しかしながら、上記特許文献1に開示されたような追記型の光情報記録媒体では、非線形材料を書き込み可能な情報層と同一として用いる際の、実用的な高い信号品質を得るための具体的な製法や光学特性、膜厚について述べられておらず、また上記特許文献2に開示された技術についても、超解像記録膜はあくまでも記録膜に記録された情報のコントラストを向上させるための補助的な膜であって、超解像記録膜を記録膜と積層せずに単一で用いる追記型記録媒体については述べられておらず、また仮に上記超解像膜を単独で用いたとしても、実用的な高い信号品質を得るための具体的な製法や光学特性、膜厚について述べられていないという問題があった。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は光情報記録媒体において、情報を記録する層と超解像動作する層とを同一層とすることができるとともに、記録再生を行う光ビームの光学分解能よりも短いマーク長の記録情報から、実用的な高い信号品質が得られる光情報記録媒体を提供することにある。
本発明に係る光情報記録媒体は、上記課題を解決するために、光ビームを用いて情報の記録及び/又は再生を行う光情報記録媒体であって、上記光ビームの光源波長近傍に特定の波長以下の光を吸収する光吸収端を有し、かつ、当該光ビームの光源波長よりも長波長側では光透過性を示す光変調膜を備えており、上記光変調膜は、情報を記録及び/再生する層として機能するとともに、超解像動作機能が実現する層であることを特徴としている。
また、本発明に係る光情報記録媒体は、上記の構成において、上記光変調膜は、上記光ビームの照射によって光ビームの光源波長近傍における光情報記録媒体の反射率が変化する材料を含んでなることを特徴としている。
また、本発明に係る光情報記録媒体は、上記の構成において、上記光情報記録媒体は、上記光吸収端波長よりも長波長側領域において、当該光情報記録媒体に入射する光ビームの波長変化に依存して反射率が変化し、上記光吸収端波長よりも長波長側の波長領域に、光ビームの波長変化に対する反射率の極小値を少なくとも1つ有し、上記反射率の極小値を示す波長が、上記光変調膜の温度変化に依存して変化することを特徴としている。
また、本発明に係る光情報記録媒体は、上記の構成において、上記反射率の極小値を示す波長は、上記光ビームの光源波長近傍または上記光ビームの光源波長より長波長側に存在することを特徴としている。
また、本発明に係る光情報記録媒体は、上記の構成において、上記光情報記録媒体に対して、情報の記録を行うための光ビームを照射することにより、少なくとも上記情報の記録を行うための光ビームの波長における光情報記録媒体の反射率が不可逆的に変化し、かつ、上記光情報記録媒体に対して、情報の再生を行うための光ビームを照射することにより、少なくとも上記情報の再生を行うための光ビームの波長における光情報記録媒体の反射率が可逆的に変化することを特徴としている。
また、本発明に係る光情報記録媒体は、上記の構成において、上記光変調膜の温度が温度域80〜200℃にある場合には、温度変化に依存して光情報記録媒体の反射率が可逆的に変化し、光変調膜の温度が上記温度域を超える温度域200〜320℃に温度上昇すると、光情報記録媒体の反射率が不可逆的に変化することを特徴としている。
また、本発明に係る光情報記録媒体は、上記の構成において、上記光変調膜は、酸化物半導体を含んでなることを特徴としている。
また、本発明に係る光情報記録媒体は、上記の構成において、上記酸化物半導体として、酸化亜鉛を用いることを特徴としている。
また、本発明に係る光情報記録媒体は、上記の構成において、上記光変調膜の膜厚は、60nm〜150nmであることを特徴としている。
また、本発明に係る光情報記録媒体は、上記の構成において、上記光情報記録媒体の反射率の極小値を示す波長が、上記光ビームの光源波長の−35nm〜+45nmの範囲内にあることを特徴としている。
また、本発明に係る光情報記録媒体は、上記の構成において、上記光情報記録媒体の光ビームの光源波長における反射率が、20%以下であることを特徴としている。
また、本発明に係る光情報記録媒体は、上記の構成において、上記光情報記録媒体の光吸収率は、5%以上であることを特徴としている。
また、本発明に係る光情報記録媒体は、上記の構成において、上記光情報記録媒体は基板を備えており、光変調膜側から上記光ビームを入射し、情報を記録及び/又は再生することを特徴としている。
また、本発明に係る光情報記録媒体は、上記の構成において、光変調膜は、上記基板に接しており、該光変調膜と基板との接合面に対して光変調膜側から光ビームを入射し、情報を記録及び/又は再生することを特徴としている。
また、本発明に係る光情報記録媒体は、上記の構成において、上記光情報記録媒体は、さらに透明保護層を備えており、上記透明保護層は、上記光変調膜の、上記基板が設けられている側とは反対側に、基板の厚さよりも薄く形成されていることを特徴としている。
また、本発明に係る光情報記録媒体は、上記の構成において、上記光変調膜は、金属酸化物半導体からなるターゲットを用い、希ガスを含む雰囲気中で、ランドおよびグルーブからなるトラックが形成された基板上にRFスパッタリング法により形成されることを特徴としている。
本発明に係る光情報記録媒体は、以上のように、上記光ビームの光源波長近傍に特定の波長以下の光を吸収する光吸収端を有し、かつ、当該光ビームの光源波長よりも長波長側では光透過性を示す光変調膜を備えており、上記光変調膜は、情報を記録及び/再生する層として機能するとともに、超解像動作機能が実現する層である構成である。このため、上記の光情報記録媒体によれば、上記光変調膜が特定の波長以下の光を吸収する特性をもつことから、上記特定波長の近傍に光源波長をもつ光ビームを上記光情報記録媒体に照射することにより、入射光は上記光変調膜に吸収され、該入射光を吸収した部分には熱が発生する。上記熱が比較的高温であった場合、上記光変調膜の一部に不可逆的な変質(例えば、反射率の変化)が生じる。上記不可逆的な変質とは本発明における記録マークということができ、上記光変調膜に情報の記録を行うことが可能となる。
これにより、上記の構成をもつ光情報記録媒体は、光ピックアップの分解能よりも高い分解能で情報の記録再生を実現する超解像動作機能を備えた光変調膜が、さらに情報の記録再生機能も有した光情報記録媒体であるということになる。
したがって、情報を記録する層と超解像動作する層とを同一層とし、かつ、実用的な高い信号品質が得られる光情報記録媒体を簡便かつ低コストで実現できるという効果を奏する。さらに、成膜の工程を短縮できる光情報記録媒体の提供を可能となる。
