JP3976562B2 - 色補正マトリクス決定方法および装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、色補正マトリクス決定方法および装置に係り、特に、デジタルカメラ等のカラー画像撮像系における画像変換で用いる色補正マトリクスを決定する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
デジタルカメラ等のカラー画像撮像系では、通常、CCDセンサ等のイメージセンサによって撮影シーンを光電的に読み取り、撮像したカラー画像を液晶ディスプレイ等のモニタに表示している。
このようにデジタルカメラは、出力画像を最終的にモニタ出力用のRGB信号として出力したり、あるいはJPEG圧縮を行って輝度色差信号(YCC)として出力する。モニタ出力用のRGB信号として出力する場合、出力すべきRGB信号は規格で決められている。しかし、デジタルカメラで用いているCCDは、様々な種類があるため、そのCCDのRGB信号をモニタのRGB信号に画像変換しなければならない。
【0003】
例えば、図6に従来のデジタルカメラの色処理系の一構成例を示す。
図6に示すデジタルカメラの色処理系は、CCD80から読み取られた画像データに対して、ホワイトバランス補正を行うホワイトバランス回路84およびγ補正を行うγ回路86を挟んで、2つの色補正マトリクス、第1マトリクス(リニア・マトリクスL−MTX)82、および第2マトリクス(クロマ・マトリクスC−MTX)88が設置されている。
【0004】
このように、図6に示す従来のデジタルカメラにおける色処理系では、2つの色補正マトリクスを持ち、CCD80からの画像データに対して、第1マトリクス(L−MTX)82を掛け、ホワイトバランス補正およびγ補正を行った後、再度マトリクス(C−MTX88)を掛け、CCD80のRGB信号を、ITU−R(International Telecommunication Union-Radio communication sector) によって規定されたHDTVの推奨規格であるBT709のRGB信号に変換している。ここで、撮影光源の色味を取り除くホワイトバランス補正は、一般に、特定の色空間上のゲイン調整で実現される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ゲイン調整によるホワイトバランス補正は、多くの場合、適切な結果を与えるが、光源によっては光源の色味を完全に取り除くことが出来ず、例えば、蛍光灯の下で撮影された肌色は、ホワイトバランス補正後もシアングリーン味が残って、太陽光(昼光)下で観察される肌色のような色再現にはならないという問題がある。これを光源依存性と言う。
【0006】
基準光源P0(λ) 下で得られる三刺激値XYZを、撮影光源P(λ)下で得られる撮像系露光量の線型結合により、次の式(1)のように近似する。
【数1】
【0007】
ここで、式(1)において、記号(u,v)は、内積(u,v)=∫u(λ)v(λ)dλを表し、記号uv(λ)は、分光積uv(λ)=u(λ)v(λ)を表すものとする。また、x、y、zのバー( ̄)は等色関数を表し、係数Cij(i,j=1〜3)は、C−MTX88の係数であり、h(λ)は、被写体分光反射率である。また、撮像系分光感度r(λ)、g(λ)、b(λ)は、CCD分光感度R(λ)、G(λ)、B(λ)およびL−MTX82の係数Lijを用いて、次の式(2)〜(4)により規定される。
r(λ)=L11・R(λ)+L12・G(λ)+L13・B(λ) ・・・(2)
g(λ)=L21・R(λ)+L22・G(λ)+L23・B(λ) ・・・(3)
b(λ)=L31・R(λ)+L32・G(λ)+L33・B(λ) ・・・(4)
【0008】
また、図6に示すデジタルカメラの色処理系におけるCCD80として、図5(a)に実線でオリジナルと表示したグラフの表す分光感度を有するタイプ1のCCDと、図5(b)に実線でオリジナルと表示したグラフの表す分光感度を有するタイプ2のCCDを用いた2つのシステムを考える。
各タイプ1、2の場合について、L−MTX82を単位行列とし、光源をA光源(タングステン)、基準光源D55、F4(蛍光灯)とし、被写体をNCSチャートとして撮像を行い、前記式(1)によりC−MTX88を各光源について最適化した結果を表1に示す。
