JP3987814B2 - ボトル缶用アルミニウム合金板 - Google Patents

ボトル缶用アルミニウム合金板 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ボトル缶に適用され、厳しいネッキングが施された場合でも、縦スジの発生が抑えられるボトル缶用アルミニウム合金板に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、各種の飲料缶等の包装容器の素材として、成形性、耐食性および強度等の面から、アルミニウム合金板が幅広く適用されている。そして、前記アルミニウム合金板に絞り加工やしごき加工(以下、「DI(Drawing and Ironing)成形」という)等を施して形成された包装容器用アルミニウム缶(以下「DI缶」という)のニーズが増大し、種々の形状を有するDI缶の開発が活発となっている。
【0003】
前記DI缶に使用されるアルミニウム合金板としては、所望の特性が得られるように成分調整が行われたAl―Mn系の3004合金(JIS 4000)が多く用いられ、鋳造処理、均質化熱処理、熱間圧延処理、冷間圧延処理、焼鈍処理および最終冷間圧延処理の各工程を経て、所定の厚さを有するアルミニウム合金板に形成される。
【0004】
そして、このように形成されたアルミニウム合金板に対して、カッピング加工やDI成形等の缶体成形が施されて胴体部が形成され、続いてこの胴体部にネッキング加工が施されることで前記胴体部の径に比べてエンド部の開口部の口径が小さくなるように加工されて(以下「縮径する」という)、図2に示すようなDI缶が製造される。図2は従来の多段ネックを有するDI缶の構成を模式的に示す斜視図である。
【0005】
図2に示すように、DI缶11は、胴体部12とこの胴体部12の所定部分にネック部13が形成され、このネック部13のエンド部には開口部14が形成され、DI成形により一体に成形加工された2ピースDI缶として構成されたものである。そして、この開口部14と対向する部分の底部が胴体部12と連続して構成されている。
【0006】
また、DI缶11の胴体部12の直径D3に対する開口部14の直径D4の絞り比(以下「縮径率」という)R2は、R2={(D3−D4)/D3}×100%で表される。このようなDI缶1は、ネック部13のエンド部の開口部14の口径が、胴体部12の直径に比べて小さな缶体である。
【0007】
近年では、前記DI缶の上部が多段階でネッキング加工されて、エンド部の開口部の口径がより小さく形成されたものが主流となってきており、これに伴って前記DI成形の加工度も次第に厳しいものとなってきた。
【0008】
前記DI缶の製造工程に含まれるDI成形は、アルミニウム合金板に対してダイス等を用いて行われる。その際、比較的厳しい成形加工であるしごき加工の工程において、前記ダイスとアルミニウム合金板が接触する部位の状態、または前記アルミニウム合金板にルブリケータによって塗布された潤滑油の状態、すなわち前記ダイスとアルミニウム合金板との間の潤滑状態に応じて、前記しごき加工が施されたDI缶の表面の平滑性が部分的に低下する場合がある。このとき、前記ダイスによりアルミニウム合金板と接触する部位で荒れが発生したり、この部位で摩耗粉が発生したりして、前記DI缶の外表面のしごき方向にスジ状の微細な面荒れ(以下「縦スジ」という)が形成され、外観不良が生じる場合がある。
【0009】
このようにDI缶の外表面に縦スジが発生する主な原因としては、前記アルミニウム合金板の表面粗さ、金属間化合物のサイズおよび単位面積当たりの個数密度等が挙げられる。また、前記DI缶を製造する際のプレス工程において、前記アルミニウム合金板に塗布される潤滑油の種類や量が適切でない場合にも、DI缶の外表面に縦スジが発生する。更に、前記ダイスでアルミニウム合金板と接触する部位の材質、表面の潤滑性、または耐焼付性等も、前記DI缶の外表面における縦スジの形成にその影響を及ぼす。
【0010】
このようなDI缶の表面の縦スジの発生を防止するために、次のような技術が提案されている。
(1)例えば、特許文献1では、アルミニウム合金板の成分を調整することにより、金属間化合物の粒径及び分布、アルミニウム合金の表面性状を適切に制御し、縦スジの発生を抑制することが可能なキャン用アルミニウム合金板が提案されている。
このキャン用アルミニウム合金板によれば、カップ成形時の潤滑状況が劣悪な場合においても縦スジ発生を効果的に抑制でき、耐縦スジ性を著しく向上させることができるという効果が得られるとされている。
【0011】
(2)また、例えば、特許文献2では、アルミニウム合金板のミクロ組織が微細化されるように、成分を調整すると共に製造条件を適正化したアルミニウム合金板の製造方法が提案されている。
このアルミニウム合金板の製造方法によれば、得られるアルミニウム合金硬質板は高強度、高成形性を有し、更に、しごき加工性、塗装印刷(ベーキング)後の成形性(ネック、フランジ)に優れ、かつしごき加工前の絞りカップにおいて側壁のリューダースマーク及びカップコーナー部のくびれに対して優れた特性を有する効果が得られるとされている。
【0012】
(3)更に、例えば、特許文献3では、成分が調整され、所定の表面の粗さが付与されたアルミニウム合金板に、粘度および絶縁抵抗を適正化した潤滑油を静電塗布したキャン用アルミニウム合金板が提案されている。
このキャン用アルミニウム合金板によれば、成形性が高く、適切な潤滑性が得られるため、煩雑な維持管理を必要とするルブリケータによる塗油を行わなくても、DI缶の表面における縦スジの形成を抑制する効果が得られるとされている。
【0013】
この出願の発明に関連する先行技術文献としては次のようなものがある。
【特許文献1】
特開昭64−68439号公報(第2頁第3欄)
【特許文献2】
特開平4−214845号公報([0007]〜[0009])
【特許文献3】
特開平11−100629号公報([0009]〜[0010])
【0014】
なお、前記(1)〜(3)の特許文献で開示されている従来技術は、いずれもDI缶のエンド部の開口部の口径が胴体部の直径に比べて比較的大きな缶体(縮径率が9%以下のものであり、この縮径率は、図2で(D3−D4)/D3×100%)に対して適用されている。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
一方、前記DI缶と同様の製造方法で製造される、胴体部と開口部とスクリューキャップの蓋とを備えて構成されたボトル形状を有する缶(以下「ボトル缶」という)のニーズが高まってきている。このようなボトル缶としては、例えば、図1に示すようなボトル缶1が挙げられる。このボトル缶1は、胴体部2とネック部3と底部とがDI成形により一体に成形加工された2ピースボトル缶として構成されたものである。すなわち、このボトル缶1は、胴体部2とこの胴体部2の所定部分にネック部3が形成され、このネック部3のエンド部には開口部4が形成されている。また、この開口部4の近傍の外周には蓋取り付け用のネジ切り加工が施されてネジ部が設けられている。そして、この開口部4と対向する部分の底部が胴体部2と連続して構成されている。
【0016】
また、このボトル缶1の胴体部2の直径D1に対する開口部4の直径D2の絞り比(以下「縮径率」という)R1は、R1={(D1−D2)/D1}×100%で表される。
このようなボトル缶1は、ネック部3のエンド部の開口部4の口径が、胴体部2の直径に比べて一段と小さくなるように形成された缶体である。すなわち、このボトル缶1の縮径率R1は30%以上にも達し、その加工度が、図2に示すような従来のDI缶と比べて更に一段と厳しいものとなっている。
【0017】
