JP3980459B2 - プリント基板用当て板材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリント基板の機械加工時にプリント基板を挟持する当て板材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、プリント基板にコンデンサ等の電子部品を実装するための小口径の穴開け加工においては、ドリル先端の横ずれやバリによる折損を防止するために、プリント基板を当て板でサンドイッチし、当て板とともにプリント基板を貫通して穴開けを行う方法が採用されている。このような加工方法において用いられる当て板の先行例としては、アルミニウム箔と木材パルプ/ガラス繊維とを組み合わせた当て板(特許文献1)や、紙の間にアルミニウム箔を挟んだもの(特許文献2)、アルミニウム箔の一面側に粘着剤を設けたもの(特許文献3)等が知られてる。また、ドリルの食いつきを改善するために、アルミニウム箔上に形成した陽極酸化皮膜を利用することも提案されている(特許文献4)。
【0003】
【特許文献1】
特公昭61−061921号公報
【特許文献2】
特開昭62−214000号公報
【特許文献3】
特開昭63−011207号公報
【特許文献4】
特開2000−25000号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年の電子部品の小型化、高機能化の進展により、プリント基板上に形成される配線パターンは微細化、高密度化される傾向にあり、狭小な配線幅、配線間隔のパターンに電子部品を接続するためにプリント基板に形成する穴が小口径化され、かつ多数化されている。具体的には従来0.3〜0.4mmφ程度であった穴径が、現在では0.1〜0.3mmφ程度にまで小口径化されており、従来用いられていた当て板では穴の精度不良や加工時のバリによるドリルの折損を抑えられなくなってきている。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、プリント基板への穴開け加工時のドリルの食いつきを改善し、かつ加工時のバリの出難いプリント基板用当て板材を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、プリント基板の配線パターンの微細化により、よく用いられるようになっている0.1〜2.0mmφの極めて細いドリルにより穴開け加工を高精度に行うために、その当て板材に陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム材を適用するとともに、陽極酸化皮膜の性状によるドリルの横ずれ及びバリの発生状況の違いを検証し、その結果、陽極酸化皮膜の空孔率、皮膜硬度、及び膜厚を適切に調整することにより上記横ずれやバリを効果的に防止できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0007】
すなわち、本発明のプリント基板用当て板材は、上記課題を解決するために、アルミニウムまたはアルミニウム合金の基材表面に、皮膜硬度1000kg/mm2以上の陽極酸化皮膜が、50nm以上800nm以下の膜厚で形成されたことを特徴としている。
また、上記前記陽極酸化皮膜の空孔率が30%以下とされ、前記膜厚が、80nm以上500nm以下とされることが好ましい。
上記の特性を有する陽極酸化皮膜により、ドリルの横ずれ及びバリの発生を効果的に抑制し、0.1〜0.2mmφ程度の極めて細いドリルを用いたプリント基板加工における高精度の穴開け加工を可能にし、またドリルの長寿命化を実現するものである。
【0008】
本発明の当て板材では、陽極酸化皮膜の膜厚を50nm以上800nm以下の範囲とすることで、細いドリルにより貫通でき、かつドリルの横ずれを防止する効果を得ている。前記膜厚が50nm未満では、陽極酸化皮膜によるドリルの食いつき改善、及びバリの抑制効果を十分に得られない。また膜厚が800nmを超えると、皮膜にクラックが入り易くなり、穴開け加工時にバリが出易くなる。上記膜厚のより好ましい範囲は80nm〜500nmである。
【0009】
陽極酸化皮膜の空孔率は、皮膜表面における孔の面積率に相当し、この空孔率が30%を超えると陽極酸化皮膜が多孔質化し始めるため、場合によっては加工時にバリが生じ易くなる。
【0010】