【表1】
【0009】
表1が示すように、タイプ1、タイプ2いずれも、各光源、すなわち、光源、D55、F4によってC−MTX88は変わっており、C−MTX88は、光源依存性を有していることがわかる。
しかし、実際の機器では、基準光源に対して、最適化されたC−MTX88がすべての光源に対して固定的に用いられており、C−MTX88の固定化がデジタルカメラの光源依存性の一因となっているという問題がある。
【0010】
また、図6に示すデジタルカメラの色処理系では、色補正マトリクスを2つ(第1マトリクス(L−MTX82)および第2マトリクス(C−MTX88))有しており、この2つのマトリクスを掛け合わせた場合の特性が、一意に決定されるが、各マトリクスをどのように決定するかという点に関しては、任意性がある。
しかし、従来、L−MTX82とC−MTX88の各マトリクスの役割分担が不明なため、このように色補正マトリクスを2つ備えていることの特徴を活かしきれていないという問題がある。
【0011】
本発明は、前記従来の問題に鑑みてなされたものであり、例えば、デジタルカメラ等のように、CCDで撮像した画像データをモニタ出力用画像データに変換する際の、ホワイトバランス補正回路を挟んで第1マトリクスおよび第2マトリクスの2つの色補正マトリクスを有する色処理系において、色補正マトリクスを2つ備えていることの特徴を活かし、第1マトリクスをうまく決定することにより、第2マトリクスの光源依存性を解消することのできる色補正マトリクス決定方法および装置を提供することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、入力画像データを出力画像データに変換する、ホワイトバランス補正回路を挟んで第1マトリクスおよび第2マトリクスの2つの色補正マトリクスを有する色処理系において、前記色補正マトリクスを決定する色補正マトリクス決定方法であって、複数の光源の各光源下で同一の被写体を撮影して得られた撮影画像データを入力画像データとして入力し、該入力された撮影画像データに基づいて、全ての前記各光源に対して固定的に用いられる前記第2マトリクスの光源依存性を解消するように前記第1マトリクスを決定することを特徴とする色補正マトリクス決定方法を提供するものである。
【0013】
また、前記複数の光源の各光源下での前記撮影画像データの各光源毎の平均色差を算出し、算出された前記複数の光源の各光源毎の平均色差の最大値が最小になるように前記第1マトリクスを決定するようにしたことが好ましい。
さらに、前記複数の光源の各光源下での前記撮影画像データの各光源毎の平均色差を算出し、算出された前記複数の光源の各光源毎の平均色差の平均値が最小になるように前記第1マトリクスを決定するようにしたことが好ましい。
【0014】
また、前記第1マトリクスを{L ij (i,j=1〜3)}とし、前記複数の光源の各光源下での前記撮影画像データのうち基準光源をP 0 、その他の光源をP k (kは光源の種類を表す)とし、r(λ)、g(λ)、b(λ)をそれぞれ、前記入力画像データの入力分光感度R(λ)、G(λ)、B(λ)および前記第1マトリクス{L ij }とから、次式
r(λ)=L 11 ・R(λ)+L 12 ・G(λ)+L 13 ・B(λ)
g(λ)=L 21 ・R(λ)+L 22 ・G(λ)+L 23 ・B(λ)
b(λ)=L 31 ・R(λ)+L 32 ・G(λ)+L 33 ・B(λ)
で規定される実効的な入力分光感度とするとき、次式
max k {| log (P k ,r ) /( P 0 ,r) − log (P k ,g ) /( P 0 ,g) |
+| log (P k ,g ) /( P 0 ,g) − log (P k ,b ) /( P 0 ,b) |)
を最小化するようにして、前記第1マトリクスを決定するようにしたことが好ましい。
【0015】
また、前記第1マトリクスを{L ij (i,j=1〜3)}とし、前記複数の光源の各光源下での前記撮影画像データのうち基準光源をP 0 、その他の光源をP k (kは光源の種類を表す)とし、r(λ)、g(λ)、b(λ)をそれぞれ、前記入力画像データの入力分光感度R(λ)、G(λ)、B(λ)および前記第1マトリクス{L ij }とから、次式