前記ボトル缶の製造工程に含まれるしごき加工で缶の外表面に縦スジが形成された場合、しごき加工の次工程であるネッキング加工で、ボトル缶のエンド部の開口部の口径をある程度小さくすると、このボトル缶の外表面に形成された前記縦スジが比較的狭い部分に集中するようになる。特に、ボトル缶においては、通常、前記ネッキング加工で缶の上部の開口部を縮径する比率が30%以上と高いため、前記縦スジは、たとえ凹凸の程度が軽微で目視ではほとんど認識されないようなものであっても、前記ネッキング加工が施された後では前記縦スジの凹凸の程度が顕著に増大して前記縦スジが強調されることとなる。
【0018】
このように、前記ボトル缶では、従来の縮径率が比較的小さい前記DI缶と比較して、ネッキング加工で外表面に縦スジが形成され易い。
また、前記ボトル缶においては、蓋部となる上端部に、らせん状の溝を形成するネジ切り加工および缶体のエンド部を外側に折り曲げる加工であるカーリング加工が施された後、この上端部に蓋を巻締めて密封性が保持されるようになっている。このため、前記カーリング加工が施された開口部に前記縦スジが存在すると、この開口部の表面の粗さが増すことにより、この開口部と蓋との密封性が低下する。その結果、前記ボトル缶に封入された内容物が漏れ易くなる。
【0019】
したがって、ボトル缶を製造する際に行われるDI成形や、ネッキング加工、カーリング加工等の加工度のより厳しい成形加工が施されても、前記縦スジの発生を充分に抑えることが可能なアルミニウム合金板が強く求められている。
【0020】
また、前記ボトル缶の製造工程では、DI成形による製缶後、洗浄がなされ、更に耐食性を高めるためのクロメート処理等の化成処理が行われる。
その後、前記ボトル缶の外表面には、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂あるいはアクリル樹脂をベース樹脂としてこれに架橋剤を加えた塗料を用いて塗装が施され、ベースコートおよびクリア塗膜が5〜10μm程度形成される。
【0021】
また、前記ボトル缶の内表面には、エポキシ・フェノール、エポキシ・尿素、ビニルオルガノゾル等の溶剤系あるいはアクリル変性エポキシ樹脂を含む水性塗料を用いてスプレー塗装が施され、その後オーブンで塗装焼け付きを行うことにより、塗膜が3〜5μm程度形成される。
このようにして前記ボトル缶の内外表面に塗膜が形成された後、高い縮径率の形状に加工するネッキング加工、更にはネジ切り加工が行われてボトル缶が形成される。
なお、このようにして得られたボトル缶の内表面および外表面では、上記の各工程において、下記のようにそれぞれ異なった加工を受ける。
【0022】
すなわち、ボトル缶の外表面はダイスとじかに接触し、特にしごき加工の工程ではダイスのテーパー部により素材が薄肉化されるため、アルミニウム合金素材の内部の金属間化合物が表面に露出してダイスと接触することになる。
一方、ボトル缶の内表面はダイスと接することがなく、しごき加工の工程ではポンチの表面に沿って伸ばされる加工を受けるため、アルミニウム合金素材の内部の金属間化合物は表面にはほとんど露出せず、アルミニウム合金素材の表面に元々ある金属間化合物が内表面の状態に関与する。
【0023】
特に、ボトル缶の内表面においては、塗膜に欠陥があると、内容物がアルミニウム合金の素地にじかに接触することになり、この状態が長期間経過すると、アルミニウム合金の素地で溶解や腐食が生じて内容物の液漏れが生じるおそれがある。このため、ボトル缶の内表面に存在する塗膜欠陥の有無を評価する手法として、一般に、ERV(Enamel Rate Value)をはじめとする評価パラメータが用いられている。
【0024】
この「ERV」をボトル缶の内表面に存在する塗膜欠陥の評価に用いる際には、例えば、ボトル缶内に食塩水と界面活性剤を含む溶液を満たしてこの溶液とボトル缶の外表面との間に所定の直流電圧を印加し、前記両者の間に流れる電流値を電流計で測定することにより「ERV」が得られる。この「ERV」はボトル缶の内表面に存在する塗膜欠陥の数と相関関係があり、塗膜欠陥が多い程高くなる。本発明者らは、ボトル缶の内表面の「ERV」を測定することにより存在する塗膜欠陥の程度を見積り、ボトル缶の内表面の塗膜欠陥が充分に少ないときの「ERV」について調査した。その結果、ボトル缶に、内容物として酸性でかつ塩素イオンを含んだ腐食性の強い溶液が封入される場合には、このボトル缶の内表面のERVとして10mA以下が要求されることが明らかとなった。
【0025】
また、本発明者らが、ボトル缶の外表面の縦スジと、ボトル缶の内表面の塗膜欠陥との関係について詳細に検討したところ、たとえボトル缶の外表面に目視で縦スジが発見されないような状況下であっても、ERVが10mAを超えると、その内表面には塗膜欠陥が存在する場合が多いことが明らかとなった。
本発明は、このような問題点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、ネッキング加工によりエンド部の開口部の口径を縮径化させる比率をより高めても、このエンド部および開口部で縦スジの発生が抑制され、かつ、ERV性に優れるボトル缶用アルミニウム合金板を提供することにある。
【0026】
【課題を解決するための手段】
本発明者らが鋭意検討した結果、アルミニウム合金に含有される組成を適正化すると共に、アルミニウム合金に含有される金属間化合物のサイズと単位面積当たりの個数密度を規制し、なおかつ、このアルミニウム合金の組織形態、表面の酸化皮膜の平均膜厚および中心線平均粗さRaを最適な範囲に規制することによって前記課題を解決することが可能なことを見い出し、本発明を創作するに至った。
【0027】
即ち、本発明に係るボトル缶用アルミニウム合金板は、均質化熱処理工程および圧延処理工程の前処理工程として、鋳造されたアルミニウム合金のスラブの粗大セル層を含む当該スラブの表面を前記粗大セル層が除去されるように面削する面削処理工程を含む製造方法により製造されるボトル缶用アルミニウム合金板であって、前記アルミニウム合金が、Cuを0.1〜0.4質量%、Mgを0.5〜1.5質量%、Mnを0.5〜1.5質量%、Feを0.2〜0.7質量%、Siを0.1〜0.3質量%含有し、残部がAlと不可避的不純物から構成される。さらに、前記ボトル缶用アルミニウム合金板は、Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物の最大長が15μm以下であり、最大長が8μm以上である前記Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物の単位面積当たりの個数密度が98個/mm 以上179個/mm以下であり、かつ、最大長が10μm以上である前記Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物の単位面積当たりの個数密度が25個/mm 以上67個/mm 以下であると共に、前記アルミニウム合金板の表面に形成される酸化皮膜の平均膜厚が30nm以下であり、かつ、前記アルミニウム合金板の表面の中心線平均粗さRaが0.30〜0.45μmである構成とした。
【0028】
このように構成することにより、Cu、Mg、Mn、FeおよびSiの各含有量を規制したので成形性がより向上し、また、最大長が8〜15μmであるAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物の単位面積当たりの個数密度および表面の酸化皮膜の平均膜厚を規制したのでDI成形等でダイスへの焼け付きが防止され、摩耗粉の発生量が抑制されて、成形された容器の外表面の縦スジの発生が抑えられ、更に、表面の中心線平均粗さRaを規制したので、成形された容器の内表面に形成される塗膜の欠陥が抑えられるボトル缶用アルミニウム合金板が具現される。したがって、例えば、ボトル缶の製造工程で、このエンド部の開口部の口径を縮径化させる比率が、30%以上にも達するような厳しいネッキング加工が施されても、このボトル缶の外表面で縦スジの発生が抑えられ、かつ、このボトル缶の内表面がERV性に優れるボトル缶用アルミニウム合金板が得られる。
