JP3980983B2 - 透かし情報埋め込み方法,透かし情報検出方法,透かし情報埋め込み装置,及び,透かし情報検出装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は,文書画像に対して文字以外の形式で秘密情報を付加する方法と,印刷された秘密情報入り文書から秘密情報を検出する技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
画像や文書データなどにコピー・偽造防止のための情報や機密情報を人の目には見えない形で埋め込む「電子透かし」は,保存やデータの受け渡しがすべて電子媒体上で行われることを前提としており,透かしによって埋め込まれている情報の劣化や消失がないため確実に情報検出を行うことができる。これと同様に,紙媒体に印刷された文書に対しても,文書が不正に改ざんされたりコピーされることを防ぐために,文字以外の視覚的に目障りではない形式でかつ容易に改ざんが不可能であるような秘密情報を印刷文書に埋め込む方法が必要となっている。
【0003】
印刷物として最も広く利用される白黒の二値の文書に対する情報埋め込み方法としては,以下のような技術が知られている。
【0004】
[1]特開2001−78006「白黒2値文書画像への透かし情報埋め込み・検出方法及びその装置」
任意の文字列を囲む最小矩形をいくつかのブロックに分割し,それらを2つのグループ(グループ1,グループ2)に分ける(グループの数は3つ以上でも良い)。例えば信号が1の場合はグループ1のブロック中の特徴量を増やしグループ2の各ブロック中の特徴量を減らす。信号が0の場合は逆の操作を行う。ブロック中の特徴量は,文字領域の画素数や文字の太さ,ブロックを垂直にスキャンして最初に文字領域にぶつかる点までの距離などである。
【0005】
[2]特開2001−53954「情報埋め込み装置,情報読み出し装置,電子透かしシステム,情報埋め込み方法,情報読み出し方法及び記録媒体」
1つの文字を囲む最小矩形の幅と高さをその文字に対する特徴量として定め,2つ以上の文字間での特徴量の大小関係の分類パターンによりシンボルを表すものとする。例えば3つの文字からは6つの特徴量が定義でき,これらの大小関係のパターンの組合わせを列挙し,これらの組合わせを2つのグルーブに分類し,それぞれにシンボルを与える。埋め込む情報が“0”であって,これを表すために選択された文字の特徴量の組合わせパターンが“1”であった場合,6つの特徴量のうちいずれかを文字領域を膨らませるなどして変化させる。変化させるパターンは変化量が最小となるように選択する。
【0006】
[3]特開平9−179494「機密情報記録方法」
400dpi以上のプリンタで印刷されることを想定する。情報を数値化し,基準点マークと位置判別マークとの距離(ドット数)により情報の表現を行う。
【0007】
[4]特開平10−200743「文書処理装置」
万線スクリーン(細かい平行線で構成された特殊スクリーン)のスクリーン線を後方に移動させるかどうかにより情報を表現する。
【0008】
【特許文献1】
特開2001−78006号公報
【特許文献2】
特開2001−53954号公報
【特許文献3】
特開平9−179494号公報
【特許文献4】
特開平10−200743号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら,上記公知技術[1],[2]では,文書画像の文字を構成する画素や文字間隔・行間隔に対する変更を伴うためフォントやレイアウトの変更が発生する。加えて,上記公知技術[3],[4]においても,検出時には,スキャナ等の入力機器から読み取った入力画像の1画素単位の精密な検出処理が必要となるため,紙面の汚れや印刷時や読み取り時に雑音が付加された場合などには情報検出精度に大きな影響を与える。
【0010】
このように,上記公知技術[1]〜[4]では,印刷された文書をスキャナなどの入力装置によって再びコンピュータに入力して埋め込まれた秘密情報を検出する場合に,印刷書類の汚れや入力の際に発生する回転などの画像変形が原因で,入力画像に多くの雑音成分が含まれるため,正確に秘密情報を取り出すことが困難であるという問題点があった。
【0011】
本発明は,従来の透かし情報埋め込み/検出技術が有する上記問題点に鑑みてなされたものであり,本発明の目的は,正確に秘密情報を取り出すことの可能な,新規かつ改良された透かし情報埋め込み方法,透かし情報検出方法,透かし情報埋め込み装置,及び,透かし情報検出装置を提供することである。
【0012】
さらに,本発明の他の目的は,信号検出時に紙の回転などで入力画像に歪みがある場合でも信号の復元を行うことができ,画像の回転補正を行う必要がなく,これにより,信号検出時の処理量を削減することの可能な,新規かつ改良された透かし情報埋め込み方法,透かし情報検出方法,透かし情報埋め込み装置,及び,透かし情報検出装置を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため,本発明の第1の観点によれば,文書の背景としてドットを規則正しく配置し,その中に配置の規則の異なるドットパターンを挿入し,前記ドットパターンの配置の規則に対して情報を与える透かし情報埋め込み方法が提供される。本発明の透かし情報埋め込み方法において,前記ドットパターンは少なくとも第1,第2,第3のドットを含んで構成されており,前記第1,第2,第3のドットの相対的な位置関係によって定まる固有値に応じて前記ドットパターンに値を設定し,所定形状の情報領域内に,同じ値が設定された前記ドットパターンを繰り返し配置し,その情報領域全体に前記情報の1ビットを設定することを特徴とする。
【0014】
前記第1,第2,第3のドットの相対的な位置関係によって定まる固有値は,例えば,前記第3のドットを始点とし前記第1のドットを終点とするベクトルと,前記第3のドットを始点とし前記第2のドットを終点とするベクトルとの内積とすることができる。
【0015】
