JP3992450B2 - エレクトロルミネッセンス表示装置およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の表示パネルを接合して構成されるエレクトロルミネッセンス表示装置およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、情報機器の多様化に伴い、一般に使用されているCRT(陰極線管)に比べて消費電力が少ない平面表示素子に対するニーズが高まってきている。このような平面表示素子の1つとして、高効率、薄型、軽量、低視野角依存性等の特徴を有するエレクトロルミネッセンス(以下、ELと略す)素子が注目され、このEL素子を用いたディスプレイの研究開発が活発に行われている。このようなEL素子には、無機材料からなる発光層を有する無機EL素子と、有機材料からなる発光層を有する有機EL素子とがある。
【0003】
無機EL素子は、一般に発光部に高電界を作用させ、電子をこの高電界中で加速して発光中心に衝突させることにより、発光中心を励起させて発光させる自発光型の素子である。
【0004】
一方、有機EL素子は、電子注入電極とホール注入電極とからそれぞれ電子とホールとを発光部内へ注入し、注入された電子およびホールを発光中心で再結合させて有機分子を励起状態にし、この有機分子が励起状態から基底状態へと戻るときに蛍光を発生する自発光型の素子である。この有機EL素子は、発光材料である蛍光物質を選択することにより発光色を変化させることができ、マルチカラー、フルカラー等の表示装置への応用に対する期待が高まっている。
【0005】
上記の有機EL素子は、現在のところ、デジタルカメラや携帯電話等の小型ディスプレイへの応用が進んでいる段階であり、パーソナルコンピュータやテレビジョン等の中・大型ディスプレイへの応用は困難と考えられている。例えば、アクティブディスプレイの場合、大面積に多数のポリシリコンTFT(薄膜トランジスタ)を作製することが困難であり、また、パッシブディスプレイの場合でも、大面積で均一に有機膜を形成することが困難である。
【0006】
このため、小型の有機ELパネルを複数枚組み合わせることにより大型の有機EL表示装置を作製しようとする試みがある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
通常、単純に小型パネルを組み合わせたのでは、各パネル間の接合部が目立ち、良好な表示画面を得ることはできない。一方、液晶表示ディスプレイ装置では、小型パネル間の接合部を目立たなくするため、R,G,Bの3つの表示ドットを1画素とし、隣接するパネル端部に位置する画素の間の距離をブラックストライプの幅に一致させることが報告されている(シャープ技報 第69号 1997年12月 p.81−84)。接合側の辺は、ダイシング装置にて切断後、さらに切断面を研磨することにより切断精度を向上させている。
【0008】
しかしながら、このような加工方法は、内部の液晶が漏れないようにパネル端部をシールし、パネル端部に位置する画素からパネル端部までの距離が長くなる液晶ディスプレイ装置に特有のものであり、このようなシール構造を有さないEL表示装置にそのまま適用することはできない。すなわち、ダイシング加工時および研磨時に発生する熱や、加工時に発生する切削かけら(チッピング)および酸化セリウム等の研磨材を除去するために水を用いる場合、加工面から侵入した水分の影響により金属からなる電極が酸化したり、電極が有機材料または無機材料からなる発光層との界面で剥離することにより発光部が劣化する。その結果、ダークスポットが発生し、発光素子として機能しなくなる。
【0009】
本発明の目的は、複数の表示パネルを接合して1つの表示装置を構成する場合に、発光部を劣化させることなく、かつ隣接する表示パネルの接合部を目立たなくすることができるエレクトロルミネッセンス表示装置およびその製造方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
第1の発明に係るエレクトロルミネッセンス表示装置は、複数の表示パネルが接合されたエレクトロルミネッセンス表示装置であって、複数の表示パネルの各々は基板の一面上に形成された複数の発光部を備え、複数の表示パネルの基板の他面が共通の基台上に接着剤により接合されるとともに隣接するパネルの端面が接着剤により互いに接合され、複数の発光部側において隣接する表示パネル間の接合部がマスク材により被覆されたものである。
【0011】
本発明に係るエレクトロルミネッセンス表示装置においては、複数の発光部を有する複数の表示パネルが共通の基台上に接合されており、各表示パネルの発光部側の接合部はマスク材によって被覆されている。
【0012】
この場合、各表示パネルの発光部側の接合部がマスク材によって被覆されているため、表示パネルを共通の基台上に接合する際に用いる接着剤が各表示パネルの発光部に染み出ることを防ぐことができ、接着剤の水分による発光部の劣化を防止することができる。