【0029】
ここで、「ERV性」とは、前記のようにしてボトル缶の内表面のERVを測定したときのERVの大きさを指し、前記の「ERV性に優れる」とはボトル缶の内表面に存在する塗膜欠陥が実用的に充分に少ないことを意味する。
なお、本発明者らは、このようなボトル缶の内表面の「ERV性に優れる」状態は、ボトル缶の内表面のERVが10mA以下である状態と対応することを、実験により明らかにしている。
【0030】
なお、このアルミニウム合金板の表面の中心線平均粗さRaは、JIS B 0601で規定される方法によって測定され、本発明に含まれるアルミニウム合金板の圧延方向に対して垂直な方向で測定される。また、前記の最大長が8〜15μmであるAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物は、表面に露出したもの、あるいは、バルク中のものを含み、最大長が8〜15μmであるAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物の単位面積当たりの個数密度とは、最表面、または、ある深さにおける単位面積当たりの個数を意味する。
【0032】
また、前記したボトル缶用アルミニウム合金板は、Cu、Mg、Mn、FeおよびSiの各含有量を規制したので成形性がより向上し、また、最大長が10μm以上であるAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物の単位面積当たりの個数密度および表面の酸化皮膜の平均膜厚を規制したのでDI成形等でダイスへの焼け付きが防止され、摩耗粉の発生量が抑制されて、成形された容器の外表面の縦スジの発生が抑えられ、更に、表面の中心線平均粗さRaを規制したので、成形された容器の内表面に形成される塗膜の欠陥が抑えられるボトル缶用アルミニウム合金板が具現される。したがって、例えば、ボトル缶の製造工程で、このエンド部の開口部の口径を縮径化させる比率が、30%以上にも達するような厳しいネッキング加工が施されても、このボトル缶の外表面で縦スジの発生が抑えられ、かつ、このボトル缶の内表面がERV性に優れるボトル缶用アルミニウム合金板が得られる。
【0034】
さらに、前記したボトル缶用アルミニウム合金板は、均質化熱処理や圧延処理前にスラブ鋳造時に生成された、添加した合金元素の分布が組織内で不均一な偏析部分、特に粗大セル層を除去することができるので、前記するボトル缶用アルミニウム合金板を得ることができる。
すなわち、前記ボトル缶用アルミニウム合金板は、Cu、Mg、Mn、FeおよびSiの組成を有している場合には、最大長が8〜15μm、より望ましくは、10μm以上〜15μmであって、その単位面積当たりの個数密度が179個/mm以下、より望ましくは、67個/mm以下であるAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物を備え、かつ、アルミニウム合金板の表面に形成される酸化皮膜の平均膜厚が30nm以下であり、さらに、アルミニウム合金板の表面の中心線平均粗さRaが0.30〜0.45μmであって、さらに、しごき加工性、ERV性、および、液漏れの生じない優れたボトル缶用アルミニウム合金板を製造することができる。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明に係るボトル缶用アルミニウム合金板は、製造方法について特に限定されるものではなく、従来公知のアルミニウム合金板の製造方法を適用することができ、例えば、次のようにして製造される。すなわち、本発明にあっては、Al−Mn系3004合金(JIS 4000)を用いて、まずDC鋳造処理(Direct−chill casting:直接チル鋳造処理)により作製された鋳塊に均質化熱処理を施した後、この鋳塊に熱間圧延処理を施してアルミニウム合金板を形成し、続いてこのアルミニウム合金板に冷間圧延処理および焼鈍処理を所定回数施し、引き続き最終冷間圧延処理を施すことによって所望の板厚を有する本発明に係るボトル缶用アルミニウム合金板が作製される。
【0036】
次に、本発明に係るボトル缶用アルミニウム合金板で、各種成分の含有量、Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物のサイズと単位面積当たりの個数密度、表面の中心線平均粗さRaおよび酸化皮膜の平均膜厚を規制した理由について説明する。
[Cuの含有量;0.1〜0.4質量%]
本発明に係るボトル缶用アルミニウム合金板に含まれるCuは、材料の強度に寄与する元素である。また、前記した製造工程で焼鈍処理が施される際に、Cuはアルミニウム合金中に固溶した状態となる。このため、本発明に係るボトル缶用アルミニウム合金板をボトル缶に適用する場合には、成形加工した後に行われる塗装焼け付き工程で、成形品に対してCuの析出による硬化性が付与される。このとき、Cuの含有量が0.1質量%未満であると所要の材料強度が得られず、またCuの含有量が0.4質量%を超えると強度が過剰になって成形性が低下する。したがって、本発明では、Cuの含有量を0.1〜0.4質量%とする。
【0037】
[Mgの含有量;0.5〜1.5質量%]
本発明に係るボトル缶用アルミニウム合金板に含まれるMgは、前記のCuと同様に材料の強度に寄与する元素である。このMgの含有量が0.5質量%未満であると所要の強度が得られ難く、またMgの含有量が1.5質量%を超えると加工硬化の度合いが大きくなって成形性が低下する。したがって、本発明では、Mgの含有量を0.5〜1.5質量%とする。
【0038】
[Mnの含有量;0.5〜1.5質量%]
本発明に係るボトル缶用アルミニウム合金板に含まれるMnは、材料の強度に寄与すると共に、Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物を形成し、しごき加工の際にアルミニウム合金板がダイスへ凝着するのを防止する役割を果たす。このMnの含有量が0.5質量%未満であると、Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物の形成が充分に行われないと共に、材料の強度も不足する。また、このMnの含有量が1.5質量%を超えると強度が過剰となり、更に、Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物が粗大になるため、しごき加工の際に、成形された容器の内表面に深いスジ状の欠陥が生じ易くなる。その結果として、この容器の内表面の塗膜の密着性が低下し、ERV性が低下することとなる。このため、本発明では、Mnの含有量を0.5〜1.5質量%、さらに望ましくは0.7質量%〜1.5質量%とする。
【0039】
[Feの含有量;0.2〜0.7質量%]
