JP3982781B2 - 延性に優れた高強度鋼 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、異なる構造のCu粒子を複相合金鋼中のフェライト中に分布せしめることを特徴とした、延性を低下させずに高強度を与える鋼に関するものであり、引張強度300MPa程度の軟鋼から5000MPa程度の超高張力鋼まであらゆる強度レベルの鋼材に適用が可能である。
【0002】
【従来の技術】
近年来、自動車や船舶などの外板や建築物等の構造物には軽量化に加え、安全設計上、衝撃や地震によるエネルギーを吸収しうる塑性変形能に優れた鋼材が要求されており、軽量化要求の解決手段としては高強度化が、また後者の要求に対しては一様伸び特性に代表される延性の向上が不可欠である。単位強度あたりの延性の向上は、上述の要求以外にも加工性・成形性向上という観点からも極めて重要である。ところが、高強度化と高延性化は相反するものであり、双方の性質を両立することは難しいと考えられてきた。
【0003】
従来、鋼板を高強度化する手段としては大きく分けて、(1)Si,Ni,Mo等の固溶強化元素を多量に添加するかあるいはNb,Ti,V等の析出強化元素を多量に添加する、(2)結晶粒を微細化するかあるいは複合組織に制御する2つの方法があり、使用される用途に応じた材質的要求、経済性を考慮し最適な強化法が選択されてきた。
【0004】
上述した(1)の方法による強化は、その母材組織の如何にかかわらず古くから利用されてきているが、一般的に高い引張強度を得ようとすると前述のようにそれに反比例して延性が低下してしまう。
【0005】
一方、(2)の方法による強化は、フェライト・マルテンサイトの2相組織鋼(例えば特公昭61−15128号公報)やフェライト・オーステナイト2相組織鋼に代表されるように強度と延性をある程度両立することが可能な方法である。しかしながら、この方法は組織を選択した時点で達成できる強度がある程度決まってしまうため、低強度から超高強度鋼に至るあらゆる強度レベルでの強度−延性特性向上に適用することができない。このため、あらゆる強度レベルの鋼板について、延性をなるべく低下させることなく高強度化を実現できる技術の開発が望まれていた。
【0006】
そこで発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意、実験と検討を重ねた結果、適正量のCuを添加し、かつ9R構造を有するCu粒子を含み、さらに、bcc構造を有するCu粒子およびfcc構造を有するCu粒子のいずれかまたは両方を組織中に適正に制御し分布せしめることによって、フェライト・パーライト組織からなる低強度鋼から微細パーライト組織からなる超高強度鋼までの広い強度レベルにおいて、従来の析出強化法で課題となっていた高強度化による延性の低下を抑えることができることを見いだした。
【0007】
Cuを添加する鋼板としては、特開昭61−288015号公報、特開昭63−162811号公報、特開平5−331591号公報、特開平6−108200号公報が開示されている。これらは、高温での溶体化処理後に550℃前後の時効処理を施すことによって析出する面心立方(以下、fcc)構造を有するε−Cuを利用し、高強度−高延性を達成できるとしている。しかしながら、これらの先行例が示すようにfcc構造のε−Cuのみでは、従来の析出強化法の範疇を超えた強度−延性バランスを達成することはできない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述した現状に鑑み開発されたもので、低強度鋼から超高強度鋼まですべての鋼種について、従来強化法で問題となっていた高強度化による伸びの劣化を抑えて、優れた強度−延性バランスを達成することができる鋼材を安価に提供することを目的としたものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を解決するために次の手段を講じた。
すなわち、本発明は延性に優れた高強度鋼であって、第1の発明は、質量%で、
C :0.3以下、 Si:3.0以下、
Mn:3.0以下、 Ni:0.5〜25
Cr:10以下、 Cu:0.5〜5.0
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、フェライトとオーステナイトの2相組織からなる高強度鋼において、9R構造を有するCu粒子を含み、さらに、bcc構造を有するCu粒子およびfcc構造を有するCu粒子のいずれかまたは両方をフェライト粒内およびフェライト粒界に含有することにより、延性が優れることを特徴とするものである。
