシウム、リン酸二水素カルシウムから選ばれる少なくとも1種の水溶液と接触させてホウ酸またはその金属塩、リン酸二水素マグネシウム、リン酸二水素カルシウムの少なくとも1種を含有させた後、含水率0.001〜2重量%に乾燥させてから水と接触させることを特徴とするエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物組成物の製造法。
- 水と接触させる前と後のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物組成物のメルトフローインデックス(MI)比が0.1〜10であることを特徴とする請求項1記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物組成物の製造法。
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