本発明に係るボトル缶用アルミニウム合金板に含まれるFeは、Mnと同様にAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物を形成し、しごき加工の際にアルミニウム合金板がダイスへ凝着するのを防止する役割を果たす。このFeの含有量が0.2質量%未満であると、アルミニウム合金板がダイスへ凝着するのを防止するために必要な、最大長が2μm以上のAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物が形成され難くなる。また、このFeの含有量が0.7質量%を超えると、最大長が20μmを超えるような巨大なAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物が生成して胴切れ(しごき加工中に缶胴体部が破断する現象)に繋がり易くなると共に、Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物が粗大になるため、しごき加工の際に、成形された容器の内表面に深いスジ状の欠陥が生じ易くなる。このため、この容器の内表面の塗膜の密着性が低下し、ERV性が低下することとなる。したがって、本発明では、Feの含有量を0.2〜0.7質量%、さらに望ましくは0.35〜0.50質量%とする。
【0040】
[Siの含有量;0.1〜0.3質量%]
本発明に係るボトル缶用アルミニウム合金板に含まれるSiは、均質化熱処理の際にAl−Mn−Fe系金属間化合物と結び付いて、より高い硬度を有するAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物を形成する。このSiの含有量が0.1質量%未満であるとAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物が充分に形成されない。また、このSiの含有量が0.3質量%を超えると、材料の強度あるいは再結晶化の挙動に悪影響を及ぼす。したがって、本発明では、Siの含有量を0.1〜0.3質量%とする。
【0041】
[不可避的不純物]
なお、本発明においては、不可避的不純物として、Cr:0.1質量%以下、Zn:0.5質量%以下、Ti:0.1質量%以下、Zr:0.1質量%以下、B:0.1質量%以下の含有は本発明の効果を妨げるものではなく、このような不可避的不純物の含有は許容される。
【0042】
[Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物のサイズ、単位面積当たりの個数密度:最大長が8〜15μmのものが179個/mm2以下]
本発明に係るボトル缶用アルミニウム合金板に含まれるAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物は、硬度が非常に高く、しごき加工の際にはアルミニウム合金板がダイスに凝着して生じる焼け付きを防止する効果、すなわち、ダイスに対して固形潤滑剤のような役割を果たす。しかし、アルミニウム合金板で、最大長が8〜15μmであるAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物の単位面積当たりの個数密度が179個/mm2を超えると、ダイスの表面に面荒れを発生させ易くなって、成形された容器の外表面に縦スジが発生し易くなると共に、しごき加工性が低下して胴切れ(しごき加工中に缶胴体部が破断する現象)が発生し易くなる。更に、ネッキング加工が施されたボトル缶等の容器の内表面では塗膜欠陥が発生し易くなり、ERV性が低下する。また、例えば、しごき加工後にポンチからボトル缶を外す際に内表面に露出したAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物がポンチと擦れるため、最大長が8〜15μmであるAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物の単位面積当たりの個数密度が179個/mm2を超えると、ポンチ表面で面荒れが生じ易くなり、その結果として、ポンチの寿命が短くなるといった問題が懸念される。したがって、本発明においてはAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物のサイズは、最大長が8〜15μm、より望ましくは、10μm以上であって、その単位面積当たりの個数密度が179個/mm2以下、より望ましくは、67個/mm2以下とする。
【0043】
一般的に、Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物は、小さい径のものが生成され易く、その分布は、横軸に最大長のサイズ(右方向に大きくなる)、縦軸に個数(上方向に多くなる)を取ると、右下がりの分布となる。本発明では、最大長が8〜15μmであるAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物の単位面積当たりの個数密度が179個/mm2以下、より望ましくは、最大長が10μm以上であるAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物の単位面積当たりの個数密度が67個/mm2以下となるようにアルミニウム合金に含まれる各種成分や、製造工程における圧延条件、焼鈍条件等を適宜制御することが望ましい。特に、鋳造時に形成される粗大セル層では冷却速度が低下するので、金属間化合物が成長し易く、粗大な金属間化合物が生成する。通常、粗大セル層は面削工程で除去されるが、粗大セル層の厚みや鋳塊の形状により十分除去できない場合には、粗大な金属間化合物が表層に残存してしまう。このため、金属間化合物の分布が本発明で規制する数値範囲に入るようにするためには、粗大セル層の完全な除去が必須である。
【0044】
[酸化皮膜の膜厚;平均膜厚30nm以下]
本発明に係るボトル缶用アルミニウム合金板の酸化皮膜は、主にAl23で構成され、均質化熱処理、熱間圧延処理、冷間圧延処理等の条件によって膜厚が変化する。この酸化皮膜の膜厚が過剰に厚くなると、例えばDI成形中にアルミニウム合金板がダイスに焼け付き易くなり、その結果として摩耗粉の発生量が増加し、成形された容器の外表面の縦スジの発生に繋がる。
このため、本発明では、この縦スジの発生を抑えるべく、アルミニウム合金板の表面に生成された酸化皮膜の平均膜厚を30nm以下とする。
【0045】
[中心線平均粗さRa;0.30〜0.45μm]
本発明に係るボトル缶用アルミニウム合金板の表面粗さを規制する因子である中心線平均粗さRa(JIS B 0601)は、アルミニウム合金板と、この素材を容器に成形するダイスとが接触する過程で重要な役割を果たす。すなわち、このアルミニウム合金板の表面の中心線平均粗さRaが大きくなるにつれて絞り加工、しごき加工等の厳しい成形で摩耗粉の発生量が多くなり、それに伴ってダイスおよびクーラント(しごき加工の際に使用する油)の汚染の度合いが増す。その結果、連続してプレス成形を行った場合に、成形された容器の内表面および外表面で品質上問題となる面荒れが次第に多く生じるようになる。
【0046】
また、このように成形された容器の内表面の塗膜欠陥には、この容器を構成するアルミニウム合金板に対して予め施される前処理の条件や形成される塗膜の種類等が影響するが、塗装前の前記アルミニウム合金板の表面形態によっても大きく左右される。本発明では、ボトル缶用アルミニウム合金板の表面の中心線平均粗さRaを0.30〜0.45μmに規制することにより、下地であるアルミニウム合金板が、この表面に形成される塗膜に対してアンカー効果を誘起して、この塗膜の密着性を充分に確保するようになるので、塗膜が形成されたボトル缶用アルミニウム合金板にネッキング加工等の厳しい成形を施しても塗膜欠陥の発生が抑えられるようになる。
【0047】
すなわち、この表面の中心線平均粗さRaが0.45μmを超えると、下地である前記アルミニウム合金板が、形成される塗膜に対して果たすアンカー効果が小さくなって形成された塗膜の密着性が低下するので、前記アルミニウム合金板に厳しい成形加工、例えばネッキング加工等を施してボトル缶を成形する場合に、このボトル缶の内表面で塗膜欠陥が発生し易くなる。