なお、ここでいう「超解像動作機能」とは、光ピックアップの分解能よりも高い分解能で情報の記録及び/又は再生を行うことができる機能のことである。
また、本発明に係る光情報記録媒体は、以上のように、上記光変調膜は、上記光ビームの照射によって光ビームの光源波長近傍における光情報記録媒体の反射率が変化する材料を含んでなる構成であるため、変調膜を情報の記録再生を行う層として、さらに、超分解動作を実現する層として、利用することができるという効果を奏する。
また、本発明に係る光情報記録媒体は、以上のように、上記光情報記録媒体は、上記光吸収端波長よりも長波長側領域において、当該光情報記録媒体に入射する光ビームの波長変化に依存して反射率が変化し、上記光吸収端波長よりも長波長側の波長領域に、光ビームの波長変化に対する反射率の極小値を少なくとも1つ有し、上記反射率の極小値を示す波長が、上記光変調膜の温度変化に依存して変化する構成である。このため、上記光変調膜は、光ビームが照射されると照射された部分が該光ビームを吸収して発熱する。一方、上記光情報記録媒体の反射率は、上記光変調膜への光ビームの照射に伴う温度変化に依存して変化することから、反射率の極小値も変化する。その極小値を示す波長とは、上記光変調膜に最も吸収される波長のことであるから、該極小値を示す波長が変化するということは、発熱により変調膜に変質が起こったためであるということができるという効果を奏する。
したがって、光ビームを用いて光源波長近傍に光吸収端が有るため光変調膜に実用的な記録を行うことができるとともに、光ビームの照射に伴う温度変化によって反射率が変化することを利用して記録した情報を超解像再生できる。これにより、情報を記録する層と超解像動作する層とを同一層とすることができ、かつ、実用的な高い信号品質が得られる光情報記録媒体を実現できるという効果を奏する。
また、本発明に係る光情報記録媒体は、以上のように、上記反射率の極小値を示す波長は、上記光ビームの光源波長近傍または上記光ビームの光源波長より長波長側に存在する構成である。上記光変調膜には光ビームの光源波長近傍の光を吸収する光吸収端が有るため、上記光ビームの光源波長近傍及び/又は長波長側において、光変調膜に実用的な記録を行うことができるとともに、記録した情報を超解像再生でき、実用的な高い信号品質が得られる光情報記録媒体を実現できるという効果を奏する。また、極小値を示す波長が上記光ビームの光源波長より長波長側に存在する場合は、特に、光変調膜の温度上昇に伴って光ビームの光源波長における反射率が上昇する、すなわち、低温マスク型の超解像媒体を実現でき、光学分解能よりも小さな記録情報をより高い信号品質で読み出すことできる光情報記録媒体を実現できるという効果を奏する。つまり、極小値を示す波長が上記光ビームの光源波長より長波長側に存在する場合、記録を再生するための光ビームの照射に伴う光変調膜の温度上昇より、光源波長における反射率が上昇する。すなわち、光情報記録媒体の再生時に該光情報記録媒体に照射された光ビームのスポット内の高温領域(スポット中心近傍)にアパーチャーが形成(光学的に強調)され、低温領域(スポット周縁部)がマスク(光学的に弱められ)されることで低温マスク型の超解像媒体を実現でき、光学分解能よりも小さな記録情報を、より高い効率で超解像再生することが可能となる光情報記録媒体を実現できる。
また、本発明に係る光情報記録媒体は、以上のように、上記光情報記録媒体に対して、情報の記録を行うための光ビームを照射することにより、少なくとも上記情報の記録を行うための光ビームの波長における光情報記録媒体の反射率が不可逆的に変化し、かつ、上記光情報記録媒体に対して、情報の再生を行うための光ビームを照射することにより、少なくとも上記情報の再生を行うための光ビームの波長における光情報記録媒体の反射率が可逆的に変化する構成である。一般的に、情報の記録を行うための光ビームの出力を、再生を行うための光ビームの出力よりも高く設定することで、情報の記録を行うための光ビームを照射した際に上記光変調膜に高熱を発生させ、照射部分に不可逆的な変質を起こさせることで記録を行う。また、情報の再生を行うための光ビームの場合は照射されても照射部分の反射率は一時的に変化するだけでもとに戻る可逆的変化を起こす。
したがって、上記光ビームの出力を変化させることのみで、光情報記録媒体の上記光変調膜への情報の記録および上記光変調膜に記録された記録マークの再生の切り替えを行うことができるという効果を奏する。
また、本発明に係る光情報記録媒体は、以上のように、上記光変調膜の温度が温度域80〜200℃にある場合には、温度変化に依存して光情報記録媒体の反射率が可逆的に変化し、光変調膜の温度が上記温度域を超える温度域200〜320℃に温度上昇すると、光情報記録媒体の反射率が不可逆的に変化するので、光情報記録媒体への情報の記録と再生との切り替えが、光変調膜の温度を調整するだけで可能となるので、簡易に光情報記録媒体へ情報の記録及び再生が可能となる。
また、本発明に係る光情報記録媒体は、以上のように、上記光変調膜は、酸化物半導体を含んでなる構成であるため、実用的な高い信号品質が得られる光情報記録媒体を実現するために、特定の波長以下の光を吸収する光吸収端を有し、光吸収端波長以上の波長で透過性を有する光変調膜を容易かつ安価に作製することができるという効果を奏する。さらに光変調膜をスパッタリングという簡易な方法で、かつ希ガスのみを用いて簡便に作製することが可能となる。
また、本発明に係る光情報記録媒体は、以上のように、上記酸化物半導体として、酸化亜鉛を用いる構成である。このため、波長405nm近傍の光源波長をもつ光ビームを用いる場合に適した光吸収端を有し、かつ、光吸収端波長以上の波長で光透過性を有する光変調膜を容易かつ安価に作成することができるという効果を奏する。また酸化亜鉛を酸化物半導体に用いることで、スパッタリングという簡易な方法で、かつ希ガスのみを用いて光変調膜を作製することが可能となる。なお、上記光情報記録媒体は、情報を記録及び/又は再生するための光ビームとして、光源波長405nmの光ビーム(例えば、青紫色半導体レーザー)を用いることが好適である。
また、本発明に係る光情報記録媒体は、以上のように、上記光変調膜の膜厚は、60nm〜150nmである構成である。この構成によれば、波長変化に対する反射率の極小値を記録または再生用光ビームの光源波長近傍に設定でき、高い超解像効果を示す(光ビームの照射によって反射率が大きな変化を示す)光変調膜を実現でき、かつ実用的な再生信号品質が得られるという効果を奏する。