r(λ)=L 11 ・R(λ)+L 12 ・G(λ)+L 13 ・B(λ)
g(λ)=L 21 ・R(λ)+L 22 ・G(λ)+L 23 ・B(λ)
b(λ)=L 31 ・R(λ)+L 32 ・G(λ)+L 33 ・B(λ)
で規定される実効的な入力分光感度とするとき、次式
Σ k {| log (P k ,r ) /( P 0 ,r) − log (P k ,g ) /( P 0 ,g) |
+| log (P k ,g ) /( P 0 ,g) − log (P k ,b ) /( P 0 ,b) |}
を最小化するようにして、前記第1マトリクスを決定するようにしたことが好ましい。
【0016】
また、前記第1マトリクスはリニアマトリクスであり、前記第2マトリクスはクロママトリクスであることが好ましい。
また、同様に前記課題を解決するために、本発明の第2の態様は、入力画像データを出力画像データに変換する、ホワイトバランス補正回路を挟んで第1マトリクスおよび第2マトリクスの2つの色補正マトリクスを有する色処理法であって、前記第1マトリクスが上述の色補正マトリクス決定方法により決定されることを特徴とする色処理方法を提供する。
【0017】
また、同様に前記課題を解決するために、本発明の第3の態様は、入力画像データを出力画像データに変換する、ホワイトバランス補正回路を挟んで第1マトリクスおよび第2マトリクスの少なくとも2つの色補正マトリクスを有する色処理系において、前記色補正マトリクスを決定する色補正マトリクス決定装置であって、複数の光源の各光源下で同一の被写体を撮影して得られた撮影画像データを入力画像データとして入力する手段と、該入力された撮影画像データに基づいて、全ての前記各光源に対して固定的に用いられる前記第2マトリクスの光源依存性を解消するように前記第1マトリクスを決定する手段と、を備えたことを特徴とする色補正マトリクス決定装置を提供する。
【0018】
また、前記入力された前記複数の光源の各光源下での前記撮影画像データに基づいて前記第1マトリクスを決定する手段は、前記撮影画像データの光源毎の平均色差を算出する手段と、前記平均色差の最大値を算出する手段と、前記平均色差の最大値を最小にするように前記第1マトリクスを決定する手段とを含むことが好ましい。
さらに、前記入力された前記複数の光源の各光源下での前記撮影画像データに基づいて前記第1マトリクスを決定する手段は、前記撮影画像データの光源毎の平均色差を算出する手段と、前記平均色差の平均値を算出する手段と、前記平均色差の平均値を最小にするように前記第1マトリクスを決定する手段とを含むことが好ましい。
また、前記第1マトリクスはリニアマトリクスであり、前記第2マトリクスはクロママトリクスであることが好ましい。
【0019】
また、同様に前記課題を解決するために、本発明の第4の態様は、入力画像データを出力画像データに変換する、ホワイトバランス補正回路を挟んで第1マトリクスおよび第2マトリクスの2つの色補正マトリクスを有する色処理法であって、前記第1マトリクスが上述の色補正マトリクス決定方法により決定されることを特徴とする色処理装置を提供する。
【0020】
本発明において、「光源の範囲」とは、光源の発光波形に関するクラスを意味し、具体的には、黒体放射に従う光源なのか、蛍光灯であるのか、また、蛍光灯であっても、通常(普通)形か、高演色形か、三波長形かなどの発光波形に関するクラスを指し、「光源の範囲を入力する」とは、どのような発光波形のクラスの光源に属するのかを入力することを意味する。
【0021】
また、本発明において、「入力分光感度」とは、入力画像が、デジタルスチルカメラ(DSC)やスキャナ等の画像入力装置により入力された画像であれば、画像入力装置の分光感度を指す。なお、スキャナの場合には、読取素子(CCD等)の分光感度(含フィルタ)によるデータが使われることが多いので、
入力分光感度=装置分光感度
=素子分光感度
となる。しかし、DSCの場合には、色補正マトリクスを組み合わせることが多いので、
入力分光感度=装置分光感度
=素子分光感度×マトリクス