【0048】
一方、アルミニウム合金板の表面の中心線平均粗さRaが0.30〜0.45μmであるとき、このアルミニウム合金板に絞り加工やしごき加工等の厳しい成形加工を施して発生する摩耗紛の量は充分に少なくなり、また、この中心線平均粗さRaが0.30μm未満ではこの摩耗粉の発生量はほぼ一定にある。このため、アルミニウム合金板の表面の中心線平均粗さRaを0.30μm未満としても、このような厳しい成形加工をこのアルミニウム合金板から構成される缶体に施す際に、その外表面で発生する縦スジの程度は有意に改善されない。また、このような0.30μm未満の中心線平均粗さRaを有するアルミニウム合金板を得るには圧延ロールの表面を鏡面化する必要があるが、このような低粗度の圧延ロールを用いるとアルミニウム合金板のコストアップの要因となると共に、圧延中にロールスリップが生じ易くなり、生産性が阻害される。
したがって、本発明にあっては、ボトル缶用アルミニウム合金板の表面の中心線平均粗さRaを0.30〜0.45μmとする。
【0049】
以上説明したように構成される、本発明に係るボトル缶用アルミニウム合金板は、各種のアルミニウム缶に適用することが可能であり、例えば、図1に示すようなボトル缶や、図2に示すDI缶等に適用することができる。
【0050】
次に、本発明のボトル缶用アルミニウム合金板の製造方法、および、鋳造されたアルミニウム合金のスラブの粗大セル層を含む当該スラブの表面を除去するための面削処理工程の必要性について説明する。
通常、鋳造時にスラブ表面に形成される粗大セル層では冷却速度が低下するので、金属間化合物が成長し易く、粗大な金属間化合物が生成する。粗大な金属間化合物が多く生成すると、例えば、ダイスの表面に面荒れが発生し易くなり、それによって成形された容器の外表面に縦スジが発生し易くなることや、ネッキング加工が施されたボトル缶等の容器の内表面では塗膜欠陥が発生し易くなり、ERV性が低下するといった不具合が生じる。
【0051】
したがって、本発明におけるボトル缶用アルミニウム合金板の製造方法においては、Alに前記に記載したCuを0.1〜0.4質量%、Mgを0.5〜1.5質量%、Mnを0.5〜1.5質量%、さらに望ましくは0.7〜1.5質量%、Feを0.2〜0.7質量%、さらに望ましくは0.35〜0.50質量%を添加物として加え、アルミニウム合金を鋳造し、鋳造により作製されたスラブに対して、通常の面削処理工程において面削するより多くの量の面削処理を行い、粗大セル層を完全に除去することとした。その後、圧延工程等を経てアルミニウム合金板が製造される。このように製造されると、スラブの状態で粗大セル層が完全に除去されるので、最大長が8〜15μm、より望ましくは、10μm以上であって、その単位面積当たりの個数密度が179個/mm2以下、より望ましくは、67個/mm2以下であるAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物を備え、かつ、アルミニウム合金板の表面に形成される酸化皮膜の平均膜厚が30nm以下であり、さらに、アルミニウム合金板の表面の中心線平均粗さRaが0.30〜0.45μmであるアルミニウム合金板を提供することができる。
【0052】
【実施例】
[第1実施例]
次に、本発明に係るボトル缶用アルミニウム合金板の第1の実施例を、本発明の必要条件を満たさない比較例と対比させて具体的に説明する。
まず、Al−Mn系の3004合金(JIS 4000)の鋳塊を用い、通常の鋳造処理、均質化熱処理、熱間圧延処理、冷間圧延処理の各工程を通して、板厚が0.32mmの各種アルミニウム合金板の試験片を作製した。そして、これら試験片の加工性について評価した。
【0053】
表1に前記アルミニウム合金板の試験片の組成、最大長が8〜15μmであるAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物の単位面積当たりの個数密度、表面の中心線平均粗さRaおよび酸化皮膜の平均膜厚、並びにしごき加工性、ERV性、液漏れ発生度の評価結果を示す。
ここで、第1の実施例において、表1中の実施例1〜6は、請求項1に記載のCuを0.1〜0.4質量%、Mgを0.5〜1.5質量%、Mnを0.5〜1.5質量%、Feを0.2〜0.7質量%、Siを0.1〜0.3質量%含有し、残部がAlと不可避的不純物から構成されたアルミニウム合金板であって、最大長が8〜15μmであるAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物の単位面積当たりの個数密度が179個/mm2以下であると共に、前記アルミニウム合金板の表面に形成される酸化皮膜の平均膜厚が30nm以下であり、かつ前記アルミニウム合金板の表面の中心線平均粗さRaが0.30〜0.45μmという条件を満たすものであり、比較例7〜21は本発明の必要条件を満たさないものである。
【0054】
なお、表1に示すような、最大長が8〜15μmであるAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物の単位面積当たりの個数密度、表面の中心線平均粗さRaおよび酸化皮膜の平均膜厚を有する各種の試験片は、前記した鋳造処理、均質化熱処理、熱間圧延処理、冷間圧延処理の各工程で、温度や処理時間等の条件を適宜変えることにより調製した。
【0055】
【表1】
Figure 0003987814
【0056】
続いて、表1に示す各種のアルミニウム合金板を用い、次のようにしてDI缶を作製した。
まず、前記各アルミニウム合金板にカッピング加工を施してブランク径がφ140mm、カップ径がφ90mmの缶体を作製した。次いで、前記の各缶体に250spmの速度で再絞り加工を施し、更にしごき加工として前記の各缶体にしごきを3回施し、最終しごき率を39%として、薄肉部の厚さが105μm、胴径がφ66mm、高さが123mmの各DI缶を作製した。
【0057】
このようにして前記各DI缶を連続で10000缶作製した。このような連続成形で作製された最後の20缶に対して、洗浄およびジルコン処理を施した後、これらの内表面にアクリル変性エポキシ塗料を用いてスプレー塗装を施し、更に、ネッキング加工(図1に示すボトル缶で、縮径率を42%とした加工)およびネジ切り加工を施してボトル缶を作製した。
以上のようにして得られた前記各アルミニウム合金板の試験片、前記各DI缶および前記各ボトル缶について、以下のA.〜F.に示すような評価を行った。
【0058】
前記各アルミニウム合金板、前記各DI缶、及び前記各ボトル缶について、以下のようにして評価を行った。
[A.Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物のサイズおよび単位面積当たりの個数密度の測定]
Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物のサイズおよび単位面積当たりの個数密度の測定は、次のような手順で行った。
(1)各アルミニウム合金板の試験片の表層を、機械研磨により5μm除去し鏡面とした。
(2)各試験片の表面を走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JSM−T330)の成分画像にて、倍率500倍で観察し、Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物の領域を抽出し、Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物の分布を表すイメージマップを作成した。