【0010】
第2の発明は、上記の特徴に加え、質量%で、
Ti:0.20以下、 Nb:0.20以下
:0.0003〜0.0050
N :0.01以下
のうち1種または2種以上をさらに含有することを特徴とするものである。
【0011】
第3の発明は、質量%で、
C :0.7〜0.9、 Si:3.0以下、
Mn:3.0以下、 Cu:0.5〜5.0
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、パーライトを主組織とする高強度鋼において、9R構造を有するCu粒子を含み、さらに、bcc構造を有するCu粒子およびfcc構造を有するCu粒子のいずれかまたは両方をパーライト組織中のフェライト内およびフェライト粒界に含むことにより延性が優れることを特徴とするものである。
【0012】
削除
【0013】
第4の発明は、質量%で、
C :0.005〜0.30、Si:3.0以下、
Mn:3.0以下、 Cu:0.5〜5.0
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、フェライトとマルテンサイトの2相組織からなる高強度鋼において、9R構造を有するCu粒子を含み、さらに、bcc構造を有するCu粒子およびfcc構造を有するCu粒子のいずれかまたは両方をフェライト粒内およびフェライト粒界に含むことにより、延性が優れることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の第5の発明は、上記第4の発明に、質量%で、
Ni:0.5〜5.0%、 Ti:0.20以下
Al:0.04以下 :0.01以下
のうち1種または2種以上をさらに含有することを特徴とするものである。
本発明の第6の発明は、上記第3の発明に、質量%で、
Ni:0.5〜5.0、 Cr:5.0以下、
Ti:0.20以下、 Nb:0.20以下、
Al:0.04以下, N :0.01以下
のうち1種または2種以上をさらに含有することを特徴とするものである。
【0015】
なお、本発明において、強度とは引張強度を、延性とは材料の延び易さを代表する指標であれば何れでもよく、例えば一様伸び特性や絞り値を示すものである。また、bcc構造とは体心立方構造、9R構造とは菱面体構造で最密面が9相重なり1つの単位格子を形成している構造、fcc構造とは面心立方構造のことを意味している。なお、fcc構造の中で、格子がわずかに歪んで3R構造に近くなっているものについては、ここではfcc構造に含めるものとする。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明鋼では、フェライト・オーステナイト組織やフェライト・パーライト組織を基本とする低強度鋼から加工パーライト組織を基本とする超高強度鋼まであらゆる強度レベルの鋼種について、高強度化による一様伸びの低下を抑えて高強度を達成することができる。
【0017】
発明者らは、種々のCu粒子の構造を制御した鋼板について機械試験と詳細な観察を重ねた結果、フェライト組織中に9R構造を有するCu粒子(以下、9R−Cuという)を含み、さらに、bcc構造を有するCu粒子(以下、bcc−Cuという)およびfcc構造を有するCu粒子(以下、fcc−Cu;別称ε−Cuという)のいずれかまたは両方を分散析出させた時に、従来の析出強化法で特徴的であった高強度化に伴う一様伸び値の低下が顕著に軽減されることを見いだした。
【0018】
この原因を解析した結果、強度向上にはbcc−Cu>9R−Cu>fcc−Cuの順で有効であり、一様伸び向上に対してはfcc−Cu>9R−Cu>bcc−Cuの順で有効であり、9R構造を有するCu粒子を含み、さらに、bcc構造を有するCu粒子およびfcc構造を有するCu粒子のいずれかまたは両方を複合的に分散させることで優れた延性(一様伸び)特性を保持しつつ高強度化が実現できることを見いだした。
【0019】
いずれの構造のCu粒子も、同一サイズのNb(C,N),Ti(C,N)等の炭窒化物の析出粒子に比較して、優れた一様伸び特性を示すが、この理由はCu粒子が周囲のFeに比べて柔らかく変形しやすいために、変形時に転位が粒子に絡み付きにくく材料破断の起点になりにくいためであると考えられる。材料破断の起点になりにくいということは、一様伸び特性の向上だけでなく、疲労特性向上にも有効であることを示唆している。
【0020】