と表すことができる。従って、DSCの場合には、素子分光感度そのものではなく、素子分光感度と色補正マトリクスの組み合わせである点を考慮し、「組み合わせ」を強調する目的で「実効的な入力分光感度」と記載するが、上述したように、装置分光感度という意味では、「入力分光感度」と「実効的な入力分光感度」とは、同じ意味である。
【0022】
なお、本発明において、素子分光感度および色補正マトリクスが、共に不明であるDSC、もしくは、入手できないDSCの場合には、入力分光感度は定義できないが、民生用DSCは、建前上、BT709規格に準拠することになっているので、BT709規格で代用しても良い。
この場合には、以下のように表すことができる。
入力分光感度=BT709規格分光感度
【0023】
また、本発明において、「撮像素子によらない入力画像データ」とは、入力画像が、CG(コンピュータグラフィクス)画像のように、テレビモニタ上で制作された画像である場合には、下記の定義を使うことができない。
入力分光感度=装置分光感度
この場合には、下記のように、モニタの原色(蛍光体)に対応する等色関数を入力分光感度とすることができる。
入力分光感度=モニタの原色に対応する等色関数
なお、原色が不明の場合には、例えば、
家庭用テレビならば、下記のように、NTSC規格で、
入力分光感度=NTSC規格分光感度
ハイビジョンならば、下記のように、BT709規格で、代用することができる。
入力分光感度=BT709規格分光感度
【0024】
また、本発明において、「出力画像データ」とは、画像入力装置(DSCやスキャナ)が出力する画像データを指す。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の色補正マトリクス決定方法および装置について、添付の図面に示される好適実施形態を基に詳細に説明する。
本実施形態は、図6に示すように、ホワイトバランス補正回路を挟んで2つの色補正マトリクス、すなわち第1マトリクス(L−MTX)および第2マトリクス(C−MTX)を有するデジタルカメラ等の色処理系において、第2マトリクスの光源依存性を解消するように、第1マトリクスをうまく決定しようとするものである。なお、図6では、γ回路が第2マトリクスの前に設置されているが、この順番は特に限定されるものではなく、第1マトリクスおよび第2マトリクスがホワイトバランス補正回路を挟んで設置されていればよい。
【0026】
図1は、本発明の第1実施形態に係る色補正マトリクス決定装置の概略構成を示すブロック図である。
図1に示すように、第1実施形態の色補正マトリクス決定装置10は、光源12の下で、被写体としてNCSチャート14をCCD16によって撮像して得られた画像データを入力し、これから第2マトリクス(C−MTX)の光源依存性を解消するように第1マトリクス(L−MTX)を決定するものであり、光源毎の平均色差算出手段18、第1マトリクス(L−MTX)設定手段20、平均色差の最大値算出手段22および最大値比較手段24を含んで構成されている。
【0027】
NCSチャート14の撮像においては、光源12を様々に変えて複数種類の光源の下で撮像が行われる。光源12の種類としては、例えば、A光源、C光源、D55、F4等の光源が例示される。
このように、光源12を変えてCCD16で撮像を行うことによって、光源の範囲が、色補正マトリクス決定装置10に入力される。
なお、本実施形態では、このようにCCDで被写体を撮像して画像を入力しているが、撮像素子はCCDに限定されるものではなく、CCD以外にも、CMOSやフォトマルチプライヤ(光電子増倍管)等も好適に利用することができる。
さらに、本発明は、このように撮像素子を用いて被写体を撮像して得られた画像データの他、印刷原稿をスキャナによって収録して得られた画像データに対しても適用可能である。
【0028】
光源毎の平均色差算出手段18は、入力された画像データから、各光源毎に平均色差を算出する。このとき、第1マトリクス(L−MTX)設定手段20により設定されたマトリクス係数{Lij}を用いて平均色差の計算が行われる。
算出された光源毎の平均色差は平均色差の最大値算出手段22へ送られる。最大値算出手段22は、平均色差の中から最大のものを算出する。光源毎の平均色差の最大値は、最大値比較手段24に送られる。最大値比較手段24は、送られた最大値を、それ以前の最大値のうちで一番小さいものと比較する。