かかる方法によれば,数個の小さなドットから構成されるドットパターンを埋め込むことで,文書(紙)の背景に視覚的に違和感のない方法で情報を埋め込むことができる。そして,ドットのうち1つを始点,2つを終点とした仮想的な2つのベクトルの内積の違い(ベクトルのなす角度およびベクトルの大きさの違い)によって情報を表現している。すなわち,情報をN元符号化し,各符号語に対応して内積を割り当てることができる。かかる方法によれば,信号検出時に紙の回転などで入力画像に歪みがある場合でも,仮想ベクトル同士のなす角や仮想ベクトル同士の大きさの違いなどを検出するだけで信号の復元を行うことが可能となり,画像の回転補正を行う必要がない。このようにして,信号検出時の処理量を削減することができる。
【0016】
また,前記第3のドットを,前記第2のドットを始点として,前記第1のドットを始点とし前記第2のドットを終点とするベクトルに略垂直な方向に位置するようにすることができる。後述するように,情報検出の際に,第3のドットを容易に検索することができる。
【0017】
前記ドットパターンは,さらに,前記第1のドットを始点として,前記第1のドットを始点とし前記第2のドットを終点とするベクトルに略垂直な方向に位置する第4のドットを含んで構成することができる。ドットパターンを文書の背景に密に配置したときの濃度のバランスを保ち,ドットパターン検出時の補助とすることができる。すなわち,第1のドットを始点とし第2のドットを終点とするベクトルを水平基準ベクトルとし,第1のドットを始点とし第4のドットを終点とするベクトルを垂直基準ベクトルとして利用することができる。
【0018】
また本発明では,所定形状の情報領域内に,同じ値が設定されたドットパターンを繰り返し配置し,その情報領域全体に1ビットの情報を設定することとしているが,ここで,情報領域の形状の一例としては矩形(正方形を含む)が挙げられる。なお,情報領域をドットパターンと同じサイズとし,1つの情報領域にドットパターンを1つのみ配置してもよい。
【0019】
また,上記課題を解決するため,本発明の第2の観点によれば,上記本発明の第1の観点にかかる透かし情報埋め込み方法で印刷された文書から情報を検出する透かし情報検出方法が提供される。本発明の透かし情報検出方法は,以下の各ステップを含むことを特徴としている。
(ステップ1)前記文書を画像データに変換して,第1,第2,第3のドット候補点を探索する。
(ステップ2)前記第1,第2,第3のドット候補点の相対的な位置関係によって定まる固有値と,前記第1,第2,第3のドットの相対的な位置関係によって定まる固有値とが略同一の場合に,前記第1,第2,第3のドット候補点は前記ドットパターンを構成する第1,第2,第3のドットであると判定する。
(ステップ3)前記情報領域内における前記ドットパターンに設定された値の多数決により,その情報領域に設定された情報の1ビットを検出する。
【0020】
上記(ステップ1)における第1,第2,第3のドット候補点の相対的な位置関係によって定まる固有値は,例えば,前記第3のドット候補点を始点とし前記第1のドット候補点を終点とするベクトルと,前記第3のドット候補点を始点とし前記第2のドット候補点を終点とするベクトルとの内積である。
【0021】
上記(ステップ1)における第1,第2,第3のドット候補点の探索は,例えば,以下の各ステップを含む。
(ステップ1−1)前記第1のドット候補点を検索する。
(ステップ1−2)前記第1のドット候補点が見つかった場合に,その第1のドット候補点を中心に所定の半径を持つ探索円を設定して,その探索円上に第2のドット候補点を探索する。ここで探索円とは,半径の異なる2つの円に囲まれた所定幅のリング形状領域を含む概念である。
(ステップ1−3)前記第2のドット候補点が見つかった場合に,その第2のドット候補点を始点として,前記第1のドット候補点を始点としその第2のドット候補点を終点とするベクトルに略垂直な方向に前記第3のドット候補点を探索する。
【0022】
かかる透かし情報検出方法によれば,上記優れた効果を有する透かし情報埋め込み方法により埋め込んだ情報を,容易かつ確実に検出することができる。
【0023】
さらに本発明によれば,上記(ステップ1)において入力された文書を画像データに変換する際に必要な傾き補正を行うことができる。例えば,前記画像データ全体で検出された各ドットパターンにおける,前記第1のドットを始点とし前記第2のドットを終点とするベクトルの傾きの平均値を前記画像データの傾きであると判定し,前記画像データの傾き補正を行うことが可能である。
【0024】
さらにまた本発明によれば,上記(ステップ3)において情報領域に設定された情報の1ビットを検出するにあたり,検出精度を上げるために例えば以下のような手法を採用することができる。
(ステップ3−1)前記画像データの傾きに応じた座標系を設定する。
(ステップ3−2)前記座標系の垂直軸と水平軸に沿い,隣り合う間隔を前記座標系における前記情報領域の大きさと略同一にした格子状の水平格子軸及び垂直格子軸を設定する。
(ステップ3−3)前記水平格子軸と前記垂直格子軸との交点を中心とし,隣接する情報領域との境界をまたがないような十分小さな判定領域を設定する。
(ステップ3−4)その判定領域内における前記ドットパターンの値の多数決により,その判定領域を含む前記情報領域に設定された前記情報の1ビットを検出する。
【0025】
さらに,上記(ステップ3−1)における前記水平格子軸及び前記垂直格子軸の設定は,例えば,以下の各ステップにより行われる。
(ステップ3−1−1)任意に設定した水平格子軸と垂直格子軸により定まる判定領域の配置において,判定領域内に含まれるドットパターンが第1の値を表す場合には−1を,第2の値を表す場合は+1をその判定領域の値として加算する。
(ステップ3−1−2)判定領域内の各ドットパターンについての合計値の絶対値をすべての判定領域について合計した値を,ここで設定した水平格子軸と垂直格子軸に対する評価値とする。
(ステップ3−1−3)水平格子軸と垂直格子軸の位置を微小に変化させた中で最も評価値が大きくなる位置をもって,前記水平格子軸及び前記垂直格子軸として設定する。
【0026】
また,本発明によれば,上記本発明の第1の観点にかかる透かし情報埋め込み方法を実現可能な透かし情報埋め込み装置が提供される。
【0027】
