JP3995899B2 - プラントの制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラントの制御装置に関し、特にプラントをモデル化した制御対象モデルのモデルパラメータを同定しつつ、そのモデルパラメータを用いてプラントを制御するものに関する。
【0002】
【従来の技術】
制御対象であるプラントをモデル化し、その制御対象モデルのモデルパラメータをパラメータ調整機構により算出し、このモデルパラメータを用いる適応制御器により、内燃機関に供給する混合気の空燃比を目標空燃比にフィードバック制御する空燃比制御装置が従来より知られている(例えば特開平11−73206号公報)。
この制御装置では、モデルパラメータの初期値に、モデルパラメータの同定誤差に応じて算出される更新成分を加算することにより、モデルパラメータが算出される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、モデルパラメータの初期値はプラントへの制御入力を算出する時点におけるプラントの状態量とは無関係に設定されるため、比較的短時間のうちにプラントの特性が変化する場合に、モデルパラメータが最適値に収束するまでの時間が長くなり、十分な制御性能を得られないことがあった。
【0004】
本発明はこの点に着目してなされたものであり、比較的短時間のうちにプラントの特性が変化する場合においても、モデルパラメータを迅速に最適値に収束させ、良好な制御性を維持することができるプラントの制御装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、プラントをモデル化した制御対象モデルのモデルパラメータ(θ)を、前記プラントの操作量及び制御量に基づいて同定する同定手段と、該同定手段により同定されたモデルパラメータを用いて前記プラントを制御する制御手段とを備えたプラントの制御装置において、前記同定手段は、前記プラントの制御量を示す出力パラメータ(DTH,DV1)と前記モデルパラメータ(θ)の基準値となる基準モデルパラメータ(θbase)とが関連付けられたテーブルから、前記出力パラメータ(DTH,DV1)に応じて基準モデルパラメータ(θbase)を検索する検索手段と、前記モデルパラメータの同定誤差(ide)を算出する同定誤差算出手段と、該同定誤差を用いて予め設定された演算式に従い前記モデルパラメータの更新成分(dθ)を算出する更新成分算出手段とを有し、該更新成分を前記基準モデルパラメータに加算することにより、前記モデルパラメータを算出することを特徴とする。
【0006】
この構成によれば、モデルパラメータの同定誤差に応じて更新成分が算出され、プラントの制御量を示す出力パラメータに応じてテーブルから検索される基準モデルパラメータに更新成分を加算することにより、モデルパラメータが算出されるので、常に変化するプラントの制御量に応じた基準モデルパラメータを補正する形でモデルパラメータが算出され、従来の手法に比べて迅速に最適値に収束させることが可能となる。
【0008】
請求項に記載の発明は、請求項1に記載のプラントの制御装置において、前記制御手段は、スライディングモード制御により前記プラントを制御するものであることを特徴とする。
この構成によれば、ロバスト性を有するスライディングモード制御により、プラントが制御されるので、外乱や制御対象モデルのモデル化誤差(実際のプラントの特性と、モデル化した制御対象モデルの特性との差)、あるいは制御対象のむだ時間の存在下においても、良好な制御性を得ることができる。
【0009】
請求項に記載の発明は、請求項に記載のプラントの制御装置において、前記制御手段による前記プラントへの制御入力は、適応則入力を含むことを特徴とする。
この構成によれば、プラントへの制御入力は適応則入力を含むので、外乱やモデル化誤差があっても、良好な制御性を実現することができる。
【0010】
請求項に記載の発明は、請求項1からの何れか1項に記載のプラントの制御装置において、前記プラントは、内燃機関のスロットル弁と、該スロットル弁を駆動する駆動手段とを有するスロットル弁駆動装置を含み、前記制御手段は、前記スロットル弁の開度を目標開度に一致させるように、前記スロットル弁駆動装置への制御入力を決定するパラメータを算出することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、同定手段により同定されたモデルパラメータを用いて、スロットル弁開度を目標開度に一致させる制御が行われるので、スロットル弁開度の目標開度への制御性を向上させることができる。
請求項5に記載の発明は、請求項1から4の何れか1項に記載のプラントの制御装置において、前記更新成分算出手段は、前記同定誤差算出手段により算出される同定誤差と、前記更新成分の過去値とを用い、且つ前記過去値の少なくとも1つの要素には0より大きく且つ1より小さい係数を乗算して、前記更新成分を算出することを特徴とする。
この構成によれば、過去の同定誤差の影響が徐々に減少し、モデルパラメータのドリフトを防止することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態にかかるスロットル弁制御装置の構成を示す図である。内燃機関(以下「エンジン」という)1の吸気通路2には、スロットル弁3が設けられている。スロットル弁3には、該スロットル弁3を閉弁方向に付勢する第1付勢手段としてのリターンスプリング4と、該スロットル弁3を開弁方向に付勢する第2付勢手段としての弾性部材5とが取り付けられている。またスロットル弁3は、駆動手段としてのモータ6によりギヤ(図示せず)を介して駆動できるように構成されている。モータ6による駆動力がスロットル弁3に加えられない状態では、スロットル弁3の開度THは、リターンスプリング4の付勢力と、弾性部材5の付勢力とが釣り合うデフォルト開度THDEF(例えば5度)に保持される。
【0013】
モータ6は、電子制御ユニット(以下「ECU」という)7に接続されており、その作動がECU7により制御される。スロットル弁3には、スロットル弁開度THを検出するスロットル弁開度センサ8が設けられており、その検出信号は、ECU7に供給される。
【0014】
またECU7には、エンジン1が搭載された車両の運転者の要求出力を検出するアクセルペダルの踏み込み量ACCを検出するアクセルセンサ9が接続されており、その検出信号がECU7に供給される。
ECU7は、スロットル弁開度センサ8及びアクセルセンサ9の検出信号が供給される入力回路、入力信号をディジタル信号に変換するAD変換回路、各種演算処理を実行する中央演算ユニット(CPU)、CPUが実行するプログラムやプログラムで参照されるマップやテーブルなどを格納するメモリ、及びモータ6に駆動電流を供給する出力回路を備えている。ECU7は、アクセルペダルの踏み込み量ACCに応じてスロットル弁3の目標開度THRを決定し、検出したスロットル弁開度THが目標開度THRと一致するようにモータ6の制御量DUTを決定し、制御量DUTに応じた電気信号をモータ6に供給する。
【0015】
本実施形態では、スロットル弁3、リターンスプリング4、弾性部材5及びモータ6からなるスロットル弁駆動装置10を制御対象とし、該制御対象に対する入力をモータ6に印加する電気信号のデューティ比DUTとし、制御対象の出力をスロットル弁開度センサ8により検出されるスロットル弁開度THとする。
【0016】
スロットル弁駆動装置10の応答周波数特性を実測すると、図2に実線で示すゲイン特性及び位相特性が得られる。そこで、下記式(1)で定義されるモデルを制御対象モデルとして設定した。このモデルの応答周波数特性は、図2に破線で示すようになり、スロットル弁駆動装置10の特性に近似していることが確認されている。
Figure 0003995899
ここで、kは離散化された時間を表すパラメータであり、DTH(k)は下記式(2)により定義されるスロットル弁開度偏差量である。
DTH(k)=TH(k)−THDEF (2)
ここで、THは検出したスロットル弁開度、THDEFは前記デフォルト開度である。
また式(1)のa1,a2,b1,c1は、制御対象モデルの特性を決めるモデルパラメータであり、dはむだ時間である。
【0017】
上記式(1)で定義されるモデルは、適応制御の適用を容易にするために採用した、離散時間系のDARXモデル(delayed autoregressive model with exogeneous input:外部入力を持つ自己回帰モデル)である。
式(1)においては、出力の偏差量DTHに関わるモデルパラメータa1,a2、入力のデューティ比DUTに関わるモデルパラメータb1の他に、入出力に関わらないモデルパラメータc1が設定されている。このモデルパラメータc1は、デフォルト開度THDEFのずれやスロットル弁駆動装置に加わる外乱を示すパラメータである。すなわち、モデルパラメータ同定器により、モデルパラメータa1,a2,a3と同時にモデルパラメータc1を同定することにより、デフォルト開度ずれや外乱を同定できるようにしている。
【0018】
図3は、ECU7により実現されるスロットル弁制御装置の機能ブロック図であり、この制御装置は、適応スライディングモードコントローラ21と、モデルパラメータ同定器22と、むだ時間dが経過した後の予測スロットル弁開度偏差量(以下「予測偏差量」という)PREDTH(k)(=DTH(k+d))を算出する状態予測器23と、アクセルペダル踏み込み量ACCに応じてスロットル弁3の目標開度THRを設定する目標開度設定部24とからなる。
【0019】
適応スライディングモードコントローラ21は、検出したスロットル弁開度THが目標開度THRと一致するように、適応スライディングモード制御によりデューティ比DUTを算出し、該算出したデューティ比DUTを出力する。
適応スライディングモードコントローラ21を用いることにより、スロットル弁開度THの目標開度THRへの追従応答特性を、所定のパラメータ(VPOLE)を用いて適宜変更することが可能となり、その結果スロットル弁3を開弁位置から全閉位置に移動させる際の衝撃(スロットル全閉ストッパへの衝突)の回避、及びアクセル操作に対するエンジンレスポンスの可変化が可能となる。また、モデルパラメータの誤差に対する安定性を確保することが可能となる。
【0020】
モデルパラメータ同定器22は、修正モデルパラメータベクトルθL(θLT=[a1,a2,b1,c1])を算出し、適応スライディングモードコントローラ21に供給する。より具体的には、モデルパラメータ同定器22は、スロットル弁開度TH及びデューティ比DUTに基づいて、モデルパラメータベクトルθを算出する。さらに、そのモデルパラメータベクトルθに対してリミット処理を行うことにより修正モデルパラメータベクトルθLを算出し、該修正モデルパラメータベクトルθLを適応スライディングモードコントローラ21に供給する。このようにしてスロットル弁開度THを目標開度THRに追従させるために最適なモデルパラメータa1,a2,b1が得られ、さらに外乱及びデフォルト開度THDEFのずれを示すモデルパラメータc1が得られる。
【0021】
リアルタイムでモデルパラメータを同定するモデルパラメータ同定器22を用いることにより、エンジン運転条件の変化への適応、ハードウエアの特性ばらつきの補償、電源電圧変動の補償、及びハードウエア特性の経年変化への適応が可能となる。
【0022】
状態予測器23は、スロットル弁開度TH及びデューティ比DUTに基づいて、むだ時間d後のスロットル弁開度TH(予測値)、より具体的には予測偏差量PREDTHを算出し、適応スライディングモードコントローラ21に供給する。予測偏差量PREDTHを用いることにより、制御対象のむだ時間に対する制御系のロバスト性を確保し、特にむだ時間が大きいデフォルト開度THDEF近傍での制御性を向上させることができる。
【0023】
次に適応スライディングモードコントローラ21の動作原理を説明する。
先ず下記式(3)により、目標値DTHR(k)を目標開度THR(k)とデフォルト開度THDEFとの偏差量として定義する。
DTHR(k)=THR(k)−THDEF (3)
ここで、スロットル弁開度偏差量DTHと、目標値DTHRとの偏差e(k)を下記式(4)で定義すると、適応スライディングモードコントローラの切換関数値σ(k)は、下記式(5)にように設定される。
Figure 0003995899
ここで、VPOLEは、−1より大きく1より小さい値に設定される切換関数設定パラメータである。
【0024】