さらに発明者らは、異なる構造のCu粒子を利用した上述の析出強化法は、フェライト・オーステナイト2相鋼、層状のフェライト/セメンタイトからなるパーライト鋼、フェライト・パーライト2相鋼でもフェライト中におけるCu粒子の構造を制御すると良好な強度一様伸び特性を与えることも明らかにした。
すなわち、本発明のポイントは、組織中にフェライトが存在しており、その中のCu粒子の構造を制御しさえすれば、延性に優れる高強度鋼を得ることができることにある。
【0021】
以下に、本発明について詳細に説明する。
まず成分の限定理由について説明する。成分含有量は質量%である。
C:Cはあらゆる強度の鋼をつくるために、組織をフェライト・オーステナイト、パーライト、フェライト・パーライト、フェライト・マルテンサイトに制御するのに必須の元素である。以下に各々についてC量の限定理由を説明する。
フェライト・オーステナイト組織については、0.3を超えると他の合金元素の添加や熱処理方法の調整でも実質的に所望の組織を得ることが難しくなるので、その上限を0.3に限定した。
【0022】
パーライト組織については、Fe−C2元系合金の共析組成である0.77近傍のC量にする必要がある。0.7未満あるいは0.9を超えると組織をパーライト組織にすることが困難になるので、その範囲を0.7〜0.9の範囲に限定した。
【0023】
フェライト・パーライト組織については、亜共析組成のC量にする必要がある。0.005未満だとフェライト単相になり、0.80を超えると、他の添加合金元素量で調整してもパーライト単相になるので、その適正添加範囲を0.005〜0.80に限定した。フェライト・マルテンサイト組織については、0.005未満だとフェライト単相になり、0.30を超えると他の添加合金元素量で調整しても2相組織に制御することが困難になるので、その適正添加範囲を0.005〜0.30に限定した。
【0024】
Si:SiはCと同様に、母相組織を制御するのに必須の元素であり、また脱酸元素としても必要である。しかしながら、3.0を超えると熱延時の脱スケール性の悪化やコスト高を招く。従って、Si含有量は3.0以下の範囲に制限した。
【0025】
Mn:MnはSiと同じくAr変態点を低下させることで母相組織を制御するのに必須の元素である。しかしながら、3.0を超えると、顕著な中心偏析が避けられなくなるので、Mn含有量を3.0以下の範囲に制限した。なお、Mnは制限の範囲内であれば、添加量が多いほどCu粒子の析出を促進することが可能であり、製造コストの削減にも有効である。
【0026】
Cu:Cuは本発明において最も重要な元素である。しかしながら、0.5未満であるとCuとしての効果が発現せず、また5.0を超えると、Cuの熱間脆性による鋼板の表面割れが顕著になるために、Cu含有量の範囲を0.5〜5.0の範囲に制限した。ただし、添加量の下限については、Cu析出粒子の体積分率をより多くするという観点から、1.0以上の添加が望ましい。また、添加量の上限については、NiをCuと等量だけ添加するとCuの熱間脆性を軽減することができるので、CuとNiを複合添加する場合は5.0を超えるCuの添加も可能である。Cuは炭素当量を上げない元素でもあるので溶接性の向上にも有効である。Cuは合金コストが低いという利点も有している。
【0027】
Ni:NiはCu添加に起因する熱間脆性の抑制と母相組織の制御に用いられる。フェライト・オーステナイト組織がベースの場合には、0.5以下であるとフェライト・オーステナイトの2相組織にならず、25を超えるとコスト高になる。従って、請求項1および2に記載したフェライト・オーステナイト組織がベースの場合には、その添加範囲を0.5〜25に限定した。一方、パーライト組織、フェライト・パーライト組織、フェライト・マルテンサイト組織の場合には、0.5以下だと熱間脆性の抑止が難しく、5.0を超える所望の組織に制御することが難しくなる。従って、その適正添加範囲を0.5〜5.0に限定した。
【0028】
Cr:CrはMnの代替元素であり、Ar変態点を低下させることで母相組織を制御するのに用いられる元素である。フェライト・オーステナイト組織がベースの場合には、10を超えるとCrの炭窒化物の析出が顕著になり、Cuの添加効果が失われる。従って、請求項1および2に記載したフェライト・オーステナイト組織がベースの場合には、その添加範囲を10以下に限定した。一方、パーライト組織、フェライト・パーライト組織の場合には、5.0を超えると、所望の組織に制御することが難しくなるので、Cr含有量を5.0以下の範囲に制限した。
【0029】
削除
【0030】