【0013】
1または複数の発光部が画素を構成し、マスク材は画素間の間隔以下の幅を有してもよい。この場合、マスク材が画素間の間隔以下の幅になるため、表示パネルの接合部において画素間の間隔を広げることなく複数の表示パネルを接合することができる。これにより、映像の解像度を高く保持したまま、表示パネルの継ぎ目を目立たなくすることができる。
【0014】
マスク材の幅は300μm以下であることが好ましい。これにより、映像の解像度を高く保持したまま、表示パネルの継ぎ目を目立たなくすることができる。
【0015】
接着剤の屈折率は、基台の屈折率と同等であってもよい。この場合、接着剤と基台との屈折率が同等であるため、表示パネルを接合した際に表示パネルの継ぎ目を目立たなくすることができる。
【0016】
複数の表示パネルの複数の発光部を覆うように容器により複数の発光部側の空間が封止されてもよい。この場合、複数の表示パネルの複数の発光部を覆うように容器により複数の発光部側の空間が封止される。これにより、封止層として樹脂等を用いた場合に発生する樹脂等の水分による発光部へのダメージをなくすことができる。また、樹脂等の封止層が不要なため、発光部には画素点灯時における発熱によっても樹脂等の応力が発生せず、発光部が剥離することを防止することができ、長時間の映像表示が可能となる。
【0017】
複数の発光部は有機材料により形成されてもよい。この場合、複数の発光部は水分に非常に弱い有機材料により形成されるため、水分の浸透を防止する上記のエレクトロルミネッセンス表示装置の構成を採ることは特に有効となる。
【0018】
第2の発明に係るエレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法は、複数の表示パネルが接合されたエレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法であって、複数の基板の一面上に複数の発光部をそれぞれ形成することにより複数の表示パネルを形成するステップと、複数の表示パネルの端部間の境界部を複数の発光部側においてマスク材により被覆するステップと、複数の表示パネルの基板の他面を共通の基台上に接着剤により接合するとともに隣接する表示パネルの端部間を接着剤により互いに接合するステップとを備えたものである。
【0019】
この場合、複数の基板の一面上に複数の発光部がそれぞれ形成されることにより複数の表示パネルが形成され、複数の表示パネルの端部間の境界部が複数の発光部側においてマスク材により被覆され、複数の表示パネルの基板の他面が共通の基台上に接着剤により接合されるとともに隣接する表示パネルの端部間が接着剤により互いに接合される。
【0020】
これにより、各表示パネルの発光部側の接合部がマスク材によって被覆された後に表示パネルを共通の基台上に接合するための接着剤を用いるため、接着剤が各表示パネルの発光部に染み出ることを防ぐことができ、接着剤の水分による発光部の劣化を防止することができる。
【0021】
複数の表示パネルを形成する前に、各基板の端部を加工するステップをさらに備えてもよい。これにより、基板の端部を加工する際に発生するチッピングや研磨材を除去するために使用する水分による複数の発光部へのダメージを防止できる。
【0022】
複数の表示パネルの複数の発光部を覆うように容器により複数の発光部側の空間を封止するステップをさらに備えてもよい。この場合、複数の表示パネルの複数の発光部を水分等から保護するための保護層として樹脂等の封止層を用いないため、封止層として樹脂等を用いた場合に発生する樹脂等の水分による発光部へのダメージをなくすことができる。また、樹脂等の封止層が不要なため、発光部には画素点灯時における発熱によっても樹脂等の応力が発生せず、発光部が剥離することを防止することができ、長時間の映像表示が可能となる。
【0023】
なお、容器により複数の発光部側の空間を封止するステップは、共通の基台上に複数の表示パネルを接合するステップの前でもよいし、後でもよい。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るエレクトロルミネッセンス表示装置の一例として有機エレクトロルミネッセンス(以下、ELと略す)表示装置について説明する。なお、本発明は、発光部として耐熱性および耐湿性に劣る有機材料を使用した有機EL表示装置に特に有用であるが、同様の構造を有する無機EL表示装置にも適用することができ、アクティブ型およびパッシブ型のいずれの表示装置にも適用することができる。
【0025】
図1は本発明の一実施の形態による有機EL表示装置の構成を示す模式的平面図である。図1に示す有機EL表示装置1は、4枚の小型パネル2a〜2dを備える。各小型パネル2a〜2dは、複数の発光部3a〜3d、複数の走査画素電極5a〜5d、複数の信号画素電極6a〜6d、走査画素電極用駆動回路7a〜7d、信号画素電極用駆動回路8a〜8dおよびマスク4を備える。
