JP3991476B2 - セルロース系繊維含有布帛 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、架橋改質されたセルロース系繊維を含有し、かつ、抗菌性樹脂を含有するに布帛に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、セルロース系繊維を含む布帛は、吸水性が高い、肌触りがよい、など様々な利点を有するため、衣料用途など多方面に幅広く利用されている。しかしながら、その一方で合成繊維布帛に比べ、しわになりやすい、洗濯により収縮するといった欠点があり、これらを改善する目的で、様々な加工が検討されている。なかでもホルムアルデヒドや繊維素反応型樹脂などの架橋剤を用い、セルロース系繊維を架橋改質することで、防しわ性、防縮性等の形態安定性能を付与する方法が広く行われているが、この改質を過度に行った場合、架橋の形成により布帛の柔軟性が低下するため、一般にはアミノ変性シリコーン系柔軟剤等による処理が必要である。しかしアミノ変性シリコーン等の柔軟剤を併用した場合、それらが疎水性であるため、それによって処理された布帛の吸水性が低下し、実際に衣料として着用した場合、吸汗性の悪い、着心地感の悪いものとなってしまうという問題があった。また、一方で架橋改質を十分に行わなかった場合には、必要とされるレベルの防しわ性、防縮性等の形態安定性能が付与出来ないというのが現状である。
【0003】
また、このような形態安定加工を行った布帛は、一般に吸湿性が低下しており蒸れやすい傾向にあり、夏場などの時期に衣服として着用した場合には、雑菌の繁殖により汗臭くなりやすいという欠点もあった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる背景に鑑み、防しわ性、防縮性等の形態安定性能と吸水性を兼ね備え、かつ抗菌防臭性にも優れたセルロース系繊維含有布帛を提供せんとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる課題を解決するため、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明のセルロース系繊維含有布帛は、架橋改質されたセルロース系繊維を含有する布帛であって、該布帛の下記式で定義される架橋指数が1〜4であり、かつ、該布帛の吸水性が、JIS L−1096バイレック法に基づいて測定したとき50mm以上であり、かつ、該布帛が、1価および/または2価のリン酸エステル基ならびに水酸基を有し、かつ、該リン酸エステル基が4級アンモニウム塩化されてなるビニル共重合体からなる抗菌性樹脂を含有するものであることを特徴とするものである。
【0006】
架橋指数=(A−B)
ここで、A:温度30℃、相対湿度90%RH雰囲気下での架橋改質後のセルロース系繊維の吸湿率(%)。
【0007】
B:温度20℃、相対湿度65%RH雰囲気下での架橋改質後のセルロース系繊維の吸湿率(%)。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明は、前記課題、すなわち、防しわ性、防縮性等の形態安定性能と吸水性を兼ね備え、かつ抗菌防臭性にも優れたセルロース系繊維含有布帛について、鋭意検討したところ、架橋されたセルロース系繊維含有布帛、吸水性レベルおよび特定な抗菌性樹脂との組み合わせによって、かかる課題を一挙に解決することを究明したものである。
【0009】
本発明でいうセルロース系繊維含有布帛とは、綿、麻、パルプなどの天然セルロース繊維、ビスコースレーヨンなどの再生セルロース繊維等を含有する布帛のことであり、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系繊維、ナイロン6やナイロン66などのポリアミド系繊維、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系繊維、羊毛や絹などのタンパク質系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ビニロン繊維、アセテート繊維などと混繊、混紡、交織、交編などにより混用するものも含まれる。なお、得られる効果の面からは、他の繊維と混用される場合、セルロース系繊維を繊維重量で10wt%以上含有するものであることが好ましい。