Ti:Tiは脱酸元素として、また炭窒化物として再加熱時のオーステナイト粒径を制御する元素として必要である。しかし、Tiの添加量が0.20を超えると、Cuの添加効果が失われるため、Ti含有量の適正添加範囲を0.20以下とした。
【0031】
Nb:Nbは炭窒化物として再加熱時のオーステナイト粒径を制御する元素として必要である。しかし、Nbの添加量が0.20を超えると、フェライト中の炭窒化物量が増え、Cuの添加効果が失われるため、Nb含有量の適正添加範囲を0.20以下とした。
【0032】
削除
【0033】
Al:Alは脱酸元素として用いる元素である。しかし、Alの添加量が0.04を超えると、AlN等の析出量が増加し、Cuの添加効果が失われるため、Al含有量の適正添加範囲を0.04以下とした。
【0034】
B:Bは母相組織を制御するために用いられる元素である。0.0003未満であるとその効果が発現せず、また0.0050を超えると、粒界に炭ホウ化物、ホウ窒化物が析出し、延性の悪化を引き起こす。従って、その適正添加範囲を0.0003〜0.0050に限定した。
【0035】
N:Nは窒化物として析出し、主にオーステナイト域の結晶粒径制御に用いられる。Nが0.01を超えると、フェライト粒内に多量の炭窒化物が析出し、Cuの添加効果が失われるため、N含有量の範囲を、0.01以下とした。
【0036】
次にCu粒子の構造の限定理由について説明する。
bcc−Cu粒子が単独に鋼中に存在するものでは、優れた強度は得られるが必ずしも十分な延性が得られない。fcc−Cu粒子だけだと、比較的優れた延性は得られるが必ずしも十分な高強度化が達成できない。9R−Cu粒子だけでもある程度は優れた強度−延性バランスが得られる。しかしながら、9R構造を有するCu粒子を含み、さらに、bcc−Cu構造を有するCu粒子およびfcc構造を有するCu粒子のいずれかまたは両方を共存させることによりはじめて、bcc−Cu粒子と9R−Cuの優れた強化効果とfcc−Cu粒子と9R−Cu粒子の優れた延性向上効果を併せて発現させることができる。従って、9R構造を有するCu粒子を含み、さらに、bcc−Cu構造を有するCu粒子およびfcc構造を有するCu粒子のいずれかまたは両方を含むことが目的達成上、必須である。
【0037】
なお、2種以上の構造のCu粒子を母相中に分散させる制御方法は、母相組織によって異なるが、基本的には以下に示す方法が有効である。
(1)750℃以上の温度に再加熱するかあるいは750℃以上の温度で圧延終了し、これを1℃/sec以上の冷却速度で室温まで冷却した後、480℃〜680℃の温度範囲において、保持温度T(℃)、保持時間t(秒)とした時に、1200≦T logt≦2100の条件で時効処理を施す。
【0038】
(2)750℃以上で加熱するかあるいは750℃以上で圧延を終了した後、680℃から480℃の温度範囲を0.1〜5℃/secの平均冷却速度で冷却し、その後室温まで冷却するかあるいは480℃以下の温度で巻取るかあるいは鋼線の場合には伸線加工を行う。
【0039】
(3)750℃以上で加熱するかあるいは750℃以上で圧延を終了した後、680℃から480℃の温度範囲において1200≦T logt≦2100の条件で時効処理を施し、その後室温まで冷却するかあるいは480℃以下の温度で巻取るかあるいは鋼線の場合には伸線加工を行う。
【0040】
(4)650〜800℃の温度で再結晶焼鈍を行った後、480℃〜650℃の温度範囲において、保持温度T(℃)、保持時間t(秒)とした時に、1200≦T logt≦2100の条件で時効処理を施し、その後室温まで冷却するかあるいは480℃以下の温度で巻取る。
【0041】
(5)650〜800℃の温度で再結晶焼鈍を行った後、650℃から480℃の温度範囲を0.1〜5℃/secの平均冷却速度で冷却し、その後室温まで冷却するかあるいは480℃以下の温度で巻取る。
【0042】
(6)650〜800℃の温度で再結晶焼鈍を行った後に、650℃から480℃の温度範囲を1%以下の歪み付加を行いながら0.1〜5℃/secの平均冷却速度で冷却し、その後室温まで冷却するかあるいは480℃以下の温度で巻取る。
【0043】
Cu粒子の構造はCu粒子のサイズと密接な関係がある。すなわち、Cu粒子のサイズが小さいものから大きいものになるに従って、bcc−Cu、9R−Cu、fcc−Cuになりやすい傾向がある。従って、Cu粒子の構造を適正に制御するためには、粒子のサイズを大小に過ぎずに中間的なサイズにすることがポイントとなる。
【0044】
