JP3993937B2 - 水分−脂質バランス保持用の化粧料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、メークアップ化粧時の、化粧くずれ抑制や皮膚のカサツキの防御に有益な化粧料に関する。
【0002】
【従来の技術】
皮膚の重要な機能は、外部環境の刺激から生体を防護することであり、この為の種々の機構を備えている。この様な機能としては、例えば、皮脂や水性成分の分泌による防護膜の形成などが例示できる。この様な分泌物は、生体の恒常性維持にとっては大変重要なものではあるが、メークアップ化粧などを行う場合には、この様な分泌物が化粧くずれの原因となるために、都合の悪いものであると言わざるを得ない。又、季節によっては、特に夏など、この様な分泌物は過剰に分泌されることがあり、この様な事態に対応する技術も求められていた。
【0003】
この様な生体の過剰分泌に対して、従来取られていた対応策は、収斂成分を含有する化粧料を塗布し、肌を引き締め分泌物の分泌を抑制する手段や、タルク等の粉体を含有する化粧料を塗布し、皮脂を吸着させて化粧くずれを防ぐ方法等が存在した。しかしながら、分泌物が生理的な意味を持っている以上、抑制手段は自ずとその限度があり、吸着による手段については、この様な吸着剤によって吸着される分泌物の量は限られており、更には、分泌物で濡れた吸着剤の光学的な効果のため、メークアップ化粧料の仕上がりを損ねること場合があり、これも十分に問題を解決しているとはいいがたかった。又、吸着剤の量を増やして処理した場合に於いては、皮脂の取りすぎによるかさつきなどの好ましくない現象が起こる場合が多かった。
【0004】
一方、シリコーン樹脂粉体は、延展性の良い粉体であり、角層に類似の光学的効果も有しており、メークアップ化粧料等で体質粉体として使用されているが、皮膚の水分と皮脂のバランスを保持する目的で基礎化粧料に含有せしめる技術は全く知られていないし、この様な皮膚の水分と皮脂のバランスを保持することを目的とする化粧料も全く知られていない。特に注目すべきは、従来の化粧品思想では、皮脂は吸収してしまうか、分泌を抑制してしまうかのどちらかであり、一方向的な処置でしかなかったことである。即ち、皮膚上に皮脂と水分とが一定の割合で常に一定量存在する様に調整する化粧料は従来は全く知られていなかったのである。これは、この様な機能を発揮するのに適した素材が見いだされていなかったからである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、この様な状況を背景に為されたものであって、皮膚上に皮脂と水分とが一定の割合で常に一定量存在する様に調整する物質を見いだし、皮膚の水分と脂質のバランスを保持する化粧料を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この様な状況に鑑みて、本発明者らは、皮膚上に皮脂と水分とが一定の割合で常に一定量存在する様に調整する物質を求めて鋭意研究努力を重ねたところ、シリコーン樹脂粉体にその様な作用を見いだし、これとポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとを併用して化粧料に含有させたところ、特に皮膚の水分と脂質のバランスを保持する化粧料を得るに至り、本発明を完成させた。以下、本発明について、実施の形態を中心に詳細に説明を加える。
【0007】
【発明の実施の形態】
(1)本発明の必須成分であるシリコーン樹脂粉体
本発明の化粧料はシリコーン樹脂粉体を含有することを特徴とする。本発明の化粧料で使用することの出来るシリコーン樹脂粉体としては、例えば、架橋型ジメチルポリシロキサンの様な架橋型ジアルキルポリシロキサン、メチルシロキサン網状重合体の様なアルキルシロキサン網状重合体等が例示できる。これらは何れも固体であることを必要とする。これらはジアルコキシジアルキルシロキサンやアルキルトリアルコキシシロキサンを乳化状態で、アルカリなどにより脱アルコール縮合する事により得られる。これらは何れも既に市販されているものがありこれを利用することが出来る。この様な市販品としては、トーレ株式会社製のトレフィルE−505C及びE−506C、この水性担体分散型のBY29−119及びBY29−122、東芝シリコーン株式会社製のトスパール等である。これらは何れも本発明の化粧料に於いて利用できる。この内、特に好ましいものは、架橋型ジメチルポリシロキサンであり、具体的には、トーレ株式会社製のトレフィルE−505C及びE−506C、この水性担体分散型のBY29−119及びBY29−122が好ましく、この中でも水性担体分散型のものが、取り扱いのしやすさの点で特に好ましい。これらシリコーン樹脂粉体は、皮脂や分泌される水性成分をストックする作用を有する。