縦軸を偏差e(k)とし、横軸を前回偏差e(k-1)として定義される位相平面上では、σ(k)=0を満たす偏差e(k)と、前回偏差e(k-1)との組み合わせは、直線となるので、この直線は一般に切換直線と呼ばれる。スライディングモード制御は、この切換直線上の偏差e(k)の振る舞いに着目した制御であり、切換関数値σ(k)が0となるように、すなわち偏差e(k)と前回偏差e(k-1)の組み合わせが位相平面上の切換直線上に載るように制御を行い、外乱やモデル化誤差(実際のプラントの特性と、モデル化した制御対象モデルの特性との差)に対してロバストな制御を実現し、スロットル弁開度偏差量DTHを目標値DTHRに追従させるものである。
【0025】
また式(5)の切換関数設定パラメータVPOLEの値を変更することにより、図4に示すように、偏差e(k)の減衰特性、すなわちスロットル弁開度偏差量DTHの目標値DTHRへの追従特性を変更することができる。具体的には、VPOLE=−1とすると、全く追従しない特性となり、切換関数設定パラメータVPOLEの絶対値を小さくするほど、追従速度を速めることができる。
【0026】
スロットル弁制御装置においては、下記要求A1及びA2が満たされることが求められる。
A1)スロットル弁3を全閉位置に移動させる際にスロットル全閉ストッパへの衝突を回避すること
A2)デフォルト開度THDEF近傍における非線形特性(リターンスプリング4の付勢力と弾性部材5の付勢力とが釣り合うことに起因する弾性特性の変化、モータ6とスロットル弁3と間に介装されたギヤのバックラッシ、デューティ比DUTの変化してもスロットル弁開度が変化しない不感帯)に対する制御性を向上させること
そのため、スロットル弁の全閉位置近傍では、偏差e(k)の収束速度を低下させ、またデフォルト開度THDEFの近傍では、収束速度を高める必要がある。
【0027】
スライディングモード制御によれば、切換関数設定パラメータVPOLEを変更することにより、容易に収束速度を変更できるので、本実施形態では、スロットル弁開度TH及び目標値DTHRの変化量DDTHR(=DTHR(k)−DTHR(k-1))に応じて、切換関数設定パラメータVPOLEを設定するようにした。これにより、上記要求A1及びA2を満たすことができる。
【0028】
上述したようにスライディングモード制御では、偏差e(k)と前回偏差e(k-1)の組み合わせ(以下「偏差状態量」という)を切換直線上に拘束することにより、偏差e(k)を指定した収束速度で、かつ外乱やモデル化誤差に対してロバストに、0に収束させる。したがって、スライディングモード制御では、如何にして偏差状態量を切換直線に載せ、そこに拘束するかが重要となる。
【0029】
そのような観点から、制御対象への入力(コントローラの出力)DUT(k)(Usl(k)とも表記する)は、下記式(6)に示すように、等価制御入力Ueq(k)、到達則入力Urch(k)及び適応則入力Uadp(k)の和として構成される。
Figure 0003995899
【0030】
等価制御入力Ueq(k)は、偏差状態量を切換直線上に拘束するための入力であり、到達則入力Urch(k)は、偏差状態量を切換直線上へ載せるための入力であり、適応則入力Uadp(k)は、モデル化誤差や外乱の影響を抑制し、偏差状態量を切換直線へ載せるための入力である。以下各入力Ueq(k),Urch(k)及びUadp(k)の算出方法を説明する。
【0031】
等価制御入力Ueq(k)は、偏差状態量を切換直線上に拘束するための入力であるから、満たすべき条件は下記式(7)で与えられる。
σ(k)=σ(k+1) (7)
式(1)並びに式(4)及び(5)を用いて式(7)を満たすデューティ比DUT(k)を求めると、下記式(9)が得られ、これが等価制御入力Ueq(k)となる。さらに、到達則入力Urch(k)及び適応則入力Uadp(k)を、それぞれ下記式(10)及び(11)により定義する。
【数1】
Figure 0003995899
【0032】
ここで、F及びGは、それぞれ到達則制御ゲイン及び適応則制御ゲインであり、以下に述べるように設定される。またΔTは、制御周期である。
上記式(9)の演算には、むだ時間d経過後のスロットル弁開度偏差量DTH(k+d)及び対応する目標値DTHR(k+d+1)が必要である。そこで、むだ時間d経過後のスロットル弁開度偏差量DTH(k+d)として、状態予測器23により算出される予測偏差量PREDTH(k)を用い、目標値DTHR(k+d+1)として、最新の目標値DTHRを用いることとする。
【0033】
次に到達則入力Urch及び適応則入力Uadpにより、偏差状態量が安定に切換直線上に載せられるように、到達則制御ゲインF及び適応則制御ゲインGの決定を行う。
具体的には外乱V(k)を想定し、外乱V(k)に対して切換関数値σ(k)が安定であるための条件を求めることにより、ゲインF及びGの設定条件を求める。その結果、ゲインF及びGの組み合わせが、下記式(12)〜(14)を満たすこと、換言すれば図5にハッチングを付して示す領域内にあることが安定条件として得られた。
【0034】
F>0 (12)
G>0 (13)
F<2−(ΔT/2)G (14)
以上のように、式(9)〜(11)により、等価制御入力Ueq(k)、到達則入力Urch(k)及び適応則入力Uadp(k)を算出し、それらの入力の総和として、デューティ比DUT(k)を算出することができる。
【0035】
モデルパラメータ同定器22は、前述したように制御対象の入力(DUT(k))及び出力(TH(k))に基づいて、制御対象モデルのモデルパラメータベクトルを算出する。具体的には、モデルパラメータ同定器22は、下記式(15)による逐次型同定アルゴリズム(一般化逐次型最小2乗法アルゴリズム)により、モデルパラメータベクトルθ(k)を算出する。
θ(k)=θ(k-1)+KP(k)ide(k) (15)
θ(k)T=[a1’,a2’,b1’,c1’] (16)
【0036】
ここで、a1’,a2’,b1’及びC1’は、後述するリミット処理を実施する前のモデルパラメータである。またide(k)は、下記式(17)、(18)及び(19)により定義される同定誤差である。DTHHAT(k)は、最新のモデルパラメータベクトルθ(k-1)を用いて算出される、スロットル弁開度偏差量DTH(k)の推定値(以下「推定スロットル弁開度偏差量」という)である。KP(k)は、下記式(20)により定義されるゲイン係数ベクトルである。また、式(20)のP(k)は、下記式(21)により算出される4次の正方行列である。
【数2】
Figure 0003995899
【数3】
Figure 0003995899
【0037】
式(21)の係数λ1,λ2の設定により、式(15)〜(21)による同定アルゴリズムは、以下のような4つの同定アルゴリズムのいずれかになる。
λ1=1,λ2=0 固定ゲインアルゴリズム
λ1=1,λ2=1 最小2乗法アルゴリズム
λ1=1,λ2=λ 漸減ゲインアルゴリズム(λは0,1以外の所定値)
λ1=λ,λ2=1 重み付き最小2乗法アルゴリズム(λは0,1以外の所定値)
【0038】
一方本実施形態では、下記B1)、B2)、B3)の要求を満たすことが求められる。
B1)準静的動特性変化及びハードウエアの特性ばらつきに対する適応
「準静的動特性変化」とは、例えば電源電圧の変動やハードウエアの経年劣化といった変化速度の遅い特性変化を意味する。
B2)動的な動特性変化への適応
具体的には、スロットル弁開度THの変化に対応する動特性変化への適応を意味する。
B3)モデルパラメータのドリフト防止
モデルパラメータに反映すべきでない制御対象の非線形特性などに起因する同定誤差の影響によって、モデルパラメータの絶対値が増大するような不具合を防止する。
【0039】
先ず上記B1)及びB2)の要求を満たすために、係数λ1及びλ2をそれぞれ所定値λ及び「0」に設定することにより、重み付き最小2乗法アルゴリズムを採用する。
次にモデルパラメータのドリフトについて説明する。図6に示すように、モデルパラメータがある程度収束した後に、スロットル弁の摩擦特性などの非線形特性によって生じる残留同定誤差が存在したり、平均値がゼロでない外乱が定常的に加わるような場合には、残留同定誤差が蓄積し、モデルパラメータのドリフトを引き起こす。
【0040】
このような残留同定誤差は、モデルパラメータの値に反映すべきものではないので、図7(a)に示すような不感帯関数Fnlを用いて不感帯処理を行う。具体的には、下記式(23)により、修正同定誤差idenl(k)を算出し、この修正同定誤差idenl(k)を用いてモデルパラメータベクトルθ(k)の算出を行う。すなわち、上記式(15)に代えて下記式(15a)を用いる。これにより、上記要求B3)を満たすことができる。
idenl(k)=Fnl(ide(k)) (23)
θ(k)=θ(k-1)+KP(k)idenl(k) (15a)
【0041】
なお、不感帯関数Fnlは、図7(a)に示すものに限るものではなく、例えば同図(b)に示すような不連続不感帯関数、または同図(c)に示すような不完全不感帯関数を用いてもよい。ただし、不完全不感帯関数を用いた場合には、ドリフトを完全に防止することはできない。
【0042】
また、残留同定誤差は、スロットル弁開度THの変動量に応じてその振幅が変化する。そこで、本実施形態では、図7に示す不感帯の幅を定義する不感帯幅パラメータEIDNRLMTを、下記式(24)により算出される、目標スロットル弁開度THRの変化量の二乗平均値DDTHRSQAに応じて設定する(具体的には、二乗平均値DDTHRSQAが増加するほど、不感帯幅パラメータEIDNRLMTが増加するように設定する)ようにしている。これにより、モデルパラメータの値に反映させるべき同定誤差を、残留同定誤差として無視してしまうことを防止することができる。式(24)のDDTHRは、目標スロットル弁開度THRの変化量であり、下記式(25)により算出される。
【数4】
Figure 0003995899
【0043】
ここで、スロットル弁開度偏差量DTHは目標値DTHRへ適応スライディングモードコントローラ21により制御されているため、同様に式(25)の目標値DTHRをスロットル弁開度偏差量DTHへ変更し、スロットル弁開度偏差量DTHの変化量DDTHを算出し、式(24)のDDTHRをDDTHに代えて得られる二乗平均値DDTHRSQAにより不感帯幅パラメータEIDNRLMTを変更することもできる。
【0044】
また制御系のロバスト性をさらに高めるためには、適応スライディングモードコントローラ21をより安定化させることが有効である。そこで本実施形態では、前記式(15)により算出されたモデルパラメータベクトルθ(k)の各要素a1’,a2’,b1’及びc1’についてリミット処理を施し、修正モデルパラメータベクトルθL(k)(θL(k)T=[a1,a2,b1,c1])を算出する。そして、適応スライディングモードコントローラ21は、修正モデルパラメータベクトルθL(k)を用いて、スライディングモード制御を実行する。なおリミット処理の詳細については、フローチャートを参照して後述する。
【0045】
次に状態予測器23による予測偏差量PREDTHの算出方法を説明する。
先ず下記式(26)〜(29)により、マトリクスA及びBと、ベクトルX(k)及びU(k)を定義する。
【数5】
Figure 0003995899
これらのマトリクスA,Bと、ベクトルX(k),U(k)を用いて、制御対象モデルを定義する前記式(1)を書き直すと、下記式(30)が得られる。
X(k+1)=AX(k)+BU(k-d) (30)
【0046】
式(30)からX(k+d)を求めると、下記式(31)が得られる。
【数6】
Figure 0003995899
ここで、リミット処理前のモデルパラメータa1’,a2’,b1’及びc1’を用いてマトリクスA’及びB’を下記式(32)及び(33)により定義すると、予測ベクトルXHAT(k+d)は、下記式(34)で与えられる。
【数7】
Figure 0003995899
【0047】
予測ベクトルXHAT(k+d)の第1行の要素であるDTHHAT(k+d)が、予測偏差量PREDTH(k)であり、下記式(35)で与えられる。
Figure 0003995899
ここで、α1はマトリクスA’dの1行1列要素、α2はマトリクスA’dの1行2列要素、βiはマトリクスA’d-iB’の1行1列要素、γiはマトリクスA’d-iB’の1行2列要素である。
【0048】