上述した熱処理の一部は、特開昭63−162811号公報等の従来技術に記載されているものもあるが、単に従来技術の加工熱処理の範囲内ではサイズが大きいfcc−Cuが単独で析出してしまう場合があり、必ずしも良好な延性を有する高強度鋼を得ることができない。本発明鋼のポイントは、上記(1) (6)の条件の範囲内で合金元素添加量との兼ね合いで時効温度と時効時間と冷却速度をさらに最適化し、bcc−Cu、9R−Cu、fcc−Cu(ε−Cu)の3種のうち2種以上の構造のCu粒子を鋼中に分散させることにある。
【0045】
【実施例】
次にこの発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
表1に示す成分に調整した鋼材A〜Qを、表2に示す種々の条件で処理を施した。このようにして得られた鋼板から、引張試験用の試験片、組織観察用である透過電子顕微鏡観察用の試験片およびアトムプローブ電界イオン顕微鏡(AP−FIM)用の試験片を切り出した。表3は得られた試験片No.1〜24のマトリクス組織、引張強度(TS)、一様伸び(u−El)、鋼中のCu粒子の構造を調査した結果を示している。ただし、一部試料については、延性の指標として全伸び値、絞り値を用いている。
【0046】
表3から明らかなように、Feマトリクス中のCu粒子が9R−Cuとbcc−Cu、fcc−Cuのうちの1種又は2種の構造のCu粒子を結晶粒内に含むものは、bcc−Cu単独、fcc−Cu単独やNbC,TiC,MoCなどによる析出強化鋼に比べ、同一強度で比較してu−El値が上昇している。
【0047】
例えば、No.1〜6は、フェライト・オーステナイト組織を基本とするものであるが、試料No.1とNo.2を比較すると引張強度はほぼ同一であるにも関わらず、9R−Cuとfcc−Cuの両方を含むNo.1の方が全伸びで4%大きくなっている。すなわちNo.1の方が伸び特性に優れた高強度鋼になっている。No.3はCuを添加せずにMoの析出強化で高強度化したものであるが、No.1と比較して全伸び値が低くなっている。試料No.4〜No.6は圧延後の冷却速度を変化させたものである。フェライト中のCu粒子の構造を適正に制御したNo.4は、fcc−Cu単相のNo.5やCu無添加鋼のNo.6と比べて強度伸び特性が優れている。
【0048】
No.7〜12は、パーライト組織を基本とする場合である。フェライト中のCu粒子をbcc−Cuと9R−Cuに適正に制御したNo.7は、他に比べて強度が高いにも関わらず絞り値は上昇している。すなわち、延性が向上している。No.10〜12は圧延後の冷却速度を変化させたものであるが、フェライト中のCu粒子をbcc−Cuと9R−Cuに適正に制御したNo.10は、fcc単相からなるNo.11に比べ強度が高いにも関わらず絞り値は上昇している。
【0049】
No.13〜22は、フェライト・パーライト組織を基本とするものである。No.13とNo.14は圧延後の時効条件を、No.15とNo.16は圧延後の680℃→480℃の冷却速度を、No.17とNo.18は圧延後に室温まで冷却した後の時効条件を、No.20と21は圧延後の時効条件を変化させることでCu粒子の構造を制御したものである。フェライト内にbcc−Cuと9R−Cuとfcc−Cuの2つ以上の構造を含むように制御したNo.13,No.15,No.17,No.20はそれぞれ比較鋼に比べ高強度であるにも関わらず、一様伸び値は同一かあるいは高くなっている。No.22はTiC析出強化鋼を示しているが、同一強度で本発明鋼のNo.20と比較すると、本発明鋼の方が一様伸びで4%向上している。No.19はCuを添加していない比較鋼であり、本発明鋼であるNo.15のほうが同じ引張強度にもかかわらず、高い一様伸びを有している。
【0050】
No.23〜No.32は、フェライト・マルテンサイト組織を基本とするものである。No.23とNo.24は圧延後の冷却速度を変えてCu粒子の構造を変化させたものである。本発明鋼であるNo.23は、No.24に比べ強度が高いにも関わらずの一様伸び値は高くなっており、優れた強度−延性特性を有していることがわかる。No.25はTiCが析出した比較鋼であり、本発明鋼であるNo.23の方が同一u−El値にもかかわらず、高い引張強度を有している。No.26は圧延後の680℃から480℃への冷却中に1%の軽圧下を加えたものであり、Cu粒子の成長が促進されているものの、9R−Cuとfcc−Cuに制御されているため良好な強度延性特性を示している例である。No.28とNo.29は750℃で焼鈍した後の680℃→480℃の冷却速度を変化させてCu粒子の構造を制御した例である。bcc−Cuと9R−Cuとfcc−Cuを含む本発明鋼No.28がNo.29に比較して、強度、一様伸び値とも優れている。No.30は(Ti,Nb)C析出強化鋼の例であり、Cu粒子の構造を制御したNo.28に比べ一様伸び値で5%劣っている。No.31とNo.32はCu添加の効果をみたものである。Ni添加をしたNo.32に比べ、Cuを添加し、かつCu粒子の構造を適正に制御したNo.31は強度、一様伸び値とも優れている。