【0026】
走査画素電極用駆動回路7a〜7dは、小型パネル2a〜2dの一辺に配置され、信号画素電極用駆動回路8a〜8dは小型パネル2a〜2dの他の一辺に配置されている。走査画素電極用駆動回路7a〜7dおよび信号画素電極用駆動回路8a〜8dは、表示したい画素に対応する発光部3a〜3dを形成する走査画素電極5a〜5dおよび信号画素電極6a〜6dへ駆動信号を出力する。それにより、当該発光部3a〜3dが発光し、各小型パネル2a〜2dのみで表示駆動が可能になっている。
【0027】
有機EL表示装置1は、図1に示すように、走査画素電極5a〜5dおよび信号画素電極6a〜6dの各々が連続的に配置されるように、接着剤により小型パネル2a〜2dを4枚貼り合わせて所望の大きさに大型化したものである。さらに、映像表示側に接着剤が染み出てこないようにマスク4が小型パネル2a〜2dの境界部に設けられている。この場合、上下左右の各駆動回路7a〜7d,8a〜8dを同期させて各電極5a〜5d,6a〜6dを駆動することにより、1枚の大型パネルとして1つの画面を表示することができる。
【0028】
例えば、横640ドット×縦480ドットのVGA(Video Graphics Array)仕様の10インチのモノクロ表示装置を作製する場合、画素数が横320ドット×縦240ドットで画素ピッチが約300μmの5インチの小型パネル2a〜2dを4枚貼り合わせればよい。フルカラー表示装置では、R(Red)、G(Green)、B(Blue)の3種類の発光部を一単位として一画素を構成する。
【0029】
図2は図1の有機EL表示装置の概略断面図である。
図2に示すように、ITO等からなる図1の走査画素電極5a,5bが形成されたガラス基板9a,9bとガラス基板9a,9bのそれぞれに設けられた発光部3a,3bとで構成される小型パネル2a,2bが補強用のガラス基板10に接着剤11により貼り付けられている。なお、図2には2枚の小型パネル2a,2bのみが示されているが、ガラス基板10には、図1に示した4枚の小型パネル2a,2b,2c,2dが貼り付けられる。
【0030】
小型パネル2a,2bの境界線上には、マスク4が施されている。同様に、小型パネル2a,2cの境界線上、小型パネル2b,2cの境界線上および小型パネル2c,2dの境界線上にもマスク4が施されている。さらに、小型パネル2a,2b,2c,2dの全体を覆うように缶(CAN)12により封止されている。
【0031】
図3は図1の有機EL表示装置の作製工程の概略図を示す。
まず、図3(a)に示すようにITO等の走査画素電極5aが形成されたガラス基板9aをダイシング装置やスクライブ装置の刃13により所望の画素ピッチ近くまで端部14を切断する。そして、切断端面を高精度な貼り合わせが可能なように平滑に研磨仕上げする。
【0032】
そして、図3(b)に示すように、ガラス基板9a上に発光部3aとして、ホール注入層、その上にホール輸送層、発光層、電子注入電極として機能する信号画素電極6aを順次形成する。ここで、ホール注入層としては、厚さ1000Åのトリフェニルアミン誘電体等が用いられ、ホール輸送層としては、厚さ200Åのジアミン誘電体等が用いられ、発光層としては、厚さ200Åのアルミニウムキノリノール錯体にキナクリドンをドープしたもの等が用いられ、信号画素電極6aとしては、厚さ3000Åのマグネシウムインジウム(MgIn)が用いられる。このようにして、小型パネル2aを作製する。同様にして、小型パネル2b,2c,2dも作製する。
【0033】
次に、図3(c)に示すように、隣り合う小型パネル2a,2bの発光部3a,3b側の接合部にマスク4を形成する。マスク4の形成方法としては、ディスペンサにより紫外線硬化樹脂(スリーボンド製AVR200)を幅300μmの寸法で塗布した後、紫外線を照射し硬化させて形成する。この方法は工程が簡易である。他のマスク4の形成方法としては、ディスペンサによる可視光硬化樹脂の塗布、メタルマスクを用いての真空蒸着、RFスパッタリングによる無機材料の形成、レーザCVDによる無機材料の形成、スクリーン印刷によるエポキシ系樹脂の塗布がある。マスク4の幅は、画素ピッチを考慮して300μm以下が望ましい。同様にして、小型パネル2a,2cの接合部、小型パネル2b,2cの接合部および小型パネル2a,2dの接合部にもマスク4を形成する。
【0034】