また、本発明に係る光情報記録媒体は、以上のように、上記光情報記録媒体の反射率の極小値を示す波長が、上記光ビームの光源波長の−35nm〜+45nmの範囲内にある構成である。この構成によれば、波長405nmの光源波長を有する光ビームを照射する場合に、光変調膜の温度変化に対する反射率の変化量を大きくすることができ、高い超解像効果が得られる光変調膜を実現でき、実用的な高い信号品質が得られる光情報記録媒体を実現できるという効果を奏する。
また、本発明に係る光情報記録媒体は、以上のように、上記光情報記録媒体の光ビームの光源波長における反射率が、20%以下である構成である。上記の構成によれば、波長405nmを光源波長にもつ光ビームを照射する場合に、情報の記録または再生時に生じる反射率の変化を相対的に大きくできるという効果を奏する。したがって、反射率が高い場合を比べて、反射率絶対値に対する記録再生時の反射率変化量が大きくなる、すなわち反射率変化効率が大きくなるため、超解像再生時のマスク効果を高めることができる。
また、本発明に係る光情報記録媒体は、以上のように、上記光情報記録媒体の光吸収率は、5%以上である構成である。波長405nmを光源波長にもつ光ビーム用いる場合、光吸収率が低いと情報を記録する際に上記光変調膜が十分な不可逆変化を起こす温度まで昇温できないこのため、上記構成のように、上記光情報記録媒体の光吸収率を5%以上とすることで光ビームにより上記光変調膜に光を吸収させ、不可逆的な変化を起こすことで、高い超解像効果が得られる光変調膜を実現でき、実用的な高い信号品質が得られる光情報記録媒体を実現できるという効果を奏する。
また、本発明に係る光情報記録媒体は、以上のように、上記光情報記録媒体は基板を備えており、光変調膜側から上記光ビームを入射し、情報を記録及び/又は再生する構成である。上記の構成によれば、記録および再生時の光ビームは基板を通過しないので、記録または再生時に生じる光情報記録媒体の反射率変化を上記基板により減衰させることなく高い超解像効果が得られるという効果を奏する。
また、本発明に係る光情報記録媒体は、以上のように、光変調膜は、上記基板に接しており、該光変調膜と基板との接合面に対して光変調膜側から光ビームを入射し、情報を記録及び/又は再生する構成である。上記の構成によれば、記録または再生時に生じる光情報記録媒体の反射率を減衰させることなく高い超解像効果が得られるとともに、光変調膜よりも高屈折率透明材料を基板に用いた場合には全反射によって反射信号光量を大きくできるという効果を奏する。
また、本発明に係る光情報記録媒体は、以上のように、上記光情報記録媒体は、さらに透明保護層を備えており、上記透明保護層は、上記光変調膜の、上記基板が設けられている側とは反対側に、基板の厚さよりも薄く形成されている構成である。上記の構成によれば、光変調膜側から光ビームを入射させて情報の記録または再生を行う際に、光ビームを集光するためのレンズが光変調膜に衝突することを防ぐことができるとともに、環境耐久性を高めることができるという効果を奏する。
また、本発明に係る光情報記録媒体は、以上のように、上記光変調膜は、金属酸化物半導体からなるターゲットを用い、希ガスを含む雰囲気中で、ランドおよびグルーブからなるトラックが形成された基板上にRFスパッタリング法により形成される構成である。この方法により、光変調膜を容易に基板上に形成することができるという効果を奏する。
〔実施形態1〕
本発明の光情報記録媒体に関する実施の一形態について図1〜図9に基づいて説明すれば以下のとおりである。なお本実施の形態では本発明の光情報記録媒体を追記型光ディスクに用いた場合について示す。また特に、青紫色半導体レーザーの光源波長に相当する波長405nm近傍の光ビームを記録再生に用いる場合に好適な光ディスクとして、光変調膜5に酸化物半導体である酸化亜鉛(以下、ZnOと記述する)を用いた例について示す。なお、本発明でいう「光変調膜」とは、特定の波長を有する光の照射、あるいは照射する光の強弱によって、膜の物理的性質(例えば、反射率、屈折率、透過率などの膜の諸性質)が変化する膜のことをいう。本実施の形態では、特に、反射率が変化する膜のことを光変調膜と呼ぶこととする。
なお、本実施の形態において以下に示す透過率および反射率の測定に際しては、日本分光社製分光器(型番:V−550)を用いた。また屈折率については、上記透過率の波長依存性を測定し、透過率が極大値、極小値を示す波長と膜厚とから光の干渉効果に基づいて算出した。
本実施の形態における光ディスク1は、図1に示す構成をもつ。本実施の形態の光ディスク1は、それぞれトラック幅が0.4μmのランド(凸部)2およびグルーブ(溝:凹部)3からなるトラックが形成された厚さ0.5mmの透明ディスク状基板4上に、酸化物半導体であるZnOからなる光変調膜5を形成したものである。該光変調膜5の形成にはスパッタ装置を用い、スパッタ装置内に透明ディスク状基板4を取りつけ、スパッタチャンバーを5×10−5Paまで真空引きした後、0.01PaのAr雰囲気中でZnOターゲットに給電し、RFスパッタリング法により105nmの膜厚でZnO膜を基板上に形成した。
本実施の形態の光ディスク1の静特性について以下に説明する。
まず、屈折率について、作製したZnOからなる光変調膜5は半透明膜であり屈折率は2.0であった。なお、使用した透明ディスク状基板4の屈折率は1.5であった。
次に、作製した光ディスク1について、室温における透過率の波長依存性を測定した結果を図2に示した。なお、透過率の測定に際しては、光ディスク1の光変調膜5側の面から膜面に対して垂直に測定用光ビームを入射させ、光ディスク1を透過した光の光量を検出することによって行った。なお、使用した透明ディスク状基板4単体での透過率は、800nmから360nmの範囲において90%でほぼ一定であり、360nm以下の波長では波長が短くなるに従って単調に透過率が減少し、波長300nmにおいては70%の透過率を有していた。
作製した光変調膜5の透過率は図2に示すように、波長800nmから400nmまでの範囲では干渉効果による透過率の比較的小さな変動を示すほぼ透明な膜であり、この範囲で光ディスク1は80%前後の透過率を有していた。
本実施の形態では上記光変調膜5にZnOを含んでいるので、該光変調膜5はZnOのバンドギャップ(3.3eV近傍)に相当する波長360〜380nm近傍に光吸収端を有しており、このため波長400nm以下では、波長が短くなるに従って透過率が急激に減少し、波長360nmにおける透過率は17%と低くなった。また、波長360nmから300nmまでの範囲では透過率は17%以下であった。なお、本発明でいう「光吸収端」とは、光変調膜が、この光吸収端以下の波長の光の大部分を吸収し、かつ、この光吸収端以上の波長の光の大部分を吸収しないという、光変調膜が吸収する光の量が劇的に変化する波長領域をいう。なお、光変調膜の透過率が劇的に変化する波長領域とも換言できる。