BY29−119の固形成分について、JISの吸油量の測定法に従って吸油量を測定し、又、この固形分について水分を充分吸収させた後、室温放置5時間後の重量維持率(水分保持能)を測定したところによれば、本発明の必須成分である、シリコーン樹脂粉体は水性成分と油脂成分の保持力に優れることがわかる。かくしてストックされた皮脂成分と水性分泌成分は、皮膚上の水性分泌成分や皮脂成分が不足すると、このシリコーン樹脂粉体よりリリースされ、水性分泌成分と皮脂成分の比が常にバランスを保つようになる。本発明の化粧料に於ける、上記シリコーン樹脂粉体の好ましい含有量は、固形成分として、化粧料全量に対して、0.1〜20重量%であり、更に好ましくは1〜15重量%である。これは、少なすぎると効果を発揮しない場合があり、多すぎると、効果が頭打ちになったり、処方化の自由度を損なったりする場合があるからである。
【0008】
(2)本発明の化粧料
本発明の化粧料は、上記シリコーン樹脂粉体とポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとを含有し、皮膚の水分と脂質のバランスを保持する作用を有することを特徴とする。ここで、ポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンは、本発明の化粧料の必須成分であるシリコーン樹脂粉体との相互作用の少ない保湿成分であり、このものは、既に日本油脂株式会社より市販されているため、入手は容易である。このものの好ましい含有量は、0.01〜5重量%であり、更に好ましくは0.05〜1重量%である。これは多すぎると、多少ともシリコーン樹脂粉体の水分・皮脂バランス作用を損なうことがあり、少なすぎると添加効果が得られない場合があるからである。また、本発明の化粧料は、化粧水、乳液、クリーム等による基礎化粧処置を行った後、塗布する化粧料であり、本発明の化粧料の上には、乳液、クリームアンダーメークアップ、ファンデーション等がこの順序で塗布される。従来のコースでは、化粧水、乳液、クリームの順に基礎化粧料を塗布した後、メークアップ化粧料が塗布されていたが、本発明の化粧料をこの化粧水と乳液の中間に挟むことにより、メークアップ層と皮膚の間に水分・皮脂ストック層が存在するようになり、メークアップ化粧料に使用されている粉体が、水分や皮脂を吸収し皮膚に乾燥感を与えることを防いだり、又、皮膚から分泌される皮脂や水性成分によりメークアップ化粧料が化粧くずれを起こしたりすることを防ぐ作用を有する。本発明の化粧料の使用手順や使用部位は、従来のアンダーメークアップ化粧料に類似しているが、次の点で大きくその性質を異にする。即ち、第一に塗布位置が化粧水と乳液の間にあること。これは、乳液やクリームの油脂分や保湿成分もストックでき、必要に応じてこれらを再放出できる作用を有する。更に、従来のアンダーメークは、メークアップ化粧料の化粧のりを良くすることが主たる目的であり、過剰に分泌された生体成分をストックし、皮膚上の存在量を調整することは行われていなかった。中には、化粧持ちの向上機能を有するものがあったが、この様なものは、生体分泌物の分泌を抑制したり、粘着性の親油性物質の層をつくることにより、メークアップ化粧料の生体分泌物による脱落を防ぐものであり、生体分泌物のストック層を設け、生体分泌物の機能を維持しながら、これに由来する化粧くずれなどのデメリットを防ぐ、本発明の化粧料の機能・思想とは異なっている。
【0009】
本発明の化粧料は、必須成分である、上記シリコーン樹脂粉体とポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン以外に通常化粧料で使用される任意成分を、本発明の効果を損ねない範囲に於いて、含有することが出来る。かかる任意成分としては、例えば、ワセリンやマイクロクリスタリンワックス等のような炭化水素類、ホホバ油やゲイロウ等のエステル類、牛脂、オリーブ油等のトリグリセライド類、セタノール、オレイルアルコール等の高級アルコール類、ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸、グリセリンや1,3−ブタンジオール等の多価アルコール類、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、エタノール、カーボポール等の増粘剤、防腐剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、色素、粉体類等が好ましく例示できる。
【0010】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明がこれら実施例にのみ限定を受けないことは言うまでもない。
【0011】
<実施例1>