上記皮膜硬度は、微小硬度計により測定することができる。皮膜硬度が1000kg/mm2未満では、皮膜が脆すぎるためにドリルが当接した際にその周辺で皮膜が破壊されてドリル位置が横ずれするため好ましくない。この皮膜硬度の上限は10000kg/mm2程度とされ、それ以上の硬度を有する陽極酸化皮膜を形成するのは困難であり、コスト面からも好ましくない。
また、上記ドリル当接時の耐久性と、製造コストを勘案すると、皮膜硬度の好ましい範囲としては、2000kg/mm2以上8000kg/mm2以下である。
なお、上記陽極酸化皮膜の各特性における数値範囲は、本発明者による検証に基づくものであり、その詳細は後述の実施例に記載している。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
本発明に係るプリント基板用当て板材の基本構成は、アルミニウム基材又はアルミニウム合金基材の表面に、好ましくは空孔率30%以下の比較的孔の少ない陽極酸化皮膜が形成されたものである。上記アルミニウム基材又はアルミニウム合金基材としては、特に制限はなく、アルミニウム箔の基材として好んで用いられている1085、1050、1100等のJIS1000系材料や、3004等のJIS3000系材料を用いてよい。
また基材厚さは、加工に用いるドリル径に応じて選択することが好ましく、5μm〜100μm程度で適宜選択する。0.5mmφ以下の細いドリル径のものを用いる場合には、基材厚さは50μm以下とするのが好ましい。
【0012】
また、上記の基材表面に陽極酸化皮膜を形成するにあたっては、前記基材の表面に前処理を行うことが好ましい。この前処理としては、特に限定されず、要は素材の表面に付着した油脂分を除去し、素材表面の不均質な酸化物皮膜が除去できるものであればよい。例えば、弱アルカリ性の界面活性剤の水溶液による脱脂処理のみであってもよく、更に水酸化ナトリウム水溶液でアルカリエッチングをしたのち、硝酸水溶液中でデスマット処理を行う方法や脱脂処理後に酸洗浄を行う方法などが適宜選択して用いられる。
【0013】
前記基材上に陽極酸化皮膜を形成するには、必要に応じて上記前処理を施された基材を、電解浴に浸漬した状態で電解する。電解浴としては、生成する陽極酸化皮膜を溶解し難く、かつ無孔質の陽極酸化皮膜を生成する電解質である珪酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、アジピン酸塩、酒石酸塩、マロン酸塩、硫酸、リン酸、シュウ酸、クロム酸などの群から選ばれる1種または2種以上を溶解した水溶液が用いられる。これらの電解質のなかでも珪酸塩、ホウ酸、アジピン酸塩、リン酸塩、フタル酸塩が比較的空孔率の低い陽極酸化皮膜を容易に形成でき、コストなどの点で好ましい。また、リン酸、硫酸、シュウ酸、クロム酸のいずれかを電解浴に用いる場合には、形成される皮膜が多孔質化されやすい傾向にあるので、皮膜形成の初期段階で電解を停止して皮膜の多孔質化を抑制する必要がある。
【0014】
電解浴中の電解質濃度は1g/L〜150g/L程度の範囲とされ、電解浴の浴温は概ね5〜70℃の範囲であるが、電解液の種類に応じて選択する。例えば、電解液に硫酸水溶液を用いる場合には10℃程度の比較的低温で電解することで、皮膜の多孔質化を抑えて微小硬度を高めることができる。
そして上記電解浴中で、上記アルミニウム基材は、陽極となるように電源に接続されて電解される。陰極には不溶性の導電材料が用いられる。電解電流は、好適には直流電流が用いられ、電圧は10〜600V程度の範囲、電流密度は1〜5A/dm2程度の範囲で調整され、上記電流及び電圧、並びに電解時間により形成する陽極酸化皮膜の膜厚が50〜800nm(好ましくは80nm〜500nm)の範囲に調整される。
【0015】
【実施例】
本例では、種々の条件でアルミニウム箔基材の表面に陽極酸化皮膜を形成した当て板材を作製し、それぞれのについて、膜厚、空孔率、皮膜硬度の測定を行った。また、小径のドリルによる加工を行った際のドリルの横ずれ、ドリルの破損状況、及びバリの発生状況を評価した。
【0016】
(試料の作製)
まず、50μm厚のA1100−H14アルミニウム基材を用意し、50℃の5%NaOHに10秒間浸漬してエッチングし脱脂処理を行った後、水洗し、次いで、室温の10%硝酸で10秒間の中和処理を行い、その後10秒間水洗した。