ここで波長405nmに着目すると、光ディスク1の透過率は79.7%と高い値を示した。
次に、図3には、室温および200℃での反射率の波長依存性を示した。反射率の測定に際しては、光ディスク1の光変調膜5側の面から膜面に対して垂直に光を入射させ、光ディスク1から反射した光の光量を検出することによって行った。なお、図3中の実線は室温での光ディスク1の反射率を示し、点線は200℃での光ディスク1の反射率を示している。
図3に示すように、作製した光ディスク1は、光変調膜5における光の干渉効果によって波長変化に依存して反射率が周期的な変動を示し、波長424nm近傍に反射率の極小ピーク、波長371nm近傍に反射率の極大ピークが現れた。このときの反射率の極小ピークにおける反射率は9.3%、反射率の極大ピークにおける反射率は21.0%であった。この光ディスク1を200℃に加熱し、200℃での反射率を測定したところ、200℃の温度下においても室温下の測定結果と同様に、反射率は波長に依存して周期的な変動を示し、反射率の極小ピークおよび反射率の極大ピークがそれぞれ検出された。
ただし、200℃の温度下では、上記極小ピークおよび上記極大ピークが現れる波長が、ともに室温での波長よりも長波長側にシフトしており、波長429nm近傍に反射率の極小ピーク、波長381nm近傍に反射率の極大ピークがそれぞれ現れた。
ここで、波長405nmにおける反射率に注目すると、室温で11.4%であった反射率が、200℃の温度下では上記極小ピークおよび上記極大ピークの波長シフトによって12.6%へと約1割上昇した。
なお、200℃の温度下における反射率測定を行った後に、光ディスク1を再度室温に戻して反射率測定を行ったところ、初期に室温で測定した反射率特性と同じ反射率特性が得られ、波長405nmにおける反射率は11.4%に戻った。
すなわち、上記の室温と200℃の間の温度変化において、反射率の波長シフトおよび反射率絶対値の変化は可逆変化であることがわかった。
一方、上記光ディスク1の反射率について、光変調膜5側から高出力のレーザー光を照射して光変調膜5の一部を局所的に350℃に昇温した後、光ディスク1を自然冷却し、室温において上記350℃に昇温した部分の反射率を光ディスク1の光変調膜5側から光を入射させて測定したところ、昇温しなかった部分に比べて、極小および極大ピーク位置が短波長側へ5nm程度波長シフトするとともに、波長405nmにおける反射率が約2%低下し9%近傍となった。
これにより、一旦350℃の高温まで光変調膜5が温度上昇すると、不可逆な反射率変化が生じることがわかった。
次に上記の光ディスク1の、光変調膜5側から膜面に対して垂直に光を入射させて測定した透過率および反射率の結果をもとに、作製した光ディスク1の光吸収率を散乱成分を考慮せずに、(光吸収率(%)=100−反射率(%)−透過率(%))の式に基づいて簡易的に算出した。その結果をまとめたものが図4のようになる。作製した光ディスク1の波長405nmにおける光吸収率は8.9%と求められた。波長405nmにおいて光吸収率が得られる原因は、既に述べたように、ZnOの光吸収端が360〜380nmと波長405nm近傍にあることに起因する。
従って、以下に示すように、光源波長405nmの青紫色レーザーを光源として情報の記録を行う場合には、ZnO膜において入射光の吸収が起こり、発生した熱でZnO膜の変質が生じて記録マークが形成され、情報の記録が行われることになる。
ここまでに示した光ディスク1の反射率の測定結果は、何れも光ディスク1の光変調膜5側から光を入射させて測定した結果であった。そこで、光ディスク1の逆の面、すなわち、透明ディスク状基板4側の面から光を基板面に対して垂直入射させて反射率を測定した場合では、波長405nmにおける室温での反射率は8.4%となり、光変調膜5側から光を入射させた場合に比べて3%小さくなった。また、200℃温度下での反射率を測定すると、光変調膜5側から光を入射させて反射率を測定した場合と同様に、波長シフトおよび反射率絶対値の変化が確認できたが、波長405nmにおける反射率は8.6%となり、光変調膜5側から光を入射させた場合に比べて4%小さくなった。これに伴って、室温と200℃の間の温度変化に伴う、波長405nmにおける反射率の変化幅は、光変調膜5側から光を入射させた場合と比べて1%小さくなった。
これらの結果は、透明ディスク状基板4側から光を垂直入射させた場合に、入射光および光変調膜5からの反射光がディスク状基板4を通過する際の光吸収によって減衰してしまったことによるものであり、これに伴って、光変調膜5における干渉効果が見かけ上小さく検出されたことによるものと考えられる。
続いて、作製した光ディスク1の記録再生特性を調べた結果について以下に示す。
作製した光ディスクの評価は、光源波長405nmの青紫色半導体レーザーを用いた、開口数NAが0.65の光ピックアップを使用し、光変調膜5側から光ディスク1上に光ビーム6を集中照射して情報の記録再生を行った。上記光源波長と開口数NAから求められる光ピックアップの分解能は0.16μmである。すなわち、通常の再生方式で記録された情報の再生を行った場合、0.16μm以下のマーク長の記録マークからは信号が得られない。なお、ここでのマーク長とは上記マーク長に対応する長さの記録マークを、マーク長の2倍の長さのピッチで形成することを意味する。
なお、ここで本発明の光情報記録媒体の評価に際しては、図1に示した構成、すなわち透明保護層を有しない構成、の光情報記録媒体を用いて行い、使用する光ピックアップの収差を補償する目的で、光路上に0.5mm厚の石英ガラス基板を配置し、これを介して評価を行った。
光ディスク1からの再生信号の検出に際しては、光ビーム6を光ディスク1上に連続的に集中照射し、光変調膜5側から入射した光ビーム6が光変調膜5と透明ディスク状基板4との界面で反射した反射戻り光を検出した。すなわち、光変調膜5と透明ディスク状基板4との界面にフォーカスサーボをかけ、ランド3またはグルーブ4にトラックサーボをかけて、ランド3またはグルーブ4上を追従させながら反射戻り光を検出した。以下、上記の連続的に光ディスク1上に照射する光ビーム6を「再生用光ビーム」と呼ぶ。