【0051】
【表1】
Figure 0003982781
【0052】
【表2】
Figure 0003982781
【0053】
【表3】
Figure 0003982781
【0054】
【発明の効果】
本発明は、300MPaクラスの軟鋼から5000MPaクラスの超高強度鋼の広い強度レベルにわたって、従来の析出強化鋼に比較して良好な延性を有する高強度鋼を与えるものであり、さらにCuを利用していることで溶接性や疲労特性にも優れる。
【0055】
本発明は、フェライト・オーステナイト組織、パーライト組織、フェライト・パーライト組織、フェライト・マルテンサイト組織を有する合金鋼について適用が可能であり、従って軽量化部材として自動車の外板や足廻り部材等の構造部材、造船・建築・海洋構造物・パイプライン等の構造部材や強度部材や耐震性を要求される部材、ケーブルワイヤやスチールコード等の高強度鋼線の高強度化に適用することが可能である。また合金単価の低いCuを利用することで安価に鋼板を製造する効果も有している。

Claims (6)

  1. 質量%で、
    C :0.3%以下、
    Si:3.0%以下、
    Mn:3.0%以下、
    Ni:0.5〜25%、
    Cr:10%以下、
    Cu:0.5〜5.0%
    を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、フェライトとオーステナイトの2相組織からなる高強度鋼において、9R構造を有するCu粒子を含み、さらに、bcc構造を有するCu粒子およびfcc構造を有するCu粒子のいずれかまたは両方をフェライト粒内およびフェライト粒界に含有することを特徴とする延性に優れた高強度鋼。
  2. 質量%で、さらに
    Ti:0.20%以下、
    Nb:0.20%以下
    :0.0003〜0.0050%、
    N :0.01%以下
    のうち1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の延性に優れた高強度鋼。
  3. 質量%で、
    C :0.7〜0.9%、
    Si:3.0%以下、
    Mn:3.0%以下、
    Cu:0.5〜5.0%
    を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、パーライトを主組織とする高強度鋼において、9R構造を有するCu粒子を含み、さらに、bcc構造を有するCu粒子およびfcc構造を有するCu粒子のいずれかまたは両方をパーライト組織中のフェライト粒内およびフェライト粒界に含有することを特徴とする延性に優れた高強度鋼。
  4. 質量%で、
    C :0.005〜0.30%以下、
    Si:3.0%以下、
    Mn:3.0%以下、
    Cu:0.5〜5.0%
    を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、フェライトとマルテンサイトの2相組織からなる高強度鋼において、9R構造を有するCu粒子を含み、さらに、bcc構造を有するCu粒子およびfcc構造を有するCu粒子のいずれかまたは両方をフェライト粒内およびフェライト粒界に含有することを特徴とする延性に優れた高強度鋼。
  5. 質量%で、さらに、
    Ni:0.5〜5.0%
    Ti:0.20%以下
    Al:0.04%以下、
    :0.01%以下
    のうち1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項4に記載の延性に優れた高強度鋼。
  6. 質量%で、さらに、
    Ni:0.5〜5.0%、
    Cr:5.0%以下、
    Ti:0.20%以下,
    Al:0.04%以下、
    N :0.01%以下
    のうち1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項3に記載の延性に優れた高強度鋼。
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