次に、表1に示す構成の各種電解液を用意し、上記の処理が終了した箔基材を陽極とし、炭素板を陰極として1A/dm2の電流密度で直流電解処理を行い、箔基材の表面に陽極酸化皮膜を形成した。そして、電解処理後の箔基材を10秒間水洗した後、120℃で20秒間乾燥させ、各当て板材の試料を得た。この得られた試料について、下記に示す方法により膜厚、空孔率、皮膜硬度の各測定を行った。この測定結果は表1に併記している。
次に、得られた当て板材の試料と、厚さ1.6mmのガラス−エポキシの6層板2枚と、バックアップ板(厚さ1.6mmの紙/フェノール積層板)とをこの順に積層し、0.5mm径のドリルを用いて、70,000回転、送り速度1mm/分の条件で1000箇所の穴開け加工を行った。
上記各試料について、穴開け加工時の穴位置ずれ、加工によるドリルの破損の有無、及びバリの高さについて、下記の評価基準を用いて評価した。この結果も表1に併記している。
【0017】
<空孔率>
基材表面に形成された陽極酸化皮膜の表面の任意の20箇所を50,000倍の電子顕微鏡観察し、観察された孔の面積率を測定することで空孔率を導出した。但し、基材表面の金属間化合物等により皮膜形成が不均一化している箇所については、空孔率の導出が困難であるため除外した。
【0018】
<膜厚>陽極酸化皮膜の断面をダイヤモンド刃を備えたスーパーミクロトームで切断した後、断面を透過電子顕微鏡観察して膜厚を測定した。また、膜厚測定としては、光電子分光分析(ESCA)、オージェ電子分析(AES)、グロー放電質量分析(GD−MS)等の装置を用いて、皮膜をAr等のイオンでエッチングし、皮膜がエッチング除去されるまでに要した時間とエッチングレートから換算して膜厚を求める方法も適用できる。
【0019】
<皮膜硬度>微小硬度計 ENT−1000a(商品名:エリオニックス社製)を用い、圧子先端径0.1μmの稜間隔115°の三角錐圧子を使用して荷重10mgf、250ステップ分解の条件で皮膜表面の5箇所について硬度を測定し、その平均値を皮膜硬度とした。
【0020】
<穴位置ずれ>最大の穴位置ずれがドリル中心から40μm2以下の場合を○、40μm2を越えて60μm2以下の場合を△、60μm2を越えた場合を×として評価した。
【0021】
<ドリル破損>上記1000箇所の穴開け加工によりドリル破損が生じなかった場合を○、破損した場合を×として評価した。
【0022】
<バリ>ドリル加工により形成された試料の穴周辺におけるバリの最大高さが5μm以下の場合を○、5μmを越えるバリが生じた場合を×として評価した。
【0023】
(評価)
表1に示すように、本発明の要件である陽極酸化皮膜の膜厚が50〜800nmの範囲であり、皮膜硬度が1000kg/mm2以上である実施例1〜9のプリント基板用当て板材によれば、加工時の穴の位置ずれを60μm2以下に抑制でき、かつ1000箇所の穴開け加工でもドリルが破損せず、またバリの発生も極めて低く抑えられることが確認された。特に、陽極酸化皮膜の空孔率が30%以下とされ、膜厚が80〜500nmとされた実施例2〜5の試料では穴位置ずれを40μm2以下に抑えることができる。
これに対して、本発明の要件を満たしていない比較例の当て板では、特にバリの発生を抑えることができず、その結果ドリルの破損が起こることが確認された。この結果から陽極酸化皮膜の膜厚、空孔率、皮膜硬度の全てにおいて適切に制御することが必要であることが示唆される。
【0024】
【表1】
【0025】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明のプリント基板用当て板材は、アルミニウムまたはアルミニウム合金の基材表面に、皮膜硬度1000kg/mm2以上の陽極酸化皮膜が、50nm以上800nm以下の膜厚で形成されたことで、プリント基板へのドリル穴開け加工におけるドリルの食いつきを改善することができ、小口径のドリルによる穴開け加工を高精度で行うことができる。また、穴開け加工時のバリの発生を効果的に抑制してドリルの破損を防止することができる。
Claims (2)
- アルミニウムまたはアルミニウム合金の基材表面に、皮膜硬度1000kg/mm2以上の陽極酸化皮膜が、50nm以上800nm以下の膜厚で形成されたことを特徴とするプリント基板用当て板材。
- 前記陽極酸化皮膜の空孔率が30%以下とされ、前記膜厚が、80nm以上500nm以下とされたことを特徴とする請求項1に記載のプリント基板用当て板材。
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