また、光ディスク1への情報の記録に際しては、光ディスク1上に光ビーム6をパルス状に集中照射して記録した。このときのパルスデューティーは33%とした。以下、上記のパルスデューティーで光ディスク1上にパルス状に照射する光ビーム6を「記録用光ビーム」と呼ぶ。
なお、本実施の形態における記録再生時の線速度は1.8m/sとした。
図5には、光ディスク1の未記録トラックに再生用光ビーム(光ビーム6を連続照射)を集中照射し、光ビーム6の出力を1.0mWから4.0mWまで変化させた際に、光ディスク1から反射する反射光量を光ピックアップで検出した結果を示した。
なお、ここでの反射光量は、ピックアップで検出された反射光が、その光量に比例する電圧値に変換された値を用いて表している。また、図5中には、補助線(点線)として光ビーム6の出力が1.0mWから1.5mWの間の傾きを直線で延長した線を合わせて示した。再生用光ビームの出力が1.0mW未満では、反射光量が小さく、フォーカスサーボおよびトラックサーボを制御するために必要な反射光量が得られなかったため、反射光量の評価を行うことができなかった。
図5から、作製した光ディスク1では、光ビームの出力に対して反射光量が非線形に変化することがわかった。光ビーム6の出力が4.0mWにおける光ディスク1の反射率は、光ビーム6の出力が1.0mWから1.5mWの間の傾きをもって反射率が線形変化した場合の4.0mWにおける反射光量(推定値、図5中の点線に相当)に比べて、20%大きくなった。
このとき、上記反射光量の非線形変化は、光ビーム6の出力が高いほど出力に対する反射光量の傾きが大きくなる非線形変化であった。この結果は、既に図3に示した反射率の測定結果から、光ディスク1の温度上昇(室温から200℃)に伴って波長405nmにおける反射率が上昇した結果から説明付けることができる。
このような、光ビーム1の出力が高いほど出力に対する反射光量の傾きが大きくなる非線形変化を示す場合には、光ディスク1上に照射された光ビーム6のスポット内に生じる高温領域(スポット中心近傍)と低温領域(スポット周縁部)のうち、高温領域の反射率が相対的に高く、低温領域の反射率が相対的に低くなる。
従って、低温領域が光学的にマスクされ(光学的に弱められ)、高温領域にアパーチャーが開く(光学的に強調される)ことになり、いわゆる低温マスク型の超解像再生が実現できるということになる。
なお、図5に示した、光ビーム6の出力に対する反射光量の非線形変化は、図5に示した出力範囲すなわち1.0mWから4.0mWの範囲において可逆であり、この範囲で光ビーム6の出力を繰り返し変化させた後であっても、図5に示した反射光量特性と同じ反射光量特性が検出できた。
続いて、図6には、記録用光ビームのピーク出力(パルス状に照射する記録用光ビームの出力が最も大きくなる時点での値、すなわち、パルスの最高点)を6.0mWから10.0mWまで変化させて、光ディスク1の未記録トラックに集中照射(光ビーム6をパルスデューティー33%でパルス照射)し、マーク長0.4μmの繰り返しマークを記録した後、情報を記録したトラックに再生用光ビーム6(光ビーム6を連続照射)を1.5mWの一定出力で照射して、記録情報を再生した際の、光ディスク1からの反射光量を検出した結果を示した。
ここで、図6に示した各測定点は、各出力の記録用光ビームを何れも未記録トラックに照射して記録し、記録した情報を再生用光ビームで再生した結果である。なお、記録を行う前の未記録トラックにおける反射光量は0.144Vであった。
図6に示したように、記録用光ビームのピーク出力が8.0mW以下の場合には未記録状態からの反射光量変化は見られなかったのに対し、記録用光ビームを8.5mW以上のピーク出力で照射した場合には、光ディスク1からの反射光量が不可逆に変化することが確認された。
すなわち、記録用光ビームを8.5mW以上のピーク出力で照射することにより、光ディスク1に情報の記録を行うことができた。
また、上記出力範囲では9.0mWのピーク出力で記録用光ビームを照射した場合に、反射光量の不可逆変化量が最大となり、未記録時の反射光量に対して30%低下した。
一方、上記の記録用光ビームを9.0mWのピーク出力で照射して情報を記録したトラック(反射光量の不可逆変化量が最大となったトラック)について、情報を記録した部分の反射率を測定したところ、未記録部分の反射率特性と比べて極小および極大ピーク位置が5nm程度短波長側へシフトし、波長405nmにおける反射率が約2%低下していた。すなわち反射率の不可逆な波長シフトが起こり、波長405nmにおける反射率絶対値の不可逆変化が生じていた。
これは、既に述べた、光変調膜5の一部を一旦350℃昇温すると反射率が不可逆変化する結果と同様の結果であり、8.5mW以上のピーク出力で記録用光ビームを光ディスク1上に照射すると、光変調膜5が高温に加熱され、反射率の不可逆な波長シフトを生じることを示している。
また、同じく記録用光ビームを9.0mWのピーク出力で照射して情報を記録した部分について、原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)を用いて光変調膜5の表面形状を観察したところ、光ビーム6を照射して情報を記録した部分が周囲の未記録部分に比べて15nm高くなっている様子が観察された。すなわち、光変調膜5の塑性変形が生じていることがわかった。
続いて、図7には上記のマーク長0.4μmの繰り返しマークを記録した光ディスク1について、1.5mWの出力で再生用光ビームを照射した際の、信号対雑音比(以下、CN比と記す)を検出した結果を記録用光ビームのピーク出力に対して示した。なお、ここでのマーク長についても上記マーク長に対応する長さの記録マークを、マーク長の2倍の長さのピッチで形成することを意味する。
図7に示したように、記録用光ビームのピーク出力を9.0mWとして情報を記録した場合に、50dBを超える高いCN比が得られた。
図8には、本実施の形態で用いた記録再生光学系の光ビームスポット径から算出される光学分解能限界(マーク長0.16μm)に相当する、マーク長0.16μmの繰り返しマークを未記録トラックに記録し、記録された情報を再生用光ビームで再生した際のCN比を、再生用光ビームの出力に対して示した。上記マーク長0.16μmの繰り返しマークの記録に際しては、記録用光ビームのピーク出力を10.5mWとして情報を記録した。なお、ここでのマーク長についても上記マーク長に対応する長さの記録マークを、マーク長の2倍の長さのピッチで形成することを意味する。