【0010】
架橋改質に用いる架橋剤としては、セルロース系繊維を構成しているセルロース分子中の水酸基、とりわけ洗濯時のしわ、収縮の原因となる非晶領域にある水酸基と反応し、セルロース分子間および分子内に架橋を形成することが可能な化合物のことであり、具体的にはホルムアルデヒドや、ジメチロールエチレン尿素、ジメチロールトリアゾン、ジメチロールウロン、ジメチロールグリオキザールモノウレイン、ジメチロールプロピレン尿素、これらのメチロール基の一部または全部をメトキシ化、エトキシ化したもの等の繊維素反応型樹脂、ポリカルボン酸類、イソシアネート類等が使用される。これらの架橋剤の中でも、セルロース系繊維の架橋改質をより効率的、効果的に行うためには、ホルムアルデヒドまたは下記化学式1で示される化合物が好ましく用いられる。
【0011】
【化2】
ここで、R1 、R2 は、−H、炭素数1〜4のアルキル基または−CH2 OR7 のいずれかである、同種または異種の基であり、R3 、R4 、R5 、R6 は、−Hまたは−OR8 のいずれかである、同種または異種の基であり、R7 、R8 は、−Hまたは炭素数1〜4のアルキル基のいずれかである、同種または異種の基であることを示す。
【0012】
かかる架橋剤のセルロース系繊維への付与方法としては、一般の各種の手段を採用することができ、具体的には、架橋剤をガス状にして付与する方法、パディング法、浸漬法、スプレー法、プリント法、コーティング法、グラビア加工法、泡加工法等が使用されるが、なかでも、架橋剤がホルムアルデヒドの場合には、ガス状にして付与する方法が、また、架橋剤が繊維素反応型樹脂、ポリカルボン酸類、イソシアネート類等である場合には、パディング法が、それぞれ好ましく使用される。
【0013】
かかる架橋剤によるセルロース系繊維の架橋改質の方法としては、一般の架橋改質方法が採用することができ、具体的には、縫製品の状態にしたセルロース系繊維含有布帛に対しホルムアルデヒドで気相処理する方法、布帛の状態のままのセルロース系繊維含有布帛に対し上述の架橋剤を付与し、縫製した後、加熱処理を施すポストキュア法、布帛の状態のままのセルロース系繊維含有布帛に対し上述の架橋剤を付与して熱処理まで行うプレキュア法等が使用されるが、これらに限定されるものではない。なお、熱処理温度としては、好ましくは80〜220℃の範囲の条件が使用される。
【0014】
セルロース系繊維の架橋改質を行うにあたり、架橋剤の反応を促進する目的で、触媒を併用することも好ましく行われ、具体的には、有機酸、有機アミン塩、塩化マグネシウム、硝酸亜鉛、ホウフッ化亜鉛、硝酸マグネシウム、塩化亜鉛等の金属塩などを用いることができる。
【0015】
本発明のセルロース系繊維含有布帛は、かかる方法により架橋改質されたセルロース系繊維を含むものであるが、その改質の程度は、下記式で定義される架橋指数が1〜4の範囲内、好ましくは2〜3.5の範囲内にあるものが採用される。
【0016】
架橋指数=(A−B)
ここで、A:温度30℃、相対湿度90%RH雰囲気下での架橋改質後のセルロース系繊維の吸湿率(%)。
【0017】
B:温度20℃、相対湿度65%RH雰囲気下での架橋改質後のセルロース系繊維の吸湿率(%)。
【0018】
かかる架橋指数は、架橋改質後のセルロース系繊維の温度30℃、相対湿度90%RH雰囲気下で吸湿率の値から温度20℃、相対湿度65%RH雰囲気下で吸湿率の値を差し引いて算出されるものであり、セルロース系繊維がどの程度架橋改質されているかを知る上での指標となる。すなわち、これは、架橋改質によりセルロース分子中の水酸基が封鎖され、結果として吸湿率の値が低下することを利用したものである。この指数が小さいものほど架橋改質の度合いが大きく、大きいものほど架橋改質の度合いが小さい。一般に未加工の木綿、麻で4〜5程度である。
【0019】
かかる架橋指数が、1より小さい場合、架橋が過度に形成され、布帛の強力や柔軟性が低下し、形態安定性は良好であるものの、実用に耐えないものとなってしまう。布帛の強力や柔軟性が低下する場合、それらを改善する目的で、一般にはアミノ変性シリコーン系柔軟剤等による処理が行われるが、アミノ変性シリコーン等の柔軟剤を併用した場合、それらが疎水性であるため、それによって処理された布帛の吸水性が低下し、実際に衣料として着用した場合、吸汗性の悪い、着心地感の悪いものとなってしまう。一方、架橋指数が4より大きい場合は、セルロース繊維の架橋改質が十分でなく、必要とされるレベルの防しわ性、防縮性等の形態安定性能が付与できない。布帛の強力、柔軟性と形態安定性のバランスを考えた場合には、該架橋指数が、2〜3.5の範囲内にあるものがより好ましく使用される。