以下に示す処方に従って、本発明の皮膚の水分と脂質のバランスを保持するための化粧料を作成した。即ち、イ、ロ、ハ、ニの成分をそれぞれ70℃に加熱攪拌し、イにロを加え中和した後、ハを加え均一に分散した後、ニを加え均一に攪拌した後、攪拌しながら冷却し本発明の皮膚の水分と脂質のバランスを保持するための化粧料を得た。尚、シリコーンBY29−119は架橋型ジメチルポリシロキサン粉体(全量に対して67重量%含有)を水に分散したものである。
イ
グリセリン 7 重量部
ポリエチレングリコール1500 1 重量部
メチルパラベン 0.3重量部
キサンタンガム 0.1重量部
水 40 重量部
カルボキシビニルポリマー 0.2重量部
ロ
水酸化カリウム 0.1重量部
水 0.9重量部
ハ
1,3−ブタンジオール 4 重量部
シリコーンBY29−119 15 重量部
水 11 重量部
ニ
ポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン 0.1重量部
水 20.3重量部
【0012】
<実施例2>
実施例1の本発明の化粧料について、皮膚の水分と脂質のバランスを保持する作用について調べた。即ち、この作用について、メークアップ化粧料に対する化粧持ち向上効果と化粧後のかさつき感の有無により調べた。方法は、化粧くずれに悩むパネラー6名とメークアップ化粧に於いてかさつきを感じるパネラー5名を用い、実施例1の化粧料と実施例1の化粧料のシリコーンBY29−119をシリカゲルに置換した比較例1と水に置換した比較例2とをそれぞれ1週間づつ使用してもらい、化粧くずれの改善効果と化粧後のかさつき感の改善効果とを、この様な化粧料を使用しなかった場合に比し、++:著しく改善した、+:明白に改善した、±:やや改善した、−:改善は認められなかったの基準で評価してもらった。表1に結果を出現例数として示す。これより、本発明の化粧料により化粧くずれと化粧後のかさつきが著しく改善していることがわかる。この効果は本発明の化粧料の必須成分である、シリコーンBY29−119によることもわかる。尚、本評価に於いて、基礎化粧料とメークアップ化粧料は通常使用しているものを用いてもらった。又、本発明の化粧料は、化粧水の上で乳液の下になるような順で塗布してもらった。
【0013】
【表1】
【0014】
<実施例3>
以下に示す処方に従って、本発明の皮膚の水分と脂質のバランスを保持するための化粧料を作成した。即ち、イ、ロ、ハの成分をそれぞれ70℃に加熱攪拌し、イにロを加え中和した後、ハを加え均一に分散した後、均一に攪拌しながら冷却し本発明の皮膚の水分と脂質のバランスを保持するための化粧料を得た。このものについて、専門パネラーを用いて、化粧持ちと化粧後のかさつきの改善作用を評価したところ、共に優れていたが実施例1には及ばなかった。これより、本発明の化粧料には、ポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを含有することが好ましいことがわかる。
イ
グリセリン 7 重量部
ポリエチレングリコール1500 1 重量部
メチルパラベン 0.3重量部
キサンタンガム 0.1重量部
水 40 重量部
カルボキシビニルポリマー 0.2重量部
ロ
水酸化カリウム 0.1重量部
水 0.9重量部
ハ
1,3−ブタンジオール 4 重量部
シリコーンBY29−119 15 重量部
水 31.4重量部
【0015】
<実施例4>
以下に示す処方に従って、本発明の皮膚の水分と脂質のバランスを保持するための化粧料を作成した。即ち、イ、ロ、ハ、ニの成分をそれぞれ70℃に加熱攪拌し、イにロを加え中和した後、ハを加え均一に分散した後、ニを加え均一に攪拌した後、攪拌しながら冷却し本発明の皮膚の水分と脂質のバランスを保持するための化粧料を得た。この化粧料は、実施例1の化粧料と同程度の化粧持ち改善効果とかさつき感の改善作用を有していたが、シリコーン樹脂粉体の分散性については実施例1の方が良好であった。これより、架橋型ジメチルポリシロキサン樹脂粉体としては、シリコーンBY29−119の方が好ましいことがわかる。イ
グリセリン 7 重量部
ポリエチレングリコール1500 1 重量部
メチルパラベン 0.3重量部
キサンタンガム 0.1重量部
水 40 重量部
カルボキシビニルポリマー 0.2重量部
ロ
水酸化カリウム 0.1重量部
水 0.9重量部
ハ
1,3−ブタンジオール 4 重量部
トレフィルE−500C 10 重量部
(架橋型ジメチルポリシロキサン樹脂粉体)
ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル 0.1重量部
水 15.9重量部
ニ
ポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン 0.1重量部
水 20.3重量部
【0016】
<実施例5>
