JP3978490B2 - シリコンゲルマニウムナノワイヤー集合体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、シリコンゲルマニウムナノワイヤー集合体に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、半導体等の情報通信用デバイス材料やその他電子・電気材料等として有用で、多様な組成および形態が実現できる新しいシリコンゲルマニウムナノワイヤー集合体に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
近年、シリコン等のナノワイヤーは微小半導体として注目を集めており、たとえば量子細線等として、従来のリソグラフィー技術による加工限界を超えた、次世代の高密度集積回路素子材料としての利用が期待されている。
【0003】
このようなナノワイヤーについて、その製造方法としては、気相蒸発法、レーザー法等の各種の方法が提案されており、この出願の発明者らもまた、浮遊帯域溶融法(FZ法)
によりシリコンナノワイヤーを大量に製造することができる方法をすでに提案(特願2001−333257)している。
【0004】
しかしながら、ナノワイヤーを細線材料としてのみならず、様々な機能を有する材料として利用するためには、組成や形態を制御して、簡便かつ大量にナノワイヤーを製造することが望まれる。
【0005】
そこで、この出願の発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、半導体等の情報通信用デバイス材料やその他電子・電気材料等として有用で、多様な組成および形態が、簡便に、大量にも実現可能とされる新しいシリコンゲルマニウムナノワイヤー集合体を提供することを課題としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで、この出願の発明は、上記課題を解決するものとして、以下の通りの発明を提供する。
【0007】
すなわち、まず第1には、この出願の発明は、組成が、一般式SixGe1-x(式中、0<x<1)で表されるナノワイヤーが複数集合しているシリコンゲルマニウムナノワイヤー集合体において、シリコンゲルマニウム球状部から、シリコンゲルマニウムナノワイヤーが複数本成長されていることを特徴とするシリコンゲルマニウムナノワイヤー集合体を提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は、上記の通りの特徴を持つものであるが、以下にその実施の形態について詳しく説明する。
【0011】
この出願の発明が提供するシリコンゲルマニウムナノワイヤーは、組成が、一般式SixGe1-xで表される各種のものであって、式中のSi量を示すxの値は0〜1の範囲で所望のものとして実現することができる。このシリコンゲルマニウムナノワイヤーは、単一では、代表的に、直径が数十〜数百nmで、長さが数10μm以上の寸法のナノワイヤーである。
【0012】
実際的には、このシリコンゲルマニウムナノワイヤーは、その複数集合したシリコンゲルマニウムナノワイヤー集合体として製造可能とされる。このシリコンゲルマニウムナノワイヤー集合体は、その形態が特徴的であって、たとえば、図4に示したように、単一のシリコンゲルマニウムナノワイヤーがランダムに集合した形態のものや、図1に示したように、房状あるいは束状に集合したもの、放射状に集合したものなど、様々な形態のものとして実現される。より詳細に観察すると、これらのシリコンゲルマニウムナノワイヤー集合体は、代表的には、略球状のシリコンゲルマニウム球状部から、シリコンゲルマニウムナノワイヤーが複数本成長している形態のものとして例示することができる。シリコン
ゲルマニウムナノワイヤーの数、成長点、成長方向等により、上記のような様々な形態を実現していると考えられる。
【0013】
このような特殊な形態を有するシリコンゲルマニウムナノワイヤー集合体は、この出願の発明によって全く初めて提供されるものである。そして、このシリコンゲルマニウムナノワイヤーは、クロス組み立て等による微小半導体材料として利用できるのはもちろんのこと、様々な形態、構造、および組成の異なるナノワイヤーとして実現されるため、機械的な特性を要求されるナノマシン用素材や、発光素子、光検出器、触媒等としても利用することができる。
【0014】
以上のようなこの出願の発明のシリコンゲルマニウムナノワイヤーは、たとえば以下のシリコンゲルマニウムナノワイヤーの製造方法により製造することができる。すなわち、この出願の発明のシリコンゲルマニウムナノワイヤーの製造方法は、原料としての粒径が50μm以下のシリコン粉末およびゲルマニウム粉末をロッド状に成形した後、不活性ガス気流中で溶融させることにより、その成形体より直径がナノメートルオーダーのナノワイヤーを成長させることを特徴とし
ている。
【0015】
原料としては、シリコン粉末およびゲルマニウム粉末あるいはこれらの合金の粉末を用いることができる。原料粉末におけるシリコンおよびゲルマニウムの配合は、所望のシリコンゲルマニウムナノワイヤーの組成に応じ、たとえばSi−Ge状態図等を参考にして、決定することができる。シリコンよりも低融点で、かつシリコンと全率固溶となるゲルマニウムは、この発明におけるナノワイヤーの形成において触媒的な作用をするものと考えられ、このシリコンとゲルマニウムの組み合わせはこの出願の発明の方法において欠かせないものであるといえる。とりわけシリコン粉末とゲルマニウム粉末を混合して用いる場合には、たとえば図1に示したような特異な形態のシリコンゲルマニウムナノワイヤー集合体を好適に得ることができる。この理由は明らかではないものの、粉末状のゲルマニウムが何らかの触媒作用を示すためであると考えられる。
【0016】