式(35)により算出される予測偏差量PREDTH(k)を、前記式(9)に適用し、さらに目標値DTHR(k+d+1),DTHR(k+d),及びDTHR(k+d-1)をそれぞれDTHR(k),DTHR(k-1),及びDTHR(k-2)に置き換えることにより、下記式(9a)が得られる。式(9a)により、等価制御入力Ueq(k)を算出する。
【数8】
Figure 0003995899
【0049】
また、式(35)により算出される予測偏差量PREDTH(k)を用いて、下記式(36)により予測切替関数値σpre(k)を定義し、到達則入力Urch(k)及び適応則入力Uadp(k)を、それぞれ下記式(10a)及び(11a)により算出する。
Figure 0003995899
【数9】
Figure 0003995899
【0050】
次にモデルパラメータc1’は、前述したように、デフォルト開度THDEFのずれ及び外乱を示すパラメータである。したがって、図8に示すように、外乱によって変動するが、デフォルト開度ずれは比較的短い期間内でみればほぼ一定とみなせる。そこで、本実施形態では、モデルパラメータc1’を統計処理し、その変動の中心値をデフォルト開度ずれthdefadpとして算出し、スロットル弁開度偏差量DTH及び目標値DTHRの算出に用いることとした。
【0051】
統計処理の手法には、一般に最小2乗法が知られているが、この最小2乗法による統計処理は、通常、ある一定期間内のデータ、すなわち同定されたモデルパラメータc1’をすべてメモリに格納しておき、ある時点で一括演算を行うことによって実行される。ところが、この一括演算法では、すべてのデータを格納するために膨大な容量のメモリが必要となり、さらに逆行列演算が必要となって演算量の増大を招く。
【0052】
そこで本実施形態では、前記式(15)〜(21)で示される適応制御の逐次型最小2乗法アルゴリズムを、統計処理に応用し、モデルパラメータc1の最小2乗中心値を、デフォルト開度ずれthdefadpとして算出するようにしている。
【0053】
具体的には、前記式(15)〜(21)のθ(k)及びθ(k)Tをthdefadpに置換し、ζ(k)及びζ(k)Tを「1」に置換し、ide(k)をec1(k)に置換し、KP(k)をKPTH(k)に置換し、P(k)をPTH(k)に置換し、λ1及びλ2をそれぞれλ1’及びλ2’に置換することにより、下記式(37)〜(40)を得る。
【数10】
Figure 0003995899
【0054】
係数λ1’及びλ2’の設定により、前述した4つのアルゴリズムの何れかを選択可能であるが、式(39)においては、係数λ1’を0または1以外の所定値に設定し、係数λ2’を1に設定することにより、重み付き最小2乗法を採用した。
【0055】
上記式(37)〜(40)の演算においては、記憶すべき値はthdefadp(k+1)及びPTH(k+1)のみであり、また逆行列演算は不要である。したがって、逐次型最小2乗法アルゴリズムを採用することにより、一般的な最小2乗法の欠点を克服しつつ、最小2乗法によるモデルパラメータc1の統計処理を行うことができる。
【0056】
統計処理の結果得られるデフォルト開度ずれthdefadpは、前記式(2)及び(3)に適用され、式(2)及び(3)に代えて下記式(41)及び(42)により、スロットル弁開度偏差量DTH(k)及び目標値DTHR(k)が算出される。
DTH(k)=TH(k)−THDEF+thdefadp (41)
DTHR(k)=THR(k)−THDEF+thdefadp (42)
【0057】
式(41)及び(42)を使用することにより、デフォルト開度THDEFが、ハードウエアの特性ばらつき、あるいは経時変化により、設計値からずれた場合でも、そのずれを補償して正確な制御を行うことができる。
【0058】
次に上述した適応スライディングモードコントローラ21、モデルパラメータ同定器22及び状態予測器23の機能を実現するための、ECU7のCPUにおける演算処理を説明する。
【0059】
図9は、スロットル弁開度制御の全体フローチャートであり、この処理は所定時間(例えば2msec)毎にECU7のCPUで実行される。
ステップS11では、図10に示す状態変数設定処理を実行する。すなわち、式(41)及び(42)の演算を実行し、スロットル弁開度偏差量DTH(k)及び目標値DTHR(k)を算出する(図10,ステップS21及びS22)。なお、今回値であることを示す(k)は、省略して示す場合がある。
【0060】
ステップS12では、図11に示すモデルパラメータ同定器の演算、すなわち前記式(15a)によるモデルパラメータベクトルθ(k)の算出処理を実行し、さらにリミット処理を実行して修正モデルパラメータベクトルθL(k)を算出する。
【0061】
続くステップS13では、図21に示す状態予測器の演算を実行し、予測偏差量PREDTH(k)を算出する。
次いでステップS12で算出した修正モデルパラメータベクトルθL(k)を用いて、図22に示す制御入力Usl(k)の演算処理を実行する(ステップS14)。すなわち、等価制御入力Ueq、到達則入力Urch(k)及び適応則入力Uadp(k)を算出し、それらの入力の総和として、制御入力Usl(k)(=デューティ比DUT(k))を算出する。
【0062】
続くステップS16では、図29に示すスライディングモードコントローラの安定判別処理を実行する。すなわち、リアプノフ関数の微分値に基づく安定判別を行い、安定判別フラグFSMCSTABの設定を行う。この安定判別フラグFSMCSTABは、「1」に設定されると適応スライディングモードコントローラ21が不安定となっていることを示す。安定判別フラグFSMCSTABが「1」に設定され、適応スライディングモードコントローラ21が不安定となったときは、切換関数設定パラメータVPOLEを安定化所定値XPOLESTBに設定する(図24、ステップS231,S232参照)とともに、等価制御入力Ueqを「0」とし、到達則入力Urch及び適応則入力Uadpのみによる制御に切り換えることにより、制御の安定化を図る(図22、ステップS206,S208参照)。適応スライディングモードコントローラ21が不安定となったときは、さらに到達則入力Urch及び適応則入力Uadpの算出式を変更する。すなわち、到達則制御ゲインF及び適応則制御ゲインGの値を、コントローラ21を安定化させる値に変更するとともに、モデルパラメータb1を使用しないで、到達則入力Urch及び適応則入力Uadpを算出する(図27,28参照)。以上のような安定化処理により、適応スライディングモードコントローラ21の不安定状態を早期に終息させ、安定な状態に戻すことができる。
ステップS17では、図30に示すthdefadp算出処理を実行し、デフォルト開度ずれthdefadpを算出する。
【0063】
図11は、モデルパラメータ同定器22の演算処理のフローチャートである。
ステップS31では、式(20)によりゲイン係数ベクトルKP(k)を算出し、次いで式(18)により推定スロットル弁開度偏差量DTHHAT(k)を算出する(ステップS32)。ステップS33では、図12に示すidenl(k)の演算処理を実行し、ステップS32で算出した推定スロットル弁開度偏差量DTHHAT(k)を、式(17)に適用して同定誤差ide(k)を算出するとともに、図7(a)に示す関数を用いた不感帯処理を行い、修正同定誤差idenlを算出する。
【0064】
続くステップS34では、式(15a)により、モデルパラメータベクトルθ(k)を算出し、次いでモデルパラメータベクトルθ(k)の安定化処理を実行する(ステップS35)。すなわち各モデルパラメータのリミット処理を行って修正モデルパラメータベクトルθL(k)を算出する。
【0065】
図12は、図11のステップS33で実行されるidenl(k)演算処理のフローチャートである。
ステップS51では、式(17)により同定誤差ide(k)を算出する。次いで、ステップS53でインクリメントされるカウンタCNTIDSTの値が、制御対象のむだ時間dに応じて設定される所定値XCNTIDST(例えば、むだ時間d=2に対応して、「3」に設定される)より大きいか否かを判別する(ステップS52)。カウンタCNTIDSTの初期値は「0」であるので、最初はステップS53に進み、カウンタCNTIDSTを「1」だけインクリメントし、同定誤差ide(k)を「0」に設定して(ステップS54)、ステップS55に進む。モデルパラメータベクトルθ(k)の同定を開始した直後は、式(17)による演算で正しい同定誤差が得られないので、ステップS52〜S54により、式(17)による演算結果を用いずに同定誤差ide(k)を「0」に設定するようにしている。
【0066】
ステップS52の答が肯定(YES)となると、直ちにステップS55に進む。
ステップS55では、同定誤差ide(k)のローパスフィルタ処理を行う。具体的には、ローパス特性を有する制御対象のモデルパラメータを同定する場合、最小2乗同定アルゴリズムの同定誤差ide(k)に対する同定重みは、図13(a)に実線L1で示すような周波数特性を有するが、これをローパスフィルタ処理により、破線L2で示すように高周波成分を減衰させた特性とする。これは、以下の理由による。
【0067】
実際の制御対象及びこれをモデル化した制御対象モデルの周波数特性は、それぞれ図13(b)に実線L3及びL4で示すようになる。すなわち、ローパス特性(高周波成分が減衰する特性)を有する制御対象について、モデルパラメータ同定器22によりモデルパラメータを同定すると、同定されたモデルパラメータは高周波域阻止特性に大きく影響されたものとなるため、低周波域での制御対象モデルのゲインが実際の特性より低くなる。その結果、スライディングモードコントローラ21による制御入力の補正が過補正となる。
【0068】
そこで、ローパスフィルタ処理により同定アルゴリズムの重みの周波数特性を、図13(a)に破線L2で示すような特性とすることにより、制御対象モデルの周波数特性を、同図(b)に破線L5で示すような特性とし、実際の周波数特性と一致させ、あるいは制御対象モデルのゲインが実際のゲインよりやや高くなるように修正することとした。これにより、コントローラ21による過補正を防止し、制御系のロバスト性を高めて制御系をより安定化させることができる。
【0069】
なお、ローパスフィルタ処理は、同定誤差の過去値ide(k-i)(例えばi=1〜10に対応する10個の過去値)をリングバッファに記憶し、それらの過去値に重み係数を乗算して加算することにより実行する。
さらに、同定誤差ide(k)は、前記式(17)、(18)及び(19)を用いて算出しているため、スロットル弁開度偏差量DTH(k)と、推定スロットル弁開度偏差量DTHHAT(k)とに同様のローパスフィルタ処理を行うこと、あるいは、スロットル弁開度偏差量DTH(k-1)及びDTH(k-2)と、デューティ比DUT(k-d-1)とに同様のローパスフィルタ処理を行うことによっても同様の効果が得られる。
【0070】
図12に戻り、続くステップS56では、図14に示す不感帯処理を実行する。図14のステップS61では、前記式(24)において例えばn=5として、目標スロットル弁開度THRの変化量の二乗平均値DDTHRSQAを算出し、次いで二乗平均値DDTHRSQAに応じて図15に示すEIDNRLMTテーブルを検索し、不感帯幅パラメータEIDNRLMTを算出する(ステップS62)。
【0071】
ステップS63では、同定誤差ide(k)が不感帯幅パラメータEIDNRLMTより大きいか否かを判別し、ide(k)>EIDNRLMTであるときは、下記式(43)により、修正同定誤差idenl(k)算出する(ステップS67)。
idenl(k)=ide(k)−EIDNRLMT (43)
【0072】
ステップS63の答が否定(NO)であるときは、さらに同定誤差ide(k)が不感帯幅パラメータEIDNRLMTに負号を付した値より小さいか否かを判別し(ステップS64)、ide(k)<−EIDNRLMTであるときは、下記式(44)により、修正同定誤差idenl(k)算出する(ステップS65)。
idenl(k)=ide(k)+EIDNRLMT (44)
また同定誤差ide(k)が±EIDNRLMTの範囲内にあるときは、修正同定誤差idenl(k)を「0」とする(ステップS66)。
【0073】
図16は、図11のステップS35で実行されるθ(k)の安定化処理のフローチャートである。
ステップS71では、この処理で使用されるフラグFA1STAB,FA2STAB,FB1LMT及びFC1LMTをそれぞれ「0」に設定することにより、初期化を行う。そして、ステップS72では、図17に示すa1’及びa2’のリミット処理を実行し、ステップS73では、図19に示すb1’のリミット処理を実行し、ステップS74では、図20に示すc1’のリミット処理を実行する。