【0029】
新たに送られた最大値が、以前の最大値のうち最小のものより小さい場合には、最大値比較手段24は、第1マトリクス設定手段20に信号を送る。第1マトリクス設定手段20では、第1マトリクスを設定し直して新しい第1マトリクスを平均色差算出手段18に送り、再度光源毎の平均色差を算出し前と同様のことを繰り返し、平均色差の最大値がもうこれ以上小さくならないとなったところで、そのとき設定されている第1マトリクスが求めるものであるとしてマトリクスを決定する。
【0030】
以下、本実施形態における作用を図2のフローチャートに沿って説明する。
なお、図2のフローチャートは、各種光源12の下で被写体(NCSチャート14)をCCD16で撮像し、撮像した画像データを色補正マトリクス決定装置10に入力した後のマトリクス決定の手順を示すものである。
まず、ステップ100において、第1マトリクス(L−MTX)設定手段20により、第1マトリクスを設定し、これを平均色差算出手段18に送る。
ステップ110において、平均色差算出手段18で、光源毎の平均色差を算出する。
【0031】
次に、ステップ120において、最大値算出手段22で、上で算出された光源毎の平均色差の中から最大のものMk を算出する。
ステップ130において、最大値比較手段24において、いま求めた平均色差の最大値Mk と以前求めた平均色差の最大値中最小のものM0 とを比較する。
ステップ140において、Mk <M0 と判断された場合には、ステップ150において、このMk を新たに最大値中の最小値M0 として設定し、ステップ100に戻る。そして、いま計算に使用された第1マトリクスをメモリに記憶しておいて、第1マトリクスを設定し直して、再度いままでと同じ演算を繰り返す。そして、ステップ140において、もうこれ以上平均色差の最大値の最小値M0 が小さくならなくなったところで、ステップ160において、そのときメモリに記憶されている第1マトリクスが第2マトリクスの光源依存性を解消するために最適化されたマトリクスであるとして決定する。
【0032】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
前述した第1実施形態では、第1マトリクスを決定するに当たり、光源毎の平均色差の最大値を最小とするようにして第1マトリクスを最適化したが、本実施形態は、光源毎の平均色差の平均値を最小とするようにして第1マトリクスを最適化するものである。
【0033】
図3に本実施形態の色補正マトリクス決定装置30の概略構成を示す。
図3に示すように、本実施形態の色補正マトリクス決定装置30は、光源12の下で被写体であるNCSチャート14をCCD16で撮像した画像データを入力し、この画像データから光源毎の平均色差を算出する平均色差算出手段32、第1マトリクス(L−MTX)設定手段34、光源毎の平均色差からその平均値を算出する平均色差平均値算出手段36および、この平均値の最小値を算出するために平均値を比較する平均値比較手段38とを含んで構成される。
【0034】
また、図4に本実施形態の処理の流れを示す。
本実施形態は、光源毎の平均色差の最大値の代わりに光源毎の平均色差の平均値を使うことを除けば、略前記第1実施形態と同様である。すなわち、複数の光源12の下でCCD16によりNCSチャート14を撮像した画像データを入力した後、ステップ200において、第1マトリクス(L−MTX)を設定し、これを用いてステップ210において光源毎の平均色差を算出し、ステップ220において、光源毎の平均色差の平均値Ak を算出する。
【0035】
ステップ230で、平均値の中から最小のものを選びだすために、それ以前の平均値の中で最小のものA0 と比較し、ステップ240で、Ak <A0 の場合には、ステップ250でAk を新たにA0 として、ステップ200に戻り、第1マトリクスを設定し直して、平均値が最小となるようにして、第1マトリクスを最適化する。このようにして、ステップ260において、第1マトリクスが決定される。
【0036】
このように、第1マトリクスを最適化して決定するに当たり、光源毎の平均色差の最大値を最小とするようにしてもよいし、光源毎の平均色差の平均値を最小とするようにしてもよい。これについては、後で式を用いてより詳しく説明することとする。