図8に示すように、再生用光ビームの出力が2.0mW以下と低い領域では、CN比がほとんど得られないのに対し、2.5mW以上の出力では、再生用光ビームの出力を大きくすることで次第にCN比が大きくなり、出力を4.0mWとすることで30dBを超えるCN比が得られた。
これは、再生用光ビームの出力が2.0mW以下と低い領域では、光ビームスポット内の光変調膜5があまり加熱されず、スポット中心近傍と周縁部の温度差が小さいためにスポット内での反射率の差が小さく、超解像再生が生じないことによるものであり、光スポット内に同時に存在する記録マークと未記録部分とを光学的に分解することができず、CN比がほとんど得られないことによる。
一方、2.5mW以上の出力では、光ビームの集中照射によってスポット内の光変調膜5が加熱され、スポット中心近傍の温度がスポット周縁部の温度に比べて高くなることで、スポット中心近傍と周縁部に光変調膜5の可逆的な反射率の差が生じ、光ビームスポットの温度中心の反射率が、光ビームスポットの周縁部の反射率よりも高くなることで、光学的なアパーチャーが形成されて、光ビームスポット分解能を超える小さなマークの信号の読み出し、すなわち、超解像再生が実現するということになる。
図9には、上記の方法と同じ方法で、さまざまなマーク長の繰り返しマークを未記録トラック上に記録し再生を行った際のCN比を、マーク長に対して示した。なおこのとき、記録用光ビーム出力および再生用光ビーム出力は、それぞれ、各マーク長において最もCN比が高くなるように設定した。
図9に示したように、光ピックアップの光学分解能(0.16μm)を超える長さを有する、短いマーク長において記録した情報からの再生信号が得られており、超解像再生が実現できていることが確認できた。すなわち図9に示したように、光ピックアップの光学分解能である0.16μmよりも短いマーク長において、記録した情報からの再生信号が得られており、超解像再生が実現できていることが確認できた。
これまでに示した記録再生特性は、すべて光ビーム6を光変調膜5側の面から入射させてその反射光を光ピックアップで検出した結果であったが、光ディスク1の逆の面、すなわち、透明ディスク状基板4側の面から光ビームを垂直入射させて評価した場合にも、上記と同様に、情報の記録および光学分解能を超える短いマークの超解像再生が確認できた。
ただし、測定したすべてのマーク長において再生時のCN比は光入射膜5側から照射した場合に比べて低くなった。
これは、既に示した透明ディスク状基板4側から光を入射させて反射率を測定した結果からも説明付けられるように、透明ディスク状基板4側から光を垂直入射させた場合には、入射光および光変調膜5からの反射光がディスク状基板4を通過する際の光吸収によって減衰してしまったことによるものであり、これに伴って、光ディスク1からの反射光量の絶対値が小さくなったことに加え、超解像再生時のマスク効果が弱くなったことに起因する。
従って、透明ディスク状基板4側から光入射して記録し、超解像再生することも可能であるが、光変調膜5の干渉効果を効果的に用い、高い超解像効果を得るためには光変調膜5側から光を入射することがより望ましい。
また、光変調膜5を他の膜と積層して形成する場合には、光ビーム6が透明ディスク状基板4を介さずに光変調膜5に照射でき、透明ディスク状基板4を介さずに光変調膜5からの反射光が検出できる構成とすることが望ましい。ただし、実際に本発明の光ディクスを使用する場合、光ビーム6を集光するためのレンズが膜に衝突することを防止し、環境耐久性を高める目的で薄い透明保護層を形成することが好適である。このとき、透明保護層の膜厚は光の減衰の影響が信号品質に現れない程度の厚さ、例えば50μmから150μmとすることが望ましい。
また、このように光変調膜5側から光を入射させ、反射光を検出する場合には、透明ディスク状基板4は透明基板である必要は無く、不透明基板や半透明基板、有色基板であっても構わない。
さらに、本実施の形態のように、光情報記録媒体上に光ビーム6を集中照射して情報の記録、再生を行う形式では、照射される光ビーム6に光情報記録媒体面に対して斜め入射する成分が含まれている。特に、開口数NAを高くした場合には光ビーム6の絞込み角が大きくなるために光情報記録媒体面との角度がより小さな斜め成分が存在する。
本実施の形態において、光変調膜5と透明ディスク状基板4の屈折率の関係を、光変調膜5の屈折率が透明ディスク状基板4の屈折率よりも相対的に高くなるように設計すれば、上記光ビーム6の斜め成分のうち光情報記録媒体面に対して入射角が小さな光が光変調膜5と透明ディスク状基板4の界面で全反射し、反射光量を増加させることが可能である。
例えば、本実施の形態に示した屈折率が2.0の光変調膜5と屈折率が1.5の光変調膜とを用いる構成では、NAが0.75以上の光学系(1.5÷2.0=0.75)において上記全反射の効果を利用して反射光量を比例的に大きくでき、超解像効果を高めることができる。
また、NAが同じ場合についても屈折率がより小さい透明ディスク状基板4を採用することで、上記全反射の効果を利用して反射光量を比例的に大きくでき、超解像効果を高めることができる。
なお、ここでは光変調膜5と透明ディスク状基板4の界面についての関係のみについて記したが、高屈折材料側から低屈折材料側に光を入射させる場合にはすべて成り立ち、例えば光変調膜5と光変調膜5よりも屈折率の低い透明膜とを積層した場合にもこの効果を利用することができる。
また本実施の形態では、光ディスク1の超解像効果について、光ピックアップの光学分解能を超える短いマーク長の情報を高い信号品質で読み出せる効果(トラック長さ方向の効果)について示したが、同時に、読み出そうとする情報が記録されたトラックと隣接する隣接トラックの情報をマスクし、読み出そうとする情報トラック上の信号を高い信号品質で読み出せる効果(トラック幅方向の効果)を併せ持つ。すなわち、隣接トラックからのクロストークを低減できる効果がある。
さらに本実施の形態に示した光ディスク1では、光変調膜5の透過率が大きいために入射光の大部分が光変調膜5を通過することができる。従って、本実施の形態の光変調膜5は、情報を記録する層を複数形成するいわゆる多層媒体にも極めて好適な膜である。
本実施の形態ではZnOを光変調膜5に用いる場合についてのみ示したが、他にもFe、Cu、In、W、FeTi、Pb、V、Bi、Nb、Ti、SrTi、BaTi、CaTi、KTa、Sn、Zr、La、Gd、Dy、Tb、Hoの酸化物をターゲット材料とし、ZnOを光変調膜5に用いた場合と同じ作成方法で、酸化物半導体からなる光変調膜5を形成し、本実施の形態の光ディスク1と同じ構成の光ディスク1を作製することができる。