【0020】
また、本発明のセルロース系繊維含有布帛は、JIS L−1096バイレック法で測定した吸水性が50mm以上であるものである。吸水性が50mmに満たない場合、かかる布帛を縫製して得られた衣料は、吸汗性の悪い、着心地感の悪いものとなってしまう。
【0021】
次に、本発明でいう抗菌性樹脂とは、1価および/または2価のリン酸エステル基ならびに水酸基を有しリン酸エステル基が4級アンモニウム塩化されたビニル共重合体からなるものであり、下記化学式2または3で示される構造を有するものである。
【0022】
【化3】
【化4】
上記の化学式中、〜Pは高分子主鎖を示し、R' 、R''、R''' は、有機基を示し、R1 は、炭素数8〜18のアルキル基または置換アリール基を示し、R2 は、炭素数1〜18のアルキル基、フェニル基または置換アリール基を示す。
【0023】
かかる抗菌性樹脂は、例えば、1価および/または2価のリン酸エステル基を有するビニルモノマに第3級アミンを反応させ、該リン酸エステル基をアミン塩としてから水酸基を有するビニルモノマおよび第3成分のビニルモノマとを共重合させたのち、1価のグリシジル化合物を反応せしめ、第4級アンモニウム塩化することで得られる。
【0024】
かかる抗菌性樹脂は、そのポリマ側鎖に水酸基を有しているため、架橋剤を用いて分子間および/またはセルロース系繊維との間を架橋させることで、より洗濯耐久性に優れた抗菌防臭性能を有する布帛を提供することができる。かかる架橋剤としては、セルロース系繊維の架橋改質に用いるものと同様のものを使用することができが、具体的には、ホルムアルデヒドや、ジメチロールエチレン尿素、ジメチロールトリアゾン、ジメチロールウロン、ジメチロールグリオキザールモノウレイン、ジメチロールプロピレン尿素、これらのメチロール基の一部または全部をメトキシ化、エトキシ化したもの等の繊維素反応型樹脂、ポリカルボン酸類、イソシアネート類等を使用することができる。
【0025】
かかる抗菌性樹脂および架橋剤の布帛への付与方法としては、一般の各種の手段が採用することができ、具体的には、パディング法、浸漬法、スプレー法、プリント法、コーティング法、グラビア加工法、泡加工法等の手段を使用することができるが、作業効率の面からは、セルロース繊維の架橋改質用架橋剤と同時付与、同時処理が好ましく採用される。
【0026】
かかる抗菌性樹脂の含有量は、繊維重量に対して0.2〜10wt%であることが好ましい。含有量が0.2wt%に満たないと十分な抗菌防臭性が得られないし、また、10wt%を越えると布帛の風合いが粗硬なものとなってしまうばかりでなく、コストも高くなる。
【0027】
本発明においては、布帛の柔軟性を向上させる目的で、シリコーン系柔軟剤を付与するとことも好ましく行われる。ただし、通常一般に用いられてるシリコーン系柔軟剤、とりわけアミノアルキル基含有ポリシロキサンを主成分とするアミノ変性シリコーン系柔軟剤を用いて布帛を処理した場合、処理された布帛の柔軟性やその効果の耐久性は優れるものの、処理布帛が撥水性を示すようになり、本発明の防しわ性、防縮性等の形態安定性能と吸水性を兼ね備えたセルロース系繊維含有布帛に適用するには不向きである。
【0028】
従って、本発明におけるシリコーン系柔軟剤は、該布帛の吸水性を阻害することなく、柔軟な風合いを与えるものが好ましく、具体的には、1分子中にアミノ基とポリオキシアルキル基の両方を含有するオルガノポリシロキサンと、分子中にアミンまたは水酸基と反応可能な基を少なくとも1個含有するポリエチレンポリアミン高級脂肪酸型アミド化合物とを主成分とするものが好ましく使用される。
【0029】
かかるオルガノポリシロキサンは、1分子中にアミノ基とポリオキシアルキル基の両方を含有するもの、すなわちアミノポリエーテル変性シリコーンであれば特に限定されるものではないが、好ましくは25℃における粘度が100〜100000cst、さらにアミノ等量が300〜3000の範囲にあるものが好ましく使用される。