そして、この出願の発明の方法において原料粉末の大きさは重要であって、上記の原料粉末は粒径50μm以下のものとすることが好ましい。原料粉末を50μm以下とすることにより、表面積を多くすることができ、この粉末表面に形成される僅かな酸化物層がシリコンゲルマニウムナノワイヤーの成長において生成助長効果を発揮するものと考えられる。なお、これらの原料は、微量の酸素、目安としては、1重量%以下の酸素を含むものであることが好ましい。
【0017】
このような原料粉末をロッド状に成形した後、不活性ガス雰囲気下で溶融するようにする。この成形は、原料粉末の溶融およびナノワイヤーの成長を好適に行なうためのものであって、たとえば形が崩れない程度に成形し、軽く焼結するなどしてもよい。溶融については、アルゴンガス等の不活性ガス、あるいは水素ガスをキャリアガスとして用い、900〜1000℃の一定の範囲に保つようにする。これによって、成形体の表面から、シリコンゲルマニウムナノワイヤーを成長させることができる。
【0018】
なお、この溶融は、特別の処理および特殊な装置が必要ないことから、帯域溶融法により行なうことが簡便で、かつシリコンゲルマニウムナノワイヤーの大量生産に好適な手段として例示される。帯域溶融法による場合は、具体的には、たとえば、一般的な帯域溶融装置の試料ホルダーに原料粉末の成形体をセットし、装置内部を真空排気した後、Arガスを流量10〜30cm3/min程度、圧力20〜400Torr程度で装置内部を下
方から上方に流し、キセノンランプを試料上部に照射して900〜1000℃で溶融させるとともに、溶融部を20〜40mm/hの移動速度で下方に移動させて全体を溶融させ
ることなどが例示
される。
【0019】
以上のこの出願の発明の方法によって、大量かつ容易にシリコンゲルマニウムナノワイヤーを製造することができる。この出願の発明の方法は、シリコンゲルマニウムナノワイヤーを提供するものだけでなく、リソグラフィーに変わる新しい高集積半導体作成技術を提供するものとして期待することができる。
【0020】
以下、添付した図面に沿って実施例を示し、この発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0021】
【実施例】
(実施例)
純度99.999%のシリコン粉末と純度99.999%のゲルマニウム粉末を、重量で4:1の割合で混合し、300メッシュ(粒径約50μm)程度になるように乳鉢で細かく粉砕した。この混合粉末を、直径8mm、長さ100mmのロッド状に成形し、10-6Torrの真空において、800℃、2時間で形が崩れない程度に仮焼結を行なった。このロッドを試料として、大気圧下、Arガス流量10cm3/minの条件下で、浮遊帯溶融法により溶解した。このとき、Arガスは、略垂直に設置されているロッド体の下から上に向かって流すようにした。
【0022】
すると、ロッド表面において、溶融部より約1.5〜2cm上方の、温度960〜1000℃の領域に、図1(a)〜(d)に示したような様々な形態のナノワイヤー集合体が成長しているのが確認された。このナノワイヤー集合体は、いずれも球状部から多数のナノワイヤーが伸びて構成されており、あたかも頭頂部から触手等が伸びている生物のような特殊な形状を有しているのが観察された。
【0023】
このナノワイヤー集合体を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した結果を図2に示した。ナノワイヤー部の直径は、数十〜数百nmにわたることがわかった。
【0024】
また、このナノワイヤー集合体の各部の組成を調べたところ、球状部のSi:Geは48:52と、シリコンおよびゲルマニウムの粉末混合比(80:20)に比べて大幅にGe側に傾いた組成となっていることがわかった。一方、ナノワイヤー部については、Si:Geが82:18とシリコン側に組成がずれているのがわかった。
【0025】
図3に示したSi−Geの状態図から予測されるように、このナノワイヤー集合体は、まずGeリッチの液滴が試料(ロッド)表面に生じ、そこからSiリッチのナノワイヤーが成長したものと考えられる。したがって、たとえば液相のSi−Ge組成が一定になるようにすれば、所望の組成のシリコンゲルマニウムナノワイヤーを製造することができるといえる。
(参考例)
あらかじめアーク溶解によりSi:Ge=80:20(重量)の組成の合金を作製し、300メッシュにまで粉体化した。これを、実施例1と同様に浮遊帯溶融法により溶解したところ、合金表面にシリコンゲルマニウムナノワイヤーが生成したのが確認された。得られたシリコンゲルマニウムナノワイヤーの走査型電子顕微鏡像を図4に示した。このシリコンゲルマニウムナノワイヤーは、実施例1で得られたような特殊な形状の集合体ではなかったが、組成比がSi:Ge=80:20で、全体を通して均一であることが確認された。
【0026】
もちろん、この発明は以上の例に限定されるものではなく、細部については様々な態様
が可能であることは言うまでもない。
【0027】
【発明の効果】
以上詳しく説明した通り、この発明によって、半導体等の情報通信用デバイス材料等として有用で、多様な組成および形態が簡便に実現できる新しいシリコンゲルマニウムナノワイヤーとその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例において製造したシリコンゲルマニウムナノワイヤー集合体のSEM像を例示した図である。
【図2】 実施例において製造したシリコンゲルマニウムナノワイヤー集合体のTEM像と(111)電子回折像を例示した図である。
【図3】 シリコン−ゲルマニウム2元系状態図である。
【図4】 参考例において製造したシリコンゲルマニウムナノワイヤー集合体のSEM像を例示した図である。
Claims (1)
- 組成が、一般式SixGe1-x(式中、0<x<1)で表されるナノワイヤーが複数集合しているナノワイヤー集合体において、シリコンゲルマニウム球状部から、シリコンゲルマニウムナノワイヤーが複数本成長されていることを特徴とするシリコンゲルマニウムナノワイヤー集合体。
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