さらにまた,本発明によれば,上記本発明の第2の観点にかかる透かし情報検出方法を実現可能な透かし情報検出装置が提供される。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下に添付図面を参照しながら,本発明にかかる透かし情報埋め込み方法,透かし情報検出方法,透かし情報埋め込み装置,及び,透かし情報検出装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお,本明細書及び図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0029】
図1は,本実施の形態にかかる透かし情報埋め込み装置,及び,透かし情報検出装置の構成を示す説明図である。
【0030】
(透かし情報埋め込み装置1001)
透かし情報埋め込み装置1001は,文書データと文書に埋め込む機密情報をもとに文書画像を構成し,紙媒体に印刷を行う装置である。透かし情報埋め込み装置1001は,図1に示したように,文書画像形成部1005と,透かし画像形成部1006と,透かし入り文書画像合成部1007と,出力デバイス1008により構成されている。文書データ1003は文書作成ツール等により作成されたデータである。機密情報1004は紙媒体に文字以外の形式で埋め込む情報(文字列や画像,音声データ)などである。
【0031】
文書画像形成部1006では,文書データ1003を紙面に印刷した状態の画像が作成される。具体的には,文書画像中の白画素領域は何も印刷されない部分であり,黒画素領域は黒の塗料が塗布される部分である。なお,本実施の形態では,白い紙面に黒のインク(単色)で印刷を行うことを前提として説明するが,本発明はこれに限定されず,カラー(多色)で印刷を行う場合であっても,同様に本発明を適用可能である。
【0032】
透かし画像形成部1006は,機密情報1004をディジタル化して数値に変換したものをN元符号化(Nは2以上)し,符号語の各シンボルをあらかじめ用意した信号に割り当てる。本実施の形態において,透かし画像形成部1006においてあらかじめ用意した信号は,任意の大きさの矩形領域中にドットを配置することにより任意の2つ以上の仮想的なベクトルを構成し,そのベクトルの内積の違いに対してシンボルを割り当てたものである。透かし画像は,これらの信号がある規則に従って画像上に配置されたものである。
【0033】
透かし入り文書画像合成部1007は,文書画像と透かし画像を重ね合わせて透かし入りの文書画像を作成する。また,出力デバイス1008は,プリンタなどの出力装置であり,透かし入り文書画像を紙媒体に印刷する。文書画像形成部1005,透かし画像形成部1006,透かし入り文書画像合成部1007はプリンタドライバの中の一つの機能として実現されていても良い。
【0034】
印刷文書1009は,元の文書データ1003に対して機密情報1004を埋め込んで印刷されたものであり,物理的に保管・管理される。また,透かし情報検出装置1002が透かし情報埋め込み装置1001に対して遠隔の場所にある場合には,例えば配送などにより,印刷文書1009のやりとりが可能となっている。
【0035】
(透かし情報検出装置1002)
透かし情報検出装置1002は,紙媒体に印刷されている文書を画像として取り込み,埋め込まれている機密情報を復元する装置である。透かし情報検出装置1002は,図1に示したように,入力デバイス1010と,透かし検出部1011とにより構成されている。
【0036】
入力デバイス1010は,スキャナなどの入力装置であり,紙に印刷された文書1009を多値階調のグレイ画像として計算機に取り込む。また,透かし検出部1011は,入力画像に対してフィルタ処理を行い,埋め込まれた信号を検出する。そして,検出された信号からシンボルを復元し,埋め込まれた機密情報を取り出す。
【0037】
以上のように構成される透かし情報埋め込み装置1001及び透かし情報検出装置1002の動作について説明する。まず,図1〜図4を参照しながら,透かし情報埋め込み装置1001の動作について説明する。
【0038】
(文書画像形成部1005)
文書データ1003はフォント情報やレイアウト情報を含むデータであり,ワープロソフト等で作成されるものとする。文書画像形成部1005は,この文書データ1003を基に,文書が紙に印刷された状態の画像をページごとに作成する。この文書画像は白黒の二値画像であり,画像上で白い画素(値が1の画素)は背景であり,黒い画素(値が0の画素)は文字領域(インクが塗布される領域)であるものとする。
【0039】
(透かし画像形成部1006)
機密情報1004は文字,音声,画像などの各種データであり,透かし画像形成部1006ではこの情報から文書画像の背景として重ね合わせる透かし画像を作成する。
【0040】
図2は,透かし画像形成部1006の処理の流れを示す流れ図である。
まず,機密情報1004をN元符号に変換する(ステップS101)。Nは任意であるが,本実施の形態では説明を容易にするためN=2とする。従って,ステップS101で生成される符号は2元符号であり,機密情報1004が0と1のビット列で表現されるものとする。このステップS101ではデータをそのまま符号化しても良いし,データを暗号化したものを符号化しても良い。
【0041】
次いで,符号語の各シンボルに対してドットパターンを割り当てる(ステップS102)。ドットパターンは,数個のドット(黒画素)からなり,これらドットの相対的な位置関係によって定まる固有値を与えることができる。このステップS102では,ドットパターンの固有値と符号語の各シンボル(0,1)とを関連づける。この関連づけについては,さらに後述する。
【0042】
そして,符号化された機密情報1004のビット列に対応するドットパターンを透かし画像上に配置する(ステップS103)。
【0043】
上記ステップS102において,符号語の各シンボルに対して割り当てるドットパターンについて説明する。図3はドットパターンの一例を示す説明図である。
【0044】