【0074】
図17は、図16のステップS72で実行されるa1’及びa2’のリミット処理のフローチャートである。図18は、図17の処理を説明するための図であり、図17とともに参照する。
【0075】
図18においては、リミット処理が必要なモデルパラメータa1’とa2’の組み合わせが「×」で示され、また安定なモデルパラメータa1’及びa2’の組み合わせの範囲がハッチングを付した領域(以下「安定領域」という)で示されている。図17の処理は、安定領域外にあるモデルパラメータa1’及びa2’の組み合わせを、安定領域内(「○」で示す位置)に移動させる処理である。
【0076】
ステップS81では、モデルパラメータa2’が、所定a2下限値XIDA2L以上か否かを判別する。所定a2下限値XIDA2Lは、「−1」より大きい負の値に設定される。所定a2下限値XIDA2Lは、「−1」に設定しても、安定な修正モデルパラメータa1,a2が得られるが、前記式(26)で定義される行列Aのn乗が不安定となる(これは、a1’及びa2’が発散はしないが振動することを意味する)場合があるので、「−1」より大きな値に設定される。
【0077】
ステップS81でa2’<XIDA2Lであるときは、修正モデルパラメータa2を、この下限値XIDA2Lに設定するとともに、a2安定化フラグFA2STABを「1」に設定する。a2安定化フラグFA2STABは「1」に設定されると、修正モデルパラメータa2を下限値XIDA2Lに設定したことを示す。図18においては、ステップS81及びS82のリミット処理P1によるモデルパラメータの修正が、「P1」を付した矢線(矢印を付した線)で示されている。
【0078】
ステップS81の答が肯定(YES)、すなわちa2’≧XIDA2Lであるときは、修正モデルパラメータa2はモデルパラメータa2’に設定される(ステップS83)。
ステップS84及びステップS85では、モデルパラメータa1’が、所定a1下限値XIDA1Lと所定a1上限値XIDA1Hできまる範囲内にあるか否かを判別する。所定a1下限値XIDA1Lは、−2以上且つ0より小さい値に設定され、所定a1上限値XIDA1Hは、例えば2に設定される。
【0079】
ステップS84及びS85の答がいずれも肯定(YES)であるとき、すなわちXIDA1L≦a1’≦XIDA1Hであるときは、修正モデルパラメータa1はモデルパラメータa1’に設定される(ステップS88)。
一方a1’<XIDA1Lであるときは、修正モデルパラメータa1を下限値XIDA1Lに設定するとともに、a1安定化フラグFA1STABを「1」に設定する(ステップS84,S86)。またa1’>XIDA1Hであるときは、修正モデルパラメータa1を上限値XIDA1Hに設定するとともに、a1安定化フラグFA1STABを「1」に設定する(ステップS85,S87)。a1安定化フラグFA1STABは、「1」に設定されると、修正モデルパラメータa1を下限値XIDA1Lまたは上限値XIDA1Hに設定したことを示す。図18においては、ステップS84〜S87のリミット処理P2によるモデルパラメータの修正が、「P2」を付した矢線で示されている。
【0080】
ステップS90では、修正モデルパラメータa1の絶対値と修正モデルパラメータa2の和が、所定安定判定値XA2STAB以下であるか否かを判別する。所定安定判定値XA2STABは、「1」に近く「1」より小さい値(例えば0.99)に設定される。
【0081】
図18に示す直線L1及びL2は、下記式(45)を満たす直線である。
a2+|a1|=XA2STAB (45)
したがって、ステップS90は、修正モデルパラメータa1及びa2の組み合わせが、図18に示す直線L1及びL2の線上またはその下側にあるか否かを判別している。ステップS90の答が肯定(YES)であるときは、修正モデルパラメータa1及びa2の組み合わせは、図18の安定領域内にあるので、直ちに本処理を終了する。
【0082】
一方ステップS90の答が否定(NO)であるときは、修正モデルパラメータa1が、所定安定判定値XA2STABから所定a2下限値XIDA2Lを減算した値(XIDA2L<0であるので、XA2STAB−XIDA2L>XA2STABが成立する)以下か否かを判別する(ステップS91)。そして修正モデルパラメータa1が(XA2STAB−XIDA2L)以下であるときは、修正モデルパラメータa2を(XA2STAB−|a1|)に設定するとともに、a2安定化フラグFA2STABを「1」に設定する(ステップS92)。
【0083】
ステップS91で修正モデルパラメータa1が(XA2STAB−XIDA2L)より大きいときは、修正モデルパラメータa1を(XA2STAB−XIDA2L)に設定し、修正モデルパラメータa2を所定a2下限値XIDA2Lに設定するとともに、a1安定化フラグFA1STAB及びa2安定化フラグFA2STABをともに「1」に設定する(ステップS93)。
【0084】
図18においては、ステップS91及びS92のリミット処理P3によるモデルパラメータの修正が、「P3」を付した矢線で示されており、またステップS91及びS93のリミット処理P4によるモデルパラメータの修正が、「P4」を付した矢線で示されている。
【0085】
以上のように図17の処理により、モデルパラメータa1’及びa2’が図18に示す安定領域内に入るようにリミット処理が実行され、修正モデルパラメータa1及びa2が算出される。
【0086】
図19は、図16のステップS73で実行されるb1’のリミット処理のフローチャートである。
ステップS101及びS102では、モデルパラメータb1’が、所定b1下限値XIDB1Lと所定b1上限値XIDB1Hできまる範囲内にあるか否かを判別する。所定b1下限値XIDB1Lは、正の所定値(例えば0.1)に設定され、所定b1上限値XIDB1Hは、例えば「1」に設定される。
【0087】
ステップS101及びS102の答がいずれも肯定(YES)であるとき、すなわちXIDB1L≦b1’≦XIDB1Hであるときは、修正モデルパラメータb1はモデルパラメータb1’に設定される(ステップS105)。
一方b1’<XIDB1Lであるときは、修正モデルパラメータb1を下限値XIDB1Lに設定するとともに、b1リミットフラグFB1LMTを「1」に設定する(ステップS101,S104)。またb1’>XIDB1Hであるときは、修正モデルパラメータb1を上限値XIDB1Hに設定するとともに、b1リミットフラグFB1LMTを「1」に設定する(ステップS102,S103)。b1リミットフラグFB1LMTは、「1」に設定されると、修正モデルパラメータb1を下限値XIDB1Lまたは上限値XIDB1Hに設定したことを示す。
【0088】
図20は、図16のステップS74で実行されるモデルパラメータc1’のリミット処理のフローチャートである。
ステップS111及びS112では、モデルパラメータc1’が、所定c1下限値XIDC1Lと所定c1上限値XIDC1Hできまる範囲内にあるか否かを判別する。所定c1下限値XIDC1Lは、例えば−60に設定され、所定c1上限値XIDC1Hは、例えば60に設定される。
【0089】
ステップS111及びS112の答がいずれも肯定(YES)であるとき、すなわちXIDC1L≦c1’≦XIDC1Hであるときは、修正モデルパラメータc1はモデルパラメータc1’に設定される(ステップS115)。
一方c1’<XIDC1Lであるときは、修正モデルパラメータc1を下限値XIDC1Lに設定するとともに、c1リミットフラグFC1LMTを「1」に設定する(ステップS111,S114)。またc1’>XIDC1Hであるときは、修正モデルパラメータc1を上限値XIDC1Hに設定するとともに、c1リミットフラグFC1LMTを「1」に設定する(ステップS112,S113)。c1リミットフラグFC1LMTは、「1」に設定されると、修正モデルパラメータc1を下限値XIDC1Lまたは上限値XIDC1Hに設定したことを示す。
【0090】
図21は、図9のステップS13で実行される状態予測器の演算処理のフローチャートである。
ステップS121では、マトリクス演算を実行して前記式(35)の行列要素α1,α2,β1〜β2、及びγ1〜γdを算出する。
ステップS122では、式(35)により、予測偏差量PREDTH(k)を算出する。
【0091】
図22は、図9のステップS14で実行される、スロットル弁駆動装置10への制御入力Usl(=DUT)を算出する処理のフローチャートである。
ステップS201では、図23に示す予測切換関数値σpreの演算処理を実行し、ステップS202では、図26に示す予測切換関数値σpreの積算値の演算処理を実行する。ステップS203では、前記式(9)により、等価制御入力Ueqを算出する。ステップS204では、図27に示す到達則入力Urchの演算処理を実行し、ステップS205では、図28に示す適応則入力Uadpの演算処理を実行する。
【0092】
ステップS206では、後述する図29の処理で設定される安定判別フラグFSMCSTABが「1」であるか否かを判別する。安定判別フラグFSMCSTABは、「1」に設定されると、適応スライディングモードコントローラ21が不安定となっていることを示す。
【0093】
ステップS206でFSMCSTAB=0であって適応スライディングモードコントローラ21が安定であるときは、ステップS203〜S205で算出された制御入力Ueq,Urch及びUadpを加算することにより、制御入力Uslを算出する(ステップS207)。
【0094】
一方FSMCSTAB=1であって適応スライディングモードコントローラ21が不安定となっているときは、到達則入力Urch及び適応則入力Uadpの和を、制御入力Uslとして算出する。すなわち、等価制御入力Ueqを、制御入力Uslの算出に使用しないようにする。これにより、制御系が不安定化することを防止することができる。
【0095】
続くステップS209及びS210では、算出した制御入力Uslが所定上下限値XUSLH及びXUSLLの範囲内にあるか否かを判別し、制御入力Uslが所定上下限値の範囲内にあるときは、直ちに本処理を終了する。一方、制御入力Uslが所定下限値XUSLL以下であるときは、制御入力Uslを所定下限値XUSLLに設定し(ステップS209,S212)、制御入力Uslが所定上限値XUSLH以上であるときは、制御入力Uslを所定上限値XUSLHに設定する(ステップS210,S211)。
【0096】
図23は、図22のステップS201で実行される予測切換関数値σpreの演算処理のフローチャートである。
ステップS221では、図24に示す切換関数設定パラメータVPOLEの演算処理を実行し、次いで前記式(36)により、予測切換関数値σpre(k)の演算を実行する(ステップS222)。
【0097】
続くステップS223及びS224では、算出した予測切換関数値σpre(k)が所定上下限値XSGMH及びXSGMLの範囲内にあるか否かを判別し、予測切換関数値σpre(k)が所定上下限値の範囲内にあるときは、直ちに本処理を終了する。一方、予測切換関数値σpre(k)が所定下限値XSGML以下であるときは、予測切換関数値σpre(k)を所定下限値XSGMLに設定し(ステップS223,S225)、予測切換関数値σpre(k)が所定上限値XSGMH以上であるときは、予測切換関数値σpre(k)を所定上限値XSGMHに設定する(ステップS224,S226)。
【0098】
図24は、図23のステップS221で実行される切換関数設定パラメータVPOLEの演算処理のフローチャートである。
ステップS231では、安定判別フラグFSMCSTABが「1」であるか否かを判別し、FSMCSTAB=1であって適応スライディングモードコントローラ21が不安定となっているときは、切換関数設定パラメータVPOLEを安定化所定値XPOLESTBに設定する(ステップS232)。安定化所定値XPOLESTBは、「−1」より大きく「−1」に非常に近い値(例えば−0.999)に設定される。
【0099】
FSMCSTAB=0であって適応スライディングモードコントローラ21が安定であるときは、下記式(46)により目標値DTHR(k)の変化量DDTHR(k)を算出する(ステップS233)。
DDTHR(k)=DTHR(k)−DTHR(k-1) (46)