(3)抽出した領域に画像解析処理(高速画像処理装置、株式会社東芝製 TOSPIX−II)を施した組織写真を用いて、上記画像を20視野測定し、Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物の最大部の長さ(最大長)および単位面積(1mm2)当たりの数を統計的にカウントし、最大長8〜15μmのAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物の単位面積当たりの個数密度を求めた。
【0059】
[B.アルミニウム合金板の表面の中心線平均粗さRaの測定]
表面粗さの測定は、前記各アルミニウム合金板の試験片に対して、表面粗さ測定機(小坂研究所社製、サーフコーダSE−30D)を用いて、圧延方向に直角な方向に走査し、中心線平均粗さRa(JIS B 0601)を求めることで行った。
【0060】
[C.酸化皮膜の平均膜厚の測定]
酸化皮膜の平均膜厚の測定は、前記各アルミニウム合金板に対して、オージェ電子分析装置(VG SCIENTIFIC社製、型式310D)を用いて、アルミニウム合金板の表面からの深さ方向の酸素濃度を測定し、相対的な酸素濃度が20%になる深さを測定し、その深さを酸化皮膜の厚さとみなした。これを、各アルミニウム合金試料片に対して5箇所で行い、平均したものを酸化皮膜の平均膜厚とした。
【0061】
[D.しごき加工性の評価]
しごき加工性の評価は、前記各DI缶で胴切れが発生した回数により評価した。すなわち、胴切れの発生回数が、0回のもの(胴切れが全く発生しなかったもの)を「○」(良好)、1〜2回のものを「△」(軽微な不良であり品質上問題がないもの)、3回以上のものを「×」(不良)とした。
【0062】
[E.ERV性の評価]
ERV性の評価は、前記各ボトル缶内に、1%食塩水と0.02%界面活性剤とを含む溶液を満たした後、この溶液とボトル缶の外表面との間に6.2Vの直流電圧を印加し、印加してから4秒後の電流値を電流計で測定して、各ボトル缶(n数:20)で得られた電流値の平均値を求め、この電流値の平均値が10mAを超えるものを不良とした。
【0063】
[F.液漏れ発生度の評価]
液漏れ発生度の評価は、前記各ボトル缶(個数:20)に炭酸水を注入し、キャップを巻締めたボトル缶の上下を反転させて24時間放置した後、内容物の漏れを観察した。前記各ボトル缶のn数(20)に対する液漏れした缶の個数(m個)の割合(m/20)で評価した。
【0064】
表1に示すように、実施例No.1〜No.6は、本発明の必要条件を満たしている。
一方、比較例No.7、8は、Si成分に関して、本発明のSiに対する必要条件である下限値または上限値から、過少または過剰に振ったものである。比較例No.9、10は、Fe成分に関して、本発明のFeに対する必要条件である下限値または上限値から、過少または過剰に振ったものであり、特に比較例No.10は最大長が8〜15μmの金属間化合物の密度も本発明の上限値から外れている。比較例No.11、12は、Mn成分に関して、本発明のMnに対する必要条件である下限値または上限値から、過少または過剰に振ったものであり、特に比較例No.12は最大長が8〜15μmのAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物の密度も本発明の上限値から外れている。
【0065】
比較例No.13、14は、Mg成分に関して、本発明のMgに対する必要条件である下限値または上限値から、過少または過剰に振ったものである。比較例No.15、16は、Cu成分に関して、本発明のCuに対する必要条件である下限値または上限値から、過少または過剰に振ったものである。比較例No.17は、前記アルミニウム合金板の作製工程において鋳造速度を通常よりも遅くすることで、前記実施例1〜6と同様の組成比率であるが、Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物の析出、成長を促進した例である。比較例No.18、19は、表面粗さに関して、本発明の表面粗さに対する必要条件の上限値から、過剰に振ったものである。比較例No.20、21は、酸化皮膜平均膜厚に関して、本発明の酸化皮膜平均膜厚に対する必要条件の上限値から、過剰に振ったものである。
【0066】
表1に記載された本発明の必要条件を満たす実施例No.1〜6および、本発明の必要条件を満たさない比較例No.7〜21に対して、結果を説明する。表1に記載する通り、本発明の必要条件を満たしている実施例(No.1〜No.6)では、しごき加工性が「○」(良好)、ERV性が「0.0mAもしくは極微量(1.7mA、0.9mA)」であり、いずれも10mA以下であってERV性に優れていた。また、液漏れ発生度は「0/20」であったことから、得られた結果はいずれも良好となっている。
【0067】
これに対し、Si、Fe、Mnを過剰に加えた比較例No.8、10、12では、しごき加工性、ERV性および液漏れ発生度のいずれもが不良である。これら比較例No.8、10、12では、Si、Fe、Mnを過剰に加えることにより、Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物のサイズおよび密度が大きくなる傾向があり、とりわけ最大長が20μmを超す巨大なAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物の存在により、胴切れが発生しやすくなり、また、缶体の機械的強度が過度に上昇して成形性が阻害されて、しごき加工性が低下する。また、Si、Fe、Mnの含有量が過剰であるため、缶体の機械的強度が過剰となることにより成形性が阻害されてしごき加工性が低下することとなる。更に、DI成形の際に、用いられるダイスからの磨耗粉が増えるため、缶体に縦スジが発生し、液漏れ発生度が高くなっている。
【0068】
Si、Fe、Mnを過少に加えた比較例No.7、9、11では、しごき加工性が不良である。これら比較例No.7、9、11では、Si、Fe、Mnを過少に加えることでAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物のサイズおよび密度が減少する傾向にあった。つまり、Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物の、缶体とダイスとの間の固体潤滑剤としての機能が低下し、缶体とダイスとの凝着がおこりやすくなるため、しごき加工性が悪化する。
【0069】
Mg、Cuを過剰に加えた比較例No.14、16では、しごき加工性が不良である。これら比較例No.14、16では缶体の機械的強度が非常に高くなるので、しごき加工性が損なわれている。
【0070】
Mg、Cuを過少に加えた比較例No.13、15では、しごき加工性、液漏れ発生度ともに異常が現われていない。しかし、これら比較例No.13、15ではMg、Cuが少ないために缶体の機械的強度が非常に低下しているので、用途を考慮すればボトル缶として実用性がないことは明らかである。
【0071】
比較例No.17〜21では、液漏れ発生度が高く、ボトル缶の素材として不良の結果が得られている。これら比較例No.17〜21では、金属間化合物の密度、表面粗さ、酸化皮膜の平均膜厚が高いために、しごき加工においてダイスの表面を荒らしやすく、磨耗粉が発生し、缶体に縦スジが発生するため、前記炭酸水封入ボトル缶における液漏れ発生度が悪化する。また、比較例No.17では最大長8〜15μmのAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物の単位面積当たりの密度が高いために、ダイスの表面に面荒れが発生し易くなるので、成形された容器の外表面に縦スジが発生し易くなると共に、ネッキング加工が施されたボトル缶等の容器の内表面では塗膜欠陥が発生し易くなり、ERV性が低下した。