【0030】
また、アミノポリエーテル変性シリコーンのアミノ基は、黄変防止のため該アミノ基と反応性を有する化合物、有機酸または有機酸の無水物もしくは塩化物等により該アミノ基の一部もしくは全部が封鎖されていてもよい。
【0031】
また、ポリエチレンポリアミン高級脂肪酸型アミド化合物としては、ポリエチレンポリアミン高級脂肪酸アミド、ポリエチレンポリアミン高級脂肪酸アミドの尿素縮合物、ポリエチレンポリアミン高級脂肪酸型アミド部分のイミダゾリニウム塩などとジカルボン酸、環状酸無水物、ジグリシジルエーテル、ジイソシアネート等との反応物などが使用される。
【0032】
これらの構成成分であるポリエチレンポリアミンとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンベンタミン、アミノエチルエタノールアミンなどが使用される。高級脂肪酸としては、パーム油、牛脂、ナタネ油、米糠油、魚油などの天然油脂由来のものが一般的であるが、化学的に合成した高級脂肪酸も使用することができる。これらのうち好ましいものは、ヨウ素価が50以下で炭素数が12〜24の高級脂肪酸である。ジカルボン酸、環状酸無水物としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、コハク酸、無水コハク酸、酒石酸、フタル酸、無水フタル酸などが使用される。ジグリシジルエーテルとしては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリオキシアルキレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルなどを使用することができる。ジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネートなどを使用することができる。
【0033】
ポリエチレンポリアミン高級脂肪酸型アミド化合物を構成するポリエチレンポリアミンと高級脂肪酸のモル比は、好ましくは1:1.0〜2.5、さらに好ましくは1:1.2〜1.8である。
【0034】
かかるシリコーン系柔軟剤の主成分であるアミノポリエーテル変性シリコーンとポリエチレンポリアミン高級脂肪酸アミドの重量比は、好ましくは1:0.2〜1.5、さらに好ましくは1:0.3〜1.0である。ポリエチレンポリアミン高級脂肪酸アミドが0.2未満の場合には、十分な柔軟性が得られず、また、1.5を越える場合は、処理された布帛の吸水性が低下するので好ましくない。かかるシリコーン系柔軟剤の繊維重量に対する付着量は、0.06〜1.0wt%の範囲であることが好ましい。付着量が0.06wt%未満の場合、布帛に十分な柔軟性、平滑性を付与することが困難であり、また1.0wt%より大きい場合には、柔軟性、平滑性は向上するものの、目ズレなどの欠点を引き起こす原因となる。
【0035】
本発明においては、布帛の吸水性を向上させる目的で親水性樹脂、好ましくは親水性ポリエステル樹脂を付与する。中でもポリアルキレングリコール−ポリエステルブロック共重合体を主成分とするものが、より好ましく使用される。ここでいうポリアルキレングリコールとは、分子中に−Cn H2nO−(n=2〜4)なる主鎖を有するものを意味するものであり、具体的にはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、または、これらのブロックポリマー等を使用することができる。かかるポリアルキレングリコールの分子量は、好ましくは300〜40000、より好ましくは1000〜10000の範囲にあるものが使用される。分子量が300に満たない場合、繊維への付着耐久性が不十分になる傾向にあり、分子量が40000を越えると、分散性が低下する傾向にある。
【0036】
また、かかるポリアルキレングリコールをブロック共重合するポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸とアルキレングリコールからなるものが好ましく使用される。かかる芳香族ジカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、テレフタル酸の低級アルキルエステル、イソフタル酸、イソフタル酸の低級アルキルエステル等が使用される。また、アルキレングリコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等が使用される。