ステップS234では、スロットル弁開度偏差量DTH及びステップS233で算出される目標値の変化量DDTHRに応じてVPOLEマップを検索し、切換関数設定パラメータVPOLEを算出する。VPOLEマップは、図25(a)に示すように、スロットル弁開度偏差量DTHが0近傍の値をとるとき(スロットル弁開度THがデフォルト開度THDEF近傍の値をとるとき)増加し、0近傍以外の値ではスロットル弁開度偏差量DTHの変化に対してはほぼ一定の値となるように設定されている。またVPOLEマップは、同図(b)に実線で示すように、目標値の変化量DDTHRが増加するほど、VPOLE値が増加するように設定されているが、スロットル弁開度偏差量DTHが0近傍の値をとるときには、同図に破線で示すように目標値の変化量DDTHRが0近傍の値をとるときに増加するように設定されている。
【0100】
すなわち、スロットル弁開度の目標値DTHRが減少方向の変化が大きいときには、切換関数設定パラメータVPOLEは比較的小さな値に設定される。これにより、スロットル弁3がスロットル全閉ストッパに衝突することを防止することができる。また、デフォルト開度THDEF近傍においては、切換関数設定パラメータVPOLEが比較的大きな値に設定され、デフォルト開度THDEF近傍における制御性を向上させることができる。
【0101】
なお、同図(c)に示すように、スロットル弁開度THが全閉開度近傍または全開開度近傍にあるときは、切換関数設定パラメータVPOLEを減少させるように設定してもよい。これにより、スロットル弁開度THが全閉開度近傍または全開開度近傍にあるときは、目標開度THRに対する追従速度が遅くなり、スロットル弁3の全閉ストッパ(全開開度でもストッパとして機能する)への衝突防止をより確実にすることができる。
【0102】
続くステップS235及びS236では、算出した切換関数設定パラメータVPOLEが所定上下限値XPOLEH及びXPOLELの範囲内にあるか否かを判別し、切換関数設定パラメータVPOLEが所定上下限値の範囲内にあるときは、直ちに本処理を終了する。一方、切換関数設定パラメータVPOLEが所定下限値XPOLEL以下であるときは、切換関数設定パラメータVPOLEを所定下限値XPOLELに設定し(ステップS235,S237)、切換関数設定パラメータVPOLEが所定上限値XPOLEH以上であるときは、切換関数設定パラメータVPOLEを所定上限値XPOLEHに設定する(ステップS236,S238)。
【0103】
図26は、図22のステップS202で実行される、予測切換関数値σpreの積算値SUMSIGMAを算出する処理のフローチャートである。積算値SUMSIGMAは、後述する図28の処理で適応則入力Uadpの算出に使用される(前記式(11a)参照)。
【0104】
ステップS241では、下記式(47)により、積算値SUMSIGMAを算出する。下記式のΔTは、演算の実行周期である。
SUMSIGMA(k)=SUMSIGMA(k-1)+σpre×ΔT (47)
続くステップS242及びS243では、算出した積算値SUMSIGMAが所定上下限値XSUMSH及びXSUMSLの範囲内にあるか否かを判別し、積算値SUMSIGMAが所定上下限値の範囲内にあるときは、直ちに本処理を終了する。一方、積算値SUMSIGMAが所定下限値XSUMSL以下であるときは、積算値SUMSIGMAを所定下限値XSUMSLに設定し(ステップS242,S244)、積算値SUMSIGMAが所定上限値XSUMSH以上であるときは、積算値SUMSIGMAを所定上限値XSUMSHに設定する(ステップS243,S245)。
【0105】
図27は、図22のステップS204で実行される到達則入力Urchの演算処理のフローチャートである。
ステップS261では、安定判別フラグFSMCSTABが「1」であるか否かを判別する。安定判別フラグFSMCSTABが「0」であって適応スライディングモードコントローラ21が安定であるときは、制御ゲインFを所定通常ゲインXKRCHに設定し(ステップS262)、下記式(48)(前記式(10a)と同一の式)により、到達則入力Urchを算出する(ステップS263)。
Urch=−F×σpre/b1 (48)
【0106】
一方安定判別フラグFSMCSTABが「1」であって適応スライディングモードコントローラ21が不安定となったときは、制御ゲインFを、所定安定化ゲインXKRCHSTBに設定し(ステップS264)、モデルパラメータb1を使わない下記式(49)により到達則入力Urchを算出する(ステップS265)。
Urch=−F×σpre (49)
【0107】
続くステップS266及びS267では、算出した到達則入力Urchが所定上下限値XURCHH及びXURCHLの範囲内にあるか否かを判別し、到達則入力Urchが所定上下限値の範囲内にあるときは、直ちに本処理を終了する。一方、到達則入力Urchが所定下限値XURCHL以下であるときは、到達則入力Urchを所定下限値XURCHLに設定し(ステップS266,S268)、到達則入力Urchが所定上限値XURCHH以上であるときは、到達則入力Urchを所定上限値XURCHHに設定する(ステップS267,S269)。
【0108】
このように適応スライディングモードコントローラ21が不安定となったときは、制御ゲインFを所定安定化ゲインXKRCHSTBに設定するとともに、モデルパラメータb1を使用しないで到達則入力Urchを算出することにより、適応モデルパラメータコントローラ21を安定な状態に戻すことができる。モデルパラメータ同定器22による同定が不安定となった場合に、適応スライディングモードコントローラ21が不安定となるので、不安定となったモデルパラメータb1を使わないことによって、適応スライディングモードコントローラ21を安定化することができる。
【0109】
図28は、図22のステップS205で実行される適応則入力Uadpの演算処理のフローチャートである。
ステップS271では、安定判別フラグFSMCSTABが「1」であるか否かを判別する。安定判別フラグFSMCSTABが「0」であって適応スライディングモードコントローラ21が安定であるときは、制御ゲインGを所定通常ゲインXKADPに設定し(ステップS272)、下記式(50)(前記式(11a)に対応する式)により、適応則入力Uadpを算出する(ステップS273)。
Uadp=−G×SUMSIGMA/b1 (50)
【0110】
一方安定判別フラグFSMCSTABが「1」であって適応スライディングモードコントローラ21が不安定となったときは、制御ゲインGを、所定安定化ゲインXKADPSTBに設定し(ステップS274)、モデルパラメータb1を使わない下記式(51)により適応則入力Uadpを算出する(ステップS275)。
Uadp=−G×SUMSIGMA (51)
【0111】
このように適応スライディングモードコントローラ21が不安定となったときは、制御ゲインGを所定安定化ゲインXKADPSTBに設定するとともに、モデルパラメータb1を使用しないで適応則入力Uadpを算出することにより、適応モデルパラメータコントローラ21を安定な状態に戻すことができる。
【0112】
図29は、図9のステップS16で実行されるスライディングモードコントローラの安定判別処理のフローチャートである。この処理では、リアプノフ関数の微分項に基づく安定判別を行い、安定判別フラグFSMCSTABの設定を行う。
【0113】
ステップS281では下記式(52)により、切換関数変化量Dσpreを算出し、次いで下記式(53)により、安定性判別パラメータSGMSTABを算出する(ステップS282)。
Dσpre=σpre(k)−σpre(k-1) (52)
SGMSTAB=Dσpre×σpre(k) (53)
ステップS283では、安定性判別パラメータSGMSTABが安定性判定閾値XSGMSTAB以下か否かを判別し、SGMSTAB>XSGMSTABであるときは、コントローラ21が不安定である可能性があると判定して不安定検知カウンタCNTSMCSTを「1」だけインクリメントする(ステップS285)。また、SGMSTAB≦XSGMSTABであるときは、コントローラ21が安定であると判定して不安定検知カウンタCNTSMCSTのカウント値をインクリメントすることなく保持する(ステップS284)。
【0114】
ステップS286では、不安定検知カウンタCNTSMCSTの値が所定カウント値XSSTAB以下か否かを判別する。CNTSMCST≦XSSTABであるときは、コントローラ21は安定していると判定し、第1判定フラグFSMCSTAB1を「0」に設定する(ステップS287)。一方CNTSMCST>XSSTABであるときは、コントローラ21は不安定となっていると判定し、第1判定フラグFSMCSTAB1を「1」に設定する(ステップS288)。なお、不安定検知カウンタCNTSMCSTは、イグニッションスイッチオン時にそのカウント値が「0」に初期化される。
【0115】
続くステップS289では、安定判別期間カウンタCNTJUDSTを「1」だけデクリメントし、次いでその安定判別期間カウンタCNTJUDSTの値が「0」であるか否かを判別する(ステップS290)。安定判別期間カウンタCNTJUDSTは、イグニッションスイッチオン時に所定判別カウント値XCJUDSTに初期化される。したがって、最初はステップS290の答は否定(NO)となり、直ちにステップS295に進む。
【0116】
その後安定判別期間カウンタCNTJUDSTが「0」となると、ステップS290からステップS291に進み、第1判定フラグFSMCSTAB1が「1」であるか否かを判別する。そして、第1判定フラグFSMCSTAB1が「0」であるときは、第2判定フラグFSMCSTAB2を「0」に設定し(ステップS293)、第1判定フラグFSMCSTAB1が「1」であるときは、第2判定フラグFSMCSTAB2を「1」に設定する(ステップS292)。
【0117】
続くステップS294では、安定判別期間カウンタCNTJUDSTの値を所定判別カウント値XCJUDSTに設定するとともに、不安定検知カウンタCNTSMCSTの値を「0」に設定し、ステップS295に進む。
ステップS295では、安定判別フラグFSMCSTABを、第1判定フラグFSMCSTAB1と第2判定フラグFSMCSTAB2の論理和に設定する。第2判定フラグFSMCSTAB2は、ステップS286の答が肯定(YES)となり、第1判定フラグFSMCSTAB1が「0」に設定されても、安定判別期間カウンタCNTJUDSTの値が「0」となるまでは、「1」に維持される。したがって、安定判別フラグFSMCSTABも、安定判別期間カウンタCNTJUDSTの値が「0」となるまでは、「1」に維持される。
【0118】
図30は、図9のステップS17で実行されるデフォルト開度ずれthdefadpの算出処理のフローチャートである。
ステップS251では、下記式(54)により、ゲイン係数KPTH(k)を算出する。
KPTH(k)=PTH(k-1)/(1+PTH(k-1)) (54)
【0119】
ここでPTH(k-1)は、本処理の前回実行時にステップS253で算出されたゲインパラメータである。
ステップS252では、図11に示すモデルパラメータ同定器演算処理で算出されるモデルパラメータC1’及びステップS251で算出したゲイン係数KPTH(k)を下記式(55)に適用し、デフォルト開度ずれthdefadp(k)を算出する。
Figure 0003995899
【0120】
ステップS253では、下記式(56)によりゲインパラメータPTH(k)を算出する。
Figure 0003995899
式(56)は、前記式(39)においてλ1’及びλ2’を、それぞれ所定値XDEFADPW及び「1」に設定したものである。
図30の処理により、モデルパラメータc1’が逐次型重み付き最小2乗法により統計処理され、デフォルト開度ずれthdefadpが算出される。
【0121】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、制御対象モデルをむだ時間dを含む式(1)を用いて定義し、状態予測器23を用いて、むだ時間d経過後の予測偏差量PREDTHを算出することにより、むだ時間を含む制御対象モデルの制御を行っている。そのため、状態予測器23に対応した演算をCPUで実行する必要があり、CPUの演算量が大きくなる。そこで、本実施形態では、CPUに加わる演算負荷の軽減を図るべく、むだ時間dを「0」とした下記式(1a)により制御対象モデルを定義し、むだ時間dを「0」とすることに起因するモデル化誤差は、適応スライディングモード制御のロバスト性によって補償している。
Figure 0003995899
【0122】