【0072】
以上のように、実施例No.1〜6では、各要因について必要条件を満たす適正な範囲に制御した結果、しごき加工性、液漏れ発生度がともに良好で、また、ネッキング工程においては、縦スジの発生は認められなかった。しかし、本発明の必要条件を満たさない比較例No.7〜21においては、しごき加工性、ERV性、または、液漏れ発生度が悪く、縦スジも多く観察された。
【0073】
[第2実施例]
次に、本発明に係るボトル缶用アルミニウム合金板の第2の実施例を、本発明の必要条件を満たさない比較例と対比させて具体的に説明する。
まず、Al―Mn系の3004合金(JIS 4000)の鋳塊を用い、通常の鋳造処理、均質化熱処理、熱間圧延処理、冷間圧延処理の各工程を通して、板厚が0.32mmの各種アルミニウム合金板の試験片を作製した。そして、これら試験片の加工性について評価した。
【0074】
表2に前記アルミニウム合金板の試験片の組成、最大長が10μm以上であるAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物の単位面積当たりの個数密度、表面の中心線平均粗さRaおよび酸化皮膜の平均膜厚、並びにしごき加工性、ERV性、液漏れ発生度の評価結果を示す。
ここで、第2の実施例において、表2中の実施例22〜27は、請求項2に記載の、Cuを0.1〜0.4質量%、Mgを0.5〜1.5質量%、Mnを0.7〜1.5質量%、Feを0.35〜0.50質量%、Siを0.1〜0.3質量%含有し、残部がAlと不可避的不純物から構成されたアルミニウム合金板であって、最大長が10μm以上であるAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物の単位面積当たりの個数密度が67個/mm2以下であると共に、前記アルミニウム合金板の表面に形成される酸化皮膜の平均膜厚が30nm以下であり、かつ前記アルミニウム合金板の表面の中心線平均粗さRaが0.30〜0.45μmという条件を満たすものであり、比較例No.28〜42は本発明の必要条件を満たさないものである。
【0075】
なお、表2に示すような、最大長が10μm以上であるAl−Mn−Fe―Si系金属間化合物の単位面積当たりの個数密度、表面の中心線平均粗さRaおよび酸化皮膜の平均厚さを有する各種の試験片は、前記した鋳造処理、均質化熱処理、熱間圧延処理、冷間圧延処理の各工程で、温度や処理時間等の条件を適宜変えることにより調製した。
【0076】
【表2】
Figure 0003987814
【0077】
続いて、表2に示す各種のアルミニウム合金板を用い、次のようにしてDI缶を作製した。
まず、前記各アルミニウム合金板にカッピング加工を施してブランク径がφ140mm、カップ径がφ90mmの缶体を作製した。次いで、前記の各缶体に250spmの速度で再絞り加工を施し、更にしごき加工として前記の各缶体にしごきを3回施し、最終しごき率を39%として、薄肉部の厚さが105μm、胴径がφ66mm、高さが123mmの各DI缶を作製した。
【0078】
このようにして前記各DI缶を連続で10000缶作製した。このような連続成形で作製された最後の20缶に対して、洗浄およびジルコン処理を施した後、これらの内表面にアクリル変性エポキシ塗料を用いてスプレー塗装を施し、更に、ネッキング加工(図1に示すボトル缶で、縮径率を42%とした加工)およびネジ切り加工を施してボトル缶を作製した。
【0079】
上記のように作製したボトル缶を用いて、前記第1実施例と同様、各種の試験や評価、すなわち、A.最大長が10μm以上のAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物の単位面積当たりの個数密度、B.アルミニウム合金板の表面の中心線平均粗さRa、C.酸化皮膜の平均膜厚の測定、D.しごき加工性の評価、E.ERV性の評価、およびF.液漏れ発生度、についての評価を行い、表2に示す結果を得た。
【0080】
表2に示す実施例No.22〜27は、いずれも本発明で規制する数値範囲を満たすものである。
一方、比較例No.28、29は、Siの含有量に関して、それぞれ本発明で規制する数値範囲の下限値または上限値から外れているものである。特に、比較例No.29は、最大長が10μm以上であるAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物の単位面積当たりの個数密度も本発明の上限値から外れているものである。また、比較例No.30、31は、Feの含有量に関し、それぞれ本発明で規制する数値範囲の下限値または上限値から外れているものである。特に、比較例No.31は、最大長が10μm以上であるAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物の単位面積当たりの個数密度も本発明の上限値から外れているものである。また、比較例No.32、33は、Mnの含有量に関し、それぞれ本発明で規制する数値範囲の下限値または上限値から外れているものである。特に、比較例No.33は、最大長が10μm以上であるAl−Mn−F−Si系金属間化合物の単位面積当たりの個数密度も本発明の上限値から外れているものである。
【0081】
また、比較例No.34、35は、Mgの含有量に関し、それぞれ本発明で規制する数値範囲の下限値またはその上限値から外れているものである。また、比較例No.36、37は、Cuの含有量に関し、それぞれ本発明で規制する数値範囲の下限値または上限値から外れているものである。また、比較例No.38は、前記ボトル缶用アルミニウム合金板の作製工程で面削量を通常よりも少なくすることにより粗大セル層の粗大なAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物を残存させたものであって、最大長が10μm以上であるAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物の単位面積当たりの個数密度が本発明で規制する数値範囲の上限値よりも大きくなるように作製されたものである。また、比較例No.39、40は、表面の中心線平均粗さRaに関し、それぞれ本発明で規制する数値範囲の上限値よりも大きくなるように作製されたものである。そして、比較例No.41、42は、酸化皮膜平均膜厚に関し、それぞれ本発明で規制する数値範囲の上限値よりも大きくなるように作製されたものである。
【0082】
次に、表2に示す結果について説明する。まず、本発明の必要条件を満たしている実施例No.22〜27では、しごき加工性が「○」(良好)、ERV性が「0.0mAもしくは極微量(1.7mA、0.9mA)」であり、いずれも10mA以下であることから、ERV性に優れているという評価を得ることができた。また、液漏れ発生度は「0/20」であったことから、得られた結果はいずれも良好となっている。
【0083】
一方、Si、Fe、Mnの含有量が、本発明で規制する数値範囲よりも多くなっている比較例No.29、31、33では、しごき加工性、液漏れ発生度、および、ERV性が不良となっている。これら比較例No.29、31、33では、それぞれSi、Fe、Mnの含有量が本発明で規制する数値範囲の上限値を超えていることにより、Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物のサイズおよび単位面積当たりの個数密度が大きくなる傾向があった。この場合、特に、最大長が20μmを超える巨大なAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物が存在することにより胴切れが発生し易くなり、また、Si、Fe、Mnの含有量が過剰であるため、缶体の機械的強度が過剰となることにより成形性が阻害されてしごき加工性が低下することとなる。更に、DI成形の際に、用いられるダイスからの摩耗粉の発生量が増えるため、缶体に縦スジが発生し易くなり、この縦スジに起因して塗膜の欠陥が生じ、アルミニウム素材の溶解や腐食が生じ易くなるので、ERV性が著しく悪化している。内容物の液漏れの発生度が高くなっている。