【0037】
次に、より具体的な実施例について説明する。
図5(a)に実線で示すような分光感度を有するタイプ1のCCDと、図5(b)に実線で示すような分光感度を有するタイプ2のCCDを用いて、表2に示すような18種類の光源の下で、NCSチャートを撮像した。
タイプ1およびタイプ2の各CCDによって撮像して得られた画像データにより算出した各光源毎の平均色差を、表2のオリジナルと書かれた欄に示す。
【表2】
【0038】
表2に示すように、タイプ1の場合には、オリジナルの平均色差はA光源の場合に21.53で最大値となり、また平均色差の平均値は11.77である。
一方、タイプ2の場合には、オリジナルの平均色差はF4光源の場合に15.44で最大値となり、また平均色差の平均値は7.63である。
ここで、上で説明した第1実施形態の方法で、表2に示す光源毎の平均色差の中、最大のものが最小となるようにして、第1マトリクスを最適化する。
タイプ1およびタイプ2について、それぞれ第1マトリクスを最適化した場合の各光源毎の平均色差およびその最大値と平均値を表2の「最適化」と書かれた欄に示す。タイプ1の場合には、最適化した後もやはりA光源の場合に平均色差が最大となったが、タイプ2の場合には、最適化前はF4光源で最大であったものがA光源で最大となった。
【0039】
このように、平均色差の最大値を最小にするように第1マトリクスを最適化した結果、表2の最下段の数値が示すように、平均色差の平均値も、タイプ1およびタイプ2それぞれについて、大幅に改善された。
また、最適化された第1マトリクスの結果を表3に示す。
【表3】
【0040】
なお、このように第1マトリクスを最適化した結果、タイプ1およびタイプ2の各CCDについて、その分光感度がそれぞれ図5(a)および図5(b)に破線で示すように最適化された。
このようにして、第1マトリクス(L−MTX)を最適化して、第2マトリクス(C−MTX)を例えば表1に示す標準光源D55に対する係数値で固定して用いることができ、これで光源依存性が抑制される。これにより、第1マトリクスを光源依存性の改善に使用し、第2マトリクスは、本来の意味での色変換(CCDのRGBからBT709のRGBへの色変換)に使用することができ、2つの色補正マトリクスの役割分担をはっきりと分けることができ、色補正マトリクスを2つ有するという特徴を活かすことができる。
【0041】
次に、第2マトリクスを固定化することに起因する色再現誤差について説明する。被写体分光反射率h(λ)に対して、基準光源P0(λ) 下の露光量から計算される三刺激値をX、Y、Zとし、撮影光源P(λ)下の露光量から計算される三刺激値をX’、Y’、Z’とすると、色変換係数の固定化に起因するΔa* は、次の式(5)で評価できる。
【数2】
【0042】
また、同様に、色変換係数の固定化に起因するΔb* は、次の式(6)で評価できる。
【数3】
【0043】
従って、適当な定数を用いれば、色再現誤差は、次の式(7)で評価することができる。
【数4】
【0044】
ところで、通常デジタルカメラの場合には、AE(オートエクスポージャ)機構があり、明るさを調整しているため、L* は実質的にキャンセルされているため、ΔEについては、Δa* とΔb* のみを考えればよく、ΔEは次の式(8)で与えられる。
ΔE={(Δa* )2 + (Δb* )2 }1/2 ・・・(8)
これにより、式(7)の右辺を最小化すれば、色差ΔEを最小化することができる。
【0045】
なお、式(7)からわかるように、この式には被写体h(λ)が入っておらず、NCSチャートのような特定のチャート等の被写体を撮像する必要はなく、光源の範囲を入力するのみで、式(7)の右辺を最小とするように最適化することで、第1マトリクスを決定することができる。
【0046】
実際には、式(7)の右辺について、複数の光源Pk (kは光源の種類を表す)中の最大値maxk をとって、
maxk {|log (Pk ,r)/(P0,r)−log (Pk ,g)/(P0,g)|+|log (Pk ,g)/(P0,g)−log (Pk ,b)/(P0,b)|}
を最小化するようにして、前記第1マトリクスを決定するようにすればよい。