CPUの演算負荷をさらに軽減するために、モデルパラメータの同定アルゴリズムとして、固定ゲインアルゴリズムを採用している。
また、より一層の制御の安定化を図るべく、モデルパラメータのドリフトを防止する手法として、不感帯処理に変わる他の手法を採用している。
以下本実施形態を、第1の実施形態と異なる点を中心として詳細に説明する。以下に述べる点以外は、第1の実施形態と同一である。
【0123】
図31は、ECU7により実現されるスロットル弁制御装置の機能ブロック図であり、この制御装置は、適応スライディングモードコントローラ21aと、モデルパラメータ同定器22aと、モデルパラメータスケジューラ25と、アクセルペダル踏み込み量ACCに応じてスロットル弁3の目標開度THRを設定する目標開度設定部24とからなる。
【0124】
適応スライディングモードコントローラ21aには、予測偏差量PREDTHではなく、検出したスロットル弁開度THが入力され、このスロットル弁開度THが目標開度THRと一致するように、適応スライディングモード制御によりデューティ比DUTが算出される。
【0125】
適応スライディングモードコントローラ21aを用いることにより、第1の実施形態で説明した効果と同様の効果が得られ、また制御対象のむだ時間に対する制御系のロバスト性を確保することができる。したがって、むだ時間dを「0」とすることに起因するモデル化誤差を補償することができる。
【0126】
モデルパラメータ同定器22aは、第1の実施形態とは異なる手法で、修正モデルパラメータベクトルθL(θLT=[a1,a2,b1,c1])を算出し、適応スライディングモードコントローラ21aに供給する。より具体的には、モデルパラメータ同定器22aは、モデルパラメータスケジューラ25から供給される基準モデルパラメータベクトルθbaseを、スロットル弁開度TH及びデューティ比DUTに基づいて補正することにより、モデルパラメータベクトルθを算出する。さらに、そのモデルパラメータベクトルθに対してリミット処理を行うことにより修正モデルパラメータベクトルθLを算出し、該修正モデルパラメータベクトルθLを適応スライディングモードコントローラ21aに供給する。このようにしてスロットル弁開度THを目標開度THRに追従させるために最適なモデルパラメータa1,a2,b1が得られ、さらに外乱及びデフォルト開度THDEFのずれを示すモデルパラメータc1が得られる。
【0127】
モデルパラメータスケジューラ25は、スロットル弁開度偏差量DTHに応じて、基準モデルパラメータベクトルθbase(θbaseT=[a1base,a2base,b1base,c1base])を算出し、モデルパラメータ同定器22aに供給する。
【0128】
本実施形態では、前記式(1a)により制御対象モデルを定義しているので、適応スライディングモードコントローラ21aは、等価制御入力Ueq、到達則入力Urch及び適応則入力Uadpを、前記式(9a),(10a),(11a)に代えて、下記式(9b),(10b),(11b)により算出する。
【数11】
Figure 0003995899
【0129】
式(9b)〜(11b)は、前記式(9)〜(11)のむだ時間dを「0」とすることにより得られる。
モデルパラメータ同定器22aは、前述したように制御対象の入力(DUT(k))及び出力(TH(k))に基づいて、制御対象モデルのモデルパラメータベクトルを算出する。具体的には、モデルパラメータ同定器22aは、下記式(15)(再掲)により、モデルパラメータベクトルθ(k)を算出する。
θ(k)=θ(k-1)+KP(k)ide(k) (15)
【0130】
式(15)の同定誤差ide(k)は、下記式(17)(再掲)、(18)(再掲)及び(19a)により定義される。式(19a)は、前記式(19)のむだ時間dを「0」としたものである。ゲイン係数ベクトルKP(k)は、下記式(20)(再掲)により定義され、式(20)の正方行列P(k)は、下記式(21)(再掲)により算出される
【数12】
Figure 0003995899
【数13】
Figure 0003995899
本実施形態では、第1の実施形態と同様に下記要求B1〜Bを満たすことに加えて、さらに下記要求B4及びB5を満たすことが求められる。
【0131】
B1)準静的動特性変化及びハードウエアの特性ばらつきに対する適応
「準静的動特性変化」とは、例えば電源電圧の変動やハードウエアの経年劣化といった変化速度の遅い特性変化である。
B2)動的な動特性変化への適応
具体的には、スロットル弁開度THの変化に対応する動特性変化への適応を意味する。
B3)モデルパラメータのドリフト防止
モデルパラメータに反映すべきでない制御対象の非線形特性などに起因する同定誤差の影響によって、モデルパラメータの絶対値が増大するような不具合を防止する。
B4)ECUの演算能力とマッチング
具体的には、演算量をより低減させることが求められる。
B5)モデルパラメータ(制御性能)の安定化
具体的は、同定されるモデルパラメータのばらつきを極力抑制することが求められる。
【0132】
先ず要求B4を満たすために、係数λ1及びλ2をそれぞれ1,0に設定することにより、固定ゲインアルゴリズムを採用する。これによって、正方行列P(k)は一定となるため、式(21)の演算を省略することができ、演算量を大幅に低減できる。
【0133】
すなわち固定ゲインアルゴリズムを採用すると、式(20)は、下記式(20a)のように簡略化される。式(20a)においてPは、定数を対角要素とする正方行列である。
【数14】
Figure 0003995899
このように簡略化されたアルゴリズムによれば、演算量を削減できる。しかし、モデルパラメータベクトルθ(k)を算出する式(15)は、下記式(15b)のように書き直すことができ、同定誤差ide(k)の積分構造を有するため、モデルパラメータのドリフトが起き易い。
Figure 0003995899
ここで、θ(0)は、モデルパラメータの初期値を要素とする初期値ベクトルである。
【0134】
そこで本実施形態では、このようなモデルパラメータのドリフトを防止するために、モデルパラメータベクトルθ(k)を上記式(15b)に代えて、下記式(15c)により、算出するようにした。
Figure 0003995899
ここで、DELTAは下記式で示すように、忘却係数DELTAi(i=1〜4)を要素とする忘却係数ベクトルである。
DELTA=[DELTA1,DELTA2,DELTA3,DELTA4]
【0135】
忘却係数DELTAiは、0から1の間の値に設定され(0<DELTAi<1)、過去の同定誤差の影響を徐々に減少させる機能を有する。ただし、モデルパラメータb1の演算に係る係数DELTA3またはモデルパラメータc1の演算にかかる係数DELTA4の何れか一方は、「1」として、実質的に忘却係数が乗算されないようにする。このように、忘却係数ベクトルDELTAの要素の一部を「1」とすることにより、目標値DTHRと、スロットル弁開度偏差量DTHとの定常偏差が発生することを防止することができる。なお、係数DELTA3及びDELTA4をともに「1」とすると、モデルパラメータのドリフト防止効果が不十分となるので、何れか一方のみを「1」とすることが望ましい。
【0136】
式(15c)を漸化式形式に書き直すと、下記式(15d)(15e)が得られる。前記式(15)に代えて下記式(15d)及び(15e)を用いてモデルパラメータベクトルθ(k)を算出する手法を、以下δ修正法といい、式(15e)で定義されるdθ(k)を「更新ベクトル」という。
θ(k)=θ(0)+dθ(k) (15d)
dθ(k)=DELTA×dθ(k-1)+KP(k)ide(k) (15e)
【0137】
δ修正法を用いたアルゴリズムによれば、上記要求B3を満たすドリフト防止効果とともに、上記要求B5を満たすモデルパラメータの安定化効果も得られる。すなわち、初期値ベクトルθ(0)が常に保存され、更新ベクトルdθ(k)も忘却係数ベクトルDELTAの働きにより、その要素のとりうる値が制限されるので、各モデルパラメータを初期値近傍に安定させることができる。
【0138】
さらに実際の制御対象の入出力データに基づいた同定により更新ベクトルdθ(k)を調整しつつモデルパラメータを算出するので、実際の制御対象に適合したモデルパラメータを算出でき、上記要求B1も満たされる。
次に要求B2を満たすべく、本実施形態では上記式(15d)の初期値ベクトルθ(0)に代えて、基準モデルパラメータベクトルθbaseを用いる下記式(15f)により、モデルパラメータベクトルθ(k)を算出することとした。
θ(k)=θbase+dθ(k) (15f)
【0139】
基準モデルパラメータベクトルθbaseは、モデルパラメータスケジューラ25によりスロットル弁開度偏差量DTH(=TH−THDEF)に応じて設定されるので、スロットル弁開度THの変化に対応する動特性の変化に適応させることができ、上記要求B2を満たすことができる。
【0140】
以上のように本実施形態では、固定ゲインアルゴリズムを採用することにより、ECUの演算量の低減を図り(要求B4)、δ修正法を用いたアルゴリズムを採用することにより、準静的動特性変化及びハードウエアの特性ばらつきに対する適応(要求B1)、モデルパラメータ(制御性能)の安定化(要求B5)、及びモデルパラメータのドリフト防止(要求B3)を実現し、モデルパラメータスケジューラ25を採用することにより、スロットル弁開度THの変化に対応した動特性変化への適応(要求B2)を実現している。
【0141】
なお、式(15f)により算出されるモデルパラメータベクトルθ(k)の各要素a1’,a2’,b1’及びc1’についてリミット処理を施し、修正モデルパラメータベクトルθL(k)(θL(k)T=[a1,a2,b1,c1])を算出する点は、第1の実施形態と同様である。
【0142】
また、モデルパラメータc1’を統計処理し、その変動の中心値をデフォルト開度ずれthdefadpとして算出し、下記式(41)(42)(再掲)によりスロットル弁開度偏差量DTH及び目標値DTHRを算出する点も、第1の実施形態と同様である。
DTH(k)=TH(k)−THDEF+thdefadp (41)
DTHR(k)=THR(k)−THDEF+thdefadp (42)
【0143】
次に上述した適応スライディングモードコントローラ21a、モデルパラメータ同定器22a及びモデルパラメータスケジューラ25の機能を実現するための、ECU7のCPUにおける演算処理を説明する。
【0144】
図32は、スロットル弁開度制御の全体フローチャートである。この処理は、図9に示すスロットル弁開度制御処理のステップS13(状態予測器の演算)を削除し、ステップS12,S14及びS16を、それぞれステップS12a,14a及び16aに変更したものである。
【0145】
ステップS12aでは、図33に示すモデルパラメータ同定器の演算、すなわち前記式(15f)によるモデルパラメータベクトルθ(k)の算出処理を実行し、さらにリミット処理を実行して修正モデルパラメータベクトルθL(k)を算出する。
【0146】
ステップS14aでは、修正モデルパラメータベクトルθL(k)を用いて、図36に示す制御入力Usl(k)の演算処理を実行する。すなわち、前記式(9b)(10b)(11b)により、等価制御入力Ueq、到達則入力Urch(k)及び適応則入力Uadp(k)を算出し、それらの入力の総和として、制御入力Usl(k)(=デューティ比DUT(k))を算出する。
【0147】
ステップS16aでは、図41に示すスライディングモードコントローラの安定判別処理を実行する。すなわち、予測切換関数値σpreに代えて、切換関数値σを用いてスライディングモードコントローラの安定性判別を行い、安定判別フラグFSMCSTABの設定を行う。この安定判別フラグFSMCSTABは、「1」に設定されたときの処理は、第1の実施形態と同様である。
【0148】
図33は、モデルパラメータ同定器22aの演算処理のフローチャートである。この処理は、図11に示すモデルパラメータ同定器の演算処理のステップS31〜S34をそれぞれ、ステップS31a〜S34aに変更し、さらにステップS33b及びS33cを追加したものである。
【0149】
ステップS31aでは、式(20a)によりゲイン係数ベクトルKP(k)を算出し、次いで式(18)及び(19a)により推定スロットル弁開度偏差量DTHHAT(k)を算出する(ステップS32a)。