【0084】
また、Si、Fe、Mnの含有量が、本発明で規制する数値範囲よりも過少となっている比較例No.28、30、32では、しごき加工性が不良となっている。これら比較例No.28、30、32では、Si、Fe、Mnの含有量が過少であることにより、アルミニウム合金板の表面に露出したAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物のサイズおよび単位面積当たりの個数密度が減少する傾向にあった。つまり、このAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物が缶体とダイスとの間に介在して固体潤滑剤として作用する効果が低下して缶体とダイスとの凝着が生じ易くなり、ひいては缶体がダイスに焼付き易くなってしごき加工性が悪化することとなる。
【0085】
また、Mg、Cuの含有量が、本発明で規制する数値範囲の上限値を超えている比較例No.35、37では、しごき加工性が不良となっている。これら比較例No.35、37は、Mg、Cuの含有量が過剰であることにより、缶体の機械的強度が過剰に高くなり、しごき加工性が阻害されたものと考えられる。
Mg、Cuの含有量が、本発明で規制する数値範囲よりも過少となっている比較例No.34、36では、しごき加工性、液漏れ発生度共に異常が現われていない。しかし、これら比較例No.34、36では、Mg、Cuの含有量が過少であることによって缶体の機械的強度が著しく低下しているので、ボトル缶に用いることを考慮すれば実用性がないことは明らかである。
【0086】
比較例No.38では、ERV性が悪くかつ液漏れ発生度が高く、ボトル缶の素材として不良であるという評価結果が得られた。このように、比較例No.38では、Al―Mn―Fe―Si系金属間化合物の単位面積当たりの個数密度が本発明で規制する数値範囲の上限値を超えているため、ダイスの表面に面荒れが発生し易くなり、成形された容器の外表面に縦スジが発生し、塗膜欠陥が生じ易いので、ボトル缶の内面にスジを発生させてERV性を悪化させ、かつ、液漏れ発生度が高くなっている。
【0087】
比較例No.39〜42では、液漏れ発生度が高く、ボトル缶の素材としては不良であるという評価結果が得られている。これらのうち、比較例No.39、40では、表面の中心線平均粗さRaが本発明で規制する数値範囲の上限値を超えており、また、比較例No.41、42では、酸化皮膜の平均膜厚が本発明で規制する数値範囲の上限値を超えているので、しごき加工の際にダイスの表面に面荒れを生起し易くなって摩耗粉を多量に発生させ、その結果、缶体に縦スジが発生するため、前記炭酸水が封入されたボトル缶における液漏れ発生度が悪化している。
【0088】
以上のように、本発明の必要条件を満たしている実施例No.22〜27は、Cu、Mg、Mn、Fe、Siの含有量、最大長が10μm以上であるAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物の単位面積当たりの個数密度、酸化皮膜の平均膜厚、および表面の中心線平均粗さRaが適正な範囲に制御された結果、しごき加工性、液漏れ発生度が共に良好で、また、ERV不良の発生は認められなかった。しかし、本発明の必要条件を満たさない比較例No.28〜42では、しごき加工性、ERV性、液漏れに関して不良が見られた。
【0089】
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更してこれを行うことができることは言うまでもない。例えば、本実施例では、熱間圧延処理後に冷間圧延処理を行う場合を例に述べたが、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、他の実施例として、熱間圧延処理を行った後に焼鈍処理を行い、さらにその後に冷間圧延処理を行うこととしてもよい。また、さらに他の実施例として、熱間圧延処理を行った後に冷間圧延処理を行い、しかる後に焼鈍処理および最終冷間圧延処理を行うこととしてもよい。
【0090】
【発明の効果】
以上説明した通りに構成される本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明によれば、均質化熱処理工程および圧延処理工程の前処理工程として、鋳造されたアルミニウム合金のスラブの粗大セル層を含む当該スラブの表面を除去するための面削処理工程を含んで製造されるボトル缶用アルミニウム合金板であるので、しごき加工性や、ERV性に優れ、かつ、液漏れも発生しにくいボトル缶用アルミニウム合金板を得ることができ、かつ、アルミニウム合金の成分、Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物のサイズおよび密度、アルミニウム合金板の表面に形成された酸化皮膜の平均膜厚及び、その表面粗さを最適化したので、DI成形後の缶体に対して縮径率の高いネッキング加工を施しても、缶体胴部、ネック部、エンド部で縦スジの発生が抑えられ、その結果、カーリング工程後の缶体開口部とキャップとの隙間から液漏れが発生しないボトル缶用アルミニウム合金板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るボトル缶用アルミニウム合金板が適用されるボトル缶の構成を模式的に示す図である。
【図2】 多段ネックを有するDI缶の構成を模式的に示す図である。
【符号の説明】
1 ボトル缶
2 胴体部
3 ネック部
4 開口部
1 胴体部の直径
2 開口部の口径
11 DI缶
12 胴体部
13 3段ネック部
14 開口部
3 胴体部の直径
4 開口部の口径

Claims (1)

  1. 均質化熱処理工程および圧延処理工程の前処理工程として、鋳造されたアルミニウム合金のスラブの粗大セル層を含む当該スラブの表面を前記粗大セル層が除去されるように面削する面削処理工程を含む製造方法により製造されるボトル缶用アルミニウム合金板であって、
    前記アルミニウム合金が、Cuを0.1〜0.4質量%、Mgを0.5〜1.5質量%、Mnを0.5〜1.5質量%、Feを0.2〜0.7質量%、Siを0.1〜0.3質量%含有し、残部がAlと不可避的不純物から構成され、
    Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物の最大長が15μm以下であり、
    最大長が8μm以上である前記Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物の単位面積当たりの個数密度が98個/mm 以上179個/mm以下であり、かつ、
    最大長が10μm以上である前記Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物の単位面積当たりの個数密度が25個/mm 以上67個/mm 以下であると共に、
    前記アルミニウム合金板の表面に形成される酸化皮膜の平均膜厚が30nm以下であり、かつ、前記アルミニウム合金板の表面の中心線平均粗さRaが0.30〜0.45μmであることを特徴とするボトル缶用アルミニウム合金板。
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