これらの酸化物半導体を光変調膜5に用いる場合は、それぞれの酸化物半導体固有のバンドギャップから同定される吸収端波長近傍に光源波長を有するレーザー光を用いて記録再生を行った場合に高い信号品質が得られるとともに、記録した情報を再生する際の超解像効果を大きくすることができる。これは各酸化物半導体に固有の吸収端波長近傍では、記録用光ビームの一部が光変調膜5に吸収されて情報の記録が行われるとともに、光変調膜5の反射率が温度に依存して急峻に変化するため、温度変化に伴う波長シフトによって生じる反射率の可逆変化を情報の再生に有効に利用することができるためである。
すなわち、ある固有のバンドギャップを有する(特定波長に吸収端を有する)膜であって、その吸収端波長近傍に記録を行うための光ビームの光源波長があり、再生を行うための光ビームの光源波長において、反射率が温度に依存して可逆変化する特性を満たす材料であれば本願の光情報記録媒体の光変調膜5として適用可能である。
なお、本実施の形態では、光ビームの光源波長を、記録用光ビーム、再生用光ビームともに、405nmとした場合について説明したが、それぞれに異なる波長を用いて記録再生を行う場合であっても構わない。
また本実施の形態の光ディスクに用いるディスク状基板について、ガラス基板を用いた場合、および、樹脂基板を用いた場合の何れについても、情報の記録および超解像再生が実現できた。従って、何れの基板を用いても本実施の形態の光ディスク1を作製することが可能である。
また本実施の形態では、情報を記録した際に光変調膜5の反射率が不可逆変化する原因として、反射率の不可逆な波長シフトと、光変調膜5の塑性変形が共に生じる例について示したが、これらの不可逆な変化は必ずしも共に生じる必要は無く、波長シフトのみ、または、塑性変形のみであっても構わない。
また本実施の形態では、成膜ガスにArのみを用いる作製方法について示したが、成膜された酸化物半導体の膜中に含まれる酸素分子の濃度が低い場合には、成膜ガスとしてO2ガスを加えて作製してもよい。
〔実施の形態2〕
本発明の光情報記録媒体に関する他の実施形態について説明すれば、以下のとおりである。
なお、説明の便宜上、前記実施の形態1にて説明した図面と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
実施の形態1に示した光ディスク1において、光変調膜5に用いたZnOの膜厚を変化させた光ディスク1を作製し、実施の形態1に示した方法と同じ評価装置および評価方法で、マーク長が0.14μmから0.40μmまでの範囲の記録マークを記録再生しCN比を測定した。測定結果を以下の表に示す。
これにより、ZnOの膜厚を60nmから150nmの範囲とした光ディスク1において、マーク長0.40μmのマークを記録再生した際のCN比が40dB以上となり実用的な高い信号品質が得られた。加えて、光ピックアップの光学分解能以下のマーク長0.16μmにおいて再生信号が検出できた。すなわち、超解像再生が確認できた。なお、本実施の形態においても、マーク長とは上記マーク長に対応する長さの記録マークをマーク長の2倍の長さのピッチで形成することを意味する。
従って、光変調膜5の膜厚を60nmから150nmの範囲とすることで、実用的なCN比が得られるとともに、超解像再生が実現できる光情報記録媒体を作製できる。
上記の60nmから150nmまでの膜厚を形成した光ディスク1の情報の記録を行っていない未記録部分について、反射率の波長依存性を実施の形態1に示した方法と同じ装置および方法を用いて、室温で光変調膜5側から光を入射させて測定したところ、上記膜厚範囲の光ディスク1では、反射率の極小ピークは膜厚が薄いほど低く、370nmから450nmの範囲に現れた。これは膜厚変化に伴う光の干渉効果に起因するものである。
本実施の形態で用いた、記録再生を行うための光ビーム6の光源波長は405nmであることから、光変調膜5の反射率の極小ピーク波長を記録再生する光ビーム6の光源波長の−35〜+45nm、すなわち約±10%の範囲とすることによって、より実用的なCN比が得られるとともに、超解像再生が実現できる光情報記録媒体を作製できる。
また、反射率の極小ピーク波長が上記光源波長の−35〜+45nmの範囲内に存在する場合、すなわち、実用的なCN比が得られるとともに超解像再生が実現できる光ディスク1においては、光源波長(405nm)における光ディスク1の反射率がいずれも20%以下であった。これは、反射率が20%以下と低い場合には、反射率がより高い場合と比べて、反射率絶対値に対する記録再生時の反射率変化量が大きくなる(反射率変化効率が大きくなる)ため、超解像再生時のマスク効果を高めることができるためである。
従って、記録再生を行う光ビーム6の光源波長における反射率は20%以下であることが特に望ましい。
さらに上記60nmから150nmまでの膜厚範囲では、(光吸収率(%)=100−反射率(%)−透過率(%))の式から求めた光ディスク1の光吸収率が5%以上であった。なお、光吸収率が5%未満となるように光変調膜5の作製条件を変えて作製した場合には、マーク長0.4μm記録再生時のCN比が30dBを下回り、実用的なCN比を得ることができなかった。これは、光吸収率が低いために記録時に光変調膜5が十分な不可逆変化を起こす温度まで光変調膜5を昇温できなかったことに起因する。
従って、光ディスク1の光吸収率は5%以上であることが特に望ましい。
上記光吸収率を高めるために、本実施の形態に示した光ディスク1の構成に加えて、蓄熱効果を生じる畜熱膜を光変調膜5に接して形成してもよい。上記蓄熱膜は透明、不透明を問わず用いることが可能であり、例えば、Si,TbFeCo,SiN,AlNやこれらを含む膜を採用することができる。
さらに、本実施の形態に示した光ディスク1の構成で、評価装置がフォーカスサーボまたはトラックサーボをかけるために十分な反射光量が得られない場合には、必要に応じて反射率を高める反射膜を形成し、反射率を高めることができる。反射膜は透明な高屈折率材用を用いてもよく、不透明材料を用いても良い。例えば、Al,Ag,Cuやこれらを含む膜を用いることができる。
〔実施の形態3〕
本発明の光情報記録媒体に関する他の実施形態について、図10に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
なお、説明の便宜上、前記実施の形態1にて説明した図面と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