ステップS33aでは、図35に示すide(k)の演算処理を実行し、同定誤差ide(k)を算出する。ステップS33bでは、式(15e)により更新ベクトルdθ(k)を算出し、次いでスロットル弁開度偏差量DTHに応じて図34に示すθbaseテーブルを検索し、基準モデルパラメータベクトルθbaseを算出する(ステップS33c)。θbaseテーブルには、基準モデルパラメータa1base,a2base及びb1baseが設定されている。スロットル弁開度偏差量DTHが「0」近傍の値をとる(スロットル弁開度THが、デフォルト開度THDEF近傍である)とき、基準モデルパラメータa1base及びb1baseは減少し、基準モデルパラメータa2baseは増加するように設定されている。また、基準モデルパラメータc1baseは、「0」に設定される。
【0150】
ステップS34aでは、式(15f)によりモデルパラメータベクトルθ(k)を算出し、次いで第1の実施形態と同様に、モデルパラメータベクトルθ(k)の安定化処理を実行する(ステップS35)。すなわち各モデルパラメータのリミット処理を行って修正モデルパラメータベクトルθL(k)を算出する。
【0151】
図35は、図33のステップS33aで実行されるide(k)演算処理のフローチャートである。この処理は、図12のide(k)演算処理のステップS56(不感帯処理)を削除し、ステップS51をステップS51aに変更したものである。すなわち本実施形態では、δ修正法により、モデルパラメータのドリフトが防止されるので、不感帯処理は実行しない。
【0152】
また、ステップS51aでは、推定スロットル弁開度偏差量DTHHAT(k)を式(18)及び(19a)により算出し、この推定スロットル弁開度偏差量DTHHAT(k)を用いて同定誤差ide(k)を算出する。
本実施形態では、制御対象モデルのむだ時間dを「0」としているので、ステップS52の所定値XCNTIDSTは、例えば「2」に設定される。
【0153】
図36は、図32のステップS14aで実行される、スロットル弁駆動装置10への制御入力Usl(=DUT)を算出する処理のフローチャートである。この処理は、図22に示すUsl演算処理のステップS201〜S205を、それぞれステップS201a〜S205aに変更したものである。
【0154】
ステップS201aでは、図37に示す切換関数値σの演算処理を実行し、ステップS202aでは、図38に示す切換関数値σの積算値の演算処理を実行する。ステップS203aでは、前記式(9b)により、等価制御入力Ueqを算出する。ステップS204aでは、図39に示す到達則入力Urchの演算処理を実行し、ステップS205aでは、図40に示す適応則入力Uadpの演算処理を実行する。
【0155】
図37は、図36のステップS201aで実行される切換関数値σの演算処理のフローチャートである。この処理は、図23に示す予測切換関数値σpreの演算処理のステップS222〜S226を、それぞれステップS222a〜226aに変更したものである。
【0156】
ステップS222aでは、前記式(5)により、切換関数値σ(k)を算出する。続くステップS223a〜S226aは、図23のステップS223〜S226の「σpre」を「σ」に置き換えたものであり、切換関数値σ(k)に対して、図23の処理と同様のリミット処理を行う。
【0157】
図38は、図36のステップS202aで実行される、切換関数値σの積算値SUMSIGMAaを算出する処理のフローチャートである。この処理は、図26に示すσpreの積算値演算処理のステップS241〜S245を、それぞれステップS241a〜S245aに変更したものである。積算値SUMSIGMAaは、後述する図40の処理で適応則入力Uadpの算出に使用される(前記式(11b)参照)。
【0158】
ステップS241aでは、下記式(47a)により、積算値SUMSIGMAaを算出する。
SUMSIGMAa(k)=SUMSIGMAa(k-1)+σ×ΔT (47a)
続くステップS242a〜S245aでは、算出した積算値SUMSIGMAaに対して、図26の処理と同様のリミット処理を行う。
【0159】
図39は、図36のステップS204aで実行される到達則入力Urchの演算処理のフローチャートである。この処理は、図27に示す到達則入力Urch演算処理のステップS263及びS265をそれぞれステップS263a及びS265aに変更したものである。
【0160】
すなわち、本実施形態では、予測切換関数値σpreではなく、切換関数値σを用いて、適応スライディングモードコントローラ21aが安定してるときの到達則入力Urchの算出(ステップS263a)、及び適応スライディングモードコントローラ21aが不安定であるときの到達則入力Urchの算出(ステップS265a)を実行する。
【0161】
図40は、図36のステップS205aで実行される適応則入力Uadpの演算処理のフローチャートである。この処理は、図28に示す適応則入力Uadp演算処理のステップS273及びS275をそれぞれステップS273a及びS275aに変更したものである。
【0162】
すなわち、本実施形態では、切換関数値σの積算値SUMSIGUMAaを用いて、適応スライディングモードコントローラ21aが安定してるときの適応則入力Uadpの算出(ステップS273a)、及び適応スライディングモードコントローラ21aが不安定であるときの適応則入力Uadpの算出(ステップS275a)を実行する。
【0163】
図41は、図32のステップS16aで実行されるスライディングモードコントローラの安定判別処理のフローチャートである。この処理は、図29のステップS281及びS281をそれぞれステップS281a及びS282aに変更したものである。
【0164】
ステップS281aでは下記式(52a)により、切換関数変化量Dσを算出し、ステップS282aでは、下記式(53a)により、安定性判別パラメータSGMSTABを算出する。すなわち、予測切換関数値σpreではなく、切換関数値σに基づいて安定性判別を行う。
Dσ=σ(k)−σ(k-1) (52a)
SGMSTAB=Dσ×σ(k) (53a)
【0165】
本実施形態では、スロットル弁駆動装置10及びECU7の一部(モータ6に駆動電流を供給する出力回路)がプラントに相当し、図36の処理が制御手段に相当し、図33の処理が同定手段に相当し、図35の処理が同定誤差算出手段に相当し、図33のステップS33cが検索手段に相当し、図33のステップS33bが更新成分算出手段に相当する。
【0166】
(第3の実施形態)
図42は、本発明の第3の実施形態にかかる制御系の構成を示すブロック図である。
この制御系は、制御対象であるプラント101と、プラントの出力である混合液のpH(ペーハー)を検出するpHセンサ102と、pHセンサ出力V1OUTから第1基準値V1BASEを減算する減算器103と、制御目標値V1TARGETを生成する目標値生成部104と、第1操作量U1を決定する操作量決定部105と、第1操作量U1と第2基準値V2BASEとを加算し、第2操作量U2を出力する加算器106とからなる。
【0167】
減算器103、目標値生成部104、操作量決定部105及び加算器106は、具体的にはCPU、メモリ、入出力回路などからなる電子コントロールユニットにより構成される。
プラント101は、第2操作量U2に応じてアルカリ液の流量を制御する流量制御弁111と、流量制御弁111を介して供給されるアルカリ液と、酸性液とを攪拌する攪拌器112とからなる。プラント101は、アルカリ液と酸性液とを攪拌することにより、所望のpH値の混合液を出力するものである。
【0168】
操作量決定部105は、プラント101をモデル化した制御対象モデルのモデルパラメータベクトルを同定する同定器121と、適応スライディングモードコントローラ122と、予測器123とからなる。同定器121、適応スライディングモードコントローラ122、及び予測器123は、それぞれ第1の実施形態におけるモデルパラメータ同定器22、適応スライディングモードコントローラ21、及び状態予測器23に対応し、これらと同様の機能を有する。
【0169】
以下本実施形態における構成要素及びパラメータと、第1の実施形態における構成要素及びパラメータとの対応関係を説明する。
pHセンサ101は、スロットル弁開度センサ8に相当し、pHセンサ101の出力V1OUTは、スロットル弁開度THに相当する。第1目標値V1BASEは、デフォルト開度THDEFに相当するものであり、本実施形態では、例えば中性に対応するpH値とする。したがって、偏差量DV1がスロットル弁開度偏差量DTHに相当する。また目標値生成部104が、目標開度設定部24に相当し、制御目標値V1TARGETがスロットル弁開度偏差量の目標値DTHRに相当する。なお、第1の実施形態においては、減算器103の機能は、モデルパラメータ同定器22及び状態予測器23に含まれている。
【0170】
第2基準値V2BASEは、適応スライディングモードコントローラ122の出力である第1操作量U1の中心値をバイアスするために加算されるものである。第1の実施形態では加算器106に相当する構成要素はなく、したがって第2基準値V2BASEは実質的に「0」とされている(すなわち、U1=U2=Uslである)。本実施形態では、第2基準値V2BASEは、例えば流量制御弁111の開度が50%となるような値に設定される。
【0171】
流量制御弁111は、デューティ比DUTのパルス信号でオンオフ制御されるスイッチング素子(ECU7の出力回路に含まれ、図示及び説明を省略している)に相当し、アルカリ液は電源電圧に相当する。また流量制御弁111の出力流量V2は、モータ6の駆動電流に相当し、攪拌器112は、モータ6及びスロットル弁3の弁体に相当し、酸性液はスロットル弁3の弁体に加わる吸気管負圧や、リターンスプリング4及び弾性部材5の付勢力に相当する。攪拌器112から出力されるの混合液のpH値V1が、実際のスロットル弁開度に相当する。
【0172】
以上のような対応関係があるので、プラント101を第1の実施形態と同様にモデル化し、同様の制御手法を適用することができる。すなわち、同定器121は、第1操作量U1及び偏差量DV1に基づいて、第1の実施形態と同様の演算処理により、修正モデルパラメータパラメータベクトルθLを算出し、予測器123は、第1操作量U1、偏差量DV1及び修正モデルパラメータベクトルθLに基づいて、第1の実施形態と同様の演算処理により、予測偏差量PREDV1を算出し、適応スライディングモードコントローラ122は、予測偏差量PREDV1及び修正モデルパラメータベクトルθLに基づいて、第1の実施形態と同様の演算処理により、予測偏差量PREDV1を制御目標値V1TARGETに一致させるように、第1操作量U1を算出する。したがって、制御目標値V1TARGETとして、所望の相対pH値(第1基準値V1BASEとの偏差量)を設定することにより、プラントの出力V1を所望のpH値に一致させることができる。
【0173】
(第3の実施形態の変形例)
図43は、図42に示す構成の変形例を示す図である。この変形例では、図42のプラント101ではなく、プラント101aが制御対象とされる。プラント101aは、プラント101に、流量制御弁111の出力流量V2を検出する流量センサ113と、流量センサ出力V2OUTが第2操作量U2に対応する流量値と一致するように、流量制御弁111を制御するフィードバック制御器114とを追加して構成されている。
【0174】
このようにローカルフィードバックループを含むプラントに対しても、第3の実施形態と同様のモデル化及び同様の制御手法の適用が可能である。
なお第1の実施形態では、モータの駆動回路は公知のものであるため、詳細な説明を行っていないが、オンオフ制御されるスイッチング素子の出力電流を検出する電流センサを設け、検出電流値IDが、操作量Uslに対応する電流値IRと一致するようにフィードバック制御を行うようにしてもよく、本変形例は第1の実施形態においてそのような回路構成を採用した場合に相当する。
【0175】
(第4の実施形態)
図44は、本発明の第4の実施形態にかかる制御系の構成を示すブロック図である。この制御系は、図42の操作量決定部105を操作量決定部105aに代えたものであり、第2の実施形態として示した制御系に対応する。なお、以下に説明する以外は第3の実施形態と同一である。
【0176】
操作量決定部105aは、同定器121aと、適応スライディングモードコントローラ122aと、パラメータスケジューラ124とからなる。
同定器121a、適応スライディングモードコントローラ122a及びパラメータスケジューラ124は、それぞれ第2の実施形態におけるモデルパラメータ同定器22a、適応スライディングモードコントローラ21a及びモデルパラメータスケジューラ25に対応し、これらと同様の機能を有する。