以下に示す処方に従って、本発明の皮膚の水分と脂質のバランスを保持するための化粧料を作成した。即ち、イ、ロ、ハ、ニの成分をそれぞれ70℃に加熱攪拌し、イにロを加え中和した後、ハを加え均一に分散した後、ニを加え均一に攪拌した後、攪拌しながら冷却し本発明の皮膚の水分と脂質のバランスを保持するための化粧料を得た。この化粧料は、実施例1の化粧料と同程度の化粧持ち改善効果とかさつき感の改善作用を有していたが、シリコーン樹脂粉体の分散性については実施例1の方が良好であった。これより、効果としては、メチルシロキサン網状重合体も使用可能であることがわかる。
イ
グリセリン 7 重量部
ポリエチレングリコール1500 1 重量部
メチルパラベン 0.3重量部
キサンタンガム 0.1重量部
水 40 重量部
カルボキシビニルポリマー 0.2重量部
ロ
水酸化カリウム 0.1重量部
水 0.9重量部
ハ
1,3−ブタンジオール 4 重量部
トスパール120A 10 重量部
(メチルシロキサン網状重合体)
ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル 0.1重量部
水 15.9重量部
ニ
ポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン 0.1重量部
水 20.3重量部
【0017】
<実施例6>
以下に示す処方に従って、本発明の皮膚の水分と脂質のバランスを保持するための化粧料を作成した。即ち、イ、ロ、ハ、ニの成分をそれぞれ70℃に加熱攪拌し、イにロを加え中和した後、ハを加え均一に分散した後、ニを加え均一に攪拌した後、攪拌しながら冷却し本発明の皮膚の水分と脂質のバランスを保持するための化粧料を得た。この化粧料は、実施例1の化粧料程ではないが化粧持ち改善作用を有していた。
イ
グリセリン 7 重量部
ポリエチレングリコール1500 1 重量部
メチルパラベン 0.3重量部
キサンタンガム 0.1重量部
水 40 重量部
カルボキシビニルポリマー 0.2重量部
ロ
水酸化カリウム 0.1重量部
水 0.9重量部
ハ
1,3−ブタンジオール 4 重量部
シリコーンBY29−119 1.5重量部
水 24.5重量部
ニ
ポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン 0.1重量部
水 20.3重量部
【0018】
本発明によれば、メークアップ化粧時の、化粧くずれ抑制効果と皮膚のカサツキの防御効果を有する皮膚の水分と脂質のバランスを保持する化粧料を提供することができる。
Claims (3)
- 基礎化粧料を塗布した後、メークアップ化粧料を塗布する前の中間に挟んで使用される化粧料であって、シリコーン樹脂粉体とポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとを含有することを特徴とする、皮膚の水分と脂質のバランスを保持するための化粧料。
- シリコーン樹脂粉体が、架橋型ジメチルポリシロキサン及びメチルシロキサン網状重合体のいずれか一方又は両方であることを特徴とする、請求項1に記載の皮膚の水分と脂質のバランスを保持するための化粧料。
- シリコーン樹脂粉体の含有量が、化粧料全体に対して1〜15重量%であり、ポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンの含有量が、化粧料全量に対して0.05〜1重量%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の皮膚の水分と脂質のバランスを保持するための化粧料。
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JP18820398A JP3993937B2 (ja) | 1998-06-18 | 1998-06-18 | 水分−脂質バランス保持用の化粧料 |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP18820398A JP3993937B2 (ja) | 1998-06-18 | 1998-06-18 | 水分−脂質バランス保持用の化粧料 |
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JP18820398A Expired - Lifetime JP3993937B2 (ja) | 1998-06-18 | 1998-06-18 | 水分−脂質バランス保持用の化粧料 |
Country Status (1)
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-
1998
- 1998-06-18 JP JP18820398A patent/JP3993937B2/ja not_active Expired - Lifetime
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