ドットパターンの幅と高さをそれぞれSw,Shとする。SwとShは異なっていても良いが,本実施の形態では説明を容易にするためSw=Shとする。長さの単位は画素数であり,図3の例ではSw=Sh=12である。これらの信号が紙面に印刷されたときの大きさは,透かし画像の解像度に依存しており,例えば透かし画像が600dpi(dot per inch:解像度の単位であり,1インチ当たりのドット数)の画像であるとしたならば,図3のドットパターンの幅と高さは,印刷文書上で12/600=0.02(インチ)となる。
【0045】
図3(a)に示したように,ドットパターンは,
・始点ドット2101(座標値(0,0))
・水平基準ドット2102(座標値(Sw/2,0))
・垂直基準ドット2103(座標値(0,Sh/2))
・変調ドット2104(座標値(Sw/2,Sh/2+1))
を含んで構成されている。なお,垂直基準ドット2103は,ドットパターンを文書の背景に密に配置したときの濃度のバランスを保ち,信号検出時の補助とするためのドットである。また,変調ドット2104は,水平基準ドット2102を始点として,始点ドット2101を始点とし水平基準ドット2102を終点とするベクトルに略垂直な方向に位置するように配置する。これら始点ドット2101,水平基準ドット2102,変調ドット2104の相対的な位置関係によって定まる固有値に応じてドットパターンに値を設定する。以下に,固有値について説明する。
【0046】
図3(a)において,始点ドット2101,水平基準ドット2102,変調ドット2104による仮想的な2つのベクトル(変調ベクトル2106,基準ベクトル2105)を設定する。変調ベクトル2106は,変調ドット2104を始点とし始点ドット2101を終点としたベクトルである。基準ベクトル2105は,変調ドット2104を始点とし水平基準ドット2101を終点としたベクトルである。また,基準ベクトルと変調ベクトルのなす角を変調角2104(=θ0)とする。また基準ベクトルVsの大きさvs=|Vs|,変調ベクトルVmの大きさvm=|Vm|とする。
【0047】
本実施の形態では,基準ベクトル2105と変調ベクトル2106の内積によってドットパターンの特徴を表すものとし,これを信号固有値Svと称することにする。なお,ベクトルAとベクトルBの内積A・Bは,
A・B=|A||B|cosθ
ここで,|A|はベクトルAの大きさ,θはベクトルAとベクトルBのなす角で表される。
【0048】
また,ベクトルAとベクトルBの内積は,A=(x0,y0),B=(x1,y1)とするとA・B=x0×x1+y0×y1とも表される。図3の例では始点ドットの座標値2101を(x,y)=(0,0),水平基準ドット2102の座標値を(Sw/2,0),変調ドット2104の座標値を(Sw/2,Sh/2−1)としている。したがって,変調角2207(=θ1),信号固有値Sv0=Vs・Vm=(Sw/2)×(Sw/2−1)である。
【0049】
図3(b)においても同様に基準ベクトル2205と変調ベクトル2206を設定する。ただし,始点ドット2201,水平基準ドット2202の座標値は図3(a)と等しいが,変調ドット2203の座標値を(Sw/2,Sh/2+1)としている。したがって,信号固有値Sv1=Vs・Vm=(Sw/2)×(Sw/2+1)である。
【0050】
以下では図3(a)が信号0を表し,図3(b)が信号1を表すものとする。
【0051】
このように始点ドット,水平基準ドット,変調ドットの相対的な位置関係によって信号固有値を様々に変更することができる。なお,基準ベクトルは変調ドットと垂直基準ドットを結ぶベクトルとしても良い。この場合,変調ドットの座標値として,信号0の場合は(Sw/2−1,Sh/2),信号1の場合は(Sw/2+1,Sh/2)としても良い。
【0052】
さらに,図3の例では信号0と信号1で,“基準ベクトル及び変調ベクトルの大きさ”及び“変調角の大きさ”の両方を変化させることで,2つの信号間の信号固有値を異なるものにしているが,“基準ベクトル及び変調ベクトルの大きさ”または“変調角の大きさ”のどちらか一方のみを変化させて信号固有値を異なるものにしても良い。
【0053】
図2のステップS103では,符号化されたデータのビット列に対応するドットパターンを透かし画像上に配置するが,ビット(シンボル)を表現するために,本実施の形態では,図4に示すように同一のドットパターンをls×ls(個)の矩形状に配置する。これをユニットパターンと称する。図4の例ではls=10としており,信号0を表すドットパターンにより構成されたユニットパターンがシンボル0(図4(a))を,信号1を表すドットパターンにより構成されたユニットパターンがシンボル1(図4(b))を表すものとする。以下,ユニットパターンの画像上での1辺の大きさをLとする。SwとShが等しい場合,L=ls×Swである。
【0054】
図5は,機密情報を透かし画像に埋め込む方法について示した流れ図である。ここでは1枚(1ページ分)の透かし画像に,同じ情報を繰り返し埋め込む場合について説明する。同じ情報を繰り返し埋め込むことにより,透かし画像と文書画像を重ね合わせたときに1つのユニットパターン全体が塗りつぶされるなどして埋め込み情報が消失するような場合でも,埋め込んだ情報を取り出すことが可能である。
【0055】
まず,機密情報1004をN元符号(本実施の形態では2元符号)に変換する(ステップS201)。図2のステップS101と同様である。以下では,符号化された情報をデータ符号と称し,ユニットパターンの組合わせによりデータ符号を表現したものをデータ符号ユニットDuと称する。
【0056】
次いで,データ符号の符号長(ここではビット数)と埋め込みビット数から,1枚の画像にデータ符号ユニットを何度繰り返し埋め込むことができるかを計算する(ステップS202)。1ページ分の透かし画像の中に何ビットの情報量を埋め込むことができるかは,ドットパターンの大きさ,ユニットパターンの大きさ,文書画像の大きさに依存する。信号検出時においては,文書画像の水平方向と垂直方向にいくつの信号を埋め込んだかは,既知として信号検出を行っても良いし,入力装置から入力された画像の大きさと信号ユニットの大きさから逆算しても良い。
【0057】