実施の形態2に示した光変調膜5の膜厚範囲内で光変調膜5の膜厚を変化させ、反射率の波長依存性曲線における光ビーム6の光源波長(405nm)に最も近い極小ピークの波長が光ビーム6の光源波長よりも20nm短波長側にある光ディスク1(極小ピーク位置が385nm、以下サンプルAとする)と、20nm長波長側にある光ディスク1(極小ピーク位置が425nm、以下サンプルBとする)とを作製した。
上記サンプルAおよびサンプルBに、それぞれ記録用光ビームを集中照射してマーク長0.16μmの繰り返しマークを記録し、記録したトラック上に再生用光ビームを集中照射して再生したところ、反射率の極小ピーク波長を光ビーム6の光源波長よりも長波長側に設定した光ディスク1(サンプルB)の方が、光ビーム6の光源波長よりも短波長側に設定した光ディスク1(サンプルA)よりも約4dB高いCN比が得られた。この原因について図10に示した模式図を用いて説明する。
図10(a)(b)は、ともに光ビーム6の光源波長近傍における反射率Rと波長λの関係を示した模式図であり、図10(a)がサンプルAの反射率Rと波長λとの関係を、図10(b)がサンプルBの反射率Rと波長λとの関係をそれぞれ表している。すなわち、図10(a)(b)は、本発明の光情報記録媒体にかかる光ディスクの反射率の極小ピーク波長と光ビームの光源波長との関係を説明する模式図である。なお、図10中に実線で示した曲線は、サンプルAおよびサンプルBの低温領域(再生用光ビームのスポット周縁部)における反射率Rを表し、点線で示した曲線は高温領域(再生用光ビームのスポット中心近傍)における反射率Rを表している。
既に述べたように、サンプルA、サンプルBともに再生用光ビームの照射に伴う温度上昇に伴って光変調膜5の反射率の波長依存性曲線が可逆的に長波長側へ波長シフトする。
サンプルA(図10(a))では、反射率Rの極小ピークが光源波長よりも短波長側にあるために、再生用光ビームの集中照射に伴う温度上昇によって生じる長波長側への波長シフトにより、光源波長における反射率Rは低下することになる。すなわち、光ディスク1の再生時には光ディスク1上に照射された光ビーム6のスポット内の低温領域(スポット周縁部)にアパーチャーが形成(光学的に強調)され、高温領域(スポット中心近傍)がマスク(光学的に弱められ)される高温マスク型の超解像媒体となる。
一方、サンプルB(図10(b))では、反射率Rの極小ピークが光源波長よりも長波長側にあるために、再生用光ビームの集中照射に伴う温度上昇によって生じる長波長側への波長シフトにより、光源波長での反射率Rは上昇することになる。すなわち、光ディスク1の再生時に光ディスク1上に照射された光ビーム6のスポット内の高温領域(スポット中心近傍)にアパーチャーが形成(光学的に強調)され、低温領域(スポット周縁部)がマスク(光学的に弱められ)される低温マスク型の超解像媒体となる。
上記CN比の違いはこのような超解像の形態の違いによるものであり、低温マスク型の超解像媒体となるサンプルBの方が、光ビーム6の強度が強い(大きな反射光量が得られる)スポット中心領域を用いて情報を読み出すことができるため、光学分解能を超える短いマークをより効果的に読み出すことが可能である。
従って、光変調膜5の反射率の極小ピーク波長を光ビーム6の光源波長よりも長波長側に設定することで、より効率の高い超解像再生を実現できる。
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
例えば、本発明には、光ビームを用いて情報の記録および/または再生を行う光情報記録媒体であって、上記光情報記録媒体が上記光ビームの光学分解能よりも高い分解能で情報の記録または再生を行うことができる超解像動作可能な光情報記録媒体であり、かつ、上記光情報記録媒体が有する、情報を記録する層と超解像動作を起こす層とが同一の層である光情報記録媒体が含まれる。
また、光ビームを用いて情報の記録および/または再生を行う光情報記録媒体であって、上記光情報記録媒体は、少なくとも情報を記録するための記録膜を有し、かつ、上記記録膜は光ビームの照射によって光ビームの波長近傍における光情報記録媒体の反射率が変化する材料からなる光情報記録媒体も本発明に含まれる。
また、特定の波長以下の光を吸収する光吸収端を有し、該光吸収端の波長よりも長波長側では光透過性を示す光変調膜を備えた光情報記録媒体であって、上記光情報記録媒体は、上記光吸収端波長よりも長波長側の波長領域において、該光情報記録媒体に入射する光の波長に依存して反射率が変化するとともに、波長変化に対する反射率の極小値を少なくとも一つ有し、上記反射率の極小値の波長が、上記光変調膜の温度によって変化すること光情報記録媒体も本発明に含まれる。
また、光ビームを用いて情報の記録および再生を行う光情報記録媒体であって、情報の記録を行うための光ビームの光源波長近傍に特定の波長以下の光を吸収する光吸収端を有し、上記光ビームの光源波長よりも長波長側では光透過性を示す光変調膜を備えた光情報記録媒体であって、上記光情報記録媒体は、情報の記録を行うための光ビームの光源波長よりも長波長側の波長領域において、該光情報記録媒体に入射する入射光の波長に依存して反射率が変化するとともに、情報の再生を行うための光ビームの光源波長近傍に波長変化に対する反射率の極小値を少なくとも一つ有し、上記反射率の極小値の波長が、上記光変調膜の温度によって変化する光情報記録媒体も本発明に含まれる。
また、光ビームを用いて情報の記録および再生を行う光情報記録媒体であって、上記情報の記録を行うための光ビームは上記情報の再生を行うための光ビームよりも高い出力を有し、上記情報の記録を行うための光ビームを光情報記録媒体上に照射することにより、上記情報の再生を行うための光ビームの波長近傍における光情報記録媒体の反射率が不可逆的に変化し、かつ、上記情報の再生を行うための光ビームを光情報記録媒体上に照射することにより、上記情報の再生を行うための光ビームの波長近傍における光情報記録媒体の反射率が可逆的に変化する光情報記録媒体も本発明に含まれる。
また、本発明には、上記光情報記録媒体の構成において、さらに、上記光変調膜の温度が所定の温度域Aにある場合には、温度変化に依存して光情報記録媒体の反射率が可逆的に変化し、光変調膜の温度が温度域Aを超える温度域Bに温度上昇すると、光情報記録媒体の反射率が不可逆的に変化する光情報記録媒体が含まれる。この光情報記録媒体によれば、光変調膜を所定の温度に調整することにより、光情報記録媒体への情報の記録と再生の切り替えを行うことができ、情報を記録する層と超解像動作する層とが同一層とし、かつ、実用的な高い信号品質が得られる光情報記録媒体を実現できる。