あるいは、式(7)の右辺の平均値を最小化するようにしてもよい。右辺の平均値を最小化することと、各光源Pk についての和を最小化することとは同値であるので、次の和Σk 、
Σk {|log (Pk ,r)/(P0,r)−log (Pk ,g)/(P0,g)|+|log (Pk ,g)/(P0,g)−log (Pk ,b)/(P0,b)|}
を最小化するようにして、前記第1マトリクスを決定するようにしてもよい。
なお、上記各実施形態のようにCCD等の撮像素子を用いて画像データを入力する場合には、上記式におけるr、g、bは、前記式(2)〜(4)によって規定される撮像系分光感度を表すが、撮像素子によらない入力画像データの場合には、これらr、g、bは実効的な入力分光感度を表すものとする。
【0047】
以上説明したように、本実施形態によれば、色補正マトリクスを2つ備えていることの特徴を活かしたマトリクス決定方法を実行することが可能となった。また、光源の範囲を入力するのみで第2マトリクスの光源依存性を解消することができるように第1マトリクスを決定することができるようになった。
【0048】
以上、本発明の色補正マトリクス決定方法および装置について詳細に説明したが、本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよいのはもちろんである。
【0049】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明によれば、色補正マトリクスを2つ備えていることの特徴を活かしたマトリクス決定方法を提供し、第2マトリクスの光源依存性を解消することができるように第1マトリクスを決定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態に係る色補正マトリクス決定装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】 第1実施形態の処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】 本発明の第2実施形態に係る色補正マトリクス決定装置の概略構成を示すブロック図である。
【図4】 第2実施形態の処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】 (a)、(b)は、それぞれ本実施例で用いるタイプ1、タイプ2のCCDの分光感度を示す線図である。
【図6】 従来のデジタルカメラの2つの色補正マトリクスを有する色処理系の構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
10、30 色補正マトリクス決定装置
12 光源
14 NCSチャート
16 CCD
18、32 光源毎の平均色差算出手段
20、34 第1マトリクス(L−MTX)設定手段
22 平均色差の最大値算出手段
24 最大値比較手段
36 平均色差の平均値算出手段
38 平均値比較手段
Claims (12)
- 入力画像データを出力画像データに変換する、ホワイトバランス補正回路を挟んで第1マトリクスおよび第2マトリクスの2つの色補正マトリクスを有する色処理系において、前記色補正マトリクスを決定する色補正マトリクス決定方法であって、
複数の光源の各光源下で同一の被写体を撮影して得られた撮影画像データを入力画像データとして入力し、該入力された撮影画像データに基づいて、全ての前記各光源に対して固定的に用いられる前記第2マトリクスの光源依存性を解消するように前記第1マトリクスを決定することを特徴とする色補正マトリクス決定方法。 - 前記複数の光源の各光源下での前記撮影画像データの各光源毎の平均色差を算出し、算出された前記複数の光源の各光源毎の平均色差の最大値が最小になるように前記第1マトリクスを決定するようにした請求項1に記載の色補正マトリクス決定方法。
- 前記複数の光源の各光源下での前記撮影画像データの各光源毎の平均色差を算出し、算出された前記複数の光源の各光源毎の平均色差の平均値が最小になるように前記第1マトリクスを決定するようにした請求項1に記載の色補正マトリクス決定方法。