【0177】
すなわち、パラメータスケジューラ124は、偏差量DV1に基づいて第2の実施形態と同様の演算処理により、基準モデルパラメータベクトルθbaseを算出し、同定器121aは、第1操作量U1、偏差量DV1及び基準モデルパラメータベクトルθbaseに基づいて第2の実施形態と同様の演算処理により、修正モデルパラメータベクトルθLを算出し、適応スライディングモードコントローラ122aは、偏差量DV1及び修正モデルパラメータベクトルθLに基づいて、第2の実施形態と同様の演算処理により偏差量DV1を制御目標値V1TARGETに一致させるように、第1操作量U1を算出する。したがって、制御目標値V1TARGETとして、所望の相対pH値(第1基準値V1BASEとの偏差量)を設定することにより、プラントの出力V1を所望のpH値に一致させることができる。
【0178】
本実施形態では、同定器121aが同定手段に相当し、同定誤差算出手段及び更新成分算出手段を含む。またパラメータスケジューラ124が検索手段に相当する。
【0179】
(第4の実施形態の変形例)
図45は、図44に示す構成の変形例を示す図である。この変形例では、図44のプラント101ではなく、プラント101aが制御対象とされる。プラント101aは、図43のプラント101aと同一である。
このようにローカルフィードバックループを含むプラントに対しても、第4の実施形態と同様のモデル化及び同様の制御手法の適用が可能である。
【0180】
(その他の実施形態)
モデルパラメータの同定誤差ide(k)の算出手法として、δ修正法に代えて、以下に述べるε修正法を採用してもよい。すなわち、前記式(15c)に代えて、下記式(15g)により、モデルパラメータベクトルθ(k)を算出するようにしてもよい。
Figure 0003995899
ここで、EPSは下記式で示すように、忘却係数EPSi(i=1〜4)を要素とする忘却係数ベクトルである。
EPS=[EPS1,EPS2,EPS3,EPS4]
【0181】
忘却係数EPS1,EPS2及びEPS4は、前記忘却係数DELTAiと同様に、0から1の間の値に設定され(0<EPSi<1)、過去の同定誤差の影響を徐々に減少させる機能を有する。
【0182】
ただしε修正法の場合、モデルパラメータb1の演算に係る係数EPS3は、必ず「1」にする必要がある。これは、以下の理由による。ε修正法の場合、同定誤差ide(k)が小さくなると、モデルパラメータはすべてゼロ近傍の値となる。ところが、モデルパラメータb1は、式(9b)、(10b)、(11b)の分母に適用されるため、モデルパラメータb1が「0」に近づくと、制御対象への入力Uslが発散するからである。
【0183】
式(15g)は、初期値ベクトルθ(0)にも忘却係数ベクトルEPSが乗算されている点で、式(15c)と異なる。
式(15g)を漸化式形式に書き直すと、下記式(15h)が得られる。前記式(15)に代えて下記式(15h)を用いてモデルパラメータベクトルθ(k)を算出する手法を、ε修正法と呼ぶ。
θ(k)=EPS×θ(k-1)+KP(k)ide(k) (15h)
【0184】
ε修正法によっても、過去の同定誤差eidの影響が低減されるので、モデルパラメータのドリフトを防止することができる。
また第2の実施形態では、δ修正法によりモデルパラメータのドリフトを防止するようにしたが、第1の実施形態と同様に、不感帯処理(図14)により修正同定誤差idenl(k)を算出し、これを用いてモデルパラメータベクトルθ(k)を算出するようにしてもよい。
【0185】
また第1の実施形態において、不感帯処理に代えてδ修正法またはε修正法を採用してもよい。さらに、第1の実施形態においてδ修正法を採用する場合には、第2の実施形態と同様にモデルパラメータスケジューラを導入し、モデルパラメータスケジューラにより算出される基準モデルパラメータベクトルθbaseに更新ベクトルを加算する形式でモデルパラメータベクトルθを算出することが望ましい。
【0186】
【発明の効果】
以上詳述したように請求項1に記載の発明によれば、モデルパラメータの同定誤差に応じて更新成分が算出され、プラントの制御量を示す出力パラメータに応じてテーブルから検索される基準モデルパラメータに更新成分を加算することにより、モデルパラメータが算出されるので、常に変化するプラントの制御量に応じた基準モデルパラメータを補正する形でモデルパラメータが算出され、従来の手法に比べて迅速に最適値に収束させることが可能となる。
【0188】
請求項に記載の発明によれば、ロバスト性を有するスライディングモード制御により、プラントが制御されるので、外乱や制御対象モデルのモデル化誤差(実際のプラントの特性と、モデル化した制御対象モデルの特性との差)、あるいは制御対象のむだ時間の存在下においても、良好な制御性を得ることができる。
【0189】
請求項に記載の発明によれば、プラントへの制御入力は適応則入力を含むので、外乱やモデル化誤差があっても、良好な制御性を実現することができる。
請求項に記載の発明によれば、同定手段により同定されたモデルパラメータを用いて、スロットル弁開度を目標開度に一致させる制御が行われるので、スロットル弁開度の目標開度への制御性を向上させることができる。
請求項5に記載の発明によれば、過去の同定誤差の影響が徐々に減少し、モデルパラメータのドリフトを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかる内燃機関のスロットル弁駆動装置と、その制御装置を示す図である。
【図2】図1に示すスロットル弁駆動装置の周波数特性を示す図である。
【図3】図1の電子制御ユニット(ECU)により実現される機能を示す機能ブロック図である。
【図4】スライディングモードコントローラの制御特性と、切換関数設定パラメータ(VPOLE)の値との関係を示す図である。
【図5】スライディングモードコントローラの制御ゲイン(F,G)の設定範囲を示す図である。
【図6】モデルパラメータのドリフトを説明するための図である。
【図7】同定誤差を修正する関数を示す図である。
【図8】スロットル弁のデフォルト開度ずれがモデルパラメータ(c1’)に反映されることを説明するための図である。
【図9】スロットル弁開度制御処理のフローチャートである。
【図10】図9の処理において状態変数の設定を行う処理のフローチャートである。
【図11】図9の処理においてモデルパラメータ同定器の演算を実行する処理のフローチャートである。
【図12】図11の処理において同定誤差(ide)の演算を実行する処理のフローチャートである。
【図13】同定誤差(ide)のローパスフィルタ処理を説明するための図である。
【図14】図12の処理における不感帯処理のフローチャートである。
【図15】図14の処理で使用されるテーブルを示す図である。
【図16】図11の処理におけるモデルパラメータベクトル(θ)の安定化処理のフローチャートである。
【図17】図16の処理におけるモデルパラメータ(a1’,a2’)のリミット処理のフローチャートである。
【図18】図16の処理によるモデルパラメータの値の変化を説明するための図である。
【図19】図16の処理におけるモデルパラメータ(b1’)のリミット処理のフローチャートである。
【図20】図16の処理におけるモデルパラメータ(c1’)のリミット処理のフローチャートである。
【図21】図9の処理において状態予測器の演算を実行する処理のフローチャートである。
【図22】図9の処理において制御入力(Usl)の演算を実行する処理のフローチャートである。
【図23】図22の処理において予測切換関数値(σpre)の演算を実行する処理のフローチャートである。
【図24】図23の処理において切換関数設定パラメータ(VPOLE)の演算を実行する処理のフローチャートである。
【図25】図24の処理で使用するマップを示す図である。
【図26】図22の処理において予測切換関数値(σpre)の積算値の演算を実行する処理のフローチャートである。
【図27】図22の処理において到達則入力(Urch)の演算を実行する処理のフローチャートである。
【図28】図22の処理において適応則入力(Uadp)の演算を実行する処理のフローチャートである。
【図29】図9の処理においてスライディングモードコントローラの安定判別を実行する処理のフローチャートである。
【図30】図9の処理においてデフォルト開度ずれ(thdefadp)の演算を実行する処理のフローチャートである。
【図31】図1の電子制御ユニット(ECU)により実現される機能を示す機能ブロック図である(第2の実施形態)。
【図32】スロットル弁開度制御処理のフローチャートである(第2の実施形態)。
【図33】図32の処理においてモデルパラメータ同定器の演算を実行する処理のフローチャートである。
【図34】図33の処理で使用するテーブルを示す図である。
【図35】図33の処理において同定誤差(ide)の演算を実行する処理のフローチャートである。
【図36】図32の処理において制御入力(Usl)の演算を実行する処理のフローチャートである。
【図37】図36の処理において切換関数値(σ)の演算を実行する処理のフローチャートである。
【図38】図36の処理において切換関数値(σ)の積算値の演算を実行する処理のフローチャートである。
【図39】図36の処理において到達則入力(Urch)の演算を実行する処理のフローチャートである。
【図40】図36の処理において適応則入力(Uadp)の演算を実行する処理のフローチャートである。
【図41】図32の処理においてスライディングモードコントローラの安定判別を実行する処理のフローチャートである。
【図42】本発明の第3の実施形態に係る制御系の構成を示すブロック図である。
【図43】図42に示す構成の変形例を示すブロック図である。
【図44】本発明の第4の実施形態に係る制御系の構成を示すブロック図である。
【図45】図44に示す構成の変形例を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 内燃機関
3 スロットル弁
7 電子制御ユニット
10 スロットル弁駆動装置
21 適応スライディングモードコントローラ(制御手段)
22 モデルパラメータ同定器(同定手段、同定誤差算出手段、更新成分算出手段)
24 目標開度設定部
25 モデルパラメータスケジューラ(同定手段、検索手段)

Claims (5)

  1. プラントをモデル化した制御対象モデルのモデルパラメータを、前記プラントの操作量及び制御量に基づいて同定する同定手段と、該同定手段により同定されたモデルパラメータを用いて前記プラントを制御する制御手段とを備えたプラントの制御装置において、
    前記同定手段は、前記プラントの制御量を示す出力パラメータと前記モデルパラメータの基準値となる基準モデルパラメータとが関連付けられたテーブルから、前記出力パラメータに応じて基準モデルパラメータを検索する検索手段と、前記モデルパラメータの同定誤差を算出する同定誤差算出手段と、該同定誤差を用いて予め設定された演算式に従い前記モデルパラメータの更新成分を算出する更新成分算出手段とを有し、該更新成分を前記基準モデルパラメータに加算することにより、前記モデルパラメータを算出することを特徴とするプラントの制御装置。
  2. 前記制御手段は、スライディングモード制御により前記プラントを制御するものであることを特徴とする請求項1に記載のプラントの制御装置。
  3. 前記制御手段による前記プラントへの制御入力は、適応則入力を含むことを特徴とする請求項に記載のプラントの制御装置。
  4. 前記プラントは、内燃機関のスロットル弁と、該スロットル弁を駆動する駆動手段とを有するスロットル弁駆動装置を含み、前記制御手段は、前記スロットル弁の開度を目標開度に一致させるように、前記スロットル弁駆動装置への制御入力を決定するパラメータを算出することを特徴とする請求項1からの何れか1項に記載のプラントの制御装置。
  5. 前記更新成分算出手段は、前記同定誤差算出手段により算出される同定誤差と、前記更新成分の過去値とを用い、且つ前記過去値の少なくとも1つの要素には0より大きく且つ1より小さい係数を乗算して、前記更新成分を算出することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載のプラントの制御装置。
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