1ページ分の透かし画像の水平方向にPw個,垂直方向にPh個のユニットパターンが埋め込めるとする。水平方向にPw個,垂直方向にPh個のユニットパターンを「ユニットパターン行列」と称することにする。また,1ページに埋め込むことができるビット数を「埋め込みビット数」と称する。埋め込みビット数はPw×Phである。
【0058】
本実施の形態では,データ符号の符号長を表すビット列(以下,符号長データという)をユニットパターン行列の第1行に挿入するものとする。なお,データ符号の符号長を固定長として符号長データを透かし画像に埋め込まないようにしてもよい。1ページ分の透かし画像の水平方向にPw個,垂直方向にPh個のユニットパターンが埋め込めるとすると,データ符号ユニットを埋め込む回数Dnは,データ符号長をCnとして以下の式で計算される。
【0059】
【数1】
【0060】
ここで剰余をRn(Rn=Cn−(Pw×(Ph−1)))とすると,ユニットパターン行列にはDn回のデータ符号ユニットおよびデータ符号の先頭Rnビット分に相当するユニットパターンを埋め込むことになる。ただし,剰余部分のRnビットは必ずしも埋め込まなくても良い。
【0061】
図6の説明では,ユニットパターン行列のサイズを9×11(11行9列),データ符号長を12(図中で0〜11の番号がついたものがデータ符号の各符号語を表す)とする。
【0062】
ユニットパターン行列への符号長データの埋め込みについて具体的に説明すると,まず,ユニットパターン行列の第1行目に符号長データを埋め込む(ステップS203)。図6の例では符号長を9ビットのデータで表現して1度だけ埋め込んでいる例を説明しているが,ユニットパターン行列の幅Pwが十分大きい場合,データ符号と同様に符号長データを繰り返し埋め込むこともできる。
【0063】
さらに,ユニットパターン行列の第2行以降に,データ符号ユニットを繰り返し埋め込む(ステップS204)。図6で示すようにデータ符号のMSB(most significant bit)またはLSB(least significant bit)から順に行方向に埋め込む。図6の例ではデータ符号ユニットを7回,およびデータ符号の先頭6ビットを埋め込んでいる例を示している。データの埋め込み方法は図6のように行方向に連続になるように埋め込んでも良いし,列方向に連続になるように埋め込んでも良い。
【0064】
以上,透かし画像形成部1006における,透かし画像について説明した。次いで,透かし情報埋め込み装置1001の透かし入り文書画像合成部1007について説明する。
【0065】
(透かし入り文書画像合成部1007)
透かし入り文書画像合成部1007では,文書画像形成部1005で作成した文書画像と,透かし画像形成部1006で作成した透かし画像を重ね合わせる。図7は,透かし入り文書画像の一例を示す説明図である。透かし入り文書画像の各画素の値は,図7に示したように,文書画像と透かし画像の対応する画素値の論理積演算(AND)によって計算する。すなわち,文書画像と透かし画像のどちらかが0(黒)であれば,透かし入り文書画像の画素値は0(黒),それ以外は1(白)となる。
【0066】
透かし入り文書画像は,出力デバイス1008により出力される。
【0067】
以上,透かし情報埋め込み装置1001の動作について説明した。
次いで,図1,及び,図8〜図17を参照しながら,透かし情報検出装置1002の動作について説明する。
【0068】
(透かし検出部1002)
図8は透かし検出部の処理の流れを示す説明図である。
ステップS301ではスキャナなどの入力デバイスによって透かし入り文書画像を透かし情報検出装置1002に入力する。具体的には,計算機のメモリ等に入力する。この画像を入力画像と呼ぶ。入力画像は多値画像であり,以降では256階調のグレイ画像として説明する。また入力画像をスキャナ等で読み込むときの解像度は,上述の透かし情報埋め込み装置1001で作成した透かし入り文書画像と異なっていても良いが,ここでは透かし情報埋め込み装置1001で作成した画像と同じ解像度であるとして説明を行う。またスキャナなどで画像を取り込む際に,紙がスキャナの撮像面の座標軸に対して正確な位置合わせが行われないために透かし埋め込み領域の座標系が入力画像の座標系に対して回転している場合があるが,以降の説明では画像処理による透かし領域の回転補正は行わずに透かし検出を行う。
【0069】
ステップS302では入力画像からドットパターンの検出を行う。ドットパターンの検出の詳細については,図9〜図12を参照しながらさらに後述する。ドットパターンの検出は入力画像全体に対して行う。入力画像のサイズを幅W,高さHとしたとき,入力画像の座標値I(x,y)(x=0〜W−1,y=0〜H−1)に信号0を表すドットパターンが存在すればU(x,y)=−1とし,信号1を表すドットパターンが存在すればU(x,y)=1とする。ドットパターンが存在しない場合はU(x,y)=0とする。ただし,ステップS302においては,U(x,y)(x=0〜W−1,y=0〜H−1)は最初にすべて0で初期化されているものとする。
【0070】
ステップS302では信号の判定結果を格納すると同時に,基準ベクトルの傾きをR(x,y)に格納する。ただし,R(x,y)の値はU(x,y)が0以外の場合のみ,すなわち,ドットパターンが存在した座標のみ有効であるものとする。
【0071】
ステップS303ではU(x,y)およびR(x,y)を元にユニットパターンを検出する(図13で説明)。ユニットパターンの検出の詳細については,図13〜図17を参照しながらさらに後述する。
【0072】
ステップS304ではシンボル列(例えば01100010100・・・)から情報を復元する。情報復号については,図18を参照しながらさらに後述する。
【0073】
以上,図8を参照しながら,本実施の形態にかかる透かし情報検出方法について概説した。次いで,各ステップS302〜S304について,順に詳説する。
【0074】
(ドットパターン検出ステップS302)
図9は,図8のドットパターン検出ステップS302の詳細を示す説明図である,ドットパターン検出ステップS302は,図9に示したように,以下のステップS401〜S404からなる。
【0075】
(始点ドット候補検索ステップS401)