【0037】
かかる親水性ポリエステル樹脂の繊維重量に対する付着量は、0.03〜1.0wt%の範囲であることが好ましい。付着量が0.03wt%未満の場合、親水性ポリエステル樹脂を付与したことによる効果は少なく、また1.0wt%より大きい場合には、布帛の吸水性は向上するものの、布帛にヌメリ感が起こり、また染色堅牢度低下の原因ともなる。
【0038】
本発明のセルロース系繊維含有布帛を用いてなる繊維製品は、防しわ性、防縮性等の形態安定性、吸水性、抗菌防臭性に優れており、ドレスシャツ、学童用スクールシャツ、ユニフォーム、婦人衣料、スポーツ衣料、下着類、靴下類等の用途に好適である。
【0039】
【実施例】
以下、実施例により、さらに詳細に説明する。
【0040】
評価には、常法により精錬、漂白、マーセライズを行った、タテ・ ヨコ 45番手のポリエステル45%、綿55%からなる目付112g/m2 のブロード織物を用いた。かかる織物を架橋剤、触媒、抗菌性樹脂、シリコーン系柔軟剤、親水性ポリエステル樹脂等を含む加工液に浸漬し、絞り率80%でパディングした後、100℃×2分予備乾燥し、ついで170℃×1分熱処理して、試料を得た。
【0041】
なお、実施例中の架橋剤、触媒、抗菌性樹脂、シリコーン系柔軟剤、親水性ポリエステル樹脂としては、以下のものを用いた。
【0042】
架橋剤:ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素樹脂水溶液(固形分20%)
触媒:塩化マグネシウム
抗菌性樹脂:リン酸エステル基を有するビニルモノマとして下記化学式4で示される化合物を36部と、第3級アミンとしてN, N−ジメチルラウリルアミン39部とを反応させ、リン酸エステル基をアミン塩としてから、水酸基を有するビニルモノマとして、2−ヒドロキシエチルアクリレート24部、および、第3成分のビニルモノマとして、メトキシポリエチレングリコールメタクリレー(エチレングリコール繰り返し単位23)60部と共重合させた後、1価のグリシジル化合物として、n−ブチルグリシジルエーテルを用いて、4級アンモニウム塩化した化合物を用いた。
【0043】
【化5】
シリコーン系柔軟剤:アミノポリエーテル変性シリコーン(粘度300cst、アミノ当量4000)10部、ジエチレントリアミンとステアリン酸と無水マレイン酸とのアミド化合物3部、水87部 からなるエマルジョン(固形分20%)、比較として市販のアミノ変性シリコーン系柔軟剤も使用した。
【0044】
親水性ポリエステル樹脂:ジメチルテレフタレート500部、エチレングリコール400部、ポリエチレングリコール(分子量3000)の共重合エマルジョン(固形分10%)を用いた。
【0045】
実施例および比較例中の評価は、下記の方法で行った。
【0046】
[架橋指数]
架橋指数=(A−B)
ここで、A:温度30℃、相対湿度90%RH雰囲気下での架橋改質後のセルロース系繊維の吸湿率(%)。
【0047】
B:温度20℃、相対湿度65%RH雰囲気下での架橋改質後のセルロース系繊維の吸湿率(%)。
【0048】
[吸水性(バイレック法)]
JIS L−1096 バイレック法 で吸水高さを測定した。数値が大きいほど、吸水性が良好なことを示す。
【0049】
[吸水性(滴下法)]
JIS L−1018 A法 滴下法 で吸水時間を測定した。数値が小さいほど、吸水性が良好なことを示す。
【0050】
[防しわ性]
AATCC−124−1984 5段階レプリ法に基づいて判定を行った。
【0051】
5級(良好)〜1級(不良)
[洗濯収縮]
JIS L−1042 G法 家庭洗濯法で布帛のタテ方向、ヨコ方向の収縮率を測定した。なお、洗濯後は脱水機で絞らずに、乾燥ろ紙の間にはさみ、軽く押さえて脱水し、水平に置いた金網の上で乾燥した。
【0052】
[引裂強力]
JIS L−1096 D法 ペンジュラム法で布帛のタテ糸切断方向、ヨコ糸切断方向の引裂強力を測定した。
【0053】
[風合い]
ハンドリングにより以下の基準で評価した。
【0054】
○ :柔軟性に富んだ風合いである。
【0055】
△ :やや粗硬感で、芯の残る風合いである。
【0056】
× :粗硬で、柔軟性の全くない風合いである。