- 前記第1マトリクスを{Lij(i,j=1〜3)}とし、前記複数の光源の各光源下での前記撮影画像データのうち基準光源をP0、その他の光源をPk(kは光源の種類を表す)とし、r(λ)、g(λ)、b(λ)を、それぞれ前記入力画像データの入力分光感度R(λ)、G(λ)、B(λ)および前記第1マトリクス{Lij}とから、
次式
r(λ)=L11・R(λ)+L12・G(λ)+L13・B(λ)
g(λ)=L21・R(λ)+L22・G(λ)+L23・B(λ)
b(λ)=L31・R(λ)+L32・G(λ)+L33・B(λ)
で規定される実効的な入力分光感度とするとき、
次式
maxk{|log(Pk,r)/(P0,r)−log(Pk,g)/(P0,g)|
+|log(Pk,g)/(P0,g)−log(Pk,b)/(P0,b)|)
を最小化するようにして、前記第1マトリクスを決定するようにした請求項1に記載の色補正マトリクス決定方法。 - 前記第1マトリクスを{Lij(i,j=1〜3)}とし、前記複数の光源の各光源下での前記撮影画像データのうち基準光源をP0、その他の光源をPk(kは光源の種類を表す)とし、r(λ)、g(λ)、b(λ)をそれぞれ、前記入力画像データの入力分光感度R(λ)、G(λ)、B(λ)および前記第1マトリクス{Lij}とから、
次式
r(λ)=L11・R(λ)+L12・G(λ)+L13・B(λ)
g(λ)=L21・R(λ)+L22・G(λ)+L23・B(λ)
b(λ)=L31・R(λ)+L32・G(λ)+L33・B(λ)
で規定される実効的な入力分光感度とするとき、
次式
Σk{|log(Pk,r)/(P0,r)−log(Pk,g)/(P0,g)|
+|log(Pk,g)/(P0,g)−log(Pk,b)/(P0,b)|}
を最小化するようにして、前記第1マトリクスを決定するようにした請求項1に記載の色補正マトリクス決定方法。 - 前記第1マトリクスはリニアマトリクスであり、前記第2マトリクスはクロママトリクスである請求項1〜5のいずれかに記載の色補正マトリクス決定方法。
- 入力画像データを出力画像データに変換する、ホワイトバランス補正回路を挟んで第1マトリクスおよび第2マトリクスの2つの色補正マトリクスを有する色処理法であって、
前記第1マトリクスが請求項1〜6に記載の色補正マトリクス決定方法により決定されることを特徴とする色処理方法。 - 入力画像データを出力画像データに変換する、ホワイトバランス補正回路を挟んで第1マトリクスおよび第2マトリクスの少なくとも2つの色補正マトリクスを有する色処理系において、前記色補正マトリクスを決定する色補正マトリクス決定装置であって、
複数の光源の各光源下で同一の被写体を撮影して得られた撮影画像データを入力画像データとして入力する手段と、
該入力された撮影画像データに基づいて、全ての前記各光源に対して固定的に用いられる前記第2マトリクスの光源依存性を解消するように前記第1マトリクスを決定する手段と、
を備えたことを特徴とする色補正マトリクス決定装置。 - 前記入力された前記複数の光源の各光源下での前記撮影画像データに基づいて前記第1マトリクスを決定する手段は、前記撮影画像データの光源毎の平均色差を算出する手段と、前記平均色差の最大値を算出する手段と、前記平均色差の最大値を最小にするように前記第1マトリクスを決定する手段とを含む請求項8に記載の色補正マトリクス決定装置。
- 前記入力された前記複数の光源の各光源下での前記撮影画像データに基づいて前記第1マトリクスを決定する手段は、前記撮影画像データの光源毎の平均色差を算出する手段と、前記平均色差の平均値を算出する手段と、前記平均色差の平均値を最小にするように前記第1マトリクスを決定する手段とを含む請求項8に記載の色補正マトリクス決定装置。
- 前記第1マトリクスはリニアマトリクスであり、前記第2マトリクスはクロママトリクスである請求項8〜10のいずれかに記載の色補正マトリクス決定装置。
- 入力画像データを出力画像データに変換する、ホワイトバランス補正回路を挟んで第1マトリクスおよび第2マトリクスの2つの色補正マトリクスを有する色処理法であって、
前記第1マトリクスが請求項8〜11に記載の色補正マトリクス決定方法により決定されることを特徴とする色処理装置。
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