この後、図3(d)に示すように、小型パネル2a,2bを補強用のガラス基板10に接着剤11を用いて貼り合わせる。接着剤11としては、光学的な違和感を少なくするため、ガラス基板9a,9bに用いられるガラスおよび補強用のガラス基板10に用いられるガラスの屈折率Ndに近い屈折率を有するものを使用する。用いられるガラスの屈折率Ndは1.5〜1.6程度であり、例えば、コーニング1737基板(Nd=1.52)をガラス基板10,9a,9bとして使用した場合、接着剤11としては、紫外線硬化樹脂であるスリーボンド社製AVR200(Nd=1.56)や長瀬チバ社製XNR5623(Nd=1.57)を用いる。同様にして、小型パネル2c,2dも同じガラス基板上に貼り付ける。
【0035】
図3(d)の工程において、隣り合う小型パネル2a,2bの発光部3a,3b側の接合面にマスク4が形成されることにより、補強用のガラス基板10に接着剤11で貼り合わせる際に、接合部から発光部3a,3b側へ接着剤11がはみ出してくるのを防止することができる。
【0036】
最後に、図3(e)に示すように、小型パネル2a,2b,2c,2dの発光部3a,3b,3c,3d側全体をガラス製または金属製の缶12により封止する。
【0037】
上記図3(c)〜(e)の工程は、窒素ガス雰囲気で満たされたグローブボックス内で行う。このため、作製された有機EL表示装置の小型パネル2a,2b,2c,2dと缶12との間の空間には窒素ガスが充填されることになる。
【0038】
このようにして、図1に示す有機EL表示装置1を作製する。なお、図3(d)の工程と図3(e)との工程を入れ替えてもよい。
【0039】
また、本実施の形態においては、4枚の小型パネル2a〜2dにより2×2配置の有機EL表示装置1について述べたが、小型パネルを貼り合わせる枚数は4枚に特に限定されず、1つの表示装置を構成することができれば他の枚数であってもよい。例えば、小型パネルを一列に並べたり、3×3、2×3等の行列的配置をする場合にも有効である。
【0040】
本発明に係る有機EL表示装置1の作製において、上記のように発光部3a〜3dを形成する前に小型パネル2a〜2dの接合部の端面加工を行うことにより、小型パネル2a〜2dの接合部を切断、研磨するときの応力により発光部3a〜3dが剥離するという問題が解消される。また、切断や研磨時に発生する熱、または、切削かけらや研磨材を除去するために水を流しながら加工しても、信号画素電極6a〜6dが酸化することはなくなり、有機材料との界面において剥離することもなくなる。
【0041】
さらに、マスク4によるマスキングの効果により接着剤11が発光部3a〜3d側にはみ出さないため、発光部3a〜3d側への接着剤11の水分の浸透を防止することができ、缶12による缶封止により、画素点灯時における発熱により封止層で応力が発生し、発光部3a〜3dに損傷を与えることも防止される。
【0042】
【実施例】
ここで、実施例および比較例の有機EL表示装置を作製し、特性を評価した。実施例の有機EL表示装置は、図1〜図3に示した製造方法により作製した。比較例の有機EL表示装置は、以下に示す製造方法により作製した。
【0043】
図4は比較例の有機EL表示装置の作製工程を示す概略断面図である。図4には小型パネル20a,20bについて示されるが、他の2つの小型パネルにおいても同様である。
【0044】
図4(a)に示すように、ガラス基板90a上に複数の発光部30aおよび封止層40aを形成した。その後、ダイシング装置やスクライブ装置の刃130により、所望の画素ピッチまで図4(a)に示す端部140を切断し、接合面を形成した。同様にして、小型パネル20bおよび他の2つの小型パネルを作製する。
【0045】
発光部30aは、走査画素電極上に形成されたホール注入層と、ホール注入層上に形成されたホール輸送層と、ホール輸送層上に形成された発光層と、発光層上に形成された電子輸送層と、電子輸送層上に形成された信号画素電極からなる。各層の材料および構成は実施例と同様である。
【0046】
上記の各層は、真空度を10-4Pa以下にして抵抗加熱ボートを用いた真空蒸着法を用いて形成した。このように形成された発光部30a,30bは、5〜10Vの駆動電圧を印可することにより、100〜300cd/m2 の輝度で発光した。
【0047】
その後、小型パネル20aの接合面を高精度な貼り合わせが可能なように高精度研磨材で平滑に研磨し仕上げた。高精度研磨材としては、酸化セリウムを用いた。この場合、発熱を抑制するとともに切削かけらおよび研磨材を除去するために水を流しながら切断および研磨を行った。小型パネル20bおよび他の2つの小型パネルについても同様に端部の切断および研磨を行った。
【0048】
さらに、図4(b)および図4(c)に示すように、接着剤110を用いて小型パネル20a,20bの接合部を接合するとともに、ガラス基板90a,90bの全面を補強用のガラス基板100に接合した。同様にして,他の2つの小型パネルも同じ補強用のガラス基板100に接合した。図4(c)は図4(b)に示すA部の拡大図である。接着剤110としては、可視光の波長領域でガラスの屈折率に近い光学特性を有する紫外線硬化型接着剤、高分子系接着剤等を用いた。
【0049】