【0057】
[抗菌性]
菌数測定法により評価した。試験菌として黄色ブドウ球菌(stapylococcus aureus 209p )を用い、滅菌試料布上に上記試験菌のブイヨン懸濁液を注加し、密閉容器注で37℃、18時間培養後の生菌数を測定した。合格レベルは、測定結果から次の基準に従って判定した。
【0058】
log(B/A)>2の条件下、log(B/C)を菌数増減値差とし、1.6以上を合格レベルとした。ただしAは未加工品の接種直後分散回収した菌数、Bは未加工品の18時間培養後分散回収した菌数、Cは加工品の18時間培養後分散回収した菌数をあらわす。
【0059】
実施例1〜3
表1に示された組成の加工液を用い、試料を作製した。評価結果を併せて表1に示す。
【0060】
比較例1〜4
表1に示された組成の加工液を用い、試料を作製した。評価結果を併せて表1に示す。
【0061】
表1から、比較例1および3の布帛は、架橋指数が4より大きく、十分な形態安定性能が得られないことがわかる。比較例2の布帛は、抗菌性樹脂を含まない加工液で処理した布帛についての結果であるが、上記判定基準より抗菌性能が合格レベルに達していないことがわかる。比較例4の布帛は、従来一般のアミノ変性シリコーン樹脂で処理して得られた布帛であるが、十分な吸水性が得られていないことがわかる。
【0062】
【表1】
【0063】
【発明の効果】
本発明によれば、防しわ性、防縮性等の形態安定性能と吸水性を兼ね備えたセルロース系繊維含有布帛を安定して提供することができる。
Claims (11)
- 架橋改質されたセルロース系繊維を含有する布帛であって、該布帛の下記式で定義される架橋指数が1〜4であり、かつ、該布帛の吸水性が、JISL−1096バイレック法に基づいて測定したとき50mm以上であり、かつ、該布帛が、1価および/または2価のリン酸エステル基ならびに水酸基を有し、かつ、該リン酸エステル基が4級アンモニウム塩化されてなるビニル共重合体からなる抗菌性樹脂を含有し、該抗菌性樹脂が、それ自身および/または該セルロース系繊維と架橋剤により架橋されているものであることを特徴とするセルロース系繊維含有布帛。
架橋指数=(A−B)
ここで、A:温度30℃、相対湿度90%RH雰囲気下での架橋改質後のセルロース系繊維の吸湿率(%)。
B:温度20℃、相対湿度65%RH雰囲気下での架橋改質後のセルロース系繊維の吸湿率(%)。 - 該布帛が、該抗菌性樹脂を繊維重量に対して0.2〜10wt%含有するものである請求項1に記載のセルロース系繊維含有布帛。
- 該架橋指数が、2〜3.5である請求項1または2に記載のセルロース系繊維含有布帛。
- 該布帛が、架橋剤によって架橋改質されたセルロース系繊維を繊維重量で10wt%以上含有するものである請求項1〜3のいずれかに記載のセルロース系繊維含有布帛。
- 該架橋剤が、ホルムアルデヒドである請求項1〜4のいずれかに記載のセルロース系繊維含有布帛。
- 該布帛が、1分子中にアミノ基とポリオキシアルキル基の両方を含有するオルガノポリシロキサンと、分子中にアミンまたは水酸基と反応可能な基を少なくとも1個含有するポリエチレンポリアミン高級脂肪酸型アミド化合物とを主成分とするシリコーン系柔軟剤とが付与されたものである請求項1〜6のいずれかに記載のセルロース系繊維含有布帛。
- 該ポリエチレンポリアミン高級脂肪酸型アミド化合物が、ポリエチレンポリアミンと高級脂肪酸、および低級ジカルボン酸、環状酸無水物、低級ジグリシジルエーテル、ジイソシアネートの中から選ばれた少なくとも1種を反応させて得られるものである請求項7記載のセルロース系繊維含有布帛。
- 該布帛が、該シリコーン系柔軟剤を繊維重量に対して0.06〜1.0wt%付与してなるものである請求項7または8記載のセルロース系繊維含有布帛。
- 該布帛が、ポリアルキレングリコール−ポリエステルブロック共重合体を主成分とする親水性ポリエステル系樹脂が付与されてなるものである請求項1〜9のいずれかに記載のセルロース系繊維含有布帛。
- 該布帛が、該ポリアルキレングリコール−ポリエステルブロック共重合体を繊維重量に対して0.03〜1.0wt%付与してなるものである請求項10記載のセルロース系繊維含有布帛。
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