ステップS401では,入力画像を図10に示すようにラスタースキャンすることにより始点ドット候補D1を探索する。透かし画像形成部によって埋め込まれたドット(始点ドット,基準ドット,変調ドット)を検出する方法としては,以下のいずれの方法でも良い。
・入力画像の任意の位置I(x,y)における輝度値があらかじめ定めた閾値T以下であればそれをドットと判定する。
・入力画像の任意の位置I(x,y)における任意のエッジ検出フィルタの出力値があらかじめ定めた閾値T以上であればそれをドットと判定する。
【0076】
(水平基準ドット候補検索ステップS402)
ステップS402では水平基準ドットの候補となるドットを探索する。ここではまず,図11で示すように,探索領域Rを設定する。探索領域Rは始点ドット候補D1を中心とし,半径をそれぞれr1,r2(r1<r2)とする2つの半円,および探索開始軸Asと探索終端軸Aeに囲まれた領域である。探索領域Rは,始点ドット候補D1が真の始点ドットであった場合に,水平基準ドットが存在するであろう範囲を示したものである。r1,r2は埋め込んだドットパターンの基準ベクトルVsの大きさ,および印刷の解像度と画像取り込みの解像度に依存している。
【0077】
探索開始軸Asと探索終端軸Aeはラスタースキャンの際に,元に戻る方向でドットを探索することを防ぐために設定する。これはドットの並びの方向性を保つために必要となる。探索の方向は探索開始軸Asからドットの探索を始め,探索領域R内を時計回りに行うものとする。
【0078】
ステップS402において探索領域R内に新たにドットが見つかった場合,これを水平基準ドット候補D2とする。新たなドットが見つからなかった場合,始点ドット候補D1は真の始点ドットではなかったものとしてステップS401に戻り,再び次の始点ドット候補を探索する。
【0079】
(変調ドット候補検索ステップS403)
ステップS403では,変調ドット候補を検索する。図12で示すように,水平基準ドット候補D2を通り,始点ドット候補D1と水平基準ドット候補D2を結んだ直線と垂直な直線上で,図12の破線矢印で示した探索方向に沿ってステップS402と同様にドットを探索する。探索範囲は水平基準ドット候補D2からの距離が(Sh−1)±Δdおよび(Sh+1)±Δd(Δdはあらかじめ定めた値)の範囲とし,新たなドットが見つかった場合に,これを変調ドット候補D3とする。新たなドットが見つからなかった場合,始点ドット候補D1は真の始点ドットではなかったものとしてステップS401に戻り,再び次の始点ドット候補を探索する。
【0080】
(信号固有値(内積)計算ステップS404)
ステップS404では,変調ドット候補D3と水平基準ドット候補D2を結ぶ基準ベクトルVsと,変調ドット候補D3と始点ドット候補D1を結ぶ変調ベクトルVmによる信号固有値(内積)を計算し,これがSv0±dvまたはSv1±dvの範囲内であれば,ここで検出した3つのドットD1,D2,D3はドットパターンを構成するドットであると判定する。ただし,dvは信号固有値に関する誤差成分であらかじめ定められた値とする。信号固有角がSv0±dvまたはSv1±dvの範囲外であれば,始点ドット候補D1は真の始点ドットではなかったものとしてステップS401に戻り,再び次の始点ドット候補を探索する。
【0081】
(信号判定および信号結果蓄積ステップS405)
ステップS405ではステップS404で求めた信号固有値から,ステップS406により,このドットパターンが信号0であるか信号1であるかを判定する。信号0であればU(x,y)=−1とし,信号1であればU(x,y)=1とする。また,基準ベクトルの傾きをR(x,y)に記録する。
【0082】
以上,ドットパターン検出ステップS302の詳細について説明した。次いで,ユニットパターン検出ステップS303の詳細について説明する。
【0083】
(ユニットパターン検出ステップS303)
図13は,図8のユニットパターン検出ステップS303の詳細を示す説明図である。ユニットパターン検出ステップS303は,図13に示したように,以下のステップS501〜S504からなる。
【0084】
(信号領域の傾き検出ステップS501)
ステップS501では,基準ベクトルの傾きR(x,y)のうち,それに対応するU(x,y)の値が0以外の場合についての平均値Raを計算する。この平均値Raが入力画像に対する信号領域の傾き,例えばスキャナなどの撮像面に対する原稿の傾きであると判定する。以下,傾きRaという。
【0085】
(ユニットパターン判定領域設定ステップS502)
ステップS502ではユニットパターン判定領域の大きさを設定する。ユニットパターンは同じ情報を表すドットパターンをls×ls個ずつ並べたものであるが,信号領域の傾きのため,ラスタースキャンによりユニットパターンの判定を行った場合には,ユニットパターンの周辺部分の信号が,隣接するユニットパターンの信号と混ざり合うことになる(図14のグレーの部分)。したがって,ユニットパターン判定領域の大きさをL×Lより小さ目に設定する。
【0086】
図15はユニットパターン判定領域の大きさの決定方法の例を示している。
図15(a)は入力画像であり,図中の任意のユニットパターンを取り出したものが図15(b)である。図15(b)は一辺がLの正方形を傾きRaだけ回転させたものである。図のように,入力画像の座標系において回転のない矩形状の判定領域を設定する。判定領域はその4つの頂点すべてが回転した状態でのユニットパターンの内部に収まるようにする。図中でdmはマージンであり,dm=0の場合は先の条件(4頂点がすべてユニットパターン内に収まる)を満たす最大の矩形となる。以下では判定領域の一辺の長さをMとする。
【0087】
(判定領域の最適設置位置確定ステップS503)
ステップS503では,判定領域を回転のある格子状に配置し,格子の軸を変動させることによって判定領域の最適な配置を求める。
【0088】
図16は判定領域を格子状に配置した例である。破線で示された直線が格子軸であり,信号埋め込み領域の座標系にしたがって「水平格子軸」と「垂直格子軸」に分類している。水平格子軸は信号領域における水平軸で,隣接する軸間の距離はL(ユニットパターンの大きさ)である。垂直格子軸は信号領域における垂直軸で,隣接する軸間の距離はLである。入力画像の座標系から見た格子軸は,入力画像の水平軸,垂直軸をそれぞれ傾きRaだけ回転させたものであり,隣り合う軸間の距離はL×cos(Ra)である。