比較例における有機EL表示装置においては、ダイシング時や研磨時の発熱による有機材料への熱ダメージにより、貼り合わせ面近傍の画素において初期輝度が前述の値100〜300cd/m2 を大きく下回ることとなった。これに対して、実施例においては、発光部を形成する前に小型パネルの接合部の加工を行うため、初期輝度が低下することはなかった。
【0050】
また、比較例においては、ダイシング加工時および研磨時に発生する熱や、加工時に発生する切削かけら(チッピング)および酸化セリウム等の研磨材を除去するために水を用いたため、加工面から侵入した水分の影響により金属からなる電極が酸化したり、電極が有機材料または無機材料からなる発光層との界面で剥離することにより発光部が劣化することとなった。その結果、ダークスポットが発生し、発光素子として機能しなくなった。これに対して、実施例においては、複数の小型パネルの発光部側の接合部にマスクを設けることにより、接着剤自身の水分が発光部側に浸透することを防止することができたため、発光部が加工時および研磨時に劣化することはなかった。
【0051】
さらに、比較例においては、発光時の発熱により発光部周辺に応力が発生し、この応力により封止層が変形し、発光部がダメージを受けていた。これに対して、実施例においては、発光部側を缶により封止したため、発熱による応力の発生が抑制され、また、封止層が存在しないため、発光部へのダメージも抑えられた。このため、一定時間発光させた後の発光部の劣化は比較例に比べて非常に少なかった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態による有機EL表示装置の構成を示す模式的平面図である。
【図2】図1の有機EL表示装置の構成を示す断面図である。
【図3】図1の有機EL表示装置の作製工程の概略図を示す。
【図4】比較例の有機EL表示装置の作製工程を示す概略断面図である。
【符号の説明】
2a〜2d 小型パネル
3a〜3d 発光部
4 マスク
10 補強用のガラス基板
11 接着剤
12 缶
Claims (9)
- 複数の表示パネルが接合されたエレクトロルミネッセンス表示装置であって、
前記複数の表示パネルの各々は基板の一面上に形成された複数の発光部を備え、前記複数の表示パネルの前記基板の他面が共通の基台上に接着剤により接合されるとともに隣接するパネルの端面が接着剤により互いに接合され、前記複数の発光部側において前記隣接する表示パネル間の接合部がマスク材により被覆されたことを特徴とするエレクトロルミネッセンス表示装置。 - 1または複数の発光部が画素を構成し、前記マスク材は画素間の間隔以下の幅を有することを特徴とする請求項1記載のエレクトロルミネッセンス表示装置。
- 前記マスク材の幅は300μm以下であることを特徴とする請求項2記載のエレクトロルミネッセンス表示装置。
- 前記接着剤の屈折率は、前記基台の屈折率と同等であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンス表示装置。
- 前記複数の表示パネルの前記複数の発光部を覆うように容器により前記複数の発光部側の空間が封止されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンス表示装置。
- 複数の発光部は有機材料により形成されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンス表示装置。
- 複数の表示パネルが接合されたエレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法であって、
複数の基板の一面上に複数の発光部をそれぞれ形成することにより複数の表示パネルを形成するステップと、
前記複数の表示パネルの端部間の境界部を前記複数の発光部側においてマスク材により被覆するステップと、
前記複数の表示パネルの前記基板の他面を共通の基台上に接着剤により接合するとともに隣接する表示パネルの端部間を接着剤により互いに接合するステップとを備えたことを特徴とするエレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。 - 前記複数の表示パネルを形成する前に、各基板の端部を加工するステップをさらに備えたことを特徴とする請求項7記載のエレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。
- 前記複数の表示パネルの前記複数の発光部を覆うように容器により前記複数の発光部側の空間を封止するステップをさらに備えたことを特徴とする請求項7または8記載のエレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。
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