【0089】
図のように水平格子軸と垂直格子軸の交点と判定領域の中心が重なるように,判定領域を配置する。また,格子軸の交点のうち最も左上にあるものを「格子軸の始点C(0)」と呼び,入力画像内に設置できるすべての判定領域をC(i),i=0〜Cnとする。C(i)は格子軸の交点の並びを行列とみなしたときに,1行1列,1行2列,・・・,2行1列,2行2列の順であるものとする。
【0090】
次に,Cu(i),i=0〜CnをC(i)に含まれる領域に対応するU(x,y)の値の合計値の絶対値とし,格子軸の始点C(0)の座標が(CX,CY)であったときのCu(i),i=0〜Cnの合計値をPu(CX,CY)と表記する。
【0091】
Cu(i)は各判定領域が,ユニットパターンの中央に配置されたときに最も値が大きくなる。なぜなら,図17で示すように,判定領域が2つ以上のユニットパターンにまたがって設置された場合,対応する領域のU(x,y)の値は+1と−1が混在するため,それらの合計の絶対値は小さくなる。一方,判定領域が1つのユニットパターン内に収まる場合は,対応する領域のU(x,y)の値は,たとえ信号判定エラーがあった場合を考慮しても,+1か−1のどちらかに偏るため,それらの合計の絶対値は大きくなる。
【0092】
従って,CX,CYをそれぞれ±dL/2の範囲で動かした場合のPu(CX,CY)を計算し,これが最大となるCX,CYが判定領域の最適な配置であると判定する。
【0093】
(ユニットパターン判定ステップS504)
ステップS504では,ステップS503で設定した配置におけるC(i),i=0〜Cnにおいて,Cp(i),i=0〜CnをC(i)に含まれる領域に対応するU(x,y)の値の合計とし,Cs(i),i=0〜CnをCp(i)によって判定されたユニットパターンの値とする。
【0094】
Cp(i)が正であれば対応するユニットパターンの値は1であるものとしCs(i)=1とする。また,Cp(i)が負であれば対応するユニットパターンの値は0であるものとしCs(i)=0とする。ただし,Cp(i)が閾値Ts以下であれば,その判定領域は信号埋め込み領域の外にあると判断しCs(i)=−1とする。
【0095】
Cs(i),i=0〜Cnのうち,Cs(i)が負のものを除き,Cs(i)の値を直列に連結してビット列を復元することによって,埋め込まれた情報を取り出す。
【0096】
以上,ユニットパターン検出ステップS303の詳細について説明した。再び,図8の流れ図に戻り,以降のステップS304について説明する。ステップS304では,ユニットパターン行列のシンボルを連結してデータ符号を再構成し,元の情報を復元する。
【0097】
(情報復号ステップS304)
図18は情報復元の一例を示す説明図である。情報復元ステップS304は以下の通りである。
▲1▼各ユニットパターンに埋め込まれているシンボルを検出する(図18▲1▼)。▲2▼シンボルを連結してデータ符号を復元する(図18▲2▼)。
▲3▼データ符号を復号して埋め込まれた情報を取り出す(図18▲3▼)。
【0098】
本実施の形態ではデータ符号を繰り返し埋め込む場合について説明したが,データを符号化する際に誤り訂正符号などを用いることにより,データ符号ユニットの繰り返しを行わないような方法も実現できる。
【0099】
以上説明したように,本実施の形態によれば,数個の小さなドット(始点ドット2101,水平基準ドット2105,変調ドット2104,垂直基準ドット2103)から構成されるドットパターンを埋め込むことで,印刷文書(紙)1009の背景に視覚的に違和感のない方法で情報を埋め込むことができる。そして,変調ドットを始点,始点ドット,水平基準ドットを終点とした仮想的な2つのベクトルの内積の違い(ベクトルのなす角度およびベクトルの大きさの違い)によって情報を表現している。かかる方法によれば,信号検出時に紙の回転などで入力画像に歪みがある場合でも,仮想ベクトル同士のなす角や仮想ベクトル同士の大きさの違いなどを検出するだけで信号の復元を行うことが可能となり,画像の回転補正を行う必要がない。このようにして,信号検出時の処理量を削減することができる。
【0100】
以上,添付図面を参照しながら本発明にかかる透かし情報埋め込み方法,透かし情報検出方法,透かし情報埋め込み装置,及び,透かし情報検出装置の好適な実施形態について説明したが,本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0101】
【発明の効果】
以上説明したように,本発明によれば,印刷文書(紙)の背景に視覚的に違和感のない方法で情報を埋め込む場合において,情報を正確に取り出すことが可能である。また本発明によれば,信号検出時に紙の回転などで入力画像に歪みがある場合でも信号の復元を行うことができ,画像の回転補正を行う必要がなく,これにより,信号検出時の処理量を削減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】透かし情報埋め込み装置及び透かし情報検出装置の構成を示す説明図である。
【図2】透かし画像形成部1005の処理の流れを示す流れ図である。
【図3】ドットパターンの例を示す説明図である。
【図4】ユニットパターンの説明図である。
【図5】機密情報を透かし画像に埋め込む方法について示した流れ図である。
【図6】透かし検出部1011の処理の流れを示す流れ図である。
【図7】透かし入り文書画像の一例を示す説明図である。
【図8】透かし検出部1011の処理の流れを示す説明図である。
【図9】ドットパターン検出の処理の流れを示す説明図である。
【図10】図9の始点ドット候補選択ステップS401の説明図である。
【図11】図9の水平基準ドット候補検索ステップS402の説明図である。
【図12】図9の変調ドット候補検索ステップS403の説明図である。
【図13】図8のユニットパターン検出ステップS303の詳細な説明図である。
【図14】図13のユニットパターン判定領域設定ステップS502の説明図である。
【図15】図13のユニットパターン判定領域設定ステップS502の説明図であり,(a)は入力画像であり,(b)は任意のユニットパターンを取り出したものである。
【図16】図13の判定領域の最適設置位置確定ステップS503の説明図である。
【図17】図13の判定領域の最適設置位置確定ステップS503の説明図である。
【図18】情報復元の一例を示す説明図である
【符号の説明】
1001 透かし情報埋め込み装置
1002 透かし情報検出装置
1003 文書データ
1004 機密情報
1005 文書画像形成部
1006 透かし画像形成部
1007 透かし入り文書画像合成部
1008 出力デバイス
1009 印刷文書
1010 入力デバイス
1011 透かし検出部
Claims (10)
- 文書の背景としてドットを規則正しく配列し,その中に配置の規則の異なるドットパターンを挿入し,前記ドットパターンの配置の規則に対して情報を与える透かし情報埋め込み方法であって,
前記ドットパターンは少なくとも第1,第2,第3のドットを含んで構成されており,
前記第1,第2,第3のドットの相対的な位置関係によって定まる固有値に応じて前記ドットパターンに値を設定し,
所定形状の情報領域内に,同じ値が設定された前記ドットパターンを繰り返し配列し,その情報領域全体に前記情報の1ビットを設定し,
前記第1,第2,第3のドットの相対的な位置関係によって定まる固有値は,
前記第3のドットを始点とし前記第1のドットを終点とするベクトルと,前記第3のドットを始点とし前記第2のドットを終点とするベクトルとの内積であることを特徴とする,透かし情報埋め込み方法。 - 前記第3のドットは,前記第2のドットを始点として,前記第1のドットを始点とし前記第2のドットを終点とするベクトルに略垂直な方向に位置することを特徴とする,請求項1に記載の透かし情報埋め込み方法。
- 前記ドットパターンは,さらに,前記第1のドットを始点として,前記第1のドットを始点とし前記第2のドットを終点とするベクトルに略垂直な方向に位置する第4のドットを含んで構成されることを特徴とする,請求項1または2のいずれかに記載の透かし情報埋め込み方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の透かし情報埋め込み方法で印刷された文書から情報を検出する,透かし情報検出方法であって,
前記文書を画像データに変換して,第1,第2,第3のドット候補点を探索し,
前記第1,第2,第3のドット候補点の相対的な位置関係によって定まる固有値と,前記第1,第2,第3のドットの相対的な位置関係によって定まる固有値とが略同一の場合に,前記第1,第2,第3のドット候補点は前記ドットパターンを構成する前記第1,第2,第3のドットであると判定し,
前記情報領域内における前記ドットパターンに設定された値の多数決により,その情報領域に設定された前記情報の1ビットを検出し,
前記第1,第2,第3のドット候補点の相対的な位置関係によって定まる固有値は,
前記第3のドット候補点を始点とし前記第1のドット候補点を終点とするベクトルと,前記第3のドット候補点を始点とし前記第2のドット候補点を終点とするベクトルとの内積であることを特徴とする,透かし情報検出方法。 - 前記第1,第2,第3のドット候補点の探索は,
前記第1のドット候補点を検索し,
前記第1のドット候補点が見つかった場合に,その第1のドット候補点を中心に所定の半径を持つ探索円を設定して,その探索円上に第2のドット候補点を探索し,
前記第2のドット候補点が見つかった場合に,その第2のドット候補点を始点として,前記第1のドット候補点を始点としその第2のドット候補点を終点とするベクトルに略垂直な方向に前記第3のドット候補点を探索することを特徴とする,請求項4に記載の透かし情報検出方法。 - 前記画像データ全体で検出された各ドットパターンにおける,前記第1のドットを始点とし前記第2のドットを終点とするベクトルの傾きの平均値を前記画像データの傾きであると判定し,前記画像データの傾き補正を行うことを特徴とする,請求項4または5のいずれかに記載の透かし情報検出方法。
- 前記画像データの傾きに応じた座標系を設定し,
前記座標系の垂直軸と水平軸に沿い,隣り合う間隔を前記座標系における前記情報領域の大きさと略同一にした格子状の水平格子軸及び垂直格子軸を設定し,
前記水平格子軸と前記垂直格子軸との交点を中心とし,隣接する情報領域との境界をまたがないような十分小さな判定領域を設定し,
その判定領域内における前記ドットパターンの値の多数決により,その判定領域を含む前記情報領域に設定された前記情報の1ビットを検出することを特徴とする,請求項4〜6のいずれかに記載の透かし情報検出方法。 - 前記水平格子軸及び前記垂直格子軸の設定は,
任意に設定した水平格子軸と垂直格子軸により定まる判定領域の配置において,判定領域内に含まれるドットパターンが第1の値を表す場合には−1を,第2の値を表す場合は+1をその判定領域の値として加算し,
判定領域内の各ドットパターンについての合計値の絶対値をすべての判定領域について合計した値を,ここで設定した水平格子軸と垂直格子軸に対する評価値とし,
水平格子軸と垂直格子軸の位置を微小に変化させた中で最も評価値が大きくなる位置をもって,前記水平格子軸及び前記垂直格子軸として設定することを特徴とする,請求項7に記載の透かし情報検出方法。 - 透かし画像埋め込み装置であって,
文書データを基にして,文書画像をページごとに作成する文書画像形成部と,
機密情報を基にして,請求項1〜3のいずれかに記載の透かし情報埋め込み方法によりドットパターンの配置の規則を透かしとして透かし画像を作成する透かし画像形成部と,
前記文書画像と前記透かし画像を重ね合わせて透かし入り文書画像を作成する透かし入り画像合成部と,
を備えたことを特徴とする,透かし画像埋め込み装置。 - 文書画像と複数種類のドットパターンが埋め込まれた透かし画像とが重ね合わされて作成された透かし入り文書画像から,請求項4〜8のいずれかに記載の透かし情報検出方法により前記情報を検出する透かし検出部を備えたことを特徴とする,透かし画像検出装置。
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